説明

すべりゴム支承

【課題】部品点数の増加やゴム沓の高さの増加を抑えることができるすべりゴム支承を提供する。
【解決手段】すべりゴム支承1は下沓11と、ゴム沓20と、上沓30と、を有している。ゴム沓20は、上面に配置された上面補強板23と、内部に埋め込まれた複数枚の内部補強板22とが、シート状のゴム体21を挟んで積層されて加硫成型時に一体的に形成されている。上面補強板23は、側縁がゴム体21の周囲から庇状に突出し、突出した部分に形成された切欠部25に、下沓11に固定されたサイドブロック12が侵入して、水平方向に略移動不能に拘束されている。そして、上面補強板23の上面には上面凹部24が形成され、凹部にテフロン(登録商標)製のすべり板40が嵌め込まれて接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすべりゴム支承、特に、橋梁の橋桁等の上部構造と橋脚等の下部構造との間に設置され、橋軸方向の相対移動を可能に支承するすべりゴム支承に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、橋脚に固定された下沓と橋桁に固定された上沓とを連結する弾性沓(弾性支承装置に同じ)は、せん断変形による支圧面積の減少を防止するため、せん断変形を生じさせないようにした発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2849701号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、内部に複数枚の金属製の補強プレートが加硫成型時に埋め込まれた積層ゴムであるゴム沓が、下沓の上面に載置されたものである。そして、ゴム沓の上には、水平方向に略移動不能(厳密には、僅かに移動する)に拘束された中間プレートが載置され、中間プレートの上面に形成された凹部にはテフロン(登録商標)板がはめ込まれて接着されている。したがって、該テフロン(登録商標)板が、上沓の下面を構成するステンレス板に当接して、該当接部においてすべりが発生するため、ゴム沓がせん断変形しないものである。
しかしながら、ゴム沓の上面に新たに中間プレートを載置するため、部品点数が増すだけでなく、下沓の上面と上沓の下面との距離(以下、「ゴム沓の高さ」と称す)が大きくなり、取り替え工事等において高さ制限がある場合、かかる発明の適用が限定されるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するものであって、部品点数の増加やゴム沓の高さの増加を抑えることができるすべりゴム支承を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るすべりゴム支承は、下部構造に設置される下沓と、該下沓に載置されたゴム沓と、該ゴム沓に相対移動可能に載置され、上部構造に設置される上沓と、を有し、
前記ゴム沓は、上面に配置された上面補強板と、内部に埋め込まれた複数枚の内部補強板とが、シート状のゴム体を挟んで積層されて加硫成型時に一体的に形成され、
前記上面補強板は、側縁が前記ゴム体の周囲から庇状に突出し、上面に凹部が形成され、該凹部にすべり板が嵌め込まれて接着されていることを特徴とする。
(2)また、前記上面補強板は、水平方向拘束手段によって水平方向に略移動不能であることを特徴とする。
(3)さらに、前記すべり板が、フッ素樹脂によって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
(i)本発明に係るすべりゴム支承は以上の構成であるから、ゴム沓と別個の部材(特許文献1における中間プレート等)を有しないから、部品点数を減らすことができ、製造コストを抑えることができる。
(ii)また、上面補強板は、水平方向に略移動不能になるように拘束されるから、ゴム沓のせん断変形が防止される。
(iii)さらに、すべり板がフッ素樹脂によって形成されるから、摩擦抵抗が小さく、上沓の相対移動が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態1]
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係るすべりゴム支承を説明するものであって、図1は模式的に示す平面図、図2の(a)は橋軸方向に見た側面図、図2の(b)は図2の(a)の部分拡大図、図3の(a)は図2の(a)におけるA−A断面図、図3の(b)は図2の(a)におけるB−B断面図である。
図1〜図3において、すべりゴム支承1は、橋梁の下部構造(図示しない)に設置される下沓11と、下沓11に載置されたゴム沓20と、ゴム沓20に相対移動可能に載置される上沓30と、を有している。なお、図中、下沓11とゴム沓20と上沓30とをまとめて支承全体10としている。
【0009】
(すべりゴム支承)
支承全体10は、矩形板状の下沓11と、一対のサイドブロック12と、を有し、取付用ボルト13が下沓11とサイドブロック12とを連結している。
サイドブロック12は、上端に庇部12aが形成された角柱部12bと、角柱部12bの橋軸方向の両側に形成された取付用フランジ部12c(取付用孔が形成されている)とを有している。
そして、下沓11はアンカーボルト(図示しない)によって下部構造(図示しない)に連結され、上沓30は取付用ボルト33またはアンカバー(図示しない)によって、上部構造(図示しない)に連結されている。なお、本発明はかかる連結要領を限定するものではなく、例えば、溶接や通常のボルト等であってもよい。
【0010】
(ゴム沓)
ゴム沓20は、上面に配置された上面補強板23と、内部に埋め込まれた複数枚の内部補強板22とが、シート状のゴム体21を挟んで積層されて加硫成型時に一体的に形成されている。そして、上面補強板23は、側縁がゴム体21の周囲から庇状に突出し、上面に上面凹部24が形成され、凹部にテフロン(登録商標)製等のすべり板40が嵌め込まれて接着されている。
上面補強板23の両側縁で橋軸方向の中央に、矩形状の切欠部25が形成され、切欠部25にサイドブロック12の角柱部12bが侵入している。
したがって、上面補強板23は一対の切欠部25において、角柱部12bによって、水平方向に移動不能に拘束されている(正確には、両者の間に遊び(クリアランス)があるから、該遊び分だけ移動自在である)。
【0011】
(上沓)
上沓30は、矩形板の上沓ベース32と、上沓ベース32の両側縁に形成された上沓フランジ31と、上沓ベース32に形成された上部構造物に取り付けるための取付用ネジ孔(図示しない)に螺合した取付用ボルト33と、を有している。
そして、上沓フランジ31の側端は、一対のサイドブロック12の角柱部12bによって橋軸直角方向には移動不能で、橋軸方向には移動自在に案内されている。また、上沓フランジ31の上面は、一対のサイドブロック12の庇部12aによって上方向に浮き上がり不能に案内されている。
【0012】
(すべり板)
すべり板40は、矩形(ないし円形)の板材であって、上面補強板23の凹部24から僅かに突出した状態で、嵌め込まれ、且つ接着されている。このとき、すべり板40を複数の板材によって構成し(これに伴って、凹部24が複数の凹部によって形成される)、かかる複数の板材の上面によって、共通する平面を形成するようにしてもよい。
また、すべり板を形成する材質は、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂に限定するものではない。例えば、所定の耐圧強度と摩擦係数を有するものであれば、何れの樹脂であっても、また金属(例えば、オイルレスメタル等)であってもよい。
【0013】
したがって、すべりゴム支承1は、ゴム沓と別個の部材(特許文献1における中間プレート等)を有しないから、部品点数を減らすことができ、製造コストを安価にすることができる。
また、すべり板40がフッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))によって形成されるから、すべり板40と上沓30とのすべりが容易になる。
【0014】
(水平方向拘束手段)
以上、水平方向拘束手段が、上面補強板23の両側縁で橋軸方向の中央に形成された矩形状の切欠部25と、下沓11(下部構造に連結されている)に連結されたサイドブロック12と、によって形成されているが、本発明はこれに限定するものではない。
例えば、切欠部25の位置が橋軸方向の中央から外れてもよい。また、切欠部に替えて、上面補強板23に側方への突出部を設け、下沓11にこれに係止する係止部材を設けてもよい。また、上面補強板23に貫通孔を設け、下沓11にこれを貫通する柱を設けてもよい(断面矩形状の貫通孔に、1本の断面矩形柱を貫通させてもよい)。さらに、上面補強板23のそれぞれの側端面に当接する当接部材(例えば、十字状に配置された4個の矩形柱や、対角する角部に当接する一対の断面L字状柱等)を、下沓11に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は以上であって、ゴム沓の高さが抑えられ耐久製に優れ、製造コストを抑えることができるから、橋梁は勿論、各種形態の土木構造物や建築構造物の耐震的に支承するデバイスとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るすべりゴム支承を説明する平面図。
【図2】図1に示すすべりゴム支承を説明する橋軸方向に見た側面図。
【図3】図1に示すすべりゴム支承を説明する平面視の断面図。
【符号の説明】
【0017】
1 すべりゴム支承
10 支承全体
11 下沓
12 サイドブロック
12a 庇部
12b 角柱部
12c 取付用フランジ部
13 取付用ボルト
20 ゴム沓
21 ゴム体
22 内部補強板
23 上面補強板
24 上面凹部
25 切欠部
30 上沓
31 上沓フランジ
32 上沓ベース
33 取付用ボルト
40 すべり板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造に設置される下沓と、該下沓に載置されたゴム沓と、該ゴム沓に相対移動可能に載置され、上部構造に設置される上沓と、を有し、
前記ゴム沓は、上面に配置された上面補強板と、内部に埋め込まれた複数枚の内部補強板とが、シート状のゴム体を挟んで積層されて加硫成型時に一体的に形成され、
前記上面補強板は、側縁が前記ゴム体の周囲から庇状に突出し、上面に凹部が形成され、該凹部にすべり板が嵌め込まれて接着されていることを特徴とするすべりゴム支承。
【請求項2】
前記上面補強板は、水平方向拘束手段によって水平方向に略移動不能であることを特徴とする請求項1記載のすべりゴム支承。
【請求項3】
前記すべり板が、フッ素樹脂によって形成されることを特徴とする請求項1または2記載のすべりゴム支承。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−59739(P2010−59739A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228838(P2008−228838)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000231855)日本鋳造株式会社 (19)
【Fターム(参考)】