説明

かつら用毛髪の染色方法、及び、かつらの製造方法

【課題】かつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法において、簡単かつ確実に多段染色を行う。
【解決手段】かつら用毛髪の植毛方法は、かつら用毛髪を脱色する脱色工程(S2)と、脱色されたかつら用毛髪の全体を染色する予備染色工程(S3)と、予備染色されたかつら用毛髪を段階的に異なる色となるように染色する多段染色工程(S4)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら用毛髪を段階的に異なる色となるように染色するかつら用毛髪の染色方法と、この染色方法により染色された毛髪をかつらベースに植毛してかつらを製造するかつらの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かつら用の毛髪を段階的に異なる色となるように染色する染色方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1記載の染色方法では、脱色工程の後、毛髪の染色しない部分を密封し包んで毛髪の染色しようとする部分を露出させ、この状態の毛髪を染色剤の水溶液の中に入れて染色するという手法をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3860819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、毛髪を段階的に異なる色に染色する場合でも、それぞれの色は近い色であることが多い。
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の染色方法は、脱色する濃さを多少調整していても、脱色された毛髪に一部分ずつ段階的に着色を行うため、濃さにばらつきが出るなど確実に所望の多段染色を行うことができなかったり、或いは、染色の作業性が悪化したりする。
【0007】
本発明の目的は、簡単かつ確実に多段染色を行うことができる、かつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかつら用毛髪の染色方法は、かつら用毛髪を脱色する脱色工程と、脱色された上記かつら用毛髪の全体を染色する予備染色工程と、予備染色された上記かつら用毛髪を段階的に異なる色となるように染色する多段染色工程と、を備える。
【0009】
また、上記かつら用毛髪の染色方法において、上記多段染色工程では、上記かつら用毛髪の束を段階的に染料に浸漬させるようにしてもよい。
【0010】
また、上記かつら用毛髪の染色方法において、上記脱色工程よりも前に上記かつら用毛髪の表面処理を行う表面処理工程を更に備え、上記表面処理工程では、上記かつら用毛髪を、硝酸を含む溶液に浸漬するようにしてもよい。
【0011】
また、上記かつら用毛髪の染色方法において、上記表面処理工程では、上記かつら用毛髪を、上記硝酸及び次亜塩素酸カルシウムを含む上記溶液に浸漬するようにしてもよい。
【0012】
本発明のかつらの製造方法は、上記かつら用毛髪の染色方法により染色されたかつら用毛髪をかつらベースに植毛する植毛工程を備える。
【0013】
また、上記かつらの製造方法において、上記かつら用毛髪の染色方法の上記多段染色工程では、上記かつら用毛髪の束を半分に折り、この束を段階的に上記染料に浸漬させ、上記植毛工程では、上記多段染色工程で上記束を半分に折った部分又はその近傍において上記かつら用毛髪を上記かつらベースに植毛するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単かつ確実に多段染色を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るかつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施の形態におけるかつら(かつら用毛髪は省略)を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るかつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るかつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係るかつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法を示すフローチャートである。
【0018】
図2は、本実施の形態におけるかつら(かつら用毛髪は省略)を示す斜視図である。
【0019】
図3は、本実施の形態に係るかつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法を説明するための概略図である。
【0020】
図1に示すように、かつら用毛髪の染色方法は、表面処理工程(S1)と、脱色工程(S2)と、予備染色工程(S3)と、多段染色工程(S4)とを備える。
【0021】
また、かつらの製造方法は、かつら用毛髪の染色方法の各工程(S1〜S4)に加え、更に植毛工程(S5)を備える。
【0022】
以下、各工程を順に説明する。
【0023】
表面処理工程(S1)では、かつら用毛髪の表面処理を行う。本実施の形態の表面処理は、毛髪表面のキューティクルや汚れの除去である。表面処理としては、コーティング等の加工を施すものであってもよい。
【0024】
まず、多数本の染色用のかつら用毛髪を用意し、計量する。かつら用毛髪が1kgの場合、例えば軟化水30kgを容器に投入する。この軟化水を投入した容器に、順番に硝酸(HNO)150ml、次亜塩素酸カルシウム(CaCl(ClO)・HO)300mlを入れる。
【0025】
その後、この容器にかつら用毛髪を入れてかき混ぜ続け、5分後にかつら用毛髪を取り出す。この取り出したかつら用毛髪は水で洗い流す。
【0026】
そして、70℃の水にアンモニア水を入れたものにかつら用毛髪を入れ、5分間中和させる。
【0027】
上述の処理により、毛髪表面のキューティクル及び汚れが取り除かれる。また、かつら用毛髪が水分を含んでいても櫛どおりが良く絡みにくくなる。但し、キューティクルを取り除きすぎると、表面に光沢感が出て外観を損なうおそれがある。そのため、キューティクルを取り除きすぎないように、硝酸等の濃度や処理時間を調整するとよい。
【0028】
また、硝酸及び次亜塩素酸カルシウムは、水(軟化水)に対して質量パーセント濃度が10%以下(本実施の形態では、硝酸1%以下,次亜塩素酸カルシウム2,3%)となるようにするとよい。
【0029】
次に、脱色工程(S2)では、表面処理工程(S1)で表面処理されたかつら用毛髪を脱色する。
【0030】
まず、上述のようにアンモニア水で中和された1kgの毛髪に対して、12kgの温水を用意する。
【0031】
そして、この温水に、過硫酸カルシウム(K)30%、ケイ酸ナトリウム(NaSi)20%、過硫酸酸アンモニウム(H/(NH)10%、過硫酸塩(ペルオキソ一硫酸塩)(HSOの塩)5%を含む700gの溶液、及び、オキシドール1kgを加え、これらを完全に温水に溶解させ、かつら用毛髪を入れてかき回す。
【0032】
かつら用毛髪が所望の色に脱色した頃に、かつら用毛髪を引き上げる。引き上げた後、きれいな水でかつら用毛髪を3,4回洗う。なお、脱色する濃さは、後述する多段染色工程(S4)において濃い色に染色する場合は濃くし、薄い色に染色する場合は薄くするとよい。
【0033】
次に、予備染色工程(S3)では、脱色されたかつら用毛髪の全体を染色する。
【0034】
まず、弱酸性染料を用い、上述のように水できれいに仕上げられたかつら用毛髪の全体を同様に染色する。染色した後、かつら用毛髪を洗い、乾燥させ、例えば一端側で固定して束にする。
【0035】
次に、多段染色工程(S4)では、予備染色されたかつら用毛髪を段階的に異なる色となるように染色する。
【0036】
まず、かつら用毛髪の束を半分に折り、この束を例えば折り目側から弱酸性の染料に浸漬させる。そして、図3に示す、かつらベース2に植毛されたかつら用毛髪3のように、左半分3−1及び右半分3−2が根元側から第1の色C1、第2の色C2、第3の色C3の順に染色されるよう、かつら用毛髪3を段階的に染料に浸漬させていく。なお、第3の色C3については、上述の予備染色工程(S3)で染色された色のままとし、新たに染色しなくともよい。
【0037】
かつら用毛髪3を段階的に染料に浸漬させていくには、例えば、束の半分に折った部分が下側になるようにかつら用毛髪3を保持し、予め決定された各色C1〜C3の領域ごとの長さに応じて、99℃に自動温度設定された染料に、束を上下左右に一定の速度で揺り動かしながら浸漬させる。
【0038】
揺り動かす時間は、染色する濃さなどにより決定されればよい。なお、上述のようにかつら用毛髪3を揺り動かしながら浸漬させることで、各色の境界部分は色調の差(グラデーションの程度、移行具合、色の違い)がはっきりとわかるものではなく、自然に生じたように見え、自然に発生する毛髪の褪色を再現することができる。
【0039】
次に、植毛工程(S5)では、多段染色された毛髪を図2に示すかつら1のかつらベース2に図3に示すように植毛する。
【0040】
例えば、図3に示すように、染色工程(S3)で束を半分に折った部分又はその近傍においてかつら用毛髪3をかつらベース2に植毛する。本実施の形態では、かつら用毛髪3を結びつけてかつらベース2に植毛するため、結び目3aが束を半分に折った部分又はその近傍に位置することにある。
【0041】
以上説明した本実施の形態では、かつら用毛髪の製造方法は、かつら用毛髪3を脱色する脱色工程(S2)と、脱色されたかつら用毛髪3の全体を染色する予備染色工程(S3)と、予備染色されたかつら用毛髪3を段階的に異なる色となるように染色する多段染色工程(S4)と、を備える。
【0042】
そのため、予備染色工程(S3)において、多段染色工程(S4)で多段染色するそれぞれの色と同程度の色に染色することで、多段染色工程(S4)において、多段染色する量(濃さ等)を少なくすることができる。
【0043】
よって、本実施の形態によれば、簡単かつ確実に多段染色を行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、多段染色工程(S4)では、かつら用毛髪3の束を段階的に染料に浸漬させる。そのため、簡単に多段染色を行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、かつら用毛髪の染色方法は、脱色工程(S2)よりも前にかつら用毛髪3の表面処理を行う表面処理工程(S1)を更に備え、表面処理工程(S1)では、かつら用毛髪3を、硝酸を含む溶液に浸漬する。そのため、表面処理工程(S1)、ひいては、かつら用毛髪の染色方法を簡単に行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、表面処理工程(S1)では、かつら用毛髪3を、硝酸及び次亜塩素酸カルシウムを含む溶液に浸漬する。そのため、表面処理工程(S1)、ひいては、かつら用毛髪の染色方法を簡単に行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態のかつら1の製造方法は、上記染色方法により染色されたかつら用毛髪3をかつらベース2に植毛する植毛工程(S5)を備える。そして、多段染色工程(S4)では、かつら用毛髪3の束を半分に折り、この束を両端側から段階的に染料に浸漬させ、植毛工程(S5)では、多段染色工程(S4)で束を半分に折った部分又はその近傍においてかつら用毛髪3をかつらベース2に植毛する(結び目3a)。そのため、簡単かつ確実に多段染色を行ってかつら1を製造することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、かつら用毛髪の染色方法及びかつらの製造方法は、表面処理工程(S1)を含むが、かつら用毛髪の材料に表面処理を行う必要のない材料を用いる場合には、表面処理工程(S1)を省略してもよい。
【0049】
また、脱色工程(S2)、予備染色工程(S3)及び多段染色工程(S4)の具体的処理については、特に限定されず、例えば、溶液の材料や濃度等を変更するなど、適宜変更可能である。
【0050】
また、かつらベース2としては、ネットではなく人工樹脂からなる人工皮膚やそれ以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 かつら
2 かつらベース
3 かつら用毛髪
3a 結び目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつら用毛髪を脱色する脱色工程と、
脱色された前記かつら用毛髪の全体を染色する予備染色工程と、
予備染色された前記かつら用毛髪を段階的に異なる色となるように染色する多段染色工程と、
を備えることを特徴とするかつら用毛髪の染色方法。
【請求項2】
前記多段染色工程では、前記かつら用毛髪の束を段階的に染料に浸漬させることを特徴とする請求項1記載のかつら用毛髪の染色方法。
【請求項3】
前記脱色工程よりも前に前記かつら用毛髪の表面処理を行う表面処理工程を更に備え、
前記表面処理工程では、前記かつら用毛髪を、硝酸を含む溶液に浸漬する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のかつら用毛髪の染色方法。
【請求項4】
前記表面処理工程では、前記かつら用毛髪を、前記硝酸及び次亜塩素酸カルシウムを含む前記溶液に浸漬することを特徴とする請求項3記載のかつら用毛髪の染色方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載のかつら用毛髪の染色方法により染色されたかつら用毛髪をかつらベースに植毛する植毛工程を備えることを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項6】
前記かつら用毛髪の染色方法の前記多段染色工程では、前記かつら用毛髪の束を半分に折り、該束を段階的に前記染料に浸漬させ、
前記植毛工程では、前記多段染色工程で前記束を半分に折った部分又はその近傍において前記かつら用毛髪を前記かつらベースに植毛する、
ことを特徴とする請求項5記載のかつらの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193462(P2012−193462A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55911(P2011−55911)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000126218)株式会社アートネイチャー (53)
【Fターム(参考)】