説明

ふん尿等浄化装置

【課題】残留塩素量と耐高温性大腸菌群数との両方を基準値以内に除去する船舶のふん尿等浄化装置の提供。
【解決手段】船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンク14と、汚物タンク内で浄化処理した処理液を紫外線照射により殺菌処理する殺菌装置15と、処理した処理液を船外に排出する排出配管41からなり、汚物タンク14は、液の流れの方向に沿って、前処理室16と、接触酸化室17と、沈殿分離室18と、処理液室19とよりなり、接触酸化室17からの処理液を殺菌装置15に導入し、その処理液を処理液室19に貯蔵せしめる手段を有し、処理液室内の処理液を殺菌装置15に導入し、その処理液を処理液室19に貯蔵せしめる手段を更に有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はふん尿等浄化装置、特に船舶等に用いる海洋汚染を防止するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は従来の船舶のふん尿等浄化装置を示し、1は船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を処理する汚物タンク(汚水タンク)であり、上記汚物タンク1は、液の流れの方向(図中左から右方向)に沿って前処理室2と、接触酸化室3と、沈殿分離室4と、処理液室5とを順次連続した構成のものである。
【0003】
上記前処理室2は、トイレからのふん尿等を上記前処理室2内に導入する汚物管6と、上記汚物管6からのふん尿等をろ過するろ過器7と、暴気用空気管8とを有し、上記接触酸化室3は、塩化ビニルなどから成る接触酸化材9と、暴気用空気管10とを有し、上記処理液室5は、上記汚物タンク1の外部から上記処理液室5内に塩素剤を注入する消毒薬導入管11と、水位制御器12と、排水管13とよりなる。
【0004】
上記従来の船舶のふん尿等浄化装置においては、トイレからのふん尿等が上記汚物管6から上記前処理室2内に導入されて、大きな固体物は上記ろ過器7により除去され、小さな固体物は上記暴気用空気管8から噴出する気泡の暴気作用により粉砕され、固体と液体に分離され、その処理液が上記接触酸化室3に導入されて、多数のしわを有する接触酸化材9に膜状に形成された好気性微生物により上記処理液中の有機物が無機物に分解され、次に、その処理液が沈殿分離室4に導入されて、処理液中の固体部分を沈殿せしめて、液体部分のみを上記処理液室5に導入して、その処理液を、上記消毒薬導入管11より導入された塩素剤により消毒して貯蔵せしめ、その処理液が上記処理液室5内で所望の量貯まると上記水位制御器12がそれを検知して、上記排出管13を介して海水に自動排出していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の船舶のふん尿等浄化装置では、塩素剤を使用しているため、残留塩素の除去調整管理が難しく、特に、平成22年から実施される国土交通省が発行する「海洋汚染防止設備、海洋汚染防止緊急措置手引書等及び大気汚染防止検査対象設備に関する技術上の基準等に関する省令の一部を改正する省令」に規定された残留塩素量と耐高温性大腸菌群数との両方を基準値以内に除去することが難しいという欠点があった。
【0006】
本発明は上記の欠点を無くしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のふん尿等浄化装置は、トイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンクと、上記汚物タンク内で浄化処理した処理液を紫外線照射により殺菌処理する殺菌装置と、上記処理した処理液を例えば海水など上記汚物タンク外に放出する手段とよりなることを特徴とする。また、本発明のふん尿等浄化装置は、船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンクと、上記汚物タンク内で浄化処理した処理液を紫外線照射により殺菌処理する殺菌装置と、上記処理した処理液を船外に放出する手段とよりなることを特徴とする。
【0008】
また、上記汚物タンクが、接触酸化材と、暴気手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、上記汚物タンクが、液の流れの方向に沿って、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する前処理室と、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する接触酸化室と、処理液室とよりなり、上記接触酸化室からの処理液を上記殺菌装置に導入し、その処理液を上記処理液室に貯蔵せしめる手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記処理液室内の処理液を上記殺菌装置に導入し、その処理液を上記処理液室に貯蔵せしめる手段を更に有する。
【0011】
また、本発明のふん尿等浄化装置は、液の流れの方向に沿って、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する前処理室と、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する接触酸化室と、処理液室とよりなる、トイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンクであることを特徴とする。また、本発明のふん尿等浄化装置は、液の流れの方向に沿って、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する前処理室と、1又は複数の接触酸化材と暴気手段とを有する接触酸化室と、処理液室とよりなる、船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のふん尿等浄化装置によれば、塩素剤を用いずに大腸菌を殺菌するので、残留塩素が出ず、平成22年から実施される国土交通省が発行する「海洋汚染防止設備、海洋汚染防止緊急措置手引書等及び大気汚染防止検査対象設備に関する技術上の基準等に関する省令の一部を改正する省令」に規定された残留塩素量と耐高温性大腸菌群数との両方を基準値以内に除去することが容易になるという大きな利益がある。
【0013】
また、本発明のふん尿等浄化装置によれば、前処理室内において、処理液が接触酸化材の多数のしわに接触することにより、固体と液体の分離を促進せしめ、かつ、接触酸化材に形成された微生物の作用により浄化処理を行なうことにより、TSSを著しく下げることができるなど、処理能力(効率)の向上を図ることができる。
【0014】
また、複数段の接触酸化材を用いることにより、浄化処理の効果を著しく上げることができる。
【0015】
また、処理液室の処理液を再度殺菌装置に導入し、その処理液を再度処理液室に貯蔵せしめれば、殺菌効果のばらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明のふん尿等浄化装置の説明図である。
【図2】図2は従来のふん尿等浄化装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明のふん尿等浄化装置は、図1に示すように、船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を処理する汚物タンク14と殺菌装置15とよりなり、上記汚物タンク14は、流れの方向(図中左から右方向)に沿って、前処理室16と、接触酸化室17と、沈殿分離室18と、処理液室19とを順次連続した構成のものである。
【0019】
上記前処理室16は、汚物タンク14の図中左側壁20およびこれと対峙し、かつ上部と下部が開くと共に、その上端が上記汚物タンク14の天井付近まで延びる仕切板21と、上記仕切板21と対峙し、かつ上部が開き下部が閉じると共に、上端が上記仕切板21の上端より低く形成した仕切壁22とによって形成され、上記前処理室16の天井面に、トイレからのふん尿等を上記前処理室16内に導入する汚物管23と臭気抜管24を設け、また、上記左側壁20と上記仕切板21との間の上部に、上記汚物管23からのふん尿等をろ過するろ過器25と、その下部に、板状の塩化ビニル製などから成る第一の接触酸化材26を配設せしめ、また、上記仕切板21と上記仕切壁22との間に、上記第一の接触酸化材26よりも接触面積が大きい糸状の塩化ビニル製などからなる第二の接触酸化材27を配設せしめると共に、上記第一の接触酸化材26と第二の接触酸化材27の下方位置に、上記汚物タンク14の外部に設けたブロワ28にエアレーションパイプ29を介して接続され、かつ小穴を長手方向に多数配設した前後方向に伸びる暴気用空気管30を設ける。
【0020】
上記接触酸化室17は、上記仕切壁22およびこれと対峙し、かつ上部と下部とが開くと共に、その上端が上記汚物タンク14の天井付近まで延びる仕切板31と、上記仕切板31と対峙し、かつ上部と下部が開くと共に、その上端が上記汚物タンク14の天井付近まで延びる仕切板32と、上記仕切板32と対峙し、かつ上部が開き下部が閉じると共に、上端が上記仕切壁22の上端より低く形成した仕切壁33とによって形成され、上記仕切壁22と上記仕切板31との間に上記第二の接触酸化材27よりも接触面積の大きいセラミックス製の第三の接触酸化材34を配設せしめると共に、上記第三の接触酸化材34の下方位置に、汚物タンク14の外部に設けたブロワ28にエアレーションパイプ29を介して接続され、かつ小穴を長手方向に多数配設した前後方向に伸びる暴気用空気管35を設ける。
【0021】
上記沈殿分離室18は、上記仕切壁33およびこれと対峙し、かつ上部と下部が開くと共に、その上端が上記汚物タンク14の天井付近まで延びる仕切板36と、上記仕切板36に対峙し、かつ上部が開き下部が閉じると共に、その上端が上記汚物タンク14の天井付近まで延びる仕切壁37とよって形成され、上記仕切壁37の上方で、かつ上記仕切壁33の上端より低い位置に、上記沈殿分離室18内の処理液を上記殺菌装置15に導入する導入配管38を接続せしめる。
【0022】
上記殺菌装置15は、上記汚物タンク14の外部に設けた紫外線照射装置39を有する殺菌室40によって形成され、その入口に上記導入配管38を接続せしめ、出口に上記殺菌室15の処理液を上記処理液室19に排出するための排出配管41を接続せしめる。
【0023】
上記処理液室19は、上記仕切壁37および汚物タンク14の図中右側壁42によって形成され、上記処理液室19内に水位制御器43を設け、また、上記右側壁42の、上記導入配管38が上記沈殿分離室18に接続された位置より低い位置に、上記排出配管44を接続せしめる。
【0024】
また、上記右側壁42の、上記排出配管41接続口より下方に配管44を設け、その他端を循環ポンプ45を介して殺菌室40の入口側に接続せしめ、上記処理液室19内の処理液を、再度、上記殺菌装置15に導入せしめ、その処理液を上記処理液室19内に貯蔵せしめる。
【0025】
また、上記右側壁42の、上記配管44接続口より下方に処理水配管46を設ける。
【0026】
また、上記処理液室19の天井面には臭気抜管47を設け、上記処理液室19の上記右側壁42上部にオーバフロー管48を設ける。
【0027】
上記前処理室16、上記接触酸化室17、上記沈殿分離室18の各底部には、常時閉の排出弁49、50、51が設けられ、また、上記排出配管46には、常時開の排出弁52が設けられ、これが連結管53および常時開の弁54を介して排出ポンプ55に接続され、上記排出ポンプ55の出力側には、海水への排出用の排水管56が接続されている。
【0028】
また、上記連結管53には上記弁54と流れ方向の反対位置に上記常時閉の弁57が設けられ、これが海水導入用の導入管58に接続されている。
【0029】
本発明のふん尿等浄化装置は上記のような構成であるから、トイレからのふん尿等が上記汚物管23から上記前処理室16内に導入され、大きな固体物は上記ろ過器25により除去され、上記ろ過された処理液は、エアーブローによる粉砕と、上記第一の接触酸化材26の多数のしわに接触することにより、固体と液体の分離が促進され、かつ、上記第一の接触酸化材26に膜状に形成された好気性微生物の作用により分解処理が行なわれ、さらに、その処理液を糸状の塩化ビニル製の第二の接触酸化材27に接触せしめることにより分解処理を進め、固液分離を促進せしめる。
【0030】
上記前処理室16の処理液は上記接触酸化室17に導入され、上記第一、第二の接触酸化材よりも接触面積の多い接触酸化材で微生物処理の効率をアップせしめ、その後、沈殿分離室18に導入されて、上記処理液の液体部分のみが上記導入配管38を介して殺菌装置15に導入され、紫外線が照射されることにより大腸菌が死滅し、その処理液は上記処理液室19内に貯蔵される。
【0031】
また、上記処理液室19内の処理液は上記配管44、循環ポンプ45を介して、再度上記殺菌装置15に導入され、同様に紫外線が照射されることのより大腸菌が死滅し、その処理液は上記処理室19内に貯蔵される。
【0032】
上記処理液室19内の処理液は、上記処理液室19内で所望の量貯まると上記水位制御器43がそれを検知して、汚物排出ポンプ55により海水に自動排出される。
【0033】
本発明のふん尿等浄化装置によれば、前処理室16内において、処理液が接触酸化材の多数のしわに接触することにより、固体と液体の分離を促進せしめ、かつ、接触酸化材に形成された微生物の作用により浄化処理を行なうことにより、TSSを著しく下げることができるなど、処理能力(効率)の向上を図ることができるという大きな利益がある。
【0034】
また、三段階の接触酸化材を用いることで、微生物処理の効果を著しく上げることができる。
【0035】
また、塩素剤を用いずに大腸菌を殺菌するので、残留塩素が出ず、平成22年から実施される国土交通省が発行する「海洋汚染防止設備、海洋汚染防止緊急措置手引書等及び大気汚染防止検査対象設備に関する技術上の基準等に関する省令の一部を改正する省令」に規定された残留塩素量と耐高温性大腸菌群数との両方を基準値以内に除去することが容易になる。
【0036】
また、上記処理液室19内の処理液を再度殺菌装置15に循環することにより、殺菌効果のばらつきを少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明はディスポーザ廃水などの生活液体廃棄物においても適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 汚物タンク
2 前処理室
3 接触酸化室
4 沈殿分離室
5 処理液室
6 汚物管
7 ろ過器
8 暴気用空気管
9 接触酸化材
10 暴気用空気管
11 消毒薬導入管
12 水位制御器
13 排水管
14 汚物タンク
15 殺菌装置
16 前処理室
17 接触酸化室
18 沈殿分離室
19 処理液室
20 左側壁
21 仕切板
22 仕切壁
23 汚物管
24 臭気抜管
25 ろ過器
26 接触酸化材
27 接触酸化材
28 ブロワ
29 エアレーションパイプ
30 暴気用空気管
31 仕切板
32 仕切板
33 仕切壁
34 接触酸化材
35 暴気用空気管
36 仕切板
37 仕切壁
38 導入配管
39 紫外線照射装置
40 殺菌室
41 排出配管
42 右側壁
43 水位制御器
44 配管
45 循環ポンプ
46 処理水配管
47 臭気抜管
48 オーバーフロー管
49 弁
50 弁
51 弁
52 弁
53 連結管
54 弁
55 排出ポンプ
56 排水管
57 弁
58 導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶内に設置されたトイレなどからのふん尿等を浄化処理する汚物タンクと、上記汚物タンク内で浄化処理した処理液を紫外線照射により殺菌処理する殺菌装置と、上記処理した処理液を船外に放出する手段とよりなり、
上記汚物タンクが、液の流れの方向に沿って、前処理室と、接触酸化室と、処理液室とよりなり、
上記接触酸化室からの処理液を上記殺菌装置に導入し、その処理液を上記処理液室に貯蔵せしめる手段を有し、
上記処理液室内の処理液を上記殺菌装置に導入し、その処理液を上記処理液室に貯蔵せしめる手段を更に有することを特徴とするふん尿等浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99744(P2013−99744A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281800(P2012−281800)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2009−279948(P2009−279948)の分割
【原出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(591009451)株式会社五光製作所 (9)
【Fターム(参考)】