説明

めっき樹脂成形品およびその製造方法

【課題】爪の破損を抑制することの可能なめっき樹脂成形品を提供する。
【解決手段】ミラーカバー2は、本体10、リブ20、めっき層40および爪50を備える。樹脂から成形された本体10のハウジング側の壁面からリブ20は突出する。本体10およびリブ20の外壁にめっき層40は形成される。リブ20からハウジング側に延びる爪50は、弾性変形することでハウジングの係合孔に係合可能である。これにより、爪50にめっき層40が形成されることがないので、爪50の弾性力が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき加工がされた樹脂成形品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に取り付けられるドアミラー装置が知られている。ドアミラー装置は、ミラーと、そのミラーが取り付けられるハウジングと、そのハウジングのミラーと反対側を覆う椀型のミラーカバーとから構成されている。
特許文献1に記載のミラーカバーは、椀型の本体と、その本体からハウジング側に延びる台座と、その台座からハウジング側に延びる爪とが樹脂により一体形成されている。台座は、本体と接続する部分の肉厚が薄く形成されている。これにより、本体の爪と反対側に位置する面にヒケ(Sink Marks)が生じることが抑制される。ハウジングに設けられた係合孔に爪が係合することで、ミラーカバーはハウジングに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のミラーカバーをめっき処理する場合、本体と台座と爪とが共にめっき処理される。これにより、金属の被膜によって爪が覆われるので、爪の弾性力が低減する。このため、ミラーカバーをハウジングに取り付ける際、台座と爪との接続箇所、または台座と本体との接続箇所に応力集中し、爪が破損するおそれがある。
上記問題を解決するため、以下の(1)〜(4)の方法が考えられる。
(1)爪の肉厚を薄く形成する。これにより、爪の弾性係数が小さくなるので、爪を係合孔に挿入する際に爪がたわみやすくなる。
(2)係合孔に係合される爪の先端部分の突起を小さく形成する。これにより、爪を係合孔に挿入する際の爪のたわみ量が少なくなる。
(3)爪にレジストコートを塗布した後、めっき処理を行う。これにより、爪にめっき処理がされなくなるので、爪の弾性力が維持される。
(4)めっき処理可能な樹脂から形成した本体と、めっき処理不能な樹脂から形成した爪とを接合した後、めっき処理を行う。これにより、爪の弾性力が維持される。
しかし、上記(1)(2)では、爪の係合力が弱くなるおそれがある。このため、ミラーカバーとハウジングとを両面テープなどで接合すると、製造コストが増加する。
また、上記(3)(4)では、レジストコートまたはめっき処理不能な樹脂がめっき液に混入すると、めっき加工の品質が低下するおそれがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、爪の破損を抑制することの可能なめっき樹脂成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、相手方部材に係合可能なめっき樹脂成形品は、本体、リブ、めっき層および爪を備える。
樹脂から成形された本体の相手方部材側の壁面からリブが突出する。めっき層は、本体およびリブの外壁に形成される。
リブから相手方部材側に延びる爪は、弾性変形することで相手方部材に係合可能である。
【0006】
これにより、爪にめっき層が形成されることがないので、爪の弾性力を維持することが可能になる。このため、爪を相手方部材に係合する際、爪が十分に撓むことで、爪と本体との接続箇所に応力集中が生じることが抑制される。したがって、爪の破損を抑制することができる。
また、爪にめっき層が形成されることがないので、相手方部材から爪を取り外す際、めっき層の厚さのばらつきに起因する爪の抜去力のばらつきを低減することができる。これにより、設計段階で爪の設定を容易に行うことができる。
さらに、めっき処理される樹脂成形品と、めっき処理されない塗装用の樹脂成形品とを同一の成形型で形成することが可能になる。これにより、爪の寸法または抜去力などの品質レベルを調整しつつ、設計から試作段階を経由して量産段階へ移行する期間および工数を短くすることができる。
また、爪の係合力が維持されるので、相手方部材とめっき樹脂成形品との接合を両面テープなどで補強する工程を廃止することができる。
さらに、レジストコートを塗布した爪をめっき液に入れることがないので、めっき液に不純物が混入することなく、めっき加工の品質を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、リブは、本体から突出する方向に対して交差する方向に形成された係合部を有する。爪は、リブの係合部に接続される。
これにより、爪とリブとを確実に接続することが可能になる。したがって、爪を相手方部材に係合する際、爪がリブから外れることを抑制することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、爪は、めっき層が形成されたリブの外壁に樹脂追成形される。
これにより、リブの係合部に爪を嵌め込み又は接着などによって接続することに比べ、爪とリブとを強固に接続することが可能になる。
【0009】
請求項4に記載の発明によると、爪は、リブの係合部に接続される固定部、この固定部からハウジング側へ延びる腕部、およびこの腕部の先端に設けられる突起を有する。
これにより、爪を相手方部材に係合する際、固定部から延びる腕部が十分に撓むことで、固定部と腕部との接続箇所に応力集中が生じることが抑制される。したがって、爪の破損を抑制することができる。
【0010】
請求項5に記載の発明によると、固定部は、本体の相手方部材側の壁面に当接している。
これにより、リブと爪とが重なるように設けることが可能になる。したがって、めっき樹脂成形品の体格を小さくし、かつ、軽量化することができる。
【0011】
請求項6に記載の発明によると、係合部は、リブが本体から突出する方向と交差する方向に突出する凸部である。
請求項7に記載の発明によると、係合部は、リブが本体から突出する方向と交差する方向に凹む凹部である。
係合部の形状として凸部、または凹部が例示される。
【0012】
請求項8に記載の発明は、めっき樹脂成形品の製造方法である。
成形工程では、樹脂からなる本体を成形する。めっき処理工程では、本体にめっき処理を行う。爪付工程では、めっき処理した本体の相手方部材側の壁面に樹脂からなる爪を設ける。
【0013】
これにより、爪にめっき処理がされることがないので、爪の弾性力を維持することが可能になる。したがって、爪を相手方部材に係合する際、爪の破損を抑制することができる。
また、本体をめっき処理した後に爪付工程を行うので、本体の爪と反対側に位置する面にヒケが生じることが抑制される。このため、ヒケが生じることを抑制するための爪の台座を廃止することが可能になる。したがって、めっき樹脂成形品を小型化、軽量化することができる。
【0014】
請求項9に記載の発明によると、爪付工程は、本体の相手方部材側の壁面のめっき層を溶着によって破壊し、そのめっき層の破壊された箇所に爪を設ける。
これにより、めっき処理後の樹脂本体に爪を確実に接続することができる。
【0015】
請求項10に記載の発明によると、成形工程は、本体の相手方部材側の壁面から突出するリブを本体とともに形成する。めっき処理工程は、本体とともにリブにめっき処理を行う。爪付工程は、本体に爪を設けることに代えて、リブに形成されためっき層を溶着によって破壊し、そのめっき層の破壊された箇所に爪を設ける。
本体にリブを設けることで、爪が接続される位置に形成されたリブのめっき層の破壊が容易になる。このため、本体と爪との接合力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態によるミラーカバーの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるミラーカバーがハウジングに組み付けられる状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるミラーカバーがハウジングに組み付けられる状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるミラーカバーがハウジングに組み付けられた状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるミラーカバーにおいてリブと爪とを接続する工程を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるミラーカバーの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるミラーカバーにおいてリブと爪とを接続する工程を示す説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態によるミラーカバーにおいてリブと爪とを接続する工程を示す説明図である。
【図9】本発明の第5実施形態によるミラーカバーにおいてリブと爪とを接続する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるめっき樹脂成形品を図1〜図5に示す。
本発明の第1実施形態によるめっき樹脂成形品は、車両に取り付けられるドアミラー装置1のミラーカバー2に適用したものである。図2〜図4に示すように、ドアミラー装置1は、ハウジング3と、そのハウジング3を覆う椀型のミラーカバー2とから構成されている。本実施形態のハウジング3が特許請求の範囲に記載の「相手方部材」に相当する。
ハウジング3のミラーカバー2と反対側の開口部4には、図示していないがミラーが取り付けられる。ドアミラー装置1は、下側に取付穴5を有する。車両のドアに設けられるミラーステーに取付穴5を差し込むことで、ドアミラー装置1は、車両のドアに取り付けられる。
図1(A)は、ミラーカバー2に爪50が設けられる前の状態を示し、(B)は、ミラーカバー2に爪50が設けられた状態を示している。図2および図3は、ミラーカバー2がハウジング3に組み付けられる状態を示している。
【0018】
図1〜図5に示すように、ミラーカバー2は、本体10、リブ20、位置決め部材30、めっき層40(図5参照)および爪50を備えている
本体10は、樹脂から椀型に形成されている。
リブ20は、本体10と一体で樹脂から成形され、本体10からハウジング側に突出している。リブ20は、板状に形成され、本体10に接続される2本の足部21、22と、この2本の足部21、22のハウジング側の端部同士を接続する接続部23とを有する。2本の足部21、22は、本体10よりも板厚が薄い。これにより、リブ20と本体10とを射出成形する際、本体10のリブ20と反対側の面にヒケが生じることが抑制される。
位置決め部材30は、本体10およびリブ20と一体で樹脂から成形され、リブ20の接続部23からハウジング側に突出している。位置決め部材30は、略円筒状に形成され、ハウジング3のミラーカバー側に設けられた位置決め穴6に嵌まり込むことが可能である。
【0019】
めっき層40は、図5(A)に示すように、めっき処理によって形成された金属の被膜である。めっき層40は、図1(A)に示す状態で、本体10、リブ20および位置決め部材30の外壁に形成されている。
図5(C)に示すように、爪50は、リブ20の接続部23に設けられる。爪50は、樹脂から形成されている。爪50は、リブ20からハウジング側へ延びる腕部51と、この腕部51の先端に設けられる突起52を有する。図2〜図4に示すように、爪50は、ハウジング3に設けられた係合孔7に係合可能である。
ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際、爪50の突起52が係合孔7を通過する途中で、腕部51は突起52と反対側に撓む。爪50の突起52が係合孔7を通過すると、腕部51は元の位置に戻り、係合孔7の開口端に突起52が係合する。これにより、ミラーカバー2とハウジング3とが固定される。
【0020】
本実施形態のミラーカバー2の製造方法を図5を参照して説明する。
ミラーカバー2の製造方法は、まず成形工程において、本体10、リブ20および位置決め部材30を樹脂射出成形によって形成する。
次に、めっき処理工程において、本体10、リブ20および位置決め部材30にめっき処理を行う。これにより、図5(A)に示すように、本体10、リブ20および位置決め部材30の外壁に金属被膜としてのめっき層40が形成される。
【0021】
続いて、爪付工程において、図5(B)に示すように、リブ20の接続部23に爪50を設置する。そして、図5(C)に示すように、溶着によってリブ20の壁面のめっき層40を破壊し、そのめっき層40の破壊された箇所に爪50を接続する。
溶着には、バイブレーションによる溶着、超音波による溶着、熱板による溶着などが採用される。
バイブレーションによる溶着は、振動によってめっき層40を破壊し、かつ、リブ20を形成する樹脂と爪50を形成する樹脂を溶かすことで、リブ20と爪50とを接合する。
超音波による溶着は、超音波によってめっき層40を破壊し、かつ、リブ20を形成する樹脂と爪50を形成する樹脂を溶かすことで、リブ20と爪50とを接合する。
熱板による溶着は、リブ20と爪50との間に熱エネルギーを有する金属板を挟むことで行われる。金属板の有する熱エネルギーによってめっき層40を破壊し、かつ、リブ20を形成する樹脂と爪50を形成する樹脂を溶かすことで、リブ20と爪50とを接合する。
これにより、ミラーカバー2が形成される。
【0022】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態では、爪50にめっき層40が形成されることがないので、爪50の弾性力を維持することが可能になる。このため、ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際、爪50が十分に撓むことで、爪50とリブ20との接続箇所、またはリブ20と本体10との接続箇所に応力集中が生じることが抑制される。したがって、爪50の破損を抑制することができる。
(2)本実施形態では、爪50にめっき層40が形成されることがないので、ハウジング3の係合孔7から爪50を取り外す際、めっき層40の厚さのばらつきに起因する爪50の抜去力のばらつきを低減することができる。これにより、ミラーカバー2の設計段階で爪50の設定を容易に行うことができる。
(3)本実施形態では、めっき処理されるミラーカバー2と、めっき処理されない塗装用のミラーカバーとを同一の成形型で形成することが可能になる。これにより、爪50の寸法または抜去力などの品質レベルを調整しつつ、設計から試作段階を経由して量産段階へ移行する期間および工数を短くすることができる。
(4)本実施形態では、爪50の係合力が維持されるので、ハウジング3とミラーカバー2との接合を両面テープなどで補強する工程を廃止することができる。
(5)本実施形態では、レジストコートを塗布した爪50をめっき液に入れることがないので、めっき液に不純物が混入することなく、めっき加工の品質を高めることができる。
(6)本実施形態では、爪付工程において、リブ20の壁面のめっき層40を溶着によって破壊し、そのめっき層40の破壊された箇所に爪50を設けている。これにより、めっき処理後のリブ20に爪50を確実に接続することができる。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図6に示す。以下、複数の実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、ミラーカバー2の本体10に爪50を接続するためのリブ20が設けられていない。
図6(A)に示す状態で、ミラーカバー2の本体10、位置決め部材30、および、本体10と位置決め部材30との間のリブ20にめっき層40が形成されている。
図6(B)に示すように、爪50は、樹脂から形成され、本体10のハウジング側の壁面に直接設けられている。
【0024】
第2実施形態のミラーカバー2の製造方法は、成形工程およびめっき処理工程の後、爪付工程において、本体10のハウジング側の壁面のめっき層40を溶着によって破壊し、そのめっき層40の破壊された箇所に爪50を設ける。溶着には、第1実施形態と同様に、バイブレーションによる溶着、超音波による溶着、熱板による溶着などが採用される。
【0025】
第2実施形態では、リブ20を設けることなく、本体10のハウジング側の壁面に直接爪50を設けることで、ミラーカバー2およびそれを備えたドアミラー装置1を小型化、軽量化することができる。
第2実施形態では、本体10をめっき処理した後に爪付工程を行うので、本体10の爪50と反対側に位置する面にヒケが生じることを抑制することができる。
【0026】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図7に示す。
第3実施形態では、図7(A)に示すように、リブ20は、本体10から突出する方向に対して交差する方向に突出する凸部24を有する。第3実施形態では、凸部24が特許請求の範囲に記載の「係合部」に相当する。
第3実施形態のミラーカバー2の製造方法は、まず、成形工程において、本体10、リブ20および位置決め部材30を樹脂射出成形によって形成する。
次に、めっき処理工程において、本体10、リブ20および位置決め部材30にめっき処理を行う。これにより、図7(A)に示すように、本体10およびリブ20の外壁にめっき層40が形成される。
【0027】
続いて、爪付工程において、図7(B)に示すように、本体10のハウジング3と反対側の面に受治具60を当接する。また、本体10のハウジング側の面に簡易式の金型61を液密に当接する。このとき、本体10のハウジング側の面には、金型61と液密に当接可能ないわゆるバリ切り面11が形成されている。
そして、矢印X方向から加熱溶融した樹脂を金型61に射出注入する。樹脂を保圧、冷却した後、金型61を取り外す。これにより、図7(C)に示すように、爪50が形成される。爪50は、リブ20の凸部24に固定される固定部53、この固定部53からハウジング側へ延びる腕部51、およびこの腕部51の先端に設けられる突起52を有する。
ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際、爪50の突起52が係合孔7を通過する途中で、腕部51は突起52と反対側に撓む。爪50の突起52が係合孔7を通過すると、腕部51は元の位置に戻り、係合孔7の開口端に突起52が係合する。これにより、ミラーカバー2とハウジング3とが固定される。
【0028】
第3実施形態では、固定部53からハウジング側へ延びる腕部51の弾性力が維持される。このため、ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際、腕部51が十分に撓むことで、腕部51と固定部53との接続箇所などに応力集中が生じることが抑制される。したがって、爪50の破損を抑制することができる。
第3実施形態では、リブ20の凸部24に爪50を樹脂追成形することで、リブ20の凸部24に爪50を嵌め込みまたは接着などで接続することに比べ、爪50とリブ20とを強固に接続することができる。
第3実施形態では、爪50は、リブ20を覆い、本体10のバリ切り面11に当接している。このように、リブ20と爪50とが重なるように設けることで、ミラーカバー2およびそれを備えたドアミラー装置1を小型化、軽量化することができる。
【0029】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図8に示す。
第4実施形態では、図8(A)に示すように、リブ20は、本体10から突出する方向に対して交差する方向に凹む凹部25を有する。第4実施形態では、凹部25が特許請求の範囲に記載の「係合部」に相当する。
図8(B)(C)に示すように、第4実施形態のミラーカバー2の製造方法は、第3実施形態と実質的に同一である。
爪50は、リブ20の凹部25に固定される固定部54、この固定部54からハウジング側へ延びる腕部51、およびこの腕部51の先端に設けられる突起52を有する。ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際に、固定部54から延びる腕部51の弾性力が保障される。
第4実施形態においても、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態を図9に示す。
第5実施形態では、図9(A)に示すように、リブ20は、中空部26およびこの中空部からリブ20の先端に通じる孔27を有する。
図9(B)(C)に示すように、第5実施形態のミラーカバー2の製造方法は、第3、第4実施形態と実質的に同一である。
爪50は、リブ20の中空部26および孔27に固定される固定部55、この固定部55からハウジング側へ延びる腕部51、およびこの腕部51の先端に設けられる突起52を有する。ハウジング3の係合孔7に爪50を係合する際に、固定部55から延びる腕部51の弾性力が保障される。
第5実施形態においても、第3、第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
(他の実施形態)
(1)上述した実施形態では、ドアミラー装置のミラーカバーに適応されためっき樹脂成形品について説明した。これに対し、他の実施形態として、本発明のめっき樹脂成形品は、ハンドルカバー、センターオーナメントなど、種々のめっき製品に適用することができる。
(2)上述した実施形態では、リブまたは本体と爪とを、溶着または樹脂追成形によって接続した。これに対し、他の実施形態では、リブまたは本体と爪とを、接着剤によって接続してもよい。
(3)上述した第1、第2実施形態では、溶着によってリブまたは本体の壁面のめっき層を破壊し、そのめっき層の破壊された箇所に爪を設けた。これに対し、他の実施形態では、本体の爪を設ける個所にレジストコートによってめっき層形成することなく、その箇所に樹脂追成形によって爪を設けてもよい。
(4)上述した第1、第3〜第5実施形態では、本体にリブを設け、そのリブに爪を設けた。これに対し、他の実施形態では、本体のハウジング側の壁面に溝を設け、その溝に爪を接続してもよい。
(5)また、他の実施形態として、本体にめっき処理することなく、高剛性樹脂から形成した本体に、低剛性樹脂から形成した爪を樹脂追成形してもよい。こうすることで、本体の爪と反対側に位置する面にヒケが生じることを抑制することができる。したがって、本体の板厚を薄くすると共に、爪の弾性力を維持することができる。
このように本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 ・・・ミラーカバー(めっき樹脂成形品)
3 ・・・ハウジング(相手方部材)
10 ・・・本体
20 ・・・リブ
24 ・・・凸部(係合部)
25 ・・・凹部(係合部)
40 ・・・めっき層
50 ・・・爪
51 ・・・腕部
52 ・・・突起
53、54、55・・・固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方部材に係合可能なめっき樹脂成形品であって、
樹脂から成形された本体と、
前記本体の前記相手方部材側の壁面から突出するリブと、
前記本体および前記リブの外壁に形成されためっき層と、
前記リブから前記相手方部材側に延び、弾性変形することで前記相手方部材に係合可能な爪とを備えるめっき樹脂成形品。
【請求項2】
前記リブは、前記本体から突出する方向に対して交差する方向に形成された係合部を有し、
前記爪は、前記リブの前記係合部に接続されることを特徴とする請求項1に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項3】
前記爪は、前記めっき層が形成された前記リブの外壁に樹脂追成形により設けられることを特徴とする請求項2に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項4】
前記爪は、前記リブの前記係合部に接続される固定部、この固定部から前記相手方部材側へ延びる腕部、およびこの腕部の先端に設けられる突起を有することを特徴とする請求項2または3に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項5】
前記固定部は、前記本体の前記相手方部材側の壁面に当接していることを特徴とする請求項4に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項6】
前記係合部は、前記リブが前記本体から突出する方向と交差する方向に突出する凸部であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項7】
前記係合部は、前記リブが前記本体から突出する方向と交差する方向に凹む凹部であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のめっき樹脂成形品。
【請求項8】
相手方部材に係合可能な爪を備えるめっき樹脂成形品の製造方法であって、
樹脂からなる本体を成形する成形工程と、
前記本体にめっき処理を行うめっき処理工程と、
前記めっき処理した前記本体の前記相手方部材側の壁面に樹脂からなる爪を設ける爪付工程と、
を含むことを特徴とするめっき樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記爪付工程は、前記本体の前記相手方部材側の壁面に形成されためっき層を溶着によって破壊し、その前記めっき層の破壊された箇所に前記爪を設けることを特徴とする請求項8に記載のめっき樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程は、前記本体の前記相手方部材側の壁面から突出するリブを本体とともに形成し、
前記めっき処理工程は、前記本体とともに前記リブにめっき処理を行い、
前記爪付工程は、前記本体に前記爪を設けることに代えて、前記リブに形成されためっき層を溶着によって破壊し、その前記めっき層の破壊された箇所に前記爪を設けることを特徴とする請求項8に記載のめっき樹脂成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−60126(P2013−60126A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200322(P2011−200322)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000105925)サカエ理研工業株式会社 (110)
【Fターム(参考)】