説明

むくみ改善用の貼付材

【課題】むくみ症状を改善するためヒガンバナの鱗茎中の成分を体の中へ徐々に浸透させる。
【解決手段】ヒガンバナの鱗茎の粉末をシート状の収納袋3に封入し、このシート状の収納袋3の患部に貼付する一側面は親水性素材3aで形成され、他の側面は気密性素材3bで形成されたむくみ改善用の貼付材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節等の体の一部に生じるむくみの症状を改善するむくみ改善用の貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病気を患うと体の一部に水分が溜まりむくみの症状が現れることが知られている。例えば、腎臓病の場合にはまぶた付近がむくみ、心臓病の場合にはくるぶしの関節付近がむくむ症状が現れて人は不快感を感じる。このような症状が現れた場合にヒガンバナの鱗茎を磨りおろして足の土踏まずに塗布すると、むくみの症状が改善されると言われている(例えば、非特許文献1を参照)。また、一般にヒガンバナのような植物中の成分を人に使用する場合には、その成分を体へ徐々に浸透させると病的な症状が改善されやすいと言われている。
【0003】
【非特許文献1】水野瑞夫・米田該典共著、「家庭の民間薬漢方薬」、新日本法規、1984年発行、p.462−463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようにむくみの症状に対してヒガンバナの鱗茎を磨りおろして体に塗布すると、以下のような問題が生じていた。すなわち、ヒガンバナの鱗茎中の成分が体温や外気によりすぐに乾いてしまい、その成分が体の中に徐々に浸透しにくいという問題があった。また、すぐに乾いてしまうと患者は何度もこの鱗茎をすりおろさなければならず患部への塗布を繰り返すことが必要となりその措置が面倒であった。
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ヒガンバナの鱗茎中の成分を体の中へ徐々に浸透させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、次の手段をとる。
まず、第1の発明は、ヒガンバナの鱗茎の粉末をシート状の収納袋に封入し、該シート状の収納袋の患部に貼付する一側面は親水性素材で形成されており、他の側面は気密性素材で形成されていることを特徴とするむくみ改善用の貼付材である。
【0006】
ヒガンバナの鱗茎には、アルカロイドであるホモリコリン、リコリン、リコラミン、ダゼッチン、ガランタミンなどの成分が含まれている。体のむくみに対してこれらの成分が作用していわゆるむくみ症状を改善していると考えられる。そしてヒガンバナの鱗茎を粉末化することで、取り扱いが容易となる。さらに体液がこの粉末にいったんしみこむと、前記成分が体の中にじわじわと浸透しやすくなる。この粉末をシート状の収納袋に封入すると、患部へ貼付する側面と外気に触れる側面が構成される。また、粉末を封入することで患部の所定の位置に貼付しておくことができる。
【0007】
前記収納袋の患部に貼付する一側面が、親水性素材で形成されると、体から排出される体液(例えば、汗などの老廃物)が収納袋内に浸透して封入した前記粉末にしみこんでいく。この湿った粉末から前記ヒガンバナの鱗茎中の成分が体の中にじわじわと浸透していくと体内で物質代謝が積極的に行われる。すなわち、粉末を適度に湿らせた状態で患部に使用すると、むくみ症状が改善されやすいと考えられる。
【0008】
親水性素材は、水と親和性のある素材であればよく例えば、紙、セロファンなどが挙げられる。アレルギー症の人等へは、親水性素材として肌触りのよいソフトな素材(例えば、和紙)を用いることが好ましい。また、「患部」は、むくみ症状を改善できる適用部位であればどのような部位であってもよい。むくみ症状を改善するには、足の裏にある土踏まずに貼付することが好ましい。さらには、両足に貼付する使用形態とすることが望ましい。
【0009】
一方、他の側面が気密性素材で形成されると、収納袋内の粉末が外気と触れることがほとんどない。また、適度に湿った状態が保たれるので、前記成分が体内へじわじわと浸透していく。気密性素材は、収納袋内への気体の通過を極力抑えることができる素材であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の素材が挙げられる。
【0010】
次に第2の発明は、上記した第1の発明に係るむくみ改善用の貼付材において、前記収納袋の他の側面には患部の外周部を覆う粘着性シートが配設されていることを特徴とする。前記収納袋の他の側面に患部の外周部を覆う粘着性シートが配設されると、患部への貼付が簡便となる。また、患部への保持状態が良好となり、かつ長期的な使用が可能となる。さらに、持ち運びが楽にでき、保存袋などに収容しておけば長期間の保存も可能となる。この粘着性シートの他の側面への配設は、例えば接着固定することにより行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
まず、第1の発明においては、ヒガンバナの鱗茎中の成分を患部から体の中へ徐々に浸透させることができる。すなわち、ヒガンバナの鱗茎の粉末を適度に湿らせることで、この中に含まれる成分を体内で積極的に物質代謝させることができる。
次に、第2の発明によれば、患部への貼付が簡単にできるので、貼付材としての取り扱いが便利となる。また、長期的な使用が可能となり、むくみ症状のさらなる改善が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るむくみ改善用の貼付材は、ヒガンバナの鱗茎中の成分を体内へ徐々に浸透させることによりむくみ症状を改善させるものである。また、本発明に係るむくみ改善用の貼付材は、むくみ症状に対して両足の土踏まずに貼付すると、前記成分が徐々に体内に浸透して改善の効果が発揮されやすい。従って、土踏まずに貼付するむくみ改善用の貼付材として使用することが好ましい。上記むくみ症状の主な原因として、腎臓病(例えば、腎炎)、肝臓病(例えば、肝炎)に起因するむくみが挙げられる。よって炎症を起因としてむくみ症状が現れる患者に対しては炎症予防用の貼付材として使用することもできる。
【0013】
(実施例)
本発明の実施例について、図1、図2、図3を参照しながら説明する。
図1は、むくみ改善用の貼付材1の加工手順の一部を示す説明図である。本実施例では、ヒガンバナの鱗茎を採取し、スライサーで2mm程度の厚さに切り、乾燥機で約60℃の温風で8時間乾燥させる。次に、粉砕機で粒子の大きさがおよそ80メッシュとなるようにしてヒガンバナの鱗茎の粉末を得る。このように粉末の粒子の大きさを小さくすると大きな表面積と反応性を持つため粉末が水分を吸収しやすくなる。つまり、それだけ粉末内の成分が体内にじわじわと浸透しやすくなりむくみ症状が改善されやすいと考えられる。よってヒガンバナの鱗茎の粉末は、その粒子の大きさが80メッシュから100メッシュまでのものを使用することが好ましい。粒子の大きさが80メッシュとは80メッシュの篩目を通過するものを指し、粒子の大きさが100メッシュとは100メッシュの篩目を通過するものを指している。この得られたヒガンバナの鱗茎の粉末と他の原材料を下記に示す配合割合にて配合すると粉末状の混合物が得られる。
(配合割合)
ヒガンバナの鱗茎の粉末 2.4kg
ドクダミ 0.05kg
モモ 0.05kg
スギナ 0.05kg
キトサン 0.05kg
トウガラシ 0.05kg
薬石パウダー 0.05kg
総重量 2.75kg
【0014】
ドクダミ、モモ、スギナ、キトサン、トウガラシの各原料は、ヒガンバナの鱗茎の粉末と同様の方法で粉末としたものを配合した。配合時に薬石パウダーを適量加えて混合物のイオンバランスが良好に保たれるようにした。この混合物から0.4kgを採取し、さらに高分子デキストリン1kg、低分子デキストリン1.2kg、勲結晶(木酢)0.7kgを加えて調製すると調製物(総重量3.3kg)が得られる。図1に示すように、このように得られた調製物4の所定量をさじ2にてシート状の収納袋3に封入する。
【0015】
前記木酢は体にたまった老廃物を吸い取る効果があるため、木酢を加えるとむくみ症状のさらなる改善が期待できる。デキストリンは水分を保持しやすいため、一度体液が収納袋内の調製物にしみこむと湿った状態が保たれやすい。これによりヒガンバナの鱗茎中の成分を体の中へじわじわと浸透させることができる。特に、本実施例においては酸や酵素等の分解度が低い高分子デキストリンと分解度の高い低分子デキストリンを併用すると水分の保持性がより向上することが確認された。
【0016】
シート状の収納袋3の一側面(図1で見て紙面の手前側の側面)は、親水性素材である和紙3aで形成されている。一方、他の側面(図1で見て紙面の奥側の側面)は気密性素材であるポリエチレンフィルム3bで形成されている。このようにしてヒガンバナの鱗茎の粉末を封入したむくみ改善用の貼付材を得ることができる。患部への貼付は接着テープや包帯の巻きつけにより行うことができる。なお、本実施例における収納袋は、親水性素材で形成したシート状の袋の一側面に気密性素材をシーリングして外気を遮断する構成としたものであってもよい。
【0017】
図2は、収納袋3の他の側面に粘着性シート5が配設された貼付材1を示している。粘着性シート5は、収納袋3の一方の側面(図2で見て紙面の奥側の側面)に接着固定されており、患部の外周部を覆う大きさ形状となっている。つまり、患部に触れる側面(図2で見て手前側の側面)よりも大きい形状となっている。そして、粘着性シート5は、患部の外周部と接着して固定される。貼付材をこのような構成にすると、貼付材を長期間患部へ貼付しておくことができるため、何度も取り替えることを要しない。また、取り扱いも簡便であるため便利である。
【0018】
図3は、患部(足の裏の土踏まず)に貼付材1を貼付している状態を示している。図3に示すように、貼付材1は収納袋3がシート状に構成されているので患部に均一にフィットさせることができる。この収納袋3には粘着性シート5が配設されているため、患部の外周部はしっかりと固定されている。これにより長時間貼付しておくことが可能となる。このような状態で足の裏から排出される体液が収納袋内の調製物4にしみこんでいくと湿った状態となる。この状態でヒガンバナの鱗茎中の成分が体の中に徐々に浸透していき物質代謝が積極的に行われる。むくみ症状はこのような作用により良好に改善されると考えられる。
【0019】
上述のようにして得られた貼付材を、膝に水がたまり、腫れ、痛みを伴う症状の患者(年齢53歳、女性)の両足の土踏まずに貼付した。貼付材を1日1回取り替えて2日間貼付したところ、すべての症状が解消された。また、3週間経過しても再発しなかった。つまり、本実施例のむくみ改善用の貼付材によればむくみの再発も抑制できることが示唆された。
【0020】
別の症例として、膝のむくみ症状の不快感から夜中に起きてしまい足が重く感じ、膝がわらう(膝ががくがくする)症状の患者(年齢58歳、女性)と朝起きると足が重くだるく感じる症状の患者(年齢57歳、女性)の両足の土踏まずに上記貼付材を1日間貼付したところ、いずれの患者も楽に歩けるようになった。また、いずれの患者も以前両足の土踏まずに鱗茎の摩りおろしたものを塗布してかぶれることがあったが、鱗茎を粉末とした本実施例のむくみ改善用の貼付材を貼付してもかぶれることはなかった。
【0021】
さらに別の症例として、片足の膝に水が溜まり、他方の膝が痛む症状の患者(年齢59歳、女性)の両足の土踏まずに上記貼付材を2日間貼付したところ、痛みが解消した。また、座骨神経痛により寝返りができない症状の患者(年齢55歳、女性)の両足の土踏まずに上記貼付材を貼付したところ、4時間後には寝返りしても痛みを感じなくなり、その後の経過も良好であった。つまり、本実施例のむくみ改善用の貼付材によればむくみの改善とともに痛みも解消できることが示唆された。また、症状によっては即効的に改善されることも示唆された。
【0022】
さらに別の症例として、足のむくみから足がしびれてだるく感じる症状の糖尿病の患者(年齢54歳、男性)の両足の土踏まずに上記貼付材を1日間貼付したところ、この症状が解消された。また、この患者は以前両足の土踏まずに鱗茎の摩りおろしたものを塗布して患部から強烈な異臭を発生させていたが、鱗茎を粉末とした本実施例のむくみ改善用の貼付材を貼付しても患部から異臭が全く発生しなくなった。
【0023】
さらに別の症例として、腎臓の機能が悪く足のむくみにより足が重く感じる症状の患者(年齢40歳、女性)の両足の土踏まずに上記貼付材を2日間貼付したところ、この症状が解消された。この患者は、足が重く感じる症状により台所での立仕事を長時間行うことができなかったが、自分では気がつかないほど長い間台所で立仕事をしていたことが確認された。つまり、腎臓病に起因するむくみ症状に対して本実施例のむくみ改善用の貼付材が有効であることが示唆された。
【0024】
本発明は上記実施例の構成に限定されることはなく、その他種々の形態で実施ができるものである。上記実施例では、貼付材が土踏まずに貼付されているが、むくみの改善が可能な体の部位(例えば、肩、腰、膝、足首など)であればどのような場所に貼付してもよい。
また、上記した粘着性シートに、貼付時の収納袋内の気密性が保たれる限度において細孔を設けることもできる。これにより、患部周辺との通気性が保たれるので、患部周辺がかぶれたりかゆくなったりする症状を防止することができる。
さらに、本実施例に係るむくみ改善用の貼付材は、貧血、薬の副作用、ダイエット、仕事上の疲れを起因とするむくみ症状等に対しても改善効果を示すことが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】貼付材の加工手順の一部を示す説明図である。
【図2】粘着性シートを配設した貼付材を示す平面図である。
【図3】患部(土踏まず)に貼付材を貼付している状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 貼付材
3 収納袋
3a 親水性素材(和紙)
3b 気密性素材(ポリエチレンフィルム)
4 調製物
5 粘着性シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒガンバナの鱗茎の粉末をシート状の収納袋に封入し、該シート状の収納袋の患部に貼付する一側面は親水性素材で形成されており、他の側面は気密性素材で形成されていることを特徴とするむくみ改善用の貼付材。
【請求項2】
請求項1に記載のむくみ改善用の貼付材であって、
前記収納袋の他の側面には患部の外周部を覆う粘着性シートが配設されていることを特徴とするむくみ改善用の貼付材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−45110(P2006−45110A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227868(P2004−227868)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(504298372)株式会社杉山晴子薬膳研究所 (2)
【Fターム(参考)】