説明

がんの処置の為の組成物を含有する抗炎症性化合物。

本発明は、非ステロイド性抗炎症性化合物を含む組成物に関し、及び特には、がんの処置において又はがん増殖の抑制においてそのような組成物を使用する方法に関する。より特には、本発明は、抗炎症性化合物を腫瘍組織に向ける方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症性化合物を含む組成物に関し、及び特にはがんの処置における又はがん増殖の抑制におけるそのような組成物の使用方法に関する。より特には、本発明は、抗炎症性化合物を腫瘍組織に向ける方法に関する。さらにより特には、本発明は、非リンパ性がんの処置、及び好ましくは固形(非血液学的)悪性腫瘍及び転移(固形原発性及び二次性腫瘍)の処置におけるそのような組成物の使用方法を提供することを目的とし、そして従って腫瘍学の分野におけるものである。しかしながら、非固形腫瘍又はリンパ性がんタイプ、例えば慢性及び急性リンパ性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、の処置において、抗炎症性化合物も用いられうる。
【背景技術】
【0002】
抗炎症性効果を有する化合物の非常に大きな群がある。慣例上、これらの化合物は、ステロイド骨格を有する抗炎症剤と非ステロイド抗炎症薬剤(NSAID)とに分類された。
【0003】
ステロイド骨格を有する抗炎症剤は、ゲノムのプロセスに影響する細胞質グルココルチコイド受容体を通じて作用する。より高い濃度では、該剤は非ゲノム的作用機構を通じても作用しうる。
【0004】
このカテゴリーのよく知られた例は、コルチコステロイド、例えばグルココルチコイドなど、である。コルチコステロイドは、がんの処置における活性成分として提案されてきた。例えば、Colemanは、Biotherapy 4(1) (1992), 37-44において、腫瘍治療において、グルココルチコイドがそれらの抗炎症性及び制吐性の能力の故に及びリンパ系由来の細胞に対するそれらの効率的な細胞溶解活性に起因する血液学的悪性腫瘍の処置の為にしばしば用いられている。他のステロイド性抗炎症剤は植物ステロールである。
【0005】
リンパ性がん型、例えば慢性及び急性リンパ性白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、の処置において、ステロイドは抗腫瘍活性を示した。リンパ系由来の細胞が、コルチコステロイドにより抑制されうる(免疫抑制活性)という事実の観点から、これは驚くべきことではない。
【0006】
そのような処置の例は、米国特許第6,090,800号明細書において開示されており、ここでは、脂溶性ステロイドプロドラッグを含むベシクル、リポソーム及びミセルが記載されている。この文献において、“コルチゾン及びデキサメタゾンのようなステロイドは、強力な免疫抑制剤であり、及び、自己免疫疾患、臓器移植拒絶、関節炎、皮膚、粘膜及び目の炎症のような状態並びにリンパ腫のような新生物の状態を処置する為に用いられる”ことが注目される。加えて、米国特許は、T細胞上のIL−2受容体を標的にすることを示唆する。
【0007】
1980年代及び1990年代においてさらなる報告が、グルココルチコイドが固形腫瘍増殖を減速することもできることを実証した。いくつかの研究は、この効果が、該腫瘍細胞に直接に向けられないが、腫瘍血管新生の干渉により仲介されることを示した(この点において、例えばFolkman et al. in Science 221 (4612) (1983), 719-723; Lee et al. in Cancer Res. 47(19) (1987), 5021-5024; McNatt et al, in J. Ocul. Pharmacol. Ther. 15(5) (1999) 413-423及びCrowley et al. in Oncology 45(4) (1988), 331-335を参照されたい)。
【0008】
しかしながら、干渉の正確な機構は不明である。
【0009】
それは、内皮細胞増殖及び遊走の抑制により(Cariou et al. in Cell. Biol. Int. Rep. 12(12)(1988), 1037-1047)、基底膜更新(turnover)により(Folkman et al. (前記の箇所に);Ingber et al. In Endocrinology 119(4) (1986), 1768-1775)、及び/又は(プラスミノーゲンアクチベーター及び血管内皮増殖因子のような)血管新生促進因子の抑制により(Blei et al. in J. Cell Physiol. 155(3) (1993), 568-578; Nauck et al. in Eur. J. Pharmacol. 341(2-3) (1998), 309-315)媒介されることが、示唆されている。
【0010】
ステロイド構造に基づくこれら抗炎症性化合物は、本発明の一部を形成しない。
【0011】
ステロイド骨格を有さない非ステロイド性抗炎症剤は、いくつかの点:
− 種々のシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素(1、2及び3)の活性の抑制、これはその次にプロスタグランジン(PG)の形成を抑制する;
− COX−2又はCOX−3(及びCOX−1でない)の特異的抑制、これはより特には病理学的なPG形成を抑制する;
− リポキシゲナーゼ抑制、これはロイコトリエンの形成を抑制する;
− 白血球機能の抑制−内皮細胞−白血球相互作用の抑制−炎症促進性サイトカイン及びシグナル伝達分子の抑制/中和及び−調節性細胞/サイトカイン又はシグナル伝達分子の活性の抑制又は刺激;並びに
− 現在では未知の機構、
で炎症カスケードを抑制することができる
【0012】
非ステロイド性抗炎症剤は、多様な化学的構造を有しそして以下のとおりに(非限定的に)分類されうる;当技術分野の当業者は言及された化合物の分類のメンバーのどれが上記で定義されたNSAIDであるかに気付く:
(a)サリチレート(アスピリン、メチルサリチレート、ジフルニサル、ベノリラート(benorylate)、ファイスラミン(faislamine)、アモキシプリン(amoxiprin)など);
(b)アリールアルカン酸(ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、2−アリールプロピオン酸など);
(c)プロフェン(カプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸など);
(d)N−アリールアントラニル酸(フェナム酸(fenamic acid)、メフェナム酸、メクロフェナム酸など);
(e)ピラゾリジン誘導体(フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾンなど);
(f)オキシカム(ピロキシカム、メロキシカムなど);
(g)コキシブ(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブなど);スルホンアニリド(ニメスリドなど)など;
(h)リポキシゲナーゼインヒビター(バイカレイン、コーヒー酸、エスクレチン、ゴシポール、ノルジヒドログアヤレチック酸、フルルビプロフェン、ノルジヒドログアヤレチック酸、エイコサトリイン酸(eicosatriynoic acid)、5−ヒドロキシエイコサテトラエノイック(HETE)ラクトン(5-hydroxyeicosatetraenoic (HETE) lactone)、5(S)−HETE、エイコサテトライン酸)など);
(i)マクロライド誘導体(9−(S)−ジヒドロエリスロマイシン誘導体など);
(j)抗炎症性ペプチド(アンチフラミン(antiflamin))(精嚢タンパク質に由来するペプチド、セレクチン結合性ペプチド、殺菌性の透過性を増加するタンパク質に基づくカチオン性ペプチド、IL−2に由来するペプチドなど);
(k)抗炎症性サイトカイン(IL−1受容体アンタゴニスト、IL−4、IL−6、IL−10、IL−11及びIL−13など);
(l)炎症促進性サイトカインインヒビター(腫瘍壊死因子−α、IL−18など);
(m)ガレクチン(ガレクチン−1など);
(n)抗体中和性炎症促進性シグナル伝達分子/サイトカイン、TNF−α、IL−1に対する抗体など;及び
(o)スタチン。
【0013】
化合物の後者の分類に関して、スタチンはよく知られた抗高脂血症剤(lipid lowering agent)であることが注目される。特に、スタチンクラスの薬物はヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)(コレステロールの前駆体)に構造的に類似し、及び、それ自体として、これらの薬物は、HMG−CoAレダクターゼの競合的なインヒビターである。この後者の酵素は、コレステロールの合成における律速段階を制御する。この酵素の抑制は、細胞内コレステロールレベルにおける減少を結果し、これはLDL受容体活性の上方制御及び循環へのLDLの進入の減少をもたらす。
【0014】
最近、Rutishauserが、Swiss Med Wkly, (2006) 136 (3-4): 41-49において、スタチンが免疫及び炎症細胞の機能に影響しうることを示す証拠により、スタチンの効果を補足した。
【0015】
また、該非ステロイド抗炎症性化合物について、疫学的/臨床的試験データは種々の結果を示す。いくつかの研究は、集団内の減少されたがん発生及びがん患者における治療的効果を示す一方で、他は増加されたがん発生及び治療の失敗を報告する。この点において、例えばBongartz et al. JAMA (2006) 295(19): 2275-2285; Biancone et al. Gut (2006) 55(2): 228-233; Mrozek et al. J Clin Endocrinol Metab. (2006) 91(6): 2201-2204を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、がんに関する限りこれらの効果についてのデータは相反し又は一貫性がなく、及び/又は、これが起こる機構は知られていない。
【0017】
これらの相反する研究は、抗炎症性化合物の効果がはっきりしたものでないこと及び、抗がん治療薬としての抗炎症性化合物の全潜在能力を予測どおりに利用する為に追加の手段が必要とされることを示唆する。
【0018】
加えて、何らかの効果(仮にあったとしても)を得る為に要求される抗炎症性化合物の量は高い。すなわち、もしがん治療又は腫瘍治療において抗炎症性化合物を使用することになったならば、高い用量(典型的にはそのような化合物についての通常の用量を1以上の桁で超える、すなわち例えば抗炎症効果の為に要求される量よりも10〜100倍高い)を、有意な腫瘍増殖抑制を得る為に長期間、必要とするだろう。これはあらゆる種類の副作用を増強し及び毒性をたいがい生じさせるであろう。より特には、そのような高い用量は、相当な副作用をもたらし、及び、体内の他の場所での損傷(inquires)及び感染に応答した炎症プロセスの重要な機能を排除しうる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、非ステロイド抗炎症性化合物の抗炎症効果が、抗がん作用をもたらすことを発見した。しかしながら、この発見を利用する為に、該非ステロイド抗炎症化合物が、腫瘍組織に選択的に輸送されて局所的な薬物濃度を増加し及びがんの進行に関与する細胞タイプに対して薬理学的効果を向ける必要がある。
【0020】
特定の種類のキャリア中にカプセル化された非ステロイド性抗炎症剤を含む、永時間循環するコロイド状キャリア組成物が、がんの処置において有用な医薬を製造する為に用いられうることが今発見された。
【0021】
従って、本発明は、がんの処置において有用な医薬の製造の為に、永時間循環するコロイド状キャリア組成物、例えばリポソーム、ナノカプセル及び高分子ミセルなど、であって、天然又は合成の非ステロイド性抗炎症性化合物を含む上記組成物を使用する方法に関する。本発明に従う組成物は、腫瘍増殖、特には固形腫瘍増殖を抑制すると発見され、それ故に、この効果の故にがんの処置において用いられうる。より特には、本発明は、腫瘍組織へ、活性成分、すなわち天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤を向ける方法に関する。さらにより特には、本発明は、がん、及び好ましくは固形(非血液学的)悪性腫瘍及び転移(固形原発性及び二次性腫瘍)の処置においてそのような組成物を使用する方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
永時間循環するキャリアは非常に有利な薬物動態学、有利な組織分布挙動及び効率的な半減期を有する。加えて、該天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤と該キャリア系との間の安定な会合が提案される一方で、該薬物による装填は効率的である。さらに、活性が要求される部位での良い生物学的利用可能性が観察される。何らの理論にとらわれることを望まないが、該キャリアが該腫瘍におけるマクロファージ、腫瘍細胞及び/又は内皮細胞との相互作用を有することが仮説される。これは、該細胞タイプが該カプセル化された薬物分子を開放することができて、それ自身又は他の細胞タイプとの腫瘍内及び腫瘍周辺での相互作用を許すことを意味するだろう。コロイド状薬物キャリアは、細胞により並びに/又は細胞内及び細胞外酵素により有意な程度で処理されて該カプセル化された化合物を開放するので、該好ましい天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤が、治療的に活性なままである為及びそれらの活性部位に達する為に、これらの処理段階に耐えることができるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】B16メラノーマを有するマウスにおける腫瘍増殖に対する遊離又はリポソームのプラバスタチンの効果を示す図である。
【図2】B16メラノーマを有するマウスにおける腫瘍増殖に対する遊離又はリポソームのコーヒー酸の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この理由により、好ましい実施態様において、本発明において有用な非ステロイド抗炎症性化合物は、本明細書上記で記載された分類(a)〜(j)及び(p)の化合物、及びより好ましくは分類(a)〜(i)及び(p)の化合物である。最も好ましい実施態様において、該非ステロイド抗炎症性化合物は、ポリ(フェノール)及びスタチンからなる群から選ばれる。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、該抗炎症性化合物は、アトルバスタチン、セルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン及びそれらの誘導体、例えば塩、ソルベート、エステルなど、からなる群から選ばれる。
【0026】
本実施例において、コーヒー酸及びプラバスタチンが、該非ステロイド抗炎症性化合物として代表的なものであるが、限定するものでない。好ましくは、本発明の組成物において用いられる該永時間循環するキャリアは、永時間循環するリポソームである。そのような種類の永時間循環するキャリアにより、腫瘍増殖が、10mgプラバスタチン/体重kgだけの用量で又は100mgコーヒー酸/体重kgの用量で、60%超で減じられうることが分かった。
【0027】
がんの処置及び特には固形(非血液学的)悪性腫瘍及び転移(固形原発性及び二次性腫瘍)の処置において有用な医薬の製造の為に、天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤及びキャリア形成性物質並びに任意的に追加の有用な活性成分を含む、永時間循環するコロイド状キャリア組成物の使用方法は、該天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤の効果を予測可能なものとし、その全用量を減らし、腫瘍特異性を増し及び、それ故に、副作用の可能性を減らす。これは、該遊離薬物についての抗がん効果を観察する為に必要とされる用量は比較的高い(これは副作用を増強させるであろうし及び新たな毒性が発生するのを引き起こすことができる)ので重要である。
【0028】
本発明は、抗炎症性化合物の全潜在能力を予測どおりに利用する為の手段を提供することの局面に焦点をあてる。それ故に、本発明の目的は、がんの処置、遅延又は抑制の為の又はがんの処置、遅延又は抑制において腫瘍組織に抗炎症性化合物を向ける方法を発見することである。
【0029】
本発明に従い、局所的薬物濃度が増加されるように、非ステロイド抗炎症性化合物を腫瘍組織へ選択的に輸送することにより、がんの進行に関与する細胞タイプに対する薬理学的効果が達成されることが分かった。
【0030】
永時間循環するキャリア及び特には永時間循環するリポソーム、ナノカプセル及び重合体ミセルは、スタチン/天然又は合成の非ステロイド系抗炎症性薬物を特定の部位に、すなわち腫瘍に、効率的に輸送することができる。特に、本発明は、天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤を比較的低い用量で投与するのに適する、がんの処置の為に又はがんの処置における医薬を提供する。
【0031】
有効である為に、該抗炎症性化合物は、コロイド状キャリア中にカプセル化されている。そのようなキャリアは、約10〜400nmのサイズ範囲にある選ばれた平均粒子直径(好ましくは直径40〜200nm)を有すべきであり、該腫瘍部位での該カプセル化された化合物の増加した局在及び改善された保持を与える。該キャリア系は、安定なカプセル化を提供するべきであり、そして、減成からの保護を提供することができる。そのようなコロイド状キャリア系の例は、永時間循環するリポソーム、リポプロテイン、脂質ミセル、重合体ミセル、ナノ粒子及びナノカプセルであり、このキャリアは永時間循環するものであるべきである。永時間循環するキャリアは好ましくは、少なくとも3時間、及び特には少なくとも6時間の循環半減期を有する。該循環半減期は、当技術分野の当業者が理解するとおり、対数でのキャリア(例えばリポソーム)のクリアランスプロファイルの第2の直線位相が、その当初濃度(これはt=0での外挿された血しょう濃度である)の50%に達する時間として定義される。
【0032】
適当な永時間循環するコロイド状キャリアは非常に有利な薬物動態学、有利な組織分布挙動及び効率的な半減期を有する。加えて、抗炎症性化合物と該キャリア系との間の安定な会合が観察される一方で、抗炎症性化合物による装填は効率的である。さらに、活性が要求される部位での良い生物学的利用可能性が観察される。
【0033】
何らの理論にとらわれることを望まないが、本発明において用いられるキャリアは、健康な内皮と比較して、腫瘍脈管構造の増大した浸透性の結果として、腫瘍などの悪性腫瘍組織の部位で蓄積し、これらの部位での該スタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤の改善された局在及び改善された保持を許すことが考えられる。該コロイド状キャリアが該腫瘍においてマクロファージとの相互作用を有することが仮説される。これは、該細胞タイプが、腫瘍治療において下方制御されることができること、又は、それが該カプセル化された抗炎症性化合物を解放して該腫瘍内の又は周辺の他の細胞タイプとの相互作用を許すことを意味するだろう。
【0034】
好ましい実施態様において、該永時間循環するキャリアは、リポソーム、ナノカプセル又は重合体ミセルである。他の適当な永時間循環するキャリアは、リポタンパク質、及び特には高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質に基づき、並びにリポタンパク質模倣物又はネオリポタンパク質(neo-lipoprotein)に基づきうる。より好ましい実施態様において、該永時間循環するコロイド状キャリアは、生理学的条件で中性又は陰性の電荷を有するリポソーム、ナノカプセル又は重合体ミセルである。
【0035】
他の適当な永時間循環するキャリアは、リポタンパク質、及び特には高密度リポタンパク質及び低密度リポタンパク質に基づき、並びに、リポタンパク質模倣物又はネオリポタンパク質に基づきうる。永時間循環するミクロベシクル及び特には永時間循環するリポソーム、ナノカプセル及び重合体ミセルは、抗炎症性化合物薬物を特定の部位、すなわち腫瘍に効率的に輸送することができることが見出された。
【0036】
本発明に従い用いられる該永時間循環するコロイド状キャリアは典型的に、He/Neレーザーを備えられたMalvern 4700(商標)システムを用いる動的光散乱により測定されたときに、500nm未満、好ましくは450nm未満、より好ましくは300nm未満の平均粒子直径、及び好ましくは40〜200nmの平均粒子直径を有する。さらに、実施例(下記参照)において見られるとおり、本発明のキャリアは、かなり小さい多分散性を有し、これはその粒子サイズ分布が狭いことを意味する。好ましくは、動的光散乱装置に属するソフトウェアにより計算される多分散度が、0.25未満、及びより好ましくは0.2未満である。
【0037】
最も好ましい実施態様において、該コロイド状キャリアは、非荷電のベシクル形成性脂質、ポリエチレングリコールで誘導体化された0〜20モル%の両親媒性のベシクル形成性脂質、0〜50モル%のステロール及び0〜10モル%の負に荷電したベシクル形成性脂質を含む、永時間循環するリポソームにより形成され、このリポソームは約40〜200nmのサイズ範囲の選ばれた平均粒子直径を有する。
【0038】
そのような永時間循環するリポソームはすでに当技術分野で知られているが、がんの処置の為の天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤との組合せでは知られていない。より特には、これらの既知のリポソーム系は、国際公開第02/45688号パンフレットにおいて炎症性疾患の部位特異的処置において有用であると記載されている。本発明において用いられるべき適当な組成物の調製に関して、該国際公開第02/45688号パンフレットにおいて記載された調製方法が、引用により本明細書に組み込まれる。本文献国際公開第02/45688号パンフレットにおいて、欧州特許出願公開第0 662 820号明細書において記載されたリポソーム系が、「永時間循環する」ものになるために適合させられる。
【0039】
欧州特許出願公開第1 044 679号明細書は、リポソーム中に含まれる薬物を有する前記リポソームに関し、これは血中において確保された安定性を有するといわれている。加えて、これらのリポソームは、プロテオグリカンに富む領域への能動的ターゲティング(active targeting)特性を有する。これらの領域は、いくつかの病気によりプロテオグリカンの過剰産生が発生する(該プロテオグリカンは細胞表面を陰イオン性に維持する)ので形成される。リポソームをこれらの陰イオン性表面に向ける為に、該リポソームは、本質的に陽イオン性である必要がある。なおそのうえに、該リポソームは、生理学的pH範囲内で正の電荷を採る塩基性化合物の存在を要求する。
【0040】
本発明のリポソームは、欧州特許出願公開第1 044 679号明細書に記載された能動的ターゲティング特性を要求しない。すなわち、抗炎症性化合物を含む該コロイド状キャリアを該腫瘍部位に選択的にもたらす為の特異的なホーミング(homing)基を要求しない。しかしながら、さらにより高い程度に該選択性を増加する為に、該腫瘍細胞との相互作用可能性又は腫瘍内又は周辺の該細胞との相互作用可能性を増すように、該キャリア分子の外側表面に腫瘍特異的抗体又は受容体リガンド又は食物化合物を取り付け又は組み込むことが可能である。本発明の中性又は任意的に負に荷電したリポソームの「ターゲティング」は、腫瘍脈管形成における上記で同定された増加した透過性により支配される。すなわち、本発明は、大部分において、能動的ターゲティングよりもむしろ、受動的蓄積に基づく。
【0041】
該コロイド状キャリア、例えば本発明において有用な該リポソームなどは、正の電荷を有するべきでなく且つそれ故に生理学的pHで正の電荷を該キャリアに与える成分を含むべきでない;すなわち、6〜8のpHである生理学的pHで、本発明において用いられるべき該キャリアの全体の電荷が中性であるか又は負に荷電されるべきである。好ましいリポソームは、非荷電のベシクル形成性脂質に基づく。中性又は非荷電のベシクル形成性脂質は適当な永い循環時間をもたらす。
【0042】
典型的には、5〜10モル%の負に荷電した脂質が存在しうる。本発明において用いられる該ミクロベシクルを調製する為に用いられるべき好ましい脂質は、ステロール、例えばコレステロール及び/又はエルゴステロール並びにそれらの誘導体などとの組合せにおける、飽和したリン脂質及びスフィンゴ脂質を含む。これらの基本的成分の、例えばスフィンゴミエリンなどによる(完全な又は部分的な)置換が可能であるとみえた。
【0043】
血液循環系における適当な安定性を確保する為に、10〜50モル%のステロールが、該ミクロベシクル材料中に存在すべきである。適当なリポソーム構成成分は、上記で特定された国際公開第02/45688号パンフレット及び欧州特許出願公開第0 662 820号明細書に記載される。より好ましくは、該リポソームは、少なくとも1種類のポリマー脂質複合物、例えばポリアルキレングリコールで、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質などを含む。適当なポリマー−脂質−複合物は、200〜30,000ダルトンの分子量を有する。
【0044】
これらのポリマー−脂質−複合物又は水溶性ポリマーにおいて用いられるべき他の適当な候補は、例えばポリ((誘導体化された)炭水化物)、水溶性ビニルポリマー(例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリルアミド及びポリ(アクリロイルモルホリン)及びポリ(メチル/エチルオキサゾン)などである。これらのポリマーは、慣用のアンカリング分子(anchoring molecule)を介して該脂質に結合される。適当には、ポリマー脂質複合物の濃度は、該ベシクル形成性脂質の合計モル比に基づき、0〜20モル%であり、好ましくは1〜10モル%である。これらのポリマー−脂質−複合物の存在は、該循環時間に対する有利な効果を有する。しかしながら、特定の脂質組成物を注意深く選択することにより、永い循環時間に適当な物理的仕様(physical specification)が、ポリマー−脂質−複合物を用いること無く得られうる。例えば、ジステアリルホスファチジルコリン及びコレステロール及び/又はスフィンゴ脂質、例えばスフィンゴミエリンなどの50〜100nmリポソームである。該リポソームは、1以上の種類の荷電したベシクル形成性脂質、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、(ジ)ステアリルアミン、ホスファチジルセリン、ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン、ホスファチジン酸及びコレステロールヘミスクシネートなど、を追加的に含みうる。典型的には、荷電したベシクル形成性脂質の濃度は、該ベシクル形成性脂質のモル比に基づき、0〜15モル%、好ましくは0〜10モル%である。
【0045】
本発明において用いられるべき重合体ミセルは、リポソームの調製の為の上記の方法に従い適合させられた欧州特許出願公開第1 072 617号明細書において記載された方法に従い作成されうる。
【0046】
該水性相中に該抗炎症性化合物を溶解することによる、該活性成分の該リポソームへの受動的装填は、できる限り高いカプセル化に至る為に十分であるが、他の方法も用いられうる。
【0047】
本明細書において荷電した/荷電していない/両親媒性などについて言及される場合に、この言及は生理学的条件に関する。
【0048】
述べたとおり、本発明は、本明細書上記で定義されたとおりの、コロイド状キャリア中にカプセル化された抗炎症性化合物を含む医薬組成物にも関する。すなわち、本発明は、抗炎症性化合物を比較的低い用量で投与するのに適する、がんの処置の為の又はがんの処置における医薬を提供する。適当には、該医薬は、非経口的投与又は局所的投与の為の医薬である。しかしながら、経口経路又は肺の経路を通じた投与も可能である。
【0049】
本発明に従い有利に用いられうる水溶性スタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤は、スタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤及びこれらの特徴を本来的に有する化合物から調製されるアルカリ金属塩である。もし、該スタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤分子中の1より多い基が塩形成の為に利用可能であれば、モノ−並びにジ−塩も有用でありうる。アルカリ金属塩として、カリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、亜鉛及びアンモニウムの塩が好ましい。また、他の、正に又は負に荷電した、スタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤の誘導体も用いられうる。
【0050】
また、1以上の遊離のヒドロキシル基を有するスタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド系抗炎症剤から調製される親油性誘導体及び親油性脂肪族又は芳香族炭素酸も有利に用いられうる。これらの化合物は、1又は2のアルキル炭素酸(該アルキル部分が10超のC原子を含むところのもの、例えばパルミチル酸及びステアリル酸)によりエステル化された場合に、好ましい。
【0051】
本発明に従う該脂質−ポリマー−複合物及びその組成物は、先行文献において知られるとおりの方法により調製されうる。該天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤を水性相中に溶解することによる、該リポソームへの該活性成分の受動的装填は、できる限り高いカプセル化に至る為に十分であるが、他の方法もまた用いられうる。該リポソームの形成において用いられる該脂質成分は、種々のベシクル形成性脂質、例えばリン脂質、スフィンゴ脂質及びステロールなどから選ばれうる。これらの基本的成分の例えばスフィンゴミエリン及びエルゴステロールなどによる置換(完全又は部分的)は、可能であるとみえた。該キャリア中の、好ましくは水溶性の、該天然又は合成の非ステロイド性抗炎症剤の有効なカプセル化(それにより該キャリアからの該薬物の漏れを回避する)の為に、特には飽和した剛直にするアシル鎖を有するリン脂質成分が、有用であるとみえた。本発明に従う永時間循環するリポソームを含有する該水溶性スタチンの1回の単回注入後に観察された有益な効果が非常に有利である。
【0052】
本発明に従い、腫瘍増殖における有効な抑制が、抗腫瘍効果を達成するために通常報告されるよりも1桁超低い比較的低い用量による特定の実施態様で観察された。一般に、例えば、1週間当たり0.5〜45mg/体重kgの量について、効果が達成される。
【0053】
本発明に従い用いられる組成物は、1以上の追加の成分を含みうる。
【0054】
本発明に従い用いられるべき組成物は適当には、細胞増殖抑制剤及び細胞毒性剤からなる群から選ばれる少なくとも1の化合物、好ましくはドキソルビシン及びタキソールからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含みうる。
【0055】
好ましい成分は、グルココルチコイド及びコルチコステロイドのような異なる作用機構を有するがん治療剤である。
【0056】
さらに他の局面において、本発明は医薬組成物に向けられ、該組成物は永時間循環するキャリアと、そこに含まれるスタチン又は天然若しくは合成の非ステロイド性抗炎症剤と、好ましくはアントラサイクリン(誘導体)、トポイソメラーゼIインヒビター及びビンカ・アルカロイドからなる群から選ばれる少なくとも1つの細胞増殖抑制及び/又は細胞毒性剤とを含む。
【0057】
さらに、免疫調節剤及び免疫抑制剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む組成物が適当に使用されうる。そのような成分の例は、メトトレキセート、シクロホスファミド、シクロスポリン、ムラミルペプチド、サイトカイン及びペニシラミンである。
【0058】
本発明は、以下の実施例を参照しながら、より詳細にこれから説明されるであろう。該実施例において、図面が言及されるであろう。ここで、
図1は、B16メラノーマを有するマウスにおける腫瘍増殖に対する遊離の又はリポソーム状プラバスタチンの効果を示す;マウスは、腫瘍が触知できる(palpable)ようになった日に、プラバスタチンの示された用量及び配合による1の単回注入を受けた;1週間後の腫瘍体積が報告される;平均±標準偏差 N=5 マウス/実験群:及び
図2は、B16メラノーマを有するマウスにおける腫瘍増殖に対する遊離の又はリポソーム状コーヒー酸の効果を示す;マウスは、腫瘍が触知できるようになった日に、コーヒー酸の示された用量及び配合による1の単回注入を受けた;1週間後の腫瘍体積が報告される;平均±標準偏差 N=5 マウス/実験群。
【0059】
言及されたいずれの百分率も、他に示されない限り、該最終組成物に対して表された重量百分率である。該図の統計的分析において、データは、GraphPadInStat version 3.05 for Windows(登録商標)(GraphPad Software(サンディエゴ、米国))を用いたダネット事後検定による一元配置分散分析により分析された。バートレット検定に従い適切な場合には、データは、群のSD間の有意差について補正する為に、対数的に変換された。
【実施例1】
【0060】
実施例1−リポソーム調製
【0061】
33.8mgのエッグホスファチジルコリン(EPC)(Lipoid Ludwigshafen)、9.67mgのコレステロール(Sigma Aldrich)及び30.0mgのポリ−[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]−ステアリルアミン(PHEG−ステアリルアミン)(合成された)が、秤量されそして50ml丸底フラスコに移された。500kBqのトリチウム標識化コレステリルオレイルエーテルが脂質マーカーとして添加された。該脂質及び該標識は、約10mlのエタノールに溶解された。その後、該混合物が、Rotavapor中で、1時間、減圧下で40℃で、乾燥まで蒸発され、1時間の窒素ガスによるフラッシングが続いた。ホスフェート緩衝生理食塩水(PBS)が、該乾燥脂質膜に添加され、そして、該混合物が、該脂質膜の完全な水和を可能とするために、ガラスビーズの存在下において1時間振とうされた。該リポソームの懸濁物が押出機(Avestin、最大体積15ml)に移され、そして、圧力下で、窒素ガスを用いて、2つのポリカーボネートフィルター(一が他の上に置かれ、該2つのフィルターは夫々200及び100nmの孔サイズを有する)を通して6回、及び夫々100nm及び50nmの孔サイズを有するフィルターを通して18回、押出された。その後、該リポソーム懸濁物が、透析区画(Slide−A−Lyzer;10,000MWCO)中で、2回、24時間、1リットルの滅菌PBSに対して、透析された。
【0062】
該リポソームの平均粒子サイズは、光散乱(Malvern Zeta−sizer)により測定され、そして、93.6±0.9nmであると分かり、多分散度指標は0.099±0.02であると分かった。該リポソームの調製の間の該脂質損失は、該調製物の最終放射性活性と該押出手順の前の該活性とを比較することにより測定され、25%であった。リポソームの該懸濁物は、4℃で窒素雰囲気下で貯蔵された。
【実施例2】
【0063】
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)(Lipoid GmbH、ルートヴィヒスハーベン、ドイツ)、コレステロール(Chol)(Sigma、セントルイス、米国)、及びポリ(エチレン)グリコール2000−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)(Lipoid GmbH)を、1.85:1.0:0.15のモル比で、丸底フラスコ中のクロロホルム:メタノール(2:1 体積:体積)中に溶解することにより、永時間循環するリポソームが調製された。典型的には、1000〜2000μmol合計脂質のバッチサイズが用いられた。コーヒー酸が、該脂質と一緒に溶解された。脂質膜が、ロータリーエバポレーターで減圧下で作成され、そして、窒素の流の下で乾燥された。
【0064】
同様に、リポソームが、10mg/mlプラバスタチン(Sigma−Aldrich)の水溶液の添加により形成された。該水溶性スタチンは、該リポソーム中の安定なカプセル化を確保する為に用いられた。リポソームの111In−オキシン(Mallinckrodt Medical、ペッテン、オランダ)による標識化の場合、BoermanらによりJ. Nucl. Med. 36(9)(1995), 1639-1644において記載された手順に従い、リポソームは、5mMのDTPA/10mMのHepes/135mMのNaClバッファー(pH7)の、該脂質膜への添加により形成された。リポソームサイズは、50nmの最終孔サイズを有するポリカーボネート膜(Nuclepore、プレザントン、米国)を通す複数押出段階により減少された。該孔は、短時間循環するリポソームの調製において400nmであった。カプセル化されていない物質は、繰り返しのバッファー交換を伴う、10mMのHepes/135mMのNaClバッファー(pH7)に対する、4℃での透析により除去された。
【0065】
該永時間循環するリポソームの平均粒子サイズは、約0.1の多分散度値を有し、0.1μmである動的光散乱により決定された。該多分散度値は、0〜1で変動する。1の値は、粒子サイズにおける大きな変動を示し、一方で0の値は完全な単分散系を示す。すなわち、本調製物は粒子サイズにおける限定された変動を示した。該リポソーム分散物中の脂質の量は、Rouserに従う測色的ホスフェート測定(Lipids 5 (1970), 494-496)により測定された。
【0066】
該リポソーム中のプラバスタチンの濃度は、238nmでの分光光度吸収により決定され;試料は、エタノール中で、Perkin Elmer UV−VIS分光光度計で、対照としてエタノール中に溶解された脂質を用いて、測定された。
【0067】
実施例3−リポソームの組織分布
【0068】
B16マウスメラノーマ又はC26大腸癌細胞が、37℃で、5%CO含有加湿雰囲気中で、2mMのL−グルタミン、100IU/mlのペニシリン、100zg/mlのストレプトマイシン及び0.25g/mlのアンホテリシンB(Gibco)を補われた10%(v/v)ウシ胎仔血清を含有するDMEM培地(Gibco、ブレダ、オランダ)中で培養された。
【0069】
雄のC57B1/6マウス又は雄のBalb/cマウス(生後6〜8週)が、Charles Riverから入手され、標準的なハウジング中で標準的な齧歯動物の食事及び随意に入手可能な水により、及び12時間の明/暗サイクルにより飼われた。実験は、国家規制に従い実施され、及び、地方動物実験倫理委員会により承認された。腫瘍誘発のために、1×10B16メラノーマ細胞が、同系のC57BI/6マウスの脇腹に皮下に接種され、一方で1×10C26腫瘍細胞がBalb/cマウスに接種された。
【0070】
腫瘍を有するマウスにおける、実施例1に従う111In標識化PEG−リポソームの組織分布が以下のとおりの測定された。約1cmの腫瘍体積で、マウスが静脈に、111In標識化リポソームの25μmol脂質/kg(30×10cpm/マウスに相当する)により注入された。注入後6時間で及び24時間で、動物は殺され、血液試料が採られ、そして腫瘍、肺、肝臓、脾臓及び腎臓が解剖され、秤量され、そして放射活性が計数された。その結果が表1に示される。
【0071】
表1.皮下注射C26大腸癌又は皮下注射B16F10メラノーマを夫々有するBalb/c及びC57BI/6マウスにおける、静脈内投与後6時間及び24時間での永時間循環するリポソームの組織分布。腫瘍は約1gを秤量された。値は、注入された用量/組織gの%を表す。

平均±標準偏差 N=5動物/実験群。
【0072】
15%の該注入された用量の放射活性的に標識されたリポソームは、注入後24時間で、両方のマウスモデルにおいてその循環中になお存在した。
【0073】
約5〜10%の該注入された用量が、両方のモデルにおける腫瘍組織から回収されることができた。ほとんど同じ量が、肝臓に存在した。比較的低い量のリポソームが、脾臓、腎臓及び肺から回収された。
【実施例3】
【0074】
実施例3−腫瘍増殖抑制
【0075】
B16F10メラノーマを有するマウスが、該腫瘍が触知できるようになった時に、遊離のプラバスタチン又はリポソーム状のプラバスタチンの示された用量の単回静脈注入を受けた。処置後7日で、腫瘍サイズが測定され、そして、腫瘍体積が等式V=0.52×a×bに従い計算された。ここで、aは最小の及びbは最大の見かけ上の直径である。
【0076】
B16F10メラノーマを有するマウスが、該腫瘍が触知できるようになった時に、遊離のコーヒー酸又はリポソーム状のコーヒー酸の示された用量の単回静脈注入を受けた。処置後7日で、腫瘍サイズが測定され、そして、腫瘍体積が等式V=0.52×a×bに従い計算された。ここで、aは最小の及びbは最大の見かけ上の直径である。
【0077】
腫瘍増殖に対する遊離のプラバスタチン又はリポソーム状のプラバスタチンの種々の用量の効果を比較するために、B16腫瘍を有するマウスが、該腫瘍が触知できるようになった時に、いずれかの配合物の単回注入を受けた。注入後1週間で、腫瘍体積は、リポソーム状のプラバスタチンによって、より小さかった。図1における結果を参照されたい。ここで曲線Cは、処置されていない対照である。
【0078】
コーヒー酸についての結果が図2に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置において有用な医薬の製造の為に、非ステロイド性抗炎症性化合物を含む、永時間循環するコロイド状キャリア組成物、例えばリポソーム、ナノカプセル及び重合体ミセルなど、を使用する方法。
【請求項2】
該医薬が、非リンパ系がんの処置において、及び特には固形の原発性及び/又は二次性腫瘍の処置において有用である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該抗炎症性化合物が、
(a)サリチレート(アスピリン、メチルサリチレート、ジフルニサル、ベノリレート、ファイスラミン、アモキシプリンなど);
(b)アリールアルカン酸(ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、2−アリールプロピオン酸など);
(c)プロフェン(カプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸など);
(d)N−アリールアントラニル酸(フェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸など);
(e)ピラゾリジン誘導体(フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾンなど);
(f)オキシカム(ピロキシカム、メロキシカムなど);
(g)コキシブ(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブなど);スルホンアニリド(ニメスリドなど);
(h)リポキシゲナーゼインヒビター(バイカレイン、コーヒー酸、エスクレチン、ゴシポール、ノルジヒドログアヤレチック酸、フルルビプロフェン、ノルジヒドログアヤレチック酸、エイコサトリイン酸、5−ヒドロキシエイコサテトラエノイックラクトン、5(S)−HETE、エイコサテトライン酸など);
(i)マクロライド誘導体(9−(S)−ジヒドロエリスロマイシン誘導体など);
(o)スタチン
からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該抗炎症性化合物がポリ(フェノール)及びスタチンからなる群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該コロイド状キャリア組成物がリポソーム、ナノカプセル又は重合体ミセルであり、該コロイド状キャリア組成物が生理学的条件下で中性又は負の電荷を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該コロイド状キャリア組成物が、非荷電ベシクル形成性脂質、ポリエチレングリコールで誘導体化された0〜20モル%の両親媒性ベシクル形成性脂質、0〜50モル%のステロール、及び0〜10モル%の負に荷電したベシクル形成性脂質を含むリポソームであって、該リポソームが約40〜200nmのサイズ範囲の選ばれた平均粒子直径を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該コロイド状キャリア組成物が、少なくとも6時間の循環半減期を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該医薬が、非経口的又は局所的な投与の為の医薬である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において定義された、コロイド状キャリア中にカプセル化された、非ステロイド性抗炎症性化合物を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−512383(P2010−512383A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541242(P2009−541242)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/NL2007/000308
【国際公開番号】WO2008/072952
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509163824)ユニベルシテイト ユトレヒト ホールディング ビー.ブイ. (3)
【Fターム(参考)】