説明

すき鋏

【課題】例えば先端側部位を頭髪へ素早く出し入れしながらカットを行う場合に良好に櫛刃間から毛髪を抜き出すことができるのは勿論、基端側部位を用いて多くの毛髪の切断もスムーズに行える極めて実用性に秀れたすき鋏を提供すること。
【解決手段】棒状刃板2と櫛状刃板4とを、両刃板2,4の交叉部で枢着して開閉自在に構成したすき鋏であって、前記棒状刃板2の先端側部位に櫛刃9を多数並設状態に突設して、この棒状刃板2の先端側部位を櫛状刃板部10に設定し、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士が交叉し、基端側部位においては櫛刃と棒刃とが交叉するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すき鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2004−321199号公報(特許文献1)に開示されるように、刃縁を形成した棒状刃板と櫛刃を多数並設状態に突設した櫛状刃板とを、両刃板の交叉部で枢着して開閉自在に構成し、前記櫛刃の先端縁上の毛髪を棒状刃板の刃縁によって切断し、前記櫛刃間の間隙部に入った毛髪は、棒状刃板の刃縁によって切断し得ないように構成されたすき鋏がある。
【0003】
ところで、このような構成のすき鋏は、棒状刃板と櫛状刃板を閉じると、前記櫛刃間の間隙部が前記棒状刃板により一部閉塞されてしまうため、前記櫛刃間に落ちて切断されなかった毛髪を前記間隙部から抜き出す際に、毛髪が前記棒状刃板の刃縁に引っ掛かるなどして素早くスムーズに抜き出せない場合がある。また、抜き出す際に毛髪が前記刃縁によりそがれたりする場合もある。
【0004】
そこで、例えば特開2005−034577号公報(特許文献2)に開示されるように、すき鋏を構成する刃板の双方を櫛状刃板とし、両櫛状刃板を閉じた際、櫛刃間の間隙部同士を重合連通せしめることで、毛髪を抜くのに十分なスペースを確保可能な構成が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−321199号公報
【特許文献2】特開2005−034577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、櫛刃を構成する刃板の双方を櫛状刃板とした場合、棒状刃板に比し強度が低下し押し切りが良好に行えないため、一度に多くの毛髪をカットしようとすると、カット時の抵抗感が大きくスムーズなカットを行えず、更に、毛髪を完全に切断できずに一部のみを切断したり、折れ目を付けてしまうなど、毛髪を傷める可能性が増大してしまい、通常のカットを効率良く軽快に行うことはできない。
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決したもので、すき鋏の先端側部位に毛髪を抜き出すのに十分なスペースを確保でき、例えばすき鋏の先端を使って様々な角度から頭髪をカットする場合など、頭髪へ素早く鋏を出し入れする場合に、櫛刃間に毛髪が引っ掛かったりすることなくスムーズな操作が可能となるのは勿論、通常通り基端側部位まで開いて一度に多くの毛髪をカットする場合には、棒刃縁により抵抗感が少なくスムーズに多くの毛髪を切断することが可能な極めて実用性に秀れたすき鋏を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
刃縁1を形成した棒状刃板2と櫛刃3を多数並設状態に突設した櫛状刃板4とを、両刃板2,4の交叉部で枢着して開閉自在に構成し、前記櫛刃3の先端縁上の毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断し、前記櫛刃3間の間隙部7に入った毛髪5は、棒状刃板2の刃縁1によって切断し得ないように構成したすき鋏であって、前記棒状刃板2の先端側部位に櫛刃9を多数並設状態に突設して、この棒状刃板2の先端側部位を櫛状刃板部10に設定し、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士が交叉し、基端側部位においては櫛刃と棒刃とが交叉するように構成したことを特徴とするすき鋏に係るものである。
【0010】
また、前記棒状刃板2の櫛状刃板部10の櫛刃9間の間隙部8は、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、前記櫛状刃板4の櫛刃3間の間隙部7と連通し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のすき鋏に係るものである。
【0011】
また、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁に毛髪5を支承保持する凹状保持縁を形成し、この凹状保持縁に支承保持される毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断するように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のすき鋏に係るものである。
【0012】
また、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3は、この櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3より高強度となるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のすき鋏に係るものである。
【0013】
また、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3を夫々、対向する櫛状刃板4若しくは棒状刃板2に向かって直伸するように構成し、前記櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のすき鋏に係るものである。
【0014】
また、前記棒状刃板2の櫛刃体9及び前記櫛状刃板4の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のすき鋏に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上述のように構成したから、例えば先端側部位を頭髪へ素早く出し入れしながらカットを行う場合に良好に櫛刃間から毛髪を抜き出すことができるのは勿論、基端側部位を用いて多くの毛髪の切断もスムーズに行える極めて実用性に秀れたすき鋏となる。
【0016】
また、請求項2〜6記載の発明においては、本発明を一層容易に実現できる一層実用性に秀れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
棒状刃板2と櫛状刃板4とで挟持した毛髪5を切断する。この際、前記櫛刃3の先端縁上の毛髪5が棒状刃板2の刃縁1によって切断され、前記櫛刃3間の間隙部7に入った毛髪5は切断されない。
【0019】
具体的には、棒状刃板2と櫛状刃板4とを閉じることで両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士を交叉させ、基端側部位においては棒刃と櫛刃を交叉させて、この棒状刃板2と櫛状刃板4とで挟持した毛髪5を切断する。
【0020】
従って、両刃板2,4の先端側部位を様々な角度で頭髪に入れてカットを行う場合など、頭髪への両刃板2,4の出し入れを素早く行う場合であっても、両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士が交叉するから、棒刃と櫛刃とが交叉する場合には閉塞されてしまう櫛刃間の間隙部が閉塞されず、棒状刃板2の刃縁1に毛髪が引っ掛かったりすることなく、前記間隙部7に入った毛髪5をスムーズに抜き出すことができる。
【0021】
即ち、前記棒状刃板2の櫛状刃板部10の櫛刃9間の間隙部8を、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、前記櫛状刃板4の櫛刃3間の間隙部7と連通し得るように構成することができ、両刃板2,4を閉じる際に両間隙7,8が重合連通してこの重合連通部から良好に毛髪5を抜き出すことが可能となる。
【0022】
また、一度に多くの毛髪5をカットしたい場合など、両刃板2,4の基端側部位まで用いて毛髪を挟持切断する際には、櫛状刃板4の基端側部位の櫛刃3の先端縁上の毛髪5は棒状刃板2の刃縁により切断されるから、櫛刃より強度に秀れより安定的に毛髪を切断できる棒刃状の刃縁により容易に且つ確実に毛髪をカットすることができ、櫛刃同士で多くの毛髪を切断する際に生じる大きな抵抗感を感じることなく軽快にカットすることができ、また、より確実に毛髪5を切断でき毛髪5を傷めることも阻止される。
【0023】
従って、他の鋏に持ち替える必要なく、鋏の先端側部位を用いるカット(少量切断・出入回数多)と、基端側部位を用いるカット(多量切断・出入回数少)とを良好に行うことができ、先端側部位の出し入れ操作が極めてスムーズに行え、先端側部位を用いてのカットを使用者の負担なく行うことができ、基端側部位を用いるカットは通常通り行えることになる。
【0024】
よって、本発明は、鋏を素早く出し入れすることが要求される場合に毛髪を良好に抜きだすことができると共に、多くの毛髪を一度に軽快に且つ確実にカットすることが可能な極めて商品価値の高いすき鋏となる。
【0025】
また、例えば、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁に毛髪5を支承保持する凹状保持縁を形成し、この凹状保持縁に支承保持される毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断するように構成した場合には、毛髪5を前記凹状保持縁に支承保持される分の毛髪だけを切断することができ、より軽快に且つ確実にカットを行えることになる。
【0026】
また、例えば、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3は、この櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3より高強度となるように構成した場合には、両刃板2,4の先端側部位での毛髪5の切断を一層良好に行えることになる。
【0027】
また、例えば、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3を夫々、対向する櫛状刃板4若しくは棒状刃板2に向かって直伸するように構成し、前記櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成した場合には、より櫛状刃板部10の櫛刃9の強度を向上させることができ、両刃板2,4の先端側部位での毛髪5の切断をより一層良好に行えることになる。
【0028】
また、例えば、前記棒状刃板2の櫛刃体9及び前記櫛状刃板4の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成した場合には、一層毛髪5を櫛刃同士の間隙部から抜き出し易くなる。
【実施例】
【0029】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例は、図1に図示したように刃縁1を形成した棒状刃板2と櫛刃3を多数並設状態に突設した櫛状刃板4とを、両刃板2,4の交叉部で枢着して開閉自在に構成し、前記櫛刃3の先端縁上の毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断し、前記櫛刃3間の間隙部7に入った毛髪5は、棒状刃板2の刃縁1によって切断し得ないように構成したすき鋏であって、前記棒状刃板2の先端側部位に櫛刃9を多数並設状態に突設して、この棒状刃板2の先端側部位を櫛状刃板部10に設定し、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士が交叉し、基端側部位においては櫛刃と棒刃とが交叉するように構成したものである。
【0031】
即ち、両刃板2,4の先端側部位においては、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁上の毛髪5がこの櫛刃3と対向する櫛状刃板部10の櫛刃9の刃縁1により切断され、両刃板2,4の基端側部位においては、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁上の毛髪5がこの櫛刃3と対向する直線状の棒刃縁1により切断されることになる。
【0032】
具体的には、前記棒状刃板2の櫛状刃板部10の櫛刃9間の間隙部8は、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、前記櫛状刃板4の櫛刃3間の間隙部7と連通し得るように構成している。
【0033】
更に、図2,3に図示したように、前記間隙部7,8は底部が凹湾曲形状(R形状)に設定された長溝であり、これらを重合連通せしめることで平面視略楕円形状の長窓が形成されるように構成している。従って、棒刃の刃縁等、毛髪5が引っ掛かり易い部分がこの長窓内に存在せず、良好に毛髪5を抜き出す(鋏を差し込んだ頭髪から引き抜く)ことが可能となる。
【0034】
前記櫛状刃板部の櫛刃9及びこの櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3は、この櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3より高強度となるように構成している。
【0035】
具体的には、前記櫛状刃板部の櫛刃9及びこの櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3を夫々、対向する櫛状刃板4若しくは棒状刃板2に向かって直伸するように構成し、前記櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成している。
【0036】
即ち、棒状刃板2の櫛状刃板部10と、この櫛状刃板部10に対応する(この櫛状刃板部10と交叉する)櫛状刃板4の櫛刃3とを他の櫛刃3に比し幅太形状とし、櫛刃同士を交叉させて毛髪5を切断する際に問題となる強度の低下を抑制して可及的に安定したカットを行えるように構成している。また、櫛刃9を直伸するように構成する場合、加工が容易となり、それだけコスト安に製造可能となる。
【0037】
尚、本実施例は上述のように構成したが、図4に図示したように、前記棒状刃板2の櫛刃体9及び前記櫛状刃板4の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成しても良い。この場合には長溝の底部だけでなく、側部も湾曲する形状となり、一層スムーズに毛髪を前記櫛刃間の間隙部から抜き出せることになる。
【0038】
また、本実施例においては、前記棒状刃板2の先端側部位に設けた櫛状刃板部10は、7本の櫛刃9から構成している。尚、6本以下や8本以上の櫛刃9から構成しても良いが、櫛状刃板部10は少なくとも棒状刃板2の刃縁長の半分以下の長さに設定するのが望ましい。
【0039】
また、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁に毛髪5を支承保持する凹状保持縁を形成し、この凹状保持縁に支承保持される毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断するように構成している。
【0040】
具体的には、前記櫛刃3の先端縁を、直線状の傾斜長辺部11とこれと対向状態に設ける傾斜短辺部12とから成る偏U字状縁若しくは偏V字状縁に形成すると共に、前記傾斜長辺部11の先端が前記傾斜短辺部12の先端よりも前記刃板1側に突出状態となるように形成し、この偏U字状縁若しくは偏V字状縁を形成する傾斜長辺部11は、毛髪5を前記傾斜短辺部12側に案内する傾斜案内縁となるように形成し、前記傾斜短辺部12は、前記傾斜案内縁としての傾斜長辺部11により案内された毛髪5が、櫛刃3間に入ることを阻止する阻止縁となるように形成して、この傾斜短辺部12と傾斜長辺部11の基部11aとにより、前記櫛刃2の先端縁の一側寄りに形成される凹縁部13を前記凹状保持縁としたものである。
【0041】
具体的には、前記傾斜長辺部11は前記櫛状刃板4の基端側から先端側に向かって下り傾斜し、前記傾斜短辺部12はこの櫛状刃板4の先端側から基端側に向かって下り傾斜するようにして前記偏U字状縁若しくは偏V字状縁を形成し、前記刃板2と前記櫛状刃板4とが閉じる際、毛髪5はこの刃板2により刃板2の基端側から先端側に押動され、前記傾斜長辺部11により傾斜短辺部12側に案内され、前記傾斜短辺部12によりこの毛髪5がそのまま櫛刃3間に入ることが阻止されて、所定量の毛髪5が前記凹状保持縁に支承保持されると共に残余は前記櫛刃2間に入るように構成している。尚、図中、符号14は母指穴、15は環指穴13である。
【0042】
傾斜長辺部11は、この傾斜長辺部11が前記傾斜短辺部12に向かって下り傾斜することにより、前記毛髪5が自重で滑り落ちて前記傾斜短辺部12側に案内されるように構成した傾斜案内縁となるように形成している。
【0043】
傾斜短辺部12は、前記傾斜案内縁上を滑り落ちてきた毛髪5に対して上り傾斜する阻止縁となるように形成している。
【0044】
従って、前記傾斜長辺部11に載った毛髪5は自重により前記傾斜短辺部12側に案内されることになるが、この傾斜短辺部12は阻止縁となるように形成しているから、前記櫛刃2間に入ることが阻止されて前記凹縁部13に誘い込まれることになる。
【0045】
また、本実施例においては更に、前記刃板2により毛髪5が基端側から先端側に押動されて強制的に前記凹縁部13に誘い込まれるように構成している。具体的には、前記刃板2が閉じる際の軌道に沿って前記傾斜長辺部11が傾斜するように構成している。
【0046】
即ち、前記櫛状刃板4をカットを行う人の頭髪に当てることで単に凹縁部13に入った毛髪5だけでなく、前記傾斜長辺部11に載った毛髪5が、この傾斜案内縁に形成した傾斜長辺部11を滑り落ちて前記凹縁部13に入ったり、基端側から先端側を徐々に閉塞する前記刃板2と櫛状刃板4の閉動作に応じて基端側から先端側に向かって前記刃板2によって押動されて前記凹状保持縁である凹縁部13に強制的に誘い込まれるように構成している。
【0047】
従って、前記櫛刃4を幅狭として本実施例でいう凹縁部だけを先端縁に設定した場合(単に凹縁部に入った毛髪だけしか切断できない構成)と異なり、前記傾斜案内縁に設定した傾斜長辺部12に載った毛髪5までもを前記凹縁部13に誘い込むことができるから、前記凹縁部13には確実に毛髪5をためることができる。
【0048】
しかも、前記刃板2により強制的に毛髪5を基端側から先端側へ押動し凹縁部13に誘い込む場合には、前記傾斜長辺部11に前記毛髪5が残った状態で前記刃板2が閉じて毛髪5の切断が行われることがより確実に阻止されることになる。
【0049】
即ち、この傾斜長辺部11上の毛髪5を前記櫛刃3間に押出若しくは前記凹縁部13にためた上でこの毛髪5の切断が行われることになるから、確実に前記傾斜長辺部11に載った毛髪5を前記凹縁部13に誘い込むことができると共に、毛髪5に折れ目が付くことを一層確実に阻止できる。
【0050】
また、前記阻止縁により、前記傾斜案内縁によって凹縁部13に誘い込まれた毛髪5がたまることになり、この凹縁部13にたまった毛髪5が多くなるほど、この阻止縁の発揮する阻止作用は小さくなり、毛髪5はこの阻止縁を乗り越えて前記櫛刃3間に入りやすくなる。
【0051】
また、前記凹縁部13の大きさは前記櫛刃3間に前記毛髪5が入ることを阻止する阻止縁である前記傾斜短辺部12の長さと前記傾斜長辺部11の傾斜角度によって決定されることになり、前記阻止縁の果たす阻止作用の大きさは、この傾斜短辺部12の傾斜角度によって決まることになる。
【0052】
尚、傾斜長辺部11と傾斜短辺部12の長さの比は、少なくとも4対1以上となるように傾斜長辺部11を傾斜短辺部12に比しかなり長尺に設定する。これは、本実施例が、毛髪5を凹状保持縁にため込むというよりは、毛髪5を櫛刃3の先端縁上を流しながら捉えた毛髪5のみを切断することで極めて抵抗感少なく軽快にカットを行えるようにするためである。これにより使用者に疲労感がたまりにくく、カットを長時間行える構成を実現できることになる。
【0053】
また、本実施例においては、前記傾斜長辺部11の基部11aと傾斜短辺部12とから形成される凹状保持縁である凹縁部13が、前記櫛刃3の先端縁の一部に幅狭に形成されるように設定している。
【0054】
即ち、前記櫛刃3の先端縁全体でなく、この一部に前記凹縁部13を形成することにより、この凹縁部13をより幅狭に形成できることになり、前記櫛刃3の先端縁全部を凹縁部に設定した場合より毛髪5がたまる量を少なく設定でき、これにより常に大きな抵抗なく切断できる量の毛髪5を前記凹縁部13にためられることになる。
【0055】
このように前記凹縁部13を幅狭とした場合でも、前述したように前記傾斜案内縁に設定した傾斜長辺部11により、この凹縁部13には前記毛髪5が確実に誘い込まれてたまることになるから、切断する毛髪5が少なくなり過ぎることはない。
【0056】
また、本実施例においては、複数の凹状保持縁を櫛刃4の先端縁に並設した構成としている。具体的には、前記偏U字状縁を複数並設した構成としても良いし、傾斜案内縁のない単なるU字状縁を前記偏U字状縁に並設した構成としても良い。本実施例においては、前記凹縁部13に加え、この凹縁部13からあふれ排出した毛髪5を支承保持するこの凹縁部13と略同形状の凹溝6を凹縁部13の低位側に凹設した構成、即ち、刃板2の閉動軌道に沿って並設している。
【0057】
即ち、前記櫛刃3の先端縁に並設される凹状保持縁は(具体的にはこの凹状保持縁の底部が)、前記櫛状刃板4の基端側程高く、先端側程低くなるように設定する。
【0058】
この場合には、複数の凹状保持縁に支承保持された毛髪5を複数回に分けて段階的に切断できることになる。即ち、一度の閉動作で切断できる毛髪5の量を増やすため、単にこの凹状保持縁をより広く深く形成した場合には、この毛髪5の切断時の抵抗がその分増えることになり、良好なカッティングが阻害されてしまうのに対し、上述のような凹状保持縁を並設することで、各凹状保持縁に前記毛髪5を分散して支承保持し、これら分散して支承保持された毛髪5を各個に少ない抵抗で切断できることになる。従って、切断時の抵抗を増加させることなく、一度の閉動作で切断できる毛髪5の量を増やすことができることになる。
【0059】
本実施例は上述のように構成したから、棒状刃板2と櫛状刃板4とで挟持した毛髪5を切断する際、前記櫛刃3の先端縁上の毛髪5が棒状刃板2の刃縁1によって切断され、前記櫛刃3間の間隙部7に入った毛髪5は切断されない。
【0060】
具体的には、棒状刃板2と櫛状刃板4とを閉じることで両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士を交叉させ、基端側部位においては棒刃と櫛刃を交叉させて、この棒状刃板2と櫛状刃板4とで挟持した毛髪5を切断する。
【0061】
従って、両刃板2,4の先端側部位を様々な角度で頭髪に入れてカットを行う場合など、頭髪への両刃板2,4の出し入れを素早く行う場合であっても、両刃板2,4の先端側部位においては櫛刃同士が交叉するから、棒刃と櫛刃とが交叉する場合には閉塞されてしまう櫛刃間の間隙部が閉塞されず、棒状刃板2の刃縁1に毛髪が引っ掛かったりすることなく、前記間隙部7に入った毛髪5をスムーズに抜き出すことができる。
【0062】
即ち、前記棒状刃板2の櫛状刃板部10の櫛刃9間の間隙部8を、前記棒状刃板2と前記櫛状刃板4とを閉じた際、前記櫛状刃板4の櫛刃3間の間隙部7と連通し得るように構成することができ、両刃板2,4を閉じる際に両間隙7,8が重合連通してこの重合連通部から良好に毛髪5を抜き出すことが可能となる。
【0063】
また、一度に多くの毛髪5をカットしたい場合など、両刃板2,4の基端側部位まで用いて毛髪を挟持切断する際には、櫛状刃板4の基端側部位の櫛刃3の先端縁上の毛髪5は棒状刃板2の刃縁により切断されるから、櫛刃より強度に秀れより安定的に毛髪を切断できる棒刃状の刃縁により容易に且つ確実に毛髪をカットすることができ、櫛刃同士で多くの毛髪を切断する際に生じる大きな抵抗感を感じることなく軽快にカットすることができ、また、より確実に毛髪5を切断でき毛髪5を傷めることも阻止される。
【0064】
従って、他の鋏に持ち替える必要なく、鋏の先端側部位を用いるカット(少量切断・出入回数多)と、基端側部位を用いるカット(多量切断・出入回数少)とを良好に行うことができ、先端側部位の出し入れ操作が極めてスムーズに行え、先端側部位を用いてのカットを使用者の負担なく行うことができ、基端側部位を用いるカットは通常通り行えることになる。
【0065】
また、前記櫛状刃板4の櫛刃3の先端縁に毛髪5を支承保持する凹状保持縁を形成し、この凹状保持縁に支承保持される毛髪5を棒状刃板2の刃縁1によって切断するように構成したから、毛髪5を前記凹状保持縁に支承保持される分の毛髪だけを切断することができ、より軽快に且つ確実にカットを行えることになる。
【0066】
また、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3は、この櫛状刃板部の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3より高強度となるように構成したから、両刃板2,4の先端側部位での毛髪5の切断を一層良好に行えることになる。
【0067】
また、前記櫛状刃板部10の櫛刃9及びこの櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得る前記櫛状刃板4の櫛刃3を夫々、対向する櫛状刃板4若しくは棒状刃板2に向かって直伸するように構成し、前記櫛状刃板部10の櫛刃9と重合し得ない前記櫛状刃板4の他の櫛刃3を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板4の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成したから、より櫛状刃板部10の櫛刃9の強度を向上させることができ、両刃板2,4の先端側部位での毛髪5の切断をより一層良好に行えることになる。
【0068】
よって、本実施例は、鋏を素早く出し入れすることが要求される場合に毛髪を良好に抜きだすことができると共に、多くの毛髪を一度に軽快に且つ確実にカットすることが可能な極めて商品価値の高いすき鋏となる。
【0069】
本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施例の概略説明図である。
【図2】本実施例の要部の概略説明側面図である。
【図3】本実施例の要部の概略説明側面図である。
【図4】別例の要部の概略説明側面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 刃縁
2 棒状刃板
3・9 櫛刃
4 櫛状刃板
5 毛髪
7・8 間隙部
10 櫛状刃板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃縁を形成した棒状刃板と櫛刃を多数並設状態に突設した櫛状刃板とを、両刃板の交叉部で枢着して開閉自在に構成し、前記櫛刃の先端縁上の毛髪を棒状刃板の刃縁によって切断し、前記櫛刃間の間隙部に入った毛髪は、棒状刃板の刃縁によって切断し得ないように構成したすき鋏であって、前記棒状刃板の先端側部位に櫛刃を多数並設状態に突設して、この棒状刃板の先端側部位を櫛状刃板部に設定し、前記棒状刃板と前記櫛状刃板とを閉じた際、両刃板の先端側部位においては櫛刃同士が交叉し、基端側部位においては櫛刃と棒刃とが交叉するように構成したことを特徴とするすき鋏。
【請求項2】
前記棒状刃板の櫛状刃板部の櫛刃間の間隙部は、前記棒状刃板と前記櫛状刃板とを閉じた際、前記櫛状刃板の櫛刃間の間隙部と連通し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のすき鋏。
【請求項3】
前記櫛状刃板の櫛刃の先端縁に毛髪を支承保持する凹状保持縁を形成し、この凹状保持縁に支承保持される毛髪を棒状刃板の刃縁によって切断するように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のすき鋏。
【請求項4】
前記櫛状刃板部の櫛刃及びこの櫛状刃板部の櫛刃と重合し得る前記櫛状刃板の櫛刃は、この櫛状刃板部の櫛刃と重合し得ない前記櫛状刃板の他の櫛刃より高強度となるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のすき鋏。
【請求項5】
前記櫛状刃板部の櫛刃及びこの櫛状刃板部の櫛刃と重合し得る前記櫛状刃板の櫛刃を夫々、対向する櫛状刃板若しくは棒状刃板に向かって直伸するように構成し、前記櫛状刃板部の櫛刃と重合し得ない前記櫛状刃板の他の櫛刃を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のすき鋏。
【請求項6】
前記棒状刃板の櫛刃体及び前記櫛状刃板の櫛刃を、基端部から先端部に向かって徐々に前記櫛状刃板の先端側若しくは基端側に傾斜若しくは湾曲するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のすき鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−117364(P2007−117364A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312936(P2005−312936)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591086050)株式会社山村製作所 (2)
【Fターム(参考)】