説明

つや出し剤及び硬質表面用清掃シート

【課題】天然油脂を用いたつや出し剤でありながら、合成樹脂を用いたつや出し剤の様な高光沢を付与することができるつや出し剤及びこれを用いた硬質表面用清掃シートを提供すること。
【解決手段】本発明のつや出し剤は、(A)不乾性油又は乾性油から選択される1種以上の天然油脂と、(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーと、(C)HLB8〜14の界面活性剤とを含有する。前記(A)成分としては、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油及びグレープシード油からなる群から選択される1種以上が好ましく用いられる。本発明の硬質表面用清掃シートは、前記つや出し剤をシート基材に含浸させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つや出し剤に関し、特に床などの硬質表面に高光沢を付与できるつや出し剤及びこれを用いた硬質表面用清掃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床などの硬質表面のつや出しをする場合、髪や埃などの汚れを取り除く洗浄剤や布、スポンジ等と、つや出しを行うワックス剤(つや出し剤)とを用い、洗浄処理、ワックス処理を順次行っていた。このため、硬質表面のつや出しを行なうには多大な手間と時間がかかっていた。
【0003】
特許文献1には、硬質表面のワックス仕上げ処理を効果的且つ省力的に行うことのできるワックス剤として、アルカリ金属の炭酸塩及び重炭酸塩の少なくとも1つを含む水溶液を電気分解して得られた電解洗浄液と、人体への健康阻害要因となりにくい天然ワックスを主成分とするワックス剤とを含有する洗浄ワックス剤が記載されている。
【0004】
天然ワックスを主成分とするワックス剤は、つや出し剤を塗布後に、磨き上げのための仕上げ拭きが必要である。しかし、特許文献1に記載の洗浄ワックス剤は、仕上げ拭きの必要はなく簡便ではあるが、満足できるつや効果を付与できない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−154560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、天然油脂を用いたつや出し剤でありながら、合成樹脂を用いたつや出し剤の様な高光沢を付与することができるつや出し剤及びこれを用いた硬質表面用清掃シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硬質表面に高光沢を付与し得るつや出し剤について種々検討した結果、オレイン酸等の不飽和結合(二重結合)の少ない脂肪酸を多く含んだ特定の天然油脂が優れた光沢付与能を有しているとの知見を得、更に検討した結果、該特定の天然油脂と、特定の高分子乳化剤と、特定の界面活性剤との3成分を含有する組成物が、つや出し剤として有効であり、また、前記高分子乳化剤を含むことで、塗布時の油性感やべたつき感が著しく抑制され、さらっとした感触と所望する粘度を得ることができるとの知見を得た。
【0008】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、(A)不乾性油又は乾性油から選択される1種以上の天然油脂と、(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーと、(C)HLB8〜14の界面活性剤とを含有するつや出し剤を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
また本発明は、前記つや出し剤をシート基材に含浸させてなる硬質表面用清掃シートを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のつや出し剤によれば、床などの硬質表面に拭きスジを生じさせずに高光沢を効率的に付与することができる。また、本発明の硬質表面用清掃シートによれば、硬質表面の汚れを除去しつつ高光沢を付与することができ、合成樹脂を用いたワックス剤のように溶剤を多量に含まないため、作業環境を悪化させない。更に、塗布前の洗浄作業、及び一度つや出し処理を施した硬質表面に対して、再度つや出し処理を行う場合の被膜を除去する作業を必要としないため作業の軽減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、先ず、本発明のつや出し剤について説明する。
本発明のつや出し剤は、下記(A)〜(C)の3成分を必須成分として含有する。
・(A)成分:不乾性油又は乾性油から選択される1種以上の天然油脂
・(B)成分:アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー
・(C)成分:HLB8〜14の界面活性剤
【0012】
(A)成分の天然油脂は、つや出し成分であり、主として塗布ムラや拭きスジを生じさせずに高光沢のつや出し効果の発現に寄与する。塗布ムラは、塗布時につや出し剤がきれいに塗布できない箇所である。また、拭きスジは、塗布時につや出し剤がきれいに塗布されたにもかかわらず、該つや出し剤の乾燥後に光沢を発現しない箇所である。
(A)成分の天然油脂としては、ハイオレイックサフラワー油(紅花)、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油、ヒマシ油等の不乾性油;グレープシード油、大豆油、あまに油、えの油、きり油、サフラワー油、ヒマワリ油等の乾性油が挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの天然油脂は、何れも植物油であり、25℃で液状又はペースト状のものである。
【0013】
本発明のつや出し剤は、つや出し成分として(A)成分の天然油脂を用いることにより、つや出し成分として合成樹脂やシリコーンを用いたつや出し剤に比して、遜色の無い光沢感及び拭きスジ防止性を示し、且つ再度のつや出し処理においては、前回のつや出し処理で形成された被膜の除去処理を行う必要が無く、常法通りつや出し剤を1度塗りするだけで、拭きスジの無い高光沢を実現できる。更に、シリコーンを用いた時のように、塗布面に滑りが生じないため、転倒などの危険性がない。
【0014】
上述した天然油脂の中でも、特に、不飽和結合(二重結合)の少ない脂肪酸であるオレイン酸又はリノール酸〔オレイン酸(炭素数18)の二重結合の数1、リノール酸(炭素数18)の二重結合の数2〕を主成分とする(全組成中に50質量%以上含有する)ものが好ましく、とりわけ、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油、ヒマシ油、あまに油、えの油、きり油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油及びグレープシード油は、少量で高いつや出し効果が得られるため、本発明で好ましく用いられる。中でも、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油、グレープシード油、大豆油が好ましく、更に好ましくはハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油、グレープシード油である。ハイオレイックヒマワリ油は、通常のヒマワリ油に比して、オレイン酸の含有量が多いという特徴がある。
【0015】
(A)成分の天然油脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、つや出し効果の観点から、全組成中に0.01〜70質量%、好ましくは0.01〜50質量%、更に好ましくは0.01〜45質量%含有される。
【0016】
(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸アルキル(好ましくはアルキル基の炭素数10〜30)との共重合体であり、本発明のつや出し剤においては主として(A)成分の天然油脂の乳化剤及びつや出し剤の増粘剤として作用する。(A)成分の天然油脂と共に(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーを併用することにより、つや出し剤中における油脂の油滴径が小さくなり、さらに、併用する界面活性剤量を低減することができると共に塗布時の油性感やべたつき感が著しく抑制され、さらっとした感触と所望する粘度を得ることができる。
【0017】
(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物(共重合体)が好ましい。下記式(1)中、Rは炭素数10〜30のアルキル基を示し、X及びYはそれぞれ共重合体における各ユニットのモル%を示し、X=80.0〜99.9モル%、Y=0.1〜20.0モル%である。
【0018】
【化1】

【0019】
(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2、カーボポール1382、カーボポールETD2020(商品名、Noveon Inc.社製)、アクペックHV501ER(住友精化社)等の市販品を使用することができる。本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、乳化安定性と増粘性の観点から、ペムレンTR−2が好ましい。
【0020】
(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーは、つや出し剤の乳化安定性及び光沢付与効果と粘度とのバランスの観点から、全組成中に好ましくは0.01〜2質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%含有される。
【0021】
(C)成分のHLB8〜14の界面活性剤は、その界面活性作用により、本発明のつや出し剤の乳化安定性を高め、延いては光沢付与能を高める上で重要な成分である。ここで、HLB(親水性・親油性バランス)は、下記のグリフィンの式により計算されるものである。(C)成分の界面活性剤のHLBは、好ましくは9〜13である。界面活性剤のHLBが8未満又は14を超えると、光沢性能及び乳化安定性に劣る。
<グリフィンの式>
HLB=20×{(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)}
【0022】
(C)成分のHLB8〜14の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ツヤ出し効果と乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートが好ましい。
【0023】
(C)成分の界面活性剤は、ツヤ出し効果と乳化安定性の観点から、全組成中に好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%含有される。
【0024】
本発明のつや出し剤は、つや出し効果及び拭きスジ防止と乳化安定性と粘度のバランスの観点から、(A)成分の天然油脂を全組成中に0.01〜70質量%、好ましくは0.01〜50質量%、更に好ましくは0.01〜45質量%、(B)成分のアクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーを全組成中に0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、(C)成分の界面活性剤を全組成中に0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%含有することが好ましい。
【0025】
本発明のつや出し剤は、前記(A)〜(C)の3成分に加えて、バランス量の水を含有する。水の含有量は、つや出し剤の全質量に対して好ましくは25〜99.8質量%である。
【0026】
また、本発明のつや出し剤には、前記(A)〜(C)の3成分及び水に加えて更に、本発明の効果を妨げない範囲で、この種のつや出し剤に使用される他の成分を適宜含有させることができる。他の成分としては、前記(B)成分以外の高分子乳化剤、前記(C)成分以外の界面活性剤、抗菌・抗カビ剤、pH調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、香料、色素、水溶性有機溶媒、水溶性ポリオール類等を挙げることができる。これら他の成分の含有量は特に制限されないが、つや出し剤の全質量に対して好ましくは0.001〜10質量%である。
【0027】
また、本発明のつや出し剤には、前記(B)成分のアクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー以外の高分子乳化剤として、アルキル変性水溶性高分子を適宜含有させることができる。アルキル変性水溶性高分子の市販品としては、アキュリン33(ISP社)等のアクリル酸アルキル共重合体;;Natrosol Plus 330CS、polysurf 67(以上、Aqualon Group、Hercules Inc.に所属)等のアルキル変性ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩として、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体にポリオキシエチレンアルキルエーテルがエステル結合した、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸のポリオキシエチレンアルキルエーテルエステル共重合体(例えばアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル共重合体(アキュリン22(ISP社))等の市販品を使用することもできる。
【0028】
また、本発明のつや出し剤には、前記(C)成分以外の界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を適宜含有させることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ピログルタミン酸イソステアリン酸ジエステル等のポリオキシエチレンヒマシ油、又は硬化ヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等のポリオキシエチレングリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリルトリイソステアレート等のポリオキシグリコールの脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;等のポリオキシエチレン付加型界面活性剤のほか、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては低泡性であることが望ましい。陰イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキル硫酸塩系界面活性剤;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN-アシルアミン酸塩系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ジポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩系界面活性剤などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、ジ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルポリオキシエチレン四級アンモニウム塩、ビス(ヒドロキシアルキル)四級アンモニウム塩、アミド/エステル結合を有する四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの成分(前記(C)成分以外の界面活性剤)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
特につや出し効果の観点から、本発明のつや出し剤には前記特定の陽イオン性界面活性剤を含有させることが好ましい。この場合、つや出し剤における前記(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマーと陽イオン性界面活性剤との含有質量比は、(B)成分:陽イオン性界面活性剤=1:0.5〜1:2、更に好ましくは1:1〜1:1.5の範囲にあることが好ましい。
【0030】
本発明のつや出し剤に含有可能な抗菌・抗カビ剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、ジフェニル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チアベンダゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、サリチル酸、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリル酸アミド、ラウリルトリメチルアンモニウム−2,4,5−トリクロルフェノキサイド、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ペンゼトニウム、トリクロロカルバニリド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物(ケーソンCG)、イミダゾリジニルウレア、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン(DMDMヒダントイン)、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)及びその誘導体(プロキセルBDN)、ε−ポリリジン、乳酸ナトリウム、ナイシン、カテキン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等が挙げられる。これらの抗菌・抗カビ剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明のつや出し剤に含有可能な水溶性有機溶媒としては、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明のつや出し剤に含有可能な水溶性ポリオール類は、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のアルキレングリコール;ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、フラクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール等の糖アルコール;グリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、及び澱粉分解還元アルコール等が挙げられる。これらの水溶性ポリオール類は単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明のつや出し剤に含有可能なpH調整剤としては、例えば塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩など、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤等が挙げられる。これらのpH調整剤は単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0034】
本発明のつや出し剤に含有可能な粘度調整剤としては、例えば天然多糖類、セルロース系高分子及び澱粉系高分子等の半合成高分子、ビニル系高分子及びポリエチレンオキシド等のその他合成高分子、ポリアクリル酸系、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体系、粘土鉱物等の水溶性高分子が挙げられる。これらの粘度調整剤は単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明のつや出し剤は、前記各成分を含有してなる、液状の水系組成物とすることができる。本発明のつや出し剤は、対象面に直接塗布してから、又は使用時に清掃シートに含浸してから、又は予め含浸してある清掃シートを用い、対象面を拭くという形で使用される。使用時には、モップなどの掃除具に装着して使用することができる。
【0036】
前記使用方法が可能なつや出し剤の粘度は、ブルックフィールド粘度(25℃)で、1〜10000mPa・s、好ましくは1〜1000mPa・s、更に好ましくは1〜800mPa・sである。つや出し剤の粘度が斯かる範囲内にあると、安定した徐放性、及び含浸工程でのハンドリングの点で特に好ましい。ここで、前記粘度はブルックフィールド型粘度計を用いて測定される。使用ローター及び回転数は、つや出し剤粘度に応じて適宜変更する。つや出し剤の粘度調整は、上述した水溶性有機溶媒、水溶性ポリオール類、pH調整剤及び粘度調整剤を適宜組み合わせて用いることにより行なうことができる。
【0037】
また、本発明のつや出し剤のpH(液温25℃におけるpH)はつや出し効果、乳化安定性、安全性、洗浄性能の観点から、好ましくは3〜10、更に好ましくは5〜9.5である。
【0038】
本発明のつや出し剤は、常法により製造することができる。例えば、水に(B)成分のアクリル・メタクリル酸アルキルコポリマー、(C)成分の界面活性剤、(A)成分の天然油脂、更に必要に応じて他の成分を順次添加することにより製造することができる。
【0039】
本発明のつや出し剤は、従来の液状のつや出し剤と同様に使用することができ、床、家具、木製品等の硬質表面のつや出し剤として有効である。本発明のつや出し剤によれば、少量で、硬質表面に拭きスジを生じさせずに高光沢とさらっとした感触を付与することができ、合成樹脂を用いたワックス剤のように溶剤を多量に含まないため、作業環境を悪化させない。また、再度のつや出し処理においては、硬質表面に残留している被膜の除去や仕上げ拭き等の作業をせずに、新たにつや出し剤を塗布するだけでつや出し効果が得られるため、作業性にも優れる。
【0040】
次に、本発明の硬質表面用清掃シート(以下清掃シートともいう)について説明する。
本発明の清掃シートは、上述した本発明のつや出し剤をシート基材に含浸させてなるものである。斯かる清掃シートは、つや出し剤による優れた光沢付与能のみならず、シート基材による硬質表面の汚れ捕集能も有しているため、硬質表面を該清掃シートで一度拭くだけで、硬質表面の洗浄とつや出しを同時に行なうことができ、硬質表面のつや出し処理の軽減を図ることができる。
【0041】
本発明の清掃シートにおいては、つや出し剤をシート基材の全質量に対し、1〜8倍、特に2〜5倍の質量比で含浸させることが好ましい。シート基材につや出し剤を含浸させる方法としては、例えば、適当な容器に収容されているつや出し剤中に、シート材を浸漬する方法が挙げられる。
【0042】
前記シート基材としては、上述した本発明のつや出し剤を保持し得るものであれば良く、例えば、織布、不織布、編布、紙、等を用いることができる。シート基材の坪量や厚みは、清掃シートの用途等に応じて適宜設定することができる。また、前記シート基材の形成材料としては、レーヨン、コットン、パルプ、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ナイロン繊維、アセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、親水性セルロース繊維、熱可塑性繊維、等が好ましく用いられる。これらのシート基材の形成材料は単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記シート基材の好ましい実施形態として、下記シート基材Aが挙げられる。
シート基材A:繊維長が2〜15mmで且つ繊度が10〜150dtexの熱可塑性繊維を10〜90重量%、及びセルロース系繊維を10〜90重量%含み、表面に前記熱可塑性繊維の先端部が多数存在して、清掃対象面に存する汚れに対する研摩性ないし掻き取り性を有するシート基材。
【0044】
前記シート基材Aに本発明のつや出し剤を含浸させて得られた清掃シートの一面を清掃対象面(硬質表面)に押し当てて、こすりつけることにより、該清掃シートに含浸されているつや出し剤が洗浄対象面に放出され、清掃対象面に存する汚れを膨潤、溶解ないし浮き上がらせる。これと共に、清掃シートの洗浄表面に多数存在している前記熱可塑性繊維の先端部が、清掃対象面に存する汚れを研摩ないし掻き取る。これらの機械的及び化学的作用によって、汚れが清掃対象面から除去される。除去された汚れは、つや出し剤中に溶け込むかあるいは分散して、つや出し剤と共に清掃シートに吸収される。このようにして、清掃対象面が清浄な状態となると共に、つや出し剤の作用により清掃対象面に高光沢が付与される。
【0045】
前記シート基材Aとしては、本出願人の先の出願に係る特開2003−61885号公報に記載の清掃用シートを用いることができる。前記シート基材Aの坪量は50〜500g/m2であることが好ましい。
【0046】
また、前記シート基材の好ましい別の実施形態として、下記シート基材Bが挙げられる。
シート基材B:繊維ウエブの繊維絡合で形成された不織布からなり、本発明のつや出し剤が含浸された該不織布における清掃対象面と接触する表面層の、サンドペーパー(粒度1200番)に対する静摩擦抵抗値が900〜2500cNであるシート基材。
前記静摩擦抵抗値は、前記表面層の繊維交絡状態の指標となるものであり、静摩擦抵抗値が900〜2500cN、好ましくは1100〜2200cN、更に好ましくは1200〜2000cNの範囲にあることによって、髪の毛や埃等の汚れの捕集性とシート強度及びシート操作性とのバランスが良好となる。
【0047】
前記静摩擦抵抗値は、本出願人の先の出願に係る特開2001−269300号公報の図2に示す方法で測定される。即ち、サンドペーパー(3M社製耐水ペーパー Techno sander粒度1200番)を張り付けた、底面が10cm×10cmの重り(サンドペーパーを含む全重量400g)を、水平な台上にしっかりと固定された、つや出し剤の含浸されたシート材(200mm×280mm)表面に、サンドペーパーのサンド面がシート材に対面するように載置する。重りの側面に糸を取り付け、この糸の他端を滑車を介して引張試験機(オリエンティック社製、RTM−25)のロードセルに取り付ける。引張試験機を作動させ、重りを500mm/minの速度で水平に30mm移動させ、その際の初期の最大静摩擦抵抗値を測定し、これを前記静摩擦抵抗値とする。測定は、シート基材の製造工程におけるシートの流れ方向(MD)と幅方向(CD)について実施し、サンドペーパーは1回の測定ごとに新しいものに交換する。MD及びCDの静摩擦抵抗値の何れもが前記範囲にあることが好ましい。
【0048】
前記シート基材Bは、例えば、内層と該内層を上下から挟持する一体の外層とが一体化された積層シートが挙げられる。外層は、前記表面層に相当する層であり、例えば、親水性セルロース繊維を30〜98質量%、及び低融点の熱可塑性繊維を2〜70質量%程度含んで構成され、スパンレース法により製造することができる。内層は、紙、不織布、織物、樹脂ネット等の種々のシート材料から構成することができる。
【0049】
前記シート基材Bとしては、本出願人の先の出願に係る特開2001−269300号公報に記載の床用清掃シートを用いることができる。前記シート基材Bの坪量は30〜300g/m2であることが好ましい。
【0050】
また、前記シート基材の好ましい別の実施形態として、下記シート基材Cが挙げられる。
シート基材C:繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体で、少なくとも一面が、該繊維集合体の構成繊維の交絡によって形成された多数の凸部と該凸部を取り囲む形状の凹部とを有し、前記繊維集合体の前記一面は、サンドペーパー(粒度1200番)に対する静摩擦抵抗値が900〜2500cNであるシート基材。
シート基材Cに係る静摩擦抵抗値は、上述したシート基材Bに係る静摩擦抵抗値と同じ意味である。シート基材Cは、髪の毛や固形ゴミを始めとするダストの捕集性能が高く、また、清掃時の摩擦抵抗が低く、操作性が良好なものである。
【0051】
前記シート基材Cは、繊度5dtex以下の繊維を50重量%以上、特に3.5dtex以下の繊維を70重量%以上含んでいることが、清掃シートに孔あきの発生を防止する点、充分な嵩高さの発現及びその維持の点、並びに髪の毛の汚れ捕集性及び保持性の向上の点で好ましい。
【0052】
前記シート基材Cとしては、本出願人の先の出願に係る特開2007−151821号公報に記載の床用清掃シートを用いることができる。前記シート基材Cの坪量は30〜300g/m2であることが好ましい。
【0053】
また、前記シート基材の好ましい別の実施形態として、下記シート基材Dが挙げられる。
シート基材D:液透過性の表面シート及び液保持性の吸収シートを具備してなり、該表面シートと該吸収シートとが一体化されている。前記表面シートは、パルプ繊維と熱可塑性繊維とを含む繊維混合物により形成されており、且つ表面に複数の凸部を有している。前記繊維混合物における前記熱可塑性繊維の含有量は、該繊維混合物の全重量に対して40〜95重量%である。前記吸収シートは、親水性セルロース系繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維混合物により形成されており、該熱可塑性繊維の含有量は、該吸収シートの全重量に対して5〜50重量%である。
【0054】
前記シート基材Dにおいては、前記吸収シートの坪量は10〜300g/m2が好ましい。吸収シートの坪量が10g/m2未満であると水分の保持量が少なくなり清掃面積が狭くなり、300g/m2を超えると生産コストが高くなり、また清掃具での把持性が悪くなることがあるので好ましくない。また、前記表面シートの坪量は5〜100g/m2が好ましい。表面シートの坪量が5g/m2未満であるとシート強度が弱くなり、破れたりヨレたりし、100g/m2を超えると吸収シートから被清掃面への水分移行が悪くなり清掃性が悪くなるので、好ましくない。
【0055】
前記シート基材Dとしては、本出願人の先の出願に係る特許第3621223号公報に記載の清掃シートを用いることができる。前記シート基材Dの坪量は20〜700g/m2であることが好ましい。
【0056】
本発明の清掃シートは、単層構造でも良く2層以上の多層構造でも良い。また、本発明の清掃シートの表面(洗浄面)にエンボス加工等により凹凸構造が形成されていても良い。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0058】
〔実施例1〜10及び比較例1〜5〕
下記表1に示す組成のつや出し剤をそれぞれ作製し、これらを実施例及び比較例のサンプルとした。各実施例及び比較例においては、(A)成分の天然油脂として、ハイオレイックヒマワリ油(横関油脂(株)製)、オリーブ油、大豆油、アマニ油(以上、和光純薬工業(株)製)、サフラワー油(MP Biomedicals社製)を用い、(B)成分のアクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーとして、ペムレンTR−2(Noveon Inc.社製)を用い、(C)成分の界面活性剤として、エマルゲン420(HLB14)、レオドールTW−O320V(HLB11)、エマノーン4110(HLB12)、レオドールSP−P10(HLB7)、レオドールTW−O120V(HLB15)(以上、花王(株)製)を用いた。各実施例及び比較例におけるつや出し剤の作製手順は次の通りである。
【0059】
(実施例1〜5におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(B)成分をプロペラ等で攪拌して分散させる。均一に分散後、(C)成分及び陽イオン性界面活性剤を加えてさらに攪拌し、pH調整剤を加えて所定のpHに調整する。残りのイオン交換水、及び(A)成分を加えて、ホモミキサー(10000rpm)で攪拌後、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0060】
(実施例6〜10におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(B)成分をプロペラ等で攪拌して分散させる。均一に分散後、(C)成分を加えてさらに攪拌し、pH調整剤を加えて所定のpHに調整する。残りのイオン交換水、及び(A)成分を加えて、ホモミキサー(10000rpm)で攪拌後、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0061】
(比較例1におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(B)成分をプロペラ等で攪拌して分散させる。均一に分散後、(C)成分を加えてさらに攪拌し、pH調整剤を加えて所定のpHに調整する。残りのイオン交換水を加えて更に攪拌し、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0062】
(比較例2におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(C)成分を加えて攪拌し、残りのイオン交換水、及び(A)成分を加えて、ホモミキサー(10000rpm)で攪拌後、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0063】
(比較例3におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(B)成分をプロペラ等で攪拌して分散させる。均一に分散後、pH調整剤を加えて所定のpHに調整する。残りのイオン交換水、及び(A)成分を加えて、ホモミキサー(10000rpm)で攪拌後、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0064】
(比較例4〜5におけるつや出し剤の作製手順)
下記表1に示す割合で、80℃に加熱したイオン交換水に(B)成分をプロペラ等で攪拌して分散させる。均一に分散後、(C)成分を加えてさらに攪拌し、pH調整剤を加えて所定のpHに調整する。残りのイオン交換水、及び(A)成分を加えて、ホモミキサー(10000rpm)で攪拌後、室温まで冷却してつや出し剤を得る。
【0065】
また、上記のようにして得られたつや出し剤を用いて次の手順で清掃シートを作製し、これらを実施例及び比較例の清掃シートのサンプルとした。
芯がポリプロピレンからなり鞘がポリエチレンからなる芯鞘構造で、立体クリンプ形状をもつ低融点繊維(2.8dtex×51mm)を用いて坪量27g/mのエアースルー不織布を作製した。一方、レーヨン繊維(1.7dtex×40mm)と、アクリル繊維(1.0dtex×51mm)と、芯がポリプロピレンからなり鞘がポリエチレンからなる芯鞘繊維(1.0dtex×38mm)とを重量比50/25/25の比率で混合し、常法のカード機で作製した坪量19g/m2の繊維ウエブを、前記エアースルー不織布の上下に積層した。次いで低エネルギー条件でウォーターニードリング処理を施し、エアースルー不織布と繊維ウエブとを交絡させて繊維自由度の高い表面層を有する坪量65g/m2の複合スパンレースを不織布を調整した。超音波エンボス機を用い、得られた不織布の全面にダイヤ柄の凹凸模様からなるエンボス加工を施して清掃シートを得た。
得られた清掃シートに前記つや出し剤を清掃シート重量に対して250重量%含浸させた。
【0066】
〔評価〕
実施例及び比較例のつや出し剤について、上述したブルックフィールド粘度(25℃)及び液温25℃でのpHを測定し、下記方法により乳化状態、液安定性、光沢付与性及び表面外観をそれぞれ評価した。また、実施例及び比較例の清掃シートについて、下記方法により清掃性能を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0067】
<乳化状態の評価方法>
調製直後(調製してから6時間以内)のつや出し剤をスライドガラス上に適量のせ、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製 VHX−500)で乳化した油滴粒子の状態を観察し、下記の基準で評価した。下記の基準において、△は、○には劣るものの、実用に堪えうるレベルである。
○:油滴粒子径が5μm以下で均一である
△:油滴粒子径が5μm以下であるが粒子径の均一性にやや劣る
×:油滴粒子径が5μmより大きいものが含まれる
【0068】
<液安定性の評価方法>
つや出し剤を100ml入りガラス瓶に充填し、室温(25℃)で静置保存した。静置保存開始から4日後及び7日後それぞれの時点におけるつや出し剤の状態を目視観察し、下記の基準で評価した。下記の基準において、△は、○には劣るものの、実用に堪えうるレベルである。
○:分離が認められない
△:分離がやや認められるが攪拌で容易に元に戻る(分離が解消される)
×:分離が認められる(攪拌しても分離が解消されない)
【0069】
<光沢付与性の評価方法>
MINOLTA社製光沢度計Mulit Gloss268を用い、入射角と受光角をそれぞれ60°に設定して、松下電工製フローリングウッディスーパーFに対してつや出し剤をwet塗布量3〜4g/m2で塗布し、塗布前と塗布後との光沢差(Δ光沢度)を
求めた。この光沢差が大きいほど、光沢付与性は高評価となる。
【0070】
<表面外観(目視光沢性)の評価方法>
前記<光沢付与性の評価方法>において光沢差がΔ5以上であったもの(つや出し効果
が得られたもの)のみについて、つや出し剤を塗布してから5分後の塗布面の外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:塗布面全体が光沢を発現しているのが容易に判る
○:塗布面全体が光沢を発現しているのが判る
△:塗布面の一部が光沢を発現しているのが判る
×:塗布面が光沢を発現しない
【0071】
<清掃性能の評価方法>
市販の床用清掃具(商品名クイックルワイパー、花王(株)製)に清掃シートを装着した。100cm×100cmフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上にJIS試験用ダスト7種(関東ローム層、細粒)を0.1g散布(刷毛を用いて均一に散布)し、フローリングを1往復で4列清掃した。この操作を6回繰り返した後、汚れた清掃シートを乾燥させて重量(清掃シートとつや出し剤由来の不揮発成分とダストとの合計重量)を測定し、この測定重量から、含浸前に測定した清掃シートの重量と理論上残留するつや出し剤由来の不揮発成分の重量とを差し引いて、ダストの捕集量を算出した。捕集されたダストの重量を、散布した全ダスト重量(0.6g=0.1g×6回)で除し、これに100を乗じてその値をダストの捕集率(%)とし、以下の基準で評価した。
○:捕集率80%以上(ダストの残留が目視では判らず、清浄な状態)
△:捕集率50〜79%(ダストが清掃面の一部に残留している状態)
×:捕集率50%未満(ダストが清掃面全体に残留している状態)
【0072】
【表1】

【0073】
表1の記載から明らかなように、実施例1〜10は、つや出し剤安定性と光沢性能に優れたものであった。
これに対し、比較例1は、(A)成分の天然油脂が配合されていないため、光沢付与性が劣るものであった。
また、比較例2は、(B)成分のアクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーが配合されていないため、つや出し剤の液安定性及び光沢付与性がやや劣るものであった。
また、比較例3は、(C)成分の界面活性剤が配合されていないため、つや出し剤の液安定性及び光沢付与性が劣るものであった。
また、比較例4は、つや出し剤の液安定性は良好であるものの、(C)成分の界面活性剤のHLBが7であるため、光沢付与性が劣るものであった。
また、比較例5は、(C)成分の界面活性剤のHLBが15であるため、つや出し剤の液安定性及び光沢付与性が劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不乾性油又は乾性油から選択される1種以上の天然油脂と、(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーと、(C)HLB8〜14の界面活性剤とを含有するつや出し剤。
【請求項2】
前記(A)成分が、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、椿油、ヒマシ油、あまに油、えの油、きり油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油及びグレープシード油からなる群から選択される1種以上である請求項1記載のつや出し剤。
【請求項3】
前記(A)成分を全組成中に0.01〜70質量%、(B)成分を全組成中に0.01〜2質量%、(C)成分を全組成中に0.1〜3質量%含有する請求項1又は2記載のつや出し剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のつや出し剤をシート基材に含浸させてなる硬質表面用清掃シート。

【公開番号】特開2009−173850(P2009−173850A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145238(P2008−145238)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】