説明

より強靱な脂環式エポキシ樹脂

脂環式エポキシ樹脂から製造された被覆の靭性、例えば屈曲時の耐亀裂性を増大させる方法である。この脂環式エポキシ樹脂は、少なくとも1個の脂環式環を含むヒドロキシ官能性化合物の脂環式エポキシドエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年11月3日に出願された米国仮特許出願第60/516,878号の利益を請求する。本発明は一般に、エポキシ含有化合物及びこのような化合物から製造される被覆の靭性の増大方法に関する。更に詳しくは、本発明は、増大された靭性を有することができる被覆材料としての或る種のヒドロキシル官能性化合物の脂環式エポキシ樹脂の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
靭性は、硬度を本質的に一定に保ちながら改善された可撓性、又は可撓性を本質的に一定に保ちながら改善された硬度、又は同時に改善された可撓性及び硬度と考えることができる。可撓性の改善によっては典型的にはより軟質の硬化組成物が得られるのに対し、硬度の改善によっては典型的には、より脆い又はより曲げにくい硬化組成物が得られる。靭性はまた、熱サイクルにおける改善された耐亀裂性と考えることができる。
【0003】
カチオン性紫外線硬化性エポキシ組成物は、エポキシ樹脂と、紫外線への暴露時に酸を放出するカチオン性光開始剤、並びに場合によってはポリオール、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物及び/又はアクリレート化合物を含む。カチオン性紫外線硬化性被覆は通常、缶端、浅絞り加工缶を含む缶体、エアゾール缶、王冠、クロージャー並びに他の鋼及びアルミニウム容器の製造に使用される鋼及びアルミニウムのシート及びコイルに適用される。鋼シート及びコイルは、無錫鋼でも錫メッキ鋼でもよい。鋼及びアルミニウムのシート及びコイルは、下塗りしていても(primed)、していなくてもよく、サイズ剤を施していて(sized)も施していなくてもよく、また、インキで印刷してもしなくてもよい。カチオン性紫外線硬化性被覆は、レトルト内加熱処理及び低温殺菌のような、熱湯及び蒸気消毒を含む用途に使用される鋼及びアルミニウムのシート及びコイルにしばしば適用される。これらの用途には、食品及び飲料用の缶体、缶端、王冠及びクロージャーなどがある。レトルト内加熱処理は一般に、水の沸点より高い温度において加圧下でオートクレーブを用いて実施し、一部の缶飲料を含む缶詰食品中の細菌を殺すのに用いられる。低温殺菌は、熱湯への浸漬又は熱湯の噴霧を含み、ビールのような缶飲料中の細菌を殺すのに用いられる。
【0004】
鋼缶端の保護に用いられる現在のカチオン性紫外線硬化性被覆は、缶端の製作及び二重巻締めとして知られる方法による缶体への缶端の取り付けの間に亀裂を生じるおそれがある。被覆(coating)は、レトルト内加熱処理時及び/又は輸送時に亀裂を生じるおそれがある。王冠及びクロージャーの保護に用いられる現在のカチオン性紫外線硬化性被覆は、王冠又はクロージャーの作成時、ホッパーを用いた運搬時、又はレトルト内加熱処理及び低温殺菌の間に亀裂を生じるおそれがある。被覆中に亀裂が入ると、水が鋼に接触し、それによって鋼が変色する。鋼が変色すると、容器は顧客にとって魅力的でなくなる。
【0005】
無水物硬化エポキシ組成物は典型的には、エポキシ樹脂、例えば脂環式エポキシ樹脂、無水物並びに、場合によっては、ポリオール、触媒及び酸化防止剤を含む。無水物硬化エポキシ組成物は、種々の電気部品及び電子部品、例えば発光ダイオード及びフライバックトランスを封入及び絶縁するのに用いられる。脂環式エポキシドを含む現在の無水物硬化組成物は、硬いが脆い傾向がある。脆性は、鋼ワッシャーを封入し且つ封入を熱サイクルに供することによって証明できる。脆い組成物は、熱サイクルの間に亀裂を生じるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業界の前に立ちはだかっている問題を考慮すると、より強靱なエポキシ組成物が必要とされているのが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、製品上における硬化脂環式エポキシ樹脂を含む被覆の、靭性を増大させる方法であって、エポキシ樹脂として式:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、R1及びR2は二価有機部分であり、同一でも異なってもよい]
の化合物を用いることを含んでなる方法を含む。本発明はまた、前記樹脂及び適当な触媒又は開始剤を含む硬化性組成物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、被覆及びそれから得られる他の最終製品に驚くほど改善された靭性を与え、紫外線硬化性被覆、熱硬化性被覆及びLED封入剤を含む用途において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の硬化性配合物は、紫外線硬化性配合物及び熱硬化性配合物を含む。紫外線硬化性配合物は、脂環式エポキシ樹脂及びカチオン性光開始剤を含む。熱硬化性配合物は、脂環式エポキシ樹脂及びカチオン性熱触媒を含む。本発明の脂環式エポキシ樹脂は、いくつかのルートによって製造できるが、本発明の脂環式エポキシ樹脂の製造に好ましいルートは、本発明の脂環式エポキシ樹脂が形成されるような反応条件下で脂環式エポキシドとヒドロキシ官能性化合物とを接触させることを含む。
【0012】
本発明に従って使用するのに適当な脂環式エポキシド出発材料は、1つ又はそれ以上の単位を含むヒドロキシ官能性化合物のヒドロキシル基と反応できる少なくとも1個の官能基、例えば酸、アルコール又は好ましくはエステルも有する任意の脂環式エポキシドであることができる。脂環式エポキシドは、環中に約5〜約7個、好ましくは6個の炭素原子を有するのが有利である。脂環式エポキシドは、環1個当たり1個又はそれ以上、好ましくは1個のエポキシド基を有することができる。更に、脂環式エポキシドは、1個又はそれ以上の、例えば約3以下の環を含むことができ、飽和でも不飽和でもよく、環上に炭化水素部分のような他の置換基を有することができる。
【0013】
好ましくは、脂環式エポキシド出発材料は、以下の構造:
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、R6は水素又は有機部分(organic moiety)、好ましくは水素又は炭素数1〜約30の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜約10の直鎖又は分岐鎖アルキル部分であり、G1〜G9は独立して水素、フェニル又は炭素数1〜約10の置換若しくは非置換アルキル若しくはアルケン部分である]
を有する。
【0016】
本発明において出発原料として有用な脂環式エポキシドの例は以下の通りである。メチル3,4−エポキシシクロヘキサン−カルボキシレート、エチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、プロピル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イソプロピル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、n−ブチル−、i−ブチル−、s−ブチル−及びt−ブチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;種々のアミル及びヘキシル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;メチル3,4−エポキシ−3−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;エチル3,4−エポキシ−3−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;メチル3,4−エポキシ−4−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;エチル3,4−エポキシ−4−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;ブチル3,4−エポキシ−3−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;ブチル3,4−エポキシ−4−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;メチル3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;エチル3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;ブチル3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキサンカルボキシレート;ジアルキル4,5−エポキシシクロ−ヘキサン−1,2ジカルボキシレート;及び混合ジアルキル4,5−エポキシシクロ−ヘキサン−1,2−ジカルボキシレートなど。脂環式エポキシドの混合物も使用できる。
【0017】
本発明に従って出発原料として使用するのに適当なヒドロキシ官能性化合物は、少なくとも1個のシクロアルカン単位を含む。このシクロアルカン単位は約4〜約8個、好ましくは約4〜約6個の炭素原子と少なくとも約2個のヒドロキシル部分を含んでなるのが有利である。より好ましくは、シクロアルカン単位はシクロヘキサン単位である。ヒドロキシル官能性化合物は分子当たり1個又はそれ以上のシクロアルカン単位を有することができる。好ましくは、ヒドロキシ官能性化合物は1個のシクロアルカン単位を含む。
【0018】
本発明に好ましい態様において、出発原料として使用するのに適当なヒドロキシ官能性化合物は、式:
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、R3及びR4は、酸素と結合できる有機部分であり、G10〜G20は水素、フェニル又は炭素数1〜約10の置換若しくは非置換アルキル若しくはアルケン基であり、m及びnは0〜約30の値を有し、シクロヘキサン環上のR3及びR4の相対位置は1,2又は1,3又は1,4である]
を有する。本発明の好ましい態様において、R3及びR4はメチレン単位(即ち、−CH2−)であり、G10〜G20は水素であり、シクロヘキサン環上のR3及びR4の相対位置は1,3若しくは1,4又は1,3と1,4との混在である。ヒドロキシ官能性化合物の混合物も使用できる。
【0021】
一般に、本発明に従って使用するのに適当なヒドロキシ官能性化合物としては、少なくとも1個のシクロアルカン単位を含むアルコール、グリコール、ポリオール及びポリマー化合物が挙げられる。本発明に従って使用するのに適当なヒドロキシ官能性化合物のいくつかの具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。1,2−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、及びそれらの混合物。
【0022】
前述のような酸官能性及びエステル官能性化合物を含む多くのヒドロキシ官能性化合物が市販されている。当業者ならば、このようなヒドロキシ官能性化合物の製造に使用できる合成化学の手法を熟知している。
【0023】
有利には、本発明の脂環式エポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂の総重量(脂環式エポキシド+ヒドロキシ官能性化合物)に基づき約10〜約95重量%の、好ましくは約20〜約90重量%の、より好ましくは約40〜約90重量%脂環式エポキシドと、典型的には約5〜約90重量%、好ましくは約10〜約80重量%、より好ましくは約10〜約60重量%のヒドロキシ官能性化合物との反応生成物を含む。
【0024】
本発明の脂環式エポキシ樹脂の製造に使用する個々の方法は重要ではない。適当な方法としては、欧州特許出願公開第0 479 166 A1に開示されたようなエステル交換及び米国特許第5,268,489号に開示されたようなエポキシ化が挙げられる。これらの特許文献の教示を引用することによって本明細書に組み入れる。
【0025】
本発明の脂環式エポキシ樹脂をエステル交換によって製造する場合には、脂環式エポキシドエステル、例えばアルキル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートをヒドロキシ官能性化合物及び任意の触媒と合する。次いで、この混合物をバルクで、又は任意の溶媒で希釈して攪拌して、ヒドロキシ官能性化合物に所望の量の脂環式エポキシドエステルを反応させるのに有効な時間の間、加熱する。一般に、アルコールのような任意の副生成物は、蒸留又はアルゴン若しくは窒素のような乾燥ガスのパージによって除去するのが有利である。副生成物の除去を促進するために、副生成物と共沸混合物を形成する溶媒を場合によっては使用できる。反応は完了させることもできるし、或いはエポキシ官能性化合物の混合物を生成するために部分的に完了させることもできる。
【0026】
エポキシド基のヒドロキシル基に対する出発モル比は、任意の所望の比であることができる。多くのエポキシ置換基を有する生成物まで実質的に完全に転化させるのが望ましい場合には、エポキシド対ヒドロキシルの出発モル比は1より大きい、好ましくは約1超〜約3、最も好ましくは約1.1〜約2でなければならない。過剰の脂環式エポキシド出発原料を用いる場合には、その過剰はもしあれば、反応の完了時に真空条件下で蒸留によって容易に除去できる。或いは、残留モノマー含量が低い生成物が望ましい場合には、1未満、好ましくは約0.9〜約0.99、より好ましくは約0.95〜約0.98のエポキシド対ヒドロキシル出発モル比を用いるのが有利である。部分エポキシド置換のみを有し且つ若干の残留ヒドロキシル官能基を含む生成物が望ましい場合には、実質的に1未満、好ましくは約0.2〜約0.9、より好ましくは約0.4〜約0.85のエポキシド対ヒドロキシル出発モル比を用いるのが有利である。いずれの場合においても、しかしエポキシド対ヒドロキシルのモル比が実質的に1未満である場合においては特に、生成物のオリゴマー化とそれに付随する粘度の増加及び官能基の減少をもたらし得る過剰の温度及び反応時間を回避するように注意するする必要がある。
【0027】
エステル交換反応は、エステル交換を実施するのに有効な温度、例えば約50〜約250℃、好ましくは約70〜約200℃の温度において実施できる。エステル交換反応を完了させるための時間は典型的には、使用する温度及び関係する個々の成分に応じて、約10分〜約40時間又はそれ以上であろう。好ましい反応時間は約1〜約16時間である。エステル交換は、周囲圧力、減圧又は加圧下で実施できるが、約0.001〜約1.5気圧の圧力で実施するのが好ましい。使用する個々のプロセスパラメーターは、使用する個々の成分、バッチサイズ及び他の変数(その詳細は当業者には知られている)によって決まるであろう。
【0028】
エステル交換反応を触媒するために触媒を使用できる。エステル交換反応に有用な触媒は当業者によく知られており、その多くは商業的に入手が容易である。エステル交換反応に有用な触媒の例は以下の通りである。弱酸の塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸セシウム、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸鉛、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸亜鉛、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸ナトリウム、酪酸カリウム、イソ酪酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、及び酢酸の他の金属塩;炭酸及びカルボン酸;アルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、亜鉛メトキシド、カルシウムメトキシド、セシウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、カリウムn−ブトキシド、ナトリウムi−プロポキシド、リチウムエトキシド及びシアン化カリウム;シアン化ナトリウム;金属シュウ酸塩;水素化カルシウム;フッ化セシウムなど。チタン(IV)i−プロポキシドも使用できる。所望ならば、触媒の混合物も使用できる。触媒は典型的には、出発ヒドロキシ官能性化合物中のヒドロキシル基の総モルに基づき0.0001〜5モル%、好ましくは0.001〜1モル%の量で使用する。好ましい触媒としては、酢酸ナトリウム及びチタン(IV)イソプロポキシドが挙げられる。触媒は全てを一度に反応塊に添加することもできるし、同一又は異なるサイズであることができる別個の部分に分けて添加することもできるし、或いは全反応時間にわたって又は反応時間の一部において連続的で均一な方法又は不均一な方法で添加することもできる。例えば、反応体の総重量%に関して約30重量%のヘプタン溶媒を用いる酢酸ナトリウムのような触媒の場合には、適当な反応温度は通常、約100℃〜約150℃、好ましくは約110℃〜約130℃である。ナトリウムメトキシドのアルコール溶液のようなより反応性の触媒に関しては、適当な反応温度ははるかに低くすることができ、通常は約−40℃〜約100℃、好ましくは約−10℃〜約80℃であることができる。
【0029】
任意の溶媒は反応混合物中に残すこともできるし、或いは反応の最後に蒸留によって又は当業者に知られた他の方法によって除去することができる。
【0030】
水の存在は一般に反応には有利ではなく、場合によっては、触媒の添加前に水の除去を容易にするために出発原料の予備乾燥を、例えば、合した反応成分を溶媒の沸点において水共沸溶媒と共に加熱することによって実施できる。或いは又は更に、加熱反応混合物に乾燥ガスをパージすることによって、分子篩で処理することによって又は当業者に知られた任意の他の方法によって乾燥を実施できる。
【0031】
エポキシ化反応を用いてエポキシ樹脂を製造する場合には、種々の型のエポキシ化剤を使用できる。これらのエポキシ化剤は、過酸化水素及び酢酸のような有機酸並びに場合によっては硫酸のような触媒から現場で形成することもできるし、オゾン及びアセトアルデヒドのようなアルデヒドから現場で(その場で)形成することもできるし、過酸として予備形成し且つ使用することもできるし、或いはジメチルジオキシランなどのようなジオキシランの形態で使用することもできる。エポキシ化の実施に使用できる過酸の例は、過安息香酸、過酢酸、過プロピオン酸、過カプロン酸、過モノクロロ酢酸、メタ−クロロペルオキシ安息香酸、過酪酸、過乳酸、過モノコハク酸、t−ブチル過安息香酸などである。使用する場合には、過酸は通常、酢酸エチルのような溶媒に溶解させて、爆発又は他の危険を最小にする。
【0032】
エポキシ化反応において、不飽和脂環式化合物、例えばジ−又はマルチヒドロキシ官能性化合物の3−シクロヘキサンカルボン酸エステルを約5℃未満〜約90℃、好ましくは約10℃〜約80℃、最も好ましくは約20℃〜約70℃の温度においてエポキシ化剤と反応させる。反応に必要な時間は、装入する個々の反応体及び温度(その詳細はエポキシ化化学の技術に熟練した者にはよく知られている)に応じて変わるであろう。典型的な反応圧力は約0.1〜約10atmである。一般に、過酸溶液は、純粋な形態の又は好ましくは酢酸エチルのような適当な不活性溶媒中に溶解された出発原料を含む反応器に注意深く且つ非常にゆっくりと添加し、比較的一定の反応温度に保持する。反応は場合によっては、異なる設定温度及び配置の一連の反応容器中で実施できる。過酸の添加速度は、所望の最大温度を超えないものでなければならない。起こる発熱酸化反応は、反応塊を所望の反応温度に冷却することによって制御する。過酸の添加速度は、温度制御を維持するために、必要ならば減少又は停止させる。例えば実験室において氷/水浴が利用できる際には、反応の急冷方法が通常は利用可能になり、それを保持する。次いで、反応生成物を場合によっては、水で1回又はそれ以上洗浄して、副生成物、例えば、過酢酸を用いる場合には酢酸、及び酸化剤を除去する。生成物を、形成された有機酸及び溶媒の真空ストリッピングによって単離する。場合によっては、生成物を水で1回又はそれ以上洗浄することができる。所望ならば、生成物は再溶解し、従来の技術を用いた真空ストリッピング、蒸留又は他の回収方法によって再び単離することができる。エポキシ化に関する更なる詳細は、当業者には知られている。
【0033】
本発明の好ましい態様において、脂環式エポキシ樹脂は式:
【0034】
【化4】

【0035】
[式中、R1及びR2は二価の有機部分であり、同一であっても異なってもよい]
を有する。好ましい脂環式エポキシ樹脂は主鎖にシクロヘキシル環を含み、それはR1及びR2によってエポキシシクロヘキシル基から隔てられる。好ましくは、R1及びR2は炭素数1〜約30の置換又は非置換部分である。より好ましくは、R1及びR2は独立してアルキレン、エステル、アルキルエステル、エーテル又はアルコキシ部分である。好ましくは、R1及びR2は同一であり、メチレンエステルである。G1〜G29は好ましくは水素又はメチル、好ましくは−Hである。G21〜G29は脂環式エポキシド出発原料のC1〜C9に由来することに留意されたい。最も好ましくは、R1及びR2は、
【0036】
【化5】

【0037】
から独立して選ばれる。
【0038】
本発明の方法に使用できる好ましい脂環式エポキシ樹脂の例としては、下記式に示されるものが挙げられる:
【0039】
【化6】

【0040】
一部の用途に関しては、色又は純度を向上させるために本発明のエポキシ樹脂を更に処理するのが望ましい場合がある。例えば本発明のエポキシ樹脂は、触媒残渣の除去のために水洗及び乾燥によって処理できる。
【0041】
本発明の脂環式エポキシ樹脂は、幅広い種類の最終用途に、例えばLED封入剤、食品及び飲料容器用の被覆、自動車被覆、一般金属被覆、化粧被覆、電子機器被覆、例えばコンパクトディスク及び光ディスクの保護被覆など、並びに自動車、住宅及び電子業界において使用されるインキ、成形品、シーラント及び接着剤として使用できる。
【0042】
被覆は種々の公知の方法によって適用できる。その例は、スプレーコーティング、ロールコーティング、浸漬被覆、はけ塗りなどである。被覆は、配合される個々の系に応じて、放射線、熱、空気乾燥などを含む種々の公知技術によって硬化させることができる。
【0043】
本発明の脂環式エポキシ樹脂のカチオン性紫外線硬化性被覆組成物は、改善された靭性を有する、即ち、改善された可撓性及び高い硬度を有する。改善された可撓性は、被覆された鋼サンプルが曲げられ且つレトルト内で加熱処理される場合に特に明白である。好ましい脂環式エポキシ樹脂を含む無水物硬化組成物は、封入鋼ワッシャーを熱サイクルに供する場合に改善された耐亀裂性を有するという事実によって示されるような改善された靭性を有する。
【0044】
本発明の脂環式エポキシ樹脂は、製品上の被覆の靭性、例えば、屈曲時の耐亀裂性を増大させるための方法に有利に使用できる。その結果、本発明の脂環式エポキシ樹脂から製造された被覆は、物質を所望の形状に形成する前に基材に適用して製品を形成する場合に特に有用であることができる。この形成技術は、ビール及び飲料容器、食品容器並びに他の硬質容器の製造において一般的である。更に、本発明の脂環式エポキシ樹脂から製造された被覆は、高い加水解安定度を有することができ、そのため、例えば製品の消毒のためのレトルト処理を受ける用途に適する。
【0045】
化学線、好ましくは紫外線で硬化可能な被覆の製造においては、脂環式エポキシ樹脂は、他の脂環式エポキシド、ノボラックエポキシドなど;ビニルエーテル;アクリレート及びメタクリレート;ポリオール;オニウム塩、ジアゾニウム塩又は他のカチオン性光開始剤;並びに所望ならば、界面活性剤;油;充填剤及び当業者に知られた他の添加剤と合することが多い。配合された被覆は、粘度を低下させ且つ適用特性を向上させるための不活性溶剤若しくは反応性希釈剤、或いは配合された被覆の粘度を高め且つそれをスクリーン印刷又は他の操作において有用にするための不活性ポリマー、ヒュームドシリカなどを含むことができる。被覆は一般に、約220〜400ナノメーターの放射線を有する中圧水銀灯からの紫外線波長に暴露することによって硬化させる。このような追加材料の選択及び量に関する更なる詳細は、当業者には知られている。例えば、米国特許第5,268,489号を参照されたい。この特許の開示を参照することによって本明細書中に引用する。光硬化性組成物は典型的には、光開始剤を除いて、約25%〜100%の脂環式エポキシ樹脂、0%〜約60%の他のヒドロキシル含有化合物、0%〜約75%の他の脂環式若しくは他のエポキシド、0%〜約60%のビニルエーテル及び0%〜約60%のアクリレートを含む。
【0046】
熱硬化性組成物は、適当な触媒、例えば硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、燐酸及び燐酸のアルキル誘導体、マレイン酸、トリメリット酸、トリフリック酸、トリフリック酸の塩、例えばトリフリック酸のジエチルアンモニウム塩、トリフリック酸のアンモニウム塩、トリフリック酸の第一錫塩、オクタン酸第一錫、硝酸ウラニル、オクタン酸亜鉛など並びにこれらの触媒の混合物を含むことができる。熱硬化性組成物は典型的には、触媒を除いて、約25%〜100%の脂環式エポキシ樹脂、0%〜約60%の他のヒドロキシル含有化合物及び0%〜約75%の他の脂環式又は他のエポキシドを含む。熱硬化性組成物はまた、他の成分、例えば1種又はそれ以上の界面活性剤、流動及びレベリング剤、ヒュームドシリカ、シリコーン油及び他のスリップ剤、並びに当業者に知られた、被覆に適当な他の成分を含むことができる。熱硬化は典型的には、一般に約50℃〜約275℃、好ましくは約90℃〜約200℃の適当な温度において、乾燥フィルムを得るのに充分な時間、加熱することによって実施する。一般に、この時間は約1分〜約2時間の範囲であろう。
【実施例】
【0047】
以下の実施例及び比較例は、本発明を説明するために示すのであって、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。特に断らない限り、全ての部及び%は重量基準である。
出発原料:
【0048】
【化7】

【0049】
MECと、樹脂Aについては1,4−シクロヘキサンジメタノールとの並びに樹脂Cについては1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体を含む混合物とのエステル交換による樹脂A及び樹脂Cの製造をそれぞれ、実施例1及び2に記載する。
【0050】
実施例1
樹脂A:1,4−シクロヘキサンジメタノールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造
MEC 2163.5g(13.87当量)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)1000g(13.87当量)及び酢酸ナトリウム1.2654g(400ppm)をガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に凝縮器及びトラップ、機械的撹拌機並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを3L/分の速度で反応器の内容物にパージし、内容物を反応の間、機械的撹拌機を用いて連続的に攪拌する。反応器の内容物を130℃に加熱し、同温度に3.5時間保持すると同時に、エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収する。反応の生成物を樹脂Aとする。
【0051】
樹脂Aは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間12.9分の材料を4.6%、1,4−CHDMのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間約12.8分の材料91.5%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.4分の材料3.9%を含む。樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、206及び196.1g/エポキシド当量である。樹脂のエポキシド当量の実験値はその理論値よりも5.3%高い。室温に冷却後に樹脂は結晶化する。
【0052】
実施例2
樹脂C:1,4−シクロヘキサンジメタノールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸エステル)液体の製造
1,4−CHDMの代わりに1,3−CHDM及び1,4−CHDM異性体を含む混合物を用いる以外は、実施例1の方法を繰り返す。生成物のエポキシ樹脂、樹脂Cは室温で液体であり、結晶を形成しないように見える。
【0053】
樹脂Cは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間13.6分の材料を2.8%、1,3−及び1,4−CHDM異性体のジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間15.3分の材料92.8%、1,3−及び1,4−異性体であると考えられるGPC保持時間17.3分の材料1.7%並びにMECと考えられるGPC保持時間18.2分の材料3.2%を含む。この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、207及び196.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも5.7%高い。樹脂のサンプルを25℃の水浴中で平衡化後のブルックフィールド粘度(モデルDV−1+,#3スピンドル,20rpm)は2,000cpsである。
【0054】
実施例3
蒸留樹脂Aの製造
この実施例は、樹脂Aの蒸留を記載する。蒸留樹脂Aは、本発明のエポキシ樹脂の別の例である。
【0055】
樹脂Aを実施例1に記載したようにして製造し、薄膜蒸発器を通る2つのパスを用いて蒸留する。薄膜蒸発器を通る第1のパスの間には、235℃の油循環浴温度、1.0mmHgの真空及び300g/時の供給速度(コールドフィンガーを用いない)を用いる。
【0056】
第1のパスから約85%の黄色生成物が得られる。エポキシ樹脂は、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間13.1〜13.4分の材料2.8%並びに1,4−CHDMのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間14.5分の材料96.61%を含む。
【0057】
薄膜蒸発器を通る第2のパスの間には、255℃の油循環浴温度、<1.0mmHgの真空、温度10℃の水循環を有するコールドフィンガー及び100〜150g/時の供給速度を用いる。
【0058】
蒸留によって約50%の無色生成物が得られる。蒸留樹脂Aは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間12.9〜13.1分の材料0.5%、1,4−CHDMのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間14.0分の材料97.2%並びに蒸留の間に形成された低分子量化合物と考えられるGPC保持時間15.1〜16.3分の材料2.3%を含む。この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、221及び196.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも12.7%高い。
【0059】
実施例4
チタン(IV)イソプロポキシド触媒を用いた樹脂A−Ti:1,4−シクロヘキサンジメタノールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造
MEC 375.0g(2.4当量)及び1,4−CHDM 190.36g(1.32当量)を、3つ口ガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に、短路凝縮器及びトラップ、磁気攪拌棒並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを反応器の内容物に2L/分の速度でパージし、反応の間は内容物を磁気攪拌棒を用いて連続的に攪拌する。反応器の内容物を150℃に加熱し、圧力ロックシリンジを用いて2.05g(0.0072当量)(3600ppm)のチタン(IV)イソプロポキシド触媒を装入する。エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器を150℃に3時間保持する。反応の生成物はエポキシ樹脂であり、これを樹脂A−Tiとする。
【0060】
樹脂A−Tiは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間12.6〜13.4分の材料12%、1,4−CHDMのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間15分の材料86.5%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.4分の材料0.7%を含む。
【0061】
この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、218.2及び196.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも11.3%高い。
【0062】
実施例5
樹脂E:トランス−1,2−シクロヘキサンジオールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造
MEC 122.5g(0.784当量)、トランス−1,2−シクロヘキサンジオール50.1g(0.4312当量)及び酢酸ナトリウム0.0643g(0.000784当量)(372ppm)を3つ口ガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に、短路凝縮器及びトラップ、磁気攪拌棒並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを反応器の内容物に1L/分の速度でパージし、反応の間は内容物を磁気攪拌棒を用いて連続的に攪拌する。エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器の内容物を130℃に加熱し、同温度に3時間保持する。反応の生成物はエポキシ樹脂であり、これを樹脂Eとする。
【0063】
樹脂Eは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間12.6〜13.4分の材料18.1%、トランス−1,2−シクロヘキサンジオールのエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間15分の材料86.5%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.4分の材料0.7%を含む。
【0064】
この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値は、それぞれ、202.7及び196.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は理論値よりも3.3%高い。
【0065】
実施例6
樹脂D:1,4−シクロヘキサンジオールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造
MEC 250g(1.6当量)、1,4−シクロヘキサンジオール102.22g(0.88当量)及び酢酸ナトリウム0.1313g(0.0016当量)(373ppm)を3つ口ガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に、短路凝縮器及びトラップ、磁気攪拌棒並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを反応器の内容物に2L/分の速度でパージし、反応の間は内容物を磁気攪拌棒を用いて連続的に攪拌する。エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器の内容物を130℃に加熱し、同温度に3時間保持する。反応の生成物はエポキシ樹脂であり、これを樹脂Dとする。
【0066】
樹脂Dは、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間13.6〜14.4分の材料7.35%、1,4−シクロヘキサンジオールのジエポオキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間15.36分の材料89.1%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.4分の材料1.84%を含む。
【0067】
この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値は、それぞれ、201.4及び196.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも2.7%高い。
【0068】
実施例7
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチルを用いた樹脂B:ビス[(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル]1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの製造
THBOH 169.2g(1.54当量)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル150g(1.50当量)及びp−トルエンスルホン酸(PTSA)0.4788gを3つ口ガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。乾燥窒素ガスを約0.2L/分の速度で反応器の内容物にパージする。エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器の内容物を165℃に加熱し、同温度に合計約57時間保持する。反応生成物を蒸留によって精製する。この生成物は、C−13 NMRスペクトロスコピーを用いて同定されたジエンとモノエンの混合物を含む。生成物を、過酢酸を用いてエポキシ化して、エポキシ樹脂を得る。このエポキシ樹脂、樹脂Bはジエポキシドとモノエポキシドとの混合物を含む。
【0069】
実施例8
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた樹脂B−1の製造
THBOH 294.3g(2.67当量)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸200g(2.32当量)及びシュウ酸第一錫0.1780gをガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に、凝縮器及びトラップ、機械的撹拌機並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを約0.38L/分の速度で反応器の内容物にパージし、反応の間、内容物を機械的撹拌機を用いて連続的に攪拌する。エステル化反応からの水副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器の内容物を180℃に加熱し、同温度に合計6時間保持する。反応生成物を蒸留によって精製し、次いで過酢酸を用いてエポキシ化して、エポキシ樹脂、樹脂B−1を得る。GC分析から、エポキシ樹脂がジエポキシド約95.8%及びモノエポキシド5.1%含むことが検出される。液体クロマトグラフィー分析から、エポキシ樹脂がエポキシド92.3%及びオリゴマー7.1%を含むことが検出される。
【0070】
比較エポキシ樹脂例
比較例9〜11に記載した、MEC及びポリオールのエステル交換によって製造したエポキシ樹脂の主成分化合物を以下に示し、樹脂F、樹脂G及び樹脂Hとする。同様にしてMEC及び他のポリオールのエステル交換によって製造した他のエポキシ樹脂を表Iに記載する。
【0071】
【化8】

【0072】
比較例9
樹脂F:1,6−ヘキサンジオールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造(本発明の実施態様ではない)
MEC 390.0g(2.50当量)、1,6−ヘキサンジオール147.5g(2.50当量)及び酢酸ナトリウム0.22g(409ppm)をガラス反応フラスコ(反応器)中に量り入れる。反応器に、凝縮器及びトラップ、機械的撹拌機並びに窒素パージ用開口部を装着する。乾燥窒素ガスを2.1L/分の速度で反応器の内容物にパージし、反応の間、内容物を機械的撹拌機を用いて連続的に攪拌する。エステル交換反応からのメタノール副生成物をトラップ中に回収しながら、反応器の内容物を130℃に加熱し、同温度に3.0時間保持する。反応後、内容物をガラス容器に注ぎ込み、室温まで冷ます。
【0073】
樹脂は、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間が13.9分の材料5.4%、1,6−ヘキサンジオールのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間15.25分の材料92.4%、並びにMECと考えられるGPC保持時間17.4分の材料0.93%を含む。この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、191及び183.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも4.4%高い。サンプルを25℃の水浴中で平衡化させた後の樹脂のブルックフィールド粘度(モデルDV−1+,#3スピンドル,20rpm)は225cpsである。
【0074】
比較例10
樹脂G:トリプロピレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造(本発明の実施態様ではない)
MEC 1460.5g(9.36当量)、トリプロピレングリコール990g(10.30当量)及び酢酸ナトリウム0.98g(400ppm)を出発原料として用い且つ保持の時間を3.5時間とする以外は、比較例9の手法を繰り返す。
【0075】
樹脂は、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間が12.9分の材料23.4%、トリプロピレングリコールのジエポキシド及びモノエポキシドと考えられるGPC保持時間14.3分の材料70.7%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.2分の材料4.4%を含む。この樹脂は、トリプロピレングリコールのジエポキシドと考えられるGC保持時間22.5分の材料を57.6%、トリプロピレングリコールのモノエポキシドと考えられるGC保持時間17.9分の材料30.6%、トリプロピレングリコールと考えられるGC保持時間11.9分の材料5%並びにMECと考えられる10.8分及び11.1分に2つのGCシグナルを有する材料6.9%を含む。この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、263及び220.1g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも19.4%高い。サンプルを25℃の水浴中で平衡化させた後の樹脂のブルックフィールド粘度(モデルDV−1+,#3スピンドル,20rpm)は450cpsである。
【0076】
比較例11
樹脂H:プロポキシル化トリメチロールプロパンのビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル)の製造(本発明の実施態様ではない)
プロポキシル化トリメチロールプロパンを、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて洗浄する。次いで、有機相を乾燥させる。
【0077】
MEC 436.4g(2.80当量)、洗浄し且つ乾燥したプロポキシル化トリメチロールプロパン305g(1.98当量)及び酢酸ナトリウム0.30g(405ppm)を出発原料として用い、窒素パージの速度が2L/分であり且つ保持の時間が3.75時間である以外は比較例9の手法を繰り返す。
【0078】
樹脂は、エポキシドオリゴマーと考えられるGPC保持時間が12.5分の材料7%、プロポキシル化トリメチロールプロパンのエポキシドと考えられるGPC保持時間14.3分の材料92.1%並びにMECと考えられるGPC保持時間17.5分の材料0.89%を含む。この樹脂のエポキシド当量の実験値及び理論値はそれぞれ、256及び226.6g/エポキシド当量である。この樹脂のエポキシド当量の実験値は、理論値よりも12.8%高い。サンプルを25℃の水浴中で平衡化させた後の樹脂のブルックフィールド粘度(モデルDV−1+,#5スピンドル,20rpm)は10,700cpsである。
【0079】
【表1】

【0080】
市販の比較エポキシ樹脂を表IIに記載する。
【0081】
【表2】

【0082】
硬化性組成物の製造
実施例1〜8に記載した本発明の脂環式エポキシ樹脂を用いて、本発明のUV被覆組成物を製造する。比較例9〜11並びに表I及びIIに記載した比較エポキシ樹脂を用いて、比較UV被覆組成物を製造する。他の被覆成分は表IIIに記載する。
【0083】
【表3】

【0084】
組成物の硬化及び試験
Fusion UV Systems,Inc.によって供給されるコンベヤ搬送式UVユニットを用いてUV被覆を硬化させる。使用UV球は、300W/inの水銀UV球である。
【0085】
食品用缶端の作成に用いる無錫鋼(TFS)を、Weirton Steelから入手し、切断してパネルにする。UV被覆配合物を、No.2.5の線巻ロッドを用いて厚さ4〜5マイクロメーターでTFSパネル上に適用する。被覆は、100フィート/分(fpm)のコンベヤ速度を用いることによって得られる150mJ/cm2のエネルギー密度を用いて紫外線硬化させる。
【0086】
UV硬化を用いる缶端製造操作においては、典型的には紫外線硬化性被覆を最初にTFS又はブリキシートに適用し、被覆されたシートを、コンベヤ搬送式UV硬化ユニットに通して、被覆を硬化させる。次いで、衛生的な溶剤系被覆を、シートの反対側に適用する。次に、これらのシートを、溶剤系被覆の硬化に使用される熱オーブンに通す。溶剤系被覆の典型的な硬化プロファイルは、204℃で10分間であることができる。UV被覆を、缶端の製造の間に溶剤系被覆の硬化に使用される熱プロセスに暴露する。UV被覆が前述のように製造プロセスの間に熱プロセスに暴露されることが予想される場合には、UV被覆を熱プロセスに暴露した後にUV被覆を試験するのが賢明である。
【0087】
試験方法
本発明のUV被覆及び比較UV被覆は全て、UV硬化後にオーブン中で204℃において10分間加熱する。熱プロセス後に、被覆サンプルを、可撓性及び硬度に並びに表示される場合には更に耐溶剤性に関して試験する。
【0088】
可撓性
UV被覆の可撓性を、レトルト・ウェッジベンド法を用いて測定する。ATSM D3281−84に従ってウェッジベンド機器を用いて、TFSパネルを曲げ、鋼の粒子に垂直に衝撃を与える。曲げたパネルを、オートクレーブの蒸気相中に入れ、脱イオン水を用いて121℃で1時間処理する。処理後の湾曲部に沿った亀裂の長さを測定し、亀裂長として記録する。被覆の可撓性は、亀裂長に反比例する。
【0089】
硬度
UV被覆の硬度を、Konig振り子硬度計測器を用いて測定する。振り子を、被覆表面と接触させて置き、次いで動かす。振り子の振幅の減衰に必要な時間(秒)を、この計測器で測定し、被覆硬度として記録する。被覆硬度は、この計器によって測定される時間と比例する。
【0090】
耐溶剤性
UV被覆の耐溶剤性を、メチルエチルケトン(MEK)で飽和された綿棒で被覆を摩擦することによって測定する。被覆を溶解させるのに必要な、綿棒を用いた摩擦の回数を、耐MEK性として記録する。
【0091】
表面硬化速度
表面硬化速度を、綿球法を用いて測定する。表面硬化速度の実験に使用する基材は、Lenetaによって供給される、アルミ箔がラミネートされたペーパーカードである。表面硬化速度の測定に用いるサンプルは、No.2.5の線巻バーを用いてUV被覆を基材に4〜5ミクロンの厚さに適用することによって製造する。所定のコンベヤ速度で操作されるUVユニットにサンプルを通し、次いでサンプルがUV硬化室から出た直後に綿球を被覆表面に接触させて置くことによって、被覆の表面硬化速度を測定する。被覆表面は、綿繊維が被覆表面に付着しなかった場合に硬化していると判定する。サンプルが硬化する最大コンベヤ速度が測定されるまで、コンベヤ速度を調整し、実験を繰り返す。最大コンベヤ速度(フィート/分(fpm))を表面硬化速度として記録する。
【0092】
封入剤の亀裂
実験室用濾紙から、ペーパーリングを直径1/4インチに切断する。ペーパーリングを、実験室用アルミニウム秤量皿の底に置く。鋼ワッシャー(直径1/4インチ)を、ペーパーリング支持体の上に置く。無水物硬化組成物を、DABCOを70℃において脂環式エポキシ樹脂中に溶解させることによって製造する。TONE 0301ポリオール及びMHHPAを、このエポキシ樹脂に添加し、充分に混合する。試験するエポキシ/無水物組成物をそれぞれ、鋼ワッシャー上に注ぐ。サンプルを150℃のオーブン中に4時間置き、次いでオーブンをオフにし、冷却する。オーブンを室温まで冷ました後、サンプルをオーブンから取り出し、目視検査して、封入剤中の亀裂の程度を確認する。
【0093】
UV被覆試験の結果
表IV〜IXは、UV被覆配合物及び試験結果を含む。
【0094】
表IVにおいては、エポキシ樹脂をUVR−6110と50/50w/wでブレンドし、このブレンドを用いてUV被覆組成物を製造する。高濃度のUVR−6110は典型的にはUV被覆をより硬くするが、より曲げにくくする。
【0095】
【表4】

【0096】
本発明の被覆はNo.10〜12である。比較被覆はNo.1〜8及び13である。被覆10〜12は、被覆1−8よりも良好な可撓性を有し、被覆10〜12は。表IV中の最も硬い被覆の中に入る。被覆13は、被覆10〜12よりも曲げやすいが、軟質である。意外にも、被覆10〜12は、硬度及び低亀裂長(可撓性)の組合せが、比較材料と比べて優れている。
【0097】
表Vにおいては、エポキシ樹脂はTONE 0301ポリオールとブレンドする。典型的には、高濃度のTONEポリオール0301は被覆をより曲げやすく(且つ)より軟質にする。
【0098】
【表5】

【0099】
本発明の被覆はNo.22〜24である。比較被覆はNo.14〜24である。被覆22〜24は被覆14〜21よりも曲げやすかった。被覆22〜24もまた、表V中の最も硬質なものの中に含まれる。被覆17の硬度は、被覆22〜24と同様であるが、被覆17ははるかに曲げにくい。
【0100】
表VIにおいて、本発明の被覆は、No.32及び33である。比較被覆はNo.25〜31及び34〜36である。被覆32及び33は、表VI中の最も曲げやすく且つ最も硬質の被覆である。被覆34の可撓性は被覆32及び33と同様であるが、被覆34ははるかに軟質である。被覆25の硬度は被覆32及び33と同様であるが、被覆25ははるかに曲げにくい。
【0101】
樹脂M、樹脂A及び樹脂Cは、エポキシド当量値がそれぞれ、205、206及び207g/エポキシド当量であることが実験的に求められる。エポキシド当量値のわずかの差では、3種の樹脂間における性能の大きい差を説明することができない。被覆31は極めて軟質である。しかし、被覆31はレトルト内加熱処理に対して抵抗性ではなく、被覆31は、ウェッジ曲げ後のレトルト内加熱処理の間に、樹脂A及び樹脂Cをそれぞれ含む被覆32及び32よりも多くの亀裂を生じる。意外なことに、硬度が改善されたにもかかわらず、被覆32及び33は被覆31に比較して改善されたレトルト・ウェッジベンド特性を有する。レトルト・ウェッジベンド試験は、可撓性、付着性及び高温水抵抗性の組合せを測定する。
【0102】
【表6】

【0103】
表VII中の被覆は、硬化の間に種々のUVエネルギー密度(照射線量)をもたらす種々のコンベヤ速度を用いて硬化させる。被覆はまた、種々の周囲相対湿度において硬化させる。被覆はまた、TFSパネルへの適用前に種々の温度に加熱する。これらの実験は、被覆可撓性に対する、エネルギー密度又はコンベヤ速度、硬化時の周囲相対湿度及び適用時の被覆温度の影響を判定するために行う。
【0104】
本発明の被覆は、No.40である。比較被覆はNo.37〜39である。被覆40は、表VII中で最も曲げやすい被覆である。一部の例では、被覆はレトルト内加熱処理の間にふくれを生じるように見えるが、配合又は硬化条件の調整によりこの問題は解決できる場合がある。
【0105】
被覆38においてはポリオールとして1,4−CDHMを用いる。被覆40は樹脂Aを含み、エポキシ樹脂主鎖中に1,4−CHDMを含む。被覆38は、レトルト・ウェッジベンド条件下において被覆40ほどは曲げやすくない。従って、エポキシ樹脂主鎖の一部として1,4−CHDM残基を有するのがより有利である。
【0106】
【表7】

【0107】
表VIII中の被覆は、エポキシ樹脂、カチオン性光開始剤及び界面活性剤のみを含む。可撓性を与えるために被覆中にポリオールを用いない。本発明の被覆は、No.42〜44である。比較被覆はNo.41である。
【0108】
UVR−6110は、エポキシド当量が約137g/エポキシド当量である。UVR−6110を含むがポリオールを含まない被覆は、UVR−6110のエポキシド当量が低いため、硬質であるが脆い。
【0109】
樹脂Aは、エポキシド当量の実験値が約207g/エポキシド当量である。蒸留樹脂Aは、樹脂Aよりも高純度の異性体であり、エポキシド当量の理論値から約196〜約207g/エポキシド当量の範囲のエポキシド当量値を有すると予想されるであろう。従って、樹脂A及び蒸留樹脂Aのエポキシド当量値は、UVR−6110のエポキシド当量値の約1.5倍の大きさである。
【0110】
エポキシド樹脂A及び蒸留樹脂Aのエポキシド当量値の方が高く且つUVR−6110のエポキシド当量値の方が低いため、被覆42〜44は被覆41よりはるかに曲げやすい。被覆42、43及び44の硬度値は被覆41と同様である。
【0111】
【表8】

【0112】
本発明の被覆はNo.47〜49である。比較被覆はNo.45及び46である。被覆47〜49は、被覆46よりも曲げやすく且つ硬質である。被覆47〜49は、被覆45よりも曲げやすいが、軟質である。
【0113】
【表9】

【0114】
無水物硬化組成物の試験結果
表X中の無水物硬化組成物を、前述のようなワッシャー熱サイクル試験(封入剤亀裂)において試験する。組成物No.50は本発明の組成物である。組成物No.51は比較組成物である。組成物50は、熱サイクル後に鋼ワッシャーの近くにおいて組成物51よりも亀裂が少ない。これは、組成物50が組成物51よりも強靱であることを示している。
【0115】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品上における硬化脂環式エポキシ樹脂を含む被覆の靭性を増大させる方法であって、前記エポキシ樹脂として式:
【化1】

[式中、R1及びR2は二価の有機部分であり、同一であっても異なってもよい]
の化合物を用いることを含んでなる方法。
【請求項2】
前記脂環式エポキシ樹脂が約40〜約95重量%の脂環式エポキシドカルボン酸エステルと約5〜約60重量%のヒドロキシ官能性化合物との反応生成物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1が、
【化2】

である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1が、
【化3】

である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1及びR2がそれぞれ
【化4】

である請求項1に記載の脂環式エポキシ樹脂。
【請求項6】
1〜G29のそれぞれが水素である請求項1に記載の脂環式エポキシ樹脂。
【請求項7】
有効量の光開始剤並びに下記式:
【化5】

[式中、R1及びR2は二価の有機部分であり、同一であっても異なってもよい]
のエポキシ樹脂を含んでなる光硬化性組成物。
【請求項8】
有効量の熱活性化開始剤並びに下記式:
【化6】

[式中、R1及びR2は二価の有機部分であり、同一であっても異なってもよい]
のエポキシ樹脂を含んでなる熱硬化性組成物。
【請求項9】
LED封入剤配合物である請求項8に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−510772(P2007−510772A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537988(P2006−537988)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029996
【国際公開番号】WO2005/044890
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】