説明

とげのある縫合糸における生体活性物質

【課題】美容、腹腔鏡手順および内視鏡手順で用いられる得る新規な縫合糸を提供する。
【解決手段】近位端および遠位端を有する少なくとも1つのフィラメントを備える細長い本体であって;この細長い本体から該縫合糸の少なくとも1つの端部に向かって突出するとげを有し、それによってこのとげとこの縫合糸本体との間の角度を形成する細長い本体;および上記とげと上記縫合糸本体との間の角度内に配置された有効量の生物活性薬剤、を備える。上記生物活性薬剤は、生物致死性薬剤、抗微生物薬剤、医薬、成長因子、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症薬剤、創傷修復薬剤、化学療法剤、生物学的薬剤、タンパク質療法剤、抗体、DNA、RNA、ペプチド、多糖、レシチン、脂質、抗血管形成薬物、ポリマー薬物およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本出願は、2006年9月6日に出願された米国仮出願第60/842,763号の利益を主張し、その開示は、本明細書中に参考として本明細書によって援用される。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
一般に、従来の縫合糸と同じ材料から作製されるとげのある縫合糸は、従来の縫合糸と比較して創傷を閉鎖するためにいくつかの利点を提供する。とげのある縫合糸は、1つ以上の間隔を置かれたとげを有する細長い本体を含み、これは、この縫合糸本体の表面からこの本体の長さに沿って突出している。これらのとげは、組織を通って1つの方向にこのとげのある縫合糸の通過を可能にするが、反対の方向にこのとげのある縫合糸の移動に抵抗するように配列されている。従って、とげのある縫合糸の1つの利点は、非スリップ属性の提供にある。
【0003】
とげのある縫合糸は、美容、腹腔鏡および内視鏡手順における使用のために公知である。とげのある縫合糸を用いることは、創傷中の縫合糸のより少ないスリップとともに組織における張力の配置を可能にする。縫合糸のとげの数は、創傷のサイズおよびこの創傷を閉鎖して保持するために必要な強度によって影響され得る。従来の縫合糸のように、とげのある縫合糸は、外科用ニードルを用いて組織中に挿入され得る。
【0004】
抗微生物薬剤のような生物活性薬剤は、創傷治癒プロセスの間の微生物感染を防ぐためのような外科用デバイスと関連している。微生物感染を防ぎ、そして処置するために抗微生物化合物で外科用縫合糸を被覆することもまた知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗微生物薬剤が、感染を防ぐために、外科用縫合糸および創傷包帯のために用いられている一方で、増加した抗微生物の効果とともに延長された期間の間、インビボで残存し得る改良されたとげのある縫合糸に対する継続する必要性が存在する。延長された期間の間とげのある縫合糸の抗微生物特徴を改善し、それ故、インビボで所望の抗微生物効果を達成するためにより少ない量の抗微生物薬剤の使用を可能にする、容易かつ安価な方法に対する必要性もまた存在している。治癒などを促進するための創傷部位にその他の生物活性薬剤の送達に対する必要性もまた存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
近位端および遠位端を有する少なくとも1つのフィラメントを備える細長い本体を有する外科用縫合糸が提供される。この縫合糸は、この細長い本体から少なくとも1つの端部に向かって突出するとげを含み、それによってとげと縫合糸本体との間で約90゜より小さい開先角度を形成する。実施形態では、生物活性薬剤が、このとげ角度、すなわち、とげと縫合糸表面との間で形成される角度内に堆積され得る。
【0007】
なお、さらなる実施形態では、本開示の縫合糸で組織を修復するための方法がまた、提供される。
【0008】
より特定すれば、本開示は、以下の項目に関し得る。
(項目1)外科用縫合糸であって:
近位端および遠位端を有する少なくとも1つのフィラメントを備える細長い本体であって;上記細長い本体から上記縫合糸の少なくとも1つの端部に向かって突出するとげを有し、それによって上記とげと上記縫合糸本体との間の角度を形成する細長い本体;および
上記とげと上記縫合糸本体との間の角度内に配置された有効量の生物活性薬剤、を備える、外科用縫合糸。
【0009】
(項目2)上記生物活性薬剤が、生物致死性薬剤、抗微生物薬剤、医薬、成長因子、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症薬剤、創傷修復薬剤、化学療法剤、生物学的薬剤、タンパク質療法剤、抗体、DNA、RNA、ペプチド、多糖、レシチン、脂質、抗血管形成薬物、ポリマー薬物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0010】
(項目3)上記抗微生物薬剤が、抗生物質、防腐薬、消毒薬、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目2に記載の外科用縫合糸。
【0011】
(項目4)上記抗微生物薬剤が、ヘキサクロロフェン、クロロヘキシシジン、シクロヘキシジン、ヨウ素、ポビドン−ヨード、p−クロロ−m−キシレノール、トリクロサン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、メテナミン、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される防腐薬である、項目3に記載の外科用縫合糸。
【0012】
(項目5)上記抗微生物薬剤が、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、フルオロピリミジン、5−フルオロウラシル、葉酸アンタゴニスト、メトトレキセート、ポドフィロトキシン、エトポシド、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、白金複合体、シスプラチン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リファンピンのようなリファマイシン、ポリビニルピロリドン、第4世代ペニシリンおよびそのアナログおよび誘導体、第1世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第2世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第3世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第4世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、モノバクタム、カルバペネム、アミノグリコシド、マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、シネロイド、クラリスロマイシン、硫酸カナマイシン、テトラサイクリン、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、キノロン、DNA合成インヒビター、スルホンアミド、β−ラクタムインヒビター、クロラムフェニコール、グリコペプチド、ムピロシン、ポリエン、アゾール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目2に記載の外科用縫合糸。
【0013】
(項目6)上記化学療法剤が、ドキソルビシン、パクリタキセル、カンプトテシン、ポリグルタメート−PTX、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー、アントラサイクリン、レトロゾール、アナストロゾール、上皮成長因子レセプターインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、アポトーシスのモジュレーター、ダウロルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン抗生物質、シクロホスファミドおよびメルファランのようなアルキル化剤、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシンのような代謝拮抗物質、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(グルタミン酸)、多糖類、これらのポリマー−薬物複合体、これらのコポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目2に記載の外科用縫合糸。
【0014】
(項目7)上記凝固剤が、ヒト成長因子、マガイニン、プラスミノゲンアクチベーター、スーパーオキシドジスムターゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン−2、リンホカイン、フィブリン、キトサン、シルク、タルク、ポリリジン、フィブロネクチン、ブレオマシインおよびそのアナログおよび誘導体、コラーゲン、金属ベリリウムおよびその酸化物、銅、サラシン、シリカ、結晶ケイ酸塩、石英ダスト、タルカム粉末、エタノール、細胞外マトリックス、フィブリノーゲン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、シアノアクリレート、サイトカイン、デキサメタゾン、イソトレチノイン、エストラジオール、ジエチルスチベステロール、シクロスポリン、オール−レチノイン酸およびそのアナログおよび誘導体、ウール、綿、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、アクチビン、アンギオポイエチン、コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、ブロモクリプチン、メチルセルギド、フィブロシン、糖タンパク質、プロテオグリカン、ヒアルロナン、酸性でかつシステインリッチな分泌タンパク質、トロンボスポンジン、テナシン、細胞接着分子、マトリックスメタロプロテイナーゼのインヒビター、メトトレキセート、カーボンテトラクロライド、チオアセトアミド、スーパーオキシドジスムターゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、血小板リッチ血漿、トロンビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目2に記載の外科用縫合糸。
【0015】
(項目8)上記縫合糸が、モノフィラメント縫合糸である、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0016】
(項目9)上記縫合糸が、マルチフィラメント縫合糸である、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0017】
(項目10)上記少なくとも1つのフィラメンが、分解可能材料、分解不能材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0018】
(項目11)上記少なくとも1つのフィラメントが、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロシキブチレート、ラクチド、ポリマー薬物、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分解可能材料を含む、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0019】
(項目12)上記ポリマー薬物が、ステロイド系抗炎症性薬物、非ステロイド系抗炎症性薬物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目11に記載の外科用縫合糸。
【0020】
(項目13)上記非ステロイド系抗炎症性薬物が、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ジフルシナルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目12に記載の外科用縫合糸。
【0021】
(項目14)上記ステロイド系抗炎症性薬剤が、コルチゾンおよびビトロコルチゾン、βメタゾン、デキサメタゾン、フルプレドニゾロン、プロドニゾンン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目12に記載の外科用縫合糸。
【0022】
(項目15)上記少なくとも1つのフィラメントが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブトエステル、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−ブタンジオール、シルク、コラーゲン、超高分子量ポリエチレンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される分解不能材料を含む、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0023】
(項目16)上記縫合糸の少なくとも一部分上に被覆をさらに備える、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0024】
(項目17)上記被覆が、分解可能ポリマーを含む、項目16に記載の外科用縫合糸。
【0025】
(項目18)上記被覆が、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロシキブチレート、ラクチド、ポリマー薬物、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目16に記載の外科用縫合糸。
【0026】
(項目19)上記被覆が、アルケンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノン、分解可能環状アミド、クラウンエーテル由来の分解可能環状エーテル−エステル、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、ポリアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ホスホリルコリン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルモノマー、ビニルアルコール、ビニルアセテート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーをさらに含む、項目16に記載の外科用縫合糸。
【0027】
(項目20)上記被覆が、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルの塩からなる群から選択される1つ以上の脂肪酸成分をさらに含む、項目16に記載の外科用縫合糸。
【0028】
(項目21)上記とげと上記縫合糸本体との間の角度が、90゜より小さい、項目1に記載の外科用縫合糸。
【0029】
(項目22)創傷を項目1に記載の縫合糸で閉鎖する工程を包含する、方法。
【0030】
(項目23)上記縫合糸が、ニードルに固定される、項目22に記載の方法。
【0031】
(項目24)上記縫合糸が、管状挿入デバイス内で組織を通って進行される、項目22に記載の方法。
【発明の効果】
【0032】
とげのある外科用縫合糸が、その上に生物活性薬剤とともに調製される。この生物活性薬剤は、上記とげと上記縫合糸本体とによって形成される角度内に堆積された抗微生物剤または凝固剤であり得る。このとげと縫合糸本体との間に角度内の生物活性薬剤の配置は、接触の点で創傷組織への生物活性薬剤の送達を増大する。一旦付与されると、生物活性薬剤は、とげのある縫合糸のその後の取り扱い処理および貯蔵の間に、蒸発、昇華、揮発などに起因して失われない。しかし、とげのある縫合糸のインビボでの付与に際し、すなわち、創傷を縫合する使用の後、組織へのとげの付着がこの組織中に生物活性薬剤を放出し、それによって所望の生物活性が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(詳細な説明)
本明細書に記載されるのは、とげのある外科用縫合糸である。本開示に従う縫合糸は、モノフィラメントまたはマルチフィラメント構築であり得る。この縫合糸は、近位端および遠位端の両方を有し得、とげは上記細長い本体から少なくとも1つの端部に向かって突出し、それによって上記とげと上記縫合糸の本体との間で約90゜より小さい開先角度を形成する。実施形態では、生物活性薬剤が、上記とげの角度、すなわち、上記とげと上記縫合糸の表面との間で形成される角度内に堆積され得る。このとげと縫合糸の表面との間で形成される角度内の生物活性薬剤の配置は、この生物活性薬剤を組織創傷閉鎖内の正確に規定された位置に配置し、これはそれによって、特有の制御され、そして持続される放出投与量形態を提供する。
【0034】
本開示によるとげのある縫合糸は、分解可能材料、分解不能材料、およびそれらの組み合わせから形成され得る。医療デバイスを形成するために利用され得る適切な分解可能な材料は、天然の膠原質形成材料、またはトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど、カプロラクトン、バレロラクトン、ジオキサノン、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ポリヒドロシキブチレート(PHB)、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせのようなアルケンカーボネート由来のものを含む合成樹脂を含む。いくつかの実施形態では、グリコリドおよびラクチドを基礎にしたポリエステル、特に、グリコリドとラクチドとのコポリマーが、本開示の縫合糸を形成するために利用され得る。
【0035】
本開示の縫合糸を形成するために利用され得る適切な分解不能材料は、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、およびポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド;超高分子量のポリエチレン、ポリアミド(ナイロンとしてもまた知られる);ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン;ポリブトエステルのようなポリエーテル−エステル;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;およびこれらの組み合わせを含む。その他の実施形態では、分解不能材料は、シルク、ガット、綿、リネン、炭素繊維などを含み得る。いくつかの有用な実施形態では、ポリプロピレンが上記縫合糸を形成するために利用され得る。このポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、またはアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックもしくはアタクチックポリプロピレンとの混合物であり得る。
【0036】
本開示の縫合糸を形成するために用いられるフィラメントは、例えば、押出し、成形および/または溶媒キャスティングのような当業者の範囲内の任意の技法を用いて形成され得る。
【0037】
実施形態では、本開示の縫合糸は、1つ以上のフィラメントから作製されるヤーンを含み得、これは、同じかまたは異なる材料の複数のフィラメントを含み得る。この縫合糸が複数のフィラメントから作製されるとき、縫合糸は、例えば、編組むこと、織ることまたは編むことのような任意の公知の技法を用いて作製され得る。これらフィラメントはまた、組み合わせられ得、不織縫合糸を生成する。これらフィラメント自体は、引かれ、配向され、ねじくれ、絡み合い、混ざり合うか、または空気ともつれ、縫合糸形成プロセスの一部としてヤーンを形成する。1つの実施形態では、本開示のマルチフィラメント縫合糸は、編組むことによって生成され得る。この編組むことは、当業者の範囲内の任意の方法によってなされ得る。
【0038】
一旦、この縫合糸が構築されると、それは、当業者の範囲内の任意の手段によって滅菌され得る。
【0039】
本開示による縫合糸は、1つ以上の医学−手術で有用な物質、例えば、縫合糸が創傷または手術部位に付与されるとき、治癒プロセスを加速するか、または有利に改変する生物活性薬剤で被覆または含浸され得る。適切な生物活性薬剤は、例えば、生物致死性薬剤、抗微生物薬剤、医薬、成長因子、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症薬剤、創傷修復薬剤など、化学療法剤、生物学的薬剤、タンパク質療法剤、抗体、DNA、RNA、ペプチド、多糖、レシチン、脂質、抗血管形成薬物、ポリマー薬物およびそれらの組み合わせを含む。
【0040】
生物活性薬剤は、動物に有益であり、そして治癒プロセスを促進する傾向にある物質を含む。例えば、縫合糸には、縫合された部位で堆積され得る生物活性薬剤が提供され得る。この生物活性薬剤は、その抗微生物性質、創傷修復および/または組織成長を促進する能力のため、または血栓症のような特定の適応症のために選択され得る。実施形態では、このような薬剤の組み合わせが、本開示の縫合糸に付与され得る。
【0041】
本明細書で用いられるとき、用語「抗微生物薬剤」は、本体破壊または病原体(疾患を生じる)微生物に抵抗することを支援する薬剤を含む。抗微生物剤は、抗生物質、防腐剤、消毒剤およびそれらの組み合わせを含む。組織中にゆっくりと放出される抗微生物薬剤は、このようにして付与され得、手術または外傷創傷部位中の臨床および亜臨床感染と戦う際に支援する。実施形態では、適切な抗微生物薬剤は、1つ以上の溶媒に可溶性であり得る。
【0042】
実施形態では、以下の抗微生物薬剤が、単独または本明細書に記載されるその他の生物活性薬剤と組み合わせて用いられ得る:アントラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、フルオロピリミジン、5−フルオロウラシル(5−FU)、葉酸アンタゴニスト、メトトレキセート、ポドフィロトキシン、エトポシド、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、白金複合体、シスプラチン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リファンピンのようなリファマイシン、第4世代ペニシリン(例えば、ウレイドペニシリン、カルボキシペニシリン、メジオシリン、ピペラシリン、カルベニシリン、およびチカルシリン、およびこれらのアナログまたは誘導体)、第1世代セファロスポリン(例えば、セファゾリンナトリウム、セファレキシン、セファゾリン、セファピリン、およびセファロチン)、カルボキシペニシリン(例えば、チカルシリン)、第2世代セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セフォテタン、およびセフォキシチン)、第3世代セファロスポリン(例えば、ナクスセル、セフジニル、セフォペラゾン、セフタジジム、セフトリアキソン、およびセフォタキシム)、ポリピニルピロリドン(PVP)、第4世代セファロスポリン(例えば、セフェピメ)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム)、カルバペネム(例えば、イミペネム、エルタペネムおよびメロペネム)、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、およびアミカシン)、MSLグループメンバー(例えば、マクロライド、長期作用マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、シネロイド、クラリスロマイシン、および硫酸カナマイシン)、ミノサイクリンのようなテトラサイクリン、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール;キノロン(例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、およびトロバフロキサシン)、DNA合成インヒビター(例えば、メトロニダゾール)、スルホンアミド(例えば、スルファメトキサゾール、セフィキシムを含むトリメトプリム、スペクチノマシイン、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、ポリミキシンB、および硫酸ネオマイシン)、サルバクタムのようなβ−ラクタムインヒビター、クロラムフェニコール、バンコマイシンのような糖ペプチド、ムピロシン、アムホテリシンBのようなポリエン、フルコナゾールのようなアゾール、およびその他の当該技術分野で公知のその他の公知の抗微生物薬剤。
【0043】
抗微生物薬剤として利用され得る防腐剤および消毒剤の例は、ヘキサクロロフェン、クロルヘキシシジンおよびシクロヘキシジンのようなカチオン性ビグアニド;ポビドン−ヨードのようなヨウ素およびヨードフォア;PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キセレノール)およびトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)のようなハロ置換フェノール性化合物;ニトロフラントインおよびニトロフラゾンのようなフラン医療調製物;メテナミン;グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドのようなアルデヒド;およびアルコールを含む。いくつかの有用な実施形態では、少なくとも1つの抗微生物薬剤は、トリクロサンのような防腐剤であり得る。
【0044】
創傷修復および/または組織成長を促進するために、これの目的のいずれかまたは両方を達成することが知られる1つ以上の生物活性薬剤がまた、創傷修復薬剤または組織成長薬剤として縫合糸に付与され得る。凝固または「線維症−誘導性薬剤」などが、特定の血管傷害または疾患の処置のために所望されるとき、または例えば、腫瘍をその主要な血液供給からブロックするために動脈瘤または塞栓形成の促進のために利用される。実施形態では、本開示に従うとげの角度内に堆積された凝固剤を有するとげのある縫合糸が、血小板および血液成分捕捉に寄与し得る。
【0045】
利用され得る化学療法剤の例は、以下の1つ以上を含む:ドキソルビシン(Dox)、パクリタキセル(PTX)、カンプトテシン(CPT)、ポリグルタメート−PTX(CT−2103またはXyotax)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマー、アントラサイクリン、レトロゾール、アナストロゾール、上皮成長因子レセプターインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、アポトーシスのモジュレーター、ダウロルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン抗生物質、シクロホスファミドおよびメルファランのようなアルキル化剤、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシンのような代謝拮抗物質、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、多糖類、これらのポリマー−薬物複合体、これらのコポリマーおよびこれらの組み合わせ。
【0046】
上記凝固剤は、以下の1つ以上を含む:細胞再生を促進する線維組織形成剤、血管形成を促進する線維組織形成剤、線維芽細胞移動を促進する線維組織形成剤、線維芽細胞増殖を促進する線維組織形成剤、細胞外マトリックスの堆積を促進する線維組織形成剤、組織再構築を促進する線維組織形成剤、憩室壁炎症剤である線維組織形成剤、シルク(蚕シルク、クモシルク、組換えシルク、生シルク、加水分解シルク、酸処理シルク、およびアシル化シルク)、タルク、キトサン、ポリリジン、フィブロネクチン、ブレオマシインまたはこれらのアナログまたは誘導体、連結組織成長因子(CTFG)、金属ベリリウムまたはその酸化物、銅、サラシン、シリカ、結晶ケイ酸塩、石英ダスト、タルカム粉末、エタノール、細胞外マトリックスの成分、コラーゲン、フィブリン、フィブリノーゲン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、N−カルボキシブチルキトサン、RGDタンパク質、塩化ビニルのポリマー、シアノアクリレート、架橋ポリ(エチレングリコール)−メチル化コラーゲン、炎症性サイトカイン、TGFβ、PDGF、VEGF、TNFa、NGF、GM−CSF、IGF−a、IL−1、IL−8、IL−6、成長ホルモン、骨形態タンパク質、細胞増殖因子、デキサメタゾン、イソトレチノイン、17−β−エストラジオール、エストラジオール、ジエチルスチベステロール、シクロスポリン、オール−レチノイン酸またはそのアナログまたは誘導体、ウール(動物ウール、マツの鉋屑、および無機質ウール)、綿、bFGF、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、アクチビン、アンギオポイエチン、インシュリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポイエチン、インターフェロン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、ブロモクリプチン、メチルセルギド、フィブロシン、フィブリン、接着性糖タンパク質、プロテオグリカン、ヒアルロナン、酸性でかつシステインリッチな分泌タンパク質(SPaRC)、トロンボスポンジン、テナシン、細胞接着分子、マトリックスメタロプロテイナーゼのインヒビター、マガイニン、組織または腎臓プラスミノゲンアクチベーター、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織インヒビター、メトトレキセート、カーボンテトラクロライド、チオアセトアミド、組織損傷性フリーラジカルを掃除(スカベンジ)するスーパーオキシドジスムターゼ、癌療法のための腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン−2または免疫系を増大するその他のリンホカイン、血小板リッチ血漿、トロンビン、これらの組み合わせなど。
【0047】
広範な種類の抗血管形成因子が、本開示の文脈内で容易に利用され得る。代表的な例は、抗浸襲性因子;レチノイン酸およびその誘導体;非常に誘導体化されたジテルペノイドのパクリタキセル;スラミン;メタロプロテイナーゼ−1の組織インヒビター;メタロプロテイナーゼ−2の組織インヒビター;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−2;例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、およびタンタル種のようなより軽い「d群」遷移金属の種々の形態およびそれらの複合体;血小板因子4;硫酸プロタミン(クルペイン);硫酸キチン誘導体(女王カニの殻から調製);硫酸多糖ペプチドグリカン複合体(SP−PG);(この化合物の機能は、エストロゲン、およびクエン酸タモキシフェンのようなステロイドの存在によって増大され得る);スタウロスポロジン;例えば、プロリンアナログ{[(L−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d、L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル、β−アミノプロピオニトリルフマレート;MDL27032(4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキセート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン−血清;ChIMP−3;キモスタチン;β−シクロデキストリンテトラデカスルフェート;エポネマイシン;カムプトテンシン;フマジリン金チオマレイン酸ナトリウム(「GST」);D−ペニシラミン(「CDPT」);β−1−抗コラゲナーゼ−血清;α2−アンチプラスミン;ビサントレン;ロベンザリット2ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニリン酸二ナトリウムまたは「CCA」;サリドマイド;アンゴスタティックステロイド;AGM−1470;カルボキシナミノルミダゾール;BB94のようなメタロプロテイナーゼインヒビター、これらのアナログおよび誘導体ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0048】
広範な種類のポリマー薬物が、本開示の文脈内で容易に利用され得る。代表的な例は、ステロイド系抗炎症性薬剤、非ステロイド系抗炎症性薬剤、およびそれらの組み合わを含む。本開示とともに用いられ得る非ステロイド系抗炎症性薬剤の例は、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ジフルシナルおよびこれらの組み合わせである。
【0049】
用いられる得るステロイド系抗炎症性薬剤の例は、コルチゾンおよびビトロコルチゾン、βメタゾン、デキサメタゾン、フルプレドニゾロン、プロドニゾン、メチルプレトニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、およびこれらの組み合わせである。
【0050】
上記の生物活性薬剤は例示の目的のために提供されるけれども、本開示はそのように制限されないことが理解されるべきである。特に、特定の生物活性薬剤が上記に詳細に言及されているけれども、本開示は、このような薬剤のアナログ、誘導体および複合体を含むことが理解されるべきである。
【0051】
本開示による縫合糸はまた、例えば、生物学的に受容可能な可塑剤、抗酸化剤および着色剤を含み得、これらは、本開示の縫合糸を形成するために利用されるフィラメント中に含浸され得るか、またはその上の被覆上に含められ得る。
【0052】
上記の様に、生物活性薬剤は、本開示の縫合糸を形成するために利用される材料中に含浸され得るか、またはその表面上に堆積され得る。生物活性薬剤は、例えば、浸漬、噴霧、蒸着、ブラッシング、調合などを含む当業者の範囲内にある任意の方法を利用して、本開示のとげのある縫合糸上に付与され得る。
【0053】
実施形態では、抗微生物薬剤のような上記生物活性薬剤は、生物活性薬剤溶液の一部として本開示のとげのある縫合糸に付与され得る。この生物活性薬剤溶液は、選択された生物活性薬剤に適切な任意の溶媒または溶媒の組み合わせを含み得る。適切であるために、この溶媒は、(1)生物活性薬剤と混和可能であり、そして(2)とげのある縫合糸のような医療用デバイスを形成するために用いられる任意の材料の一体性に認知可能に影響を与えるべきではない。いくつかの有用な実施形態では、利用される溶媒は、極性溶媒である。適切な溶媒のいくつかの例は、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸メチル、N−メチル2−ピロリドン、2−ピロリドン、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、オレイン酸、メチルエチルケトン、水、およびこれらの混合物を含む。1つの実施形態では、塩化メチレンが溶媒として用いられ得る。
【0054】
上記生物活性薬剤溶液を調製する方法は、混合、ブレンドすることなどを含む比較的単純な手順であり得る。任意の公知の技法が、医療用デバイスに上記生物活性薬剤溶液を付与するために採用され得る。適切な技法は、浸漬、噴霧、拭くこと、ブラッシングなどを含む。
【0055】
生物活性薬剤溶液は、一般に、重量で約0.1%〜約20%の生物活性薬剤を、実施形態では重量で約0.5%〜約5%の生物活性薬剤を含む。この生物活性薬剤の正確な量は、用いられる特定の薬剤、接触されている医療用デバイス、および採用される溶媒の選択のような多くの因子に依存する。上記生物活性薬剤が抗微生物薬剤である1つの実施形態では、この抗微生物溶液は、約0.1%〜約10%の選択された抗微生物薬剤、実施形態では、約1%〜約5%の抗微生物薬剤を含み得る。
【0056】
付与される生物活性薬剤溶液の量は、縫合糸に所望の生体活性性質を提供するために有効な量であるべきである。正確な量は、縫合糸の形態および溶液の処方に依存する。生物活性薬剤溶液は溶媒を含むので、溶媒を除去するために有用な実施形態では、硬化ステップが採用され得、縫合糸上に生物活性薬剤に残す。この溶媒の除去のための適切な硬化ステップは、制限されないで、蒸発および/または凍結乾燥を含む。溶媒の除去に際し、生物活性薬剤は、縫合糸にとげと縫合糸本体との間に形成された角度で結合したままである。
【0057】
付与の方法にかかわらず、縫合糸上の生物活性薬剤の量は、縫合糸の約0.01重量%〜縫合糸の約2重量%、実施形態では、縫合糸の約0.02重量%〜縫合糸の約1重量%、代表的には、縫合糸の約0.05重量%〜縫合糸の約0.5重量%である。
【0058】
一旦付与されると、生物活性薬剤は、とげのある縫合糸のその後の取り扱い処理および貯蔵の間に、蒸発、昇華、揮発などに起因して失われない。しかし、とげのある縫合糸のインビボでの付与に際し、すなわち、創傷を縫合する使用の後、組織へのとげの付着がこの組織中に生物活性薬剤を放出する。
【0059】
その他の実施形態では、この生物活性薬剤は、縫合糸に付与される被覆中に含められ得る。利用され得る適切な被覆は、当業者の範囲内であり、そして、例えば、米国特許出願公開番号20040153125号に開示されるもののような生分解性被覆を含み、その全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。生分解性ポリマーが特に有用である。なぜなら、それらは、生物活性薬剤をインビボでこの生分解性ポリマーが身体によって吸収されると放出するからである。
【0060】
実施形態では、前述の被覆を形成する際に有用な混合物は、有効な抗微生物量で優勢成分として抗微生物薬剤のような生物活性薬剤を含む。「優勢量」は、約50重量%より多い量で存在する1つ以上の成分をいう。「少数量」は、約50重量%までの量で存在する1つ以上の成分をいう。少数成分は、カプロラクトンのような生分解性モノマーを含むコポリマーを含み得る。
【0061】
所定成分の「有効な抗微生物量」は、創傷部位の汚染を減らす、または避けるように細菌の増殖を妨害する成分の量である。
【0062】
実施形態では、生体適合性の外科移植可能なデバイスのための抗微生物分解性被覆組成物は、安価で、生体適合性で、そして過剰の拡散を受けない。「生体適合性」は、生存系中の目的物の存在によって引き起こされる重篤な全身毒性がないことを意味する。生体適合性目的物は、特定の個体において炎症および/またはその他の副反応を含むある程度の臨床的に受容可能な量の毒性を引き起こし得ることが予期される。
【0063】
当業者の範囲内の任意の生分解性ポリマーが、本発明の被覆で採用され得る。実施形態では、この生分解性ポリマーは、その成分としてε−カプロラクトンを含み得る。コポリマーを含む適切なカプロラクトンは、周知の従来の重合技法によって合成され得るコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、適切なカプロラクトンを含むコポリマーは、優勢量のε−カプロラクトンを、多価アルコール開始剤の存在下でそれと重合可能な少量の別の生分解性モノマーと重合することにより得られる「スター」コポリマーである。
【0064】
実施形態では、このカプロラクトンを含むコポリマーは、優勢量のε−カプロラクトンを、多価アルコール開始剤の存在下で少量の少なくとも1つのその他の共重合可能なモノマーおよびこのようなモノマーの混合物と重合することにより得られ得る。これらモノマーの重合は、種々のタイプのモノマー付加全て、すなわち、同時、逐次的、逐次的の後に同時、同時の後に逐次的などを予期する。
【0065】
特定の実施形態では、本明細書中のコポリマーは、約70〜約98重量%、そして好ましくは約80〜約95重量%のε−カプロラクトン由来単位を含み得、このコポリマーの残りは、その他の共重合可能なモノマー(単数または複数)由来である。
【0066】
ε−カプロラクトンと共重合され得る適切なモノマーは、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート;ジオキサノン;ジオキセパノン;分解性環状アミド;クラウンエーテル由来の分解性環状エーテル−エステル;(グリコール酸および乳酸のような)αヒドロキシ酸、および(βヒドロキシ酪酸およびγヒドロキシ吉草酸のような)βヒドロキシ酸を含むエステル化可能なヒドロキシ酸;(ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールおよびこれらの組み合わせのような)ポリアルキルエーテル;ポリビニールピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ホスホリルコリン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルモノマー、ビニルアルコール、酢酸ビニルのようなアルケンカーボネート、およびこれらの組み合わせを含む。実施形態では、本開示との使用のために適切なモノマーは、グリコリドである。
【0067】
適切な多価アルコール開始剤は、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エリスリトール、スレイトール、ペンタエリスリトール、リビトール、アラビトール、キシリトール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロシプロピル)エチレンジアミン、ジペンタエリスリトール、アリトール、ダルシトール、グルシトール、アルトリトール、イジトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトールなどを含み;マンニトールが好ましい。
【0068】
この多価アルコール開始剤は、一般に、比較的少量、例えば、総モノマー混合物の約0.01〜約5重量%、そして好ましくは約0.1〜約3重量%で採用される。
【0069】
上記被覆組成物は、コポリマーの約0.3〜約10重量%、そして好ましくは約0.5〜約5重量%を含み得る。このような被覆は、改良された取り扱い特性および抗微生物活性の組み合わさった所望の性質を有する縫合糸を提供する。
【0070】
上記に記載される抗微生物薬剤に加えて、いくつかの実施形態では、上記被覆は、縫合糸に抗微生物特徴を与え得る、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルの塩のようなの1つ以上の脂肪酸成分を含み得る。
【0071】
上記被覆が、脂肪酸金属塩を含む場合、抗微生物薬剤として用いられるこの脂肪酸金属塩は、ステアリン酸金属を含み得る。1つの実施形態では、抗微生物薬剤として用いられるこの脂肪酸金属塩は、ステアリン酸銀である。別の実施形態では、抗微生物薬剤として用いられるこの脂肪酸金属塩は、ステアロイルラクチレート、特に、ステアロイルラクチレートカルシウムのような脂肪酸エステルと組み合わせられ得る。
【0072】
本発明の被覆で用いられる得る適切な脂肪酸は、6以上の炭素原子を有する脂肪酸の生体適合性の一価および多価金属塩を含む。本明細書で有用な脂肪酸の金属塩を形成するために有用な脂肪酸の例は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸などを含む。本明細書中に記載される種々の実施形態で有用な脂肪酸の金属塩を形成するために有用な一価金属の例は、リチウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、銅、銀および金を含む。本明細書中に記載される種々の実施形態で有用な脂肪酸の金属塩を形成するために有用な多価金属の例は、アルミニウム、錫、鉛、ビスマスおよび多価遷移金属を含む。従って、本明細書で有用な脂肪酸の適切な金属塩は、リチウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、銅、銀、金、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、カドミウム、水銀などを含む。
【0073】
脂肪酸の金属塩は、上記で規定された有効な抗微生物量で上記被覆組成物中に存在する。脂肪酸の金属塩は、単一の化学的化合物からなり得る。しかし、脂肪酸の金属塩はまた脂肪酸のいくつかの金属塩の混合物であり得る。脂肪酸の金属塩は、重量で被覆組成物の約30%〜約70%の量、実施例では重量で被覆組成物の約45%〜約55%の量で存在し得る。
【0074】
脂肪酸の金属塩は、冷水中で比較的不溶性であり得る。所望されるとき、溶媒を用いて脂肪酸の金属塩の作動性質、例えば、粘度、混和性などを改良し得る。適切な溶媒は、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、(塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロ−エタンのような)塩素化炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチルのような脂肪族炭化水素を含む。所望されるとき、熱が、脂肪酸の金属塩の溶媒混合物にそれらの溶解度を改善するために付与され得る。例えば、約30℃〜約60℃の範囲の温度が適切であり得る。
【0075】
特定の実施形態では、脂肪酸エステルは、上記被覆組成物中で脂肪酸の金属塩と組み合わせられ得る。このようなエステルは、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛ステアロイルラクチレート;カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛パルミチルラクチレート;カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛オレイルラクチレートのようなステアリン酸カルシウム、ステアロイルラクチレートエステル、パルミチルラクチレートエステル、オレイルラクチレートエステルを含み;ステアリン酸カルシウムおよび(American Ingredients Co.,Kansas City,Mo.から商標名VERVの下で市販され入手可能なステアロイル−2−ラクチレートカルシウムのような)ステアロイル−2−ラクチレートカルシウムが好ましい。所望されるとき、この脂肪酸エステルは、溶媒と組み合わされ得る。適切な溶媒は、上記で列挙されたものを含む。
【0076】
生物活性薬剤が被覆の一部として含まれる場合、この生物活性薬剤および被覆組成物は、別個の溶媒に添加され得、そして得られる溶媒混合物が、次いで、合わせられ得、被覆溶液を形成する。その他の実施形態では、上記生物活性薬剤および被覆組成物は一緒に組み合わせられ得、そして次に被覆溶液を形成するために溶媒、または任意の組み合わせと混合される。添加の順序は重要ではなく、そしてそれ故、所望の使用に依存して慣用の実験により決定され得る。
【0077】
上記被覆は、縫合糸に、任意の適切なプロセス、例えば、縫合糸を、被覆混合物の溶液に通じ、ブラシもしくはその他の被覆溶液アプリケーターを超えて、または縫合糸被覆溶液を分与する1つ以上の噴霧ノズルを超えて通過させることによって付与され得る。この被覆溶液は、約30〜約70、実施形態では約45〜約55重量%溶媒を含み得る。実施形態では、塩化メチレン、ヘキサンおよびエタノールの混合物が、溶媒として用いられ得る。上記被覆溶液で湿潤化された縫合糸は、必要に応じて、溶媒を蒸発および除くために十分な時間および温度で乾燥オーブンを通過するか、またはその中に保持され得る。所望であれば、この縫合糸被覆組成物は、必要に応じて、さらなる生物活性薬剤、または、上記に記載の成分、例えば、色素、抗生物質、防腐剤、成長因子、抗炎症薬剤などを含み得る。
【0078】
とげは、当業者の範囲内の任意の方法を利用して縫合糸本体の表面上に形成され得る。このような方法は、制限されないで、切断、成形などを含む。いくつかの実施形態では、とげは、縫合糸本体中への直接の鋭角カットとともに、カット部分を縫合糸の本体の外方に押し、そして縫合糸本体から分離して作製することにより形成され得る。それ故、縫合糸本体中に形成されるとげの深さは、縫合糸材料の直径およびカットの深さに依存し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸フィラメントの外部上に複数の軸方向に間隔を置いたとげを切断するための適切なデバイスは、切断を実施するために、切断ベッド、切断ベッドバイス、切断テンプレート、およびブレードアセンブリを用い得る。作動において、これら切断デバイスは、同じかまたはランダム形態で互いに対して異なる角度で複数の軸方向に間隔を置いたとげを生成する能力を有する。とげを切断するその他の適切な方法は、レーザーまたは手動方法の使用を含む。縫合糸はまた、注入成形、押し出し、スタンピングなどによって形成され得る。縫合糸は、任意の数の所望の予備カット長さおよび予備成形曲線で梱包され得る。
【0079】
実施形態では、すべてのとげは、縫合糸が1つの方向に組織を通って移動し、そして反対方向に組織を通って移動することに抵抗することを可能にするように整列され得る。例えば、図1を参照して、縫合糸10上のとげ12は、単一方向の縫合糸中に形成され得る。実施形態では、縫合糸10は、ニードル16に取り付けられ得る。とげ12は、縫合糸10の本体14に向かって生成可能である。これらのとげ12は、ニードル端部16の移動の方向に組織を通る縫合糸10の移動を許容するが、反対の方向にはほぼ剛直性であり、そしてニードル端部16の移動の方向とは反対の方向の縫合糸10の移動を防ぐ。
【0080】
縫合糸10は、とげ12と縫合糸本体14との間の角度内に配置された生物活性薬剤(図示せず)を含み得る。
【0081】
あるいは、マルチフィラメント縫合糸(図示せず)が利用され得、これは、生体適合性分解性ポリマー、生体適合性非分解性ポリマー、またはそれらの組み合わせから製作されるフィラメントを含み得る。実施形態では、とげと縫合糸本体との間の角度内に配置された生物活性薬剤を含む生体適合性分解性ポリマーを含むマルチフィラメント縫合糸が提供され得る。別の実施形態では、マルチフィラメント縫合糸は、とげと縫合糸本体との間の角度内に配置された生物活性薬剤を含む生体適合性分解性ポリマーまたは生体適合性非分解性ポリマーの組み合わせから製作される個々のフィラメントを含み得る。
【0082】
その他の実施形態では、とげは、縫合糸の長さの第1の部分上で整列され得、1つの方向で組織を通る縫合糸の第1の端部の移動を可能にし、その一方、この縫合糸の長さの第2の部分上のとげは、反対方向の縫合糸の第2の端部の移動を可能にするように整列され得る。例えば、図2に描写されるように、縫合糸110は、2方向性であり得る。とげのある縫合糸110は、2つの領域を有する細長い本体114、本体部分114aおよび本体部分114b、組織を貫通するための遠位第1および第2のニードル端部116aおよび116b、および本体114の周縁から延びる複数のとげ112aおよび112bを含む。抗微生物薬剤は、とげ112aおよび112bと本体114との間で形成された角度内に配置され得る。縫合糸110の第1の端部と縫合糸本体上の第1の軸方向位置との間の本体114aの第1の位置上のとげ112aは、第1のニードル端部116aの移動の方向に組織を通る縫合糸110の移動を許容し、そしてこの第1のニードル端部116aの移動の方向とは反対の方向の組織に対する縫合糸110の移動を防ぐ。縫合糸114の第2の端部116bと、第2のニードル端部116bから第1の軸方向位置までの距離より小さい本体上の第2の軸方向位置との間の本体114bの第2の部分上のとげ112bは、第2のニードル端部116bの移動の方向の組織を通る縫合糸114の移動を可能にし、そしてこの第2のニードル端部116bの移動の方向とは反対の方向の組織に対する縫合糸114の移動を防ぐ。
【0083】
とげは、任意の適切なパターン、例えば、らせんパターンで整列され得る。これらとげの数、形態、間隔および表面積は、縫合糸が用いられる組織、ならびに縫合糸を形成するために利用される材料の組成および幾何学的形状に依存して変動し得る。さらに、とげの比率は比較的一定のままであり得、その一方、とげの全長およびとげの間隔は、連結される組織によって決定され得る。例えば、縫合糸が、皮膚または腱中の創傷のエッジを連結するために用いられるべき場合、これらとげは、比較的短く、そしてより剛直性にされ得、このむしろ堅い組織中への浸入を容易にする。あるいは、縫合糸が、比較的柔らかい脂肪組織における使用のために意図される場合、これらとげは、より長く、そしてより離れて間隔を置かれ、縫合糸が軟組織を把持する能力を増加する。
【0084】
これらのとげの表面積もまた変動し得る。例えば、みぞ付け先端とげは、特有の外科的適用のために設計された変動するサイズから作製され得る。脂肪および比較的柔らかい組織を接続するために、より大きなとげが所望され得、その一方、より小さなとげはコラーゲンが密な組織により適切であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、縫合糸が、異なる層構造との組織修復で用いられるとき、同じ構造内の大きなとげおよび小さなとげの組み合わせが有益でふあり得る。とげサイズが各組織層についてあつらえられる、同じ縫合糸との大きなとげおよび小さなとげの組み合わせの使用は、最大の係留性質を確実にする。実施形態では、図1に描写されるような単一の方向性の縫合糸は、大きなとげおよび小さなとげの両方を有し得;その他の実施形態では、図2に描写されるような2方向性縫合糸が大きなとげおよび小さなとげの両方を有し得る。
【0085】
実施形態では、本開示の縫合糸は、手術場におけるこの縫合糸の可視性を増加するために着色され得る。縫合糸中の取り込みに適する任意の色素が用いられ得る。このような色素は、制限されないで、カーボンブラック、骨灰、D&DグリーンNo.6およびD&CバイオレットNo.2を含む。実施形態では、本開示による縫合糸は、約数パーセントまでの量で色素を添加することにより、その他の実施形態では、約0.2%の量で、なおさらなる実施形態では約0.06%〜約0.08%の量で色素を添加することにより着色され得る。
【0086】
本開示の縫合糸へのニードルの取り付けを容易にするために、従来の傾斜(チッピング)試薬が編組み(ブレード)に付与され得る。縫合糸の2つの傾斜端部が、縫合糸の各端部にニードルを取り付けるために所望され得、いわゆる二重アームの縫合糸を提供する。このニードル取り付けは、当業者の範囲で公知のように、クリンプ留め、スエージ留めなどのような任意の従来方法によってなされ得る。創傷は、ニードルに取り付けた縫合糸を組織を通過させ、創傷閉鎖を生成することによって縫合され得る。縫合糸の取り扱い特徴を増大することにに加え、被覆が有利には抗微生物性質を所有し、治癒を促進し、そして感染を防ぐ。
【0087】
いくつかの実施形態では、縫合糸または創傷閉鎖デバイスの構築に対する上記とげの寄与は、血小板および血液成分捕獲に寄与し得る。図3A、3B、3Cを参照して、管状の挿入デバイス22が、血管20中に本開示に従う、とげのある縫合糸10を導入するために利用され得る。このような管状挿入デバイス22は、その中にとげのある縫合糸10が配置される管状本体、ならびに遠位端24および近位端26を有し得る。使用において、本開示のとげのある縫合糸10の尖った端部は、挿入点において、皮膚、組織、血管などを通って管状挿入デバイスの遠位端24で押され得る。とげのある縫合糸10の尖った端部および管状挿入デバイスの遠位端24は、終点に到達するまで組織を通って押される。この管状挿入デバイス22の近位端26は、次いで、握られ、そして挿入デバイス22を除去するために引っ張られ、とげのある縫合糸10をその場に残す。
【0088】
この管状挿入デバイスの移動を容易にするため、この管状挿入デバイス22は、紐、ワイヤなどを含み得、図3Bに示されるようにとげのある縫合糸からこの挿入デバイス22を引っ張り、そして除去する。例示の実施形態では、この管状挿入デバイス22は、とげのある縫合糸10から展開され、これは、とげのある縫合糸10が血管総厚みまで拡大し、そしてそれ自体を血管20に係留することを可能にする。図3Cに示されるように、管状挿入デバイス22の展開およびとげのある縫合糸10の拡大は、循環する血小板および血液成分の捕獲を可能にし、血管封鎖および/または血管20の血液凝固を起こす。
【0089】
図3Aおよび3C中のとげのある縫合糸は、可撓性および曲がった形態を示す。しかし、種々の縫合糸またはファイバー形態が採用され得ることが想定される。その他の実施形態では、ファイバー形態は、シース(図示せず)内のとげのあるデバイスをねじることを含み得る。
【0090】
提示される例示の実施形態では、本開示のとげのある縫合糸を取り囲む管状挿入デバイスは、とげと縫合糸本体とによって形成された角度内に配置される生物活性薬剤を保護する。それ故、上記管状挿入デバイスは、縫合糸の挿入の間、ならびに取り扱いの間、および貯蔵の間に、とげのある縫合糸をインタクトに、そしてこの縫合糸の表面に付着された生物活性薬剤を維持することを支援し得る。これは、医療用デバイスのパッケージング、環境などへの生物活性薬剤の損失を最小にする。しかし、インビボでのとげのある縫合糸と管状挿入デバイスとの係合に際し、組織からシースを引き抜くためにこの縫合糸に対してシースを移動することは、生物活性薬剤を組織に曝し、そしてとげと縫合糸本体との界面から創傷閉鎖中への生物活性薬剤の放出を支援する。とげのある縫合糸は、血管総厚みまで拡大し、そして患者組織へのアンカーとして作用する。
【0091】
凝固剤が採用される実施形態では、このとげのある縫合糸はまた、循環する血小板および血液成分を捕獲し、そして血管封鎖または血液凝固を起こす。機械的性質要求が制限的すぎない場合、ヒドロゲルまたは超吸収性材料が血液成分をさらに濃縮するために用いられ得るか、またはとげのあるデバイスがまた、このヒドロゲル様材料を最終配置に駆動し、そして配置する。
【0092】
図4A〜4Bを参照して、シース23が、本開示によるとげのある縫合糸10を血管20中に導入するために利用され得る。このようなシース23は、とげのある縫合糸10が配置される管状の本体を有し得る。1つの実施形態では、シース23は、とげのある縫合糸10の1つの端部に配置され得、そしてその他の実施形態では、シース23は、とげのある縫合糸10の両端部上に配置され得る(図示せず)。実施形態では、シース23は、制限されないで、フィラメントファイバー、ナイロンファイバー、ポリエステル(PET)、コポリマーポリエステル(コ−PTE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンから形成され得、これらは、縫合糸上のとげが、完全に係合し、そして血管20内で拡大するとき、血管20を封鎖し、そして凝固を誘導するために膨潤するように設計され、血液成分および血小板を捕獲し、凝固を支援する。このとげのある縫合糸10はまた、縫合糸のとげと細長い本体の開先角度内に生物活性薬剤を含み得、血管20の血液凝固を増大する。
【0093】
本開示の縫合糸で組織を修復するための方法がまた提供される。本開示の縫合糸は、任意の美容術内視鏡または腹腔鏡方法で利用され得る。さらに、本開示の縫合糸は、制限されないで組織を靱帯に付着することを含む、1つの組織を別の組織に付着するために利用され得る。
【0094】
実施形態では、本開示の縫合糸は、結び目の必要なくしてその場に保持され得る。このような事例では、インビボで配置された本開示の縫合糸の上に位置する組織は、所望の位置に物理的に操作されるか、または伝令され得、所望の位置に組織を保持することを増大する。実施形態では、本開示の縫合糸上に位置する組織の物理的操作は、本開示の縫合糸のとげと本体との間の角度内に見出される任意の医薬を含む、縫合糸上に位置する任意の医薬の放出を増大し得る。
【0095】
例えば、本開示の縫合糸は、特定の美容適用で所望され得る、組織の持ち上げを提供するために利用され得る。実施形態では、縫合糸を利用して組織を閉鎖するための手順は、必要に応じてニードルに取り付けられた縫合糸の第1の端部を、患者身体の表面上の挿入点で挿入することを含む。この縫合糸の第1の端部は、この第1の端部が、出口点で軟組織から出て延びるまでこの軟組織を通って押され得る。この縫合糸の第1の端部は、次いで、握られ、そしてこの軟組織を通って縫合糸の第1の部分を引くために引っ張り、その結果、この-縫合糸の第1の部分の長さは、挿入の点と第1の端部の出口点との間で軟組織中に残る。軟組織は、次いで、手でグループ分けされ、そして縫合糸の少なくとも1つの部分に沿って進行し、所望の量の持ち上げを提供する。
【0096】
上記に記載のような縫合糸のこの物理的操作を利用し得る美容的手術の特定の適用は、例えば、顔持ち上げ、眉毛持ち上げ、大腿持ち上げ、および胸持ち上げを含む。
【0097】
上記の記載は多くの詳細を含むけれども、これらの詳細は、本開示の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、その実施形態の単なる例示である。当業者は、本明細書に添付された請求項によって規定されるような本開示の範囲および思想内で、その他の創傷閉鎖デバイスの使用を含む多くのその他の可能性を想定する。
【産業上の利用可能性】
【0098】
美容、腹腔鏡手順および内視鏡手順で用いられる得る縫合糸が提供される。
【0099】
(要約)
とげのある外科用縫合糸が、その上に生物活性薬剤とともに調製される。実施形態では、この生物活性薬剤は、上記とげと上記縫合糸本体とによって形成される角度内に堆積された抗微生物剤または凝固剤であり得る。このとげと縫合糸本体との間に角度内の生物活性薬剤の配置は、接触の点で創傷組織への生物活性薬剤の送達を増大する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
本開示の種々の実施形態は、図面を参照して本明細書中以下に説明される。
【図1】図1は、ニードルに取り付けられた本開示によるとげのある縫合糸の斜視図である。
【図2】図2は、各端部上でニードルに取り付けられた二方向性のとげのある縫合糸の斜視図である。
【図3】図3A〜3Cは、本開示に従うとげのある縫合糸とともに利用される管状挿入デバイスの平面図である。
【図4】図4A〜4Bは、とげのある縫合糸とともに利用されるシースの平面図である。
【符号の説明】
【0101】
10 縫合糸
12 とげ
14 縫合糸本体
16 ニードル短部
20 血管
22 管状挿入デバイス
24 管状挿入デバイスの遠位端
26 管状挿入デバイスの近位端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用縫合糸であって:
近位端および遠位端を有する少なくとも1つのフィラメントを備える細長い本体であって;該細長い本体から該縫合糸の少なくとも1つの端部に向かって突出するとげを有し、それによって該とげと該縫合糸本体との間の角度を形成する細長い本体;および
該とげと該縫合糸本体との間の角度内に配置された有効量の生物活性薬剤、を備える、外科用縫合糸。
【請求項2】
前記生物活性薬剤が、生物致死性薬剤、抗微生物薬剤、医薬、成長因子、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症薬剤、創傷修復薬剤、化学療法剤、生物学的薬剤、タンパク質療法剤、抗体、DNA、RNA、ペプチド、多糖、レシチン、脂質、抗血管形成薬物、ポリマー薬物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項3】
前記抗微生物薬剤が、抗生物質、防腐薬、消毒薬、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の外科用縫合糸。
【請求項4】
前記抗微生物薬剤が、ヘキサクロロフェン、クロロヘキシシジン、シクロヘキシジン、ヨウ素、ポビドン−ヨード、p−クロロ−m−キシレノール、トリクロサン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、メテナミン、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される防腐薬である、請求項3に記載の外科用縫合糸。
【請求項5】
前記抗微生物薬剤が、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、フルオロピリミジン、5−フルオロウラシル、葉酸アンタゴニスト、メトトレキセート、ポドフィロトキシン、エトポシド、カンプトテシン、ヒドロキシウレア、白金複合体、シスプラチン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リファンピンのようなリファマイシン、ポリビニルピロリドン、第4世代ペニシリンおよびそのアナログおよび誘導体、第1世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第2世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第3世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、第4世代セファロスポリンおよびそのアナログおよび誘導体、モノバクタム、カルバペネム、アミノグリコシド、マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、シネロイド、クラリスロマイシン、硫酸カナマイシン、テトラサイクリン、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、キノロン、DNA合成インヒビター、スルホンアミド、β−ラクタムインヒビター、クロラムフェニコール、グリコペプチド、ムピロシン、ポリエン、アゾール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の外科用縫合糸。
【請求項6】
前記化学療法剤が、ドキソルビシン、パクリタキセル、カンプトテシン、ポリグルタメート−PTX、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー、アントラサイクリン、レトロゾール、アナストロゾール、上皮成長因子レセプターインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、アポトーシスのモジュレーター、ダウロルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン抗生物質、シクロホスファミドおよびメルファランのようなアルキル化剤、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシンのような代謝拮抗物質、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(グルタミン酸)、多糖類、これらのポリマー−薬物複合体、これらのコポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の外科用縫合糸。
【請求項7】
前記凝固剤が、ヒト成長因子、マガイニン、プラスミノゲンアクチベーター、スーパーオキシドジスムターゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン−2、リンホカイン、フィブリン、キトサン、シルク、タルク、ポリリジン、フィブロネクチン、ブレオマシインおよびそのアナログおよび誘導体、コラーゲン、金属ベリリウムおよびその酸化物、銅、サラシン、シリカ、結晶ケイ酸塩、石英ダスト、タルカム粉末、エタノール、細胞外マトリックス、フィブリノーゲン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、シアノアクリレート、サイトカイン、デキサメタゾン、イソトレチノイン、エストラジオール、ジエチルスチベステロール、シクロスポリン、オール−レチノイン酸およびそのアナログおよび誘導体、ウール、綿、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、アクチビン、アンギオポイエチン、コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、エンドセリン−1、アンギオテンシンII、ブロモクリプチン、メチルセルギド、フィブロシン、糖タンパク質、プロテオグリカン、ヒアルロナン、酸性でかつシステインリッチな分泌タンパク質、トロンボスポンジン、テナシン、細胞接着分子、マトリックスメタロプロテイナーゼのインヒビター、メトトレキセート、カーボンテトラクロライド、チオアセトアミド、スーパーオキシドジスムターゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、血小板リッチ血漿、トロンビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の外科用縫合糸。
【請求項8】
前記縫合糸が、モノフィラメント縫合糸である、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項9】
前記縫合糸が、マルチフィラメント縫合糸である、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフィラメンが、分解可能材料、分解不能材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフィラメントが、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロシキブチレート、ラクチド、ポリマー薬物、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分解可能材料を含む、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項12】
前記ポリマー薬物が、ステロイド系抗炎症性薬物、非ステロイド系抗炎症性薬物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の外科用縫合糸。
【請求項13】
前記非ステロイド系抗炎症性薬物が、アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ジフルシナルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の外科用縫合糸。
【請求項14】
前記ステロイド系抗炎症性薬剤が、コルチゾンおよびビトロコルチゾン、βメタゾン、デキサメタゾン、フルプレドニゾロン、プロドニゾンン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の外科用縫合糸。
【請求項15】
前記少なくとも1つのフィラメントが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンンド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブトエステル、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−ブタンジオール、シルク、コラーゲン、超高分子量ポリエチレンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される分解不能材料を含む、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項16】
前記縫合糸の少なくとも一部分上に被覆をさらに備える、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項17】
前記被覆が、分解可能ポリマーを含む、請求項16に記載の外科用縫合糸。
【請求項18】
前記被覆が、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、カプロラクトン、バレロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロシキブチレート、ラクチド、ポリマー薬物、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の外科用縫合糸。
【請求項19】
前記被覆が、アルケンカーボネート、ジオキサノン、ジオキセパノン、分解可能環状アミド、クラウンエーテル由来の分解可能環状エーテル−エステル、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、ポリアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ホスホリルコリン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルモノマー、ビニルアルコール、ビニルアセテート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーをさらに含む、請求項16に記載の外科用縫合糸。
【請求項20】
前記被覆が、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルの塩からなる群から選択される1つ以上の脂肪酸成分をさらに含む、請求項16に記載の外科用縫合糸。
【請求項21】
前記とげと前記縫合糸本体との間の角度が、90゜より小さい、請求項1に記載の外科用縫合糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−62061(P2008−62061A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229481(P2007−229481)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】