説明

ろ過媒体

本発明は、鉱物糸からなる織布1を含むろ過媒体であり、その織布1は、ニードリングによって高分子ステープルファイバ2で被覆される。ここで、ろ過媒体の少なくとも一面に(特に、その流入面に)施される多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなる隔膜を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードリング手段によって高分子ステープルファイバで被覆されている鉱物糸からなる織布を含むろ過媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなろ過媒体は、ごみ焼却場、セメント窯及び石炭炉のような、例えば高温ガス作業における工業流体流をろ過するために用いられる。本発明によるろ過媒体を、例えばバグフィルタシステムに用いることができ、この場合、ろ過媒体からなるろ過用バックをサポートケージ全体に被せる。時間が経過すると、テキスタイルろ過材をクリーニングする必要があり、ろ過材に堆積されている埃の固まりを取り除く必要がある。
【0003】
非常に効果的なクリーニング方法は、「パルスジェット」と言われる方法であり、この場合、圧縮空気のパルスによって、テキスタイルフィルタを動かし、その結果、埃の塊をフィルタから落とすことができる。このクリーニング処理で、ろ過媒体は、ステープルフィルタが織布から解れ得るリスク及び/又は織布がダメージを受け得るリスクを伴う高レベルの機械的ストレスを受ける。
【0004】
この背景に先立って、欧州特許出願公開第0962243(A2)号明細書では、特に、高い寸法安定性、耐温性及び耐化学性を特徴とする上記タイプのろ過媒体について開示している。ステープルファイバによる薄い被覆にもかかわらず、織布が解れることが実質上不可能であるため、このような加圧ステップ後の織布における横破れは本質的に考えられない。その結果として、評価は、横破れを防ぐために必要な横方向ステープルファイバの必要最小限を下回らない。
【0005】
ろ過媒体の機械的な安定性を向上させるために、欧州特許出願公開第0391660(A1)号明細書では、多孔質発泡ポリテトラフルオロエチレンからなる膜と、同様にポリテトラフルオロエチレンからなる裏地と、裏地にニードリングされた、同様にポリテトラフルオロエチレンからなるステープルファイバとを有するフィルタ積層体について開示している。ステープルファイバは、接着剤として働くフッ素化ポリマーによって膜に接着される。
【0006】
最後に、欧州特許出願公開第1862208(A1)号明細書では、玄武岩ファイバを含む裏地を有するろ過媒体について開示しており、これによって、裏地の少なくとも一面には高分子ステープルファイバが設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、解れるリスク又は横破れのリスクを伴うことなく高レベルの機械的ストレスに耐えることができるように、上記タイプのろ過媒体を改良するための目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的に達するために、ろ過媒体が請求項1に記載の実質的な部分の特徴を有する場合、本発明は、主に、ろ過媒体の少なくとも一面(特に流入面)に積層される多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなる膜を設ける。
【0009】
これに関連して、驚くことに、ろ過媒体へのステープルファイバの塗膜がかなり薄い場合であってもステープルファイバは織布から剥離されず、よって、繊維複合体自体が剥離されないことを見出した。欧州特許出願公開第0391660(A1)号では、そもそも、ステープルファイバが、678g/m〜881g/mの非常に高い単位面積当たりの重量範囲を既に有しており、その結果、ステープルファイバが強く固定されて、織布から解れるリスクをなくしている故に、欧州特許出願公開第0391660(A1)号によるフィルタ積層体を使うと、上記問題は起こらない。
【0010】
さらに、膜を織布に積層することを、繊維複合体を織布に更に固定することに変えている。高い重量百分率にある高分子ステープルファイバを有する積層ろ過材と比べると、この場合、織布が事実上ファイバで被覆されている故に、上記有利な効果を奏することができない。
【0011】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項に記載の内容である。
【0012】
本発明によると、膜が、12.7mmの水柱圧下で少なくとも0.01m/m/hの通気性を有する多孔質発泡ポリテトラフルオロエチレンからなり得る。このような膜製品について、欧州特許出願公開第0391660(A1)号を同様に参照する。
【0013】
これに関して、接着剤の手段によってろ過媒体に接着される膜が特に有利である。ここで、織布への繊維複合体の固定化が更に改良されるまで、接着剤がろ過媒体に浸透することを見出した。
【0014】
用いられる接着剤の一例は、欧州特許出願公開第0391660(A1)号に記載のタイプのフッ素化ポリマーの接着剤であり、また、接着剤の適用方法も上記書類に記載されている。
【0015】
本発明の実施形態によると、ろ過媒体の織布は、ガラスファイバを含むことができ、又は、ガラスファイバからなり得る。この場合、ガラスファイバは、裏地の機能を果たすのみならず、それらが形成する織布の密度によりろ過機能も果たす。ステープルファイバが、ガラスファイバにとってきつい曲率半径が原因で座屈することを防ぐ点において、ステープルファイバは、ろ過媒体の横破れを防ぐために役立つ。
【0016】
代替的に又は追加的に、本発明によると、織布が、玄武岩糸例えばフィラメント糸を含んでもよく、玄武岩糸例えばフィラメント糸からなってもよい。
【0017】
本発明によって提供される玄武岩糸は、玄武岩メルトから工業規模で一般的に入手される玄武岩糸を連続的に引き抜くことができる。玄武岩糸は、600℃(華氏1112度)を超える高い温度耐性を示す。玄武岩ファイバ又は玄武岩糸の更なる製造方法は、例えば独国特許出願公開第2909148(A)号及び独国特許出願公開第3509424(A1)号に記載されている。
【0018】
ガラス職布と比較して、本発明によって用いられる玄武岩糸は、優れた温度安定性及び優れた寸法安定性を示す。物理的特性となると、これらは、10μm以下の糸径及び140以下のテックスを有する。比重は、2.6kg/dm〜2.8kg/dmである。織布の縦方向及び横方向での機械的強度は、1000N/5cmより大きい。
【0019】
本発明によって用いられる玄武岩糸は、すぐに生分解しない天然物である。原料は大量で入手可能なため、特に、単一成分生産工程を必要とするため、製品が安くなる。玄武岩糸の化学的影響及び機械的影響への耐性は強く、これは、それ自体がろ過媒体用に非常に役立つことを意味する。
【0020】
本発明によると、織布が、玄武岩糸及びガラス糸又はガラスファイバを有することも同様に考えられ、その結果、玄武岩糸の有利な性質をガラス糸の性質と組み合わせることができる。
【0021】
生産技術の立場からすると、本発明の一実施形態によって、織布が、玄武岩糸及び/又はガラスファイバからなる(例えば多層の形態にある)縦糸及び横糸の織り合わせたストランドを含むと特に有利である。縦糸ストランドは、多数の別個の平行のフィラメントを含むことができ、また、横糸ストランドも多数の別個の平行のフィラメントを含むことができる。別個の縦糸及び別個の横糸は、互いに平行して横たわることができ、厚くないまとまった織布を形成することができる。
【0022】
十分な強度を織布構造に分け与えるために、製織技術の手段によって、縦糸及び横糸は、織って接する様々なクロス点において接合される。さらに、平織り又は綾織りも、もじり織りも可能である。玄武岩糸及び/又はガラスファイバから繊維を作るために、様々な製織技術及び布地厚さが用いられる。
【0023】
図面に言及する一実施形態の以下の説明から、本発明の更なる目的、利点及び応用の可能性を見出すことができる。これに関して、記載及び/又は描写された全ての特徴が(記載された特徴及び描かれた特徴のいずれか、又は、任意の有意義な組み合わせ)、(請求項又は後で参照する請求項における寄せ集めに関係なく)本発明の内容を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるろ過媒体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は、本発明によるろ過媒体の構造を示す。図示のろ過媒体は布材ないしは織布1を有し、この実施形態において、織布1は織り合わされたガラスファイバを含む。ろ過媒体の全重量におけるガラスファイバ織布の重量百分率は、例えば70重量%〜85重量%の範囲である。したがって、その厚さにより、従来の裏地を必要としない十分な縦方向強度を有するため、織布1は、既にその上でろ過機能を果たすことができる。
【0026】
織布1は、PTFEからなる少量のステープルファイバで被覆されており、その結果として、ろ過媒体は、例えば1.5mmの厚さを有する。これらのニードリング(針打ち)されたステープルファイバ2は、織布1を形成するガラスファイバにおけるきつい曲率半径を防ぎ、したがって、横破れを避ける。
【0027】
織布1は、350g/m以上の単位面積当たりの重量及び少なくとも0.5mmの厚さを有するように密に織られたものである。ガラスファイバは、0.8デシテックス〜最大8デシテックスの繊度及び少なくとも20mmのカット長を有する。ニードリングステップの後、ろ過媒体は、150℃(華氏302度)以上の温度処理が施され、よって、ステープルファイバ2が収縮し、互いに対してかつ織布1に固定され得る。さらに、バスの中でPTFEステープルファイバをもって行われるニードリング処理の後、ろ過媒体に、PTFEステープルファイバにざらつきを与える塗膜を設けることができる。
【0028】
また、織布1は、玄武岩糸を更に含む、又は、玄武岩からなることができる。同様に、織布1は、玄武岩糸及び、ガラス糸又はガラスファイバを含むと考えることができる。
【0029】
織布が玄武岩のみからなる場合、ろ過媒体の全重量における、玄武岩糸からなる織布1の重量百分率は、例えば50%〜80%の範囲にある。したがって、その厚さにより、従来の裏地を必要としない十分な縦方向強度を有するため、織布1は、既にその上でろ過機能を果たすことができる。
【0030】
玄武岩糸の織布1は相対的安価で作ることができ、これによって、玄武岩糸は、機械的又は化学的な影響への高いレベルでの耐性を示すことができる。特に、玄武岩織布は、ガラス職布より高い溶融温度を有し、これによって、ろ過媒体の耐用寿命に有利な効果を与える。他に、玄武岩糸は、水及び他の液体への極めて低い吸収挙動を示す。
【0031】
ここで選ばれた実施形態における織布1に、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる少量の高分子ステープルファイバが設けられており、その結果として、ろ過媒体は、例えば1.5mmの厚さをもたらす。これらのニードリングされたステープルファイバ2は、織布1を形成する玄武岩糸におけるきつい曲率半径を防ぎ、その結果、横破れを避ける。
【0032】
織布1は、250g/mを超える単位面積当たりの重量及び少なくとも0.5mmの厚さを有するように密に織られたものである。
【0033】
ニードリング処理の後、玄武岩ファイバを含むろ過媒体は、100℃(華氏212度)以上の温度処理が更に施され、したがって、ステープルファイバ2が収縮し、互いに対してかつ織布1に固定され得る。さらに、バスの中で高分子ステープルファイバを持って行われるニードリング処理の後、ろ過媒体に、PTFEステープルファイバにざらつきを与える塗膜を設けることができる。
【0034】
好ましくは、ろ過媒体のこの実施形態において更に、多孔質発泡ポリテトラフルオロエチレンからなる膜3が、その流入面において積層されており、この処理において、フッ素化ポリマーからなる接着剤4が用いられる。ここで、ろ過媒体の高い機械的な柔軟性及び耐熱応力性と相まって、織布1での繊維複合体の固定化がより一層向上されるまで、接着剤4がろ過媒体に浸透されていることを示している。
【0035】
現段階で、明確性のために、接着剤4及び膜3がろ過媒体の他の寸法に対して大きい寸法にあるという説明に注目すべきである。
【符号の説明】
【0036】
1…織布、2…ステープルファイバ、3…膜、4…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードリング手段によって高分子ステープルファイバ(2)で被覆されている鉱物糸からなる織布(1)を含むろ過媒体において、
多孔質ポリテトラフルオロエチレンからなる膜(3)が、当該ろ過媒体の少なくとも一面に、特にその流入面に積層されていることを特徴とする、ろ過媒体。
【請求項2】
前記膜(3)が、12.7mmの水柱圧下で少なくとも0.01m/m/hの通気性を有する多孔質発泡ポリテトラフルオロエチレンで作られていることを特徴とする、請求項1に記載のろ過媒体。
【請求項3】
前記膜(3)が、接着剤(4)によって当該ろ過媒体に接合していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のろ過媒体。
【請求項4】
前記接着剤(4)が、フッ素化ポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載のろ過媒体。
【請求項5】
前記織布(1)が、ガラスファイバを含む、又は、ガラスファイバからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項6】
前記織布(1)が、玄武岩糸を含む、又は、玄武岩糸からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項7】
前記玄武岩糸が、繊維糸及び/又はフィラメント糸であり、特にマルチフィラメント糸であることを特徴とする、請求項6に記載のろ過媒体。
【請求項8】
前記織布(1)が、玄武岩糸及び/又はガラスファイバを含む縦糸及び横糸を含む、又は、玄武岩糸及び/又はガラスファイバを含む縦糸及び横糸からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項9】
前記織布(1)が、250g/m〜600g/mの、特に400g/m〜500g/mの単位面積当たりの重量を有する粗糸及び糸を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項10】
前記織布(1)が、複数の層又は積層を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項11】
当該ろ過媒体の全重量における、高分子ステープルファイバ(2)の百分率は、40重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項12】
前記織布(1)が、250g/m以上の単位面積当たりの重量及び少なくとも0.5mmの厚さを有すること、及び
前記ステープルファイバ(2)が、0.5dtex〜10dtexの繊度、好ましくは0.9dtex〜7dtexの繊度、及び、少なくとも20mmのカット長を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項13】
前記ステープルファイバ(2)が、ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項14】
前記ステープルファイバ(2)の表面が、前記ニードリング処理後に施された高分子塗膜によって粗くなっていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項15】
前記塗膜が、ポリテトラフルオロエチレン被覆有機フィラーを含むことを特徴とする、請求項14に記載のろ過媒体。
【請求項16】
前記有機フィラーのように合成ケイ酸が与えられることを特徴とする、請求項15に記載のろ過媒体。
【請求項17】
布の形態をとることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のろ過媒体。
【請求項18】
バッグ又はポーチの形態をとることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のろ過媒体。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−502756(P2011−502756A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532505(P2010−532505)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009513
【国際公開番号】WO2009/062666
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510112729)エムゲーエフ グートシェ ウント コムパニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング−ベトリーブス−コマンディート ゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】