説明

ねじ付きファスナーのためのフッ素重合体被覆組成

【課題】ねじ付きファスナーのねじ部に塗布して、種々の製作若しくは製造工程中にファスナーに触れる混入物からねじ部を遮断する改良された粉体フッ素重合体被覆組成物および被覆方法を提供する。
【解決手段】被覆されたねじ付きファスナーの製造方法であって、その被覆は混入物遮蔽膜として働き、この被覆は、フッ素重合体樹脂、不活性充填剤及び着色色素を含む粉体混合体として塗布される。粉体混合体は50乃至75パーセントのフッ素重合体樹脂、約25乃至50パーセントの非フッ素重合体充填剤、及び約0乃至5パーセントの色素を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は米国仮出願第60/686,204号(2005年6月1日出願)に基づく優先権を主張している。
【発明の背景】
【0002】
一般に本発明は、ねじ付きファスナーの保護被覆として用いられる粉体フッ素重合体被覆組成に関する。更に詳しくは、本発明は、そのようなファスナーのねじ部に塗布して、種々の製作若しくは製造工程中にファスナーに触れる混入物からねじ部を遮蔽する粉体フッ素重合体被覆組成の改良に関する。ファスナーに被覆を施すと、混入物のファスナーねじ部への付着が防止されるので、その後の組み立て作業におけるファスナーのねじ結合が円滑になる。
【0003】
粉体フッ素重合体ファスナー被覆は公知である。この分野における先駆的な技術はナイロック・コーポレーションにより開発されて、1980年代に商標名「Nycote」の下にファスナー産業へ導入された。これらの粉体フッ素重合体被覆及びそのファスナーへの塗布方法は米国特許第4,835,819号及び第5,221,170号に説明されており、その開示事項は本明細書に参照により組み込まれている。同様にナイロック・コーポレーションが所有する最近の米国特許第6,156,392号は、摩擦帯電法を用いてフッ素重合体被覆をファスナーへ塗布することを教示している。その開示事項も本明細書に参照により組み込まれている。
【0004】
フッ素重合体ねじ部被覆組成として効果的に機能させるためには、その材料は幾つかの性能目標を満足せねばならない。即ち、
・材料は、電子蒸着被覆の不所望な付着を有効に防止するために、電気的に絶縁されねばならない。
【0005】
・材料は、被覆されたファスナー製品が溶着環境に晒された際に溶着スプラッターの付着を防止せねばならない。
【0006】
・材料は、ファスナー製品が部品アセンブリーへ溶着される際に通常被る温度においても、付着性及び凝集性を保持する能力を持たねばならない。
【0007】
・材料は、ファスナーが後に組み合わせられる際に、大きな取り付けトルクを導いてはならない。
【0008】
・塗布された材料は、その後の処理段階(これは洗浄、すすぎ、電子被覆、及び乾燥を含む)に亘って、ファスナーねじ部に対するその付着性を保持する能力を持たねばならない。
【0009】
・選択的に、材料には、組み合わせ中に締め付けが負荷される際に、ファスナーの圧力フランクから剥離する(若しくは擦られて落ちる)能力を持たせ、或る程度の金属対金属接触を与えて、電気的接地又は電気的ボンディングを可能とすべきである。
【0010】
1980年代に最初のNycote粉体フッ素重合体被覆が導入されて以来、様々な安価な液体フッ素重合体被覆が市場に登場してきたが、これらの組成は、上述した性能条件を満足できないという不都合を被っている。更に、これらの液体組成は、液体処理用途のための機器及びその工程を必要としており、これらは乾燥粉体塗布に使用するものに比べると、あまり望ましくない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は粉体フッ素重合体被覆組成を志向しており、これはファスナーをねじ混入物から遮蔽するのに有益であり、上述した性能条件を全て満足するのみならず、従前に用いられていた粉体フッ素重合体被覆よりも実質的に安価である。本発明の組成は第1のフッ素重合体バインダー成分と、第2の充填剤成分とを含む。フッ素重合体成分は、上記に列挙した米国特許に特定されたフッ素重合体化合物のうちの任意のものとしてもよい。充填剤材料は一般に不活性であり、フッ素重合体の粒子径部分布に概ね匹敵する粒子径分布を有する。充填成分に使用可能な材料は、高分子樹脂化合物、シリカ化合物、(重合ビニリデン塩化コポリマーのシェル内に被包された)炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、及び、中実と中空との両方の形態におけるガラス微小球を含む。
【好ましい実施例の詳細な説明】
【0012】
本発明により製造された粉体フッ素重合体は、フッ素重合体バインダー成分を含み、これは米国特許第第4,835,819号、第5,221,170号及び第6,156,392号に開示されたフッ素重合体化合物のうちの任意のものから構成してもよい。更に、本発明のフッ素重合体組成は、充填剤成分を含み、これは、高分子樹脂化合物、シリカ化合物、重合ビニリデン塩化コポリマーに被包された炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、中実又は中空の何れかのガラス微小球から構成してもよい。充填物としての使用に適するガラス球の例は以下の通りである。
【0013】
a)Potters Industries Spheriglass 3000 E−ガラス(ホウケイ酸ガラス)、そのかさ比重は1立方センチメートル当り約2.5グラムであり、平均粒子径=35ミクロンである。
【0014】
b)Potters Industries Hollow Glass Spheres、そのかさ比重は1立方センチメートル当り約0.6乃至1.1グラムであり、平均粒子径は18ミクロンである。
【0015】
c)Sovereign Specialty Chemicals Dualite Composite Microspheres、そのかさ比重は1立方センチメートル当り約0.135グラムであり、平均粒子径は75ミクロンである。
【0016】
d)3M Scotchlite Glass Bubbles (ソーダ石灰 ホウケイ酸ガラス)、そのかさ比重は1立方センチメートル当り約0.1グラムであり、平均粒子径は50ミクロンである。
【0017】
中空ガラス微小球又は他の中空球形充填剤は、これらの材料がファスナーの組み合わせ中に砕けることにより、被覆によるファスナーの取り付けトルクを増大させる傾向を低減させるか若しくは排除するので好ましい。
【0018】
本発明の実施に用いられるフッ素重合体及び充填剤成分は、フッ素重合体が約50乃至75パーセントの範囲に亘る広範な比率範囲で混合してもよい。一つの好ましい組成は、60パーセントのフッ素重合体及び40パーセントのガラス微小球の使用である。更に、フッ素重合体成分のかさ比重は、充填剤成分のかさ比重に対してなるべく近接するように整合させることが望ましい。本発明の実施に適することが判明しているフッ素重合体粉体のかさ比重は、1立方センチメートル当り約2.15グラムである。かさ比重が1立方センチメートル当り約0.1乃至2.5グラムの範囲の充填剤材料は有益である。しかしながら、充填剤材料のかさ比重とフッ素重合体のかさ比重との差が1立方センチメートル当り約0.5グラムを越える場合には、均一に混合された粉体混合体を保つ上で問題を生じ得る。
【0019】
均一に混合された粉体混合体を維持する潜在的な問題は、本発明において、充填剤成分がフッ素重合体成分内に被包された実施例を用いることにより解消される。
【0020】
不活性充填剤の添加によって、非常に安価で、しかも上述した望ましい性能条件を全て備えるフッ素重合体被覆組成を達成できることが当業者に理解されるであろう。更に、被覆の様々な物理的特性、例えば耐温度性、強度、弾性、及び潤滑性は、特定の充填成分の選択により調整できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーねじ部に施されたねじ混入物遮蔽膜を有するねじ付きファスナーを製造する方法であって、
フッ素重合体樹脂混合体の流れを形成し、この混合体は乾燥粉体形態であって、且つ約50乃至75パーセントのフッ素重合体樹脂、約25乃至50パーセントの非フッ素重合体充填剤、及び約0乃至5パーセントの色素を含み、
ファスナーのねじ部表面を前記混合体のフッ素重合体樹脂成分の溶融温度よりも高い温度へ予熱し、
その予熱されたファスナーを前記フッ素重合体樹脂混合体流へ通過させて、粉体混合体を前記ファスナーねじ部に付着させることにより、このファスナーねじ部上に、連続的で、ピンホールが無く、しかも概ね均一な厚さの被覆を形成し、
その被覆されたファスナーを冷却する方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記充填剤は、高分子樹脂、シリカ化合物、重合ビニリデン塩化コポリマー内に被包された炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、又はガラスからなるグループから選択される方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記充填剤は、ガラス玉又はガラス微小球からなる方法。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記充填剤は、前記フッ素重合体樹脂内に被包されている方法。
【請求項5】
請求項1の方法において、前記フッ素重合体樹脂と前記充填剤とのかさ比重は実質的に同一である方法。
【請求項6】
請求項1の方法において、前記フッ素重合体樹脂のかさ比重は1立方センチメートル当り約2.00グラムであり、前記充填剤のかさ比重は、1立方センチメートル当り約0.1乃至2.5グラムである方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、得られた前記被覆は前記ファスナーのねじ部に亘って概ね均一であり、実質的にピンホールがない方法。

【公開番号】特開2006−342965(P2006−342965A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153292(P2006−153292)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(595022382)ナイロック・コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】