説明

たらこ漬込み装置

【課題】家庭や工場を問わず手軽に明太子を製造でき、しかも、可及的短時間で味付けを行うことのできるたらこ漬込み装置を提供する。
【解決手段】たらこと調味液とを収容した容器を保持可能に構成すると共に、一対の支持板間に回転可能に軸架された架台部と、同架台部に回転力を付与する駆動部と、同駆動部により前記架台部を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構とを備え、前記たらこに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこの卵粒を卵嚢膜内で流動させることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たらこを調味液に浸漬して明太子を作るためのたらこ漬込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、明太子は福岡地方、特に博多を中心に様々な種類のものが製造され、日本全国において広く喫食されている。
【0003】
明太子の製造は、例えば、浅い箱型のバット内にたらこを並べ、唐辛子を含有する調味液をバット内に注ぎ込み、静置した状態でたらこを調味液に漬込みながら内部に調味液を浸透させることで行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−289209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の漬込み状態で静置する方法では、たらこの内部に調味液が十分に浸透するまで長時間を要していた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、家庭や工場を問わず手軽に明太子を製造でき、しかも、可及的短時間で味付けを行うことのできるたらこ漬込み装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る本発明では、たらこ漬込み装置において、たらこと調味液とを収容した容器を保持可能に構成すると共に、一対の支持板間に回転可能に軸架された架台部と、同架台部に回転力を付与する駆動部と、同駆動部により前記架台部を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構とを備え、前記たらこに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこの卵粒を卵嚢膜内で流動させることとした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載のたらこ漬込み装置において、前記架台部の回転軸は、鉛直方向に略直交する方向としていることに特徴を有する。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1又は請求項2に記載のたらこ漬込み装置において、前記架台部は、前記容器を載置する枠状のホルダを備えるとともに、同ホルダの両端から相反する方向に突出させた支軸部が形成されており、同支軸部の一方と前記駆動部とが連動連結されていることに特徴を有する。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3いずれか1項に記載のたらこ漬込み装置において、前記架台部の回転軸は、その仮想軸線が前記架台部に保持した容器を挿通するように設けられていることに特徴を有する。
【0011】
また、請求項5に係る本発明では、請求項1〜4いずれか1項に記載のたらこ漬込み装置において、前記架台部は、複数の容器を保持可能に構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によれば、たらこと調味液とを収容した容器を保持可能に構成すると共に、一対の支持板間に回転可能に軸架された架台部と、同架台部に回転力を付与する駆動部と、同駆動部により前記架台部を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構とを備え、前記たらこに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこの卵粒を卵嚢膜内で流動させることとしたため、家庭や工場を問わず手軽に明太子を製造でき、しかも、可及的短時間で味付けを行うことのできるたらこ漬込み装置を提供することができる。
【0013】
また、請求項2に係る本発明によれば、前記架台部の回転軸は、鉛直方向に略直交する方向としたため、架台部を回転させた際に、容器内に収容したたらこと調味液とを重力によって撹拌することができるため、より効率よくたらこに調味液を含浸させることができる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明によれば、前記架台部は、前記容器を載置する枠状のホルダを備えるとともに、同ホルダの両端から相反する方向に突出させた支軸部が形成されており、同支軸部の一方と前記駆動部とが連動連結されていることとしたため、支軸部を回転軸として架台部を回転させることができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明によれば、前記架台部の回転軸は、その仮想軸線が前記架台部に保持した容器を挿通するように設けられていることとしたため、架台部の回動に要するスペースを可及的に小さくしながらも、容器内に収容したたらこを転倒撹拌させることができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明によれば、前記架台部は、複数の容器を保持可能に構成したため、より多くのたらこの味付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の外観を示した説明図である。
【図2】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の正面図及び背面図である。
【図3】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の底面図及び平面図である。
【図4】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の左側面図及び右側面図である。
【図5】第1支持板の分解斜視図である。
【図6】第1支持板の透視斜視図である。
【図7】クリック機構の動作を示した説明図である。
【図8】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の使用状態を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の使用状態を示す説明図である。
【図10】本実施形態に係るたらこ漬込み装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、たらこと調味液とを収容した容器を保持可能に構成すると共に、一対の支持板間に回転可能に軸架された架台部と、同架台部に回転力を付与する駆動部と、同駆動部により前記架台部を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構とを備え、前記たらこに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこの卵粒を卵嚢膜内で流動させることを特徴とするたらこ漬込み装置を提供するものである。
【0019】
本実施形態に係るたらこ漬込み装置は、明太子を製造するために好適に用いることができる。特に、本装置によれば、手軽に短時間で明太子を製造することができるため、明太子作りの初心者に、作り方を気軽に体験させる際に適している。
【0020】
ここで、たらこ漬込み装置に使用するたらこは、鱈の卵巣、より好ましくは、スケトウダラの卵巣であり、卵嚢膜に包まれた所謂「一腹」の状態にあるものが好ましい。
【0021】
調味液は、最終的に食する明太子の味付けによって適宜調製されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、適量の水に酒、みりん、調味料、塩、唐辛子粉末等を混ぜ合わせたものが用いられるが、更に、柚や昆布等の香味食材を添加しても良い。
【0022】
たらこや調味液を収容するための容器は、金属製(例えば、ステンレス)や、プラスチック製(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)など、食品容器として好適なものであれば、適宜使用することができる。
【0023】
また、容器の形状は特に限定されるものではないが、回転によって卵嚢膜が傷つくのを可及的防止することのできる形状、例えば、円柱形とすることができる。
【0024】
以下、本実施形態に係るたらこ漬込み装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aの外観を示した説明図であり、図2は本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aの正面図及び背面図、図3はたらこ漬込み装置Aの底面図及び平面図、図4はたらこ漬込み装置Aの左側面図及び右側面図である。
【0025】
本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aは、たらこと調味液とを収容した容器16を保持可能に構成した架台部11と、同架台部11を軸架する支持部10と、軸架した架台部11に回転力を付与する駆動部12とを備えている。
【0026】
架台部11は、図1〜図4に示すように、容器16を載置するホルダ17と、ホルダ17の上部に蝶着した抑え板26とで構成している。また、ホルダ17は、平面視角丸長方形状とした底部支持板20と、同底部支持板20の周縁より立設した収容枠19とにより構成している。
【0027】
底部支持板20は、架台部11に収容した容器16の底部を支える部材であり、底部支持板20上の容器16の底部と対向する位置には、容器16内を目視するための円形状の底部開口20aが形成されている(図3(a)参照。)。この底部開口20aは、容器16が架台部11より脱落するのを防止するため、容器16の底部の直径よりも小さい直径としている。なお、この底部開口20aは、たらこ漬込み装置A全体の軽量化にも寄与している。
【0028】
収容枠19は、縦枠21と、側部枠24と、周枠22と、補助枠23とで構成している。
【0029】
縦枠21は、底部支持板20の正面側略中央部より上方へ伸延し、底部支持板20と平行に背面側へ折曲し、更に、底部支持板20の背面側略中央部へ下方へ向けて折曲する門型のフレームである。
【0030】
縦枠21の最上部の左右両側には、抑え板26がそれぞれ蝶着部材25を介して開閉自在に蝶着されている。また、抑え板26には、同抑え板26を閉じた状態でロックするための係止片34が配設されている。この係止片34は、後述の係止環35と協働して抑え板26をロックする係止部材33として機能するものである。
【0031】
側部枠24は、底部支持板20の左右両側部より上方へ伸延させて形成しており、その先端部には、係止部材33の一部を構成する係止環35が配設されている。この係止環35は、前述の抑え板26の係止片34に係合させることで、抑え板26を閉じた状態に維持する。
【0032】
周枠22は、底部支持板20と略同形状に周回させて形成したフレームであり、縦枠21と左右両側の側部枠24とを連結している。
【0033】
また、周枠22と左右の側部枠24との交差部には、周枠22の外方へ向けて突設した支軸部28(28L,28R)を形成しており、架台部11を支持部10に回転可能に軸架している。すなわち、この支軸部28は、架台部11の回転軸として機能する。
【0034】
特に、本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aでは、架台部11の回転軸を、鉛直方向に略直交する方向(水平方向)としており、容器16内に収容したたらこと調味液とを重力によって撹拌することができるため、より効率よくたらこに調味液を含浸させることができる。
【0035】
また、支軸部28は、周枠22と左右の側部枠24との交差部に設けているため、支軸部28Lと支軸部28Rとを結ぶ仮想軸線が、架台部11に保持した容器16を挿通することとなる。このような仮想軸線上に回転軸があるため、架台部の回動に要するスペースを可及的に小さくしながらも、容器内に収容したたらこを転倒撹拌させることができる。
【0036】
また、周枠22と右の側部枠24との交差部に突設した支軸部28Rは、断面視十字状に形成しており、後述する駆動軸30に穿設した孔部に挿入させて、駆動部からの回転力を架台部11に伝達可能に構成している。なお、補助枠23は、底部支持板20と周枠22とを連結する補強部材として機能するものである。
【0037】
架台部11は、上述のような構成を有しており、複数の容器16(本実施形態では2この容器16)を保持可能として、転倒させた際に容器16が脱落することのないように構成している。
【0038】
支持部10は、図1〜図4に示すように、底板14と、同底板14の左右側辺部より立設した第1支持板13及び第2支持板15とを備えている。
【0039】
底板14には、図3(a)に示すように、中央部に底板開口14aを形成しており、たらこ漬込み装置Aの重量が軽くなるよう軽量化が図られている。
【0040】
また、底板14の四隅には、それぞれゴムやシリコン等の弾性材料で形成された防滑体36が配設されており、たらこ漬込み装置Aを駆動した際に、接地面に対して底板14が滑らないようにしている。
【0041】
底板14の右側に立設した第1支持板13は、駆動ハンドル31と駆動軸30とで構成される駆動部12が右側面に配設されている。
【0042】
駆動軸30は、第1支持板13を貫通して左側面より突出させており、その端面には、長手方向に穿設された十字状の孔部が形成されている(図示せず)。この孔部に、架台部11の右側に設けた断面視十字状の支軸部28Rを挿入することにより、駆動部12からの回転力を架台部11に伝達可能としている。すなわち、支軸部28の一方(支軸部28R)と駆動部12とが連動連結されている。
【0043】
また、本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aの特徴として、第1支持板13には、駆動部12により架台部11を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構45が内蔵されている。このクリック機構45については、後に詳述する。
【0044】
底板14の左側に立設した第2支持板15は、架台部11の左側に設けた支軸部28Lを挿通するための支軸挿通孔18が設けられており、同支軸挿通孔18に支軸部28Lを挿通するとともに、駆動軸30の孔部に支軸部28Rを挿入することで、支持部10に架台部11を回転可能に軸架する構成としている。
【0045】
また、第2支持板15の左側面(外側面)には、使用者が把持するための把持部32を設けており、駆動部12により架台部11を回転させる際に、たらこ漬込み装置Aが載置面に対して滑ったり、浮き上がったりすることを防止するようにしている。すなわち、使用者が把持部32を握ってたらこ漬込み装置Aをしっかり支えることにより、後述のクリック機構45による回転抵抗や振動を、容器16内に収容したたらこに確実に伝達し、滑りや浮き上がりによる回転抵抗や振動の減衰を可及的防止するようにしている。このような把持部32は、必ずしも必須の構成ではないものの、たらこ漬込み装置Aを軽量としながらも、クリック機構45による回転抵抗や振動をたらこに対してしっかりと伝えることができ、家庭でも更に容易に可及的短時間で十分な味付けを施すことができる。
【0046】
次に、第1支持板13の内部の構成について、クリック機構45を中心に、図5〜7を参照しながら説明する。図5は第1支持板13の分解斜視図、図6は第1支持板13の透視斜視図、図7はクリック機構45の動作を示した説明図である。
【0047】
図5及び図6に示すように、第1支持板13は、外側板40、第1副板41,主板42、第2副板43、内側板44、及びこれらの内部に配設されたクリック機構45で構成している。
【0048】
外側板40には、駆動軸30を挿通する駆動軸挿通孔50が穿設されており、駆動軸30を挿通可能に構成している。
【0049】
第1副板41は、山形状に形成した外枠51と、同外枠51の底辺部略中央より上方へ立設した支柱52とで構成している。
【0050】
支柱52の中途部には、左右へ向けて矩形状に膨出させた幅広部53が形成されており、同幅広部53には、後述の弾性体82を自由状態よりもやや圧縮した状態に保つためのバネ長規制穴54が設けられている。
【0051】
また、支柱52の上部には、後述の当接ローラ80のローラ軸81を挿通し、当接ローラ80の移動を規制する長穴状のローラ軸摺動孔55が穿設されている。
【0052】
主板42は、山形状に形成した外枠61と、同外枠61の高さ方向中途部で左右方向に伸延する梁部62とを備えており、同梁部62上にクリック機構45が配置されている。
【0053】
第2副板43は、第1副板41と略同様の構成としているが、支柱52のローラ軸摺動孔55よりも上部に、駆動軸30を受けるための軸受部56が形成されている。
【0054】
内側板44は、外側板40と同様に、駆動軸30を挿通する駆動軸挿通孔50が穿設されており、本内側板44の架台部11側に、駆動軸30の端部を露出可能としている。
【0055】
また、外側板40、第1副板41、主板42、第2副板43、内側板44には、ボルトを挿通するためのボルト穴がそれぞれ対応する位置に穿設されており、同ボルト穴にボルトを挿通することにより、外側板40と内側板44との間に第1副板41、主板42、クリック機構45、第2副板43、をサンドイッチ状に挟み込んで第1支持板13を一体的に構成している。
【0056】
次に、主板42の梁部62上に配設したクリック機構45について説明する。
【0057】
クリック機構45は、図5及び図6に示すように、梁部62上に配設された弾性体82と、弾性体82上に配置される2枚のローラ支持板83,83と、同ローラ支持板83,83に支持された当接ローラ80と、同当接ローラ80と接触した状態で駆動部12からの回転力により回転する星形カム84とを備えている。
【0058】
具体的に説明すると、弾性体82は、金属線をコイル状に形成した所謂蔓巻バネとしており、同弾性体82の上部に配置されたローラ支持板83,83を上方へ向けて付勢する。
【0059】
ローラ支持板83,83は、当接ローラ80を挟んで左右に2つ配設されており、それぞれに当接ローラ80のローラ軸81を挿通するためのローラ軸挿通孔86が設けられている。
【0060】
当接ローラ80は、肉厚円盤状のローラ本体87と、同ローラ本体87の左右両側方に突出して形成したローラ軸81とを備えており、ローラ支持板83,83に穿設されたローラ軸挿通孔86間に軸架されている。
【0061】
星形カム84は、駆動軸30を挿通した状態で固定しており、駆動軸30の回動に伴って回転するように構成している。
【0062】
また、星形カム84の外周は、中心方向へ向かって湾曲させた複数の谷部91と、谷部91間に形成した山部92とからなる側面視略歯車形状としている。特に、本実施形態では、谷部91の底部は、当接ローラ80の外周の曲率と略同じ曲率としており、当接ローラ80がフィットするようにしている。この谷部91は、駆動軸30を中心として45度毎に形成している。
【0063】
また、当接ローラ80のローラ本体87を、前述の弾性体82によりローラ支持板83,83を介して上方へ付勢し、星形カム84の外周に接触させている。
【0064】
次に、このような構成を有するクリック機構45において、所定角度毎に回転抵抗を発生させる状況について、星形カム84と当接ローラ80の動きに注目しながら、図7を参照しつつ説明する。
【0065】
まず、駆動ハンドル31を回転させていない状態では、図7(a)に示すように、当接ローラ80のローラ本体87は、星形カム84の谷部91に位置している。
【0066】
次いで駆動ハンドル31を回転させると、僅かに(本実施形態では22.5度)回転した瞬間においては、図7(b)に示すように、星形カム84が回動し、当接ローラ80との接点は、谷部91から山部92へ移ることとなる。この際、弾性体82の弾性力に抗して当接ローラ80を押し下げることとなるため、定速回転を阻害して回転抵抗となり、架台部11に装着した容器16内のたらこに瞬間的に負の加速度が与えられる。
【0067】
これにより、容器16内のたらこは、容器16の壁面や複数のたらこ同士と圧迫し合うこととなり、卵嚢膜内で卵粒が流動することとなる。しかも、負の加速度はたらこに対して瞬間的に働くため、調味液の浸透を助長しながらも、卵嚢膜が破れるおそれを可及的に防ぐことができる。
【0068】
さらに、駆動ハンドル31を回転させると、当接ローラ80は、再び星形カム84の谷部91に当接することとなる。このとき、当接ローラ80は弾性体82の弾性力によって押し上げられることとなり、星形カム84の回転を助長して回転速度を速める働きを生起する。
【0069】
そして、星形カム84の谷部に当接ローラ80がフィットすると、再び弾性体82の弾性力により回転抵抗が生起され、容器16内のたらこに瞬間的に負の加速度が与えられる。
【0070】
このような現象が駆動ハンドル31を動かすことで断続的に生起されることとなるため、たらこの卵嚢膜内では、卵粒が流動し、卵嚢膜を介して味付けが速やかに行われることとなる。したがって、明太子を作るにあたり、家庭でも可及的短時間で容易に十分な味付けを施すことができることとなる。
【0071】
次に、本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aの使用方法について、図8〜図10を参照しながら説明する。
【0072】
まず、図8(a)に示すように、係止部材33のロックを外し、抑え板26を開放してホルダ17に容器16を載置する。
【0073】
この容器16内には図8(b)に示すように、たらこBと調味液Cとが少なくとも収容されており、容器16を転倒撹拌した際に調味液C等が漏出しないよう、容器16の蓋部16aを密閉している。なお、本実施形態においては、ポリプロピレン製の1.5L容量の容器16としており、500gのたらこB(約10〜12腹)と300mLの調味液Cとを収容している。収容するたらこと調味液との割合は、たらこB500gに対して、調味液を300〜400mL程度とするのが適当である。
【0074】
なお、この図8(b)では、ホルダ17には2つの容器16を載置しており、それぞれの容器16内の調味液Cは、製造する明太子の味を異ならせるため、異なった味付けの調味液Cとしている。このように、ホルダ17に複数の容器16を載置可能とすることにより、異なる味付けの明太子を同時に製造することも可能となる。
【0075】
次に、抑え板26を閉じ、係止部材33をロックして、架台部11を回転可能な状態とする。そして、把持部32を把持し、駆動ハンドル31により駆動軸30を回転させる。
【0076】
すると、図9に示すように、架台部11の回転が開始され、架台部11の角度の変更に伴って回転抵抗や振動が断続的に生起されることとなる。これにより、容器16内のたらこBは、振動を受けながら加速度の変化を受けることにより、卵粒が卵嚢膜内で流動し、たらこBの深部に至るまで短時間で調味液Cを浸透させることができる。
【0077】
また、図10に示すように、架台部11が反転して容器16が転倒状態となった際には、たらこBが重力によって容器16の内部を移動し、また、他のたらこBからの重圧や、回転抵抗や振動により、卵粒が卵嚢膜内で流動することとなる。
【0078】
このように、本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aによれば、従来14〜16時間程要していた漬込み時間を、6〜8時間程度に短縮することができ、可及的短時間且つ容易にたらこBに調味液Cを含浸させて、明太子を製造することができる。
【0079】
上述してきたように、本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aによれば、たらこBと調味液Cとを収容した容器16を保持可能に構成すると共に、一対の支持板13,15間に回転可能に軸架された架台部11と、同架台部11に回転力を付与する駆動部12と、同駆動部12により前記架台部11を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構45とを備え、前記たらこBに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこBの卵粒を卵嚢膜内で流動させることとしたため、家庭でも容易に十分な味付けを施すことができるとともに、可及的短時間で味付けを行うことができる。
【0080】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0081】
本実施形態に係るたらこ漬込み装置Aでは、駆動軸30に駆動ハンドル31を配設することにより、手動にて架台部11を回転させることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、駆動軸30にモータ等の軸を連動連結することにより、電動にて架台部11を回転させるよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0082】
10 支持部
11 架台部
12 駆動部
16 容器
17 ホルダ
28 支軸部
30 駆動軸
45 クリック機構
A たらこ漬込み装置
B たらこ
C 調味液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たらこと調味液とを収容した容器を保持可能に構成すると共に、一対の支持板間に回転可能に軸架された架台部と、同架台部に回転力を付与する駆動部と、同駆動部により前記架台部を回転させる際に、所定角度毎に回転抵抗を生起するクリック機構とを備え、前記たらこに対して回転抵抗により断続的な衝撃による負荷を与えながら、前記たらこの卵粒を卵嚢膜内で流動させることを特徴とするたらこ漬込み装置。
【請求項2】
前記架台部の回転軸は、鉛直方向に略直交する方向としていることを特徴とする請求項1に記載のたらこ漬込み装置。
【請求項3】
前記架台部は、前記容器を載置する枠状のホルダを備えるとともに、同ホルダの両端から相反する方向に突出させた支軸部が形成されており、同支軸部の一方と前記駆動部とが連動連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のたらこ漬込み装置。
【請求項4】
前記架台部の回転軸は、その仮想軸線が前記架台部に保持した容器を挿通するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のたらこ漬込み装置。
【請求項5】
前記架台部は、複数の容器を保持可能に構成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のたらこ漬込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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