説明

ねじれ量測定装置

【課題】火気厳禁の場所であってもスキルを要求されることなく,一対のロール間に発生しているねじれ量を測定することのできるねじれ量測定装置を提供する。
【解決手段】ねじれ量測定装置は,駆動ロール5を受ける逆V型のロール受け部を有する固定受け部2上に,水平面に対して回動自在に支持され,加圧ロール4を受けるV字型のロール受け部300を有する回動受け部材と,回動受け部材をスライドさせる直動案内部材31と,基準位置からの回動受け部材のスライド量を示すゲージ部材32を備えた測定機構3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,一対のロール間に発生しているねじれ量を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軟包装グラビア印刷機やコーターなどのウェブを走行させる装置には,ウェブ走行の安定化やウェブ加工(印刷やコーティング)などを目的として,駆動ロールと加圧ロールが対になったニップ機構が備えられている。
【0003】
図6は,ニップ機構を説明する図である。図6(a)に図示したように,ニップ機構では,加圧ロー7aと駆動ロール7b間にウェブ7cを挟み,加圧ロール7aを加圧して駆動ロール7bと密着させ,駆動ロール7bを回転させることでウェブ7cを走行させるため,図6(b)に図示したように,加圧ロール7aと駆動ロール7bのねじれ精度が出ていないと,図6(b)で図示したようなウェブ7cの蛇行,又は,シワやウェブ切れが発生してしまう。
【0004】
そこで,ウェブを走行させる装置を組み付けたとき,又は,軟包装グラビア印刷機において版胴を取り付けたときなど,加圧ロールと駆動ロール間で発生しているねじれ量を測定し,加圧ロールと駆動ロールのねじれ量が許容値以下になるように,加圧ロール又は駆動ロールの位置を調整することが必要になる。
【0005】
加圧ロールと駆動ロール間のねじれ量を測定する手法としては,様々な手法が実施又は検討されている。図7は,加圧ロールと駆動ロール間のねじれ量を測定する一般的な手法を説明する図で,図7では,くの字型の治具8dにダイヤルゲージ8cを取り付け,駆動ロール8bの軸線が基準となるように治具8dを駆動ロール8bに当着させ,任意に定められるダイヤルゲージ8cの基準点から加圧ロール8a間の距離をダイヤルゲージ8cで測定できるようにしておき,駆動ロール8bの軸線に沿って治具8dをスライドさせ,駆動ロール8bの左右それぞれで測定した距離の差からねじれ量を測定する。
【0006】
また,特許文献1では,ジャイロセンサを用いて基準ロール(例えば,駆動ロール)に対する被測定ロール(例えば,加圧ロール)の平行度を測定する発明が開示されている。更に,特許文献2では,レーザセンサ又は超音波センサなどのセンサを回転させることで,センサから複数のロール間の距離を測定し,基準線に対する各ロールの位置を求める発明が開示されている。
【0007】
しかしながら,図7を用いて説明した手法では,ダイヤルゲージを接触させる角度によって測定値が異なるため,正確な測定にはスキルが要求されるし,特許文献1や特許文献2の発明では,電子式のセンサ(ジャイロやレーザセンサ)を利用するため,印刷工場等,火気厳禁の場所では安全に利用することが困難であった。
【0008】
また,特許文献1で開示されている発明では,ジャイロの電源を投入していない場合,3分から8分程度のウォームアップ時間が経過するまで測定できない問題があるし,更に,特許文献2のようにレーザセンサや超音波センサを用いると,ロール表面が鏡面の金属やゴムの場合,安定した測定ができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3587415号公報
【特許文献2】特開平6―307845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで,本発明は,火気厳禁の場所であってもスキルを要求されることなく,一対のロール間に発生しているねじれ量を測定することのできるねじれ量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する第1の発明は,基準ロールと加圧ロールの間に発生しているねじれ量を測定するねじれ量測定装置であって,前記基準ロールまたは前記加圧ロールを受ける逆V型のロール受け部を有する固定受け部材と,前記固定受け部材上に設けられた測定機構からなり,前記測定機構は水平面に対して回動自在に支持され,前記加圧ロールまたは前記基準ロールを受けるV字型のロール受け部を有する回動受け部材と,前記回動受け部材をスライド部させる直動案内部材と,前記回動受け部材のスライド量を示すゲージ部材を備えていることを特徴とするねじれ量測定装置である。
【0012】
更に,第2の発明は,前記基準ロールの軸方向に長い前記固定受け部材上の左右に,前記測定機構を設けていることを特徴とする第1の発明に記載のねじれ量測定装置である。
【0013】
第1の発明の前記ねじれ量測定装置によれば,前記固定受け部材の逆V字型のロール受け部で前記基準ロールを受けた状態で,前記基準ロールに対してねじれが発生している前記加圧ロールによって前記回動受け部材を加圧すると,前記回動受け部材のV字型のロール受け部に前記加圧ロールが収まるように,前記回動受け部材が回転すると共に前記回動受け部材が前記直動案内部材をスライドし,前記加圧ロールがV字型のロール受け部に収まると前記回動受け部材の回転及びスライドが停止し,このときの前記ゲージ部材で示されるスライド量は前記回動受け部材のねじれ量を示すことになる。
【0014】
前記ねじれ量測定装置の前記測定機構によって,前記基準ロールの左右側で,前記回動受け部材の回転及びスライドが停止したときのねじれ量を前記ゲージ部材から読み取れば,前記加圧ロールと前記基準ロール間で発生しているねじれ量を測定することができる。
【0015】
また,第2の発明のように,前記基準ロールの軸方向に長い前記固定受け部材上の左右に,前記測定機構を設けておけば,前記基準ロールの左右に前記ねじれ量測定装置を載せる必要はなくなり,ねじれ量を測定する作業負荷を減らすことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように,本発明のねじれ量測定装置によれば,固定受け部材の逆V型のロール受け面で基準ロールを受けるように,ねじれ量測定装置を基準ロールに載せるだけでねじれ量が測定できるため,ねじれ量の測定にスキルは必要なくなる。また,ねじれ量の測定に電子式のセンサを利用しないため,火気厳禁の場所であっても安全に利用することができる。更に,ねじれ量が測定できるまでの待機時間も必要となく,ロール表面が鏡面の金属やゴムの場合であっても安定した測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ねじれ量測定装置の外観を説明する図。
【図2】測定機構を説明する図。
【図3】回動受け部材の動きを説明する図。
【図4】ねじれ量測定装置を用いたねじれ量測定方法を説明する図。
【図5】固定受け部材を二つ設けたねじれ量測定装置を説明する図。
【図6】ニップ機構を説明する図。
【図7】ねじれ量を測定する一般的な手法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここから,本願発明の実施形態について,本願発明の技術分野に係わる当業者が,本願発明の内容を理解し,本願発明を実施できる程度に説明する。
【0019】
図1は,本実施形態におけるねじれ量測定装置1の外観を説明する図であり,図2は,ねじれ量測定装置1に設けられた測定機構3を説明する図である。図1で図示したように,本実施形態のねじれ量測定装置1は,基準ロールである駆動ロール5の軸方向の長さよりも若干長さが短く,駆動ロール5を受けるロール受け部20を有する一つの固定受け部材2上の左右に,加圧に利用される加圧ロール4と駆動ロール5間のねじれ量を測定するための測定機構3が設けられた装置である。
【0020】
ねじれ量測定装置1の固定受け部材2は,駆動ロール5上にねじれ量測定装置1を設置するために設けられる部材で,図1及び図2で図示したように,固定受け部材2の底面には逆V字型のロール受け部20が形成されており,この逆V字型のロール受け部20に駆動ロール5が安定して収まるようにねじれ量測定装置1を駆動ロール5上に載せることで,逆V字型のロール受け部20の凸線方向と駆動ロール5の軸方向を容易に合わせることができる。
【0021】
図2に図示したように,ねじれ量測定装置1に設けられた測定機構3は,水平面に対して回動自在に支持され,加圧ロール4を受ける回動受け部材30と,回動受け部材30をスライドさせる直動案内部材31と,基準点からの回動受け部材30のスライド量を示すゲージ部材32と,測定機構3を固定受け部材2に取り付けるための治具部材33とから少なくとも構成されている。
【0022】
本実施形態において,水平面に対して回動自在に支持され,加圧ロール4を受ける回動受け部材30は,上面にVの字型のロール受け部300と,ロール受け部300と固着し,軸線を中心に回動可能な軸部301と,軸部301を回動可能に支えている軸受け部302とから少なくとも構成されている。
【0023】
本実施形態において,ねじれ量測定装置1の直動案内部材31は,固定受け部材2の底面に形成された逆V字型の凸線9の方向と垂直をなすように設けられ,回動受け部材30の軸部301を回動可能に支えている軸受け部302がスライド可能に直動案内部材31に取り付けられており,駆動ロール5にねじれ量測定装置1を載せた際,回動受け部材30は,駆動ロール5の軸方向と直角方向にスライド可能である。
【0024】
図3は,回動受け部材30の動きを説明する図である。加圧ロール4によって加圧していない状態において回動受け部材30のロール受け部300は回動可能で,回動受け部材30のロール受け部300に形成されたV字型の凹線10の方向と加圧ロール4の軸方向は一致していない(図3(a))。
【0025】
この状態で,加圧ロール4を降下させ回動受け部材30のロール受け部300を加圧すると,回動受け部材30のロール受け部300に加圧ロール4が安定して収まるように,回動受け部材30のロール受け部300が図3(b)の矢印Aの方向へ回転すると共に,軸受け部302が直線案内部材31に沿って図3(b)の矢印Bの方向へスライドし,回動受け部材30のロール受け部300に加圧ロール4が安定して収まると,回動受け部材30の回転及び軸受け部302のスライドは停止する(図3(c))。
【0026】
本実施形態では,ゲージ部材32として,固定受け部材2の端面にバーニア目盛320を設け,バーニア目盛320の基準点320aからのスライド量を示す指針321を,直動案内部材31に沿ってスライドする軸受け部302に設けている。なお,本実施形態において,バーニア目盛320の基準点320aは,軸部301の回動中心に合わせている。
【0027】
図4は,ねじれ量測定装置1を用いたねじれ量測定方法を説明する図である。図4(a)は,ねじれ量測定装置1の設置方法を説明する図で,これまで説明したねじれ量測定装置1を利用して,加圧ロール4と駆動ロール5間に発生しているねじれ量を測定する際,まず,加圧ロール4を加圧していない状態で,固定受け部材2の底面に形成された逆V字型のロール受け部20に駆動ロール5が安定して収まるようにねじれ量測定装置1を駆動ロール5の左右にそれぞれに載せた後,加圧ロール4を加圧して降下させる。
【0028】
加圧ロール4が加圧されると,図3を用い説明したように,回動受け部材30のV字型のロール受け部300に加圧ロール4が安定して収まるまで,回動受け部材30のロール受け部300が回転する共に回動受け部材30の軸受け部302が直線案内部材31をスライドし,回動受け部材30のロール受け部300に安定して加圧ロール4が収まると,ロール受け部300の回転及び軸受け部302のスライドは停止する。
【0029】
図4(b)は,ロール受け部300の回転及び軸受け部302のスライドが停止した状態の一例である。図4(b)においては,加圧ロール4に発生しているねじれによって,左側の測定機構3のロール受け部300が図の上側に,右側の測定機構3のロール受け部300が図の下側にスライドし,左右の測定機構3のロール受け部300は,加圧ロール4に発生しているねじれ量に応じて回動している。
【0030】
図4(b)の状態で,駆動ロール5の左右に設置した測定機構3のゲージ部材32の値(Δ1,2)を読み取り,それぞれの値の差を求めれば,加圧ロール3と駆動ロール5間に発生しているねじれ量を測定できる。
【0031】
なお、本発明は、これまで説明した実施の形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
【0032】
例えば,上述した実施形態では,加圧ロール4の下側に駆動ロール5が配置されているため,基準ロールを駆動ロール5としていたが,加圧ロール4の上側に駆動ロール5が配置されている場合,加圧ロール4を基準ロールとしてねじれ量を測定することもできる。
【0033】
また,上述した実施形態では,駆動ロール5を受ける固定受け部材を一つとしていたが,駆動ロール5を受ける固定受け部材を二つ設け,それぞれの固定受け部材に,これまで説明した測定機構を備えさせることもできる。
【0034】
図5は,駆動ロール5を受ける固定受け部材を二つ設けたねじれ量測定装置を説明する図である。図5で図示したねじれ量測定装置6には2つの固定受け部材60が設けられ,それぞれの固定受け部材60には,上述した実施形態と同じ機能を有する測定機構61が設けられている。
【符号の説明】
【0035】
1 ねじれ量測定装置
2 固定受け部材
3 測定機構
30 回動受け部材
300 ロール受け部
301 軸部
302 軸受け部
31 直動案内部材
32 ゲージ部材
320 バーニア目盛
321 指針
33 治具部材
4 加圧ロール
5 駆動ロール
9 凸線
10 凹線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準ロールと加圧ロールの間に発生しているねじれ量を測定するねじれ量測定装置であって,前記基準ロールまたは前記加圧ロールを受ける逆V型のロール受け部を有する固定受け部材と,前記固定受け部材上に設けられた測定機構からなり,前記測定機構は水平面に対して回動自在に支持され,前記加圧ロールまたは前記基準ロールを受けるV字型のロール受け部を有する回動受け部材と,前記回動受け部材をスライド部させる直動案内部材と,前記回動受け部材のスライド量を示すゲージ部材を備えていることを特徴とするねじれ量測定装置。
【請求項2】
前記基準ロールの軸方向に長い前記固定受け部材上の左右に,前記測定機構を設けていることを特徴とする請求項1に記載のねじれ量測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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