説明

アイソレータ

【課題】 除染対象室内および吸気フィルタの除染処理の効率を向上させる。
【解決手段】 吸気フィルタを備えた吸気口および排気フィルタを備えた排気口を有する除染対象室と、前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内に外気を吸気する第1の流路と、前記排気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第2の流路と、前記第1の流路を介して前記除染対象室内に外気を吸気するとともに、前記第2の流路を介して前記除染対象室内の気体を排気する気流を発生させる送風機と、前記吸気フィルタおよび前記排気フィルタを介さずに前記除染対象室内に除染ガスを供給する除染ガス供給部と、前記除染対象室内に前記除染ガスが供給される場合に、前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第3の流路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば細胞培養などの生体由来材料を取扱う作業に用いられるアイソレータでは、作業に必要な物質以外の混入を防止するため、作業室内や作業に必要な物品を搬入するためのパスボックス内などを限りなく無塵・無菌に近い環境(以下、無菌環境と称する)とする必要がある。以下においては、無菌環境を実現するために微生物などを殺滅する処理を除染と称することとし、当該除染処理は、いわゆる殺菌、滅菌、除菌などの処理を含むものとする。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている殺菌液気化装置では、除染処理に用いる除染物質として過酸化水素を用いて、加熱された圧縮エアと過酸化水素水とを噴霧器で混合して霧化させることによって過酸化水素ガスを生成している。
【0004】
このようにして、除染物質を含む過酸化水素ガスなどの除染ガスを生成して、作業室やパスボックスなどの除染対象室内に供給し、除染処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−339829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アイソレータの作業室やパスボックスの吸排気口には、吸排気される気体に含まれる塵埃などの不純物を除去するため、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタやULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタなどのエアフィルタが設けられている。しかしながら、用いられる除染ガスおよびエアフィルタの組み合わせによっては、例えば、除染ガスとして過酸化水素ガスを用い、エアフィルタとしてHEPAフィルタを用いた場合のように、エアフィルタが除染ガスを吸着させやすい性質を有している場合がある。
【0007】
そのため、作業室やパスボックスの吸気口から除染ガスを供給した場合、エアフィルタに除染ガスが吸着してしまい、作業室やパスボックスの除染には、吸着量を見込んだ必要量以上の除染ガスを供給する必要があり、非効率であった。一方、作業室やパスボックスにエアフィルタを介さずに除染ガスを供給した場合、吸気口のエアフィルタ(吸気フィルタ)を十分に除染することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、吸気フィルタを備えた吸気口および排気フィルタを備えた排気口を有する除染対象室と、前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内に外気を吸気する第1の流路と、前記排気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第2の流路と、前記第1の流路を介して前記除染対象室内に外気を吸気するとともに、前記第2の流路を介して前記除染対象室内の気体を排気する気流を発生させる送風機と、前記吸気フィルタおよび前記排気フィルタを介さずに前記除染対象室内に除染ガスを供給する除染ガス供給部と、前記除染対象室内に前記除染ガスが供給される場合に、前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第3の流路と、を有することを特徴とするアイソレータである。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、除染対象室内および吸気フィルタの除染処理の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態におけるアイソレータの構成を示すブロック図である。
【図2】リークテストモードにおける各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmの状態を示すブロック図である。
【図3】除染ガス発生モードにおける各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmの状態を示すブロック図である。
【図4】除染ガス発生モードおよび除染ガス曝露モードにおけるバルブV3の制御を説明する図である。
【図5】除染ガス曝露モードにおける各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmの状態を示すブロック図である。
【図6】除染ガス排気モードおよび無菌運転モードにおける各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmの状態を示すブロック図である。
【図7】アイソレータの他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7に示したアイソレータにおいて、除染ガス発生モードにおける各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmの状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
===アイソレータの構成===
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態におけるアイソレータの構成について説明する。なお、本実施形態では、除染処理に用いる除染物質の一例として、過酸化水素を用い、所定濃度の過酸化水素ガスを除染対象となる空間に一定時間曝露させることで除染効果を得るものとする。
【0014】
図1に示されているアイソレータは、無菌環境で作業を行うための作業室4を除染対象室とし、制御部1a、操作部2a、および除染ガス供給部3aを含んで構成されている。また、作業室4は、(吸気)フィルタF1を備えた吸気口および(排気)フィルタF2を備えた排気口を有し、これらの吸排気口には、パイプやチューブなどで構成される流路P1ないしP3が設けられている。さらに、作業室4内には、当該作業室4の内圧IP1を測定する圧力センサ41が設けられている。なお、フィルタF1およびF2は、吸排気される気体に含まれる塵埃などの不純物を除去するためのエアフィルタであり、例えばHEPAフィルタなどが用いられる。
【0015】
(第1の)流路P1は、フィルタF1を介して作業室4内に外気を吸気するための流路であり、流路P1上には、触媒C1、送風機(ブロワ/ファン)B1、および(第1の)バルブV1が設けられている。また、送風機B1は、例えば遠心式多翼ファンであり、制御信号Sb1に応じて、流路P1を介して作業室4内に外気を吸気する気流を発生させる。そして、当該気流によって、触媒C1を介して外気が流入し、さらにフィルタF1を介して作業室4内に供給される。なお、バルブV1は、送風機B1とフィルタF1との間に設けられ、制御信号Sv1に応じて流路P1を開閉する。
【0016】
(第2の)流路P2は、フィルタF2を介して作業室4内の気体を排気するための流路であり、流路P2上には、送風機B2、触媒C2、および(第2の)バルブV2が設けられている。また、送風機B2は、例えば遠心式多翼ファンであり、制御信号Sb2に応じて、流路P2を介して作業室4内の気体を排気する気流を発生させる。そして、当該気流によって、フィルタF2を介して作業室4内の気体が流出し、さらに触媒C2を介して、過酸化水素(除染物質)が分解/無害化されたうえで外部に排出される。なお、本実施形態では、触媒C2は、除染物質を低減して無害化する無害化部に相当する。また、バルブV2は、触媒C2とフィルタF2との間に設けられ、制御信号Sv2に応じて流路P2を開閉する。
【0017】
(第3の)流路P3は、後述する除染ガス発生モードおよび除染ガス曝露モードにおいてフィルタF1を介して作業室4内の気体を排気するための流路であり、一般に、流路P1およびP2よりも流量が少ない。また、流路P3の一端は、流路P2のうち触媒C2とバルブV2との間に接続され、他端は、フィルタF1に接続され、流路P3上には、(第3の)バルブV3が設けられている。なお、バルブV3は、制御信号Sv3に応じて流路P3を開閉する。
【0018】
除染ガス供給部3aは、タンク31、ボトル32、水位センサ33、噴霧器34、およびフィルタF32を含んで構成され、さらに、パイプやチューブなどで構成される流路P31ないしP33がこれらを接続するように設けられている。
【0019】
流路P31は、タンク31とボトル32との間を接続し、流路P31上には、ポンプPmおよびフィルタF31が設けられている。また、ポンプPmは、できるだけ無塵・無菌で送液するため、例えばペリスタルティック方式のものが用いられ、制御信号Spmに応じて、タンク31に貯蔵された過酸化水素水(除染物質の水溶液)を取り込む。そして、取り込まれた過酸化水素水は、塵埃などの不純物を除去するための(ろ過)フィルタF31を介して噴霧器34側に送液される。
【0020】
なお、ボトル32は、(エア)フィルタF32を介して外気に開放されており、噴霧器34のノズルから過酸化水素ガス(除染ガス)として噴射されなかった過酸化水素水を回収するためのバッファとして機能する。また、ボトル32には、回収された過酸化水素水の水位WL1を測定する水位センサ33が設けられている。
【0021】
流路P32の一端は、流路P31のうちフィルタF31とボトル32との間に接続され、他端は、噴霧器34の下側のポートに接続され、流路P32上には、バルブV31が設けられている。なお、バルブV31は、制御信号Sv31に応じて流路P32を開閉する。
【0022】
流路P33は、噴霧器34に圧縮エア(圧縮気体)を供給するための流路であり、流路P33上には、圧縮機(コンプレッサ)Cm、フィルタF33、およびバルブV32が設けられている。また、圧縮機Cmは、制御信号Scmに応じて、外気を取り込んで圧縮し、当該圧縮エアは、塵埃や水分などの不純物を除去するための(エア)フィルタF33を介して噴霧器34の上側のポートに供給される。なお、バルブV32は、フィルタF33と噴霧器34の上側のポートとの間に設けられ、制御信号Sv32に応じて流路P33を開閉する。
【0023】
操作部2aから制御部1aには、モード選択信号SLmが入力され、制御部1aは、モード選択信号SLmに応じて、後述する運転モードを切り替える。また、制御部1aは、当該運転モードのほか、内圧IP1および水位WL1に基づいて、各バルブ、各送風機、圧縮機Cm、およびポンプPmを制御するための制御信号Sv1ないしSv3、Sv31、Sv32、Sb1、Sb2、Scm、およびSpmを出力する。
【0024】
===アイソレータの動作===
以下、図2ないし図6を適宜参照して、本実施形態におけるアイソレータの動作について説明する。
【0025】
本実施形態のアイソレータの運転モードは、モード選択信号SLmに応じて切り替えられ、作業室4(除染対象室)を除染するための除染運転モード(SLm=1ないし4)と、除染されて無菌環境となった作業室4内で作業を行うための無菌運転モード(SLm=5)とに大別することができる。また、除染運転モードは、リークテストモード(SLm=1)、除染ガス発生モード(SLm=2)、除染ガス曝露モード(SLm=3)、および除染ガス排気モード(SLm=4)からなる。
【0026】
除染運転モードでは、まず、リークテストモードにおいて作業室4の気密性を検査する。当該リークテストモードでは、制御部1aは、図2に示すように、送風機B1、B2、およびポンプPmを停止し、バルブV1ないしV3、およびV31を閉じた状態で、圧縮機Cmを駆動するとともにバルブV32を開く。そして、当該制御によって、除染ガス供給部3aの噴霧器34は、上側のポートに供給された圧縮エアのみをノズルから作業室4内に供給し、作業室4内を加圧する。
【0027】
このように作業室4内を加圧した状態で、制御部1aは、圧力センサ41によって測定される作業室4の内圧IP1に基づいて、作業室4の気密性を判定する。例えば、制御部1aは、所定時間経過後の内圧IP1の低下量が所定の圧力以下の場合に、作業室4の気密性が良好であると判定する。
【0028】
リークテストモードにおいて作業室4の気密性が良好であると判定されると、次に、除染ガス発生モードにおいて作業室4内に過酸化水素ガスを供給する。当該除染ガス発生モードでは、制御部1aは、図3に示すように、リークテストモード時の状態から、ポンプPmを駆動するとともにバルブV31を開き、さらにバルブV3を開閉制御する。
【0029】
当該制御によって、噴霧器34の上側のポートには、リークテストモード時と同様に、圧縮エアが供給される。また、噴霧器34のノズルから圧縮エアが噴射されることによって負圧が発生し、当該負圧によって、噴霧器34の下側のポートには、ポンプPmによってタンク31から噴霧器34側に送液される過酸化水素水が供給される。そして、噴霧器34において圧縮エアと過酸化水素水とが混合され、霧状の過酸化水素水として噴射され、ただちに気化して、過酸化水素ガスとして供給される。
【0030】
このようにして、本実施形態のアイソレータでは、除染ガス発生モードにおいて、フィルタF1およびF2を介さず、作業室4内に過酸化水素ガスを直接供給する。したがって、過酸化水素ガスは、フィルタF1やF2での吸着によって減量されることなく作業室4内に供給されるため、作業室4内の除染処理を効率的に実施することができる。
【0031】
なお、除染ガス供給部3aは、圧縮エアの噴射によって発生する負圧を利用することによって、加熱したり超音波を用いたりすることなく過酸化水素ガスを生成することができる。また、何らかの障害によって噴霧器34への圧縮エアの供給が停止した場合には、ポンプPmによって送液される過酸化水素水は、流路径差による流路抵抗差から、ボトル32で回収され、液体のまま作業室4内に供給されることはない。そして、制御部1aは、水位センサ33によって測定される過酸化水素水の水位WL1が所定の水位以上となると、ポンプPmを停止して、過酸化水素水の送液を停止する。
【0032】
除染ガス発生モードでは、制御部1aは、さらに、作業室4の内圧IP1に基づいてバルブV3を開閉制御している。例えば図4に示すように、内圧IP1が所定の陽圧IPtgを超えるとバルブV3を開き、内圧IP1が所定の陽圧IPtg以下となるとバルブV3を閉じる。そして、バルブV3を開いた際には、作業室4内の過酸化水素ガスがフィルタF1を介して排気される。なお、バルブV3は、バルブV1やV2に比べて許容流量が少なく、その分応答性が良いため、制御部1aは精度よく内圧IP1を制御することができる。
【0033】
このようにして、本実施形態のアイソレータでは、除染ガス発生モードにおいて、作業室4の内圧IP1を所定の陽圧IPtgに調整しつつ、フィルタF1を介して作業室4内の過酸化水素ガスを排気する。したがって、吸気フィルタであるフィルタF1を十分に除染することができる。
【0034】
除染ガス発生モードにおいて作業室4内に過酸化水素ガスを供給した後、除染ガス曝露モードにおいて作業室4内を過酸化水素ガスで曝露する。当該除染ガス曝露モードでは、制御部1aは、図5に示すように、除染ガス発生モード時の状態から、ポンプPmを停止するとともにバルブV31を閉じる。そして、当該制御によって、除染ガス供給部3aは、リークテストモード時と同様に、圧縮エアのみをノズルから作業室4内に供給し、さらに、制御部1aは、除染ガス発生モード時と同様に、作業室4の内圧IP1に基づいてバルブV3を開閉制御する。
【0035】
このようにして、本実施形態のアイソレータでは、除染ガス曝露モードにおいて、除染ガス発生モードにおいて供給された過酸化水素ガスで作業室4内を曝露する。また、除染ガス曝露モードにおいても、作業室4の内圧IP1を所定の陽圧IPtgに調整しつつ、フィルタF1を介して作業室4内の過酸化水素ガスを排気する。したがって、除染ガス発生モードの後に除染ガス曝露モードに移行することによって、タンク31に貯蔵された過酸化水素水の消費を抑制しつつ、作業室4内およびフィルタF1を十分に除染することができる。
【0036】
除染ガス曝露モードにおいて作業室4内を過酸化水素ガスで十分に曝露した後、除染ガス排気モードおいて作業室4内の過酸化水素ガスを排気する。当該除染ガス排気モードでは、制御部1aは、図6に示すように、除染ガス曝露モード時の状態から、送風機B1およびB2を駆動するとともにバルブV1およびV2を開き、バルブV3を閉じ、圧縮機Cmを停止するとともにバルブV32を閉じる。
【0037】
当該制御によって、除染ガス供給部3aは、作業室4内への圧縮エアや過酸化水素ガスの供給を停止する。また、制御部1aは、作業室4の内圧IP1に基づいて、送風機B1およびB2の回転数を制御し、除染ガス発生モード時および除染ガス曝露モード時と同様に、作業室4の内圧IP1を所定の陽圧IPtgに調整する。したがって、流路P1を介して作業室4内に外気が吸気され、流路P2を介して作業室4内の過酸化水素ガスが排気される。そして、この運転を所定時間継続することによって、作業室4内の過酸化水素ガスは、外部の新鮮な空気に置換される。
【0038】
なお、本実施形態のアイソレータでは、排気フィルタであるフィルタF2は、除染ガス排気モードおいて除染されることとなる。また、除染ガス排気モードにおいて作業室4内の過酸化水素ガスを十分に排気した後、無菌運転モードに移行するが、当該無菌運転モード時の制御は除染ガス排気モード時と同様である。
【0039】
===アイソレータの他の構成例===
上記実施形態では、作業室4のみを除染対象室としたが、これに限定されるものではない。例えば図7に示すように、作業室4に加えて、扉52を介して作業に必要な物品を作業室4に搬入するためのパスボックス5を除染対象室としてもよい。なお、作業室4側を除染するための構成は、上記実施形態のアイソレータと同様であり、図7においては、噴霧器34などを除いて省略されている。以下においては、作業室4側を除染するための、上記実施形態と共通する構成は、説明を省略する。
【0040】
図7に示されているアイソレータは、制御部1b、操作部2b、および除染ガス供給部3bを含んで構成されている。また、パスボックス5は、(吸気)フィルタF3を備えた吸気口および(排気)フィルタF4を備えた排気口を有し、これらの吸排気口には、流路P4ないしP6が設けられている。さらに、パスボックス5内には、当該パスボックス5の内圧IP2を測定する圧力センサ51が設けられている。
【0041】
(第1の)流路P4は、フィルタF3を介してパスボックス5内に外気を吸気するための流路であり、流路P4上には、触媒C3、(第1の)バルブV4、および送風機B3が設けられている。一方、(第2の)流路P5は、フィルタF4を介してパスボックス5内の気体を排気するための流路であり、流路P5上には、触媒C4および(第2の)バルブV5が設けられている。また、送風機B3は、例えば軸流式ファンであり、制御信号Sb3に応じて、流路P4を介してパスボックス5内に外気を吸気するとともに、流路P5を介してパスボックス5内の気体を排気する気流を発生させる。なお、パスボックス5の容量は作業室4に比べて小さいため、1つの送風機B3で吸排気を行っている。
【0042】
そして、当該気流によって、触媒C3を介して外気が流入し、さらにフィルタF3を介してパスボックス5内に供給され、フィルタF4を介してパスボックス5内の気体が流出し、さらに触媒C4を介して、過酸化水素が分解/無害化されたうえで外部に排出される。なお、バルブV4は、触媒C3と送風機B3との間に設けられ、制御信号Sv4に応じて流路P4を開閉し、バルブV5は、触媒C4とフィルタF4との間に設けられ、制御信号Sv5に応じて流路P5を開閉する。
【0043】
(第3の)流路P6は、除染ガス発生モードおよび除染ガス曝露モードにおいてフィルタF3を介してパスボックス5内の気体を排気するための流路である。また、流路P6の一端は、流路P5のうち触媒C4とバルブV5との間に接続され、他端は、フィルタF3に接続され、流路P6上には、(第3の)バルブV6が設けられている。なお、バルブV6は、制御信号Sv6に応じて流路P6を開閉する。
【0044】
除染ガス供給部3bは、タンク31、ボトル32、35、水位センサ33、36、噴霧器34、37、およびフィルタF32、F34を含んで構成され、さらに、流路P31ないしP36がこれらを接続するように設けられている。
【0045】
流路P31は、タンク31とボトル32および35との間を接続し、流路P31上には、ポンプPm、フィルタF31、およびバルブV35が設けられている。また、ポンプPmは、制御信号Spmに応じて、タンク31に貯蔵された過酸化水素水を取り込み、(ろ過)フィルタF31を介して噴霧器34および37側に送液する。さらに、バルブV35は、フィルタF31によってろ過された過酸化水素水を、制御信号Sv35に応じて噴霧器34側または噴霧器37側に通過させる。
【0046】
なお、ボトル32は、(エア)フィルタF32を介して外気に開放されており、ボトル32には、過酸化水素水の水位WL1を測定する水位センサ33が設けられている。一方、ボトル35は、(エア)フィルタF34を介して外気に開放されており、ボトル35には、過酸化水素水の水位WL2を測定する水位センサ36が設けられている。
【0047】
流路P32の一端は、流路P31のうちバルブV35とボトル32との間に接続され、他端は、噴霧器34の下側のポートに接続され、流路P32上には、バルブV31が設けられている。一方、流路P34の一端は、流路P31のうちバルブV35とボトル35との間に接続され、他端は、噴霧器37の下側のポートに接続され、流路P34上には、バルブV33が設けられている。なお、バルブV31は、制御信号Sv31に応じて流路P32を開閉し、バルブV33は、制御信号Sv33に応じて流路P34を開閉する。
【0048】
流路P33は、噴霧器34または37に圧縮エアを供給するための流路であり、噴霧器34に接続される流路P35と噴霧器37に接続される流路P36とに分岐している。また、流路P33上には、圧縮機CmおよびフィルタF33が設けられ、流路P35およびP36上には、それぞれバルブV32およびV34が設けられている。さらに、圧縮機Cmは、制御信号Scmに応じて、外気を取り込んで圧縮し、当該圧縮エアは、(エア)フィルタF33を介して噴霧器34または37の上側のポートに供給される。なお、バルブV32は、フィルタF33と噴霧器34の上側のポートとの間に設けられ、制御信号Sv32に応じて流路P35を開閉し、バルブV34は、フィルタF33と噴霧器37の上側のポートとの間に設けられ、制御信号Sv34に応じて流路P36を開閉する。
【0049】
操作部2bから制御部1bには、除染対象室選択信号SLrおよびモード選択信号SLmが入力されている。また、制御部1bは、除染対象室選択信号SLrに応じて、作業室4またはパスボックス5を除染対象室として選択し、モード選択信号SLmに応じて、運転モードを切り替える。また、制御部1bは、除染対象室および運転モードのほか、内圧IP1、IP2、および水位WL1、WL2に基づいて、制御信号Sv1ないしSv6、Sv31ないしSv35、Sb1ないしSb3、Scm、およびSpmを出力する。なお、除染ガス供給部3bは、除染対象室選択信号SLrに応じて選択された除染対象室内に圧縮エアや過酸化水素ガスを供給する。
【0050】
図7に示したアイソレータにおいても、モード選択信号SLmに応じて運転モードが切り替えられ、上記実施形態のアイソレータと同様に制御される。例えば、パスボックス5に対する除染ガス発生モードでは、図8に示すように、除染ガス供給部3bは、噴霧器37の上側のポートに圧縮エアが供給され、下側のポートに負圧によって過酸化水素水が供給され、過酸化水素ガスをパスボックス5内に直接供給する。さらに、制御部1bは、パスボックス5の内圧IP2に基づいてバルブV6を開閉制御して、パスボックス5の内圧IP2を所定の陽圧IPtgに調整しつつ、フィルタF3を介してパスボックス5内の過酸化水素ガスを排気する。
【0051】
前述したように、図1(図7)に示したアイソレータの除染ガス発生モードにおいて、吸気フィルタであるフィルタF1(F3)および排気フィルタであるフィルタF2(F4)を介さず、除染対象室である作業室4(パスボックス5)内に除染ガスである過酸化水素ガスを直接供給し、吸気フィルタを介して除染対象室内の除染ガスを排気することによって、十分な量の除染ガスを除染対象室内に供給することができ、さらに吸気フィルタを十分に除染することができる。したがって、除染対象室内および吸気フィルタの除染処理の効率を向上させることができる。
【0052】
また、除染ガス発生モードにおいて、除染ガス供給部3a(3b)から除染対象室内に除染ガスを供給しつつ、送風機B1およびB2(B3)を停止するとともに当該送風機によって吸気を行う第1の流路P1(P4)および排気を行う第2の流路P2(P5)を閉じた状態で、第3のバルブV3(V6)によって開閉される第3の流路P3(P6)を開くことによって、吸気フィルタおよび第3の流路を介して除染対象室内の除染ガスを排気し、吸気フィルタを十分に除染することができる。
【0053】
また、第2の流路を開閉する第2のバルブV2(V5)よりも排気フィルタから遠い(離れた)側に、除染物質を分解する触媒C2(C4)を設け、第3の流路の一端を当該触媒と第2のバルブとの間に接続し、他端を吸気フィルタに接続することによって、除染ガス排気モード時および無菌運転モード時だけでなく、除染ガス発生モード時および除染ガス曝露モード時に排気される除染ガスに含まれる除染物質も分解して無害化したうえで外部に排出することができる。
【0054】
また、除染ガス発生モードにおいて、圧力センサ41(51)によって測定される除染対象室の内圧IP1(IP2)に基づいて第3のバルブを開閉制御することによって、除染対象室の内圧を所定の陽圧IPtgに調整しつつ、吸気フィルタを介して除染対象室内の除染ガスを排気することができる。
【0055】
また、除染ガス発生モードにおいては、圧縮エアと除染物質とを混合して除染ガスを生成し、除染対象室内に供給した後、除染ガス曝露モードにおいては、圧縮エアのみを除染対象室内に供給しつつ、除染ガス発生モード時と同様に第3のバルブを開閉制御することによって、除染物質の消費を抑制しつつ除染対象室内および吸気フィルタを十分に除染することができる。
【0056】
また、第1ないし第3の流路をすべて閉じた状態で圧縮エアのみを除染対象室内に供給することによって、除染対象室の内圧に基づいて除染対象室の気密性を検査することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b 制御部
2a、2b 操作部
3a、3b 除染ガス供給部
4 作業室
5 パスボックス
31 タンク
32、35 ボトル
33、36 水位センサ
34、37 噴霧器
41、51 圧力センサ
52 扉
P1〜P6、P31〜P36 流路(パイプ/チューブ)
F1〜F4、F31〜F34 フィルタ
C1〜C4 触媒
V1〜V6、V31〜V35 バルブ
B1〜B3 送風機(ブロワ/ファン)
Cm 圧縮機(コンプレッサ)
Pm ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気フィルタを備えた吸気口および排気フィルタを備えた排気口を有する除染対象室と、
前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内に外気を吸気する第1の流路と、
前記排気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第2の流路と、
前記第1の流路を介して前記除染対象室内に外気を吸気するとともに、前記第2の流路を介して前記除染対象室内の気体を排気する気流を発生させる送風機と、
前記吸気フィルタおよび前記排気フィルタを介さずに前記除染対象室内に除染ガスを供給する除染ガス供給部と、
前記除染対象室内に前記除染ガスが供給される場合に、前記吸気フィルタを介して前記除染対象室内の気体を排気する第3の流路と、
を有することを特徴とするアイソレータ。
【請求項2】
前記第1の流路を開閉する第1のバルブと、
前記第2の流路を開閉する第2のバルブと、
前記第3の流路を開閉する第3のバルブと、
前記除染対象室内に前記除染ガスが供給される場合に、前記送風機を停止するとともに前記第1および第2のバルブを閉じた状態で前記第3のバルブを開いて、前記除染対象室内の気体を排気する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記第2の流路に設けられ、前記除染ガスに含まれる除染物質を低減して無害化する無害化部をさらに有し、
前記第2のバルブは、前記触媒と前記排気フィルタとの間に設けられ、
前記第3の流路は、前記第2の流路のうち前記触媒と前記第2のバルブとの間の流路と、前記吸気フィルタとを接続することを特徴とする請求項2に記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記除染対象室の内圧を測定する圧力センサをさらに有し、
前記制御部は、前記除染対象室内に前記除染ガスが供給される場合に、前記送風機を停止するとともに前記第1および第2のバルブを閉じた状態で、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記第3のバルブを開閉制御して、前記除染対象室の内圧を所定の陽圧に調整しつつ前記除染対象室内の気体を排気することを特徴とする請求項3に記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記除染ガス供給部は、
圧縮気体を供給する圧縮機と、
前記圧縮気体と前記除染物質とを混合して前記除染ガスを生成する噴霧器と、
を含み、
前記除染ガス供給部は、前記除染対象室内に前記除染ガスを供給した後に前記圧縮気体のみを供給し、
前記制御部は、前記除染対象室内に前記除染ガスが供給された後に前記圧縮気体のみが供給される場合にも、前記送風機を停止するとともに前記第1および第2のバルブを閉じた状態で、前記圧力センサの測定結果に基づいて前記第3のバルブを開閉制御して、前記除染対象室の内圧を前記所定の陽圧に調整しつつ前記除染対象室内の気体を排気することを特徴とする請求項4に記載のアイソレータ。
【請求項6】
前記圧力センサによって測定される前記除染対象室の内圧に基づいて前記除染対象室の気密性を検査する場合には、
前記制御部は、前記第1ないし第3のバルブを閉じ、
前記除染ガス供給部は、前記除染対象室内に前記圧縮気体のみを供給することを特徴とする請求項5に記載のアイソレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231917(P2012−231917A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102047(P2011−102047)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(592031097)パナソニックヘルスケア株式会社 (28)
【Fターム(参考)】