説明

き裂進展評価装置及びき裂進展評価方法

【課題】連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価するき裂進展評価装置を提供する。
【解決手段】要素損傷判断部13が、応力及びひずみの解析結果に基づいて、連続体の複数の有限要素について、コフィンマンソン則を用いて損傷値の累積値を算出し、損傷値の累積値が閾値以上であるか否かを判断する。算出部15が、前記判断結果に基づいて、負荷のサイクル数と連続体に生じるき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める。コフィンマンソン則変更部17が、第1の対応情報と、連続体に加えられる負荷のサイクル数の実測値とそのときの連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、コフィンマンソン則を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、き裂進展評価装置及びき裂進展評価方法に関し、特に、有限要素法を用いて連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価するき裂進展評価装置及びき裂進展評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ材料や各種接合用樹脂材料(接着剤)においては、その接合部の安定した接合信頼性が重要である。具体的には、実使用環境において繰り返し印加される温度サイクルや振動等の機械的サイクルに対して、接合部が十分な耐久性能を有することが必要とされる。接合部の設計段階においては、有限要素法等を利用したシミュレーションを行って応力やひずみを算出し、算出された応力やひずみの値に基づいて、寿命等を間接的に評価する手法がある。この手法は、従来から多くの部品や装置開発評価で用いられている。特に、温度サイクル疲労のような繰り返し疲労寿命サイクル数の予測には、有限要素法等を利用したシミュレーション結果から得られたひずみの値に基づいて、コフィンマンソン則により繰り返し疲労寿命サイクル数の予測を行う方法が用いられている。
【0003】
図25は、はんだ接合部の解析モデルを示す。このはんだ接合部102の解析モデルは、有限要素法等を利用したシミュレーションのための解析モデルである。この解析モデルを用いて、太線の円で囲った部分の有限要素についてひずみ振幅の値Δεinを求め、以下の式1に示すコフィンマンソン則
f =1/2・(Δεin/ε0 -n ・・・(式1)
によって繰り返し疲労寿命サイクル数Nf を算出する方法が従来から用いられている。式1において、n及びε0 は、はんだ接合部102の材料と形状とによって決まるパラメータである。
【0004】
なお、配線用の基板を有し当該基板の対向する両面にはんだ接合部を介して電子部品がそれぞれ取り付けて成る電子機器について、はんだ接合部に生じる歪量を電子部品間の位置関係に対応させて表示する応答曲線に、電子部品間の任意の位置関係情報を入力して、はんだ接合部に生じる歪量を算出するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3900042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有限要素法とコフィンマンソン則とにより繰り返し疲労寿命サイクル数Nf を算出する従来の技術(以下、単に従来技術と言う)は、初期形状を持つはんだ接合部に生じる応力及びひずみを用いて寿命を評価する技術である。このため、はんだ接合部にき裂が発生する際の繰り返し疲労寿命サイクル数の予測を行うことができる。
【0006】
しかし、従来技術においては、はんだ接合部の解析モデルの形状として初期形状(製造時の形状)を用いるため、はんだ接合部においてき裂が進展した場合の応力状態を想定することが困難である。また、温度サイクルや機械的サイクル試験は、数100サイクル〜数万サイクルを繰り返す方法であるが、現状のコンピュータでは、1サイクルあたりの計算に数時間〜数日を要する。従って、数100サイクルの繰り返しサイクルをコンピュータ上で実施するのは、計算時間がかかり過ぎて現実的ではない。このため、従来技術によっては、はんだ接合部にき裂が進展して、最終的に破断するまでの完全破断寿命を予測することや、き裂の進展過程を予測することは事実上困難である。
【0007】
また、従来技術においては、はんだ接合部等の連続体に生じるき裂の進展過程をシミュレーションする際に、シミュレーション結果が実測結果と異なる場合、当該シミュレーション結果を実測結果に基づいて補正することは行われていない。
【0008】
更に、従来技術においては、連続体に発生するき裂の進展過程のシミュレーション結果に基づいて当該連続体に生ずるき裂の進展率を求める場合、当該き裂の進展率を自動で求めることはできない。従って、表示画面上に当該き裂を示すデータ(例えば、連続体を分割した有限要素の累積損傷値のデータ)を一旦表示し、表示画面上でき裂の長さを実測する必要がある。このため、従来技術によっては、連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価することはできない。
【0009】
本発明は、連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価するき裂進展評価装置の提供を目的とする。
【0010】
また、本発明は、連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価するき裂進展評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本き裂進展評価装置は、連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価装置であって、作成部と、解析部と、判断部と、算出部と、コフィンマンソン則変更部とを備える。作成部は、連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成する。解析部は、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する。判断部は、前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断する。算出部は、前記判断部による判断結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に生じるき裂の進展状態を表示する表示部と、前記判断部による判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める。コフィンマンソン則変更部は、前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する。
【0012】
好ましくは、本き裂進展評価装置が、更に、前記累積値が前記閾値以上である場合に、当該損傷値の累積値が前記閾値以上である有限要素を削除するか、又は当該有限要素の剛性を変更する変更部を備え、前記解析部が、前記負荷のサイクルの現サイクルの終了時において前記変更部によって削除又は剛性が変更された前記連続体の複数の有限要素の各々について、前記現サイクルの次サイクルの負荷により生じる応力及びひずみを解析する。
【0013】
好ましくは、本き裂進展評価装置において、前記算出部が、予め記憶手段に記憶された、前記連続体に生じるき裂の進展経路上に配置された有限要素の節点への外挿情報を用いて、前記累積値が前記閾値以上である前記き裂の進展経路の開始位置に配置された節点をき裂が開始する節点とし、当該き裂が開始する節点から前記累積値が前記閾値以上である最後の節点までの経路長を前記連続体に生じるき裂の長さとして算出し、前記き裂の進展経路の経路全長に対する前記算出されたき裂の長さの割合を前記連続体に生じるき裂の進展率として算出し、前記コフィンマンソン則変更部が、前記算出部によって算出されたき裂の進展率、当該き裂の進展率に対応する負荷のサイクル数が、それぞれ、前記き裂の進展率の実測値、当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を求め、前記コフィンマンソン則に基づいて、前記求まった負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出し、当該算出された非線形ひずみ振幅の値と前記求まった負荷のサイクル数の実測値とに基づいて、新たなコフィンマンソン則を求める。
【0014】
好ましくは、本き裂進展評価装置が、更に、前記判断部による判断結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に生じるき裂の進展状態を表示する表示部を備える。
【0015】
また、本き裂進展評価方法は、連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価方法であって、連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成し、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析し、前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断し、前記判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求め、前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する。
【発明の効果】
【0016】
本き裂進展評価装置及び本き裂進展評価方法は、連続体の解析モデルを用いた応力ひずみ解析の結果に基づいて、連続体の複数の有限要素の各々について、コフィンマンソン則を用いて損傷値の累積値を算出し、当該損傷値の累積値が閾値以上であるか否かを判断し、これに基づいて求めた負荷のサイクル数と連続体に生じるき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報と、実測値に基づいて求めた第2の対応情報とに基づいて、コフィンマンソン則を変更する。即ち、連続体に生じるき裂の進展過程のシミュレーションの結果(サイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報)と、連続体に生じるき裂の進展過程の実測結果(サイクル数の実測値とき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報)とに基づいて、シミュレーションにおいて用いたコフィンマンソン則が変更される。これにより、連続体に生じるき裂の進展過程の実測結果に基づいて変更されたコフィンマンソン則を用いたシミュレーションを実行することができ、き裂の進展過程について精度の良いシミュレーション結果を得ることができる。この結果、連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価することができる。
【0017】
また、本き裂進展評価装置は、連続体の有限要素の損傷値の累積値が閾値以上である場合に、当該有限要素を削除するか、又は当該有限要素の剛性を変更した上で、応力及びひずみを解析することを繰り返す。有限要素を削除する場合、応力ひずみ解析の解析対象である有限要素の数を削減して、連続体に生じるき裂の進展の評価処理を高速化することができる。また、有限要素の剛性を変更する場合、解析モデルを再度作成することなく、連続体に生じるき裂の進展の状況を評価することができる。
【0018】
また、本き裂進展評価装置は、算出された連続体に生じるき裂の進展率等が当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値等に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を求め、コフィンマンソン則に基づいて、当該求まった負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出し、当該算出された非線形ひずみ振幅の値と前記求まった負荷のサイクル数の実測値とに基づいて、新たなコフィンマンソン則を求める。これにより、簡易に連続体に生じるき裂の進展率を算出することができ、また、例えば、連続体の設計において連続体の形状を適宜変更することにより、安定的でばらつきが少なく、かつ、長寿命な連続体の設計をすることができる。
【0019】
また、本き裂進展評価装置は、有限要素の損傷値の累積値と閾値との比較結果に基づいて、解析モデルを用いて、当該連続体に生じるき裂の進展状態を表示する。これにより、連続体に生じるき裂の進展状態を精度良く表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本実施形態のき裂進展評価装置の構成の一例を示す図である。
【0021】
き裂進展評価装置1は、連続体に生じるき裂の進展を評価するコンピュータであり、解析モデル作成部11、応力ひずみ解析部12、要素損傷判断部13、変更部14、き裂進展率算出部(以下、算出部)15、実測値入力部16、コフィンマンソン則変更部17、表示部18、き裂経路節点指示情報記憶部19、座標点指示情報記憶部20、判断結果情報記憶部21を備える。き裂進展評価装置1が備えるこれらの各部は、CPUと主メモリ上に存在しCPU上で実行されるプログラムとにより実現される。
【0022】
解析モデル作成部(以下、作成部)11は、き裂進展評価の対象である連続体の解析モデルを作成する。この解析モデルは、周知のように、連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられるモデル(有限要素モデル)であって、連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルである。即ち、この解析モデルは、応力ひずみ解析部12における解析処理のためのモデルである。
【0023】
例えば、この解析モデルは、電子部品と基板とを接合するはんだ接合部について作成される。この場合、電子部品のはんだ接合部が連続体を構成する。作成部11は、電子部品の情報、基板の情報、はんだ接合部の位置情報、はんだ接合部に繰り返し加えられる負荷の情報、はんだ接合部を構成する材料の情報に基づいて、はんだ接合部の解析モデルを作成する。このようなはんだ接合部の解析モデルは、後述する図17、図18及び図25に示される。また、作成部11は、後述する変更部14によって連続体の有限要素が削除されると、連続体の解析モデルを再度作成する。
【0024】
応力ひずみ解析部(以下、解析部)12は、周知のように、前記解析モデルを用いて、連続体に繰り返し(サイクリックに)加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する(応力ひずみ解析を行う)。解析部12による前記解析結果は、要素損傷判断部13に送られる。負荷のサイクルは、シミュレーションのための所定の数だけ当該連続体に加えられる。応力ひずみ解析は、当該所定の数のサイクルの各々について行われる。負荷は、例えば温度や機械的圧力等である。
【0025】
具体的には、解析部12は、連続体の複数の有限要素の各々について、その累積相当クリープひずみ値及び/又は累積相当塑性ひずみ値を、前記応力ひずみとして求める。ここで、「累積相当」又は「累積」クリープひずみ値とは、当該サイクル以前の個々のサイクルにおいて算出されたクリープひずみ値を累積した値であり、当該サイクルまでの累積値である。塑性ひずみ値についても同様である。
【0026】
図2は、連続体に加えられる負荷のサイクルの一例として、温度サイクルの例を示す図である。図2は、連続体に繰り返し加えられる所定回数の温度サイクルのうち、第1の温度サイクル(第1サイクル)と第2の温度サイクル(第2サイクル)のみを示す。この例では第1及び第2サイクルは同一の負荷勾配のサイクルであるが、両者は相互に異なるサイクルであっても良い。第3の温度サイクル(第3サイクル)以降のサイクルは、第1及び/又は第2サイクルと同様であるので、その図示を省略する。なお、後述する図19は、実際の負荷のサイクル(温度サイクル)の一例である。
【0027】
図2において、時刻to 〜時刻t1 までが第1の温度サイクル(第1サイクル)、時刻t1 〜時刻t2 までが第2の温度サイクル(第2サイクル)である。図2に示す例では、各温度サイクルにおいて、連続体を温度T1 まで加熱し、所定の時間当該温度T1 に保持し、当該連続体を温度T2 まで冷却し、所定の時間当該温度T2 に保持する。図2において、#1〜#8は時間増分である。時間増分は、解析部11による応力ひずみ解析処理、要素損傷判断部13による累積損傷値Dの算出処理の処理単位となる時間である。
【0028】
なお、連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクルにおいて、現在、応力ひずみ解析処理、損傷評価処理及び/又は剛性変更処理の対象となっているサイクルを、「現サイクル」と言うこととする。また、現サイクルの1個前のサイクルを「直前サイクル」と言い、現サイクルの1個後のサイクルを「次サイクル」と言うこととする。
【0029】
要素損傷判断部(以下、判断部)13は、解析部12による前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出する。更に、判断部13は、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値(累積損傷値D)を算出し、累積損傷値Dと予め定められた閾値とを比較して、累積損傷値Dが閾値以上である(又は、閾値より大きい)か否かを判断する。判断部13は、判断結果(と累積損傷値D)を、後述する変更部14、算出部15、及び表示部18に送信する。
【0030】
具体的には、最初に、判断部13は、周知のように、連続体の複数の有限要素の各々の累積相当クリープひずみ値及び/又は累積相当塑性ひずみ値に基づいて、当該有限要素の累積非線形ひずみ値を算出し、図1に示す算出結果記憶部131に記憶する。
【0031】
図3は、判断部が時間の経過に伴って逐次算出する累積非線形ひずみ値の一例を示す。この例では、連続体に図2に示す温度サイクルが加えられた場合の累積非線形ひずみ値を示す。図3に示すように、累積非線形ひずみ値は時間とともに増加する。図3において、εincycle1は、第1サイクルについての計算途中(第1サイクルの時間増分#4についての損傷値の算出処理が終了した時点)の累積非線形ひずみ値である。εincycle2は、第2サイクルについての計算途中(第2サイクルの時間増分#1についての損傷値の算出処理が終了した時点)の累積非線形ひずみ値である。* εincycle1は、第1サイクルについての最終の累積非線形ひずみ値(最終累積非線形ひずみ値)である。
【0032】
次に、判断部13は、算出結果記憶部131に記憶された累積非線形ひずみ値に基づいて、連続体の複数の有限要素の各々について、その非線形ひずみ振幅の値を算出し、これに基づいて、コフィンマンソン則を用いて、当該有限要素の損傷値を算出する。この損傷値は、負荷のサイクルの各々において算出される。当該サイクル(現サイクル)までの損傷値を累積したものが累積損傷値Dである。
【0033】
非線形ひずみ振幅の値としては、例えば累積非線形ひずみ値の1/2の値が用いられる。この値は、厳密には累積非線形ひずみ値とは異なるが、累積損傷値Dの算出結果に大きな影響を与える程ではない。これにより、非線形ひずみ振幅の値を算出するための処理時間を短縮することができる。
【0034】
非線形ひずみ振幅の値を、累積非線形ひずみ値の1/2の値に代えて、以下のようにして算出される値とするようにしても良い。即ち、判断部13が、連続体の複数の有限要素の各々について、負荷のサイクルの現サイクルにおける累積非線形ひずみ値から、現サイクルの直前サイクルにおける累積非線形ひずみ値を減ずる計算を行う。その上で、判断部13が、当該計算によって算出される値(又は当該算出される値を所定の値で除算した値)を、連続体の複数の有限要素の各々についての、現サイクルにおける非線形ひずみ振幅の値とする。
【0035】
次に、判断部13は、当該有限要素の非線形ひずみ振幅の値に、以下の式で示すコフィンマンソン則を適用して、当該有限要素の繰り返し疲労寿命サイクル数を算出する。この値は、負荷のサイクル毎に算出される。
Nfi =C・(Δεi -n (1≦i≦k) ・・・(式2)
式2において、Nfi は第iの負荷のサイクル(第iサイクル)についての繰り返し疲労寿命サイクル数を示す。Δεi は第iサイクルについての非線形ひずみ振幅の値を示す。C、nは、連続体の材料と形状とによって決まるパラメータである。前述した式1の乗数の項を展開すると、式2のように、非線形ひずみ振幅の値の−n乗に定数を掛けた式の形となる。
【0036】
判断部13は、1/Nfi =1/C・(Δεi -nを第iサイクルについての損傷値として算出する。即ち、繰り返し疲労寿命サイクル数の逆数である。更に、判断部13は、以下の式3を用いて、当該サイクル(現サイクル)までの損傷値を加算することにより、累積損傷値Dを算出し、これを算出結果記憶部131に記憶する。
D=1/C・(Δε1 -n+1/C・(Δε2 -n+・・・+1/C・(Δεk -n
・・・(式3)
更に、判断部13は、算出結果記憶部131に記憶された累積損傷値Dと予め定められた閾値(例えば1)とを比較する。閾値は経験的に定めることができる。この比較の結果は、算出部15、変更部14、表示部18に送信される。
【0037】
本実施形態においては、判断部13は、コフィンマンソン則のパラメータ(例えば、式2に示すコフィンマンソン則のパラメータC、n)を任意に変更して複数のコフィンマンソン則を求め、求まったコフィンマンソン則毎に、前記累積損傷値Dの算出処理及び累積損傷値Dと閾値との比較処理、当該比較結果の算出部15、変更部14、表示部18への送信処理を実行する。また、判断部13は、後述するコフィンマンソン則変更部17から、変更後の新たなコフィンマンソン則を受信すると、当該新たなコフィンマンソン則に基づいて、前記累積損傷値Dの算出処理及び累積損傷値Dと閾値との比較処理、当該比較結果の算出部15、変更部14、表示部18への送信処理を実行する。
【0038】
変更部14は、累積損傷値Dが閾値以上である場合に、累積損傷値Dが当該閾値以上である有限要素を削除する。変更部14は、判断部13がパラメータを任意に変更して求めたコフィンマンソン則毎に有限要素の削除処理を実行する。
【0039】
なお、変更部14が、判断部13から、コフィンマンソン則変更部17によって求められた新たなコフィンマンソン則に基づいて算出された累積損傷値Dと閾値との比較処理結果を受信すると、変更部14は、判断部13によって求められたコフィンマンソン則毎に実行したのと同様の有限要素の削除処理を実行する。即ち、変更部14が、判断部13がパラメータを任意に変更して求めたコフィンマンソン則毎に有限要素の削除処理を実行した場合には、変更部14は、新たなコフィンマンソン則に基づく累積損傷値Dと閾値との比較処理結果を判断部13から受信したときにも、有限要素の削除処理を実行する。
【0040】
変更部14が有限要素を削除した後、作成部11が連続体の解析モデルを再度作成し、解析部12が、当該再度作成された解析モデルを用いて、連続体の複数の有限要素の各々において、負荷のサイクルの現サイクルの次サイクルによって生じる応力及びひずみを、有限要素法によって解析する。
【0041】
変更部14は、累積損傷値Dが閾値未満である場合、当該累積損傷値Dに対応する有限要素を削除しない。
【0042】
変更部14が、現サイクルにおいて損傷値の累積値が閾値以上である有限要素を削除することによって、削除した有限要素が次サイクルにおける解析部12の応力ひずみ解析の解析対象から外れる。従って、当該解析部12による応力ひずみ解析処理、及び、当該応力ひずみ解析処理に続いて実行される、判断部13の処理において、エラーが発生することが少なくなる。その結果、本実施形態のき裂進展評価装置1による、連続体に生じるき裂の進展の評価処理が、途中で停止されることなく実行される。
【0043】
変更部14が、累積損傷値Dが上記閾値以上である有限要素の剛性(例えばヤング率又は降伏応力)を変更して、当該剛性を0に近い値(例えば、当該有限要素の剛性の初期値の1/100の値)に低下させるようにしてもよい。即ち、有限要素の剛性の値は0とはされない。これにより、負荷のサイクルの現サイクルの次サイクルにおける応力ひずみ解析処理において、例えば、累積相当クリープひずみ値と累積相当塑性ひずみ値が極端に大きな値(不合理な値)となることを回避することができる。
【0044】
なお、変更部14が、判断部13がパラメータを任意に変更して求めたコフィンマンソン則毎に有限要素の剛性の変更処理を実行した場合には、変更部14は、新たなコフィンマンソン則に基づく累積損傷値Dと閾値との比較処理結果を判断部13から受信したときにも、有限要素の剛性の変更処理を実行する。
【0045】
算出部15は、判断部13による判断結果に基づいて、負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において連続体に生じるき裂の進展率を算出し、これに基づいて、連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す情報(第1の対応情報)を求める。
【0046】
具体的には、算出部15は、以下のようにして、第1の対応情報を求める。まず、算出部15が、判断部13による、累積損傷値Dが閾値以上であるかについての判断結果(と累積損傷値D)を、後述する判断結果情報記憶部21に記憶する。また、算出部15が、後述するき裂経路節点指示情報記憶部19に予め記憶されたき裂経路節点指示情報に基づいて、連続体に生じるき裂の進展経路を特定する。具体的には、算出部15が、当該連続体に生じるき裂の進展経路上に配置された節点(の識別情報)を特定する。き裂経路節点指示情報は、連続体に生じるき裂の進展経路を示す情報である。当該き裂経路節点指示情報は、当該き裂の進展経路上に配置された有限要素の節点の識別情報(例えば、節点番号)を含む。
【0047】
また、算出部15が、後述する座標点指示情報記憶部20に予め記憶された、座標点指示情報に基づいて、前記特定されたき裂の進展経路上の節点の座標を求める。座標点指示情報は、各節点に対応する座標情報である。
【0048】
算出部15が、判断結果情報記憶部21に記憶された判断結果に基づいて、前記特定されたき裂の進展経路上の節点のうち、き裂の進展経路の開始位置に配置された節点(例えば、節点番号が一番小さい節点)の累積損傷値Dの外挿値が閾値以上であるか否かを判断する。前記き裂の進展経路の開始位置に配置された節点の累積損傷値Dの外挿値が閾値以上である場合、算出部15は、当該き裂の進展経路の開始位置に配置された節点をき裂が開始する節点とする。前記き裂の進展経路の開始位置に配置された節点の累積損傷値Dが閾値未満である場合、算出部15は、当該き裂の進展経路におけるき裂の長さが0である(き裂が発生していない)と判断する。
【0049】
そして、算出部15が、前記き裂の進展経路上の、前記き裂が開始する節点の次の節点から、順次、節点の累積損傷値Dが閾値以上であるか否かを判断し、前記き裂が開始する節点から累積損傷値Dが閾値以上である最後の節点までの経路長を連続体に生じるき裂の長さとして算出する。即ち、算出部15が、前記き裂の進展経路上における配置順に、各々の節点の累積損傷値Dが閾値以上であるか否かを判断し、当該累積損傷値Dがどの節点まで閾値以上であるかを決定する。例えば前記き裂の進展経路上の第i番目の節点が、累積損傷値Dが閾値以上である最後の節点である場合、算出部15は、前記特定された節点の座標情報に基づいて、き裂が開始する節点から第i番目の節点までの経路長を算出し、算出された経路長をき裂の長さとする。
【0050】
また、算出部15が、前記特定された節点の座標情報に基づいて、前記き裂の進展経路の経路全長を算出する。そして、算出部15が、前記算出されたき裂の進展経路の経路全長に対する前記算出されたき裂の長さの割合を連続体に生じるき裂の進展率として算出する。算出部15によるき裂の進展率の算出処理によって、第1の対応情報が得られる。
【0051】
本実施形態においては、算出部15が、判断部13がパラメータを任意に変更して求めたコフィンマンソン則毎の累積損傷値Dと閾値との比較処理結果に基づいて、コフィンマンソン則毎に、第1の対応情報を求める。また、算出部15が、判断部13から、コフィンマンソン則変更部17によって求められた新たなコフィンマンソン則に基づいて算出された累積損傷値Dと閾値との比較処理結果を受信すると、算出部15は、当該比較処理結果に基づいて、第1の対応情報を求める。
【0052】
実測値入力部16は、連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す情報(第2の対応情報)を入力する。
【0053】
コフィンマンソン則変更部17は、算出部15によって求められた第1の対応情報と、実測値入力部16によって入力された第2の対応情報とに基づいて、コフィンマンソン則を変更する。
【0054】
具体的には、コフィンマンソン則変更部17が、前記算出部15によって算出されたき裂の進展率、当該き裂の進展率に対応する負荷のサイクル数が、それぞれ、き裂の進展率の実測値、当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を求め、判断部13が損傷値の算出に用いたコフィンマンソン則に基づいて、負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出(逆算)する。
【0055】
本実施形態では、コフィンマンソン則変更部17は、判断部13がパラメータを任意に変更して求めたコフィンマンソン則毎に、負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出する。そして、コフィンマンソン則変更部17が、コフィンマンソン則毎に算出された非線形ひずみ振幅の値と負荷のサイクル数の実測値とに基づいて、例えば最小二乗法近似を実行して新たなパラメータを決定する。コフィンマンソン則変更部17が、決定された新たなパラメータに基づいて新たなコフィンマンソン則を求めることで、コフィンマンソン則を変更する。また、コフィンマンソン則変更部17は、変更後の新たなコフィンマンソン則を判断部13に送信する。
【0056】
表示部18は、判断部13による累積損傷値Dが閾値以上であるかの判断結果に基づいて、解析モデルを用いて、連続体に生じるき裂の進展状態を表示する。き裂の進展状態は、例えば、連続体の複数の有限要素の各々について累積損傷値Dを表示することにより表示される。このようなき裂の進展状態は、後述する図20乃至23に示される。
【0057】
表示部18が、予め定められた1又は複数の負荷のサイクル毎に、連続体に生じるき裂の進展状態を表示するようにしてもよい。即ち、表示部18によるき裂の進展状態の表示は、1サイクル毎に又は複数のサイクル(例えば10サイクル)毎に更新され、表示の更新のサイクル数は予め定められる(以下において、同じ)。
【0058】
表示部18が、算出部15によって算出される第1の対応情報を表示するようにしてもよい。また、表示部18が、算出部15によって算出される、連続体に生じるき裂の長さを表示するようにしてもよい。このような連続体に生じるき裂の長さは、例えば後述する図24に示される。
【0059】
き裂経路節点指示情報記憶部19には、き裂経路節点指示情報が予め記憶される。座標点指示情報記憶部20には、座標点指示情報が予め記憶される。判断結果情報記憶部21には、判断部13による判断結果が記憶される。
【0060】
本実施形態のき裂進展評価装置1を実現するプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば半導体メモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD等に格納することができ、これらの記録媒体に記録して提供され、または、通信インタフェースを介してネットワークを利用した送受信により提供される。
【0061】
図4は、き裂経路節点指示情報記憶部に予め記憶されるき裂経路節点指示情報の一例を示す図である。図4に示すき裂経路節点指示情報は、連続体毎のき裂の進展経路の情報を有する。図4におけるき裂の進展経路の項目に予め定められた、矢印で結ばれる各番号が、き裂の進展経路上に配置された有限要素の節点の節点番号を示す。節点番号は、有限要素の節点の識別情報である。また、き裂の進展経路の項目に設定された各節点番号を結ぶ前記矢印の経路が、き裂の進展経路を示す。例えば、連続体Aについてのき裂の進展経路の項目に設定された「1→2→3→4」は、連続体Aについてのき裂の進展経路が、節点番号1の節点から開始し、節点番号2の節点、節点番号3の節点を通って、節点番号4の節点で終了する経路であることを示す。
【0062】
連続体Aが図5に示すはんだ接合部102である場合を例にとって説明すると、はんだ接合部102の、節点番号1の節点Pが、当該はんだ接合部102のき裂の進展経路の開始位置に配置された節点である。そして、節点Pから開始し、節点番号2の節点Q、節点番号3の節点Rを通って、節点番号4の節点Sで終了する経路がき裂の進展経路である。
【0063】
図6は、座標点指示情報記憶部に予め記憶される座標点指示情報の一例を示す。座標点指示情報は、節点番号毎の座標情報を有する。例えば、図5に示す節点番号1の座標は、(a,b,c)である。
【0064】
図7は、判断結果情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。図7に示すように、判断結果情報記憶部21には、判断部13によって算出された累積損傷値Dと判断部13による判断結果とが、有限要素及び節点番号に対応付けられて記憶される。図7における有限要素の項目は有限要素の識別情報を設定する。節点番号の項目は節点番号を設定する。累積損傷値Dの項目は、当該有限要素(の節点)の累積損傷値Dを設定する。判断結果の項目は、当該有限要素(の節点)の累積損傷値Dが閾値(例えば1)以上であるか否かを示す情報を設定する。例えば、判断結果の項目に設定される数値「1」は、当該有限要素(の節点)の累積損傷値Dが1以上であることを示す。判断結果の項目に設定される数値「0」は、当該有限要素(の節点)の累積損傷値Dが1未満であることを示す。
【0065】
図8は、本実施形態のき裂進展評価装置によるき裂進展評価処理フローの一例を示す図である。まず、き裂進展評価装置1が、コフィンマンソン則のパラメータを任意に設定し、当該コフィンマンソン則を用いたシミュレーション処理を実行する(ステップS1)。具体的には、ステップS1におけるシミュレーション処理は、解析部12による応力ひずみ解析処理、判断部13によるコフィンマンソン則を用いた累積損傷値Dの算出処理及び累積損傷値Dと閾値との比較処理、変更部14による有限要素の削除処理、表示部18によるき裂の進展状態の表示処理を含む。ステップS1におけるシミュレーション処理は、負荷のサイクル毎に実行される。
【0066】
き裂進展評価装置1の算出部15が、ステップS1におけるシミュレーション処理の結果に基づいてき裂の進展率を算出して(ステップS2)、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める。以下、ステップS2によって算出されたき裂の進展率、当該き裂の進展率に対応する負荷のサイクル数を、それぞれ、き裂の進展率のシミュレーション値、負荷のサイクル数のシミュレーション値という。
【0067】
次に、実測値入力部16が、負荷のサイクル数の実測値とき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報を入力する(ステップS3)。コフィンマンソン則変更部17が、ステップS2によって求められたき裂の進展率のシミュレーション値、負荷のサイクル数のシミュレーション値が、それぞれ、ステップS3によって入力されたき裂の進展率の実測値、当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を算出する(ステップS4)。ステップS4の処理を図9(A)を参照して以下に説明する。
【0068】
図9(A)は、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す図である。図9(A)の縦軸はき裂の進展率を示し、横軸は負荷のサイクル数を示す(図9(B)、図12において同じ)。
【0069】
図9(A)において、300はステップS3において入力された負荷のサイクル数の実測値とき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報を示すグラフ(以下、「実測値グラフ」という)である。また、301はステップS2において求められた負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を示すグラフ(以下、「シミュレーショングラフ」という)である。即ち、シミュレーショングラフ301は、算出部15が、任意に設定されたパラメータを有するコフィンマンソン則を用いて実行されたシミュレーション処理の結果に基づいて求めた、第1の対応情報を示す。なお、シミュレーショングラフ301は、1回目のステップS2の処理によって得られるシミュレーショングラフである。
【0070】
算出部15は、図9(A)に示す、実測値グラフ300とシミュレーショングラフ301との交点であるA点に対応するサイクル数の値(図9(A)に示す例では「3561」)を算出する。
【0071】
図8に戻って、コフィンマンソン則変更部17が、ステップS1におけるシミュレーション処理において用いられたコフィンマンソン則に、ステップS4によって求まった負荷のサイクル数の実測値を代入して、当該負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出する(ステップS5)。即ち、コフィンマンソン則変更部17が、ステップS5の処理を実行して、負荷のサイクル数の実測値と非線形ひずみ振幅の値との対応を示す第2の対応情報を取得する。具体的には、コフィンマンソン則変更部17が、前記図9(A)のA点に対応するサイクル数Nf =3561をステップS1におけるシミュレーション処理において用いられたコフィンマンソン則(例えば、Nf =450* (Δε/0.017545)-0.99 ) に代入して、当該サイクル数Nf =3561に対応する非線形ひずみ振幅の値Δεとして、例えば、Δε=0.0022を算出する。
【0072】
コフィンマンソン則変更部17が、ステップS1乃至S5の処理が所定の回数(例えば、4回)以上繰り返されたかを判断する(ステップS6)。具体的には、コフィンマンソン則変更部17が、負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値が前記所定の回数に対応する個数以上得られたか否かを判断する。負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値が当該所定の回数に対応する個数以上得られた場合、コフィンマンソン則変更部17は、ステップS1乃至S5の処理が所定の回数以上繰り返されたと判断する。負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値が前記所定の回数に対応する個数以上得られていない場合、コフィンマンソン則変更部17は、ステップS1乃至S5の処理が所定の回数以上繰り返されていないと判断する。
【0073】
ステップS1乃至S5の処理が所定の回数以上繰り返されていないと判断した場合、判断部13が、ステップS1におけるシミュレーション処理において用いられたコフィンマンソン則のパラメータを変更して(ステップS7)、ステップS1以下を繰り返す。
【0074】
コフィンマンソン則変更部17が、ステップS1乃至S5の処理が所定の回数以上繰り返されたと判断した場合、コフィンマンソン則変更部17が、ステップS5の処理が所定の回数繰り返されることによって得られた、所定の回数分の負荷のサイクル数の実測値と非線形ひずみ振幅の値との対応情報に基づいて、最小二乗法近似を用いて、新たなコフィンマンソン則を求める(ステップS8)。
【0075】
ステップS8の処理を図9(B)及び図10を用いて以下に説明する。図9(B)は、図9(A)と同様に、第1の対応情報を示す図である。シミュレーショングラフ(以下、グラフ)301、302、303、304は、ステップS2の処理が所定回数繰り返されることによって得られる。例えば、グラフ301、302、303、304は、各々、1回目、2回目、3回目、4回目のステップS2の処理によって得られるグラフである。
【0076】
ステップS4が所定回数繰り返されることにより、算出部15が、前述したA点に対応するサイクル数の値の他、実測値グラフ300とグラフ302との交点であるB点に対応するサイクル数の値、実測値グラフ300とグラフ303との交点であるC点に対応するサイクル数の値、実測値グラフ300とグラフ304との交点であるD点に対応するサイクル数の値を算出する。
【0077】
そして、ステップS5が所定回数繰り返されることにより、コフィンマンソン則変更部17が、A点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値を前述のように算出するとともに、B点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値、C点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値、D点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出する。
【0078】
図10は、サイクル数と非線形ひずみ振幅の値との対応を示す図である。図10の縦軸はサイクル数(Nf )を示し、横軸は非線形ひずみ振幅Δεを示す。図10に示す4つの点は、それぞれ、図9(B)のA点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値、B点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値、C点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値、D点に対応するサイクル数に対応する非線形ひずみ振幅の値をプロットして得られる点である。コフィンマンソン則変更部17が、図10にプロットされた4つの点の座標に基づいて、最小二乗法近似を用いて、図10の新たなコフィンマンソン則を示すグラフ400を求める。例えば、コフィンマンソン則変更部17が、新たなコフィンマンソン則として、例えば、Nf =0.4105Δε-1.4515 を求める。
【0079】
図11は、コフィンマンソン則変更部によって求められた新たなコフィンマンソン則を用いたき裂進展評価処理フローを示す図である。
【0080】
判断部13が、コフィンマンソン則変更部17から新たなコフィンマンソン則(例えば、Nf =0.4105Δε-1.4515 )を受信する(ステップS11)。そして、き裂進展評価装置1が、ステップS11によって受信された新たなコフィンマンソン則を用いて、図8のステップS1におけるシミュレーション処理と同様のシミュレーション処理を実行する(ステップS12)。具体的には、解析部12が応力ひずみ解析処理を実行し、判断部13が、新たなコフィンマンソン則を用いた累積損傷値Dの算出処理、及び累積損傷値Dと閾値との比較処理を実行し、変更部14が、有限要素の削除処理を実行し、表示部18が、き裂の進展状態の表示処理を実行する。
【0081】
そして、算出部15が、ステップS12によるシミュレーション処理の結果に基づいてき裂の進展率を算出して(ステップS13)、第1の対応情報を求める(グラフを得る)。
【0082】
図12は、図11のステップS13の処理によって求められる第1の対応情報を示す図である。図12は、図11のステップS13の処理によって得られるグラフ310を示す。グラフ310との対比のために、前述した実測値グラフ300が示される。図12を参照すると、新たなコフィンマンソン則を用いたシミュレーション処理が実行されることによって、実測値グラフ300により近いグラフ310が得られることが判る。
【0083】
図13及び図14は、図8のステップS1におけるシミュレーション処理の詳細を示すフローチャートの例である。この例は、連続体に前述した図2に示す温度サイクルが加えられた場合のシミュレーション処理を示す。図13に示すステップS101乃至ステップS111は、図2の第1サイクルについてのシミュレーション処理である。図14に示すステップS112乃至ステップS124は、図2の第2サイクルについてのシミュレーション処理である。第3サイクル以降についてのシミュレーション処理は、図14の第2サイクルについてのシミュレーション処理と同様である。
【0084】
図13において、解析部12が、連続体の複数の有限要素の各々(全ての有限要素)について、第1サイクルについての応力ひずみ解析を行う(ステップS101)。次に、判断部13が、定数Nを設定し(ステップS102)、累積損傷値Dの初期値を0に設定した上で(ステップS103)、以下のステップS104乃至ステップS111までの処理を、連続体の複数の有限要素の各々について行う。
【0085】
即ち、判断部13が、ステップS101における応力ひずみ解析結果に基づいて、第1サイクルについての累積非線形ひずみ値εincycle1を計算する(ステップS104)。具体的には、判断部13が、前述した図3に示す第1サイクルの時間増分#4についての損傷値の算出処理が終了した時点における累積非線形ひずみ値εincycle1を算出する。
【0086】
判断部13が、累積非線形ひずみ値εincycle1の1/2を非線形ひずみ振幅の値Δε1 として算出し(ステップS105)、非線形ひずみ振幅の値Δε1 に式2に従うコフィンマンソン則(Nf1 =C・(Δε1 -n)を適用して、繰り返し疲労寿命サイクル数Nf1 を計算する(ステップS106)。更に、判断部13が、値1/Nf1 に定数Nを乗じて累積損傷値Dを計算し、これを算出結果記憶部131に記憶する(ステップS107)。
【0087】
次に、判断部13が、最終時間増分についての処理が終了したか否かを判断する(ステップS108)。最終時間増分についての処理が終了していない場合、ステップS104以下を繰り返す。最終時間増分についての処理が終了した場合、判断部13は、累積非線形ひずみ値を、第1サイクルについての最終累積非線形ひずみ値* εincycle1として記憶する(ステップS109)。
【0088】
次に、判断部13が、累積損傷値Dが1以上であるか否かを判断する(ステップS110)。累積損傷値Dが1以上であると判断した場合、変更部14が、累積損傷値Dが1以上である有限要素を削除する(ステップS111)。この後、解析モデル作成部11が、連続体の解析モデルを再度作成する(図14のステップS112)。累積損傷値Dが1以上でないと判断した場合、ステップS112を実行する。
【0089】
次に、解析部12が、連続体の複数の有限要素の各々について、第2サイクルについての応力ひずみ解析を行う(ステップS113)。判断部13が、応力ひずみ解析の結果に基づいて、第2サイクルについての累積非線形ひずみ値εincycle2を計算する(ステップS114)。具体的には、判断部13が、図3に示す第2サイクルの時間増分#1についての損傷値の算出処理が終了した時点における累積非線形ひずみ値εincycle2を算出する。
【0090】
次に、判断部13が、第1サイクルについての最終累積非線形ひずみ値* εincycle1を算出結果記憶部131から読み出し(ステップS115)、εincycle2* εincycle1との差の1/2を非線形ひずみ振幅の値Δε2 として算出する(ステップS116)。更に、判断部13が、非線形ひずみ振幅の値Δε2 に式2に示すコフィンマンソン則(Nf2 =C・(Δε2 -n)を適用して、繰り返し疲労寿命サイクル数Nf2 を計算し(ステップS117)、累積損傷値D(D=N/Nf1 +N/Nf2 )を計算し、これを算出結果記憶部131に記憶する(ステップS118)。
【0091】
次に、判断部13が、最終時間増分についての処理が終了したか否かを判断する(ステップS119)。最終時間増分についての処理が終了していない場合は、ステップS114以下を繰り返す。最終時間増分についての処理が終了した場合、判断部13は、累積非線形ひずみ値を算出結果記憶部131に記憶する(ステップS120)。
【0092】
次に、判断部13が、累積損傷値Dが1以上であるか否かを判断する(ステップS121)。累積損傷値Dが1以上である場合、変更部14が、累積損傷値Dが1以上である有限要素を削除する(ステップS122)。累積損傷値Dが1以上でない場合、ステップS123を実行する。
【0093】
判断部13が、ステップS121による判断結果(と累積損傷値D)を算出部15に送信し(ステップS123)、連続体の各々の有限要素の累積損傷値Dを、第2サイクル終了時点において連続体に生じるき裂の進展状態を示す情報として表示する(ステップS124)。そして、解析モデル作成部11が、連続体の解析モデルを再度作成して(ステップS125)、第3サイクルについてのシミュレーション処理を実行する(ステップS126)。
【0094】
図13及び図14を参照して説明したシミュレーション処理の例では、表示部18が第2サイクル終了時点において連続体に生じるき裂の進展状態を示す情報を表示する(図14のステップS124参照)が、表示部18が、所定のサイクル終了時点において連続体に生じるき裂の進展状態を示す情報を表示するようにしてもよい。
【0095】
また、前記シミュレーション処理の例では、判断部13が、第2サイクルにおける判断結果(と累積損傷値D)を算出部15に送信する(図14のステップ123参照)が、判断部13が、所定のサイクルにおける判断結果を算出部15に送信するようにしてもよい。
【0096】
また、図13のステップS111及び図14のステップS122において、変更部14が、有限要素を削除する処理に替えて、累積損傷値Dが1以上である有限要素の剛性を所定の値に低下させる処理を実行するようにしてもよい。変更部14が、累積損傷値Dが1以上である有限要素の剛性を所定の値に低下させる処理を実行することにより、例えば、第1サイクルにおいて剛性を所定の値に低下させた有限要素は、解析モデルから削除されず、第2サイクル以降のサイクルにおいても累積損傷値Dの算出処理の対象とされる(図14のステップS118参照)。このように、剛性を所定の値に低下させた有限要素を解析モデルから削除する処理に替えて、有限要素の剛性を所定の値に低下させることによって、図14のステップS112及びステップS125を参照して前述した連続体の解析モデルを再度作成する処理を不要とすることができる。更に、解析モデルが再度作成されることは無いので、実際には、解析モデルの作成と並列に、解析部12による解析処理を実行することができる。これにより、更に処理時間を短縮することができる。
【0097】
図15及び図16は、図8のステップS2、図11のステップS13におけるき裂の進展率の算出処理の詳細を示すフローチャートの例である。この例では、図5に示すはんだ接合部102に生じるき裂の進展率の算出処理について説明する。なお、図15及び図16におけるLは、き裂の長さを示す変数であり、図16におけるiは節点番号を示す変数、Mはき裂の進展経路上に配置された節点の数を示す。
【0098】
算出部15が、判断部13から送信された、累積損傷値Dが閾値以上であるかについての判断結果を判断結果情報記憶部21に記憶する(ステップS201)。算出部15が、き裂経路節点指示情報記憶部19から、き裂の進展率の算出処理の対象となる連続体に対応するき裂経路節点指示情報を読み込み(ステップS202)、当該き裂経路節点指示情報に基づいて、当該連続体に生ずるき裂の進展経路を特定する。具体的には、算出部15が、き裂経路節点指示情報に基づいて、図5における節点番号1の節点Pから開始し、節点番号2の節点Q、節点番号3の節点Rを通って、節点番号4の節点Sで終了する経路が、当該はんだ接合部102のき裂の進展経路であることを特定する。
【0099】
算出部15が、座標点指示情報記憶部20から座標点指示情報を読み込み(ステップS203)、当該座標点指示情報に基づいて、ステップS202において特定されたき裂の進展経路上の節点の座標を求める。具体的には、算出部15が、座標点指示情報に基づいて、図5における節点Pが有する節点番号1に対応する座標を節点Pの座標として求める。同様にして、算出部15が、図5における節点Qの座標、節点Rの座標、節点Sの座標を求める。
【0100】
算出部15が、ステップS203において求まったき裂の進展経路上の節点の座標に基づいて、き裂の進展経路の経路全長を算出する(ステップS204)。具体的には、算出部15が、図5における節点Pと節点Qとの距離、節点Qと節点Rとの距離、節点Rと節点Sとの距離の合計を図5に示すはんだ接合部102のき裂の進展経路の経路全長として算出する。
【0101】
次に、算出部15が、判断結果情報記憶部21から判断結果を読み込む(ステップS205)。具体的には、算出部15が、判断結果情報記憶部21から、図5における節点番号1の節点Pに対応する判断結果、節点番号2の節点Qに対応する判断結果、節点番号3の節点Rに対応する判断結果、節点番号4の節点Sに対応する判断結果を読み込む。
【0102】
次に、算出部15が、節点番号1に対応する判断結果に基づいて、節点番号1に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上であるか否かを判断する(ステップS206)。節点番号1に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上でない場合は、算出部15が、き裂の長さを0(L=0)として(ステップS208)、この後、図16のステップS216を実行する。
【0103】
節点番号1に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上である場合は、算出部15が、節点番号2に対応する判断結果に基づいて、節点番号2に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上であるか否かを判断する(ステップS207)。節点番号2に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上でない場合は、算出部15が、ステップS208を実行し、この後、図16のステップS216を実行する。
【0104】
節点番号2に対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上である場合は、算出部15が、節点番号1の節点と節点番号2の節点との距離を算出し、算出した距離の値をき裂の長さLとして設定する(ステップS209)。この後、算出部15が、節点番号を3に設定(i=3)し(ステップS210)、節点番号iに対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上であるか否かを判断する(ステップS211)。
【0105】
節点番号iに対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上でない場合は、算出部15が、Lに設定された値をき裂の長さとし(ステップS217)、この後、ステップS216を実行する。
【0106】
節点番号iに対応する有限要素の累積損傷値Dが1以上である場合は、算出部15が、節点番号iの節点と節点番号i−1の節点との距離を算出し、当該算出された値とLとを加算した値をLに設定する(ステップS212)。この後、算出部15が、節点番号を+1だけインクリメント(i=i+1)し(ステップS213)、i>Mであるか否かを判断する(ステップS214)。具体的には、図5に示すはんだ接合部102のき裂の進展経路上の節点の数は4個であるので、算出部15が、i>4であるか否かを判断する。i>Mでない場合は、ステップS211以下を繰り返す。
【0107】
i>Mである場合は、算出部15が、Lに設定された値をき裂の長さとし(ステップS215)、この後、Lの値を図15のステップS204において算出されたき裂の進展経路の経路全長で除算して、き裂の進展率を算出する(ステップS216)。具体的には、算出部15が、以下の式に従って、き裂の進展率を算出する。
【0108】
き裂の進展率=(Lの値/き裂の進展経路の経路全長)×100(%)
次に、本実施形態のき裂進展評価装置1が、電子部品のはんだ接合部について、具体的なシミュレーションを行った結果を、図17乃至25を参照して説明する。
【0109】
この例では、き裂進展評価装置1は、BGA(Ball Grid Array )パッケージのはんだ接合部についてシミュレーション処理を実施する。当該シミュレーション処理において、き裂進展評価装置1は、例えば、所定の値(サイクル数)を100に設定して、15サイクル分の温度サイクルについてシミュレーション処理を行い、1500サイクル分の温度サイクルをはんだ接合部に加えたときのき裂の進展を評価する。
【0110】
図17は、当該シミュレーション処理においてき裂進展評価装置1が作成するBGAパッケージの解析モデルを示す図である。き裂進展評価装置1の作成部11は、図17に示すように、電子部品(半導体チップ)100、実装基板101、はんだ接合部102からなる解析モデルを作成する。実際には、図17は、表示部18がそのディスプレイ上に表示する画面である。図17において、画面の右端は、当該解析モデルの有限要素を色分けして表示するために、その番号に応じて色分けされたバーを示す(図18において同じ)。
【0111】
図18は、図17に示すBGAパッケージの解析モデルの部分拡大図である。当該シミュレーション処理では、き裂進展評価装置1は、はんだ接合部102のはんだ材料であるSnPbの共晶はんだを連続体として、当該はんだ接合部102に生じるき裂について、き裂進展評価処理を行う。
【0112】
なお、図18に示す解析モデルにおけるはんだ接合部102を更に拡大して示すと、図25に等しくなる。即ち、図25は、図18に示す解析モデルの更なる部分拡大図である。図20乃至23は、図25に対応し、当該解析モデルについての本実施形態によるシミュレーション処理(き裂進展評価)の結果を示す。
【0113】
図19は、はんだ接合部に加えられる温度サイクルを示す図である。当該温度サイクルの1サイクルにおいて、はんだ接合部102は、−40℃に約30分間保持された後に、125℃に約30分間保持される。実際の1サイクルの時間は約1.16時間である。き裂進展評価装置1は、図19に示す温度サイクルの温度条件を、はんだ接合部102に加えられる負荷の情報として用いて、き裂進展評価処理を行う。
【0114】
図20乃至23は、本実施形態によるシミュレーション処理の結果を示す図である。実際には、図20乃至23は、表示部18がそのディスプレイ上に表示する画面である。図20乃至23において、画面の右端は、はんだ接合部102の有限要素の累積損傷値Dの大きさを色分けして表示するために有限要素の番号に応じて色分けされたバーを示す。
【0115】
当該バーにおいて、斜線を施した領域は、累積損傷値Dが予め定められた閾値以上の値であることを示す。図20に示すはんだ接合部102において、バーにおける斜線領域と同一の斜線を施された領域は、当該予め定められた閾値以上の累積損傷値Dを有する有限要素が存在する領域である。従って、はんだ接合部102における斜線領域が、き裂が発生した(進展した)箇所を示す。
【0116】
図20、図21、図22及び図23は、各々、200サイクル終了時点、500サイクル終了時点、700サイクル終了時点、及び、900サイクル終了時点におけるはんだ接合部102の有限要素のき裂進展状態を示す。図20乃至23を参照すると、はんだ接合部102に加えられる温度サイクルのサイクル数が増加するにつれて、き裂の箇所が拡大する(進展する)ことが判る。
【0117】
図24は、本実施形態のシミュレーション処理においてき裂進展評価装置が算出する、所定のサイクル数毎のはんだ接合部に生じるき裂の長さの表示例を示す図である。この例では、本実施形態のき裂進展評価装置1が新たなコフィンマンソン則を用いたシミュレーション処理結果に基づいて算出するき裂の長さ(図11のステップS13、図16のステップS215参照)の表示について説明する。
【0118】
図24において、200は本実施形態のき裂進展評価装置1が算出するき裂の長さを示すグラフであり、201はき裂の長さの実測値を示すグラフである。図24を参照すると、本実施形態のき裂進展評価装置1が、およそ正しくき裂の進展状態のシミュレーションを実行することがわかる。
【0119】
以上から把握できるように、本実施形態の特徴を述べると以下の通りである。
【0120】
(付記1)連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価装置であって、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成する作成部と、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する解析部と、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部による判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める算出部と、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更するコフィンマンソン則変更部とを備える
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0121】
(付記2)付記1に記載のき裂進展評価装置が、更に、
前記累積値が前記閾値以上である場合に、当該損傷値の累積値が前記閾値以上である有限要素を削除するか、又は当該有限要素の剛性を変更する変更部を備え、
前記解析部が、前記負荷のサイクルの現サイクルの終了時において前記変更部によって削除又は剛性が変更された前記連続体の複数の有限要素の各々について、前記現サイクルの次サイクルの負荷により生じる応力及びひずみを解析する
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0122】
(付記3)付記1に記載のき裂進展評価装置において、
前記判断部が、前記連続体の複数の有限要素の各々について、前記負荷のサイクルの現サイクルにおける累積非線形ひずみ値から前記現サイクルの直前サイクルにおける累積非線形ひずみ値を減ずることにより、前記現サイクルにおける前記非線形ひずみ振幅の値を算出する
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0123】
(付記4)付記1に記載のき裂進展評価装置において、
前記算出部が、予め記憶手段に記憶された、前記連続体に生じるき裂の進展経路上に配置された有限要素の節点への外挿情報を用いて、前記累積値が前記閾値以上である前記き裂の進展経路の開始位置に配置された節点をき裂が開始する節点とし、当該き裂が開始する節点から前記累積値が前記閾値以上である最後の節点までの経路長を前記連続体に生じるき裂の長さとして算出し、前記き裂の進展経路の経路全長に対する前記算出されたき裂の長さの割合を前記連続体に生じるき裂の進展率として算出し、
前記コフィンマンソン則変更部が、前記算出部によって算出されたき裂の進展率、当該き裂の進展率に対応する負荷のサイクル数が、それぞれ、前記き裂の進展率の実測値、当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を求め、前記コフィンマンソン則に基づいて、前記求まった負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出し、当該算出された非線形ひずみ振幅の値と前記求まった負荷のサイクル数の実測値とに基づいて、新たなコフィンマンソン則を求める
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0124】
(付記5)付記1に記載のき裂進展評価装置が、更に、
前記判断部による判断結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に生じるき裂の進展状態を表示する表示部を備える
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0125】
(付記6)付記5に記載のき裂進展評価装置において、
前記表示部が、前記算出部によって求められる前記第1の対応情報を表示する
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0126】
(付記7)付記1に記載のき裂進展評価装置において、
前記連続体が、電子部品のはんだ接合部からなる
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【0127】
(付記8)連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価方法であって、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成し、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析し、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断し、
前記判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求め、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する
ことを特徴とするき裂進展評価方法。
【0128】
(付記9)連続体に生じるき裂の進展を評価するプログラムであって、
コンピュータに、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成する処理と、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する処理と、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断する処理と、
前記判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める処理と、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する処理とを実行させるためのき裂進展評価プログラム。
【0129】
(付記10)連続体に生じるき裂の進展を評価するプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成する処理と、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する処理と、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断する処理と、
前記判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める処理と、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する処理とを実行させるためのき裂進展評価プログラムを記録した記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本実施形態のき裂進展評価装置及びき裂進展評価方法によれば、連続体に生じるき裂の進展過程の実測結果に基づいて変更されたコフィンマンソン則を用いたシミュレーションを実行することで、き裂の進展過程について精度の良いシミュレーション結果を得ることができる。その結果、連続体に生じるき裂の進展を精度良く評価することが可能となる。
【0131】
また、例えば、本実施形態のき裂進展評価装置が、連続体の損傷値の累積値が閾値以上である有限要素を削除する場合、削除した有限要素が次サイクルにおける応力ひずみ解析の解析対象から外れる。その結果、連続体に生じるき裂の進展の評価処理を途中で停止することなく実行することが可能となる。また、例えば、本実施形態のき裂進展評価装置が前記有限要素の剛性を変更する場合、解析モデルを再度作成することなく連続体に生じるき裂の進展の状況を評価することができる。
【0132】
また、本実施形態のき裂進展評価装置によれば、連続体に生じるき裂の進展経路上に配置された有限要素の節点の情報と、有限要素の損傷値の累積値と閾値との比較結果とに基づいて、連続体に生じるき裂の進展率を自動で算出することができる。また、本実施形態のき裂進展評価装置によれば、例えば、連続体の設計者が、前記算出されたき裂の進展率に基づいて連続体の形状を適宜変更することにより、安定的でばらつきが少なく、かつ、長寿命な連続体の設計をすることが可能となる。
【0133】
また、本実施形態のき裂進展評価装置によれば、連続体に生じるき裂の進展状態を精度良く自動で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本実施形態のき裂進展評価装置の構成の一例を示す図である。
【図2】連続体に加えられる温度サイクルの例を示す図である。
【図3】累積非線形ひずみ値の一例を示す図である。
【図4】き裂経路節点指示情報の一例を示す図である。
【図5】はんだ接合部の例を示す図である。
【図6】座標点指示情報の一例を示す図である。
【図7】判断結果情報記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【図8】き裂進展評価処理フローの一例を示す図である。
【図9】負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す図である。
【図10】サイクル数と非線形ひずみ振幅の値との対応を示す図である。
【図11】新たなコフィンマンソン則を用いたき裂進展評価処理フローを示す図である。
【図12】負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を示す図である。
【図13】シミュレーション処理の詳細を示すフローチャートの例である。
【図14】シミュレーション処理の詳細を示すフローチャートの例である。
【図15】き裂の進展率の算出処理の詳細を示すフローチャートの例である。
【図16】き裂の進展率の算出処理の詳細を示すフローチャートの例である。
【図17】BGAパッケージの解析モデルを示す図である。
【図18】BGAパッケージの解析モデルの部分拡大図である。
【図19】はんだ接合部に加えられる温度サイクルを示す図である。
【図20】本実施形態によるシミュレーション処理の結果を示す図である。
【図21】本実施形態によるシミュレーション処理の結果を示す図である。
【図22】本実施形態によるシミュレーション処理の結果を示す図である。
【図23】本実施形態によるシミュレーション処理の結果を示す図である。
【図24】サイクル数毎のはんだ接合部に生じるき裂の長さの表示例を示す図である。
【図25】はんだ接合部の解析モデルを示す図である。
【符号の説明】
【0135】
1 き裂進展評価装置
11 解析モデル作成部
12 応力ひずみ解析部
13 要素損傷判断部
14 変更部
15 き裂進展率算出部(算出部)
16 実測値入力部
17 コフィンマンソン則変更部
18 表示部
19 き裂経路節点指示情報記憶部
20 座標点指示情報記憶部
21 判断結果情報記憶部
131 算出結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価装置であって、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成する作成部と、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析する解析部と、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部による判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求める算出部と、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更するコフィンマンソン則変更部とを備える
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のき裂進展評価装置が、更に、
前記累積値が前記閾値以上である場合に、当該損傷値の累積値が前記閾値以上である有限要素を削除するか、又は当該有限要素の剛性を変更する変更部を備え、
前記解析部が、前記負荷のサイクルの現サイクルの終了時において前記変更部によって削除又は剛性が変更された前記連続体の複数の有限要素の各々について、前記現サイクルの次サイクルの負荷により生じる応力及びひずみを解析する
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載のき裂進展評価装置において、
前記算出部が、予め記憶手段に記憶された、前記連続体に生じるき裂の進展経路上に配置された有限要素の節点への外挿情報を用いて、前記累積値が前記閾値以上である前記き裂の進展経路の開始位置に配置された節点をき裂が開始する節点とし、当該き裂が開始する節点から前記累積値が前記閾値以上である最後の節点までの経路長を前記連続体に生じるき裂の長さとして算出し、前記き裂の進展経路の経路全長に対する前記算出されたき裂の長さの割合を前記連続体に生じるき裂の進展率として算出し、
前記コフィンマンソン則変更部が、前記算出部によって算出されたき裂の進展率、当該き裂の進展率に対応する負荷のサイクル数が、それぞれ、前記き裂の進展率の実測値、当該き裂の進展率の実測値に対応する負荷のサイクル数の実測値に一致するときの負荷のサイクル数の実測値を求め、前記コフィンマンソン則に基づいて、前記求まった負荷のサイクル数の実測値に対応する非線形ひずみ振幅の値を算出し、当該算出された非線形ひずみ振幅の値と前記求まった負荷のサイクル数の実測値とに基づいて、新たなコフィンマンソン則を求める
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【請求項4】
請求項1に記載のき裂進展評価装置が、更に、
前記判断部による判断結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に生じるき裂の進展状態を表示する表示部を備える
ことを特徴とするき裂進展評価装置。
【請求項5】
連続体に生じるき裂の進展を評価するき裂進展評価方法であって、
連続体に生じる応力及びひずみの有限要素法による解析に用いられる解析モデルであって、前記連続体を複数の有限要素に分割した解析モデルを作成し、
前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、当該負荷によって前記連続体の複数の有限要素の各々に生じる応力及びひずみを有限要素法によって解析し、
前記解析結果に基づいて、前記解析モデルを用いて、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル毎に、前記連続体の複数の有限要素の各々について、累積非線形ひずみ値を算出し、算出された累積非線形ひずみ値に基づいて非線形ひずみ振幅の値を算出し、算出された非線形ひずみ振幅の値に基づいてコフィンマンソン則を用いて損傷値を算出し、算出された損傷値に基づいてその累積値を算出し、前記累積値と予め定められた閾値とを比較して、前記累積値が前記閾値以上であるか否かを判断し、
前記判断結果に基づいて、前記負荷のサイクル毎に、当該負荷のサイクルの終了時において前記連続体に生じるき裂の進展率を算出して、負荷のサイクル数とき裂の進展率との対応を示す第1の対応情報を求め、
前記第1の対応情報と、前記連続体に繰り返し加えられる負荷のサイクル数の実測値と当該連続体に当該サイクル数分負荷を加えたときの当該連続体に生じるき裂の進展率の実測値との対応を示す第2の対応情報とに基づいて、前記コフィンマンソン則を変更する
ことを特徴とするき裂進展評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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