説明

アイオノマーおよびそれを用いた物品

カーペット用クッションはポリマー組成物層をカーペット用クッションにもしくはその上に接着させており、ポリマー組成物層は、脂肪酸変性アイオノマーを含み、本質的にそれからなり、それからなり、またはそれから生成され、エチレン含有ポリマーとブレンドまたは共押出されていてもよく、アイオノマーはエチレンコポリマーおよび脂肪酸を含み、本質的にそれからなり、それからなり、またはそれから作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の脂肪酸またはその塩を含むアイオノマー組成物およびそれを用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットには一般に、糸ストランドが突き出ている基布層の下に、発泡体クッション層(カーペット下敷きまたはパッドとも呼ばれる)が設けられている。クッションによって、人の往来(foot traffic)が吸収され、カーペットは感触がよくなり、より長持ちする。クッションは品質が向上すると、湿気を遮断し、汚れおよび臭気に対処し、部屋間の音伝達を最小限に抑え、断熱を実現し、また床とカーペットとの間の空気の流れを増大して、よりうまくより効率的な掃除を実現する。カーペット用クッション材としては、ウレタンフォーム、黄麻、合成繊維、フェルト、発泡ゴム、またはスポンジゴムを挙げることができる。ボンデッドウレタンフォームまたはリボンデッドウレタンフォームは、おそらく最も一般的なクッションであり、再生ポリウレタンから生成され、通常の高弾性ウレタンまたは変性ウレタンであり得る。
【0003】
利用可能な市販の変形には、カーペット用クッションとその表面に接着させたポリマーフィルムとの組合せがある。こうしたポリマー層は、クッション自体およびひいては下張り床への湿気の流入に対して完全なバリアを形成してもよい。このバリアの利点は、汚れ全体をカーペットから取り除くことが容易になることでカーペットの清浄性を向上することである。しかし、湿気を透過することができ、または通気性とすることができ、それによってクッションの含水量が激減し、かつクッション中で微生物が増殖するのを防止できることが極めて望ましい。
【0004】
さらに、カーペット用クッションで使用されるポリマーは、一般に石油化学系である。リサイクルまたは再生可能性のためにバイオベースとすることができ、または環境に優しくすることができるカーペット用クッションを開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
カーペット用クッションはフィルムもしくはシート層を含み、またはフィルムもしくはシート層をカーペット用クッションにもしくはその上に接着させており、フィルムもしくはシート層は、エチレン含有ポリマーと場合により共押出(coextruded)もしくはブレンドされた脂肪酸変性アイオノマーを含み、本質的にそれからなり、それからなり、またはそれから生成される。「カーペット」という用語は、当業者に周知であるカーペットとラグとを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
大文字で商標を示す。
【0007】
「から生成される」という用語は、記載されていない要素をいずれも排除しないということを表す、限定されない用語である。例えば、複合体が酸コポリマーと脂肪酸とを含み、またはそれらから生成されるとき、酸コポリマーが脂肪酸と反応しない場合には、その組成物は酸コポリマーと脂肪酸とを含む可能性がある。酸コポリマーが脂肪酸と反応して、別の単位を生成する場合には、反応後に残存する酸コポリマーがほとんどまたはまったくないならそれは不正確であるので、組成物は酸コポリマーと脂肪酸とから生成される。
【0008】
本明細書に開示されるカーペットは、いずれかの市販カーペットとすることができる。
【0009】
脂肪酸変性アイオノマーは、エチレン酸コポリマーから誘導することができる。こうした酸コポリマーは、エチレンと、不飽和カルボン酸もしくはC3~8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と、場合により軟質化モノマーとから誘導される繰返し単位を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなることができる。カルボン酸としては、C1〜C4アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn−ブチルアルコール)のエステルを含めて、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸(マレイン酸半エステル)、またはそれらの2つ以上の組合せを挙げることができる。(メタ)アクリル酸には、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの組合せが含まれる。軟質化モノマーは、コポリマーの結晶性を低下させる。軟質化モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキルは1〜8個の炭素原子を有する)を挙げることができる。(メタ)アクリレートは、メタクリレート、アクリレート、またはそれらの組合せを意味する。酸コポリマーの一例は、E/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンであり、Xはカルボン酸であり、Yは軟質化コモノマーである)である。Xは、ポリマーに対して3〜30(4〜25または5〜20)重量%で存在し、かつYは、ポリマーに対して0〜30(3〜25または10〜23)重量%で存在することができる。
【0010】
酸コポリマーは、ビニルアセテート、(メタ)アクリレート、またはそれらの2つ以上の組合せなど1つまたは複数のコモノマーから誘導される繰返し単位を含んでもよい。
【0011】
酸コポリマーの一例をE/X/Yコポリマーとして記述することができる。ここで、Eはエチレンであり、Xは、上記に開示された少なくとも1つの不飽和カルボン酸とすることができ、Yは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはそれらの組合せなどの軟質化コモノマーである。Xは、E/X/Yコポリマーに対して約3〜約30重量%、4〜25重量%、または5〜20重量%で存在することができ、かつYは、E/X/Yコポリマーに対して0〜約35重量%、0.1〜35重量%、または5〜30重量%で存在する。
【0012】
酸コポリマーの例としては、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington, Delaware)(DuPont)から市販されているNUCREL(登録商標)など、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸n−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸イソ−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸tert−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレンマレイン酸およびエチレンマレイン酸モノエステルコポリマー、エチレンマレイン酸モノエステルn−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレンマレイン酸モノエステルメチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレンマレイン酸モノエステルエチル(メタ)アクリレートコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0013】
酸コポリマーは、米国特許第5028674号明細書に開示されているようなものなど当業者に周知である方法のいずれによってでも生成することができる。このような方法は非常によく知られているので、簡潔にするため、本明細書での説明は省略する。
【0014】
1つまたは複数の酸コポリマーを、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンで部分または完全中和することで、酸コポリマーからアイオノマーを調製する。中和は、酸コポリマーの酸部分(acid moiety)の約15〜約80%、約50〜約75%、約60〜約100%、または100%とすることができる。金属イオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくは亜鉛、またはそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0015】
脂肪酸としては、36個未満の炭素原子を有するものなどモノ官能性(飽和、不飽和または多重不飽和)脂肪族脂肪酸を挙げることができる。これらの脂肪酸の塩を使用してもよい。こうした塩としては、バリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウム、またはそれらの2つ以上の組合せを挙げることができ、あるいは酸コポリマーを中和するのに使用したものと同じであってもよい。
【0016】
脂肪酸(および脂肪酸塩)を酸コポリマーまたはアイオノマーと溶融ブレンドしてもよい。100%中和(コポリマーと脂肪酸中のすべての酸が中和されている)では、C4からC36未満、C6からC26、C6からC18、またはC6からC12の脂肪酸を含めて、炭素含有量のより低い脂肪酸を使用することができる。脂肪酸の例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、またはそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0017】
溶融ブレンドと同時に、またはそれに引き続いて、酸コポリマーおよび脂肪酸の中和を実施することができる。酸コポリマーまたはそのアイオノマーと上記に開示された1つまたは複数の脂肪酸を溶融ブレンドし、続いて溶融ブレンドと1つまたは複数の金属イオン源を化合させることで、脂肪酸変性アイオノマーを生成することができる。イオン源の量は、上記に開示された所望の中和度をもたらすことができる量である。溶融ブレンドは、当業者に周知である(例えば、成分のごま塩状ブレンドを作製することができ、次いで成分を押出機中で溶融ブレンドすることができる)。また、Werner & Pfleiderer二軸押出機を使用して、酸コポリマーと脂肪酸とを同時に中和することができる。
【0018】
脂肪酸変性アイオノマーは、(酸コポリマーおよび脂肪酸に由来する)中和対象の全酸部分の少なくとも約70%(あるいは、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも95%)または約100%さえも有することがある。
【0019】
得られる熱可塑性の脂肪酸変性アイオノマー組成物は、脂肪酸(または脂肪酸塩)およびアイオノマーを含み、または本質的にそれらからなる。こうした脂肪酸変性アイオノマーの市販品の例は、HPF100としてDuPontから入手可能である。
【0020】
組成物は、1つまたは複数の追加のポリマーを組成物に対して約30〜約70重量%、約30〜約60重量%、約35〜約60重量%、約40〜約55重量%、約40〜約50重量%、または約50重量%含んでもよい。あるいは、組成物は、エチレン含有ポリマーを約1〜約70重量%、約2〜約60重量%、または約5〜約50重量%含むことができる。
【0021】
また、組成物は、顔料(TiO2および他の相溶性着色顔料)、染料、フレーク、可塑剤、接着促進剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および/または酸化ケイ素)、核剤(例えば、CaCO3、ZnO、SiO2、またはそれらの2つ以上の組合せ)、ゴム(天然ゴム、SBR、ポリブタジエン、および/またはエチレン−プロピレンターポリマーなどゴム様弾性を改善するためのゴム)、安定化剤(例えば、抗酸化剤、紫外線吸収剤、および/または難燃剤)、加工助剤、またはそれらの2つ以上の組合せを含めて、さらに添加剤を(組成物に対して)約0.1〜約20%重量%、約2〜約12重量%、または約1〜5重量%含んでもよい。抗酸化剤としては、Ciba Geigy Inc.(Tarrytown, New York)からのIRGANOXなどのフェノール系酸化防止剤も挙げることができる。
【0022】
例えば、組成物は、DuPontから市販されているCONPOLなどの表面改質添加剤を含んでもよい。
【0023】
エチレン含有ポリマーとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度PE、極低密度PEまたは超低密度PE、メタロセンPE;エチレン−プロピレンコポリマー;エチレン/プロピレン/ジエンモノマーターポリマー;およびエチレンとアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、一酸化炭素(CO)、無水マレイン酸、マレイン酸エステルなどのマレイン酸誘導体、またはそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択された少なくとも1つのコモノマーとの共重合から誘導されるエチレンコポリマーなどのポリエチレン(PE)ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0024】
本明細書に記載される組成物に有用なPEホモポリマーおよびコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒重合(米国特許第4076698号明細書および米国特許第3645992号明細書)、メタロセン触媒重合、Versipol(登録商標)触媒重合およびラジカル重合など種々の周知の方法で調製することができる。
【0025】
適当なPEの密度は、約0.865g/cc〜約0.970g/ccの範囲である。
【0026】
ブタジエン、ノルボルナジエン、ヘキサジエンおよびイソプレンなど少量のジオレフィン成分を有するエチレンコポリマーも、一般に好適である。エチレン/プロピレン/ジエンモノマーなどのターポリマーも好適である。
【0027】
エチレン含有ポリマーとしては、エチレンとビニルアセテート、アルキル(メタ)アクリレート、CO、またはそれらの2つ以上の組合せとから誘導される繰返し単位を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなるコポリマーも挙げることができる。
【0028】
エチレンビニルアセテートコポリマーとしては、エチレンとビニルアセテートとの共重合から誘導されるコポリマー、またはエチレンとビニルアセテートと追加のコモノマーとの共重合から誘導されるコポリマーが挙げられる。エチレンビニルアセテートコポリマー中のビニルアセテートコモノマーの量は、全コポリマーの約1〜約45重量%とすることができる。例えば、エチレンビニルアセテートコポリマーの2〜45重量%または6〜30重量%をビニルアセテートから誘導してもよい。エチレンビニルアセテートコポリマーを、無水マレイン酸またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いた変性を含めて、当技術分野で周知である方法で変性してもよい。エチレンビニルアセテートコポリマーの溶融流量は、ASTM D−1238に従って測定して0.1〜60g/10分または0.3〜30g/10分であってもよい。異なる2つ以上のエチレンビニルアセテートコポリマーの混合物を使用することができる。
【0029】
エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーとしては、エチレンと少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分は、1〜12個または1〜4個の炭素原子を含む)とのコポリマーが挙げられる。エチレン/メチルアクリレートは、エチレンとメチルアクリレート(EMA)とのコポリマーを意味し、エチレン/エチルアクリレートは、エチレンとエチルアクリレートとのコポリマー(EEA)を意味し、エチレン/ブチルアクリレートは、エチレンとブチルアクリレートのコポリマー(EBA)を意味する。
【0030】
エチレンコポリマーに組み込まれるアルキル(メタ)アクリレートコモノマーは、全コポリマーに対して約2または5〜約40重量%と変わることができる。アルキル(メタ)アクリレートコモノマーは、(メタ)アクリレートモノマーの濃度範囲がエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー中5〜40重量%または10〜35重量%とすることができる。エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、オートクレーブまたは管型反応器を使用してポリマー技術分野において周知の方法で調製することができる。オートクレーブ中で、連続工程として共重合を行うことができる。米国特許第2897183号明細書に開示されたものなど撹拌装置を備えたオートクレーブに、エチレン、アルキル(メタ)アクリレート、および場合によりメタノールなどの溶媒(例えば、米国特許第5028674号明細書)を、開始剤と共に連続供給する。これらの開示内容は、参照により本明細書に援用され、この説明は、簡潔にするため本明細書では省略される。
【0031】
管型反応器によって生成されたエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、当技術分野で周知であるオートクレーブによって生成されたエチレン/アルキル(メタ)アクリレートを識別することができる。「管型反応器によって生成された」エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、管型反応器などで、高圧および高温で生成されたエチレンコポリマーを意味する。この場合、それぞれのエチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートコモノマーについて異なる反応速度論の固有の結果は、各モノマーを管型反応器内の反応流路に沿って意図的に導入することによって軽減または部分的に相殺される。こうした管型反応器共重合によって、ポリマー主鎖に沿って相対的不均質度がより高いコポリマーが生成され(よりブロック状のコモノマー分布)、長鎖分枝の存在が低減される傾向があり、かつ撹拌装置を備えた高圧オートクレーブ反応器中、同じコモノマー比で生成されたものより融点が高いことを特徴とするコポリマーが生成される。管型反応器によって生成されたエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、オートクレーブによって生成されたエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーより剛性と弾性が高い。例えば、米国特許第3350372号明細書、米国特許第3756996号明細書、および米国特許第5532066号明細書を参照のこと。
【0032】
管型反応器によって生成されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、ELVALOY(登録商標)としてDuPontから市販されている。
【0033】
組成物は、圧縮成形、射出成形、または押出と成形のハイブリッドなどいくつかの方法で生成することができる。例えば、方法には、アイオノマーとエチレン含有ポリマーとを、任意の添加剤と一緒に高温下で混合して、溶融物を生成して、実質的に均質な化合物を実現するステップを含めることができる。材料は、Banbury、インテンシブミキサー、二軸ロールミル、および押出機など当技術分野で周知である任意の手段を用いて、混合およびブレンドしてもよい。時間、温度、せん断速度を、最適な分散が確実になるように調節することができる。適切な温度が、ポリマーの良好な混合および他の材料の混合または分散を確実にすることが望ましい場合がある。ポリマーを約60℃〜約250℃、または約70℃〜約200℃、または約70℃〜約150℃、または約80℃〜約130℃の温度でブレンドすると、均一なブレンドを生成することができる。
【0034】
ポリマーを、押出機中、約250℃までの温度で溶融ブレンドして、潜在的に良好な混合を可能にしてもよい。次いで、得られた混合物を、上記に開示された材料と混合することができる。
【0035】
混合した後、成形することができる。シーティングロールまたはカレンダーロールを使用して、適切な大きさのシートを作製し、成形することができる場合が多い。押出機を使用して、組成物をペレットに成形してもよい。
【0036】
組成物からフィルム(多層フィルムを含む)を作製することができるが、コーティング、刷毛塗り、浸し塗り、吹付け塗り、共押出、シート押出、押出注型、押出コーティング、サーマルラミネーション、インフレート法、粉体コーティング、および焼結など周知の方法、または任意の周知の方法を使用して、溶融加工することによって行われる。フィルムを作製する方法は当業者に周知であるので、簡潔にするため、本明細書での説明は省略する。フィルムの厚みは、約1〜約500ミクロン、約1〜約250ミクロン、約2〜約200ミクロン、約5〜約150ミクロン、または約10〜約100ミクロンとすることができる。
【0037】
脂肪酸変性アイオノマーを含むポリマー組成物は、エチレン含有ポリマーとブレンドされているか否かにかかわらず、1枚のフィルムまたはシートとすることもでき、エチレン含有ポリマーと共押出を行って、多層フィルムまたはシートを生成することもできる。共押出は、当業者に周知であり、簡潔にするため、説明は省略する。
【0038】
脂肪酸変性アイオノマーを含むポリマー組成物のフィルムは、エチレン含有ポリマーとブレンドまたは共押出されているか否かにかかわらず、外観のため、かつ摩擦係数を低減し、それによってクッションの上のカーペットを単純にするため、着色することができる。
【0039】
ポリマー組成物のフィルムまたはシートまたはコーティングは、厚さ1ミル(0.0254mm)のフィルムでASTM E96に従って測定された水蒸気透過度(WVTR)が、38℃および100%相対湿度(RH)で測定したとき少なくとも約10g/m2/24時間、約15g/m2/24時間、約25g/m2/24時間、または約50g/m2/24時間であり得る。フィルムまたはシートはまた、少なくとも1平方インチ当たり8ポンド(0.56kg/m2)の圧力下、修正ミューレン破裂強さ試験で測定して、液体不透過性を維持するのに十分な程度に耐久性もあり得る。すなわち、カーペット用クッションは、クッションの上側表面の上からフィルムまたはシートまたはコーティング層上に被着した液体を吸収しないが、クッションの下側表面の下からの湿気を空気中に蒸発させる。
【0040】
ポリマー組成物のフィルムまたはコーティングはまた、空気透過性が、厚さ1ミルでOTR(O2透過度)として測定して、少なくとも1,000cc/m2・日、または2,000cc/m2・日、または4,000cc/m2・日、または6,000cc/m2・日でもあり得る。OTRについては、Mocon OX−TRAN 2/21を使用して、38℃および50%RHなど所与の温度および相対湿度で測定することができる。フィルムまたはコーティングは、厚さに応じて、OTRが8,000cc/m2・日を超える、10,000ccc/m2・日を超える、15,000cc/m2・日を超える、20,000cc/m2・日を超える、25,000cc/m2・日を超える、30,000cc/m2・日を超える、または35,000cc/m2・日を超えることがある。
【0041】
以前の透析膜の多くは微孔質である。すなわち、これらには、顕微鏡レベルの微細孔が存在し、それを蒸気が通過するために透過性である。本明細書に開示する組成物は、選択的透過性バリアとして機能するモノリス膜に形成することができる。モノリス膜は、微孔質膜とは対照的に、水浸入圧が高く、防水性および防液性であり、かつ適切な条件下で水蒸気の透過を可能にすると同時に、液体の水に対する良好なバリアを実現することができる。モノリス膜は、通風の流れを止めて、熱損失を最小限に抑えるのに役立つことにも優れている。モノリス膜は、臭気に対するバリアとしても機能し、微孔質膜に比べてよりよい引裂強度を有することができる。
【0042】
製品には、上記に開示されている脂肪酸変性アイオノマーを含むバリア層で被覆、積層、共押出、または塗布されたカーペット用クッション(またはパッド)を含むことができ、あるいはそれから製品を生成することができる。クッションは、上記に開示されているウレタンフォーム、黄麻、合成繊維、フェルト、発泡ゴム、またはスポンジゴムなどいずれの市販カーペット用クッションでもよい。クッションは、その表面またはその一部分が、脂肪酸変性アイオノマー層にも近接しているエチレン含有ポリマー層でブレンドまたは共押出されていてもよい1つまたは複数の脂肪酸変性アイオノマーフィルム層で被覆され、またはそれに近接している。近接しているという意味は、追加の層と脂肪酸変性アイオノマー層の間に測定可能な距離がないか、あるいは約0.001〜約50mmまたは約0.01〜約20mmの距離があるということである。組成物の層は、エチレン含有ポリマー層の層と共押出されているか否かにかかわらず、カーペットとクッションの間に形成することができる。
【実施例】
【0043】
FA変性アイオノマー1:約38%のステアリン酸を含有するアイオノマー組成物;アイオノマーは、エチレン、n−ブチルアクリレート、およびアクリル酸から誘導し、すべての酸基の97.7%をMgイオンで中和した。
【0044】
HYTREL:DuPontから入手可能なエラストマー材料(ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートコポリマー)。
【0045】
ELVALOY AC1609:DuPontから入手可能なエチレンメチルアクリレートコポリマー(9重量%のメチルアクリレート)。
【0046】
FA変性アイオノマー2:21%のステアリン酸を含有し、24%のElvaloy AC 12024と混合させたアイオノマー;アイオノマーは、エチレン、イソブチルアクリレートおよびメタクリル酸から誘導し、すべての酸基の70%をMgイオンで中和した。
【0047】
ELVALOY AC12024:DuPontから入手可能なエチレンメチルアクリレートコポリマー(24重量%のメチルアクリレート)。
【0048】
CONPOL 5B10S1:DuPontから入手可能であり、5%の粘着防止剤および10重量%のスリップ剤と共にエチレンメタクリル酸担体から作製され、ポリマーフィルムまたはコーティングの表面特性を変性するのに使用される濃縮マスターバッチ。
【0049】
本発明のフィルム:FA変性アイオノマー1およびELVALOY AC 1609を含有する組成物を、押出機中でアイオノマーとエチレンアクリレートコポリマーを共押出することによって生成した。共押出構造体には、0.3ミルのELVALOYおよび0.8ミルのFA変性アイオノマー1が含まれていた。押出機の温度(℃)プロファイルを以下の表に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
共押出構造体をバリアフィルム層として、ポリウレタンフォームから生成されたクッションの上に配置することによって、カーペット用クッションを形成した。次いで、FA変性アイオノマー1フィルムがクッションに直接堅く結合するようにクッションを通常の方式で加工した。
【0052】
対照1フィルム:HYTRELとELVALOY AC1609のブレンドからバリアフィルムを作製した点以外は、上記と同じであった。
【0053】
対照2フィルム:フィルムは、0.95ミルのポリプロピレン、0.39ミルのポリエチレン、および0.36ミルのエチレンビニルアセテートコポリマーを含む共押出フィルムに見える市販のポリプロピレンフィルムであった。対照2フィルムは、カーペットパッドで使用される市販のバリアフィルムである。
【0054】
以下の表に示した結果から、本発明のフィルムの物理的諸特性およびバリア特性が市販のカーペットパッドバリアフィルムに匹敵し、またはそれより良好であり、ポリプロピレンとエチレンビニルアセテートの混合物を使用した対照フィルムよりはるかに良好であったことが示唆される。
【0055】
【表2】

【0056】
別に、上述された共押出フィルムを、FA変性アイオノマー2およびCONPOL 5B10S1を含有する組成物から作製した。フィルムをポリウレタンフォーム上に積層して、上記に開示されたカーペット用クッションを作製した。クッションを印刷適性について試験した。
【0057】
IGT印刷適性試験機を使用して、以下の手順に従って、アルコール系フレキソ印刷インクで印刷適性試験を行った。
【0058】
基材をキャリアに取り付け、基材ガイド上で印刷用紙と圧胴の間に配置した。試験機を駆動すると、アニロックスディスクおよび基材は印刷用紙と接触し、ドクターブレードはアニロックスと接触した。ピペットを用いて、インク数滴をドクターブレードとアニロックスの間のニップに加えた。印刷時に、インクは拭き取られ、アニロックスディスクから印刷用紙に移され、印刷用紙から基材に移された。次いで、ドクターブレード、アニロックスディスク、および圧胴は自動的に持ち上げられた。基材を取り外して、評価した。
【0059】
目視観察によって、優れた印刷品質であるとわかった。
【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムまたはシートを含むカーペット用クッションであって、
前記フィルムまたはシートは、クッションに取り付けられ、またはクッションと接触しており;
前記フィルムまたはシートは、組成物を含み;
前記組成物は、脂肪酸変性アイオノマーおよび場合によりエチレン含有ポリマーを含み、またはそれらから生成され;
前記脂肪酸変性アイオノマーは、酸コポリマーおよび脂肪酸を含み、またはそれらから生成され;
前記酸コポリマーは、エチレン、不飽和カルボン酸、および場合により軟質化モノマーから誘導される繰返し単位を含み;
前記カルボン酸は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸、マレイン酸半エステル、またはそれらの2つ以上の組合せを含み;
前記酸コポリマー、脂肪酸、または両方の酸部分は、金属イオンで部分または完全中和され;かつ、
前記エチレン含有ポリマーは、エチレン、および場合によりビニルアセテート、アルキル(メタ)アクリレート、一酸化炭素、無水マレイン酸、マレイン酸誘導体、またはそれらの2つ以上の組合せから誘導される繰返し単位を含む1つまたは複数のポリマーを含む、クッション。
【請求項2】
酸コポリマーおよび脂肪酸の酸部分の約100%が中和されている、請求項1記載のクッション。
【請求項3】
フィルムまたはシートが、クッションと接触しており;
酸コポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソ−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/tert−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸およびエチレン/マレイン酸モノエステルコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/n−ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/エチル(メタ)アクリレートコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せを含み;かつ、
エチレン含有ポリマーは、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンメタクリレートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せを含む、請求項1または2記載のクッション。
【請求項4】
脂肪酸が、1つまたは複数のC6〜C26脂肪酸、好ましくは1つまたは複数のC6〜C18脂肪酸である、請求項1〜3のいずれか1項記載のクッション。
【請求項5】
酸コポリマーが、エチレンおよび(メタ)アクリル酸から誘導される繰返し単位を含み;
組成物が、エチレン含有ポリマーを含み;かつ、
エチレン含有ポリマーが、エチレンビニルアセテートコポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のクッション。
【請求項6】
金属イオンがMgイオンである、請求項1〜5のいずれか1項記載のクッション。
【請求項7】
脂肪酸が、C6〜C12脂肪酸の1つまたは複数である、請求項6記載のクッション。
【請求項8】
組成物をエチレン含有ポリマーと共押出して多層フィルムを生成し、前記エチレン含有ポリマーは請求項1、3、または5のいずれか1項に記載する通りである、請求項6記載のクッション。
【請求項9】
エチレン含有ポリマーが、エチレンメチル(メタ)アクリレートコポリマーを含む、請求項8記載のクッション。
【請求項10】
組成物が、エチレン含有ポリマーを含み、または脂肪酸変性アイオノマーとエチレン含有ポリマーとのブレンドである、請求項9記載のクッション。
【請求項11】
クッションを含むカーペットであって、前記クッションは、請求項1〜10のいずれか1項に記載する通りであるカーペット。
【請求項12】
カーペット用クッションのためのバリア層としてのフィルムまたはシートの使用であって、前記バリア層は、脂肪酸変性アイオノマーおよび場合によりエチレン含有ポリマーを含み、またはそれらから生成され;組成物は、請求項1〜10のいずれか1項に記載する通りである使用。

【公表番号】特表2011−505176(P2011−505176A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533268(P2010−533268)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082762
【国際公開番号】WO2009/062012
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】