説明

ねじ式ロック機構

【課題】ねじ式ロック機構によるロック作業が正常か否かを認知可能にする。
【解決手段】ボルト12を外部(下側)から緊締方向に回転すると、内部のナット13が連れ回され、ストッパによりロック位置に保持される。ボルト12の更なる緊締方向回転によりナット13はロックベース11に向けロック位置までストロークして、ナット13およびロックベース11間に車体側ロックプレート3を挟圧し、ねじ式ロック機構1が取り付けられているバッテリを車体にロックし得る。ナット13のロック位置への回転を外部から認知可能にするため、第1ピン21をロックプレート3上に横方向スライド可能に設け、第2ピン22をロックベース11に上下方向スライド可能に挿置する。ナット13はロック位置への回転時に第1ピン21を押し、これに応動して第2ピン22が下端面22bをロックベース11から突出させた状態から、ナット13のロック位置への回転を認知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトおよびこれに螺合させたロックナットの緊締方向相対回転で発生する挟圧力により、これらボルトおよびロックナットが取り付けられている或る部材を、他の部材に着脱自在または永続的にロックするようにした型式のねじ式ロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロック機構としては、回転操作力を軸線方向力に変換して挟圧力となす回転カム機構を用い、この回転カム機構が発生した挟圧力により、或る部材を他の部材に着脱自在または永続的にロックするカム式ロック機構が多く用いられている。
その理由は、回転カム機構の回転操作量が少なくて、着脱時間を短縮することができるためである。
【0003】
一方、電気自動車やハイブリッド車両のように電動モータを搭載した電動車両においては、電動モータ用に大容量の大型バッテリが必要であり、また、かかる大型で重い(例えば60〜70kgの)バッテリを車体に着脱自在または永続的にロックしなければならないという要求がある。
かように重い大型バッテリを車体にロックするに際し上記したカム式ロック機構を用いた場合、ロックの確実性に欠けるだけでなく、ロック強度が不足するという不安を払拭しきれない。
【0004】
そこで、かように重量物をロックするに際しては、例えば特許文献1に記載のごときねじ式ロック機構を用いることが考えられる。
このねじ式ロック機構は、ボルトおよびこれに螺合させたロックナットの緊締方向相対回転で発生する挟圧力により、或る部材を他の部材に着脱自在または永続的にロックするものである。
【0005】
一方ねじ式ロック機構としては、上記のロックナットを上記他の部材に溶接などにより固設し、上記或る部材に取り付けられているボルトを上記の固設ロックナットにねじ込んで、当該或る部材を上記他の部材にロックする、所謂ナット固設式のものと、
ロックナットをボルトに常時螺合させて上記の或る部材に常設し、これらボルトおよびロックナットの緊締方向相対回転で発生する挟圧力により、或る部材を他の部材にロックする、所謂ナット螺合式のものとが考えられる。
【0006】
前者のナット固設式ロック機構は、或る部材を他の部材に永続的にロックする場合は問題を生じないが、或る部材を他の部材に着脱自在にロックする必要がある場合、当該着脱の度にボルトをロックナットにねじ込む必要があって、ロック作業の自動化を妨げると共に、ボルトとロックナットとのねじ込み時に両者間に「カジリ」を生じて、ロック機構そのものを駄目にする懸念がある。
【0007】
よって、ねじ式ロック機構を着脱ロック機構として用いる場合は、後者のナット螺合式に構成するのがよい。
本発明のねじ式ロック機構は将に、かかるナット螺合式のロック機構に係わり、
ロックベースに抜け止めして回転自在にボルトを設け、該ボルトの前記抜け止めした端部と反対側の端部にロックナットを螺合し、前記ロックベースに対する該ロックナットの回転角を制限して、前記ボルトの緊締方向回転によりロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力を発生させるねじ式ロック機構を要旨構成の基礎前提とする。
【0008】
ところで、かかるねじ式ロック機構の場合、ロックナットが径方向外方へ張り出すロック爪などを有してシール部を設定し難いことを主たる原因とし、ロックナットが外部に露出しない状態でロック機構を用いる必要がある。
【0009】
このためロックに際しては、ロックナットの螺合端から遠い側におけるボルトの端部をナットランナなどで緊締方向へ回転させることとなる。
当初はロックナットが当該ボルトの回転に連れ回されるが、ロックナットの回転角が制限されているため、ロックナットはこの制限位置に止まる。
よって以後は、ボルトの回転によりロックナットが緊締されてねじ込み方向へストロークする。
当該ロックナットのストロークにより、ロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力が発生し、上記の或る部材を他の部材にロックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3324182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のねじ式ロック機構にあっては、ロック作業中にロックナットを外部から認識することができないため、このロックナットの制限位置への回転、および、その後におけるロックナットのねじ込み方向ストロークも認識することができない。
このため、ロック作業時に異物などで正規のロック状態が得られない状態であっても、ロックが正規の通りに完了したと誤判断するという虞がある。
【0012】
本発明は、上記の理由からロックナットを外部から直接的に認識することができなくても、このロックナットの制限位置への回転、および、その後におけるロックナットのねじ込み方向ストロークを認識することができるようにし、
ロック作業時におけるロック不良を確実に検出し得るようにして、上記の問題を解消したねじ式ロック機構を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明によるねじ式ロック機構は、以下のごとくに構成する。
先ず前提となるねじ式ロック機構を説明するに、これは、
ロックベースに抜け止めして回転自在にボルトを設け、該ボルトの前記抜け止めした端部と反対側の端部にロックナットを螺合し、前記ロックベースに対する該ロックナットの回転角を制限して、前記ボルトの緊締方向回転によりロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力を発生させるようにしたものである。
【0014】
本願発明は、上記基礎前提のねじ式ロック機構に対し、以下のようなロックナット回転応動機構を設ける。
このロックナット回転応動機構は、上記ボルトの緊締方向回転に伴う上記ロックナットの制限位置への回転に応動して、該ロックナットの制限位置への回転を認知可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本願発明のねじ式ロック機構によれば、ロックナット回転応動機構が、ボルトの緊締方向回転に伴うロックナットの制限位置への回転を認知させ得るため、
かかるロックナットの制限位置への回転を認識し、ロック作業時において、このロックが正規の通りに完了し得るとの判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例になるねじ式ロック機構を、ロックナット回転認知機構の設置箇所において断面として、ロック前の状態で示す縦断正面図である。
【図2】図1におけるねじ式ロック機構を、ロックナット回転認知機構が見えるよう一部破断して、同じくロック前の状態で示す斜視図である。
【図3】図1におけるねじ式ロック機構を、ロックナット回転認知機構の設置箇所において断面として、ロック後の状態で示す縦断正面図である。
【図4】図1におけるねじ式ロック機構の相手方であるロックプレートの開口部を示す平面図である。
【図5】図1におけるねじ式ロック機構に設けたロックナット回転認知機構を成す第1ピンのロックプレートへの取り付け構造を示す分解斜視図である。
【図6】図1におけるねじ式ロック機構に設けたロックナット回転認知機構を成す第1ピンおよび第2ピンの非作動時における相関関係を示す説明図である。
【図7】図1におけるねじ式ロック機構に設けたロックナット回転認知機構を成す第1ピンおよび第2ピンの認知作動時における相関関係を示す説明図である。
【図8】図1におけるねじ式ロック機構を、ロックナットストローク認知機構の設置箇所において断面として、ロック前の状態で示す縦断側面図である。
【図9】図1におけるねじ式ロック機構を、ロックナットストローク認知機構が見えるよう一部破断して、同じくロック前の状態で示す斜視図である。
【図10】図1におけるねじ式ロック機構を、ロックナットストローク認知機構の設置箇所において断面として、ロック後の状態で示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図示の実施例に基づき詳細に説明する。
<構成>
図1〜10は、本発明の一実施例になるねじ式ロック機構1を示し、このねじ式ロック機構1は、電気自動車のような電動車両の大型バッテリ(図示せず)を車体2に着脱自在にロックするためのロック機構として構成する。
【0018】
電動車両は、車体2の床下に下向き開口付きバッテリ収納空所(図示せず)を有し、この空所内に大型バッテリ(図示せず)を着脱自在に収納し、このバッテリからの電力で駆動されるモータを動力源として具えるものとする。
【0019】
車体2の下向き開口付きバッテリ収納空所内に大型バッテリを着脱自在に収納し得るようにするため、図1のごとく車体2の床面にロックプレート3を任意の緊締手段4で取着する。
大型バッテリを上記の下向き開口付きバッテリ収納空所内に着脱自在に収納するに際しては、この収納状態で、バッテリに設けられているねじ式ロック機構1とロックプレート3との共働(ロック)により、バッテリをロックプレート3(車体2)に着脱自在に取り付ける。
【0020】
ねじ式ロック機構1を以下に説明する。
このねじ式ロック機構1は、ロックベース11と、ボルト12と、ロックナット13とを主たる構成要素とする。
ボルト12は図8,10に示すごとく、ロックベース11に回転自在に挿通すると共に、ボルトヘッド12aに近い端部に一体成形したフランジ12bにより抜け止めする。
【0021】
上記のごとくロックベース11に抜け止めして回転自在に設けたボルト12は、上記抜け止め端部と反対側の端部にロックナット13を螺合して具える。
このロックナット13は、そのねじ込み方向に見たとき図4に示すごとき矩形とし、その中央に、ボルト12へねじ込むための雌ねじ13aを有する構成とする。
なお14は、ロックナット13の中心部を覆って、グリースを収容するためのキャップである。
【0022】
そして図示しなかったがロックベース11には、ロックナット13の回転を図4に実線で示すアンロック位置、および、同図に二点鎖線で示すロック位置間に制限する2個のストッパを設ける。
ちなみに図1,2,8,9は、ロックナット13が図4に実線で示すアンロック位置に回転しているときの状態を示し、図3,10は、ロックナット13が図4に二点鎖線で示すロック位置に回転しているときの状態を示す。
【0023】
図4に示すようにロックプレート3には、実線図示のアンロック位置にあるロックナット13が通過可能な矩形孔3aと、上記のキャップ14が通過可能な円形孔3bとを設ける。
ただし円形孔3bの直径は、図4に二点鎖線で示すロック位置にあるロックナット13の通過を許容しない大きさとする。
【0024】
<作用>
上記の構成になるねじ式ロック機構1は、ロックベース11をバッテリに取着してバッテリ側に設け、
このバッテリを車体2の下向き開口付きバッテリ収納空所内に着脱自在に収納するに際し、以下のようにロック作用を果たす。
【0025】
バッテリの取り付けに際しては、先ずボルト12の弛緩方向回転によりロックナット13を連れ回して、図4に実線で示す弛緩方向制限位置(アンロック位置)となす。
その後バッテリを車体2の下向き開口付きバッテリ収納空所内に挿入すると、ロックナット13が図4に示すロックプレート3の矩形孔3aを通過すると共に、キャップ14が同図に示すロックプレート3の円形孔3bを通過して、これらロックナット13およびキャップ14が図1,2および図8,9に示すごとくバッテリ収納空所内に位置し、ロックベース11がロックプレート3の外部露出下端面に着座する。
【0026】
この状態でボルト12をナットランナなどでボルトヘッド12aを介し緊締方向に回転させると、ロックナット13がボルト12により連れ回されて、図4に実線で示す弛緩方向制限位置(アンロック位置)から同図に二点鎖線で示す緊締方向制限位置(ロック位置)となる。
【0027】
しかし、ロックナット13はこの緊締方向制限位置(ロック位置)を越えてボルト12により連れ回されることはなく、図3,10に示すごとく当該回転位置に止まる。
そのため、ボルト12を緊締方向へ更に回転させると、ロックナット13は図3,10に示すごとく、緊締方向制限位置(ロック位置)を保ってねじ込まれ、ロックベース11に接近する方向へストロークする。
これによりロックナット13およびロックベース11は、両者間にロックプレート3を挟圧し、バッテリをバッテリ収納空所内に収納した状態に保持することができる。
【0028】
なお、かかるバッテリ取り付け状態でバッテリ収納空所内に泥水などが浸入するのを防止するため、
図1〜3および図8〜10に示すごとくロックベース11とロックプレート3との間における着座面にシール部材15を介在させると共に、
図8,10に示すごとくボルトフランジ12bと、これが嵌合するロックベース11の窪みとの間にシール部材16を介在させる。
【0029】
バッテリをバッテリ収納空所から取り出すに際しては、図3,10のロック状態においてボルト12をナットランナなどでボルトヘッド12aを介し弛緩方向に回転させる。
これによりロックナット13がロックプレート3から離れ、ボルト12により連れ回されるようになっても、ロックナット13は図4に二点鎖線で示す緊締方向制限位置(ロック位置)から同図に実線で示す弛緩方向制限位置(アンロック位置)まで回転するのみであり、以後はこの弛緩方向制限位置(アンロック位置)に止まる。
【0030】
そのため、ボルト12を弛緩方向へ更に回転させると、ロックナット13は図1,2および図8,9に示すごとく、弛緩方向制限位置(アンロック位置)を保って、ロックベース11から遠ざかる方向へストロークする。
これにより、ロックナット13およびキャップ14を図4に示す矩形孔3aおよび円形孔3bに通過させつつ、バッテリをバッテリ収納空所内から取り出すことができる。
【0031】
<ロックナットの状態認知について>
前記したロック作業は手動で行ってもよいし、自動で行ってもよいが、何れにしてもロックナット13が外部に露出していないため、ボルトヘッド12aをナットランナなどで緊締方向へ回転させて行うロック作業中にロックナット13を外部から認知することができない。
従って、図4に二点鎖線で示すロックナット13の緊締方向制限位置(ロック位置)への回転、および、その後におけるロックナット13のねじ込み方向ストロークを認知することができない。
このため、手動でのロック作業時は当該認知がないまま作業を進めなければならないという不安があり、自動でのロック作業時は異物などで正規のロック状態が得られない状態であっても、ロックが正規の通りに完了したと誤判断するという虞がある。
【0032】
そこで本実施例においては、ロックナット13を外部から直接的に認知することができなくても、このロックナット13の図4に二点鎖線で示す緊締方向制限位置(ロック位置)への回転、および、その後におけるロックナット13のねじ込み方向ストロークを認知することができるよう、ねじ式ロック機構1に以下のロックナット位置検出構造を付加する。
【0033】
<ロックナット回転認知機構>
図1〜3および図5〜7は、ロックナット13の図4に二点鎖線で示す緊締方向制限位置(ロック位置)への回転を認知可能にするロックナット回転応動機構を示し、
図8〜10は、ロックナット13のねじ込み方向ストローク(ロックベース11への接近ストローク)を認知可能にするロックナットストローク応動機構を示す。
【0034】
先ず前者のロックナット回転応動機構を、図1〜3および図5〜7に基づき説明するに、このロックナット回転応動機構は、ロックプレート3側(車体2側)の第1ピン21と、ねじ式ロック機構1側(バッテリ側)の第2ピン22とで構成する。
【0035】
第1ピン21は、ロックナット13の図4に二点鎖線で示す緊締方向制限位置(ロック位置)への回転に応動して、図3および図7に示すごとくにストロークするもので、
この第1ピン21を、明瞭のため図1〜3では図示しなかったが、図5〜7に示すごとく筒状ガイド23によりストローク可能に案内してロックプレート3に取り付ける。
【0036】
そのため筒状ガイド23を、図6,7に示すごとくロックプレート3上に固設し、第1ピン21をこの筒状ガイド23に挿入して、第1ピン21をこれら図6,7の矢印方向にスライド可能にする。
なお第1ピン21には、筒状ガイド23を挟んでその両側に位置するようストッパ21a,21bを係着し、これらストッパ21a,21bにより第1ピン21が筒状ガイド23から抜け出すのを防止する。
【0037】
そして第1ピン21は図5に示すごとく矩形断面形状とし、これを挿入する筒状ガイド23の中心孔も矩形とし、第1ピン21が、その長手方向軸線周りに回転しないでストロークするようになす。
図3,7に示すごとくにロックナット13が当接する第1ピン21の端部とは反対側における第1ピン21の端面21cを、後述のごとくに作用する傾斜カム面となす。
この傾斜カム面21cは図1,2に示すごとく、ロックプレート3に指向する下向き斜面とし、ロックプレート3には、この傾斜カム面21cと整列する透孔3cを穿設する。
【0038】
第2ピン22は図1〜3に示すごとく、ロックベース11に対し上下方向に貫通させてストローク可能に設け、この第2ピン22を、そのフランジ22aに着座したバネ24で図1,2に示す上限位置に弾支する。
なお、ロックベース11に対する第2ピン22の貫通設置位置は、前記したごとくバッテリをバッテリ収納空所内に挿入させたことでロックベース11が図1,2のようにロックプレート7に当接されたとき、第2ピン22が上記ロックプレート3の透孔3cと整列するような位置に決定する。
【0039】
第2ピン22は、バネ24により弾支された図1,2に示す上限位置で、第2ピン22の下端面22bがこれらの図に示すごとく、丁度ロックベース11の下端面と同レベルになり、上端面22cがロックプレート3の透孔3cを貫通して第1ピン21の傾斜カム面21cに衝接する長さとする。
なお第2ピン22の上端面22cは、第1ピン21の傾斜カム面21cに対応する傾斜カム面とし、両者間のカム作用により、第1ピン21の横方向ストロークが第2ピン22の上下方向ストロークに方向変換されるようになす。
【0040】
<ロックナット回転認知作用>
バッテリの取り付けに際し、バッテリをバッテリ収納空所内に上昇させながら挿入することで、図4に実線で示すアンロック位置のロックナット13がロックプレート3の矩形孔3aを通過して図1,2に示す位置となり、ロックベース11がロックプレート3の下端面に着座するとき、
第2ピン22がロックプレート3の透孔3cを貫通し、第2ピン22の上端における傾斜カム面22cが第1ピン21の傾斜カム面21cに衝接する。
このとき第2ピン22は図1,2,6に示すごとく、バネ24のバネ力を受けて、傾斜カム面22c,21c間のカム作用により第1ピン21を図示の限界位置に弾支する。
【0041】
この状態で、ボルト12を緊締方向に回転させることによりロックナット13が、図4に実線で示すアンロック位置から同図に二点鎖線で示すロック位置になると、
ロックナット13は図3,7に示すごとく、第1ピン21を図1,2,6に示す限界位置から反対方向へストロークさせる。
かかる第1ピン21のストロークは、第2ピン22を図3,7に示すごとく、これらピンの傾斜面21c,22c間におけるカム作用によりバネ24に抗して下降させる。
【0042】
上記した第2ピン22の下降により、その下端面22bが図3に示すごとくロックベース11の下端面から突出し、かかる第2ピン22の突出をもって、ロックナット13がアンロック位置からロック位置に回転したのを認知することができる。
このため、ロックナット13のロック位置への回転を認識して、不安なく手動でのロック作業を進めることができるし、自動でのロック作業時においては、このロックが正規の通りに完了し得るとの判断のもと、当該自動でのロック作業を更に進行させることができる。
【0043】
なお本実施例では、ロックナット13のロック位置への回転に応動してストロークする第1ピン21と、第1ピン21のストロークに応動してストロークする第2ピン22とを組み合わせ、第1ピン21から遠い第2ピン22の下端面22bがロックベース11から突出したのをもって、ロックナット13のロック位置への回転を認知するため、
第2ピン22の下端面22bが突出しているか否かのON,OFF的な状態変化で上記の認知を行うことができて、この認知を一層確実に行うことができる。
【0044】
また本実施例においては、第1ピン21および第2ピン22の相互突き合わせ端面21c,22cを傾斜カム面とし、第2ピン22のストロークを第1ピン21のストロークに対し方向変換させるため、
上記の認知に際してモニタすべき第2ピン下端面22bの突出箇所を自由に選択することができ、設計の自由度が増すと共に適用範囲を拡大することができる。
【0045】
<ロックナットストローク認知機構>
図8〜10は、ロックナット13の前記したねじ込み方向ストローク(ロックベース11への接近ストローク)を認知可能にするロックナットストローク応動機構を示す。
このロックナットストローク応動機構は、ボルト12の緊締方向回転に伴いロックナット13がロック位置への回転後ロックベース11へ接近するストロークに応動してストロークする第3ピン33と、この第3ピン33のストロークに応動してストロークする第4ピン34とで構成する。
【0046】
第3ピン33は、ボルト12の軸線に対し平行な方向に延在するようロックベース11の上方開口縦孔11a内に落とし込んで上下方向ストローク可能に設ける。
そして第3ピン33の設置位置は、ロックナット13が図8,9のごとくアンロック位置に回転したとき、ロックナット13の下方とならず、ロックナット13が図10のごとくロック位置に回転したとき、ロックナット13の下方となるような位置に決定する。
【0047】
第4ピン34は図8,9に示すごとく、ボルト12の軸線に対し直角な方向に延在するようロックベース11に横方向ストローク可能に設ける。
第4ピン34の設置位置は図8に明示するごとく、その内端面34aが第3ピン33の下端面33aに当接するような位置に決定する。
【0048】
また第4ピン34は図8に示すように、そのフランジ34bに着座したバネ35で図8,9に示す左限位置に弾支し、この左限位置において第4ピン34は、その外端面34cが丁度ロックベース11の側面と面一になり、内端面34aが丁度第3ピン33の下端面33aに当接するような長さとする。
そして、上記のごとく相互に当接する第4ピン34の内端面34aおよび第3ピン33の下端面33aを、後述のカム作用が得られるような傾斜カム面とする。
【0049】
<ロックナットストローク認知作用>
ボルト12の緊締方向回転に伴いロックナット13が図8,9に示すアンロック位置から図10に示すロック位置へ連れ回された後は、ロックナット13が更に連れ回されることがなくて図10のロック位置に止まり、このロック位置ではロックナット13が第3ピン33の上方に被さる。
【0050】
ロックナット13が図10のロック位置に止まることによって、ボルト12の更なる緊締方向回転によりロックナット13は図10に示すごとく、ロックベース11に接近する方向へストロークする。
このときロックナット13は、第3ピン33を図10に示すごとく押し下げ、かかる第3ピン33の押し下げストロークは、第3ピン33の下端傾斜カム面33aおよび第4ピン34の内端傾斜カム面34a間におけるカム作用により、第4ピン34を径方向外方へストロークさせる。
【0051】
上記した第4ピン34の径方向外方ストロークにより、その外端面34cが図10に示すごとくロックベース11の側面から突出し、かかる第4ピン34の突出をもって、ロック位置のロックナット13が図10に示すごとくロックベース11に向け接近ストロークしているのを認知することができる。
これにより、ロック作業が正常に進行しており、これが正規の通りに完了し得るとの判定のもと、
不安なく手動でのロック作業を進めることができるし、自動でのロック作業を更に進行させることができる。
【0052】
なお本実施例では、ロック位置のロックナット13がロックベース11に向け接近するのに応動してストロークするようロックベース11に設けた第3ピン33と、該第3ピン33のストロークに応動してストロークするようロックベース11に設けた第4ピン34とを組み合わせ、
第3ピン33から遠い第4ピン34の外端面34cがロックベース11の側面から突出したのをもって、ロックナット13のロックベース11への接近ストロークを認知するようにしたため、
第4ピン34の外端面34cが突出しているか否かのON,OFF的な状態変化で上記の認知を行うことができて、この認知を一層確実に行うことができる。
【0053】
また本実施例においては、第3ピン33および第4ピン34の相互突き合わせ端面33a,34aを傾斜カム面とし、第4ピン34のストロークを第3ピン33のストロークに対し方向変換させるため、
上記の認知に際してモニタすべき第4ピン外端面34cの突出箇所を自由に選択することができ、設計の自由度が増すと共に適用範囲を拡大することができる。
【0054】
<他の実施例>
なお上記では、図1〜3,5〜7に示すロックナット回転認知機構(ロックナット回転応動機構)、および、図8〜10に示すロックナットストローク認知機構(ロックナットストローク応動機構)の双方を具えたねじ式ロック機構について述べたが、
前者のロックナット回転認知機構(ロックナット回転応動機構)、または、後者のロックナットストローク認知機構(ロックナットストローク応動機構)の一方のみをねじ式ロック機構に設けて、対応する一方の作用効果が奏し得られるようにしてもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 ねじ式ロック機構
2 車体
3 ロックプレート
3a 矩形孔
3b 円形孔
3c 透孔
11 ロックベース
12 ボルト
12a ボルトヘッド
12b 抜け止めフランジ
13 ロックナット
13a 雌ねじ
14 キャップ
15,16 シール部材
21 第1ピン
21a,21b ストッパ
21c 傾斜カム面
22 第2ピン
22a フランジ
22b ロックナット回転認知用下端面
22c 傾斜カム面
23 筒状ガイド
24 バネ
33 第3ピン
33a 傾斜カム面
34 第4ピン
34a 傾斜カム面
34b フランジ
34c ロックナットストローク認知用外端面
35 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックベースに抜け止めして回転自在にボルトを設け、該ボルトの前記抜け止めした端部と反対側の端部にロックナットを螺合し、前記ロックベースに対する該ロックナットの回転角を制限して、前記ボルトの緊締方向回転によりロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力を発生させるねじ式ロック機構において、
前記ボルトの緊締方向回転に伴う前記ロックナットの制限位置への回転に応動して、該ロックナットの制限位置への回転を認知可能に構成したロックナット回転応動機構を設けてなることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項2】
ロックベースに抜け止めして回転自在にボルトを設け、該ボルトの前記抜け止めした端部と反対側の端部にロックナットを螺合し、前記ロックベースに対する該ロックナットの回転角を制限して、前記ボルトの緊締方向回転によりロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力を発生させるねじ式ロック機構において、
前記ボルトの緊締方向回転に伴い前記ロックナットが制限位置への回転後前記ロックベースへ接近するストロークに応動して、該ロックナットのロックベースへの接近を認知可能に構成したロックナットストローク応動機構を設けてなることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項3】
ロックベースに抜け止めして回転自在にボルトを設け、該ボルトの前記抜け止めした端部と反対側の端部にロックナットを螺合し、前記ロックベースに対する該ロックナットの回転角を制限して、前記ボルトの緊締方向回転によりロックベースおよびロックナット間にロック用の挟圧力を発生させるねじ式ロック機構において、
前記ボルトの緊締方向回転に伴う前記ロックナットの制限位置への回転に応動して、該ロックナットの制限位置への回転を認知可能に構成したロックナット回転応動機構と、
前記ボルトの緊締方向回転に伴い前記ロックナットが制限位置への回転後前記ロックベースへ接近するストロークに応動して、該ロックナットのロックベースへの接近を認知可能に構成したロックナットストローク応動機構とを具備してなることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項4】
前記ロックベース、ボルトおよびロックナットを或る部材に取り付け、この或る部材を他の部材にロックするようにした、請求項1または3に記載のねじ式ロック機構において、
前記ロックナット回転応動機構は、前記ボルトの緊締方向回転に伴う前記ロックナットの制限位置への回転に応動してストロークするよう前記他の部材に設けた第1ピンと、該第1ピンのストロークに応動してストロークするよう前記ロックベースに設けた第2ピンとより成り、
第1ピンから遠い第2ピンの端部がロックベースから突出していることをもって、前記ロックナットの制限位置への回転を認知させるものであることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項5】
請求項4に記載のねじ式ロック機構において、
前記第1ピンおよび第2ピンの相互突き合わせ端面を傾斜カム面とし、第2ピンのストロークを第1ピンのストロークに対し方向変換させるようにしたものであることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のねじ式ロック機構において、
前記ロックナットストローク応動機構は、前記ボルトの緊締方向回転に伴い前記ロックナットが制限位置への回転後前記ロックベースへ接近するストロークに応動してストロークするよう前記ロックベースに設けた第3ピンと、該第3ピンのストロークに応動してストロークするよう前記ロックベースに設けた第4ピンとより成り、
第3ピンから遠い第4ピンの端部がロックベースから突出していることをもって、前記ロックナットのロックベースへの接近を認知させるものであることを特徴とするねじ式ロック機構。
【請求項7】
請求項6に記載のねじ式ロック機構において、
前記第3ピンおよび第4ピンの相互突き合わせ端面を傾斜カム面とし、第4ピンのストロークを第3ピンのストロークに対し方向変換させるようにしたものであることを特徴とするねじ式ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−196789(P2010−196789A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42312(P2009−42312)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】