説明

もずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法及びもずく入りもろみ酢清涼飲料水

【課題】もずく有効成分をそのまま含有し、製造上の経済性が高いもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法は、調味料を調合する第一の調合工程を終えたもろみ酢清涼飲料水を、第二の調合工程において殺菌釜で加熱しながら乾燥もずく粉末10aを調合して撹拌混合し、さらに第二の調合工程を終えたもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で90℃以上、5分間以上加熱殺菌する。もずく成分が多く含まれるもずく入りもろみ酢清涼飲料水を提供でき、もずくエキスの製造工程を省略して作業効率が大幅に改善され、廬布の目詰りが削減して作業効率が上がる。殺菌工程で食物粉末の醗酵性物質を不醗酵処理するため瓶内醗酵がなく、保存性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に健康飲料として好適なもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法及び該方法によって製造されるもずく入りもろみ酢清涼飲料水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康食品の分野において、最近では沖縄の泡盛から副成されるもろみ酢が人気となっている。もろみ酢は蒸し米と黒麹菌で作られた醗酵もろみを蒸留して泡盛を作る際に副成される残滓分であるもろみを圧搾して得られる液体である。
【0003】
一般に、これを健康飲料として飲用するには、得られたもろみ酢そのものだけでなく、もろみ酢に甘味料などを添加するとともに、他の健康食品を混合し、瓶詰などにより製品化される。
【0004】
添加される健康食品としては、野菜や、茸、果物などの各種食品があり、もずくから抽出した液体状のエキスを添加したもろみ酢の健康飲料も知られており、その従来の製造方法は図3に示す通りであった。なお、図3において、各ブロック中には工程名又は当該工程で得られる製品名を例示してある。
【0005】
1.蒸し米と黒麹菌で醸造された醗酵もろみ100を蒸留102し、蒸留酒103を採る。蒸留酒103は沖縄の泡盛として知られるものである。
2.蒸留酒採取後の残滓分であるもろみを圧搾104して、その汁を採る。もろみは醗酵熱で60℃程度の温度を有している。この汁がもろみ酢105であり、クエン酸を主成分とする溶液である。また、圧搾104で生じた残滓分であるもろみカス106は飼料、肥料として利用される他は廃棄処分されている。
3.もろみ酢105を飲料とするため、調合工程107でもろみ酢105に甘味料などの添加剤108を添加すると同時に酸化防止の目的で少量の酢酸を入れる。これらに茸エキス(煮出し汁の濃縮液)109を加える。この調合工程107では成分配合や飲み易さ等を考慮した調合としている。
4.もずくエキス109は平行する別途工程で、乾燥もずく109aを煮出し工程109bで煮出し、さらに煮出し汁の濃度を高めることでもずくエキス109として前記調合工程107に供給される。もずくエキス109の濃度を高めることによりもろみ酢105が水っぽくなるのを防止する。
5.調合したもろみ酢飲料には沈殿物、浮遊物が存在するため濾過工程110で濾過され、その後は殺菌工程111で殺菌釜により90℃以上5分間以上加熱殺菌する。パイプラインで瓶詰工程113に輸送する過程で冷却槽内を通過させることで冷却112され、瓶詰工程113で瓶詰した後に製品114として出荷される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上において、もずくエキス109の製造方法では、飲料にする工程における調合で主原料が水っぽくならないようにするため、乾燥もずく100重量部に対して水2000重量部を加えて数時間煮詰め、500重量部の煮出し汁の濃縮液を作る。この煮出し汁の濃縮液には以下の問題が生じていた。
【0007】
まず、数時間掛けて濃縮しても、濃縮液内には、もずくの有効成分が約50%程度しか溶解せず、乾燥もずく100の成分は煮出しもずくに約50%の成分を残すものであった。なお、煮出しもずくは佃煮等に加工可能ではあるが、実際には殆ど廃棄しているため、不経済的であった。また、もずくエキスを採る工程が、もろみ酢清涼飲料水の製造に並行して行う別工程である必要があった。
【0008】
さらに、濾過工程ではもずくの濃縮液が濃すぎると濾布が目づまりして、もずく成分が濾布に残留する量が増え、濃縮液内のもずく成分(水溶性繊維質等を含む)が濾布に残留し、製品であるもろみ酢清涼飲料水に最終的に含まれるもずく成分がさらに減少してしまう不都合があった。一例を示せば、元のもずく成分量を100とすると、前述したように煮出しもずくに50の成分を残し、煮出し液には50の成分が残るが、前述したもずく成分の濾布への残留により、最終的に含まれるもずく成分はさらに減少する。他に、濾布の目詰りにより作業効率が低下するという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上の問題を解決するものであり、醸造酢に混合されるもずく成分の濃縮工程が不要であるため濃縮液に伴う上記不具合を解消することができ、もずくの有効成分を失うことなく製品飲料中に含有させて健康飲料としての効能を高めるとともに製造上の経済性を向上させるようにしたもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法を提供し、さらに同方法によって製造したもずく入りもろみ酢清涼飲料水を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本願の請求項1に記載されたもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法によれば、もずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造工程において調味料を調合する第一次調合工程と、乾燥もずく粉末を調合する第二次調合工程とを有することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載されたもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法は、請求項1記載のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法において、もずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造工程において、第一の調合工程を終えたもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で加熱しながら乾燥もずく粉末を撹拌混合する第二の調合工程を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載されたもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法は、請求項1又は2記載のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法において、第二の調合工程を終えたもずく入りもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で90℃以上,5分間以上の加熱殺菌する工程を有することを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載されたもずく入りもろみ酢清涼飲料水は、調味料を調合したもろみ酢に乾燥もずく粉末を調合して不醗酵処理されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、もずく粉末をそのまま混合するため、混合による水っぽさを解消できるとともに、食物繊維を含めてもずくの成分が多く含まれるもずく入りもろみ酢清涼飲料水を提供できる。また、もずくエキスを製造する工程が省略出来るため、作業効率が大幅に改善されるほか、濾過工程が省略でき、作業効率が上がる。
【0015】
請求項2または3記載の発明によれば、殺菌工程の熱処理によりもずく粉末に含まれる醗酵性物質(食物繊維等)を不醗酵処理しているため瓶内で醗酵することがなく、保存性を高めることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、もずく粉末をそのまま混合するため、混合による水っぽさを解消できるとともに、食物繊維を含めてもずくの成分が多く含まれ、瓶内で醗酵することがなく保存性が高いもずく入りもろみ酢清涼飲料水を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態につき添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明にかかるもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造手順を示す工程説明図であり、図2は前記製造手順において使用する乾燥もずく粉末の製造工程を示す工程説明図であり、これらの図を元に説明する。なお、図1及び図2中の各ブロック中には、工程又は操作等の名称、当該工程又は操作等で得られる製品又は廃棄物名等、又は当該工程又は操作等で使用される原材料名等が例示されている。
【0018】
1.蒸し米と黒麹菌で醸造された醗酵もろみ1を蒸留2し、蒸留酒3を採取する。蒸留酒3は沖縄の泡盛として知られるものである。
【0019】
2.蒸留酒採取後の残滓分であるもろみを圧搾4により、その汁を採取する。もろみは醗酵熱で60℃程度の温度となっている。この汁がもろみ酢5であり、クエン酸を主成分とする溶液である。また、圧搾4で生じた残滓分であるもろみカス6は飼料、肥料に使用される他は廃棄処分される。
【0020】
3.もろみ酢5を飲料とするため、一次調合工程7でもろみ酢5に容量の数%の酢酸と、甘味料などの添加剤8が添加される。この一次調合工程では酸化を抑制するとともに、飲み易さ等を考慮した配合がなされる。すなわち前記添加剤8として加える調味料を甘味料とする場合は、黒糖では独特の重い甘さとなってしまうため、高果糖液糖を添加して軽いさっぱりとした甘さを加え、同時にカロリーも低く抑えた。
【0021】
4.この調合されたもろみ酢の沈殿物、浮遊物を除去するため、濾過工程9で濾過する。濾過は濾布により行われるが、低粘度であるため迅速に濾過できる。得られた濾液は、茶褐色の透明体である。
【0022】
5.一方、乾燥もずく10は粉末加工工程11で粉末化し、乾燥もずく微粉末10aを作製しておく。
【0023】
6.得られた微粉末10aを二次調合工程12に供給し、前記濾過工程を経たもろみ酢清涼飲料水に攪拌機を用いて混合し、分散する。
【0024】
7.二次調合工程12を終えたもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で90℃以上,5分間以上の加熱殺菌を行う。この殺菌工程13ではもろみ酢そのものの醗酵を停止するとともに、乾燥もずく微粉末10aの成分の醗酵が抑止される。
【0025】
8.この後パイプラインを通じて瓶詰工程15に輸送する過程でパイプを冷却槽内を通過させることで冷却14され、瓶詰工程15で瓶詰することで、製品16として出荷される。
【0026】
得られた製品16は、飲みやすく、適度な酸味と甘味、並びにもずく成分がまるごと入った清涼飲料水として販売される。
【0027】
なお、以上の実施形態においては二次調合工程12と、加熱殺菌工程13とを別個に連続して行ったが、同時に行うこともできる。
【0028】
次に、図2を参照して、前記製造手順において使用する乾燥もずく粉末の製造工程を説明する。生もずく21又は塩漬けもずく22を水洗い23処理したもの(又はその両方)をざる様の乾燥トレイ24に置いて水切り25処理を行う。水が滴り落ちない程度に水切りができたら、乾燥機によって80℃で10時間程度乾燥26させる。これで乾燥モズク27が得られ、これを粉末28として、前記第2次調合12に投入する。
【0029】
以上説明したように、本例によれば、もずくを未加工のそのままの状態で熱湯に浸漬して成分を抽出し、抽出後のもずくを廃棄する従前の手法に比べ、液中に抽出されているもずくエキスの量は安定した高い値を示すと共に、抽出された成分及び抽出されなかった残余の成分は濾過されて除かれた部分を除いて液中に残存するので無駄なく製品の成分として利用されることとなり、もずくを利用した健康食品として高い機能が確保できる。
【0030】
なお、本発明の原料であるもろみ酢はクエン酸が主成分であるからそのままでは飲みにくく飲用に適さないが、本発明ではもずくを添加しているのでその成分によるうまみの効果が得られ、飲みやすくなっている。かかる飲用に適した味を実現するための粉末状のもずくの添加量は、本発明者等の実験及び官能検査によれば、もろみ酢1000mlに対して粉末状のもずく5g〜20gの範囲が最適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるもろみ酢清涼飲料水の製造手順を示す工程説明図である。
【図2】本発明にかかるもろみ酢清涼飲料水の製造工程において使用される乾燥粉末もずくの製造工程を示す工程説明図である。
【図3】従来のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造手順を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 醗酵もろみ
2 蒸留
4 圧搾
5 もろみ酢
7 一次調合工程
8 添加剤(調味料)
9 濾過工程
10,27 乾燥もずく
10a,28 乾燥もずく微粉末
12 二次調合工程
13 殺菌工程
21 生もずく
22 塩漬けのもずく

【特許請求の範囲】
【請求項1】
もずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造工程において調味料を調合する第一次調合工程と、乾燥もずく粉末を調合する第二次調合工程とを有することを特徴とするもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法。
【請求項2】
もずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造工程において、第一の調合工程を終えたもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で加熱しながら乾燥もずく粉末を撹拌混合する第二の調合工程を有することを特徴とする請求項1記載のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法。
【請求項3】
第二の調合工程を終えたもずく入りもろみ酢清涼飲料水を殺菌釜で90℃以上,5分間以上の加熱殺菌する工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載のもずく入りもろみ酢清涼飲料水の製造方法。
【請求項4】
調味料を調合したもろみ酢に乾燥もずく粉末を調合して不醗酵処理されたもずく入りもろみ酢清涼飲料水。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−82423(P2007−82423A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272316(P2005−272316)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(501003386)株式会社フリーダムインテレクト (4)
【出願人】(503340737)大永建設株式会社 (5)
【出願人】(504077456)株式会社球建設 (4)
【Fターム(参考)】