説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】めっきによる金属膜の成膜をビアホール内に選択的に行って、ビアホール内を欠陥なくめっき膜で充填するとともに、ビアホール以外に形成される余分な金属膜を極めて薄くできるようにしためっき装置及びめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき液を保持するめっき槽186と、めっき槽186内のめっき液に浸漬させて配置されるアノード212と、被めっき材を保持して該被めっき材に通電し、被めっき材をアノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置するホルダ160と、アノードとホルダで保持した被めっき材との間に配置され、めっき槽内のめっき液を攪拌するめっき液攪拌部220と、ホルダで保持してめっき液中に浸漬させて配置した被めっき材の被めっき面に面するめっき液中にバブルを供給するバブル供給部222と、被めっき材とアノードとの間に電圧を印加するめっき電源230を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内部に上下に貫通する多数のビアプラグを有し、半導体チップ等のいわゆる3次元実装に使用されるインタポーザまたはスペーサを製造する際におけるビアホール(穴)の埋込みに使用されるめっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を多層に積層させる際に各層間を導通させるための手段として、内部に上下に貫通する複数の銅からなるビアプラグを有するインタポーザまたはスペーサが知られている。この製造例を図1を参照して説明すると、先ず、図1(a)に示すように、シリコン等からなる基材510の表面にSiO等からなる絶縁膜512を堆積し、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、内部に上方に開口する複数のビアホール514を形成した基板Wを用意する。このビアホール514の直径dは、例えば1〜100μm、特に10〜20μmで、深さhは、例えば70〜150μmである。そして、図1(b)に示すように、この基板Wの表面にTaN等からなるバリア層516、該バリア層516の表面に電気めっきの給電層としての(銅)シード層518をスパッタリング等で形成する。
【0003】
そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図1(c)に示すように、基板Wのビアホール514内に銅(めっき膜)を充填するとともに、絶縁膜512の表面に銅膜520を堆積させる。
【0004】
その後、図1(d)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)等により、絶縁膜512上の余剰な銅膜520、シード層518及びバリア層516を除去し、同時に、ビアホール514内に充填した銅の底面が外部に露出するまで基材510の裏面側を研磨除去する。これによって、上下に貫通する銅からなる複数のビアプラグ522を内部に有するインタポーザまたはスペーサを完成させる。
【0005】
このような、基板の内部に設けた、直径1〜100μm、特に10〜20μm、深さ70〜150μm程度の、アスペスト比が高く、深さの深いビアホールの内部に、内部にボイド等の欠陥が生じることを防止しつつ、めっきで金属膜を確実に埋込むため、出願人は、めっき電源から被めっき材とアノードとの間に印加される電圧をめっきの途中で変化させるようにしためっき装置(特許文献1参照)や、基板(被めっき材)とアノードとの間に電圧が印加されていない時にめっき液の攪拌を行い、基板(被めっき材)とアノードとの間に電圧が印加されている時にめっき液の攪拌を停止するようにしためっき装置(引用文献2参照)を提案した。
【0006】
【特許文献1】特開2005−97732号公報
【特許文献2】特開2006−152415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載の発明では、ビアホール以外の被めっき材(基板)の表面部分にも余分にめっき膜が成膜されてしまい、この被めっき材表面に成膜されるめっき膜の膜厚を抑える工夫がなされていないため、後工程のCMPでの研磨量が増加し、コストが高くなって、生産実現に向けて障害となることが判った。つまり、図2に示すように、直径Dの穴をめっき膜で埋めると、被めっき材(基板)の表面にも膜厚Tのめっき膜が成膜され、この膜厚Tは、穴の直径Dの1/2以上(T>D/2)となる。このため、後工程のCMPへの負担を軽減させる為には、めっきによる銅膜の成膜がビアホールに選択的に行われ、それ以外の部分での銅膜の成膜が少ないことが望ましい。
【0008】
つまり、ビアホール内を電解めっきにより金属銅で充填するときにめっきの成長速度が、ビアホールの内外で同じである場合、ビアホールの半径と等しい膜厚のめっき膜が必要となる。このときに、特別な工夫をしないと、ビアホール以外の被めっき材の表面にも、同じ膜厚のめっき膜が成膜されることになる。添加剤などの工夫でめっきの成長をある程度制御できるが、それだけでは不充分である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、めっきによる金属膜の成膜をビアホール内に選択的に行って、ビアホール内を欠陥なくめっき膜で充填するとともに、ビアホール以外に形成される余分な金属膜を極めて薄くできるようにしためっき装置及びめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、半導体基板の表面に設けた穴の内部に優先的に銅を析出させて穴内を欠陥なく完全に銅で埋めるとともに、穴以外の表面への銅析出を極力抑えた銅めっき膜の成膜を行う方法について、数多くの試験を行い検討した結果、銅イオン、支持電解質及びハロゲンイオンの他に、更に有機イオウ化合物、高分子化合物及び有機窒素化合物のうち少なくとも一つを含んだめっき液を用いて、基板(被めっき材)とアノードとの間に電圧を印加し、更にめっき液をパドルによって撹拌しながら、めっき液中にバブルを供給して電解めっきすることで目的を達成できることを見出し本発明を完成した。
【0011】
請求項1に記載の発明は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき材を保持して該被めっき材に通電し、被めっき材を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき材との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌するめっき液攪拌部と、前記ホルダで保持してめっき液中に浸漬させて配置した被めっき材の被めっき面に面するめっき液中にバブルを供給するバブル供給部と、前記被めっき材と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源を有することを特徴とするめっき装置である。
【0012】
例えば表面に1〜100μm程度の穴(ビアホール)を有する被めっき材とアノードとの間に電圧を印加し、めっき液をめっき液撹拌部で撹拌しながら、めっき液中にバブルを供給してめっきを行うことで、穴の内部に優先的にめっきを行って、穴の内部に銅等のめっき膜を充填した後の被めっき材の表面のめっき膜厚さを該穴径の半径より薄くできることが確かめられている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記バブル供給部は、前記めっき液攪拌部と前記ホルダで保持してめっき液に浸漬させて配置される被めっき材との間、または前記めっき液攪拌部の近傍に位置して、前記めっき槽の底部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記バブルの供給量は、0.1〜10L/minであることを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置である。
バブルの供給量は、一般的には0.1〜10L/minであるが、1〜5L/minであることが好ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記バブル供給部は、下半分の領域に、複数の通孔を一列または複数列に亘って所定のピッチで設けた中空管からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置である。
この通孔の直径は、例えば0.1〜2.0mmである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記バブル供給部は、多孔質体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置である。
多孔質体としては、多孔質プラスチックや多孔質セラミック等が挙げられ、多孔質体を使用することで、構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、めっき槽内のめっき液中に被めっき材とアノードとを互いに対峙させて配置し、前記被めっき材と前記アノードとの間に電圧を印加し、前記被めっき材と前記アノードとの間のめっき液をめっき液攪拌部で攪拌しながら、被めっき材の被めっき面に面するめっき液中にバブルを供給することを特徴とするめっき方法である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記めっき液攪拌部と前記被めっき材で挟まれた領域、またはめっき液攪拌部の近傍に、めっき槽の底部からバブルを供給することを特徴とする請求項6記載のめっき方法である。
請求項8に記載の発明は、前記バブルの供給量は、0.1〜10L/minであることを特徴とする請求項6または7記載のめっき方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば表面に1〜100μm程度の穴(ビアホール)を有する被めっき材の該穴の内部に優先的にめっきを行って、穴の内部に銅等のめっき膜を充填した後の被めっき材の表面のめっき膜厚さを該穴径の半径より薄くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、被めっき材として半導体ウエハ等の基板を使用し、基板の表面に銅めっきを行って、基板の表面に設けた、例えば1〜100μm程度の穴径のビアホール(穴)を銅で埋めるようにした例を示す。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態におけるめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図を示す。このめっき処理設備は、基板の前処理、めっき処理及びめっきの後処理のめっき全工程を連続して自動的に行うようにしたもので、外装パネルを取付けた装置フレーム110の内部は、仕切板112によって、基板のめっき処理及びめっき液が付着した基板の処理を行うめっき空間116と、それ以外の処理、すなわちめっき液に直接には関わらない処理を行う清浄空間114に区分されている。そして、めっき空間116と清浄空間114とを仕切る仕切板112で仕切られた仕切り部には、基板ホルダ160(図4参照)を2枚並列に配置して、この各基板ホルダ160との間で基板の脱着を行う、基板受渡し部としての基板脱着台162が備えられている。清浄空間114には、基板を収納した基板カセットを載置搭載するロード・アンロードポート120が接続され、更に、装置フレーム110には、操作パネル121が備えられている。
【0022】
清浄空間114の内部には、基板のオリフラやノッチなどの位置を所定方向に合わせるアライナ122と、めっき処理後の基板を洗浄し高速回転させてスピン乾燥させる2台の洗浄・乾燥装置124が配置されている。更に、これらの各処理装置、つまりアライナ122及び洗浄・乾燥装置124のほぼ中心に位置して、これらの各処理装置122,124、前記基板脱着台162及び前記ロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットとの間で基板の搬送と受渡しを行う第1搬送ロボット128が配置されている。
【0023】
清浄空間114内に配置されたアライナ122及び洗浄・乾燥装置124は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して処理する。搬送ロボット128は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して基板の搬送及び受渡しを行う。
【0024】
めっき空間116内には、仕切板112側から順に、基板ホルダ160の保管及び一時仮置きを行うストッカ164、例えば基板の表面を純水で洗浄するとともに、純水で濡らして親水性を良くする水洗前処理を行う前処理装置126、例えば基板の表面に形成したシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの無機酸またはクエン酸やシュウ酸などの有機酸溶液でエッチング除去する活性化処理装置166、基板の表面を純水で水洗する第1水洗装置168a、めっき処理を行うめっき装置170、第2水洗装置168b及びめっき処理後の基板の水切りを行うブロー装置172が順に配置されている。そして、これらの装置の側方に位置して、2台の第2搬送ロボット174a,174bがレール176に沿って走行自在に配置されている。この一方の第2搬送ロボット174aは、基板脱着台162とストッカ164との間で基板ホルダ160の搬送を行う。他方の第2搬送ロボット174bは、ストッカ164、前処理装置126、活性化処理装置166、第1水洗装置168a、めっき装置170、第2水洗装置168b及びブロー装置172の間で基板ホルダ160の搬送を行う。
【0025】
第2搬送ロボット174a,174bは、図4に示すように、鉛直方向に延びるボディ178と、このボディ178に沿って上下動自在でかつ軸心を中心に回転自在なアーム180を備えており、このアーム180に、基板ホルダ160を着脱自在に保持する基板ホルダ保持部182が2個並列に備えられている。基板ホルダ160は、表面を露出させ周縁部をシールした状態で基板Wを着脱自在に保持するように構成されている。
【0026】
ストッカ164、前処理装置126、活性化処理装置166、水洗装置168a,168b、めっき装置170及びブロー装置172は、基板ホルダ160の両端部に設けた外方に突出する突出部160aを上端部に引っ掛けて、基板ホルダ160を鉛直方向に吊り下げた状態で支持する。前処理装置126には、内部に純水を保持する2個の前処理槽127が備えられ、図4に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を前処理槽127の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと前処理槽127内の純水に浸漬させて前処理を行うように構成されている。活性化処理装置166には、内部に薬液を保持する2個の活性化処理槽183が備えられ、図4に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を活性化処理槽183の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと活性化処理槽183内の薬液に浸漬させて活性化処理を行うように構成されている。
【0027】
同様に、水洗装置168a,168bには、内部に純水を保持した各2個の水洗槽184a,184bが、めっき装置170には、内部にめっき液を保持した複数のめっき槽186がそれぞれ備えられ、前述と同様に、基板ホルダ160を基板Wごとこれらの水洗槽184a,184b内の純水またはめっき槽186内のめっき液に浸漬させることで、水洗処理やめっき処理が行われるように構成されている。またブロー装置172は、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、この基板ホルダ160に装着した基板Wにエアーや不活性ガスを吹きかけることで、基板のブロー処理を行うように構成されている。
【0028】
めっき装置170は、図5に示すように、内部に一定量のめっき液Qを保持するめっき槽186が備えられ、このめっき液Q中に、基板ホルダ160で周縁部を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて保持した基板Wを浸漬させて垂直に配置するようになっている。めっき液Qとして、この例では、銅イオン、支持電解質及びハロゲンイオンの他に、更に有機イオウ化合物、高分子化合物及び有機窒素化合物のうち少なくとも一つを含んだめっき液が使用される。支持電解質としては硫酸が、ハロゲンイオンとしては塩素が好ましく用いられる。
【0029】
めっき槽186の上方外周には、めっき槽186の縁から溢れ出ためっき液Qを受け止めるオーバーフロー槽200が備えられている。オーバーフロー槽200の底部には、ポンプ202を備えた循環配管204の一端が接続され、循環配管204の他端は、めっき槽186の底部に設けられためっき液供給口186aに接続されている。これにより、オーバーフロー槽200内に溜まっためっき液Qは、ポンプ202の駆動に伴ってめっき槽186内に還流される。循環配管204には、ポンプ202の下流側に位置して、めっき液Qの温度を調節する恒温ユニット206と、めっき液内の異物をフィルタリング(除去)するフィルタ208が介装されている。更に、めっき槽186の底部には、内部に多数のめっき液流通口を有する底板210が配置されている。
【0030】
めっき槽186の内部には、基板Wの形状に沿った円板状のアノード212がアノードホルダ214に保持されて垂直に設置されている。このアノード212は、めっき槽186内にめっき液Qを満たした時に、このめっき液Q中に浸漬され、基板ホルダ160で保持してめっき槽186内の所定の位置に配置される基板Wと対面する。更に、めっき槽186の内部には、アノード212とめっき槽186内の所定の位置に配置される基板ホルダ160との間に位置して、内部に中央孔218aを有する誘電体からなり、めっき槽186内の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)218が配置されている。この調整板218の下端は、底板210に達している。
【0031】
めっき槽186の内部には、めっき槽186内の所定の位置に配置される基板ホルダ160と調整板218との間に位置して、鉛直方向に延び、基板Wと平行に往復動して、基板ホルダ160と調整板218との間のめっき液Qを攪拌するパドル220が等ピッチで配置されている。このパドル220は、めっき液攪拌部を構成する。
【0032】
更に、めっき槽186の底部には、底板210の上方に位置し、かつパドル(めっき液撹拌部)220の下端近傍のやや基板W側に寄った位置に位置して、バブル供給部222が配置されている。このバブル供給部222は、図6及び図7に示すように、中空管224から構成され、中空管224の長さ方向に沿った所定のピッチPで、この例では、2列に延びる複数の通孔224aを形成したものが使用されており、このバブル供給部222は、めっき槽186の幅方向のほぼ全長に亘って延びている。この通孔224aの直径dは、例えば0.1〜2.0mmであり、内部にめっき槽186内のめっき液Qが内部に流入することがないように、中空管224の下半分に設けられている。
【0033】
なお、バブル供給部222を構成する中空官224を、その通孔224aがめっき槽186の底板210のめっき液流通口近傍に位置するように配置してもよい。これにより、バブルがめっき液の流れに沿って基板Wの表面に沿って好適に流れるようにすることができる。
【0034】
この中空管224からなるバブル供給部222から、めっき処理中に、例えば0.1〜10L/min、好ましくは1〜5L/minの空気や窒素からなるバブルが、基板ホルダ160で保持されて所定の位置に配置された基板Wの表面(被めっき面)に面しためっき液Q中に供給され、バブルが基板Wの表面全面に沿って流れる。更に図示はしないが、バブルを基板Wの表面全面に沿って好適に流すために、基板ホルダを鉛直方向より0.1°から1.0°の範囲で傾けて配置してもよい。
【0035】
なお、バブル供給部222として、図8及び図9に示すように、例えば多孔質プラスチックや多孔質セラミック等からなる多孔質体226を使用することができる。このように、多孔質体226を使用することで、構造の簡素化を図ることができる。
めっき装置170には、めっき時に陽極が導線を介してアノード212に、陰極が導線を介して基板Wにそれぞれ接続されるめっき電源230が備えられている。
【0036】
このめっき装置170によれば、先ず、めっき槽186の内部に所定量のめっき液Qを満たしておく。そして、基板Wを保持した基板ホルダ160を下降させて、基板Wをめっき槽186内のめっき液Qに浸漬した所定の位置に配置し、めっき電源230の陽極をアノード212に、陰極を基板Wにそれぞれ接続する。この状態で、パドル220を基板Wと平行に移動させて、調整板218と基板Wとの間のめっき液Qをパドル220で攪拌し、同時に、バブル供給部222から、例えば0.1〜10L/min、好ましくは1〜5L/minの空気や窒素からなるバブルを基板Wの表面(被めっき面)に面しためっき液Q中に供給する。また、必要に応じて循環配管204のポンプ202を駆動して、めっき槽186内のめっき液Qを循環させつつ冷却して所定の温度に維持する。
【0037】
そして、所定時間経過後、アノード212と基板Wとの間への電圧の印加を停止し、パドル220の往復動及びバブル供給部222からのバブルの供給を停止させてめっきを終了する。
【0038】
次に、図3に示すめっき処理設備の一連の処理について説明する。先ず、例えば図1(b)に示すように、シリコン等からなる基材510の表面にSiO等からなる絶縁膜512を堆積し、内部に上方に開口する複数のビアホール514を形成し、更に基板Wの表面にTaN等からなるバリア層516、該バリア層516の表面に電気めっきの給電層としての(銅)シード層518を形成した基板Wを用意する。そして、この基板Wをその表面(被めっき面)を上にした状態で基板カセットに収容し、この基板カセットをロード・アンロードポート120に搭載する。
【0039】
このロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットから、第1搬送ロボット128で基板Wを1枚取出し、アライナ122に載せて基板Wのオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。一方、基板着脱台162にあっては、ストッカ164内に鉛直姿勢で保管されていた基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで取出し、これを90゜回転させた水平状態にして基板脱着台162に2個並列に載置する。
【0040】
そして、アライナ122に載せてオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせた基板Wを第1搬送ロボット128で搬送し、基板脱着台162に載置された基板ホルダ160に周縁部をシールして装着する。そして、この基板Wを装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで2基同時に把持し、上昇させた後、ストッカ164まで搬送し、90゜回転させて基板ホルダ160を垂直な状態となし、しかる後、下降させ、これによって、2基の基板ホルダ160をストッカ164に吊下げ保持(仮置き)する。これを順次繰返して、ストッカ164内に収容された基板ホルダ160に順次基板を装着し、ストッカ164の所定の位置に順次吊り下げ保持(仮置き)する。
【0041】
一方、第2搬送ロボット174bにあっては、基板を装着しストッカ164に仮置きした基板ホルダ160を2基同時に把持し、上昇させた後、前処理装置126に搬送する。そして、この前処理装置126で、前処理槽127内に入れた純水等の前処理液に基板Wを浸漬させて前処理(水洗前処理)を施す。このとき使用する前処理液としての純水は、純水中の溶存酸素濃度を真空脱気装置や不活性ガスの導入により制御し、好ましくは2mg/L以下とする。次に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、活性化処理装置166に搬送し、活性化処理槽183に入れた硫酸や塩酸などの無機酸またはクエン酸やシュウ酸などの有機酸溶液に基板を浸漬させてシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜をエッチングし、清浄な金属面を露出させる。このときに使用する酸溶液は前記前処理用の純水と同様に酸溶液中の溶存酸素濃度を制御することができる。更に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第1水洗装置168aに搬送し、この水洗槽184aに入れた純水で基板の表面を水洗する。
【0042】
水洗が終了した基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にしてめっき装置170に搬送し、めっき槽186内のめっき液Qに浸漬させた状態でめっき槽186に吊り下げ支持することで、基板Wの表面にめっき処理を施す。そして、所定時間経過後、基板を装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174bで再度保持してめっき槽186から引き上げてめっき処理を終了する。
【0043】
そして、前述と同様にして、基板ホルダ160を第2水洗装置168bまで搬送し、この水洗槽184bに入れた純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ブロー装置172に搬送し、ここで、不活性ガスやエアーを基板に向けて吹き付けて、基板ホルダ160に付着しためっき液や水滴を除去する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
【0044】
第2搬送ロボット174bは、上記作業を順次繰り返し、めっきが終了した基板を装着した基板ホルダ160を順次ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
一方、第2搬送ロボット174aにあっては、めっき処理後の基板を装着しストッカ164に戻した基板ホルダ160を2基同時に把持し、前記と同様にして、基板脱着台162上に載置する。
【0045】
そして、清浄空間114内に配置された第1搬送ロボット128は、この基板脱着台162上に載置された基板ホルダ160から基板を取出し、いずれかの洗浄・乾燥装置124に搬送する。そして、この洗浄・乾燥装置124で、表面を上向きにして水平に保持した基板を、純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させた後、この基板を第1搬送ロボット128でロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットに戻して、一連のめっき処理を完了する。これにより、例えば図1(c)に示すように、ビアホール514内に銅を充填するとともに、絶縁膜512上に銅膜520を堆積させた基板Wが得られる。
【0046】
なお、上記の例では、前処理装置126をめっき空間116内に配置し、基板ホルダ160で基板Wを保持した状態で、めっき前処理を行うようにしているが、前処理装置を清浄空間114内に配置し、めっき前処理を終了した基板を基板ホルダで保持して、めっき前処理後の一連のめっき処理を行うようにしてもよい。
【0047】
(実施例1)
穴径20μm、深さ50μmの穴(ビアホール)を有するシリコンウェーハ基材上に、PVD法によりバリア層としてTiを100nm成膜し、次いで同法により銅シード層を500nm成膜し、導電化したものを試験片として用意した。そして、図3に示すめっき装置を使用し、下記の組成の硫酸銅めっき液を使用して、下記のめっき条件で試験片(基材)の表面に電解銅めっきを行った。
【0048】
めっき液組成
・硫酸銅五水和物:200g/L
・硫 酸 :50g/L
・塩 素 :60mg/L
・イオウ化合物、高分子化合物及び窒素化合物等を含む添加剤
【0049】
めっき条件
・電流密度 :5mA/cm
・めっき時間 :30分
・パドル撹拌速度:平均速度200mm/sec
・パドル本数 :5本
・循環流量 :2L/min
・バブル供給 :中空管タイプに0.5mmの通孔を多数開けたものからエアーを2L/minで供給した。
【0050】
(実施例2)
図8及び図9に示す多孔質体(多孔質セラミック)からなるバブル供給部を使用して、多孔質セラミックから150ml/minでエアーを供給し、それ以外の条件を実施例1と同じにして、電解めっきを行った。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様の試験片を用意し、実施例1と同様な組成のめっき液を用い、電解めっきを行う際のめっき条件として、パドル撹拌を行わず、それ以外のめっき条件は実施例1と同様として電解めっきを行った。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様の試験片を用意し、実施例1と同様な組成のめっき液を用い、電解めっきを行う際のめっき条件として、パドル撹拌を行わず、エアバブルを150ml/minで供給し、それ以外のめっき条件は実施例1と同様にして電解めっきを行った。
【0053】
実施例1,2及び比較例1,2により銅(めっき膜)成膜された試験サンプルの穴部分を割断し、割断面を観察した。そして、図10に示すように、穴径:d、試験片(基材)の表面に成膜されためっき膜の膜厚:t、評価指数:t/dとして、めっき膜の評価を行った。この結果を下記の表1に示す。評価指標の値が0.5以下であれば、穴の内部に優先的にめっきが行われ、穴の内部に銅等のっき膜を充填した後の試験片の表面のめっき膜厚さを該穴径の半径より薄くできることが確かめられる。
【0054】
【表1】

【0055】
この表1から、実施例1,2における評価指標は、0.5よりもなるかに小さく、これにより、穴の内部に優先的にめっきが行われ、穴の内部に銅等のっき膜を充填した後の被めっき材の表面のめっき膜厚さを該穴径の半径より十分に薄くできることが判る。しかも、実施例1、2では、幅20μm、深さ50μmの穴が銅で欠陥なく充填されていた。これに対して、比較例1,2では、穴の内部は銅で充填されておらず、穴内に欠陥が生じていたことが確かめられている。
【0056】
図11は、実施例1によって穴の内部に銅を埋込んだ状態を示す。めっき開始直後から、穴の底部に銅が成膜され、めっき中期においては、穴の中腹まで銅が完全に埋込まれ、更に、めっき後期に、穴の内部に銅が完全に埋込まれ、更に試験片(基材)の表面にも銅が薄く成膜されると考えられる。これにより、図11に示すように、穴の直径Dに対して、試験片(基材)の表面に成膜されるめっき膜の膜厚Tを極薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】内部に上下に貫通する複数の銅からなるビアプラグを有するインタポーザまたはスペーサの製造例を工程順に示す図である。
【図2】従来例における穴をめっき膜で埋込んだ状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態のめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図である。
【図4】図3に示すめっき処理設備に備えられている搬送ロボットの概要図である。
【図5】図3に示すめっき処理設備に備えられているめっき装置の概略断面図である。
【図6】図5に示すめっき装置のめっき液供給部の底面図である。
【図7】図5に示すめっき装置のめっき液供給部の横断面図である。
【図8】めっき液供給部の他の例を示す正面図である。
【図9】めっき液供給部の他の例を示す横断面図である。
【図10】めっき膜の評価の説明に付する図である。
【図11】実施例1によって穴の内部に銅を埋込んだ状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
114 清浄空間
116 めっき空間
124 洗浄・乾燥装置
126 前処理装置
160 基板ホルダ
162 基板脱着台
164 ストッカ
166 活性化処理装置
168a,168b 水洗装置
170 めっき装置
172 ブロー装置
180 アーム
182 基板ホルダ保持部
183 活性化処理槽
184a,184b 水洗槽
186 めっき槽
200 オーバーフロー槽
202 ポンプ
204 循環配管
206 恒温ユニット
208 フィルタ
212 アノード
214 アノードホルダ
218 調整板
220 パドル(めっき液攪拌部)
222 バブル供給部
224 中空管
224a 通孔
226 多孔質体
230 めっき電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、
被めっき材を保持して該被めっき材に通電し、被めっき材を前記アノードと対向する位置にめっき液に浸漬させて配置するホルダと、
前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき材との間に配置され、前記めっき槽内のめっき液を攪拌するめっき液攪拌部と、
前記ホルダで保持してめっき液中に浸漬させて配置した被めっき材の被めっき面に面するめっき液中にバブルを供給するバブル供給部と、
前記被めっき材と前記アノードとの間に電圧を印加するめっき電源を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記バブル供給部は、前記めっき液攪拌部と前記ホルダで保持してめっき液に浸漬させて配置される被めっき材との間、または前記めっき液攪拌部の近傍に位置して、前記めっき槽の底部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記バブルの供給量は、0.1〜10L/minであることを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記バブル供給部は、下半分の領域に、複数の通孔を一列または複数列に亘って所定のピッチで設けた中空管からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記バブル供給部は、多孔質体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
めっき槽内のめっき液中に被めっき材とアノードとを互いに対峙させて配置し、
前記被めっき材と前記アノードとの間に電圧を印加し、
前記被めっき材と前記アノードとの間のめっき液をめっき液攪拌部で攪拌しながら、被めっき材の被めっき面に面するめっき液中にバブルを供給することを特徴とするめっき方法。
【請求項7】
前記めっき液攪拌部と前記被めっき材で挟まれた領域、またはめっき液攪拌部の近傍に、めっき槽の底部からバブルを供給することを特徴とする請求項6記載のめっき方法。
【請求項8】
前記バブルの供給量は、0.1〜10L/minであることを特徴とする請求項6または7記載のめっき方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate