説明

めっき方法および電解めっき装置

【課題】安定的にめっきを行うことができるめっき方法、電解めっき装置を提供すること。
【解決手段】電解めっき装置2は、導電層12に接続される陰極20と、基材1の他面と対向するように基材1の下方に配置される陽極21と、基材1の他面と、陽極21との間に電解めっき液Lを流す電解めっき液供給部23とを備える。電解めっき装置2は、電解めっき液供給部23により、絶縁層11の他面と陽極21との間に電解めっき液Lを流すとともに、絶縁層11の他面と、陽極21との間の電解めっき液Lを絶縁層11の他面よりも下方に排出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法および電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等に搭載される回路基板は、次のようにして製造されている(特許文献1、2参照)。
はじめに、絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された第一金属膜とを有する基材を用意する。そして、基材の前記絶縁層に、レーザ等で孔を形成する。次に、第一金属膜をマスクで被覆する。その後、基材をめっき液に浸し、電解めっきを行う。これにより、絶縁層の孔中にビアを形成する。
次に、絶縁層の他方の面側に第二金属膜を形成し、第一金属膜、第二金属膜をそれぞれエッチング等で加工することで、回路層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−188985号公報
【特許文献2】特開2005−272874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような製造方法では、絶縁層の孔内にめっき法により、ビアを形成する際、第一金属膜の側面が露出していると第一金属膜の側面にめっきが析出してしまう。この場合には、第一金属膜側面の面積が本来めっきを析出させるべき孔面積に比較して非常に大きいためめっきの析出が優先的に進行し、孔内部にめっきがつきにくくなる。特に孔の径が非常に小さいような場合には、このような現象は顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、貫通孔が形成された絶縁層と、この絶縁層の一面に設けられ、前記貫通孔の一方の開口を塞ぐ導電層とを有する基材を用意する工程と、
前記導電層に陰極を接続するとともに、前記絶縁層の他面が陽極と対向するように、前記陽極の上方に前記基材を配置する工程と、
前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流して、前記貫通孔内にめっき膜を形成するとともに、前記絶縁層の他面と前記陽極との間の前記電解めっき液を前記絶縁層の他面よりも下方に排出する工程とを含むめっき方法が提供される。
【0006】
この発明によれば、絶縁層の他面(導電層が設けられた面と反対側の面)と、陽極との間に電解めっき液を流し、貫通孔内にめっき膜を形成している。そして、電解めっき液を絶縁層の他面よりも下方に排出している。
これにより、絶縁層の一面上に設けられた導電層の側面に電解めっき液が付着し、導電層の側面にめっきが析出してしまうことを抑制できる。これにより、孔内部に安定的にめっきを施すことができる。
【0007】
さらに、本発明によれば、
貫通孔が形成された絶縁層と、この絶縁層の一面に設けられ、前記貫通孔の一方の開口を塞ぐ導電層とを有する基材の前記貫通孔内に電解めっきを行うための電解めっき装置であって、
前記導電層に接続される陰極と、
前記基材の他面と対向するように前記基材の下方に配置される前記陽極と、
前記基材の他面と、前記陽極との間に電解めっき液を流す電解めっき液供給部とを備え、
当該電解めっき装置は、前記電解めっき液供給部により、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すとともに、前記絶縁層の他面と、前記陽極との間の電解めっき液を前記絶縁層の他面よりも下方に排出するように構成される電解めっき装置も提供できる。
【発明の効果】
【0008】
安定的にめっきを行うことができるめっき方法、電解めっき装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電解めっき装置を示す平面図である。
【図2】図1のII-II方向の断面図である。
【図3】図1のIII-III方向の断面図である。
【図4】電解めっき装置の支持部材を示す図である。
【図5】基材を示す断面図である。
【図6】本発明の変形例にかかる電解めっき装置を示す平面図である。
【図7】本発明の変形例にかかる陽極を示す平面図である。
【図8】本発明の変形例にかかる電解めっき装置を示す図である。
【図9】本発明の変形例にかかる電解めっき装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3を参照して、本実施形態の電解めっき装置2の概要について説明する。
図1は、電解めっき装置2の平面図であり、図2は、図1のII-II方向の断面図であり、図3は、図1のIII-III方向の断面図である。
本実施形態の電解めっき装置2は、貫通孔111が形成された絶縁層11と、この絶縁層11の一面に設けられ、貫通孔111の一方の開口を塞ぐ導電層12とを有する基材1の貫通孔111内に電解めっきを行うための電解めっき装置である。
電解めっき装置2は、導電層12に接続される陰極20と、基材1の他面と対向するように基材1の下方に配置される陽極21と、基材1の他面と、陽極21との間に電解めっき液Lを流す電解めっき液供給部23と、陽極21の上方で基材1を保持し、陽極21と基材1の他面とが対向するように基材1を保持する保持部(搬送ローラ25および陰極20で構成される)を備える。
電解めっき装置2は、電解めっき液供給部23により、絶縁層11の他面と陽極21との間に電解めっき液Lを流すとともに、絶縁層11の他面と、陽極21との間の電解めっき液Lを絶縁層11の他面よりも下方に排出するように構成される。
【0011】
次に、本実施形態の電解めっき装置2について詳細に説明する。
はじめに、電解めっき装置2のめっき対象となる基材1について説明する。
この基材1は、図5に示すように、貫通孔111が形成された絶縁層11と、導電層12と備える。
基材1は、たとえば、フレキシブル回路基板となるものである。
絶縁層11は、たとえば、ポリイミドフィルムであり、厚みは10μm〜200μm程度である。
絶縁層11には、表裏面を貫通する複数の貫通孔111が形成されている。この貫通孔111は、絶縁層11の表面(一面)側から裏面(他面)側に向かって径が大きくなるように形成されており、断面テーパ形状である。
絶縁層11の一面側には、複数の貫通孔111の開口を塞ぐ導電層12が設けられている。導電層12は、金属膜であり、たとえば、銅膜である。
導電層12の厚みは、たとえば、5〜50μmである。
【0012】
図1〜4に示すように、本実施形態の電解めっき装置2は、陰極20と、陽極21と、電解めっき液供給部23と、電解めっき液Lが充填されためっき槽24と、搬送ローラ25と、支持部材26とを備える。
【0013】
本実施形態の電解めっき装置2は、搬送ローラ25により、めっき槽24上でシート状の基材1を保持しながら搬送し、連続めっきする装置である。
めっき槽24には、電解めっき液L、たとえば、硫酸銅等の電解めっき液が充填されている。
陽極21は、めっき槽24中の電解めっき液L中に浸漬されておらず、めっき槽24中の電解めっき液Lの液面よりも上方に配置される。
ここで、陽極21は、溶解性の陽極であってもよく、不溶性の陽極であってもよい。
陽極21は、複数の金属板211で構成され、基材1の搬送方向(図1〜3のx方向)および搬送方向と直交する方向(図1〜3のy方向)に配置されている。たとえば、金属板211は、基材1の搬送方向を「行」、搬送方向と直交する方向を「列」とした場合、10行×2列で配置されている。
各金属板211は、図4に示すような支持部材26で支持され、基材1の搬送方向(x方向)に沿って隣り合う金属板211同士、基材1の搬送方向と直交する方向(y方向)に隣り合う金属板211同士は、離間配置されている。
図4(A)は、支持部材26の平面図であり、図4(B)は、図4(A)のIV-IV方向の断面図である。
支持部材26は、たとえば、絶縁性の材料で構成され、金属板211をはめ込むための凹部261が形成されている。この支持部材26には、中央に、基材1の搬送方向に沿って延在する貫通溝262が形成されている。この貫通溝262は、基材1の搬送方向と直交する方向に隣り合う金属板211間に位置し、この貫通溝262を介して電解めっき液Lが基材1側に供給される。
図1および図2に示すように陽極21の幅W1(本実施形態では、基材1の搬送方向に直交する方向に並んだ2枚の金属板211間の隙間および2枚の金属板211の幅の合計値)は、基材1の幅W2(基材1の搬送方向と直交する方向の長さ)よりも小さい。
さらに、本実施形態では、支持部材26の幅W3(基材搬送方向と直交する方向の長さ)は、基材1の幅W2よりも小さい。
また、めっき槽24上部側からの平面視において、基材搬送方向と直交する方向に並んだ金属板211間の隙間、すなわち、貫通溝262は、基材1の搬送方向と直交する方向の幅W2の略中央に位置する。
ここで、図2に示すように、基材1を陽極21上に搬送し、基材1と陽極21とを対向させた状態において、金属板211の直上に位置する基材1の導電層12と、金属板211との間の距離Hは、0.1mm以上であることが好ましい。
0.1mm以上とすることで、基板1と陽極21との物理的な接触が避けられ、電流集中によるめっき焼けの現象が防止されるという効果がある。
なお、距離Hの上限値は特に限定されないが、たとえば、1000mm以下であることが好ましい。
【0014】
陰極20は、ロール状に形成され、陽極21よりも上方に配置されている。この陰極20は、基材1表面の導電層12に接触するように配置され、基材1を搬送するための搬送ローラとして機能する。
たとえば、図1,3に示すように、陰極20は、基材1の搬送方向基端側および先端側にそれぞれ配置されている。
【0015】
搬送ローラ25は、基材1を陽極21上で搬送するものである。
【0016】
図2に示すように、電解めっき液供給部23は、めっき槽24中の電解めっき液Lをめっき槽24上部に配置される基材1に向かって供給するものである。電解めっき液供給部23は、たとえば、ポンプPおよびポンプPに接続された配管Mで構成される。
電解めっき液供給部23から排出された電解めっき液Lは、金属板211間の隙間(すなわち、貫通溝262)を介して、基材1に向かって供給される。
そして、図2に示すように、電解めっき液Lは、基材1の絶縁層11と、各金属板211との間を流れ、各金属板211の外側の端部(基材1の搬送方向と直交する方向の端部)側から下方に向かって、自重により落下することとなる。
なお、電解めっき液供給部23の配管Mを複数設け、貫通溝262の長手方向全体にわたって、電解めっき液Lが供給される構造としてもよく、また、図9に示すように、貫通溝262の下方に、貫通溝262の長手方向に沿って配置される複数の貫通穴281が形成された板材28を配置し、複数の貫通穴281および貫通溝262を介して、貫通溝262の長手方向全体にわたって、電解めっき液Lが供給される構造としてもよい。
なお、図9は、図4(A)のIX−IX方向の断面図に板材28を追加した断面図である。また、図9の矢印は、電解めっき液Lの流れを示す。
【0017】
次に、以上のような電解めっき装置2を使用しためっき方法について説明する。
はじめに、本実施形態のめっき方法の概要について説明する。
本実施形態のめっき方法は、貫通孔111が形成された絶縁層11と、この絶縁層11の一面に設けられ、貫通孔111の一方の開口を塞ぐ導電層12とを有する基材1を用意する工程と、導電層12に陰極20を接続するとともに、絶縁層11の他面が陽極21と対向するように、陽極21の上方に基材1を配置する工程と、
絶縁層11の他面と陽極21との間に電解めっき液を流して、貫通孔111内にめっき膜を形成するとともに、絶縁層11の他面と陽極21との間の電解めっき液を絶縁層11の他面よりも下方に排出する工程とを含む。
【0018】
次に、本実施形態のめっき方法について詳細に説明する。
はじめに、基材1を用意する。
基材1は、図示しないが、ロール状に巻かれており、搬送ローラ25および陰極20を介して、基材1はめっき槽24上に供給される。このとき、陰極20に導電層12が直接接触するように基材1を供給する。
なお、電解めっきの前段では、脱脂が行われる。
【0019】
基材1は、搬送ローラ25および陰極20により、めっき槽24上で搬送されるが、このとき、めっき槽24中の電解めっき液Lを、陽極21側から、基材1に向かって上方に供給する(図2参照)。電解めっき液Lは、陽極21の基材搬送方向と直交する方向に並ぶ金属板211間に形成された隙間(本実施形態では、貫通溝262)を介して、基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給される。この電解めっき液Lは、絶縁層11の貫通孔111内にも供給される。これにより、図2に示すように、金属板211と絶縁層11との間の隙間および貫通孔111内は、電解めっき液Lで充填され、電解めっき液Lは、金属板211と、貫通孔111から露出する導電層12とに接触し、貫通孔111内部にめっきが析出することとなる。
なお、基材1がめっき槽24上部を通過する間、貫通溝262からは、連続的に電解めっき液Lが供給される。従って、基材1がめっき槽24の上部を通過する間は、金属板211と絶縁層11との間の隙間および貫通孔111内が電解めっき液Lで満たされた状態が維持されることとなる。
【0020】
基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給された電解めっき液Lは、図2に示すように、金属板211の外側の端部(貫通溝262側と反対側の端部)側から、絶縁層11の他面よりも下方に、自重により落下することとなる。
ここで、前述したように、陽極21の幅W1は、基材1の幅W2よりも小さく、めっき槽24上方からの平面視において、基材1の端部が、陽極21の端部よりも、基材搬送方向と直交する方向(外方)に突出している。さらに、本実施形態では、陽極21を支持する支持部材26の幅W3も、基材1の幅W2よりも小さく、基材1の端部が支持部材26からも外方に突出している。
そのため、基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給された電解めっき液Lは、絶縁層11上の導電層12の端部や側面に接触することなく、めっき槽24側に落下し、めっき槽24で回収される。これにより、導電層12に、めっきが析出してしまうことを抑制することができる。
【0021】
なお、めっき槽24で回収した電解めっき液Lは、再度、電解めっき液供給部23により、貫通溝262から、基材1側に向かって流されることとなる。
めっき槽24では、図示しないが、調整手段により、定期的に電解めっき液を分析し、電解めっき液L中の各成分の濃度を調整してもよい。
本実施形態では、基材1は、停止することなく、陽極21上を通過する。基材1が陽極21上を通過する間に貫通孔111内にめっきが施される。ただし、基材1は、陽極21上で一時停止しながら、複数の陽極21上を通過してもよい。
【0022】
貫通孔111内部にめっきが施された基材1は、水洗され、貫通孔111内部にめっきが施された基材1が完成する。
その後、必要に応じて、基材1を切断し、基材1の絶縁層11の他面側に金属膜を貼り付ける。その後、導電層12および前記金属膜を選択的に除去して回路層を形成し、回路基板を得る。この回路基板はフレキシブル回路基板である。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、絶縁層11の他面と陽極21との間の電解めっき液Lを、絶縁層11の他面よりも下側に流しているので、絶縁層11の一面上に設けられた導電層12の側面に電解めっき液Lが付着し、導電層12の側面にめっきが析出してしまうことを抑制できる。これにより、貫通孔111内部に安定的にめっきを施すことができる。
特に、本実施形態では、基材1と陽極21とを対向させた際に、陽極21の幅W1は、基材1の幅W2よりも小さく、めっき槽24上方からの平面視において、基材1の端部が、陽極21の端部よりも、基材搬送方向と直交する方向(外方)に突出している。さらに、本実施形態では、陽極21を支持する支持部材26の幅W3も、基材1の幅W2よりも小さく、基材1の幅方向の端部が支持部材26からも外方に突出している。
従って、陽極21と、絶縁層11との間の電解めっき液Lが、絶縁層11の端部に接触せずに、めっき槽24側に排出されることとなるので、導電層12の側面にめっきが析出してしまうことを確実に抑制できる。
【0024】
また、前述したような従来の製造方法では、導電層にめっきが析出してしまうという課題があった。この課題を解決するために、例えば、基材が非連続状形状の場合には、導電層側に樹脂などの絶縁体板を当てたうえで、回路基板の外周を絶縁体の粘着テープなどで封止することにより導電層表面および側面をめっき液から隔離をしてめっきをおこなう方法や、基材が連続状形状の場合には導電層およびその側面すべてを連続状絶縁粘着テープで被覆するなどの方法が考えられる。
しかしながら、これらの方法はいずれも、めっき前に粘着テープの貼り付け、さらにめっき後の引き剥がし作業に多くの手間がかかり生産性が向上しない問題があった。
これに対し、本実施形態では、基材1の絶縁層11の他面(導電層が設けられた面と反対側の面)と、陽極21との間に電解めっき液Lを流し、貫通孔111内にめっき膜を形成している。そして、電解めっき液Lを絶縁層11の他面よりも下方に排出している。
これにより、絶縁層11の一面に設けられた導電層12には、電解めっき液Lが接触しないので、導電層12を絶縁性のテープ等で被覆しなくてもよい。そのため、絶縁層11の貫通孔111内へのめっき処理にかかる手間を省くことができ、効率よくめっきを行うことができる。
【0025】
さらに、本実施形態では、電解めっき液Lを、陽極21を構成する金属板211間の隙間(貫通溝262)から、基材1側に向かって上方に流している。このようにすることで、基材1の絶縁層11と陽極21との間に電解めっき液Lを安定的に流すことができる。
たとえば、図6の矢印に示すように、基材搬送方向基端側から、基材1と、陽極21との間の隙間に電解めっき液を流すことも考えられる。しかしながら、めっき槽24上での搬送距離を長くした場合には、基材1の搬送方向基端側から、搬送方向先端側へむけて、電解めっき液Lを非常に勢いよく流さなければならず、基材1と陽極21との間に安定的に電解めっき液Lを供給することが難しくなる。
これに対し、本実施形態では、基材搬送方向と直交する方向に隣り合う一対の金属板211間に隙間を形成し、この隙間から電解めっき液を基材1と陽極21との間に供給しているため、電解めっき液Lを非常に勢いよく流さなくても、基材1の絶縁層11と陽極21との間に電解めっき液Lを安定的に流すことができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、陽極21の基材搬送方向と直交する方向に隣り合う金属板211間の隙間の位置(本実施形態では、貫通溝262)が、基材1の幅W2方向の略中心位置にあるので、電解めっき液Lを貫通溝262から、基材1の端部側(基材搬送方向に沿った端部側)に略均等に流すことができ、めっきを安定的に実施することができる。
【0027】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、陽極21を複数枚の金属板211で構成していたが、これに限られるものではない。たとえば、図7に示すように、陽極210を一枚の金属板212で構成してもよい。このようにすることで、めっき装置の構成を簡略化することができる。この場合には、金属板212に貫通孔212Aを形成して、貫通孔212Aから電解めっき液Lを基材1側に供給すればよい。
ただし、前記実施形態のように、陽極21を複数枚の金属板211で構成すれば、各金属板211と、陰極20との間に流れる電流を異なる値とし、制御することが可能となる。
貫通孔111は断面テーパ形状であるため、めっきが進むにつれて、めっき面積が増加することとなる。そのため、たとえば、基材1の搬送方向基端側にある金属板211と、陰極20との間に流れる電流値を、基材1の搬送方向先端側にある金属板211と陰極20との間に流れる電流値よりも小さくし、被めっき面における電流密度を一定なものとすることができる。具体的には図8に示すように、制御部27(ここでは抵抗)を設け、各金属板211と陰極20との間に流れる電流量を異なるものとすることができる。
【0028】
また、前記実施形態では、貫通孔111は断面テーパ状であるとしたが、これに限られず、貫通孔111の一方の開口から、他方の開口に向かって径が均等である形状、たとえば、円柱状としてもよい。
さらに、前記実施形態では、電解めっき装置2は、陽極21上で基材1を搬送しながら、連続的にめっきを行うものであるとしたが、これに限らず、陽極21上で基材1を停止させた状態でめっきを行ってもよい。
さらに、前記実施形態では電解めっき装置2は連続状の基材を搬送するために搬送ローラーを具備しているが、これに限らず、非連続状の基材専用の装置として搬送ローラーを具備していなくても良い。たとえば、枚葉式の電解めっき装置としてもよい。
また、基材1は、フレキシブル回路基板用のものとしたが、これに限らず、リジッド基板用のものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 基材
2 電解めっき装置
11 絶縁層
12 導電層
20 陰極
21 陽極
23 めっき液供給部
24 めっき槽
25 搬送ローラ
26 支持部材
27 制御部
28 板材
111 貫通孔
210 陽極
211 金属板
212A 貫通孔
212 金属板
261 凹部
262 貫通溝
281貫通穴
H 距離
L 電解めっき液
M 配管
P ポンプ
W1 幅
W2 幅
W3 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された絶縁層と、この絶縁層の一面に設けられ、前記貫通孔の一方の開口を塞ぐ導電層とを有する基材を用意する工程と、
前記導電層に陰極を接続するとともに、前記絶縁層の他面が陽極と対向するように、前記陽極の上方に前記基材を配置する工程と、
前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流して、前記貫通孔内にめっき膜を形成するとともに、前記絶縁層の他面と前記陽極との間の前記電解めっき液を前記絶縁層の他面よりも下方に排出する工程とを含むめっき方法。
【請求項2】
請求項1に記載のめっき方法において、
前記陽極と、前記基材とを対向配置させた際に、前記絶縁層の端部は、前記陽極の端部よりも外方に突出しており、
前記絶縁層の他面と前記陽極との間の前記電解めっき液は、前記絶縁層の前記端部に接触せずに、前記絶縁層の他面よりも下方に排出されるめっき方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のめっき方法において、
前記陽極には、前記めっき液を前記絶縁層側にむかって流す開口が形成され、
前記陽極の開口を介して、前記陽極側から前記絶縁層の他面側に向かって電解めっき液を流し、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すめっき方法。
【請求項4】
請求項3に記載のめっき方法において、
前記陽極は、複数の金属板で構成され、複数の金属板間には前記開口となる隙間が形成されており、
前記隙間を介して、前記陽極側から前記絶縁層の他面側に向かって電解めっき液を流すめっき方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき方法において、
前記絶縁層の他面よりも下方に排出された電解めっき液を回収して、再度、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すめっき方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき方法において、
前記陽極上で、前記基材を搬送しながら前記絶縁層の前記貫通孔内に電解めっきを行うめっき方法。
【請求項7】
貫通孔が形成された絶縁層と、この絶縁層の一面に設けられ、前記貫通孔の一方の開口を塞ぐ導電層とを有する基材の前記貫通孔内に電解めっきを行うための電解めっき装置であって、
前記導電層に接続される陰極と、
前記基材の他面と対向するように前記基材の下方に配置される前記陽極と、
前記基材の他面と、前記陽極との間に電解めっきを流す電解めっき液供給部とを備え、
当該電解めっき装置は、前記電解めっき液供給部により、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すとともに、前記絶縁層の他面と、前記陽極との間の電解めっき液を前記絶縁層の他面よりも下方に排出するように構成される電解めっき装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電解めっき装置において、
前記陽極には、前記めっき液を前記絶縁層側にむかって流す開口が形成され、
前記陽極の開口を介して、前記陽極側から前記絶縁層の他面側に向かって電解めっき液を流し、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すように構成される電解めっき装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電解めっき装置において、
前記陽極は、複数の金属板で構成され、
前記複数の金属板間には前記開口となる隙間が形成されており、
前記隙間から電解めっき液を上方に向かって流すことで、前記絶縁層の他面と前記陽極との間に電解めっき液を流すように構成される電解めっき装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の電解めっき装置において、
前記基材を前記陽極上で搬送する搬送部を備える電解めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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