説明

アウタービット

【課題】内チップが露出してボディーから分離せず、ビットの半径方向についてチップ同士の重複している領域を大きくしなくても岩盤を切削出来るアウタービットの提供。
【解決手段】全体が中空円筒形状のボディー先端(11t)に複数のチップ(2、3)を埋設し、複数のチップ(2、3)の各々を(チップの)中心がボディー(10)の長手方向中心軸(Lc)を中心とする2つの同心円(O2、O3)の何れかの円周上に位置せしめ、半径方向内方の同心円(O2)はボディーの半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置して、ボディー先端(11t)の内周面(11i)側及び外周面(11o)側に面取り(15、16)を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタービットとインナービットとから成る二重管ビットに関する。より詳細には、本発明は、二重管ビットにおけるアウタービット(リングビット)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アウタービットとインナービットとから成る二重管ビットは、インナービットでボーリング孔の中央部を掘削し、アウタービットでボーリング孔の半径方向外方の領域を掘削するように構成されている。
そして、インナービット及びアウタービットの先端には、切削用のチップが複数配置されている。
【0003】
従来技術において、アウタービットにおけるチップの配列によって、2レーン配列式アウタービット、3レーン配列式アウタービット、4レーン配列式アウタービットが存在する。
【0004】
図7、図8は、従来技術における2レーン配列式アウタービットの側面と正面を示している。
図7、図8のアウタービット1Aでは、チップの配列が、図8において符号O2で示す半径方向外方の仮想円周上に複数の外チップ2が配置されており、符号O3で示す半径方向内方の仮想円周上に複数の内チップ3が配置されている。
ここで、仮想円O2やO3の様に、円周上に複数のチップが配列されている仮想円は「レーン」と標記される。図7、図8で示す従来技術のアウタービット1Aは、2列のレーンが存在するので、例えば2レーン配列式アウタービットと標記されている。
【0005】
2レーン式のアウタービット1Aでは、半径方向外方に配置されたチップ2における掘削範囲と、半径方向内方に配置されたチップ3における掘削範囲とが、半径方向について十分に重なっていないと(いわゆる「かぶり」を大きくしないと)、岩盤を切削できない。
【0006】
それに対して、半径方向外方に配置された外チップ2と、半径方向内方に配置された内チップ3との間に(半径方向について間の領域に)、さらに1種類のチップ(中チップ)4を設ければ、チップ2、3、4の「かぶり」が大きくなり、切削し易くなる。
図9、図10は、従来技術における3レーン配列方式のアウタービット1B(例えば、特許文献1参照)を示しており、外チップ2、内チップ3、中チップ4を有している。
【0007】
しかし、3レーン配列方式(例えば、特許文献1)では、内チップ3が脱落してしまうという問題を有している。
二重管ビットにおいて、図10のE部を拡大して示す領域D(図11:ハッチングを付して示す領域)が、インナービット30と接触することがある。そして、インナービット30と接触することにより、アウタービット1Bのボディー10Bの内周面10Biが削られてしまう。
従来の3レーン配列方式では、内チップ3がボディー10Bの内周面10Biの直近に配置されているため、内周面10iが削られてしまうと、アウタービット1Bの内チップ3が露出してしまう。
【0008】
内チップ3が露出した状態でインナービット30と接触すると、当該露出した内チップ3が、アウタービット1Bから分離してしまうのである(いわゆる「跳ぶ」という現象)。
内チップ3が分離(跳んで)してしまうと、中チップ4への負荷が増大して、その分だけダメージを受けてしまう。
【0009】
図12は、従来技術における4レーン配列式のアウタービットを示している。4レーン配列式のアウタービットは、3レーン配列式のアウタービットを改良したものである。
図12において、符号17は外チップ埋設用の孔を示し、符号18は内チップ埋設用の孔を示し、符号191及び符号192は中チップ埋設用孔を示している。
【0010】
4レーン配列式のアウタービットは、3レーン配列式のアウタービットと同様に、内チップ、中チップ、外チップとを備えている。しかし、4レーン配列式のアウタービットでは、中チップは、(チップが)突出する角度が同一ではなく、チップ突出方向が異なる様に構成設定されている。
例えば、図14及び図15で示すように、中チップの埋設用の孔は、ボディー10Cの中心軸Lcに対する角度が半径方向外方(図15では下側)に向かって8°である埋設用孔191(図15)と、ボディー10Cの中心軸Lcと平行な埋設用孔192(図14)の2種類が存在する。
【0011】
なお、内チップ埋設用の孔18は、ビットボディー10Cの中心軸Lcに対する角度が、半径方向内方(図13では上方)に向かって15°だけ傾いている(図13)。そして、外チップ埋設用の孔17は、ビットボディー10Cの中心軸Lcに対する角度が、半径方向外方(図16では下方)に向かって25°だけ傾いている(図16)。
【0012】
ここで、従来技術に係る4レーン配列式のアウタービットでは、一般的に、中チップが合計で3個設けられる。上述した様に、中チップの突出方向が2種類存在するのであれば、3個の中チップの内、例えば、埋設用孔191に取り付けられる中チップを2個にして、埋設用の孔は192に取り付けられる中チップを1個に選定しなければならない。すなわち、半径方向外方に向かう中チップの数と、ボディー中心軸Lcと平行な方向へ向かう中チップの数とが異なってしまう。そのため、掘削時のバランスが悪くなる。
【0013】
掘削のバランスが悪くなれば、硬い岩盤を切削する際に、インナービットがアウタービットの内周面を削ってしまう可能性が高くなり、チップが欠けたり、チップが跳んだり、(チップが飛ぶことにより)ボディーが欠けたりという不具合が生じる可能性も高くなる。
また、4レーン配列式のアウタービットでは、円周方向における内チップ間の間隔が長くなり、内チップ1個当たりの負荷が大きく、内チップがダメージを受ける傾向が顕著である。
【特許文献1】特開2001−164864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、内チップが露出してボディーから分離してしまう事が無く、しかも、半径方向についてチップ同士の重複している領域(かぶり)を大きくしなくても十分に岩盤を切削することが出来る様なアウタービットの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のアウタービット(1)は、全体が概略円筒形状のボディー先端(11t)に複数のチップ(2、3)を埋設しており、複数のチップ(2、3)の各々は(チップの)中心がボディー(10)の長手方向中心軸(Lc)を中心とする2つの同心円(O2、O3)の何れかの円周上に位置しており、半径方向内方の同心円(O2)はボディーの半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置しており、(長手方向の)ボディー先端(11t)の内周面(11i)側及び外周面(11o)側には面取り(15、16)が施されていることを特徴としている(請求項1)。
【0016】
本明細書において、前記2つの同心円(O2、O3)の内、半径方向外方の同心円(O2)の円周上に中心が位置しているチップ(2)を、「外チップ」と記載する。
そして、前記2つの同心円の内、半径方向内方の同心円(O3)の円周上に中心が位置しているチップ(3)を、「内チップ」と記載する。
【0017】
本発明において、半径方向内方の同心円(O3)はボディー(10)の半径方向(厚さ方向)中央よりも1mmだけ半径方向外方に位置しているのが好ましい(請求項2)。
【0018】
本発明において、半径方向外方の同心円(O2)上に中心が配置されているチップ(外チップ2)の先端は半径法外方を向いて取り付けられており、半径方向内方の同心(O3)円上に中心が配置されているチップ(内チップ3)の先端は(アウタービット1の)中心軸(Lc)と平行な方向へ向いているのが好ましい(請求項3)。
より詳細には、半径方向外方の同心円(O2)上に中心が配置されているチップ(2)は、その先端が、アウタービットの中心軸(Lc)と平行な方向(長手方向)に対して、25°だけ半径法外方へ傾く様に取り付けられているのが好ましい。
【0019】
また本発明において、ボディー(10)の内径寸法(Di)を小さく構成し、ボディーの内壁面(内周面11i)と、インナービット(30)の外周面との間の円環状の隙間を、従来技術よりも狭く構成することが好ましい。具体的には、ボディー(10)の外径が同一の従来のアウタービットよりも、内径寸法が2mmだけ小さく形成されているのが好ましい。
【0020】
本発明の二重管ビット(100)は、横断面が円管状のアウタービット(リングビット1)と、アウタービット(1)の半径方向内側の領域に配置されるインナービット(30)とを有しており、前記アウタービット(1)は、全体が概略円筒形状のボディー先端(11t)に複数のチップ(2、3)を埋設しており、複数のチップ(2、3)の各々は(チップの)中心がボディー(10)の長手方向中心軸(Lc)を中心とする2つの同心円(O2、O3)の何れかの円周上に位置しており、半径方向内方の同心円(O2、O3)はボディー(10)の半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置しており、(長手方向の)ボディー先端(11t)の内周面(11i)側及び外周面(11o)側には面取り(15、16)が施されており、前記インナービット先端(30t)の外周面(30o)近傍には円周方向にチップ(6)が配置されており、該チップ(6)は、その先端(6t)がアウタービット(1)の内周面(11i)近傍領域に対向する領域の岩盤を掘削する位置に設けられていることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0021】
上述する構成を具備する本発明のアウタービット(1)によれば、円周上に半径方向内側のチップ(内チップ3)の中心が位置している半径方向内方の同心円(O3)は、ボディー(10)の半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置しており、相対的に、内チップ(3)よりも半径方向内方におけるボディー(10)の厚さ寸法(半径方向寸法)が大きく構成されている。
そのため、アウタービット(1)の内周面(11i)がインナービット(30)と接触しても、アウタービット(1)におけるボディー(10)の半径方向内方の領域は、内チップ(3)が露出する程までには切削されない。
したがって、内チップ(3)よりも半径方向内方におけるボディー(10)が切削されて、内チップ(3)がアウタービット(1)のボディー(10)に対して露出することが阻止される。そして、チップ(3)がボディー(10)から分離してしまう(いわゆる「跳んで」しまう)ことも防止できる。
【0022】
また本発明のアウタービット(1)によれば、(長手方向の)ボディー先端(11t)の内周面(11i)側に面取り(15)が施されているので、インナービット(30)先端のチップ(6)により切削されたスライムが、アウタービット(1)のボディー先端(11t)の内周面(11i)のテーパ面(面取りされた箇所15)に沿って、アウタービット(1)の内周面(11i)側に誘導される。
そのため、本発明のアウタービット(1)を用いれば、切削の際に生じるスライムが、アウタービット(1)とインナービット(30)との間の環状空間へ、早期に取り込まれる事となり、スライムの排出性が良好になる。
【0023】
本発明のアウタービット(1)において、ボディー(10)の内径寸法を小さく構成し(例えば、従来のアウタービットよりも、内径寸法を2mmだけ小さく形成し)、ボディーの内壁面(内周面11i)とインナービット(30)の外周面とで形成される隙間を狭く構成すれば、アウタービット(1)の内周面(内周面11i)がインナービット(30)の外周面を案内して、インナービット(30)をアウタービット(1)と同心にせしめて、作動を安定させるスタビライザー的な効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明の二重管ビット(100)によれば、インナービット先端(30t)の外周面近傍には円周方向にチップ(6)が配置されており、該チップ(6)は、その先端(6t)がアウタービット(1)の内周面(11i)近傍領域に対向する領域の岩盤を掘削する位置に設けられているので、アウタービット(1)の内周面(11i)近傍の領域(内チップ3よりも半径方向内方の領域)では、チップが存在しなくても、岩盤を切削する事ができる。
そのため、アウタービット(1)において、半径方向についてチップ同士の重複している領域(かぶり)を大きくしなくても、十分に岩盤を切削することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態にかかる二重管ビット100において、側断面と先端部正面を示している。
【0026】
図1、図2において、二重管ビット100は、本発明の実施形態に係るアウタービット1と、インナービット30とから構成されている。
アウタービット1は、円筒状のボディー10を有し、先端部には2レーンに配列されたチップ2、3が埋設されている。
一方、インナービット30は、部分円筒状のボディー32を有し、先端部にはチップ6、7、8が埋設されている。
なお、図1において符号30oは、インナービット30の外周において、最大の外径を有する箇所を示している。
【0027】
次に図3〜図6を参照して、アウタービット1を更に詳しく説明する。
図3、図4において、アウタービット1のボディー10は、先端(図3では右端)に位置するヘッド11と、後端部12(図3では左端部)と、雄ねじ成形部13と、首下部14とを有している。首下部14は、ヘッド11と雄ねじ成形部13の間で構成されている。
ヘッド11の外周面11oは、ボディー先端11t(図3の右端)側の方が太く、緩やかなテーパ面を形成している。
【0028】
ヘッド11の外周面11oには、スライム排出用の溝19が、図示の例では4箇所に形成されている。スライム排出用の溝19は、アウタービット1の中心軸Lcに対して斜めに延在している。
図4において、ボディー10の内周面側において、前記スライム排出用の溝19と対向する位置には、凹部20が形成されている。この凹部20は、スライムの吸い込みを良好にするために設けられている。
【0029】
図4において、アウタービット1の回転方向(矢印R)は、時計方向である。ただし、図4における矢印Rは、掘削される岩盤側から見た場合におけるアウタービット1の回転方向であり、地上側から見ると、アウタービット1の回転方向は反時計方向(矢印Rとは反対方向)である。
アウタービット1の外周面11fに形成されたスライム排出用の溝19は、地盤による締め固めが発生し、地盤とアウタービット1の外周面11fとの境界が真空状態となってしまい、アウタービット1が動かなくなる事を防止する機能も有している。すなわち、溝19を有する事により、溝19を介して地盤とアウタービット1の外周面11fとの境界に空気が供給され、真空状態が破壊されて、アウタービット1が回転可能になる。
【0030】
溝19において、アウタービット1の回転方向後方(図4では、反時計方向側)のエッジ部には、溝19の略全長にわたって、硬化肉盛21が形成されている。
硬化肉盛21を設けることにより、アウタービット1が回転する際に、アウタービット外周面11fの硬化肉盛21を設けた部分におけるエッジ(溝19のアウタービット1回転方向後方のエッジ部)の摩耗が防止される。
【0031】
前述したように、そして図4及び図2で示すように、アウタービット1は、外チップ2と内チップ3が2レーンを構成している。すなわち、図4において、外チップ2は、その中心が、ピッチサークルO2上に配置されており、内チップ3は、その中心が、ピッチサークルO3上に配置されており、ピッチサークルO2とピッチサークルO3は同心円となっている。そして、ピッチサークルO2及びピッチサークルO3の中心は、ボディー10の中心軸Lcである。
アウタービット1のボディー先端部11tには、外チップ2用のピッチサークルO2上に、例えば8箇所の外チップ埋設用孔17が穿孔されている。同様に、ボディー先端部11tには、内チップ3用のピッチサークルO3上に、例えば8箇所の内チップ埋設用孔18が穿孔されている。
【0032】
ボディー10の中心軸Lcと、外チップ埋設用孔17の中心軸(外チップ2の中心軸)とを通過する断面(図4のA矢視断面)が、図5で例示されている。そして、ボディー10の中心軸Lcと、内チップ埋設用孔18の中心軸(内チップ3の中心軸)を通過する断面(図4のB矢視断面)が、図6で例示されている。
図5の例では、外チップ埋設用孔17の中心軸は、中心軸Lcに対して、半径方向外側(図5では下側)に25°だけ傾斜している。その結果、図示の実施形態に係るアウタービット1の外チップ2は、アウタービット1の中心軸Lcに対して、半径方向外方に(図5の例では25°)傾いて取り付けられる。
一方、図6で示すように、内チップ埋設用孔18の中心軸は、中心軸Lcと平行である。そのため、図示の実施形態に係るアウタービット1の内チップ3は、アウタービット1の中心軸Lcと平行に、換言すればアウタービット1の長手方向に向かって取り付けられる。
【0033】
図5、図6に示されている例では、ボディー10の外周部最大径(台金径)Doは140mmであり、ボディー先端部の内径(内周の直径)Diは104mmである。
従って、環状のボディー10における幅方向中心線(仮想線:ボディー10の半径方向における仮想センターライン)の径寸法Dmは、Dm=(Do+Di)/2となり、図5の例では、Dm=(140+104)/2=122mmである。
【0034】
図6に示すように、内チップ3の中心が位置しているピッチサークルO3(換言すれば、内チップ3埋設用孔18のピッチサークルO3)の直径D3は、123mmに設定されている。すなわち、内チップ3の中心(内チップ埋設用孔18の中心)は、ボディー10の仮想中心線(ボディー10の半径方向における仮想センターライン)よりも、半径方向外方へ1mmだけ偏寄して位置している。
【0035】
その結果、従来技術の2レーンタイプのアウタービット(内チップ3がボディー内周面近傍に位置しているアウタービット)に比較して、図示の実施形態に係るアウタービット1では、内チップ3よりも半径方向内方におけるボディー10の半径方向厚さ寸法が、遥かに大きくなる。
そのため、アウタービット1の内周面がインナービット30と接触しても、アウタービット1のボディー10は、内チップ3が露出する程までには切削されない。そして、内チップ3がインナービットのボディー10から露出する事態が阻止される結果として、内チップ3がボディー10から分離してしまう事態(内チップ3がボディー10から「跳んで」しまう事態)も防止されるのである。
【0036】
なお、図5に示すように、外チップ2の中心が位置しているピッチサークルO2(外チップ埋設用孔17のピッチサークルO2)の直径D2は130mmである。従って、外チップ2の中心(外チップ埋設用孔17の中心)は、ボディー10の仮想中心線(ボディー10の半径方向における仮想センターライン)よりも、半径方向外方へ4mm偏寄して位置している。
【0037】
図3、図5、図6で示す様に、図示の実施形態に係るアウタービット1では、ボディー先端部11tの内周面11i側に、テーパ面(面取り)15が施されている。そのため、インナービット30先端のチップ6(図1参照)により切削されたスライムが、当該テーパ面15に沿って、アウタービット1の内周面11i側に誘導される。
したがって、図示の実施形態の二重管ビット100を用いれば、切削の際に生じるスライムが、アウタービット1とインナービット30との間の環状空間へ早期に取り込まれる。そして、アウタービット1とインナービット30との間の環状空間は、スライムを地上側へ誘導する環状流路であり、スライムがそこへ早期に取り込まれるという事は、スライムの排出性が良好であることを意味している。
【0038】
図示の実施形態によれば、アウタービット1のボディー10の内径寸法は、既存のアウタービットよりも例えば2mm小さく設定されている。そのため図示の実施形態では、アウタービット1の内周面11iと、インナービット30の外周面(最大直径部)30oとの隙間が、既存の二重管ビットに比較して狭くなっている。
アウタービット1の内周面11iと、インナービット30の外周面(最大直径部)30oとの隙間が、既存の二重管ビットに比較して狭くなっている事から、図示の実施形態に係るアウタービット1は、その内周面11iがインナービット30の外周面30o(図1参照)を案内する作用を奏する。そして、インナービット30をアウタービット1と同心になる様に案内して、二重管ビットの作動を安定させるスタビライザー的な効果を奏することができる。
【0039】
図1、図2で示す二重管ビット100によれば、インナービット先端30tの外周面近傍に配置されたチップ6は、その先端6tが、アウタービット1の内周面11i近傍領域と対向する岩盤を掘削する様な位置に設けられている。そのため、アウタービット1の内周面11i近傍の領域(内チップ3よりも半径方向内方の領域)において、アウタービット1側にチップが存在しなくても、インナービット30側のチップ6により、岩盤(アウタービット1の内周面11i近傍領域と対向する岩盤)を切削する事ができる。
【0040】
出願人が行った実験によれば、図示の実施形態に係るアウタービット(1)において、内周面11i近傍の領域で、半径方向についてチップ同士の重複している領域(かぶり)を大きくしなくても、十分に岩盤を切削することが出来ることが確認されている。
【0041】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る二重管ビットの側面図。
【図2】図1の二重管ビットの正面図。
【図3】本発明の実施形態に係るアウタービットの一部断面を含む側面図。
【図4】図3のアウタービットの正面図。
【図5】図4のA断面矢視図。
【図6】図4のB断面矢視図。
【図7】従来技術における2レーン配列式アウタービットの側面図。
【図8】図7のアウタービットの正面図。
【図9】従来技術における3レーン配列式アウタービットの側面図。
【図10】図9のアウタービットの正面図。
【図11】図10のE部拡大図。
【図12】従来技術における4レーン配列式アウタービットの正面図。
【図13】図12のA断面矢視図。
【図14】図12のB断面矢視図。
【図15】図12のC断面矢視図。
【図16】図12のD断面矢視図。
【符号の説明】
【0043】
1・・・アウタービット
2・・・外チップ
3・・・内チップ
4・・・蒸気トラップ
5・・・不凝縮性ガスの排出弁/空気抜き弁
6、7、8・・・インナービット用チップ
10・・・ボディー
11・・・ヘッド
11t・・・ボディー先端
17・・・外チップ埋設用孔
18・・・内チップ埋設用孔
19・・・スライム排出用の溝
20・・・凹部
21・・・硬化肉盛
30・・・インナービット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が円筒形状のボディー先端(11t)に複数のチップ(2、3)を埋設しており、複数のチップ(2、3)の各々は(チップの)中心がボディー(10)の長手方向中心軸(Lc)を中心とする2つの同心円(O2、O3)の何れかの円周上に位置しており、半径方向内方の同心円(O2)はボディーの半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置しており、(長手方向の)ボディー先端(11t)の内周面(11i)側及び外周面(11o)側には面取り(15、16)が施されていることを特徴とするアウタービット。
【請求項2】
半径方向内方の同心円(O3)はボディー(10)の半径方向(厚さ方向)中央よりも1mmだけ半径方向外方に位置している請求項1のアウタービット。
【請求項3】
半径方向外方の同心円(O2)上に中心が配置されているチップ(外チップ2)の先端は半径法外方を向いて取り付けられており、半径方向内方の同心(O3)円上に中心が配置されているチップ(内チップ3)の先端は(アウタービット1の)中心軸(Lc)と平行な方向へ向いている請求項1、請求項2の何れかのアウタービット。
【請求項4】
横断面が円管状のアウタービット(リングビット1)と、アウタービット(1)の半径方向内側の領域に配置されるインナービット(30)とを有しており、前記アウタービット(1)は、全体が概略円筒形状のボディー先端(11t)に複数のチップ(2、3)を埋設しており、複数のチップ(2、3)の各々は(チップの)中心がボディー(10)の長手方向中心軸(Lc)を中心とする2つの同心円(O2、O3)の何れかの円周上に位置しており、半径方向内方の同心円(O2、O3)はボディー(10)の半径方向(厚さ方向)中央よりも半径方向外方の領域に位置しており、(長手方向の)ボディー先端(11t)の内周面(11i)側及び外周面(11o)側には面取り(15、16)が施されており、前記インナービット先端(30t)の外周面(30o)近傍には円周方向にチップ(6)が配置されており、該チップ(6)は、その先端(6t)がアウタービット(1)の内周面(11i)近傍領域に対向する領域の岩盤を掘削する位置に設けられていることを特徴とする二重管ビット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate