説明

はかり用計量物体キャリヤ

【課題】複数の試料の連続計量工程または重量測定式投与量分注工程をより効率的にかつ多くの技術的対策を伴うことなく実施することを可能にする。
【解決手段】計量セルの荷重受け入れ部に連結されるように設計された、計量セル用の計量物体キャリヤ5は、支持構造21および多区画計量トレイ20を含む。支持構造21は、一方には、支持構造21が荷重受け入れ部にそれを介して結合され得る結合要素22を、他方には、多区画計量トレイ20を支持構造21に連結するためのガイド拘束要素26、28を含む。連結は、多区画計量トレイ20を定位置に着座または摺動させるだけで行われ、多区画計量トレイ20を支持構造21に対する規定された線形式、旋回式または回転式の移動を自由に行う状態にさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はかりまたは計量セル用の計量物体キャリヤであって、簡単な方法で計量セルの荷重受け入れ部に連結され得るように設計され、知られている最新式の設備に比べ、複数の試料の連続計量工程または重量測定式投与量分注工程がより効率的にかつ多くの技術的対策を伴うことなく実施され得るという特定の利点を有する、計量物体キャリヤに関する。
【背景技術】
【0002】
物質の所定の投与量を分配するための最新式の構成は、たとえば電子式実験室用はかり、貯留容器および計測ヘッドを備えた投与量分注器、ならびにたとえばマイクロコンピュータなどの電子制御機器を含むことができる。投与量分注器は、計測ヘッドの出口開口部が、計量皿の上方に位置付けられるように配置される。貯留容器は、投与材料で充填され、計量容器が、計測ヘッドの出口開口部の下方に中心を垂直に揃えて計量皿上に置かれる。はかり、制御機器および投与量分注器は、閉ループ制御システムを構成し、このシステムでは、制御機器が現在存在する物質の実際の重量を計量容器内に連続的に受け入れ、その重量信号と事前設定された目標重量を比較し、実際の重量と目標重量の間の相違に基づいて、制御信号を計測ヘッドに対して発する。この制御システムは、たとえば物質の流れが、実際の重量が目標重量に近づくにつれて減速され、目標重量が達せられたときに停止されるように投与量分注器から計量容器内への物質の流出を制御することを可能にし、この場合工程の任意の時間に急激に減少した物質の量は、リードタイム許容差によって考慮され得る。
【0003】
上記の説明の最新式の構成を用いた複数の試料の連続計量工程または重量測定式投与量分注工程では、計量容器は、計量皿上に個々に設置され、投与量分注装置の出口開口部と位置合わせされ、分配工程が完了した後に計量皿から取り外される。この工程は、手動で行われる場合、非常に手間がかかるだけでなく物質がこぼされる、あるいは計量容器が混合されてしまうというリスクも伴う。あるいは、計量容器の計量皿へのおよび計量皿からの移送はまた、いわゆる自動試料採取器または実験室用ロボットを用いて自動化され得る。しかし、そのような設備の経費は、きわめて大容量の投与量分注用途にしか正当化され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,557,391 B2号
【特許文献2】米国特許第7,227,087号
【特許文献3】米国特許第7,227,088 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、複数の試料の連続計量工程または重量測定式投与量分注工程をより効率的にかつ多くの技術的対策を伴うことなく実施することを可能にする、はかり用の適切な付属装置であって、それによって計量容器が次々と正確に、たとえば投与量分注装置の出口開口部の下方などの規定された位置にすばやくかつ簡単な方法で、特に少しの手動作業だけで運び込まれ得る、付属装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、請求項1に記載の計量物体キャリヤによって対処される。本発明の詳細な態様およびさらなる展開された実施形態は、請求項1に従属する従属請求項において定義される。
【0007】
計量セルの荷重受け入れ部に連結可能である計量物体キャリヤは、支持構造および多区画計量トレイを含む。支持構造は、一方には、支持構造がはかりまたは計量セルの荷重受け入れ部にそれを介して結合され得る結合要素を、他方には、多区画計量トレイが支持構造にそれを介して移動可能に連結され得るガイド拘束要素を含む。ガイド拘束要素は、たとえば線形式ガイド、旋回式ガイドまたは回転式ガイドでよい。支持構造への連結は、支持構造に対する多区画計量トレイの規定された線形式、旋回式または回転式の移動を可能にするガイド要素内に多区画計量トレイを着座または摺動させるだけで達成される。同じように構成された支持構造および多区画計量トレイを備えた計量物体キャリヤは、たとえば米国特許第6,557,391 B2号に開示され、その内容の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0008】
本発明による多区画計量トレイは、少なくとも2つの受け入れ区画を備え、この受け入れ区画は、多区画計量トレイの上記で述べられた線形式、旋回式、または回転式の移動によって、その受け入れ区画の各々が規定され固定された荷重位置に連続的に運び込まれ得るように配置される。したがって、受け入れ区画は、常に直線、円、または円の断面上に配置されている。この構成は、さらに位置決め装置を含み、位置決め装置は、支持構造と多区画計量トレイの間でその機能を実行し、荷重位置内に移動される受け入れ区画を正確に位置決めするように働く。位置決め装置は、構成に関する限定された技術的範囲に対する要求事項が満たされ得るように純粋に機械的な方法で機能する特徴である。
【0009】
用語「荷重位置」は、計量物体キャリヤを取り巻く空間内の規定され固定された場所を意味する。これは、計量物体キャリヤが荷重位置と一列に並べられた後、受け入れ区画の各々が、いかなる調整ステップを繰り返すこともなく、多区画計量トレイの簡単な線形式、旋回式、または回転式の移動によってこの固定された場所内に移動され得ることを示唆する。
【0010】
支持構造は、荷重受け入れ部に非解放式に連結されるのではなく結合されるだけであるので、支持構造は、問題のない方法で外され洗浄され得、はかり上で広範囲におよぶ保守作業を行う必要はない。支持構造のより容易な洗浄に加え、はかりの計量室もまた、支持構造を取り外した後により良好に洗浄され得る。さらに、支持構造が取り外された後は計量室内に突出する荷重受け入れ部はもはや存在しないので、洗浄の結果計量セルを傷つけるというリスクは、最小限に抑えられ得る。
【0011】
支持構造が、適切な位置に固定され得る少なくとも1つの枢動継手および/または少なくとも1つの入れ子式の連結部材を有するならば有用である。同じように構成された枢動継手および入れ子式の連結部材を備えた支持構造は、たとえば米国特許第7,227,087号に開示され、その内容の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。枢動継手および/または入れ子式の連結部材を用いて、支持構造は、多区画計量トレイの挿入後、現在荷重位置に位置付けられた受け入れ区画が、たとえば投与量分注装置の出口開口部の下方に垂直に中心が置かれるようにして、計量室内の適切な位置に方向付けされ固定され得る。次の一連の投与量分注サイクルでは、支持構造は、はかり上のその位置に変更なくとどまり、多区画計量トレイのみがはかりから取り出される。
【0012】
計量物体キャリヤの有利な実施形態では、位置決め装置は、支持構造に対する線形の可動性を備えて構成される。支持構造と位置決め装置の間には、ばね要素が構成され、ばね要素のばね力の結果、位置決め装置は、現在荷重位置に位置付けられた受け入れ区画の外側輪郭に押し付けられるようになる。
【0013】
位置決め装置は、好ましくは2つの位置決めローラを有し、それによって次に続く受け入れ区画が、摩擦のために大きな作用力を必要とすることなく荷重位置に運び込まれ得、現在荷重位置にある受け入れ区画は、その外側輪郭を2つの位置決めローラの間に置いて着座する。この構成内の位置決め装置は、多区画計量トレイの上記で述べられた線形式、旋回式、または回転式の移動の結果、荷重位置の最も近傍に運ばれた受け入れ区画が、荷重位置に入るように残りの道を押し出され、ばね荷重式位置決めローラによってそこに保たれる機能を有する。したがって位置決め装置を備えた多区画計量トレイは、その旋回式または回転式の移動を停止させ、特有の正確に規定された位置にとどまることができる。
【0014】
上記で述べられたように、多区画計量トレイは、支持構造上に嵌められまたは支持構造内に摺動させるだけでよい。特に多区画計量トレイが上方から支持構造上に嵌められる計量物体キャリヤの構成を用いる場合、上向きの端部に面取りされた縁部を備える位置決めローラ、すなわちローラが部分的に先細にされるならば有用である。多区画計量トレイが支持構造に嵌め込まれるとき、位置決めローラは、縁部が先細にされた結果、多区画計量トレイの輪郭に沿って滑り、僅かに後退することができ、それによって多区画計量トレイを定位置に嵌め込むことが有意により容易になる。
【0015】
本発明による計量物体キャリヤの多区画計量トレイに、位置合わせ補助器具および/または位置表示器が装備されるならば実用的見地から有利である。この特徴は、多区画計量トレイを一連の計量の開始位置に正しく方向付けし、さらに所定の回数の計量が完了した後でその一連の計量を正しく終えるのを確実にする、あるいは少なくとも助ける。位置合わせ補助器具は、たとえば多区画計量トレイ上に凸状の先の尖った突起部として構成され得る。さらに、たとえば終了位置の可変マーカとして受け入れ区画の1つに蓋を嵌めることによって位置表示器を実現することも可能である。
【0016】
本発明による計量物体キャリヤの多区画計量トレイは、有利には識別手段が装備される。それらは、一方では、多区画計量トレイをその他の多区画計量トレイから区別し、他方では、番号方式によって多区画計量トレイ内の個々の受け入れ区画を識別するように働くことができる。これらの識別手段は、作業者によって読み取られ得る簡単な英数字の標識でよく、あるいは電子的に読み取り可能な解決策を、たとえば多区画計量トレイにはバーコードまたはマトリクスコードまたはRFIDチップを用いて、受け入れ区画の番号付けには2進化10進法の円周目盛を用いて使用することもまた考えられ得る。さらに、RFIDチップ上には、分注される物質について、物質処方について、または投与量分注工程についての情報をさらに格納することができる。
【0017】
本発明による計量物体キャリヤの別の実施形態では、多区画計量トレイには、顧客の仕様に合わせて設計された交換可能な受け入れ区画が装備される。受け入れ区画は、たとえば計量される材料を直接受け入れるように働くくぼみとして、または別個の計量容器に合わせて適切に成形された座部としても構成され得る。
【0018】
さらに、上記で説明された計量物体キャリヤの実施形態の各々において、多区画計量トレイの受け入れ区画が、特に円筒状の外部輪郭を備えて、少なくとも外側が茶碗状であるならば有利である。
【0019】
人間工学的対策として、有利には、多区画計量トレイには、ギザギザ模様または複数の指保持部(指の握り部を提供するための切り欠きまたは凹部)が装備される。その結果、多区画計量トレイは、受け入れ区画を次々と荷重位置に運び込むために、僅かな指の動きで、かつ多区画計量トレイ上で有意な横方向の圧力をかけることなく回転され得る。当然ながら、指駆動による操作の代わりに、たとえばフック付き棒などの適切な作動用具も存在してよく、それによって多区画計量トレイは、直接的な指の接触によって移動される必要が無くなる。
【0020】
本発明によれば、上記で説明された実施形態の1つにおける計量物体キャリヤに対する使用目的は、実験室用計器、具体的にははかり、計量セルを含む投与量分注装置、荷重持ち上げ装置で自動化されたはかり、または物質の処方を調合するために使用される計量セルを含む装置に存在する。
【0021】
上記で述べられた荷重持ち上げ装置は、計量物体キャリヤ全体を荷重受け入れ部から外すとともに荷重受け入れ部に結合させることを可能にし、それによって計量セルを点検または較正することが可能になる。代替の可能性としては、荷重持ち上げ装置はまた、それがより実用的であるようなら、多区画計量トレイを支持構造から持ち上げるまたは支持構造上に下ろすためだけに使用されてもよい。
【0022】
実験室用計器が、囲まれた通風シールドを有することが特に想定され、この場合通風シールドの横方向の摺動扉の少なくとも1つは、摺動シャッタを備えた作業者進入開口部を有する。通風シールドは、計量物体キャリヤがその内部に配置された計量室を密閉する。作業者進入開口部は、有利には、多区画計量トレイの上記で述べられたギザギザ模様または指保持部に近接近して位置付けられ、これは、簡単な指の動きにより、または作動装置を用いて多区画計量トレイを回転させるのに、通風シールド扉全体を開く必要はなく摺動シャッタだけでよいという利点を有する。摺動シャッタを用いて閉じられ得る同じように設計された荷重進入開口部を備えた通風シールドは、たとえば米国特許第7,227,088 B2号に開示されており、その全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0023】
実験室用計器は、さらに計量物体キャリヤの多区画計量トレイの段階的な移動のための機械化機構を有することができる。これは、指の接触によってまたは操作装置を用いて多区画計量トレイを回転させる代わりとなるものである。
【0024】
最終的な留意点として、実際に計量されている物体は、個々の受け入れ区画の1つでも受け入れ区画内に着座した計量容器の1つでもなく、計量物体は、常に計量容器および計量容器内に分配された物質すべてを一緒にした計量物体キャリヤであることが指摘されるべきである。したがって、計量容器内の物質量は、別の測定によって決定される必要があり、この場合分配された物質量の重量は、そのときの計量結果からそのときの投与量分注サイクルの開始前に測定された量を引くことによって決定される。計量セルの計量範囲を不必要に狭めることがないように、構造的に不必要である材料部分を削ることによって計量物体キャリヤの軽量設計をできる限り目指すことが望ましい。計量荷重キャリヤによって示された死重が常に同じである場合、この死重は、たとえば質量比較器などで慣例となっているように、対応する釣り合いおもりを用いて計量セル内で補正され得る。
【0025】
本発明による計量物体キャリヤは、その主要な構成要素および必要な詳細と共に、以下において実施形態の例を通して図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】特に多区画計量トレイを備えた計量物体キャリヤならびに摺動シャッタを備えた作業者進入開口部の構成を示す、実験室用はかりの計量室を三次元図で示す図である。
【図2】多区画計量トレイが支持構造から分離されているが支持構造上に直接的に下ろされるように位置合わせされている、下方から斜めに方向付けられた三次元図で計量物体キャリヤを示す図である。
【図3】本発明のいくつかの詳細をより明確に示すために、上方から斜めに方向付けられた三次元図で示された、支持構造上に着座した多区画計量トレイを示す図である。
【図4】位置決め装置がどのように作用するかをより明確に示すために、下方から斜めに方向付けられた三次元図で、多区画計量トレイが定位置に着座した状態の位置決め装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、実験室用計器1、詳細にははかりの一部を正面から斜めに方向付けられた三次元図で示している。観察者により近い通風シールド側壁パネル2が開かれ、正面壁が外され、観察者からより遠くにある側壁パネル3は閉じられている。したがって、計量室内部へと視界が開かれ、それによって観察者からより遠くに位置するはかり1の計量セル区画8内に囲まれた(破線で示された)計量セル7の荷重受け入れ部のピン6上に引っ掛けられた計量物体キャリヤ5を見ることが可能になる。破線で示された計量セル7の(図では示されない)荷重受け入れ部の一部である荷重受け入れ部のピン6は、横方向の通路開口部を介して接触することなく計量室4の後壁10の前方突出チャネル9内に到達する。また図内には、観察者からより遠くにある側面の通風シールド側壁パネル3内に摺動シャッタ12を備えた作業者進入開口部11が存在し、この開口部により、下記で説明されるように指の接触によって計量物体キャリヤ5を手動で進めるための進入が可能になる。当然ながら、直接的な指の接触の代わりに、指を使用せずに進入開口部11を通って計量室4内に到達するための、たとえばフック付き棒などの適切な作動装置50もまた存在し得る。作動装置50のフックは、たとえば計量物体キャリヤ5の適切な切り欠きまたは開口部と係合するために使用され得る。作動ツール50を使用することにより、計量室4内の空気が作業者の指からの体温によって不必要に温められることが防止される。
【0028】
図1の計量物体キャリヤ5の上方には、投与量分注装置13が位置付けられ、この投与量分注装置13は、たとえば後壁10に引っ掛けられ、後壁から容易に取り外されるとともに計量物体キャリヤに向かってまたそこから離れるように上下移動され得るようにして線形移動のガイド手段(図示されず)によって拘束される。
【0029】
図2では、計量物体キャリヤ5が、下方から斜めの三次元図で示されており、この場合多区画計量トレイ20は、支持構造21から取り外されているが支持構造21上に直接下ろされるように位置合わせされている。支持構造21の一部として、図は、計量物体キャリヤを計量セル7の上記で述べられた荷重受け入れ部のピン6に取り付けるように働く吊りフック23を備えた結合要素22を示している。結合要素22は、適切な位置に固定され得る枢動継手24および入れ子式の連結部材25を介して、多区画計量トレイ20がその上に着座することができるキャリヤプレート26に取り付けられる。多区画計量トレイ20は、キャリヤプレート26上で回転木馬のように回転することができる。旋回または回転する回転木馬移動のためのガイドとして、キャリヤプレート26は、多区画計量トレイ20のハブ29(図3を参照)内の中央の穿孔穴28と係合状態になる中央の上向きピンまたはペグ27(図3では破線で示される)を有する。したがって、ピン27および中央の穿孔穴20と連結状態にあるキャリヤプレート26は、ガイドおよび座部として働く。
【0030】
キャリヤプレート26の下方には、位置決め装置30が配置されており、この位置決め装置30は、この実施形態では、キャリヤプレート26に対して直線に移動可能である縦長の六角形枠31として構成され、ガイドレール32によって拘束され、限界止めとして働く調整可能な鍔付き軸受筒34を押し付けるように圧縮ばねによって予め張力が与えられている。結合要素22から見て外方を向く枠31の端部は、以下でより詳細に説明される機能を有する2つの位置決めローラ35を担持する。
【0031】
上記で述べられたように、図2では下方から、図3では上方から角度を成して向けられた斜視図で示される回転木馬タイプの多区画計量トレイ20は、穿孔穴28を含むハブ29をその中心に有する。キャリヤプレート26上への多区画計量トレイ20の着座を容易にするために、キャリヤプレート26のピンまたはペグ27および/またはハブ29の穿孔穴28は、円錐形の先細部を有して設計され得る。多区画計量トレイ20の周囲に沿って定間隔で配置されるのは、たとえば円筒状の茶碗状またはスリーブの形態の受け入れ区画38である。通常、計量される物質は、直接的に受け入れ区画38内ではなく、受け入れ区画38に嵌め込まれた適切な計量容器39内に分注される。多区画計量トレイは、その外側の境界部に、多区画計量トレイ20をその段階的回転を行うように指の接触によって押し出すのを容易にする、ギザギザの表面模様40ならびに切り欠き開口部41(指保持部)を有する。ハブ29の外側輪郭は、人間工学的に好都合な形状を有して設計され得、それによって作業者は、受け入れ区画38の近くに作業者の指を近づけることなく、多区画計量トレイをキャリヤプレート26上に下ろすまたはキャリヤプレート26から持ち上げる際、多区画計量トレイ20を堅固にしっかりと作業者の手で握ることができる。
【0032】
すでに述べられたように、多区画計量トレイ20が支持構造21上の定位置に嵌められたとき、穿孔穴28は、中央の枢動ピンまたはペグ27またはキャリヤプレート26と係合状態になる。またそれと同時に、受け入れ区画38の1つは、荷重位置37に嵌め込められる必要がある。それぞれの受け入れ区画38を上方から僅かに押し付けるだけで位置決めローラ35の間に配置させることを可能にするために、位置決めローラ35は、多区画計量トレイ20方向に面する端部に円錐状の面取り部または先細部36を有し、それによってばねによって予め張力が与えられた位置決め装置30は、受け入れ区画38が定位置に押し入れられたときに受け入れ区画38によって結合要素22の方向に圧迫される。
【0033】
図3は、さらに、特にバーコードまたはRFIDチップを備えた多区画計量トレイ20用の識別手段42、および個々の受け入れ区画38を位置番号43で印付けするための識別手段43の例を示している。図3に示される多区画計量トレイ20には、さらに、位置合わせ補助器具44および位置表示器45が装備され得る。
【0034】
位置表示器45は、多区画計量トレイ20を一連の計量の開始位置に正しく位置決めするとともに規定の回数の計量が完了した後でその一連の計量を正しく終えるのを確実にする、あるいは少なくとも助ける。可変の終了位置を印付けする能力が望まれる場合、位置表示器45は、受け入れ区画38の1つまたは複数に蓋を嵌めることによって実現され得る。
【0035】
位置合わせ補助器具44は、支持構造21を所与の荷重位置、たとえば図1に示される投与量分注装置13の出口開口部と位置合わせするように方向付けて嵌めるために一連の計量時に一回使用される。位置合わせ補助器具44は、たとえば位置表示器45の穿孔穴46に嵌め込まれる凸状の先の尖った突起部として構成されてよく、あるいは多区画計量トレイ20上に直接的に形成されてもよい。当然ながら、位置合わせ補助器具44は、同時に位置表示器としても使用され得る。
【0036】
位置決め装置30の機能を説明するために、支持構造21のキャリヤプレート26を備え、多区画計量トレイ20が定位置に設置された状態の位置決め装置30が、図4において、下方から斜めに見られるように示される。一連の計量または投与量の調製中、所定の物質量が、投与量分注装置(図2も参照)によって現在荷重位置37にある受け入れ区画38に、あるいは受け入れ区画38内に着座した計量容器39内へと送出される。次いで、指で押すことよって次に続く受け入れ区画38が荷重位置に運ばれるとすぐに次の投与量分注サイクルが行われる。位置決め装置30により、受け入れ区画38を荷重位置37に正確に運ぶために難しい操作は必要ではない。受け入れ区画38が2つの位置決めローラ35の間の空間に運び込まれるとすぐに(これにはばね33の予張力に打ち勝つための作用力が必要になる)、ばね付勢された位置決めローラ35は、受け入れ区画38を荷重位置37に入るように残りの道を押し入れ、図4に示されるように受け入れ区画38を定位置にしっかりと保持する。次に説明されるように、位置決め装置30を有することにより、さらに受け入れ区画38の荷重位置への段階的な連続進行の自動化がより容易になる。
【0037】
(図4には含まれない)実験室用計器には、さらに、保持している区画20を移動させるための機械化駆動機構60が装備され得る。この機構60のうち、駆動軸62および可搬型レバー61のみが図に示される。計量物体キャリヤ5の多区画計量トレイ20を段階的に進めるために、駆動軸62は、その縦方向軸の周りを回転し、各段階につき一回の全回転を行う。可搬型レバー61は、可搬型レバー61上に配置された可搬型ボルト63が2つの隣接する受け入れ区画38の外側輪郭の間に到達するようにして位置決めされ方向付けられる。外側輪郭の間の空隙は、可搬型ボルト63の直径よりも有意に広いものであり、可搬型ボルト63と多区画計量トレイ20の間に十分なあそびを残している。可搬型レバーの一回の全回転において、可搬型ボルト63の移動の開始および終了位置は、2つの隣接する受け入れ区画38の外側輪郭の間にそれらの外側輪郭に接触することなく位置する。受け入れ区画38が位置決め装置30によって正確な荷重位置に押し入れられると、多区画計量トレイは、各段階的進行の移動後に駆動機構60から完全に分離される。この分離は絶対的に必要であり、その理由は、駆動機構60と多区画計量トレイ20の間の接触はどのようなものでも多区画計量トレイ20に対する力を伝達する接触を生み出し、それによって計量結果に誤りを発生させるためである。当然ながら、駆動機構60もまた複数の可搬型ボルト63を有することができる。
【0038】
ここで示された多区画計量トレイの回転木馬タイプの構成以外に、受け入れ区画が、たとえば直線のガイドトラックに沿って支持構造に対して移動される縦長の矩形のプレート内で直線状に連続して配置され、受け入れ区画が、類似の方法で、それらが位置決め装置によって正確に中心に置かれ、定位置に保持される荷重位置に次々と運び込まれる、線形の構成を使用することもまた考えられることが明白に述べられるべきである。
【0039】
計量が継続して連続シーケンスで行われる限り、計量物体キャリヤの支持構造ならびに投与量分注装置は、通常、はかりに取り付けられたままであり、はかりが異なる用途、たとえば個々の手動計量用に設定される場合にのみ再度取り外される。それにもかかわらず、計量容器を多区画計量トレイ内に挿入する工程が、はかりの外側で行われるのならば有利であり得、その場合多区画計量トレイは、一連の計量の完了後はかりから取り外され、充填された計量容器が空の計量容器に取り換えられる。多区画計量トレイはまた、はかりの外側で平坦なプレートまたは適切な支持構造上に下ろされ得、計量容器が閉じ蓋で覆われ得る。当然ながら、充填された多区画計量トレイが中に嵌め込まれ得る自動閉鎖装置が存在してもよく、この場合計量容器は、自動閉鎖装置によってキャップで自動的に閉じられる。
【0040】
さらに、計量機構で利用可能な複数の多区画計量トレイを有し、それによってたとえば1つの多区画計量トレイが1人の作業者によって計量容器で充填され、一方で別の作業者が第2の多区画計量トレイで一連の計量を行うことが実用的であり得る。さらに、顧客特有の設計を有し、かつ/または交換可能であるさまざまな受け入れ区画が装備された利用可能な多区画計量トレイを有することも有用であり得る。
【0041】
実施形態の特有の例の説明によって本発明が提示されてきたが、たとえば個々の実施形態の特徴が互いに組み合わされ、かつ/または実施形態の個々の機能単位が互いに交換される場合、本発明の知識に基づいて数多くの別の変形が創出され得ることが明白であると考えられる。他の発想の中でも特に、たとえば多区画計量トレイそれ自体が細分された計量容器である本発明の概要の実施形態が考慮され得る。その場合、物質投与量は受け入れ区画内に直接的に分注され、受け入れ区画はたとえば接着剤または溶接可能な金属はくを用いて閉じられる。
【符号の説明】
【0042】
1 実験室用計器
2 通風シールド側壁
3 通風シールド側壁
4 計量室
5 計量物体キャリヤ
6 荷重受け入れ部のピン
7 計量セル
8 計量セル区画
9 10の前方突出チャネル
10 後壁
11 作業者進入開口部
12 摺動シャッタ
13 投与量分注装置
20 多区画計量トレイ
21 支持構造
22 結合要素
23 引っ掛けフック
24 固定可能な枢動継手
25 伸縮的に摺動可能で固定可能な連結部材
26 キャリヤプレート
27 26のピンまたはペグ
28 29内の中央穿孔穴
29 ハブ
30 位置決め装置
31 30の枠
32 ガイドレール
33 圧縮ばね
34 調整可能な限界止め軸受筒
35 位置決めローラ
36 35の面取り部または先細部
37 荷重または投与量の送出位置
38 受け入れ区画
39 計量容器
40 ギザギザのある円周
41 指保持部(くぼみ、切り欠き)
42 多区画計量トレイ用の識別手段
43 受け入れ区画の番号付け
44 位置合わせ補助器具
45 位置表示器
46 穿孔穴
50 作動装置
60 機械化駆動機構
61 可搬型レバー
62 駆動軸
63 可搬型ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量セル(7)用の計量物体キャリヤ(5)であって、前記計量物体キャリヤ(5)が、計量セル(7)の荷重受け入れ部(6)に連結可能であり、支持構造(21)および多区画計量トレイ(20)を備え、
前記支持構造(21)が、前記支持構造(21)が前記荷重受け入れ部(6)にそれを介して結合され得る結合要素(22)を含み、さらにガイド拘束要素(26、27、28)を含み、さらに、
前記多区画計量トレイ(20)が、前記多区画計量トレイ(20)を適切な位置に着座または摺動させるだけで前記支持構造(21)、より詳細には前記支持構造(21)の前記ガイド拘束要素(26、27、28)に連結されるように設計され、前記ガイド拘束要素(26、27、28)が、前記支持構造(21)に対する前記多区画計量トレイ(20)の誘導された移動を可能にしている計量物体キャリヤ(5)において、
前記多区画計量トレイ(20)が、少なくとも2つの受け入れ区画(38)であって、前記受け入れ区画(38)の各々が、規定され固定された荷重位置(37)に連続的に運び込まれ得るように配置された、受け入れ区画(38)を備え、
前記支持構造(21)と前記多区画計量トレイ(20)の間でその機能を実行する位置決め装置(30)が存在し、それによって現在、次に前記荷重位置(37)に移動される前記受け入れ区画(38)が、前記荷重位置(37)と一致するように位置決めされ得ることを特徴とする、計量物体キャリヤ(5)。
【請求項2】
前記支持構造(21)が、適切な位置に固定され得る少なくとも1つの枢動継手(24)および/または少なくとも1つの入れ子式の連結部材を備え、前記枢動継手および/または入れ子式の連結部材が、前記結合要素(22)と前記ガイド拘束要素(26、27、28)の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項3】
前記位置決め装置(30)が、前記支持構造(21)に対する線形の可動性を備えて配置され、ばね要素(33)が、前記支持構造(21)と前記位置決め装置(30)の間に配置され、前記ばね要素(33)のばね力の結果、前記位置決め装置(30)が、現在前記荷重位置(37)に位置付けられた前記受け入れ区画(38)の外側輪郭に押し付けられるようになることを特徴とする、請求項1または2に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項4】
前記位置決め装置(30)が、2つの位置決めローラ(35)を備え、前記ばね要素(33)のばね力の結果、前記位置決めローラ(35)が、前記2つの位置決めローラ(35)の間に配設された前記受け入れ区画(38)の外側輪郭に押し付けられるようになることを特徴とする、請求項3に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項5】
前記位置決めローラ(35)が、前記多区画計量トレイ(20)を適切な位置に嵌め込むことをより容易にするために前記位置決めローラ(35)の端部に面取りされた縁部(36)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項6】
前記多区画計量トレイ(20)が、位置合わせ補助器具(44)および/または位置表示器(45)を備えることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項7】
前記多区画計量トレイ(20)が、識別子手段(42、43)を備えることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項8】
前記多区画計量トレイ(20)が、円筒状の外側輪郭を備えた茶碗状の受け入れ区画(38)を備えること特徴とする、請求項1から7の一項に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項9】
前記多区画計量トレイ(20)が、前記受け入れ区画(38)を前記荷重位置(37)に次々と運び込む手動操作を改善するためにギザギザのある周囲表面(40)または複数の指保持部(41)を備えることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の計量物体キャリヤ(5)。
【請求項10】
実験室用計器(1)、特にはかり、計量セルを備える投与量分注装置、荷重持ち上げ装置で自動化されたはかり、または計量セルを備え、物質処方を調合するように働く装置である実験室用計器(1)において、前記実験室用計器(1)が、請求項1から9の一項に記載の少なくとも1つの計量物体キャリヤ(5)を備えることを特徴とする、実験室用計器(1)。
【請求項11】
前記実験室用計器(1)が、囲まれた通風シールド区画を備え、前記囲まれた通風シールド区画の側壁(2、3)の少なくとも1つが、摺動シャッタ(12)を備えた作業者進入開口部(11)を有することを特徴とする、請求項10に記載の実験室用計器(1)。
【請求項12】
前記実験室用計器(1)が、前記計量物体キャリヤ(5)の多区画計量トレイ(20)の段階的な進行のための機械化駆動機構(60)を備えることを特徴とする、請求項10または11に記載の実験室用計器(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−160146(P2010−160146A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−281192(P2009−281192)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】