説明

めっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体

【課題】めっき液中のアンモニア成分の濃度を一定に維持してめっき液を循環して使用することができるめっき処理装置を提供する。
【解決手段】めっき処理装置20は、基板2を回転保持する基板回転保持機構110と、基板2にめっき液35を供給するめっき液供給機構30と、を備えている。このうちめっき液供給機構30は、基板2に供給されるめっき液35を貯留する供給タンク31と、めっき液35を基板2に吐出する吐出ノズル32と、供給タンク31のめっき液35を吐出ノズル32へ供給するめっき液供給管33と、を有している。また供給タンク31には、アンモニアガス貯留部170が接続され、供給タンク31に貯留されためっき液35中のアンモニア成分の濃度を目的の濃度範囲に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給してめっき処理を行うためのめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハや液晶基板などの基板には、表面に回路を形成するために配線が施されている。この配線は、アルミニウム素材に替わって電気抵抗が低く信頼性の高い銅素材によるものが利用されるようになっている。しかし、銅はアルミニウムと比較して酸化されやすいので、銅配線表面の酸化を防止するために、高いエレクトロマイグレーション耐性を有する金属によってめっき処理することが望まれる。
【0003】
ところで、銅配線表面にめっきされる金属の金属イオンを含むめっき液は、一般にめっきされる金属の金属イオン、および金属イオンを錯体化させるアンモニア成分を含んでいる。まためっき液はコスト低減のため、ある程度回収して再利用される。
【0004】
しかしながら、めっき液の性質は非常に不安定であり、回収し再利用するために装置内を循環するだけでも性質が変化し、劣化してしまう。特許文献1では、めっき液貯槽内に不活性ガスを導入して槽内を置換することで、大気中の二酸化炭素がめっき液に溶け込むことによるめっき液の劣化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−51346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、めっき液中のアンモニア成分の濃度を維持することにより、めっき液を再利用することができるめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、前記基板を収容する基板収容部と、前記基板収容部に収容された前記基板にめっき液を供給するめっき液供給機構であって、前記基板に供給されるめっき液を貯留する供給タンクと、めっき液を前記基板に対して吐出する吐出ノズルと、前記供給タンクのめっき液を前記吐出ノズルへ供給するめっき液供給管とを有するめっき液供給機構と、前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部から排出して前記めっき液供給機構の前記供給タンクへ送るめっき液排出機構と、アンモニアガスが充填されるとともに密閉されたアンモニアガス貯留部と、前記アンモニアガス貯留部からアンモニアガスを前記供給タンクへ供給するアンモニアガス管とを備えたことを特徴とするめっき処理装置である。
【0008】
本発明は、基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、前記基板を基板収容部に配置する基板載置工程と、前記基板に吐出ノズルを介して供給タンク内のめっき液を供給する供給工程と、前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部からめっき液排出機構を介して回収する回収工程と、回収されためっき液をアンモニアガスに曝して、めっき液の成分を調整する成分調整工程と、めっき液の成分が調整されためっき液を、前記吐出ノズルに供給する再利用工程とを含むことを特徴とするめっき処理方法である。
【0009】
本発明は、めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、前記めっき処理方法は、基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法であって、前記基板を基板収容部に配置する基板載置工程と、前記基板に吐出ノズルを介して供給タンク内のめっき液を供給する供給工程と、前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部からめっき液排出機構を介して回収する回収工程と、回収されためっき液をアンモニアガスに曝して、めっき液の成分を調整する成分調整工程と、めっき液の成分が調整されためっき液を、前記吐出ノズルに供給する再利用工程とを含むことを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、供給タンクにアンモニアガス貯留部が接続されているので、供給タンクに貯留されためっき液中のアンモニア成分が外方に揮発することを抑制できる。さらに、アンモニア成分を溶け込ませることができる。このため、めっき液中のアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度範囲に維持することができ、めっき液の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき処理システムの概略構成を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき処理装置を示す側面図。
【図3】図3は、図2に示すめっき処理装置の平面図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における液供給機構を示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき処理装置を示す概略図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態における液供給機構を示す図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態における第1加熱機構を示す図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態における第2加熱機構を示す図。
【図9】図9は、めっき処理方法を示すフローチャート。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態におけるめっき液回収機構を示す図。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態における工程を詳細に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図8を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず図1により、本実施の形態におけるめっき処理システム1全体について説明する。
【0013】
めっき処理システム
図1に示すように、めっき処理システム1は、基板2(ここでは、半導体ウエハ)を複数枚(たとえば、25枚)収容するキャリア3を載置し、基板2を所定枚数ずつ搬入及び搬出するための基板搬入出室5と、基板2のめっき処理や洗浄処理などの各種の処理を行うための基板処理室6と、を含んでいる。基板搬入出室5と基板処理室6とは、隣接して設けられている。
【0014】
(基板搬入出室)
基板搬入出室5は、キャリア載置部4、搬送装置8を収容した搬送室9、基板受渡台10を収容した基板受渡室11を有している。基板搬入出室5においては、搬送室9と基板受渡室11とが受渡口12を介して連通連結されている。キャリア載置部4は、複数の基板2を水平状態で収容するキャリア3を複数個載置する。搬送室9では、基板2の搬送が行われ、基板受渡室11では、基板処理室6との間で基板2の受け渡しが行われる。
【0015】
このような基板搬入出室5においては、キャリア載置部4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台10との間で、搬送装置8により基板2が所定枚数ずつ搬送される。
【0016】
(基板処理室)
また基板処理室6は、中央部において前後に伸延する基板搬送ユニット13と、基板搬送ユニット13の一方側および他方側において前後に並べて配置され、基板2にめっき液を供給してめっき処理を行う複数のめっき処理装置20と、を有している。
【0017】
このうち基板搬送ユニット13は、前後方向に移動可能に構成した基板搬送装置14を含んでいる。また基板搬送ユニット13は、基板受渡室11の基板受渡台10に基板搬入出口15を介して連通している。
【0018】
このような基板処理室6においては、各めっき処理装置20に対して、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14により、基板2が、1枚ずつ水平に保持した状態で搬送される。そして、各めっき処理装置20において、基板2が、1枚ずつ洗浄処理及びめっき処理される。
【0019】
各めっき処理装置20は、用いられるめっき液などが異なるのみであり、その他の点は略同一の構成からなっている。そのため、以下の説明では、複数のめっき処理装置20のうち一のめっき処理装置20の構成について説明する。
【0020】
めっき処理装置
以下、図2および図3を参照して、めっき処理装置20について説明する。図2は、めっき処理装置20を示す側面図であり、図3は、めっき処理装置20を示す平面図である。
【0021】
めっき処理装置20は、図2および図3に示すように、ケーシング101の内部で基板2を回転保持するための基板回転保持機構(基板収容部)110と、基板2の表面にめっき液や洗浄液などを供給する液供給機構30,30A,90,90Aと、基板2から飛散しためっき液や洗浄液などを受けるカップ105と、カップ105で受けためっき液や洗浄液を排出する排出口124,129,134と、排出口に集められた液を排出する液排出機構120,125,130と、基板回転保持機構110、液供給機構30,30A,90,90A、カップ105、および液排出機構120,125,130を制御する制御機構160と、を備えている。
【0022】
(基板回転保持機構)
このうち基板回転保持機構110は、図2および図3に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸111と、回転軸111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板2を支持するウエハチャック113と、回転軸111を回転駆動する回転機構162と、を有している。このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転機構162によって回転軸111が回転駆動され、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板2が回転される。
【0023】
(液供給機構)
次に、基板2の表面にめっき液や洗浄液などを供給する液供給機構30,30A,90,90Aについて、図2乃至図6を参照して説明する。液供給機構30,30A,90,90Aは、基板2の表面に対してめっき処理を施すめっき液を供給するめっき液供給機構30と、基板2の表面に後洗浄用の洗浄処理液を供給する洗浄処理液供給機構90と、基板2の表面に対して前処理めっきを施すめっき液を供給する前処理めっき液供給機構30Aと、基板2の表面に前洗浄用の洗浄処理液を供給する洗浄処理液供給機構90Aと、を含んでいる。
【0024】
このうち、めっき液供給機構30からはNiの金属イオンおよび金属イオンを錯体化させるアンモニア成分を含むめっき液、あるいはCoの金属イオンおよび金属イオンを錯体化させるアンモニア成分を含むめっき液が供給される。また前処理めっき液供給機構30Aからは、Pdの金属イオンを含むめっき液が供給される。
【0025】
〔めっき液供給機構30〕
次に図4および図5により、めっき液供給機構30について説明する。ここで図5は、めっき液供給機構30のみを抽出して示す概略図であり、図5において前処理めっき液供給機構30A、洗浄処理液供給機構90,90Aは便宜上除かれている。
【0026】
図4および図5に示すように、めっき液供給機構30は、所定温度で基板2に供給されるめっき液35を貯留する密閉された供給タンク31と、めっき液35を基板2に対して吐出する吐出ノズル32と、供給タンク31のめっき液35を吐出ノズル32へ供給するめっき液供給管33とを有している。また図4に示すように、めっき液供給管33には、開閉自在なバルブ37bが介挿されている。
【0027】
なお本実施の形態において、基板2に供給されるめっき液35の「所定温度」は、めっき液35内での自己反応が進行するめっき温度に等しい温度、または前記めっき温度よりも高温の温度となっている。めっき温度については後述する。
【0028】
供給タンク31には、Niなどのめっき液35の各種の成分が貯蔵されている複数の供給源から補充手段31aを介して各種液体が供給されている。例えば、Niイオンを含むNiP金属塩、還元剤、添加剤、アンモニア水および純水などの液体が供給されている。図では、アンモニア水を供給タンク31に補充するアンモニア水供給部174Aと、純水を供給タンク31に補充する純水供給部174Bのみを図示している。
【0029】
また、供給タンク31にはめっき液35の特性をモニタするモニタ手段57が設けられている。このモニタ手段57は、めっき液35のアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計、pH計、および温度計の機能を有する。この際、供給タンク31内に貯留されためっき液35の成分が適切に調整されるよう、モニタ手段57からの信号に基づいて制御機構160により、供給タンク31に供給される各種液体の流量が調整されている。例えば、モニタ手段57からの信号に基づいて制御機構160により、アンモニア水供給部174Aからアンモニア水が供給タンク31に補充され、あるいは純水供給部174Bから純水が供給タンク31に補充されて、供給タンク31内に貯留されためっき液35中のアンモニア成分およびpHを調整している。
【0030】
図4および図5に示すように、めっき液供給機構30の供給タンク31は密閉タイプとなっており、この供給タンク31には連結配管176によってアンモニアガス貯留部170が接続されている。アンモニアガス貯留部170は、アンモニア水が貯留されるとともに密閉されて体積を変化させることが可能な構造となっており、アンモニアガスが充填されている。アンモニアガス貯留部170は、供給タンク31内におけるめっき液35の液面上の空間にアンモニアガスを供給している。アンモニアガス貯留部170は、体積を変化させることが可能な構造となっているので、めっき液35の液面上の空間の圧力と平衡な状態を維持することができる。供給タンク31内のめっき液の貯留量が変化して、めっき液35の液面上の空間の体積が変化しても、その変化に追従して適量のアンモニアガスを供給することができる。
【0031】
これにより、供給タンク31に貯留されためっき液35を常にアンモニアガスに曝すことができ、めっき液におけるアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度範囲に維持することができ、めっき液の劣化を防止することができる。このため、基板収容部110から後述する液排出機構120を介してめっき液供給機構30の供給タンク31へ回収されためっき液35を、再び吐出ノズル32から基板2に対して供給し、このようにして複数回に渡ってめっき液35を再利用することができる。
【0032】
吐出ノズル32は、ノズルヘッド104に取り付けられている。またノズルヘッド104は、アーム103の先端部に取り付けられており、このアーム103は、上下方向に延伸可能となっており、かつ、回転機構165により回転駆動される支持軸102に固定されている。めっき液供給機構30のめっき液供給管33はアーム103の内側に配置されている。このような構成により、めっき液を、吐出ノズル32を介して基板2の表面の任意の箇所に所望の高さから吐出することが可能となっている。
【0033】
さらに図4に示すように、めっき液供給機構30の供給タンク31またはめっき液供給管33の少なくともいずれか一方に、めっき液35を第1温度に加熱する第1加熱機構50が取り付けられている。また第1加熱機構50よりも吐出ノズル32側において、めっき液供給管33に、めっき液35を第1温度よりも高温の第2温度に加熱する第2加熱機構60が取り付けられている。第1加熱機構50および第2加熱機構60については、後に詳細に説明する。
【0034】
さらにまた、供給タンク31には、補充タンク172が接続されている。この補充タンク172には、未使用のめっき液35が貯留されており、供給タンク31内にこの未使用のめっき液35を供給して、めっき処理により消費されためっき液を補充する。アンモニアガス貯留部170は、この補充タンク172にも接続され、補充タンク172内に貯留されためっき液35も常にアンモニアガスに曝されている。これにより、補充タンク172内に貯留されためっき液35中のアンモニア成分の濃度を目的の濃度範囲に保っている。
【0035】
〔前処理めっき液供給機構30A〕
図6に示すように、前処理めっき液供給機構30Aは基板2に対して前処理めっきを施すめっき液を供給するものである。このような前処理めっき液供給機構30Aにおいて、吐出ノズル32にめっき液を供給するための構成要素は、用いられるめっき液35Aが異なるのみであり、他の構成要素はめっき液供給機構30における各構成要素と略同一になっている。図2に示すように、Pdを含むめっき液を基板2の表面に吐出する吐出ノズル32は、ノズルヘッド109に取り付けられている。またノズルヘッド109は、アーム104の先端部に取り付けられており、このアーム104は、上下方向に延伸可能であり、かつ回転機構163により回転駆動される支持軸107に固定されている。このような構成により、めっき液を、吐出ノズル32を介して基板2の表面の任意の箇所に所望の高さから吐出することが可能となっている。
【0036】
図6に示す前処理めっき液供給機構30Aにおいて、めっき液供給機構30と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
〔洗浄処理液供給機構90〕
洗浄処理液供給機構90は、後述するように基板2の後洗浄工程において用いられるものであり、図2に示すように、ノズルヘッド104に取り付けられたノズル92を含んでいる。また図4に示すように、洗浄処理液供給機構90は、基板2に供給される洗浄処理液93を貯留するタンク91と、タンク91の洗浄処理液93をノズル92へ供給する供給管94と、供給管94に介挿されたポンプ96およびバルブ97aと、をさらに有している。なお図4に示すように、洗浄処理液供給機構90において、基板2の表面に純水などのリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構95との間で、供給管94およびノズル92が共用されていてもよい。この場合、バルブ97a,97bの開閉を適切に制御することにより、ノズル92から、洗浄処理液93またはリンス処理液のいずれかが選択的に基板2の表面に吐出される。
【0038】
〔洗浄処理液供給機構90A〕
洗浄処理液供給機構90Aは、後述するように基板2の前洗浄工程において用いられるものであり、図2に示すように、ノズルヘッド109に取り付けられたノズル92を含んでいる。洗浄処理液供給機構90Aの構成要素は、図6に示すように、用いられる洗浄処理液93Aが異なるのみであり、他の構成要素は洗浄処理液供給機構90における各構成要素と略同一になっている。図6に示す洗浄処理液供給機構90Aにおいて、洗浄処理液供給機構90と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
(液排出機構)
次に、基板2から飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構120,125,130について、図2を参照して説明する。図2に示すように、ケーシング101内には、昇降機構164により上下方向に駆動され、排出口124,129,134を有するカップ105が配置されている。液排出機構120,125,130は、それぞれ排出口124,129,134に集められる液を排出するものとなっている。
【0040】
基板2に供給した処理液は、種類ごとに排出口124,129,134を介して液排出機構120,125,130により排出することが可能となっている。例えば、液排出機構120は、めっき液35を排出するめっき液排出機構120となっており、液排出機構125は、めっき液35Aを排出するめっき液排出機構125となっており、液排出機構130は、洗浄液93,93Aおよびリンス処理液を排出する処理液排出機構130となっている。
【0041】
図2に示すように、めっき液排出機構120,125は、流路切換器121,126により切り替えられる回収流路122,127および廃棄流路123,128をそれぞれ有している。このうち回収流路122,127は、めっき液を回収して再利用するための流路であり、一方、廃棄流路123,128は、めっき液を廃棄するための流路である。なお図2に示すように、処理液排出機構130には廃棄流路133のみが設けられている。
【0042】
また図2および図5に示すように、基板収容部110の出口側には、めっき液35を排出するめっき液排出機構120の回収流路122が接続され、この回収流路122のうち基板収容部110の出口側近傍に、めっき液35を冷却する冷却バッファ120Aが設けられている。そして冷却バッファ120Aにより冷却されためっき液35は、回収流路122を通って供給タンク31へ戻される。
【0043】
次に、めっき液供給機構30および前処理めっき液供給機構30Aに設けられている第1加熱機構50および第2加熱機構60について説明する。
【0044】
(第1加熱機構)
次に第1加熱機構50について説明する。図7において、めっき液35を第1温度に加熱する供給タンク用循環加熱手段51を有する第1加熱機構50が示されている。なお第1温度は、めっき液35内での自己反応による金属イオンの析出が進行する温度(めっき温度)よりも低く、かつ常温よりも高い所定の温度となっている。例えば、Niを含むめっき液35において、そのめっき温度は約60度となっており、この場合、第1温度が40〜60度の範囲内に設定される。
【0045】
供給タンク用循環加熱手段51は、図7に示すように、供給タンク31の近傍でめっき液35を循環させる供給タンク用循環管52と、供給タンク用循環管52に取り付けられ、めっき液35を第1温度に加熱する供給タンク用ヒータ53と、を有している。また図7に示すように、供給タンク用循環管52には、めっき液35を循環させるためのポンプ56と、フィルター55とが介挿されている。このような供給タンク用循環加熱手段51を設けることにより、供給タンク31内のめっき液35を供給タンク31近傍で循環させながら第1温度まで加熱することができる。また図7に示すように、供給タンク用循環管52にはめっき液供給管33が接続されている。この場合、図7に示すバルブ37aが開放され、バルブ37bが閉鎖されているときは、供給タンク用ヒータ53を通っためっき液35が供給タンク31に戻される。一方、バルブ37aが閉鎖され、バルブ37bが開放されているときは、供給タンク用ヒータ53を通っためっき液35がめっき液供給管33を通って第2加熱機構60に到達する。
【0046】
なお供給タンク31にモニタ手段57を設置する代わりに、図7において一点鎖線で示されているように、供給タンク用循環管52に、めっき液35の特性をモニタするモニタ手段57が設けられていてもよい。
【0047】
(第2加熱機構)
次に、図8を参照して、第2加熱機構60について説明する。第2加熱機構60は、第1加熱機構50によって第1温度まで加熱されためっき液35を、さらに第2温度まで加熱するためのものである。なお第2温度とは、上述のめっき温度に等しいか、若しくはめっき温度よりも高い所定の温度となっている。例えば、Niを含むめっき液35において、そのめっき温度は上述のように約60度となっており、この場合、第2温度が60〜90度の範囲内に設定される。
【0048】
図8に示すように、第2加熱機構60は、所定の伝熱媒体を第2温度または第2温度よりも高い温度に加熱する第2温度媒体供給手段61と、第1加熱機構50よりも吐出ノズル32側においてめっき液供給管33に取り付けられ、第2温度媒体供給手段61からの伝熱媒体の熱をめっき液供給管33内のめっき液35に伝導させる温度調節器62と、を有している。また図8に示すように、アーム103に設けられ、アーム103内に位置するめっき液供給管33を通るめっき液35を第2温度で保持するための温度保持器65がさらに設けられていてもよい。なお図8において、めっき液供給管33のうち、温度調節器62内に位置するめっき液供給管が符号33aで表され、温度保持器65内(アーム103内)に位置するめっき液供給管が符号33bで表されている。
【0049】
〔温度調節器62〕
温度調節器62は、第2温度媒体供給手段61から供給される温度調節用の伝熱媒体(たとえば温水)を導入する供給口62aと、伝熱媒体を排出する排出口62bと、を有している。供給口62aから供給された伝熱媒体は、温度調節器62の内部の空間62cを流れる間にめっき液供給管33aと接触する。これによって、めっき液供給管33aを流れるめっき液35が第2温度まで加熱される。めっき液35の加熱に用いられた後の伝熱媒体は、排出口62bから排出される。
【0050】
〔温度保持器65〕
温度調節器62と吐出ノズル32との間に配設される温度保持器65は、めっき液35が吐出ノズル32から吐出されるまでの間、温度調節器62により第2温度に加熱されためっき液35の温度を保持するためのものである。この温度保持器65は、図8に示すように、温度保持器65内でめっき液供給管33bに接触するよう延びる保温パイプ65cと、第2温度媒体供給手段61から供給される伝熱媒体を保温パイプ65cに導入する供給口65aと、伝熱媒体を排出する排出口65bと、を有している。保温パイプ65cは、めっき液供給管33bに沿って吐出ノズル32の直近まで延びており、これによって、吐出ノズル32から吐出される直前のめっき液35の温度を第2温度に保持することができる。
【0051】
保温パイプ65cは、図8に示すように、吐出ノズル32を収納するノズルヘッド104の内部で開放され、温度保持器65内の空間65dと通じていてもよい。この場合、温度保持器65は、その断面中心に位置するめっき液供給管33b、めっき液供給管33bの外周に熱的に接触させて配設された保温パイプ65c、および、保温パイプ65cの外周に位置する空間65dからなる三重構造(三重配管の構造)を有している。供給口65aから供給された伝熱媒体は、ノズルヘッド104に至るまで保温パイプ65cを通ってめっき液35を保温し、その後、温度保持器65内の空間65dを通って排出口65bから排出される。
【0052】
(その他の構成要素)
図2に示すように、めっき処理装置20は、基板2の裏面に処理液を供給する裏面処理液供給機構145と、基板2の裏面に気体を供給する裏面ガス供給機構150と、をさらに有していてもよい。
【0053】
以上のように構成されるめっき処理装置20を複数含むめっき処理システム1は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160で駆動制御され、これによって基板2に対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0054】
本実施の形態において、めっき処理システム1およびめっき処理装置20は、記憶媒体161に記録されためっき処理プログラムに従って、基板2にめっき処理を施すよう駆動制御される。以下の説明では、めっき処理用のめっき液35としてNiイオンを含むめっき液を用い、前処理めっき用のめっき液35AとしてPdイオンを含むめっき液を用いる場合について説明する。
【0055】
はじめに、化学還元めっきで使用されるNiめっき液の温調方法について説明する。次に、一のめっき処理装置20で基板2にPdめっきを置換めっきにより施した後にNiめっきを化学還元めっきにより施し、その後、その他のめっき処理装置20で基板2に金めっきを置換めっきにより施す方法について説明する。
【0056】
化学還元めっき液の温調方法
〔第1温度調整工程〕
基板2の表面に吐出されるめっき液35の温度を調整する工程について説明する。はじめに、図7を参照して、基板2の表面に吐出されるめっき液35の温度を、基板2に供給されてめっき処理が行われる際の所定温度よりも低温の第1温度まで加熱する第1温度調整工程について説明する。まず、第1加熱機構50の供給タンク用ヒータ53の温度を第1温度または第1温度よりも高い温度まで上昇させる。次に、ポンプ56を用いることにより、めっき液35を供給タンク用循環管52内で循環させながら第1温度まで加熱する。この際、バルブ37aは開放され、バルブ37bは閉鎖されている。これによって、供給タンク31内に貯留されているめっき液35の温度が第1温度に制御される。
【0057】
〔第2温度調整工程〕
次に、めっき液35の温度を、基板2に供給されてめっき処理が行われる際の所定温度に等しい、または所定温度よりも高い第2温度まで加熱する第2温度調整工程について、図7および8を参照して説明する。まず、バルブ37aが閉鎖され、バルブ37bが開放される。これによって、第1温度に制御されているめっき液35が、めっき液供給管33を通って第2加熱機構60の温度調節器62に送られる。温度調節器62には、第2温度または第2温度よりも高い温度に加熱された伝熱媒体が第2温度媒体供給手段61から供給されている。このため、めっき液35は、温度調節器62の内部のめっき液供給管33aを通る間に第2温度まで加熱される。
【0058】
その後、第2温度に加熱されためっき液35は、図8に示すようにアーム103を介して吐出ノズル32に送られる。このとき、アーム103には温度保持器65が設けられており、この温度保持器65には、第2温度に加熱された伝熱媒体が第2温度媒体供給手段61から供給されている。このため、めっき液35は、温度保持器65の内部のめっき液供給管33bを通って吐出ノズル32に到達するまで第2温度に保持される。
【0059】
めっき処理方法
次に、一のめっき処理装置20で基板2にPdめっきを置換めっきにより施した(前処理めっきを施す)後、上述のようにして準備されたNiめっき液を使用してNiめっきを化学還元めっきにより施す(めっき処理を施す)方法について、図9を参照して説明する。
【0060】
(基板搬入工程および基板受取工程)
はじめに、基板搬入工程および基板受入工程が実行される。まず、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14を用いて、1枚の基板2を基板受渡室11から一のめっき処理装置20に搬入する。めっき処理装置20においては、はじめに、カップ105が所定位置まで降下され、次に、搬入された基板2がウエハチャック113により支持され、その後、排出口134と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。
【0061】
(前洗浄工程)
次に、リンス処理、前洗浄処理およびその後のリンス処理からなる前洗浄工程が実行される(S302)。はじめに、リンス処理液供給機構95Aのバルブ97bが開かれ、これによって、リンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給される。次に、前洗浄処理が実行される。リンス処理液供給機構95Aのバルブ97bが閉じられるとともに、洗浄処理液供給機構90Aのバルブ97aが開かれ、これによって、洗浄処理液93Aが基板2の表面にノズル92を介して供給される。その後、上述の場合と同様にしてリンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給され、リンス処理が行われる。処理後のリンス処理液や洗浄処理液93Aは、カップ105の排出口134および処理液排出機構130の廃棄流路133を介して廃棄される。基板2の表面の前洗浄工程が終了すると、バルブ97bが閉じられる。
【0062】
(Pdめっき工程)
次に、Pdめっき工程が実行される(前処理めっき工程の実行)(S303)。このPdめっき工程は、前洗浄工程後の基板2が乾燥されていない状態の間に、置換めっき処理工程として実行される。
【0063】
Pdめっき工程においては、はじめに、排出口129と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により下降させる。次に、めっき液供給機構30Aのバルブ37bが開かれ、これによって、供給タンク31に貯留されているPdを含むめっき液35Aが、基板2の表面に吐出ノズル32を介して所望の流量で吐出される。このことにより、基板2の表面に、置換めっきによってPdめっきが施される。処理後のめっき液35Aは、カップ105の排出口129から排出される。その後、処理後のめっき液35Aは、回収流路127を介して供給タンク31に回収されるか、若しくは廃棄流路128を介して廃棄される。基板2の表面のPdめっき処理が終了すると、バルブ37bが閉じられる。
【0064】
(リンス処理工程)
次に、リンス処理工程が実行される(S304)。このリンス処理工程(S304)は、上述の前洗浄工程(S302)におけるリンス処理と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0065】
(Niめっき工程)
その後、上述の工程S302〜304が実行されたのと同一のめっき処理装置20において、Niめっき工程が実行される(めっき処理工程の実行)(S305)。このNiめっき工程は、化学還元めっき処理工程として実行される。
【0066】
Niめっき工程(S305)においては、はじめに、排出口124と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により下降させる。次に、第1加熱機構50によって第1温度に加熱され、かつ第2加熱機構60によって第2温度に加熱されためっき液35が吐出ノズル32から所望の流量で吐出される。このことにより、基板2の表面に、化学還元めっきによってNiめっきが施される。処理後のめっき液35は、カップ105の排出口124から排出される。排出された処理後のめっき液35は、回収流路122を介して供給タンク31に回収されるか、若しくは廃棄流路123を介して廃棄される。
【0067】
Niめっき工程を行うことにより、排出口124から排出される処理後のめっき液35は、吐出される流量よりも減少している。また、第2温度に加熱されたことにより、めっき液35からアンモニア成分が揮発しやすくなっており、めっき処理装置20内で多くのアンモニア成分がめっき液35から失われる。
【0068】
(後洗浄工程)
次に、リンス処理、後洗浄処理およびその後のリンス処理からなる後洗浄工程が実行される(S306)。
【0069】
まず、排出口134と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。そして、Niめっき処理が施された基板2の表面に対してリンス処理が実行される。この場合、リンス処理液供給機構95のバルブ97bが開かれ、これによって、リンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給される。
【0070】
次に、後洗浄処理が実行される。リンス処理液供給機構95のバルブ97bが閉じられるとともに、洗浄処理液供給機構90のバルブ97aが開かれ、これによって、洗浄処理液93が基板2の表面にノズル92を介して供給される。その後、上述の場合と同様にしてリンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給され、リンス処理が行われる。処理後のリンス処理液や洗浄処理液93は、カップ105の排出口134および処理液排出機構130の廃棄流路133を介して廃棄される。基板2の表面の後洗浄工程が終了すると、バルブ97bが閉じられる。
【0071】
(乾燥工程)
その後、基板2を乾燥させる乾燥工程が実行される(S307)。例えば、ターンテーブル112を回転させることにより、基板2に付着している液体が遠心力により外方へ飛ばされ、これによって基板2が乾燥される。すなわち、ターンテーブル112が、基板2の表面を乾燥させる乾燥機構としての機能を備えていてもよい。
【0072】
このようにして、一のめっき処理装置20において、基板2の表面に対して、はじめにPdめっきが置換めっきにより施され、次にNiめっきが化学還元めっきにより施される。
【0073】
その後、Auめっき処理用の他のめっき処理装置20に搬送される。そして、他のめっき処理装置20において、置換めっきにより基板2の表面にAuめっき処理が施される。Auめっき処理の方法は、めっき液および洗浄液が異なる点以外は、Pdめっき処理のための上述の方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
めっき液回収・再生方法
次に、前述のNiめっき工程で使用されためっき液を回収して再利用する方法を説明する。
【0075】
(冷却工程)
まず、カップ105の排出口124から排出された処理後のめっき液が、回収流路122に流れるように、流路切換器121が切り換えられる。回収流路122に流れためっき液は、めっき処理が行われる際の第2温度に近い比較的高い温度を維持した状態で、冷却バッファ120Aに流入する。ここで、冷却バッファ120Aに設けられた冷却機構により、めっき液はめっき温度よりも低い温度に冷却される。これにより、めっき液内での自己反応による金属イオンの析出が抑制され、めっき液の劣化を防止することができる。また、アンモニア成分の揮発を抑制することができるので、冷却バッファ120Aより下流においてアンモニア成分がめっき液35から失われるのを防止することができる。
【0076】
(成分調整工程)
次に、冷却バッファ120Aで冷却されためっき液は、供給タンク31に戻される。供給タンク31では、供給タンク31に設置されたモニタ手段57により、めっき液35のアンモニア濃度、pH、温度が計測される。そして、モニタ手段57からの信号が制御機構160へ送られ、アンモニア成分が不足している場合には、制御機構160によってアンモニア水供給部174Aからアンモニア水が供給タンク31に補充され、また純水が不足している場合には、純水供給部174Bから純水が供給タンク31に補充される。また、めっき処理により減少した分を補充する場合や供給タンク31内のめっき液35が不足した場合には、補充タンク172から未使用のめっき液35が供給タンク31へ補充される。さらに、供給タンク31にはアンモニアガス貯留部170が接続されているため、供給タンク31内の空間には、アンモニアガス貯留部170から供給されたアンモニアガスが充填されている。このようにして、供給タンク31内のめっき液35を常にアンモニアガスに曝すことにより、めっき液35からアンモニア成分が揮発することを抑制し、さらに、めっき液35にアンモニア成分を溶けこませる。
【0077】
これにより、処理後のめっき液35のアンモニア成分およびpHを適切に調整し、めっき液におけるアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度範囲に維持することができ、めっき液の劣化を防止することができる。そして、再び吐出ノズル32から基板2に対して供給し、めっき液を複数回にわたり再利用することができる。
【0078】
本実施の形態の作用効果
本実施の形態によれば、供給タンク31にアンモニアガス貯留部170が接続されているため、供給タンク31内に貯留されためっき液35を常にアンモニアガスに曝し、めっき液からアンモニア成分が揮発することを抑制し、さらには、アンモニア成分を溶け込ませることができる。これにより、めっき液中のアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度範囲に維持することができ、めっき液の劣化を防止している。このため基板収容部110から供給タンク31へ戻されためっき液を再び吐出ノズル32から基板2に対して供給し、このようにしてめっき液を複数回にわたり再利用することができる。
【0079】
また供給タンク31内のめっき液35が不足した場合、補充タンク172から未使用のめっき液35が供給タンク31へ補充される。この場合、アンモニアガス貯留部170が補充タンク172にも接続されているので、補充タンク172内に貯留された未使用のめっき液35についてもアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度に維持することができる。
【0080】
さらにこの間、供給タンク31に設置されたモニタ手段57によって、めっき液35のアンモニア濃度、pH、温度が計測される。そしてモニタ手段57からの信号が制御機構160へ送られ、制御機構160によってアンモニア水や純水が供給タンク31に補充される。このようにして供給タンク31内に貯留されためっき液35中のアンモニア成分およびpHを調整することができる。
【0081】
また本実施の形態によれば、上述のように、めっき液35を第1温度に加熱する第1加熱機構50と、めっき液35を第2温度に加熱する第2加熱機構60とが設けられている。すなわち、めっき液35が二段階で第2温度まで加熱されている。このことにより、めっき液35が第2温度で保持される時間を短くすることができ、めっき液35の寿命を長くすることができる。また、めっき液の自己反応によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0082】
(その他の変形例)
本実施の形態において、めっき処理装置20により、Niを含むめっき液35が化学還元めっきにより基板2の表面に施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、めっき処理装置20により、様々なめっき液を化学還元めっきにより基板2の表面に施すことができる。例えば、Coを含むめっき液(CoWB、CoWP、CoB、CoPなどのめっき液)が化学還元めっきにより基板2の表面に施され得る。これらのめっき液が用いられる場合においても、第1加熱機構50および第2加熱機構60によるめっき液35の二段階加熱が実施されてもよい。この場合、第1温度および第2温度の具体的な値は、めっき液のめっき温度に応じて適宜設定される。例えばめっき液35としてCoPのめっき液が用いられる場合、そのめっき温度は50〜70度となっており、そして、第1温度が40度〜上記めっき温度の範囲内に設定され、第2温度が上記めっき温度〜90度の範囲内に設定される。
【0083】
また本実施の形態において、めっき液供給機構30Aにも、めっき液供給機構30の場合と同様に第1加熱機構50および第2加熱機構60が設けられ、また、Pdを含むめっき液35Aに対しても、第1加熱機構50および第2加熱機構60による二段階加熱が実施されてもよい。さらにまた、めっき液35Aがアンモニア成分を含む場合、めっき液供給機構30Aの供給タンク31に未使用のめっき液を貯留する補充タンク172を接続するとともに、供給タンク31および補充タンク172にアンモニアガス貯留部170を接続してもよい。さらにまた、供給タンク31Aにアンモニア水供給部174Aと純水供給部174Bを接続し、供給タンク31Aに設置したモニタ手段57からの信号に基づいて、供給タンク31にアンモニア水供給部174Aからアンモニア水を供給するとともに純水供給部174Bから純水を供給してもよい。
【0084】
また本実施の形態において、一のめっき処理装置20におけるめっき処理として、基板2にPdめっきが置換めっきにより施され、次にNiめっきが化学還元めっきにより施される例を示した(図9のS302〜S309参照)。しかしながら、これに限られることはなく、一のめっき処理装置20におけるめっき処理として、化学還元めっきのみが実施されてもよい。この場合、図9に示す各工程のうち、S303およびS304を除く工程が実施されることになる。この際、化学還元めっきのためのめっき液が特に限られることはなく、CoWB、CoWP、CoB、CoPおよびNiPなど、化学還元めっきのための様々なめっき液が用いられ得る。
【0085】
第2の実施の形態
次に図10および図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10および図11に示す第2の実施の形態は、めっき液供給機構が、めっき液排出機構から排出されためっき液の成分を調整し、成分が調整されためっき液を供給タンクに供給するめっき液回収機構をさらに有している点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。図10および図11に示す第2の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
本実施の形態においては、めっき液排出機構120の回収流路122により回収されたNiを含む処理後のめっき液が再利用される。以下、図10を参照して、処理後のめっき液を再利用するためのめっき液回収機構80について説明する。
【0087】
めっき液回収機構
図10に示すように、めっき液回収機構80は、めっき液排出機構120から排出された処理後のめっき液85を貯留する回収タンク88を有している。この回収タンク88は、供給タンク31同様に密閉タイプとなっており、この供給タンク31および回収タンク88には連結配管176によってアンモニアガス貯留部170が接続されている。アンモニアガス貯留部170は、回収タンク88内におけるめっき液35の液面上の空間にアンモニアガスを供給している。
【0088】
まためっき液回収機構80は、回収タンク88に貯留された処理後のめっき液85に不足している成分を追加する補充手段88aと、回収タンク88に貯留されためっき液85を撹拌する撹拌手段81と、をさらに有していてもよい。このうち補充手段88aは、Niイオンを含むNiP金属塩、還元剤、添加剤、アンモニア水および純水などの液体を回収タンク88内のめっき液85に補充して、めっき液85の成分を適切に調整するためのものである。例えば、回収タンク88には、アンモニア水を回収タンク88に補充するアンモニア水供給部174Aと、純水を回収タンク88に補充する純水供給部174Bとが接続されている。
【0089】
なお、このような成分調整をより正確に行うため、図10において一点鎖線で示されているように、回収タンク88に、めっき液85の特性をモニタするモニタ手段87が設けられていてもよい。モニタ手段87は、めっき液85に関し、アンモニア濃度計,pH計および温度計としての機能を有する。そしてモニタ手段87からの信号に基づいて制御機構160により補充手段88aにより補充される各種の液体の流量が調整される。例えば、モニタ手段87からの信号に基づいて制御機構160により、アンモニア水供給部174Aからアンモニア水が回収タンク88に補充され、あるいは純水供給部174Bから純水が回収タンク88に補充されて、回収タンク88内に貯留されためっき液85のアンモニア成分およびpHを適切に調整する。
【0090】
撹拌手段81は、例えば図10に示すように、回収タンク88近傍でめっき液85を循環させることによりめっき液85を撹拌するものとなっている。このような撹拌手段81は、図10に示すように、その一端82aおよび他端82bが回収タンク88に接続された回収タンク用循環管82と、回収タンク用循環管82に介挿されたポンプ86およびフィルター89と、を有している。このような撹拌手段81を設けることにより、めっき液85を撹拌しながら、めっき液内に含まれる様々な不純物を除去することができる。例えば、めっき液から金属イオンが析出する際の核となり得る不純物(パーティクル)を除去することができる。なお撹拌手段81には、めっき液85を供給タンク31に供給するための接続管83が取り付けられている。
【0091】
本発明によれば、供給タンク31および回収タンク88にアンモニアガス貯留部170を接続することにより、供給タンク31および回収タンク88に貯留されためっき液35を常にアンモニアガスに曝すことができ、めっき液35中のアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度に維持することができ、めっき液の劣化を防止することができる。このため、基板収容部110から液排出機構120を介して回収タンク88へ戻されためっき液35を、再び供給タンク31から吐出ノズル32を介して基板2に対して供給し、複数回に渡ってめっき液35を再利用することができる。
【0092】
さらにまた、供給タンク31には、未使用のめっき液35を貯留して供給タンク31内にこの未使用のめっき液35を補充する補充タンク172が接続されている。アンモニアガス貯留部170は、この補充タンク172にも接続され、補充タンク172内に貯留されためっき液35中のアンモニア成分の濃度を予め定められた目的の濃度に保っている。
【0093】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、処理後のNiめっき液を回収し、再生する方法について、図11を参照して説明する。なお図11のフローチャートに示される各工程において、図9に示す第1の実施の形態のフローチャートの各工程と同一工程には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
〔回収工程〕
基板2に対するNiめっき処理を実施するために用いられた後の処理後のめっき液85が、基板2から排出口124に流れていく。排出口124に流れた処理後のめっき液85は、液排出機構120の回収流路122を介して回収タンク88に送られる(S321)。
【0095】
〔成分調整工程〕
次に、上述の補充手段を用いて、処理後のめっき液85に不足している成分を追加する(S322)。この際、追加された成分と処理後のめっき液85とが十分に混合されるよう、撹拌手段81を用いてめっき液85を撹拌する。
【0096】
〔移送工程〕
次に回収タンク88で成分が適切に調整されためっき液85は、図10に示すように、接続管83を介して供給タンク31に送られる(S323)。
【0097】
回収し再生しためっき液を含むめっき液を使用して実施されるNiめっき処理方法は、第1の実施の形態におけるNiめっき処理方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施の形態の作用効果
このように本実施の形態によれば、処理後のめっき液85がめっき液回収機構80により回収され再生される。このため、めっき液をより有効に活用することができ、この結果、めっき液に要するコストを低減することができる。
【0099】
また、めっき液回収機構80が供給タンク31とは別個に設けられているので、供給タンクには成分が適切に調整された後のめっき液を貯留することができ、めっき液をより安定して供給することができる。
【0100】
また本実施の形態によれば、めっき液35の寿命を長くする効果が、第1加熱機構50および第2加熱機構60を利用してめっき液35を二段階で加熱することによってさらに促進され得る(図10参照)。
【符号の説明】
【0101】
1 めっき処理システム
2 基板
20 めっき処理装置
30 めっき液供給機構
31 供給タンク
32 吐出ノズル
33 めっき液供給管
35 めっき液
50 第1加熱機構
51 供給タンク用循環加熱手段
52 供給タンク用循環管
53 供給タンク用ヒータ
57 モニタ手段
60 第2加熱機構
61 第2温度媒体供給手段
62 温度調節器
80 めっき液回収機構
81 撹拌手段
82 回収タンク用循環管
85 処理後のめっき液
87 モニタ手段
88 回収タンク
88a 補充手段
90 洗浄処理液供給機構
95 リンス処理液供給機構
110 基板回転保持機構
120 めっき液排出機構
120A 冷却バッファ
122 回収流路
161 記憶媒体
170 アンモニアガス貯留部
172 補充タンク
174A アンモニア水供給部
174B 純水供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、
前記基板を収容する基板収容部と、
前記基板収容部に収容された前記基板にめっき液を供給するめっき液供給機構であって、前記基板に供給されるめっき液を貯留する供給タンクと、めっき液を前記基板に対して吐出する吐出ノズルと、前記供給タンクのめっき液を前記吐出ノズルへ供給するめっき液供給管とを有するめっき液供給機構と、
前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部から排出して前記めっき液供給機構の前記供給タンクへ送るめっき液排出機構と、
アンモニアガスが充填されるとともに密閉されたアンモニアガス貯留部と、
前記アンモニアガス貯留部からアンモニアガスを前記供給タンクへ供給するアンモニアガス管とを備えたことを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記めっき処理装置は、アンモニア水を供給するアンモニア水供給部と、純水を供給する純水供給部とをさらに有し、
前記アンモニア水供給部と前記純水供給部は、それぞれ前記供給タンクに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記めっき処理装置は、アンモニア濃度計とpH計と、前記アンモニア水供給部および前記純水供給部を制御する制御機構とをさらに有し、
前記制御機構は、前記アンモニア濃度計とpH計からの信号に基づいて、前記アンモニア水供給部からアンモニア水を前記供給タンクに供給するとともに前記純水供給部から純水を前記供給タンクに供給することを特徴とする請求項2に記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記めっき処理装置は、未使用のめっき液を貯留してこの未使用のめっき液を前記供給タンクに補充する補充タンクをさらに有し、
前記補充タンクは、前記アンモニアガス貯留部と接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき液処理装置。
【請求項5】
前記めっき処理装置は、前記めっき液排出機構と前記供給タンクとの間に、めっき液排出機構から送られるめっき液を回収して前記供給タンクに送る回収タンクをさらに有し、
前記アンモニアガス貯留部は前記回収タンクにも接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき処理装置。
【請求項6】
前記めっき処理装置は、前記基板収容部の出口側に、めっき液を冷却して前記供給タンク側へ送る冷却バッファをさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき処理装置。
【請求項7】
前記めっき処理装置は、
前記供給タンクまたは前記めっき液供給管の少なくともいずれか一方に取り付けられた、めっき液を第1温度に加熱する第1加熱機構と、
前記第1加熱機構よりも前記吐出ノズル側において、前記めっき液供給管に取り付けられた、めっき液を前記第1温度よりも高温の第2温度に加熱する第2加熱機構とを、さらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき処理装置。
【請求項8】
基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、
前記基板を基板収容部に配置する基板載置工程と、
前記基板に吐出ノズルを介して供給タンク内のめっき液を供給する供給工程と、
前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部からめっき液排出機構を介して回収する回収工程と、
回収されためっき液をアンモニアガスに曝して、めっき液の成分を調整する成分調整工程と、
めっき液の成分が調整されためっき液を、前記吐出ノズルに供給する再利用工程とを含むことを特徴とするめっき処理方法。
【請求項9】
前記成分調整工程において、前記回収されためっき液のアンモニア濃度とpH値に基づいて、アンモニア水を供給するとともに純水を供給することを特徴とする請求項8に記載のめっき処理方法。
【請求項10】
前記成分調整工程において、補充タンク内でアンモニアガスに曝された未使用のめっき液を前記回収されためっき液に補充することを特徴とする請求項8または9に記載のめっき処理方法。
【請求項11】
前記回収工程において、めっき液排出機構から排出されためっき液を回収タンクに回収することと、前記成分調整工程において、回収されためっき液の成分を前記回収タンク内で調整した後、成分が調整されためっき液を前記回収タンクから供給タンクに移送することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のめっき処理方法。
【請求項12】
前記回収工程において、前記基板収容部から排出されためっき液を冷却することを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のめっき処理方法。
【請求項13】
前記供給工程において、めっき液は、はじめに、第1加熱機構によって前記第1温度に加熱され、次に、前記第1加熱機構よりも前記吐出ノズル側に配置された第2加熱機構によって前記第2温度に加熱され、その後、前記吐出ノズルを介して前記基板に供給されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のめっき処理方法。
【請求項14】
めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記めっき処理方法は、基板に少なくともアンモニア成分を含むめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法であって、
前記基板を基板収容部に配置する基板載置工程と、
前記基板に吐出ノズルを介して供給タンク内のめっき液を供給する供給工程と、
前記基板に供給した後のめっき液を前記基板収容部からめっき液排出機構を介して回収する回収工程と、
回収されためっき液をアンモニアガスに曝して、めっき液の成分を調整する成分調整工程と、
めっき液の成分が調整されためっき液を、前記吐出ノズルに供給する再利用工程とを含むことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7099(P2013−7099A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140678(P2011−140678)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】