説明

ひざ当て

【課題】ひざまずいてする作業において、小石や砂利からひざを保護することができるとともに、濡れた場所や高温の場所であっても、濡れや火傷からひざを保護することができ、かつ装着感のよいひざ当てを提供する。
【解決手段】前面が非透水性部材31で構成された袋体3と、袋体3の内部に収容されたカップ状の断熱緩衝部材2とを備えたひざ当て1とした。非透水性部材31は透湿性を有する素材からなることが好ましく、断熱緩衝部材2は発泡クロロプレンゴムからなることが好ましい、さらに、袋体3を断熱緩衝部材2に合わせたカップ状に形成することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひざ当てに関する。特に、ひざまずいて農作業をする際に用いられる、農作業用のひざ当てに関する。
【背景技術】
【0002】
収穫や草取りなどの農作業においては、ひざまずいて作業をすることが多い。このとき、ひざを擦り剥いて怪我をすることがあった。特に、小石や砂利の多い場所では、ひざが痛く、地面にひざまずくことすら困難なことがあった。
【0003】
このような課題を解決するために、ひざ当てを装着して作業をすることが行われており、そのためのひざ当て等が下記特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1には、「扁平化し得る布製の筒状体の一面部に袋部を設け、上記袋部の中にクッション材を挿入してなるひざ当て具。」が開示されている。
そして、これによって「ひざ頭を覆う部分となる一面部に袋部が設けられ、その袋部の中にクッション材を挿入するから、このひざ当て具を使用する人のひざの状況、好み等又は作業する場所、即ち小石や砂利の多いところか、コンクリート上か又は通常の土壌とかに応じて、クッション材の材質、強度等種々の条件に適する材料を選択することが極めて簡単である。」と記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「大腿下部から足首に至る脚前部を被覆する可撓性シートの前面に滑り止めパッドを貼り付け、裏面には膝が当接する部分に緩衝部材を貼り付け、さらに、脚部に巻き付ける固定ベルトと腰部に係合する吊り下げベルトを備えたことを特徴とする膝当て健康器。」が開示されている。
そして、これによって「この発明の膝当て健康器を足に装着してさえおけば、小石や砂利、コンクリートの上でも、また濡れた土の上でも楽に膝をついて作業することができる。」と記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、「腿より脛にかけて巻き付けることのできる大きさの布や合成樹脂などのシート状物により草取り時の足腰保護具本体を形成し、かつ上記保護具本体の両端部に、腿と脛の太さに応じて止着位置を調整できる止着手段を設けると共に、上記保護具本体を腿と脛に装着した際、膝に当たる部分にクッション体を設けたことにより腰痛、膝痛に悩む高齢者(老人)の草取り時における足腰の負担軽減することを特徴とする草取り時の足腰保護具。」が開示されている。
そして、これによって「地面に膝を着いて畑や庭などの草取りを行う場合、地面と膝の間にクッション体が介在されて膝が直接地面に着くことがないので、長時間草取り作業していても膝や腰が痛くなることが少ない上、従来のような台車がないので、地面が軟弱な場所でも台車が地面に埋没することがなく、これによって地面が軟弱な場所でも作業が能率よく行えるようになる。」と記載されている。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3109462号公報(特許請求の範囲、段落0009)
【特許文献2】特開平10−204708号公報(特許請求の範囲、段落0020)
【特許文献3】特開2002−69720号公報(特許請求の範囲、段落0027)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示された「ひざ当て具」は、小石や砂利からひざを保護することはできても、ひざが濡れやすい構造であるため、濡れた場所にひざまずいてする作業には適さなかった。
【0009】
ここで、上記特許文献2に開示された「膝当て健康器」は、小石や砂利からひざを保護することができるとともに、「濡れた土の上でも楽に膝をついて作業することができる」とある。しかし、高温の場所にひざまずいてする作業に関して考慮された構造ではなく、また、装着感もあまりよくなかった。
【0010】
また、上記特許文献3に開示された「草取り時の足腰保護具」も、濡れた場所や高温の場所にひざまずいてする作業を意識した構成になっておらず、また、ひざを大きく曲げた際の装着感がよくないものであった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ひざまずいてする作業において、小石や砂利からひざを保護することができるとともに、濡れた場所や高温の場所であっても、濡れや火傷からひざを保護することができ、かつ、ひざまずいてする作業において、装着感のよいひざ当てを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、前面が非透水性部材で構成された袋体と、袋体の内部に収容されたカップ状の断熱緩衝部材と、を備えたひざ当てとした。
【0013】
このひざ当ては、断熱緩衝部材を袋体に収容してあるため、断熱緩衝部材の緩衝作用によって、小石や砂利からひざを保護することができるとともに、断熱緩衝部材の断熱作用によって、高温の場所での作業でもひざが熱くなりにくく、快適に作業ができる。
また、袋体の前面を非透水性部材で構成してあるため、濡れた場所での作業でもひざが濡れない。ここで、長時間に渡って、袋体の前面と断熱緩衝部材が濡れている状態のまま高温の場所で作業をすると、水分の存在によって、ひざまで高温が伝わりやすく火傷をしやすかったが、本発明のひざ当ては、非透水性部材の存在によって断熱緩衝部材が濡れにくく、火傷をしにくい。
さらに、断熱緩衝部材がカップ状であるため、ひざ全体を覆うことができ、小石や砂利、水分及び高温からひざを効果的に保護することができる。加えて、ひざへのフィット感が高くなるため装着感がよく、ひざまずいてする作業において、ずれたり外れたりしにくい。
【0014】
断熱緩衝部材は発泡ゴムからなるひざ当て、とすることも好ましい。発泡ゴムは、軽量でかつ断熱効果と緩衝効果に優れており、本発明のひざ当てに好適である。一方、発泡ゴムは、水分を含みやすく濡れやすいため、長時間に渡って、水分を含んで熱伝導率が高くなった状態のまま高温の場所で作業をすると火傷をしやすくなるが、前述したように、非透水性部材によって濡れにくくなっており、発泡ゴムを用いた場合であっても火傷をしにくい。
このとき、発泡ゴムは発泡クロロプレンゴムであるひざ当てとすることが好ましい。
発泡クロロプレンゴムは、断熱効果と緩衝効果において、特に優れており、本発明のひざ当てに最適である。
【0015】
マルチシート上にひざまずいてする農作業に用いるひざ当て、とすることもできる。マルチ栽培に用いられているマルチシートは高温になることが多く、また水で濡れていることも多い。このように苛酷な環境となりやすいマルチシート上での農作業に、本発明のひざ当ては好適である。特に、ビニールハウス等のハウス内に敷いたマルチシートは、かなりの高温になることが多く、本発明のひざ当ては、このような作業環境において、より好適に用いられる。例えば、ハウス内でマルチ栽培された西瓜の収穫作業等には最適である。
【0016】
袋体はカップ状に形成されたものであるひざ当て、とすることもできる。カップ状の断熱緩衝部材を収容する袋体も、断熱緩衝部材に合わせたカップ状にすることで、ひざへのフィット感が高まり、ひざまずいてする作業において、より一層、ずれたり外れたりしにくくなる。
【0017】
袋体はその上部および下部に、それぞれ左右に突出する耳部を有し、左右の耳部を連結してひざに装着するための装着ベルトを備えたひざ当て、とすることもできる。
袋体の上部と下部に、それぞれ左右の耳部を有するため、袋体上部の左右の耳部が大腿の左右下部を保護し、袋体下部の左右の耳部が脹ら脛の左右上部を保護することができ、ひざから、その上下周辺部の側面まですっぽりと覆って保護することができるひざ当てとなる。各耳部は、装着ベルトの張力によって、大腿の左右下部や脹ら脛の左右上部にぴったりと添うことになる。
また、袋体の中央部には耳部が存在していないため、袋体は、左右から窪んで絞られたような切欠形状となっている。これにより、ひざを折り曲げる際にひざの左右に集中する応力を緩和できるため、ひざを曲げやすくなり、より一層、使用感や装着感が高まる。
【0018】
カップ状の断熱緩衝部材は、発泡ゴムシートを、その上下方向中央部の左右両縁からそれぞれ内側向きに切り込みを入れ、左右それぞれの切り込みの上下両縁(上縁と下縁)を厚み方向にそれぞれ重ねた状態で固着することで、左右に肉厚部を有するカップ状に形成したものであるひざ当て、とすることもできる。
これによって、簡単に作ることができるカップ状の断熱緩衝部材となる。また、痛みを感じやすい膝蓋骨の左右を肉厚部で保護することができる。
【0019】
袋体は後面が通気性部材で構成され、袋体の前面の非透水性部材は透湿性を有するものであるひざ当て、とすることもできる。ひざ当てを長時間装着すると、特に高温の場所での作業では、ひざ及びその周辺部が蒸れてしまい装着感が悪くなっていた。しかし、上記構成とすることで、ひざ周辺から放出された水蒸気成分が、袋体の後面の通気性部材を介して袋体の前面の非透水性部材から外部に放出されるため、蒸れにくいひざ当てとなる。
このとき、カップ状の断熱緩衝部材は、その厚み方向に貫通した通湿孔を有するひざ当てとすることが好ましい。
【0020】
袋体の下縁から下方に延びるすね当て部材を備えたひざ当て、としてもよい。これによって、ひざからすねまでの広い範囲を保護することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ひざまずいてする作業において、小石や砂利からひざを保護することができるとともに、濡れた場所や高温の場所であっても、濡れや火傷からひざを保護することができ、かつ、ひざまずいてする作業において、装着感のよいひざ当てを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図を用いて、本発明の実施形態を例示説明する。図1〜図9は本発明のひざ当てを説明するための図である。そして、図1〜図5はひざ当ての構造等を説明するための図であり、図6〜図9は左足にひざ当てを装着した状態を示す図(写真)である。まず、図1〜図5を用いて、ひざ当ての構造を説明する。
【0023】
[ひざ当ての構造]
図1はひざ当ての斜視図であり、図2は同ひざ当ての分解斜視図であり、図3は同ひざ当ての右側面図である。また、図4はクロロプレンゴムシートをカップ状の断熱緩衝部材に形成する手順を示す斜視図であり、図5はエントラント(登録商標)シートをカップ状の非透水性部材に形成する手順を示す斜視図である。なお、これらの図に開示されたひざ当ては、左足に装着するものである。
【0024】
本発明のひざ当て1は、カップ状の断熱緩衝部材2(図2参照)と、袋体3(図1参照)を備え、これに加えて、すね当て部材4と装着ベルト5A,5B,5Cも備える。以下に、それぞれの要素について詳説する。なお、これら各要素の材料や構成は、以下の例示説明における具体的な材料・構成に限定されるものではない。
【0025】
1.断熱緩衝部材
図2に示すように、本例の断熱緩衝部材2は、発泡クロロプレンゴムを用いて、これをカップ状に形成したものであり、柔軟性を有する。発泡クロロプレンゴムは緩衝性や衝撃吸収性が特に優れた、独立気泡構造を有するものを用いることが好ましい。カップ状の断熱緩衝部材2は、その中央部が前面側に突出したカップ状に形成されている。ここで、「前面側」は、地面等にひざまずいた際、地面等と向かい合う面側であり、図2においては上方を向く面側に相当する。そして、カップ状の断熱緩衝部材2の窪み部分20には、後述する通気性部材32を介して、ひざが宛がわれる。
【0026】
本例においては、以下の手順で発泡クロロプレンゴムをカップ状に形成した。まず、図4(a)に示すように、まず、厚手の発泡クロロプレンゴムを所定の形状、大きさに切り出して、クロロプレンゴムシート21とした。本例では、厚みが7mmの発泡クロロプレンゴムを、後述する袋体に収容できる程度の大きさの矩形に切り出してある。次に、同図(b)に示すように、切り出されたクロロプレンゴムシート21に対し、その上下方向中央部の左右両縁からそれぞれ内側向きに、厚み方向に貫通する切り込み22を入れた。切り込み22の寸法(長さ)は、前記左右両縁からそれぞれ、クロロプレンゴムシート21の上下方向中央部における幅の概ね1/3程度までとした。ここで、「上下方向」とは、ひざ当てを装着して起立した際の上下方向(天地方向)に相当する方向を指す。この状態から、左右それぞれの切り込み22の上下両縁(上縁231,下縁232)を厚み方向にそれぞれ扇状に重ね、重ねられた上下両縁231,232を接着剤等で固着した。このような手順により、クロロプレンゴムシート21を、同図(c)に示すような、左右に肉厚部23を有するカップ状の断熱緩衝部材2に形成したのである。
【0027】
本例では、断熱緩衝部材2の材料として、発泡クロロプレンゴムを用いたがこれに限定されず、断熱性と緩衝性を備える限りにおいて各種公知の材料を使用することができる。例えば、天然ゴムやクロロプレンゴム以外の合成ゴムを用いてもよいし、ウレタン樹脂等の合成樹脂を用いてもよい。また、発泡させていないものを用いてもよい。しかし、断熱効果と緩衝効果に特に優れ、かつ軽量な発泡クロロプレンゴムを用いた断熱緩衝部材2とすることが好ましい。なお、クロロプレンゴムは、例えば、ネオプレン(商標名)として市販されているものを使用することができる。
また、断熱緩衝部材2は、カップ状であれば上記手順で形成したものに限定されず、例えば、成型金型を用いて、断熱緩衝性のある樹脂をカップ状に射出成型してもよい。しかし、上記手順で形成したものを用いれば、金型等への投資が不要であり、また、異物が当たった際に特に痛みを感じやすい膝蓋骨の左右を、左右の肉厚部23で保護することができるという特徴がある。
【0028】
2.袋体
本例の袋体3は、非透水性でかつ透湿性を有した、防水透湿性素材であるエントラント(登録商標:東レ株式会社)と通気性のある目の細かなメッシュ素材を、それぞれほぼ同形状にトリミングし、これらをカップ状に形成して、図1及び図3に示すような、非透水性部材31と通気性部材32とした後、両者を重ね合わせて構成したものである。非透水性部材31と通気性部材32は、前述した断熱緩衝部材2を挟み込んだ状態で、双方の縁部同士が縫合されて袋体3を構成する。なお、ひざ当てを装着した際に、非透水性部材31は地面等と向かい合う面(前面)、通気性部材32はひざと向かい合う面(後面)になる。袋体3は、前面のほぼ全面が非透水性部材31で被覆されている。
【0029】
また、本例の袋体3は、その上部および下部それぞれに、左右に突出する耳部3A,3a,3B,3bを有する。別の見方をすれば、袋体3は上下方向中央部の左右に切欠部30(図1参照)を有する切欠形状になる。本例の袋体3は、平面視が8の字形状であるとも言える。このような袋体3とするため、図2に示すように、非透水性部材31は、その上部および下部それぞれに、左右に突出する耳片31A,31a,31B,31bを有する形状に形成され、同様に通気性部材32も、左右に突出する耳片32A,32a,32B,32bを有する形状に形成されている。なお、左右の耳部(図1参照:3Aと3a,3Bと3b)は、後述するように、上下二本の装着ベルト5A,5Bを介して連結される。
【0030】
さらに、本例の袋体3は、断熱緩衝部材2の形状に沿うように、前方側に突出したカップ状に形成してある。具体的には、非透水性部材31と通気性部材32の双方をそれぞれカップ状に形成することで、両者を重ね合わせて構成する袋体3をカップ状に形成してある。
ここで、非透水性部材31をカップ状に形成した手順を、図5に例示する。まず、同図(a)に示すような形状にトリミングされたエントラント(登録商標)シート310を、同図(b)に示すように、上下方向略中央の左右両縁それぞれから、両縁側が拡開するラッパ状にそれぞれ谷折りした。そして、上下に隣り合う山折り部分同士を縫合した後、同図(c)に示すように、谷折りで重なったラッパ状の重合部をエントラント(登録商標)シート310の裏側に折り倒して、エントラント(登録商標)シート310に固着することで、カップ状の非透水性部材31を形成したのである。
なお、通気性部材32も同様の手順でカップ状に形成することができるため、その手順は割愛する。
【0031】
本例では、袋体3の前面である非透水性部材31に、非透水性に加えて透湿性も有するエントラント(登録商標)を用いたが、これに限定されず、種々の非透水性材料を用いることができる。例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の非透水性のフィルム素材で形成することもできる。軽量・安価で引き裂き強度が高く、かつ、表面に潤滑性があるため、マルチ栽培に用いるマルチシートを損傷しにくいナイロンタフタを用いてもよい。
しかし、非透水性材料のなかでも、さらに透湿性を有する、エントラント(登録商標)に代表される防水透湿性素材を用いることが好ましい。防水透湿性素材としては、例えば、エントラント(登録商標)の他、ドライテック(登録商標:株式会社モンベル)、ミクロテックス(登録商標:日東電工株式会社)、ゴアテックス(登録商標:ジヤパンゴアテツクス株式会社)を用いることができる。特に、本例に用いたエントラント(登録商標)は、撥水性やその持続性にも優れているため、本発明のひざ当てに特に好適である。
また、本例では、カップ状に形成した袋体3を用いたが、これに限定されず、平面状の袋体を用いてもよい。しかし、本発明ではカップ状の断熱緩衝部材2を用いるため、ひざへのフィット感や装着安定性を考慮するとカップ状に形成した袋体3を用いることが好ましい。
【0032】
3.すね当て部材
本例のすね当て部材4は、矩形の発泡クロロプレンゴムシートを用いたものである。発泡クロロプレンゴムシートの両面には、図示しない耐水性布が貼付されている。このすね当て部材4は、図1に示すように、その上縁が袋体3の下縁に固着されることで、袋体3の下縁から下方に延びた状態になる。具体的には、図2及び図3に示すように、すね当て部材4の上縁を、非透水性部材31の下縁と通気性部材32の下縁との間に挟み込んだ状態で三者を縫合してある。
【0033】
本例では、すね当て部材4として、矩形の発泡クロロプレンゴムシートを用いたが、これに限定されず、矩形以外の形状(丸形状、楕円形状、五角形状等)や、発泡クロロプレンゴム以外の素材を用いてもよい。
【0034】
4.装着ベルト
本例の装着ベルト5A,5B,5Cは、伸縮性のあるゴムベルトである。図1に示すように、装着ベルト5A,5B,5Cは袋体3に上下二本(5A,5B)、すね当て部材4に一本(5C)が取り付けられている。
【0035】
袋体3の上下二本の装着ベルト5A,5Bは、図1に示すように、袋体3の、図中向かって左側の上下に並んだ耳部3A,3Bに、それぞれの一端が固着されている。また、装着ベルト5A,5Bの他端側には、その裏面に雄マジックテープ(登録商標)片51A,51Bが固着されている。一方、袋体3の、向かって右側の上下に並んだ耳部3a,3bの前面には、それぞれ雌マジックテープ(登録商標)片51a,51bが固着されており、この雌マジックテープ(登録商標)片51a,51bに、装着ベルト5A,5Bの他端側に固着された雄マジックテープ(登録商標)片51A,51Bが係脱する。
【0036】
一方、すね当て部材4の装着ベルト5Cは、図1に示すように、すね当て部材4の図中向かって左側、上下方向中央部の下寄りに、装着ベルト5Cの一端が固着されている。また、装着ベルト5Cの他端側には、その裏面に雄マジックテープ(登録商標)片51Cが固着されている。一方、すね当て部材4の向かって右側、上下方向中央部の下寄りに、雌マジックテープ(登録商標)片51cが固着されている。この雌マジックテープ(登録商標)片51cに、装着ベルト5Cの他端側に固着された雄マジックテープ(登録商標)片51Cが係脱する。
【0037】
本例では、装着ベルト5A,5B,5Cの一端は、袋体3及びすね当て部材4の、図1中向かって左側に固着されており、雄雌マジックテープ(登録商標)の係脱は、本図中向かって右側で行われることになる。これは、本例のひざ当て1が、左足用であることに関係している。即ち、内腿側に雄雌マジックテープ(登録商標)の係脱箇所があると作業時に外れたり邪魔になったりして好ましくないが、外股側であればこの様な心配は不要なことによる。よって、外股側に前記係脱箇所がくるように、左足用のひざ当てでは、図1中向かって右側(左足に装着した際、外股側に位置する)で雄雌マジックテープ(登録商標)の係脱ができるように構成したのである。
なお、内腿側に雄雌マジックテープ(登録商標)の係脱箇所がくるように、袋体3やすね当て部材4に装着ベルトを固着してもよいが、前述したように、作業時に外れたりするため、本例のように構成することが好ましい。
また、右足用のひざ当てでは、装着ベルト5A,5B,5Cの一端が、袋体3及びすね当て部材4の、図1中向かって右側に固着され、雄雌マジックテープ(登録商標)の係脱が、本図中向かって左側(外股側に相当)で行われるように構成することが好ましい。
[ひざ当ての装着方法等]
【0038】
次に、図6〜図9を用いて、ひざ当ての装着方法や装着状態について説明する。図6はひざ当てを左足に装着した状態を示す斜視図(写真)であり、図7はひざ当てを左足に装着した状態を示す右側面図(写真)である。また、図8は図7の状態からひざを曲げた状態を示す右側面図(写真)であり、図9は地面にひざまずいた状態を示す右側面図(写真)である。
【0039】
本例のひざ当ては、以下のように装着する。まず、すね当て部材4を下に向けた状態で、袋体3に収容したカップ状の断熱緩衝部材の窪みにひざを宛がう。次に、内股側から垂れた袋体3の二本の装着ベルト5A,5Bを、それぞれ脚の裏側を経由させ、外股側においてマジックテープ(登録商標)を貼り合わせて係合する。最後に、内股側から垂れたすね当て部材4の装着ベルト5Cも同様に係合して、図7に示すように、装着が完了する。
【0040】
ひざを曲げた状態を示す図8に見られるように、本発明のひざ当ては、袋体3の上部と下部に、それぞれ左右の耳部(3a,3b)を有することで、ひざの上下周辺部の側面まですっぽりと覆って保護することができる。また、袋体3の中央部は左右から窪んで絞られたような切欠形状となるため、ひざを折り曲げた際にひざの左右に集中する応力を解放でき、ひざを曲げやすくなる。
【0041】
特に、図9に示すように、本発明のひざ当ては、大きくひざを曲げた状態においても、ひざの上下周辺部の側面まですっぽりと覆ってしっかりと保護し、かつ、ひざを折り曲げた際にひざの左右に集中する応力を十分解放できており、長時間のひざまずいてする作業でも苦痛を感じにくいのである。
【0042】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0043】
例えば、カップ状の断熱緩衝部材は、その厚み方向に貫通した通湿孔を有するひざ当てとしてもよい。通湿孔は、袋体の後面の通気性部材から袋体内部に入った水蒸気成分を、袋体の前面の透湿性を有する非透水性部材まで導くためのものものである。これによって、より蒸れにくいひざ当てとなる。通湿孔は、カップ状の断熱緩衝部材に複数個設けられていることが好ましく、カップ状の断熱緩衝部材の全面に亘って所定間隔をおいて設けられていることが、より好ましい。
一方、通湿孔の大きさは、直径が1〜8mmであることが好ましい。通湿孔の大きさが1mm以上であると、水蒸気を非透水性部材まで導く機能を十分確保でき、8mm以下であると、断熱性を十分確保できるとともに、装着時の違和感も少なくなる。通湿孔の大きさは、好ましくは2〜6mm、より好ましくは3〜5mmである。最も好ましくは4mm程度である。
【0044】
また、上記実施例では、袋体の後面にメッシュシートを用いたが、これに限定されず、通気性のある素材を用いた通気性部材であれば好適である。例えば、通気性のある、布製シートや高分子樹脂製シート等であって、単層シートまたは積層シートを使用することができる。布製シートとしては、木綿、羊毛、絹等の天然繊維、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリウレタン系高分子樹脂等の合成繊維、ポリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維、またはこれらを組み合わせた繊維から公知の方法で製造した織布、編布、不織布を使用することができる。具体的には、再生ポリエステル繊維を用いた、村田長株式会社製のMU−TECH(ムーテック)等を使用することができる。
【0045】
また、上記実施例では、袋体の前面の非透水性部材には、一枚のエントラント(登録商標)シートを用いたが、二枚のエントラント(登録商標)シートを用いた二重構造にしてもよく、一枚のエントラント(登録商標)シートにそれ以外のシートを重ねた二重構造にしてもよい。
【0046】
また、上記実施例では、袋体とカップ状の断熱緩衝部材を接着等していないが、両者を接着等してもよい。
【0047】
また、袋体に開閉チャック等を設けて、断熱緩衝部材を交換可能に構成してもよい。この場合に、袋体とカップ状の断熱緩衝部材を接着しない方が好ましい。
【0048】
また、ひざ当ての装着に関し、袋体に取り付けた二本の装着ベルトを、ひざの裏で交差させた状態でマジックテープ(登録商標)を貼り合わせて装着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ひざ当ての斜視図である。
【図2】図1のひざ当ての分解斜視図である。
【図3】図1のひざ当ての右側面図である。
【図4】クロロプレンゴムシートをカップ状の断熱緩衝部材に形成する手順を示す斜視図である。
【図5】エントラント(登録商標)シートをカップ状の非透水性部材に形成する手順を示す斜視図である。
【図6】ひざ当てを左足に装着した状態を示す斜視図(写真)である。
【図7】ひざ当てを左足に装着した状態を示す右側面図(写真)である。
【図8】図7の状態からひざを曲げた状態を示す右側面図(写真)である。
【図9】地面にひざまずいた状態を示す右側面図(写真)である。
【符号の説明】
【0050】
1 ひざ当て

2 断熱緩衝部材
21 クロロプレンゴムシート
22 切り込み
23 肉厚部
231 上縁
232 下縁

3 袋体
30 切欠部
3A.3a.3B.3b 耳部
31 非透水性部材
31A,31a,31B,31b 耳片
310 エントラント(登録商標)シート
32 通気性部材
32A,32a,32B,32b 耳片

4 すね当て部材

5A,5B.5C 装着ベルト
51A.51B.51C 雄マジックテープ(登録商標)片
51a.51b.51c 雌マジックテープ(登録商標)片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が非透水性部材で構成された袋体と、
該袋体の内部に収容されたカップ状の断熱緩衝部材と、
を備えたひざ当て。
【請求項2】
断熱緩衝部材は、
発泡ゴムからなる、
請求項1記載のひざ当て。
【請求項3】
マルチシート上にひざまずいてする農作業に用いる、
請求項1又は2記載のひざ当て。
【請求項4】
袋体は、
カップ状に形成されたものである、
請求項1〜3いずれか記載のひざ当て。
【請求項5】
袋体は、
その上部および下部に、それぞれ左右に突出する耳部を有し、
左右の耳部を連結してひざに装着するための装着ベルトを備えた、
請求項1〜4いずれか記載のひざ当て。
【請求項6】
カップ状の断熱緩衝部材は、
発泡ゴムシートを、
その上下方向中央部の左右両縁からそれぞれ内側向きに切り込みを入れ、左右それぞれの切り込みの上下両縁を厚み方向にそれぞれ重ねた状態で固着することで、左右に肉厚部を有するカップ状に形成したものである、
請求項1〜5いずれか記載のひざ当て。
【請求項7】
袋体は、
後面が通気性部材で構成され、
袋体の前面の非透水性部材は、
透湿性を有するものである、
請求項1〜6いずれか記載のひざ当て。
【請求項8】
袋体の下縁から下方に延びるすね当て部材を備えた、
請求項1〜7いずれか記載のひざ当て。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−91705(P2009−91705A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266047(P2007−266047)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(592072791)鳥取県 (19)
【Fターム(参考)】