アキシャルギャップモータ
【課題】アキシャルギャップモータにおいて、大型化を防止しつつ、永久磁石の磁束とステータの励磁磁束との協働によりトルクを増大する。
【解決手段】ステータ5a、5bの磁気的に独立して周方向に配設された各ステータコア13の外径側の磁極14aと内径側の磁極14bとを繋ぐステータヨーク部14cに磁極14a、磁極14bの各磁極対を励磁するステータコイル15を巻装し、ステータ5a、5bに対向するロータ3a、3bに複数のロータコア7を磁気的に独立した状態で周方向に配設し、ステータ5a、5bおよびロータ3a、3bの少なくともいずれかに、磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石17aを配置し、各永久磁石17aの磁束により、励磁磁束によるステータコア13、ロータコア7の磁気飽和を生じにくくしてアキシャルギャップモータ1aのトルクを増大する。
【解決手段】ステータ5a、5bの磁気的に独立して周方向に配設された各ステータコア13の外径側の磁極14aと内径側の磁極14bとを繋ぐステータヨーク部14cに磁極14a、磁極14bの各磁極対を励磁するステータコイル15を巻装し、ステータ5a、5bに対向するロータ3a、3bに複数のロータコア7を磁気的に独立した状態で周方向に配設し、ステータ5a、5bおよびロータ3a、3bの少なくともいずれかに、磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石17aを配置し、各永久磁石17aの磁束により、励磁磁束によるステータコア13、ロータコア7の磁気飽和を生じにくくしてアキシャルギャップモータ1aのトルクを増大する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータを磁極面がモータ軸方向に対向するように配置されたアキシャルギャップモータに関し、詳しくは、トルクを増大する新規な構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップモータは、ステータとロータの磁極面がモータ軸方向に対向するように配置され、電気自動車等の駆動モータとしてのスイッチドリラクタンスモータ(以下、SRモータという)や、種々の電子機器のDCモータに置き換わるSRモータに用いられる。
【0003】
ところで、前記SRモータに用いられるアキシャルギャップモータやラジアルギャップモータにおいては、小型の構造でトルクアップを図ることが重要である。
【0004】
そして、前記SRモータに用いられるラジアルギャップモータにおいては、ステータの各突極の先端の隣接する隙間に磁石を配置し、磁石の磁束とコイルによる励磁磁束との協働関係を協力にしてロータにはたらく力をパワーアップし、トルクアップを図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は特許文献1に記載されているラジアルギャップモータ構成のSRモータ100のステータ鉄心部分およびロータ鉄心部分の平面図(同文献1の図2に対応)である。このSRモータ100は、ステータ110の外側にロータ120が同心状に配設されてアウターロータの構成である。ステータ110は、各突極111の先端の隣接する隙間それぞれに磁石(永久磁石)112が配置されている。そして、磁石112の磁束と各突極111に巻回されたコイル(ステータコイル)113による励磁磁束との協働関係を強力にして、ロータ120にはたらく力をコイル113による励磁磁束だけの場合より強力にしてトルクアップを図る。なお、図17の114は各突極111を繋ぐステータヨーク部としての連結部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−229404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図17のSRモータ100の場合、ステータ110の各突極111とそれらの先端側面に配置する磁石112との適当な接合面積を確保するため、その分、各突極111が長くなる。したがって、磁石112の磁束により磁石112を設けない場合よりトルクは大きくなるが、ステータ110の各突極111が長くなる分、SRモータ100の外径が大きくなって大型化し、SRモータ100の体格や質量が大きくなる。
【0008】
そして、SRモータ等に用いられるアキシャルギャップモータにおいても、大型化を防止しつつ、永久磁石の磁束とステータコイルの励磁磁束と協働でトルクを増大する具体的な構成は発明されていない。
【0009】
本発明は、SRモータ等に用いられるアキシャルギャップモータにおいて、大型化を防止しつつ、永久磁石の磁束とステータコイルの励磁磁束との協働によりトルクを増大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明のアキシャルギャップモータは、ステータの磁極面とロータの磁極面とがモータ軸方向に対向するアキシャルギャップモータであって、前記ステータは、楔形の複数のステータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記各ステータコアの外径側部分が外径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの内径側部分が前記内径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの前記外径側の磁極と前記内径側の磁極とを繋ぐステータヨーク部それぞれに前記外径側の磁極と前記内径側の磁極の各磁極対を励磁するステータコイルが巻装され、前記ロータは、楔形の複数のロータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記ステータおよび前記ロータの少なくともいずれかに、前記ステータコイルの通電により発生する励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石が配置されることを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記各永久磁石は、前記各ステ−タコアの前記ステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、前記ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられることを特徴としている(請求項2)。
【0012】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記各ステータコアの前記励磁磁束の極性は同じであり、前記各永久磁石は、前記各ロータコアの外径側部分と内径側部分とを繋ぐロータヨーク部近傍それぞれに、前記各ステータコイルにより励磁される極性に対して逆向きの着磁極性で径方向に設けられることを特徴としている(請求項3)。
【0013】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記ステータコイルは、各ステータコアの前記ステータヨーク部それぞれに励磁極性が隣り合うステータコアどうしで逆向きになるように巻装され、前記各永久磁石は、前記各ステータコア間に前記各ステータコアの励磁磁極と同じ極性の磁極が前記各ステータヨークに対面するように着磁方向を周方向にして配置されることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、各ステータコアはステータコイルの通電により励磁極性にしたがった励磁磁束が発生し、この励磁磁束がステータコアのN極から近傍の対向しつつあるロータのロータコアを通ってステータコアのS極に入り、その際のロータとステータとの磁気作用でロータが回転する。このとき、ステータおよびロータの少なくともいずれかに配置された永久磁石により磁気飽和緩和用の磁束が予め形成され、この磁束はステータコア、ロータコアを通る励磁磁束と逆向きの磁束であり、磁気飽和緩和用の磁束によりステータコア、ロータコアは励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなる。そして、ステータコア、ロータコアがステータコイルにより励磁されて磁気飽和に至るまでに、ステータコイルに鎖交する磁束量は、永久磁石による磁気飽和緩和により増加する。
【0015】
図1(a)は前記永久磁石がある場合とない場合の各ステータコアのステータコイルを通電して生じる起磁力に対するヨーク部の磁束密度の変化例を示し、αが永久磁石がある場合の磁化曲線で囲まれる範囲(面積)、βが永久磁石がない場合の磁化曲線で囲まれる範囲(面積)であり、永久磁石がある場合は、その逆向きの磁束により、各ステータコアの励磁磁束の磁束密度が白抜きの矢印線に示すように負の方向ヘ移動し、各ステータコアは励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなる(α>β)ことが分かる。
【0016】
図1(b)は前記永久磁石がある場合とない場合の各ステータコアの起磁力に基づくステータコイルの鎖交磁束の変化例を示し、各ステータコアの磁気飽和による磁束上限は制限されるが、図1(a)の磁束密度の負の方向への移動により、励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなって永久磁石がある場合の磁化曲線により囲まれる範囲αが永久磁石のない場合の範囲βより大きくなるので、各ステータコアは永久磁石がある場合の鎖交磁束が、永久磁石がない場合より増加する。
【0017】
各永久磁石がロータに配置されている場合には、各ロータコアの励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなって各ロータコアの鎖交磁束が永久磁石がない場合より増加する。
【0018】
そのため、各永久磁石の磁束とステータコイルの通電により発生する励磁磁束との協働で、ステータコイルの通電で発生する励磁磁束による、ステータまたはロータ(より具体的にはステータコアまたはロータコア)の磁気飽和が緩和されて生じにくくなり、ステータコイルの鎖交磁束が増加してアキシャルギャップモータのトルクが増大する。
【0019】
そして、特許文献1のSRモータのような磁石とステータの各突極との適当な接合面積の確保は不要であり、しかも、各ステータコアや各ロータコアは磁気飽和が生じにくくなるのでそれだけ薄くすることができ、アキシャルギャップモータの大型化が防止される。
【0020】
したがって、従来に比べて小型・軽量化した構成で、アキシャルギャップモータのトルクの増大を図ることができる。
【0021】
請求項2に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、各永久磁石を、各ステ−タコアのステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられるので、例えばステータコイルの通電により、外径側の磁極がN極、内径側の磁極がS極に励磁されるステータコアは、その裏面側の永久磁石も外径側がN極、内径側がS極になる。そのため、そのステータコア内で内径側のS極から外径側のN極に向かう励磁磁束に対して、外径側のN極からステータコアを通って内径側のS極に向かう永久磁石の磁束が励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になり、励磁磁束による各ステータコアの磁気飽和を磁気飽和緩和用の磁束で緩和して請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏する具体的な構成を提供できる。
【0022】
しかも、各ステータコアにおいて、励磁磁束の極性と永久磁石の逆バイアス磁束の極性とは同じ向きであり、永久磁石の逆バイアス磁束が外径側をN極にする極性であれば、ステータコイルの通電時の励磁磁束の極性も外径側がN極になる。そのため、永久磁石が励磁磁束の逆磁界に晒されない構造になり、永久磁石に高Br(Br:残留磁束密度)・低Hcj(Hcj:保磁力)の小型のものを使用することができ、さらには、フェライト磁石などの低グレード磁石を用いることも可能になる利点がある。
【0023】
また、各ステータコアの励磁磁束の極性は、ステータコア毎に別個独立に設定できるので、ステータコア毎に逆極性にしてもよいが、全てのステータコアの励磁極性を同じ極性に設定し、例えば各ステータコイルの通電時の励磁磁束の極性を全て外径側がN極になる極性にすると、例えばステータの磁極面側の外径側の磁極と内径側の磁極の間に円環状の界磁コイルを設け、その直流界磁の磁束で各ステータコアの励磁磁束を一括して増加し、トルクをさらに大きくすることもできる。
【0024】
請求項3に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ロータの各ロータコアのヨーク部の近傍(例えば横)に、各永久磁石がステータコイルの励磁極性と逆の着磁極性で径方向に設けられるので、例えばステータコイルの通電により、各ステータコアの外径側の磁極がN極、内径側の磁極がS極に励磁されるとすると、対向するロータの各永久磁石は外径側の磁極がS極、内径側の磁極がN極に着磁される。このとき、ステータコイルの励磁磁束は、ステータコアの外径側のN極から、対向するロータコアの外径側、内径側を通って同じステータコアの内径側のS極に戻る。また、永久磁石のN極から出た磁束は、ロータコアの内径側、外径側を通って永久磁石のS極に戻る。
【0025】
したがって、ロータコア内において、外径側から内径側に向かう励磁磁束に対して、内径側から外径側に向かう永久磁石の磁束が逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になり、この磁束で励磁磁束による各ロータコアの磁気飽和緩和して請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏する具体的な構成を提供できる。
【0026】
しかも、前記磁気飽和の緩和により、永久磁石がない場合より各ロータコアを多くの励磁磁束が通るようになるので、各ロータコアを薄くしてロータを薄型化することができる。
【0027】
請求項4に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ステータの各ステータコアは、励磁極性が周方向の隣のステータコアの励磁極性と逆になり、例えば外径側がN極、内径側がS極のステータコアの隣のステータコアは外径側がS極、内径側がN極になる。このとき、ステータコア間の例えば外径側に設けられる永久磁石は、そのN極が、励磁磁束で外径側がN極になるステータコアの外径側に対面し、そのS極が、励磁磁束で外径側がS極になる隣のステータコアの外径側に対面する。同様に、ステータコア間の内径側に設けられる永久磁石は、そのN極が、励磁磁束で内径側がN極になるステータコアの内径側に対面し、そのS極が、励磁磁束で内径側がS極になるステータコアの内径側に対面する。
【0028】
そして、永久磁石が各ステータコア間の外径側、内側側それぞれに設けられると、励磁磁束で外径側がN極、内径側がS極に励磁されるステータコアは、励磁磁束が、外径側のN極からロータコアを通って内径側のS極に入り、ステータコア内を内径側から外径側に戻る。また、このステータコアの外径側にN極が対面する外径側の永久磁石の磁束は、そのN極から対面するステータコアの外径側(N極)、内径側(S極)を通り、内径側にS極が対面する他の永久磁石のS極、N極を通って前記外径側の永久磁石のS極に戻る。
【0029】
したがって、ステータコイルの通電により励磁されるステータコアにおいて、励磁磁束は内径側(S極)から外径側(N極)に向かい、永久磁石の磁気飽和緩和用の磁束は外径側(N極)から内径側(S極)に向かい、励磁磁束と逆向きになり、請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏することができる。
【0030】
そして、各ステータコアの周方向の隙間に永久磁石を配置する構成であるので、ステータのスペースを有効活用してアキシャルギャップモータの体格の増加なくトルクを増加できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の効果の説明図であり、(a)は永久磁石がある場合とない場合のステータコイル起磁力に対する各ステータコアの磁束密度の変化例を示し、(b)は永久磁石がある場合とない場合のステータコイルの鎖交磁束の変化例を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図3】(a)は図2のロータの磁極面の拡大した正面図であり、(b)はその側面図である。
【図4】図2のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図5】(a)、(b)は図4のステータのステータコイルの巻装を説明する斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図7】図6のステータの界磁コイルの説明図である。
【図8】(a)は本発明の第3の実施形態のロータの磁極面の拡大した正面図、(b)はその側面図である。
【図9】図8のロータに対向するステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図11】図10のロータの磁極面の拡大した正面図である。
【図12】図10のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図14】図13のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図16】図15のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図17】従来のラジアルギャップモータ構成のスイッチドリラクタンスモータのステータ鉄心部分およびロータ鉄心部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図2〜図16を参照して詳述する。なお、それらの図面においては、モータ軸や断面のハッチング等は適宜省略している。
【0033】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図2〜図5を参照して説明する。
【0034】
図2は本実施形態のアキシャルギャップモータ1aを示し、アキシャルギャップモータ1aは、3相駆動のリラクタンスモータであり、モータ軸2の出力側(紙面左側の表側)から順に、平面視が略中空円板状のロータ3a、両面ステータ4a、ロータ3bを一定の隙間(ギャップ)を設けて配設されている。両面ステータ4aは表側ステータ5aと裏側ステータ5bとをギャップを設けて背中合せにつき合わせた構成である。
【0035】
ロータ3a、3bは、同じ形状、構造であって、ロータ3aの磁極面が表側ステータ5aの磁極面に対向し、ロータ3bの磁極面が裏側ステータ5bの磁極面に対向する向きに、同形状の前側(紙面左側)、後側のフランジシャフト6a、6bによりモータ軸2に取り付けられている。すなわち、ロータ3aの磁極面と表側ステータ5aの磁極面とはモータ軸2の方向に間隔を設けて対向し、裏側ステータ5bの磁極面とロータ3bの磁極面とはモータ軸2の方向に間隔を設けて対向する。
【0036】
フランジシャフト6a、6bは、モータ軸2が中心を貫通した円板状のフランジ部61の外周に円筒状の支持部62を取り付けた構造であり、支持部62がロータ3a、3bの中空部内に嵌入することでロータ3a、3bと一体にモータ軸2に取り付けられて回転する。ステータ4aはモータ軸2との間に隙間を設けて固定されている。なお、少なくともフランジシャフト6a、6bは、いずれも非磁性体の例えばステンレスで形成されている。
【0037】
図3(a)はロータ3bの磁極面の平面図であり、同図(b)は(a)のA−A線の断面図である。それらの図面に示すように、ロータ3a、3bは、それぞれ例えば圧粉磁心で形成された平面視楔形の8個のロータコア7が周方向に45度の間隔で配設された構成である。各ロータコア7は、外径側、内径側の突起したポール8a、8bをロータヨーク部8cで繋いだ構成であり、外径側、内径側に磁極部非磁性金属のリング体9a、9bが嵌められて放射状(環状)に固定される。ロータコア7間(隣接コア間)の隙間は、空間であってもよいが、例えば非磁性体の樹脂の充填部10で形成され、各ロータコア7は磁気的に独立している。
【0038】
図4は表側ステータ5aの磁極面の平面図を示し、表側ステータ5a、裏側ステータ5bは外径側、内径側に非磁性体金属のリング体11a、11bが嵌められて一体化されている。さらに、外径側のリング体11aの外側には、各相の一対の端子等を覆う樹脂被覆体12が重ねて設けられている。表側ステータ5aと裏側ステータ5bは同じ形状、構造であり、それぞれ、例えば圧粉磁心で形成された平面視楔形の12個(相当たり90度の間隔の4個)のステータコア13が周方向に30度の間隔で配設される。
【0039】
なお、図2はロータ3a、3bを図3のA−A線で切断し、ステータ5a、5bを図4のB−B線で切断した断面図である。
【0040】
各ステータコア13間(隣接コア間)の隙間は、図4では空間であるが、非磁性体の樹脂の充填部であってもよく、空間または充填部により各ステータコア13は磁気的に独立している。
【0041】
各ステータコア13は、本発明の対の磁極を形成する外径側の磁極14aと内径側の磁極14bの突起したティースを磁極間のステータヨーク部14cで繋いだ構成である。
【0042】
各ステータヨーク部14cは、ステータ磁極対14の磁極14a、14bを励磁する各相のステータコイル15が巻装される。ステータコイル15は、表側ステータ5a、裏側ステータ5bそれぞれの各ステータコア13のステータ磁極対14の磁極14a、14bを個別に励磁するように、表側ステータ5a、裏側ステータ5bそれぞれの各ステータコア13のステータヨーク部14cに別個に巻装されてもよいが、本実施形態の場合、各1個のステータコイル15が、表側ステータ5aと裏側ステータ5bの同じ位置のステータコア13のステータヨーク部14cにそれらを束ねるように外装された樹脂性のカセットホルダ16を介して巻装され、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの同じ位置のステータコア13の磁極14a、14bの励磁に共用される。
【0043】
このとき、各ステータコイル15は、図4に四角枠で囲んだN、Sに示すように、例えば磁極14a、14bの励磁極性が両隣のステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性と逆になるように、巻き方向あるいは通電方向が両隣のステータコイル15と逆に設定される。
【0044】
図5(a)、(b)は隣合う2位置(具体的には、例えば図4の位置P1、P2)それぞれのステータコイル15が巻装された状態の表側ステータ5a、裏側ステータ5bの斜視図であり、ステータコイル15の通電の起磁力により、同図(a)のステータコア13は磁極14aがS極、磁極14bがN極に励磁され、同図(b)のステータコア13は磁極14aがN極、磁極14bがS極に励磁される。それらの図中の矢印線はステータコイル15の起磁力の方向を示す。
【0045】
上記構成がアキシャルギャップモータ1aの基本的な構成であり、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの通電相のステータコイル15が通電されると、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの通電相のステータコア13の磁極14a、14bが例えばN極、S極に励磁され、図2に示すように、ステータコア13の磁極(N極)14aからロータコア7を通ってステータコア13の磁極(S極)14bに至り、磁極14aに戻る破線の矢印線φ1の励磁磁束のループ磁路が形成され、このループ磁路を通る励磁磁束に基づく、ロータ3a、3bとステータ5a、5bとの磁気的な吸引動作によってアキシャルギャップモータ1aは回転する。
【0046】
本実施形態においては、ステータコイル15の励磁磁束によるステータコア13の磁気飽和を緩和するため、図1に示すように、ステータ5a、5bの各ステータコア13の略ステータヨーク部14cの磁極面の反対側を凹状部に形成し、磁気飽和緩和用の磁束を発生する表裏共用の各永久磁石17aを、N極、S極がステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性と同じ向きになるように(ステータコア13が通電時に外径側の磁極14aがN極となる向きに励磁されるのであれば、永久磁石17aは外径向きにN極になる向きに)着磁して表側、裏側の各ステータコア13のつき合わせた凹状部に接着して配置する。
【0047】
各永久磁石17aは磁路がステータコア13のステータヨーク部分14cで短絡され、その磁束は、図1の永久磁石17aのN極からステータコア13の裏面側を通って永久磁石17aのS極に戻る破線の矢印線φ2のループの短絡磁束であり、表側ステータ5a、裏側ステータ5bのステータコア13の通電時は、ステータコア13をS極からN極に向かう励磁磁束に対して、ステータコア13のN極からS極に向かう逆向きの磁束(磁気飽和緩和用の磁束)である。
【0048】
そして、磁極14a、14bが励磁されないステータコイル15の非通電時には、磁気飽和緩和用の磁束のうちのステータ5a、5bからロータ3a、3bへ進む分は僅かである(ステータコア13のステータヨーク部14cで短絡される磁気抵抗は、ステータ5a、5bとロータ3a、3bとの間のギャッブ磁気抵抗よりもかなり小さいため、磁束のほとんどは各ステータコア13内で短絡される)。
【0049】
一方、ステータコイル15が通電されて磁極14a、14bが励磁される通電時は、ステータコイル15の通電による励磁方向と永久磁石17aの着磁の磁化方向(N極、S極の向き)とが同じであり、ステータコイル15の起磁力により生じた励磁磁束は、前記したように、各ステータコア13から外部のロータコア7を通って各ステータコア13に戻る。
【0050】
このとき、ステータコイル15の起磁力により生じる励磁磁束と、ステータヨーク部分12cを通る永久磁石17aの短絡磁束とは逆向きであって磁気飽和緩和用の磁束を形成し、この磁束により、ステータヨーク部12cの磁束密度は負の方向ヘ移動し、ステータヨーク部14cの磁束密度の変化範囲が図1(a)に示したように範囲βから範囲αに広がる。そのため、各ステータコア13は磁気飽和が緩和されて励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなり、図1(b)に示したように、前記起磁力に対する各ステータコイル15の鎖交磁束は永久磁石による磁束飽和緩和により増加する。
【0051】
したがって、各永久磁石17aの磁束と各ステータコア13のステータコイル15の励磁磁束との協働で、各ステータコア13の厚みを薄くしてアキシャルギャップモータ1aのトルクを増大することができ、アキシャルギャップモータ1aの大型化を防止しつつトルクアップを図ることができる。
【0052】
なお、アキシャルギャップモータ1aのステータが、両面を磁極面とする両面ステータ4aで形成され、両面ステータ4aの表側ステータ5aと裏側ステータ5bの各ステータコア13の磁極14a、14bが、表裏共用のステータコイル15の通電でともに励磁されるので、部品数が一層少なくなってアキシャルギャップモータ1aの一層の小型化等を図ることができる利点もある。
【0053】
各ステータコア13において、励磁磁束の極性と永久磁石17aの磁束の極性とは同じ向きであり、永久磁石17aの逆バイアス磁束が外径側をN極にする極性であれば、ステータコイル15の通電時の励磁磁束の極性も外径側がN極になるので、永久磁石17aが励磁磁束の逆磁界に晒されない構造になり、永久磁石17aに高Br(Br:残留磁束密度)・低Hcj(Hcj:保磁力)の小型のものを使用することができ、さらには、フェライト磁石などの低グレード磁石を用いることも可能になる利点がある。
【0054】
各ステータコア13の永久磁石17aの着磁極性は、各ロータコア7、各ステータコア13が磁気的に独立しているので、表側ステータ5a、裏側ステータ5bにおいて、ステータコア13毎にそれぞれの磁極14a、14bの磁極対の極性に応じて別個独立に設定してよく、ステータコア13の磁極14a、14bの極性の設定によっては、両隣のステータコア13の永久磁石17aと同じ極性になってもよい。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の変形例である第2の実施形態について、図6、図7を参照して説明する。
【0056】
図6は本実施形態のアキシャルギャップモータ1bのステータ5c、5dを図7のC−C線に沿って切断した場合のモータの断面図であり、図7は図4に対応する表側ステータ5cの磁極面の平面図であり、それらの図面において、図2〜図5と同一符号は、同位置もしくは相当するものを示す。なお、図7においては後述する界磁コイル18を一部切り欠いて示している。
【0057】
アキシャルギャップモータ1bがアキシャルギャップモータ1aと異なる点は、アキシャルギャップモータ1aの両面ステータ4aに代えてつぎの構成の両面ステータ4bを備える点である。
【0058】
両面ステータ4bは、両面ステータ4aの表側ステータ5a、裏側ステータ5bに対応する表側ステータ5c、裏側ステータ5dを備える。ステータ5c、5dにおいては、(a)後述する界磁コイル18の直流界磁を一括して励磁磁束に重畳するため、各ステータコア13の磁極14a、14bが、各ステータコイル15の通電によって同じ極性、例えば図7に示すように外径側の磁極14aがN極、内径側の磁極がS極の極性に励磁される。(b)アキシャルギャップモータ1aの各永久磁石17aに代えて、各ステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性に応じて全て外径側がN極の永久磁石17bが、各ステータコア13の磁極面の裏側のつき合わせた凹状部に配置される。(c)ステータ5c、5dそれぞれに、各ステータコア13のステータヨーク部14cのステータコイル15に重なるように、環状の界磁コイル18を磁極面側に配置し、界磁コイル18の直流界磁の磁束を各ステータコイル15の励磁磁束に一括して重畳し、励磁磁束量を増加する。
【0059】
したがって、本実施形態のアキシャルギャップモータ1bは、界磁コイル18の直流界磁の磁束の重畳に基づき、アキシャルギャップモータ1aより励磁磁束が増加して一層のトルク増加を図ることができる。
【0060】
なお、表側ステータ5c、裏側ステータ5dにおいて、各ステータコア13の磁極14aをS極、内径側の磁極14bをN極に励磁し、永久磁石17bを全て外径側がS極になるように着磁してもよいのは勿論である。
【0061】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、図8、図9を参照して説明する。
【0062】
図8(a)は本実施形態のアキシャルギャップモータ1cのロータ3cの磁極面を示し、同図(b)は(a)のD−D線の断面図である。図9はロータ3cに対向するロータ5cの磁極面を示す。それらの図面において、図6、図7と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。
【0063】
本実施形態のアキシャルギャップモータ1cは、本発明の永久磁石を少なくともロータ側に配置したものであり、具体的には、図6、図7の第2の実施形態のアキシャルギャップモータ1bにおいて、ロータ3a、3bを図8(a)のロータ3cに置き換え、両面ステータ4bの表側ステータ5c、裏側ステータ5dを、例えば、永久磁石17bおよび界磁コイル18を省いた図8(b)のステータ5cに置き換えた構成としたものである。
【0064】
すなわち、アキシャルギャップモータ1cは、表側、裏側のステータ5cの各ステータコア13の磁極14a、14bが、ステータコイル15の通電により、同じ励磁極性、例えば図9に示すように外径側の磁極14aがいずれもN極、内径側の磁極14bがいずれもS極に励磁される。本発明の永久磁石を少なくともロータ側に配置する場合、各永久磁石の径方向の着磁極性を同じ向きに揃えるため、各ステータコア13の励磁極性も同じ向きに設定される。
【0065】
また、表側、裏側のステータ5cに対向する表側、裏側のロータ3cは、各ロータコア7のロータヨーク部8cの近傍、例えば、ロータヨーク部8cの左右の少なくともいずれか一方、ここでは両方に、ステータ5cの各ステータコア13の励磁極性とは逆の着磁極性、すなわち、外径側がS極で内径側がN極の極性に径方向に着磁された永久磁石17cが配置される。
【0066】
この場合、表側、裏側のステータ5cの各ステータコア13の励磁磁束は、磁極14aのN極からロータ3cの対向するロータコア7の外径側のポール8a、ロータヨーク部8c、内径側のポール8bを通って磁極14bのS極に入り、ステータコア13内をS極からN極に戻る。また、ロータ3cにおいて、各ロータコア7のロータヨーク部8cの左右の永久磁石17cは、図8の破線の矢印線のループに示すように、内径側のN極から、ロータコア7の内径側のポール8b、ロータヨーク部8c、外径側のポール8aを通って外径側のS極に入る磁束を発生する。
【0067】
したがって、通電励磁されるステータコア13に接近するロータコア7においては、外径側から内径側に向かう励磁磁束に対して、永久磁石17cの磁束が内径側から外径側に向かう磁気飽和緩和用の逆向きの磁束になり、励磁磁束によるロータコア7の磁気飽和が永久磁石17cの磁束で緩和される。その結果、各ステータコア13の励磁磁束を、各ロータコア7により多く通過させることができるようになり、アキシャルギャップモータ1cのトルクを増大できる。
【0068】
そして、各ロータコア7を通過する励磁磁束が増えるので、各ロータコア7を薄くして表側、裏側のロータ3cを薄型化することができ、アキシャルギャップモータの体格を小さくできる。なお、各永久磁石17cは各ロータコア7の左右の空いている側面に配置されるので、それによってアキシャルギャップモータ1cの体格が増加することもない。
【0069】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、図10〜図12を参照して説明する。
【0070】
図10は本実施形態のアキシャルギャップモータ1dを示し、アキシャルギャップモータ1dは、第2の実施形態の両面ステータ4bと第3の実施形態のロータ3cとを組合せ、ロータ3cからなる永久磁石17bを備えた表側のロータ3d、裏側のロータ3eの磁極面を、両面ステータ4bの永久磁石17aおよび界磁コイル18を備えた表側ステータ5c、裏側ステータ5dの磁極面に対向するように設けた構成である。
【0071】
図11はロータ3dの磁極面を示し、ロータ3d、3eは同じ構成であり、各ロータコア7のロータヨーク部8cの左右に永久磁石17bが配置されている。図12は両面ステータ4bの表側ステータ5cの磁極面を示し、表側ステータ5c、裏側ステータ5dは同じ構成であり、それぞれの各ステータコア13のステータヨーク部14cの磁極面側には界磁コイル18が設けられ、その裏側には図10に示すように表裏共用の各永久磁石17bが設けられている。なお、図10は図11のE−E線またはF−F線でロータ3d、3eを切断し、図12のG−G線でステータ5c、5dを切断した断面図である。
【0072】
上記のように構成されたアキシャルギャップモータ1dは、ロータ3d、表側ステータ5cの組合せ、ロータ3e、裏側ステータ5dの組合せそれぞれにおいて、ステータコイル15が通電されて磁極14a、14bが励磁されるステータコア13の励磁磁束は、磁極14aのN極から、接近するロータコア7のポール8a、8bを通って磁極4bのS極に入ってS極からN極に戻る際、ロータコア7の永久磁石17cの磁気飽和緩和用の逆向きの磁束によってロータコア7での磁気飽和が緩和され、さらに、ステータコア13の永久磁石17bによってステータコア13での磁気飽和も緩和されるので、磁束量が一層増加する。しかも、界磁コイル18の直流界磁の磁束が励磁磁束に重畳されるので、磁束量がさらに増加する。
【0073】
したがって、本実施形態のアキシャルギャップモータ1dは、ステータ3d、3eおよび両面ステータ4bのステータ5c、5dをともに小型化した構成で極めて大きなトルクを発生することができる。
【0074】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について、図13、図14を参照して説明する。それらの図面において、図1〜図5と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。
【0075】
図13は本実施形態のアキシャルギャップモータ1eを示し、アキシャルギャップモータ1eは、例えば第1の実施形態のロータ3a、3bと、両面ステータ4aに代わる両面ステータ4cとを組合せた構成である。
【0076】
両面ステータ4cは、第1の実施形態の表側ステータ5a、裏側ステータ5bに代わる表側ステータ5e、裏側ステータ5fを備える。
【0077】
図14は表側ステータ5eの磁極面を示し、ステータ5e、5fは同じ形状、構成であり、各ステータコア13間の空間部に周方向に着磁された外径側、内径側の永久磁石17d、17eが配設される。なお、ステータ5e、5fには、ステータ5a、5bの永久磁石17aは設けられず、磁極面の裏面側が例えば非磁性の樹脂体19等で磁気的に絶縁した状態で付き合わされる。また、図13はステータ5e、5fを図14のH−H線で切断した断面図である。
【0078】
そして、永久磁石17d、17eは、各ステータコア13の励磁磁極である磁極14a、14bの極性と同じ極性の磁極が、磁極14a、14bの側面に対面する。
【0079】
ここで、各ステータコア13は、ステータヨーク部14cに巻装されたステータコイル15の通電により、励磁極性が周方向に隣り合うステータコア13間で逆向きになり、磁極14a、14bの極性が両隣のステータコア13の磁極14a、14bの極性と逆になることから、図14に示すように、磁極14aがN極、磁極14bがS極に励磁されるステータコア13の磁極14a、14bには、外径側の永久磁石17dのN極、内径側の永久磁石17eのS極が対面して接合し、外径側の永久磁石17dのS極、内径側の永久磁石17eのN極は、磁極14aがS極、磁極14bがN極に励磁される隣のステータコア13の磁極14a、14bに対面して接合する。
【0080】
この場合、ステータコイル15の通電により、ステータ5e、5fの例えば磁極14aがS極、磁極14bがN極になるステータコア13の励磁磁束は、図13の破線の矢印線φ1に示すように、励磁磁束が磁極14bからロータ3a、3bの内径側、外径側を通って磁極14aに入り、ステータコア13内で磁極14aから磁極14bに至るループ磁路を通る。なお、磁極14aがN極、磁極14bがS極になるステータコア13の励磁磁束は、図13の破線の矢印線φ1と逆向きのループ磁路を通る。
【0081】
一方、永久磁石17d、17eの磁束は、ステータコイル15が通電されていなければ、図14の破線の矢印線φ3に示すように、例えば、外径側の永久磁石17dのN極から、対面するステータコア13の外径側、内径側および、内径側の永久磁石17eのS極、N極、隣のステータコア13の内径側、外径側を通って外径側の永久磁石17dのS極、N極に至るループ磁路(もともとは磁気的に独立していたステータコア13を永久磁石17d、17eでつないだ磁路)を通る。また、図14の破線の矢印線φ4に示すように、内径側の永久磁石17eのN極から、対面するステータコア13の内径側、外径側および、外径側の永久磁石17dのS極、N極、隣のステータコア13の外径側、内径側を通って内径側の永久磁石17eのS極、N極に至るループ磁路(同様に、もともとは磁気的に独立していたステータコア13を永久磁石17d、17eでつないだ磁路)を通る。
【0082】
そして、ステータコイル15が通電されず、磁極14a14bが励磁されない間は、永久磁石17d、17eにより発生する磁束は、隣同士のステータコア13を磁気的に結んた矢印線φ3、φ4のループ磁路に沿ってステータコア13内を周回する。
【0083】
つぎに、ステータコイル15が通電されて励磁磁束が発生すると、励磁磁束は、磁気抵抗の比較的小さなステータコア13、ロータコア7間の矢印線φ1のループ磁路を通る。このとき、永久磁石17d、17eは等価的に大きなギャップ(空隙)とみなされるので、漏れ磁束はごく僅かになる。そして、励磁磁束がステータコア13内を永久磁石17d、17eの磁束とは逆方向に進むので、永久磁石17d、17eの磁束が磁気飽和緩和用の逆向きの磁束を形成し、この磁束によって励磁磁束はステータコアコア13で磁気飽和に至りにくくなる。また、ステータコイル15が通電されて励磁磁束が発生すると、ステータ13内を周回していた永久磁石17d、17eの磁束は、励磁磁束によりステータコア13内を周回する磁路ループが堰止められ、励磁磁束と同じように、ステータコア13、ロータコア7間のループ磁路を通るようになって励磁磁束の増加に寄与する。したがって、励磁磁束の磁束量が増加し、アキシャルギャップモータ1eのトルクが増大する。
【0084】
そして、各ステータコア13間の周方向の隙間に永久磁石17d、17eを配置するので、アキシャルギャップモータ1eは永久磁石17d、17eによる体格の増加は生じない。そのため、アキシャルギャップモータ1eも小型の構成でトルクを増加できる。
【0085】
なお、永久磁石17d、17eは逆磁界に晒されるが、永久磁石17d、17eは厚み(周方向の長さ)が厚く(長く)なる。そして、永久磁石17d、17eは、厚みを厚くすることにより減磁に強<なり、安価な低グレードの永久磁石を使用することができ、問題はない。
【0086】
(第6の実施形態)
第5の実施形態の変形例である第6の実施形態について、図15、図16を参照して説明する。それらの図面において、図13、図14と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。なお、図15はステータ5g、5hを図16のI−I線で切断した断面図である。
【0087】
本実施形態のアキシャルギャップモータ1fは、アキシャルギャップモータ1eの両面ステータ4cを両面ステータ4dに取り替えた構成である。両面ステータ4dは、両面ステータ4cのステータ5e、5fに代えて表側ステータ5g、裏側ステータ5hを備える。ステータ5g、5hは図16に示すように永久磁石17d、17eを周方向に交互に配置した構成である。
【0088】
そして、アキシャルギャップモータ1fの各ステータコア13は、ステータヨーク部14cに巻装されたステータコイル15の通電により、アキシャルギャップモータ1eの各ステータコア13と同様、励磁磁束が図15の破線の矢印線φ1に示すループ磁路を通り、磁極14aがS極、磁極14bがN極になるステータコア13の励磁磁束は、励磁磁束が磁極14bからロータ3a、3bの内径側、外径側を通って磁極14aに入り、ステータコア13内で磁極14aから磁極14bに至る。
【0089】
一方、永久磁石17d、17eの磁束は、ステータコイル15が通電されなければ、図16の破線の矢印線に示すように、外径側の永久磁石17dのN極から対面するステータコア7の外径側(N極)および内径側(S極)、内径側の永久磁石17eの対面するS極およびN極、隣のロータコア7の内径側(N極)および外径側(S極)、その隣の外径側の永久磁石17cのN極、…のステータ5g、5hそれぞれの磁極面を周回する。
【0090】
そして、ステータコイル15が通電されると、この通電で励磁されたステータコア13においては、S極(磁極4bまたは磁極4a)からN極(磁極4aまたは磁極4b)に戻る励磁磁束に対して、永久磁石17d、17eの磁束は逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になる。
【0091】
そのため、アキシャルギャップモータ1fも、各永久磁石17d、17eの磁束とステータコイル15の通電により発生するステータ5g、5hの励磁磁束との協働で、励磁磁束による各ステータコア13の磁気飽和が緩和されて生じにくくなり、励磁磁束が増加してトルクが増大する。
【0092】
そして、アキシャルギャップモータ1e、1fの場合、永久磁石17c、17dにはステータコイル15の励磁により逆磁界がかかるが、永久磁石17d、17eを減磁に至らない磁石厚さ(具体的には周方向の長さ)にすれば、それ以上に永久磁石17d、17eを厚くしても磁束は増加しにくく、磁石厚さの効果は小さいことから、本実施形態のアキシャルギャップモータ1fでは、各ステータコア13間に永久磁石17d、17e交互に配置して、永久磁石17d、17eの配置数を少なくし、アキシャルギャップモータ1eより一層軽量、安価な構成としたものである。なお、永久磁石17d、17eには安価な低グレードの永久磁石を使用することが可能であるのは勿論である。
【0093】
そして、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、ロータコア7やステータコア13の個数は、8個、12個に限るものではない。また、駆動相の相数も3相に限るものではない。さらに、ロータコア7やステータコア13の形状、ポール8a、8bや磁極14a、14bの形状等も各実施形態の形状等に限るものではない。また、各ステータコイル15の構造や形状もどのようであってもよい。
【0094】
また、第2、第3、第4の実施形態のように、各ステータコア13の磁極14a、14bの極性が揃えられる場合(例えば外径側の磁極14aの極性が全てのステータコア13についてN極またはS極の同じ磁極になる場合)には、ステータに対向するロータは、ロータ3a、3bのようなリラクタンスモータロータ、ロータ3c、3d、3eのような永久磁石を配置したロータのいずれであってもよく、この場合、ロータとステータの両方に永久磁石を配置することが可能であり、界磁コイルを備えることもできる。なお、界磁コイルはロータ側に設けてもよいが、その場合には、ロータとともに回転する界磁コイルに給電するためのスリップリング等を要する。
【0095】
つぎに、本発明が適用されるアキシャルギャップモータは、ステータの磁極面が片面のアキシャルギャップモータであってもよく、具体的には、例えば表側ステータ5a、5c、5e、5gと表側のロータ3a、3dとで構成されたアキシャルギャップモータであってもよく、この場合も各実施形態の効果を奏するのは勿論である。
【0096】
つぎに、各実施形態のアキシャルギャップモータ1a〜1fは、いずれもそれぞれの構成をモータ軸2の方向に複数組み配置していわゆる多段構成にすることも可能であり、これらの場合も前記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
そして、本発明は、電気自動車等の駆動モータとしてのSRモータなどの種々の用途のアキシャルギャップモータに適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1a〜1f アキシャルギャップモータ
3a〜3e ロータ
4a〜4d、5a〜5h ステータ
7 ロータタコア
8a、8b ポール
8c ロータヨーク部
13 ステータコア
14a、14b 磁極
14c ステータヨーク部
15 ステータコイル
17a〜17e 永久磁石
18 界磁コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータを磁極面がモータ軸方向に対向するように配置されたアキシャルギャップモータに関し、詳しくは、トルクを増大する新規な構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップモータは、ステータとロータの磁極面がモータ軸方向に対向するように配置され、電気自動車等の駆動モータとしてのスイッチドリラクタンスモータ(以下、SRモータという)や、種々の電子機器のDCモータに置き換わるSRモータに用いられる。
【0003】
ところで、前記SRモータに用いられるアキシャルギャップモータやラジアルギャップモータにおいては、小型の構造でトルクアップを図ることが重要である。
【0004】
そして、前記SRモータに用いられるラジアルギャップモータにおいては、ステータの各突極の先端の隣接する隙間に磁石を配置し、磁石の磁束とコイルによる励磁磁束との協働関係を協力にしてロータにはたらく力をパワーアップし、トルクアップを図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は特許文献1に記載されているラジアルギャップモータ構成のSRモータ100のステータ鉄心部分およびロータ鉄心部分の平面図(同文献1の図2に対応)である。このSRモータ100は、ステータ110の外側にロータ120が同心状に配設されてアウターロータの構成である。ステータ110は、各突極111の先端の隣接する隙間それぞれに磁石(永久磁石)112が配置されている。そして、磁石112の磁束と各突極111に巻回されたコイル(ステータコイル)113による励磁磁束との協働関係を強力にして、ロータ120にはたらく力をコイル113による励磁磁束だけの場合より強力にしてトルクアップを図る。なお、図17の114は各突極111を繋ぐステータヨーク部としての連結部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−229404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図17のSRモータ100の場合、ステータ110の各突極111とそれらの先端側面に配置する磁石112との適当な接合面積を確保するため、その分、各突極111が長くなる。したがって、磁石112の磁束により磁石112を設けない場合よりトルクは大きくなるが、ステータ110の各突極111が長くなる分、SRモータ100の外径が大きくなって大型化し、SRモータ100の体格や質量が大きくなる。
【0008】
そして、SRモータ等に用いられるアキシャルギャップモータにおいても、大型化を防止しつつ、永久磁石の磁束とステータコイルの励磁磁束と協働でトルクを増大する具体的な構成は発明されていない。
【0009】
本発明は、SRモータ等に用いられるアキシャルギャップモータにおいて、大型化を防止しつつ、永久磁石の磁束とステータコイルの励磁磁束との協働によりトルクを増大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明のアキシャルギャップモータは、ステータの磁極面とロータの磁極面とがモータ軸方向に対向するアキシャルギャップモータであって、前記ステータは、楔形の複数のステータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記各ステータコアの外径側部分が外径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの内径側部分が前記内径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの前記外径側の磁極と前記内径側の磁極とを繋ぐステータヨーク部それぞれに前記外径側の磁極と前記内径側の磁極の各磁極対を励磁するステータコイルが巻装され、前記ロータは、楔形の複数のロータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記ステータおよび前記ロータの少なくともいずれかに、前記ステータコイルの通電により発生する励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石が配置されることを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記各永久磁石は、前記各ステ−タコアの前記ステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、前記ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられることを特徴としている(請求項2)。
【0012】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記各ステータコアの前記励磁磁束の極性は同じであり、前記各永久磁石は、前記各ロータコアの外径側部分と内径側部分とを繋ぐロータヨーク部近傍それぞれに、前記各ステータコイルにより励磁される極性に対して逆向きの着磁極性で径方向に設けられることを特徴としている(請求項3)。
【0013】
また、本発明のアキシャルギャップモータは、前記ステータコイルは、各ステータコアの前記ステータヨーク部それぞれに励磁極性が隣り合うステータコアどうしで逆向きになるように巻装され、前記各永久磁石は、前記各ステータコア間に前記各ステータコアの励磁磁極と同じ極性の磁極が前記各ステータヨークに対面するように着磁方向を周方向にして配置されることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、各ステータコアはステータコイルの通電により励磁極性にしたがった励磁磁束が発生し、この励磁磁束がステータコアのN極から近傍の対向しつつあるロータのロータコアを通ってステータコアのS極に入り、その際のロータとステータとの磁気作用でロータが回転する。このとき、ステータおよびロータの少なくともいずれかに配置された永久磁石により磁気飽和緩和用の磁束が予め形成され、この磁束はステータコア、ロータコアを通る励磁磁束と逆向きの磁束であり、磁気飽和緩和用の磁束によりステータコア、ロータコアは励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなる。そして、ステータコア、ロータコアがステータコイルにより励磁されて磁気飽和に至るまでに、ステータコイルに鎖交する磁束量は、永久磁石による磁気飽和緩和により増加する。
【0015】
図1(a)は前記永久磁石がある場合とない場合の各ステータコアのステータコイルを通電して生じる起磁力に対するヨーク部の磁束密度の変化例を示し、αが永久磁石がある場合の磁化曲線で囲まれる範囲(面積)、βが永久磁石がない場合の磁化曲線で囲まれる範囲(面積)であり、永久磁石がある場合は、その逆向きの磁束により、各ステータコアの励磁磁束の磁束密度が白抜きの矢印線に示すように負の方向ヘ移動し、各ステータコアは励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなる(α>β)ことが分かる。
【0016】
図1(b)は前記永久磁石がある場合とない場合の各ステータコアの起磁力に基づくステータコイルの鎖交磁束の変化例を示し、各ステータコアの磁気飽和による磁束上限は制限されるが、図1(a)の磁束密度の負の方向への移動により、励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなって永久磁石がある場合の磁化曲線により囲まれる範囲αが永久磁石のない場合の範囲βより大きくなるので、各ステータコアは永久磁石がある場合の鎖交磁束が、永久磁石がない場合より増加する。
【0017】
各永久磁石がロータに配置されている場合には、各ロータコアの励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなって各ロータコアの鎖交磁束が永久磁石がない場合より増加する。
【0018】
そのため、各永久磁石の磁束とステータコイルの通電により発生する励磁磁束との協働で、ステータコイルの通電で発生する励磁磁束による、ステータまたはロータ(より具体的にはステータコアまたはロータコア)の磁気飽和が緩和されて生じにくくなり、ステータコイルの鎖交磁束が増加してアキシャルギャップモータのトルクが増大する。
【0019】
そして、特許文献1のSRモータのような磁石とステータの各突極との適当な接合面積の確保は不要であり、しかも、各ステータコアや各ロータコアは磁気飽和が生じにくくなるのでそれだけ薄くすることができ、アキシャルギャップモータの大型化が防止される。
【0020】
したがって、従来に比べて小型・軽量化した構成で、アキシャルギャップモータのトルクの増大を図ることができる。
【0021】
請求項2に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、各永久磁石を、各ステ−タコアのステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられるので、例えばステータコイルの通電により、外径側の磁極がN極、内径側の磁極がS極に励磁されるステータコアは、その裏面側の永久磁石も外径側がN極、内径側がS極になる。そのため、そのステータコア内で内径側のS極から外径側のN極に向かう励磁磁束に対して、外径側のN極からステータコアを通って内径側のS極に向かう永久磁石の磁束が励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になり、励磁磁束による各ステータコアの磁気飽和を磁気飽和緩和用の磁束で緩和して請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏する具体的な構成を提供できる。
【0022】
しかも、各ステータコアにおいて、励磁磁束の極性と永久磁石の逆バイアス磁束の極性とは同じ向きであり、永久磁石の逆バイアス磁束が外径側をN極にする極性であれば、ステータコイルの通電時の励磁磁束の極性も外径側がN極になる。そのため、永久磁石が励磁磁束の逆磁界に晒されない構造になり、永久磁石に高Br(Br:残留磁束密度)・低Hcj(Hcj:保磁力)の小型のものを使用することができ、さらには、フェライト磁石などの低グレード磁石を用いることも可能になる利点がある。
【0023】
また、各ステータコアの励磁磁束の極性は、ステータコア毎に別個独立に設定できるので、ステータコア毎に逆極性にしてもよいが、全てのステータコアの励磁極性を同じ極性に設定し、例えば各ステータコイルの通電時の励磁磁束の極性を全て外径側がN極になる極性にすると、例えばステータの磁極面側の外径側の磁極と内径側の磁極の間に円環状の界磁コイルを設け、その直流界磁の磁束で各ステータコアの励磁磁束を一括して増加し、トルクをさらに大きくすることもできる。
【0024】
請求項3に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ロータの各ロータコアのヨーク部の近傍(例えば横)に、各永久磁石がステータコイルの励磁極性と逆の着磁極性で径方向に設けられるので、例えばステータコイルの通電により、各ステータコアの外径側の磁極がN極、内径側の磁極がS極に励磁されるとすると、対向するロータの各永久磁石は外径側の磁極がS極、内径側の磁極がN極に着磁される。このとき、ステータコイルの励磁磁束は、ステータコアの外径側のN極から、対向するロータコアの外径側、内径側を通って同じステータコアの内径側のS極に戻る。また、永久磁石のN極から出た磁束は、ロータコアの内径側、外径側を通って永久磁石のS極に戻る。
【0025】
したがって、ロータコア内において、外径側から内径側に向かう励磁磁束に対して、内径側から外径側に向かう永久磁石の磁束が逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になり、この磁束で励磁磁束による各ロータコアの磁気飽和緩和して請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏する具体的な構成を提供できる。
【0026】
しかも、前記磁気飽和の緩和により、永久磁石がない場合より各ロータコアを多くの励磁磁束が通るようになるので、各ロータコアを薄くしてロータを薄型化することができる。
【0027】
請求項4に係る本発明のアキシャルギャップモータの場合、ステータの各ステータコアは、励磁極性が周方向の隣のステータコアの励磁極性と逆になり、例えば外径側がN極、内径側がS極のステータコアの隣のステータコアは外径側がS極、内径側がN極になる。このとき、ステータコア間の例えば外径側に設けられる永久磁石は、そのN極が、励磁磁束で外径側がN極になるステータコアの外径側に対面し、そのS極が、励磁磁束で外径側がS極になる隣のステータコアの外径側に対面する。同様に、ステータコア間の内径側に設けられる永久磁石は、そのN極が、励磁磁束で内径側がN極になるステータコアの内径側に対面し、そのS極が、励磁磁束で内径側がS極になるステータコアの内径側に対面する。
【0028】
そして、永久磁石が各ステータコア間の外径側、内側側それぞれに設けられると、励磁磁束で外径側がN極、内径側がS極に励磁されるステータコアは、励磁磁束が、外径側のN極からロータコアを通って内径側のS極に入り、ステータコア内を内径側から外径側に戻る。また、このステータコアの外径側にN極が対面する外径側の永久磁石の磁束は、そのN極から対面するステータコアの外径側(N極)、内径側(S極)を通り、内径側にS極が対面する他の永久磁石のS極、N極を通って前記外径側の永久磁石のS極に戻る。
【0029】
したがって、ステータコイルの通電により励磁されるステータコアにおいて、励磁磁束は内径側(S極)から外径側(N極)に向かい、永久磁石の磁気飽和緩和用の磁束は外径側(N極)から内径側(S極)に向かい、励磁磁束と逆向きになり、請求項1に係る本発明のアキシャルギャップモータの効果を奏することができる。
【0030】
そして、各ステータコアの周方向の隙間に永久磁石を配置する構成であるので、ステータのスペースを有効活用してアキシャルギャップモータの体格の増加なくトルクを増加できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の効果の説明図であり、(a)は永久磁石がある場合とない場合のステータコイル起磁力に対する各ステータコアの磁束密度の変化例を示し、(b)は永久磁石がある場合とない場合のステータコイルの鎖交磁束の変化例を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図3】(a)は図2のロータの磁極面の拡大した正面図であり、(b)はその側面図である。
【図4】図2のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図5】(a)、(b)は図4のステータのステータコイルの巻装を説明する斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図7】図6のステータの界磁コイルの説明図である。
【図8】(a)は本発明の第3の実施形態のロータの磁極面の拡大した正面図、(b)はその側面図である。
【図9】図8のロータに対向するステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図11】図10のロータの磁極面の拡大した正面図である。
【図12】図10のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図14】図13のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態のステータ、ロータを組み合わせた状態の説明図である。
【図16】図15のステータの磁極面の拡大した正面図である。
【図17】従来のラジアルギャップモータ構成のスイッチドリラクタンスモータのステータ鉄心部分およびロータ鉄心部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図2〜図16を参照して詳述する。なお、それらの図面においては、モータ軸や断面のハッチング等は適宜省略している。
【0033】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図2〜図5を参照して説明する。
【0034】
図2は本実施形態のアキシャルギャップモータ1aを示し、アキシャルギャップモータ1aは、3相駆動のリラクタンスモータであり、モータ軸2の出力側(紙面左側の表側)から順に、平面視が略中空円板状のロータ3a、両面ステータ4a、ロータ3bを一定の隙間(ギャップ)を設けて配設されている。両面ステータ4aは表側ステータ5aと裏側ステータ5bとをギャップを設けて背中合せにつき合わせた構成である。
【0035】
ロータ3a、3bは、同じ形状、構造であって、ロータ3aの磁極面が表側ステータ5aの磁極面に対向し、ロータ3bの磁極面が裏側ステータ5bの磁極面に対向する向きに、同形状の前側(紙面左側)、後側のフランジシャフト6a、6bによりモータ軸2に取り付けられている。すなわち、ロータ3aの磁極面と表側ステータ5aの磁極面とはモータ軸2の方向に間隔を設けて対向し、裏側ステータ5bの磁極面とロータ3bの磁極面とはモータ軸2の方向に間隔を設けて対向する。
【0036】
フランジシャフト6a、6bは、モータ軸2が中心を貫通した円板状のフランジ部61の外周に円筒状の支持部62を取り付けた構造であり、支持部62がロータ3a、3bの中空部内に嵌入することでロータ3a、3bと一体にモータ軸2に取り付けられて回転する。ステータ4aはモータ軸2との間に隙間を設けて固定されている。なお、少なくともフランジシャフト6a、6bは、いずれも非磁性体の例えばステンレスで形成されている。
【0037】
図3(a)はロータ3bの磁極面の平面図であり、同図(b)は(a)のA−A線の断面図である。それらの図面に示すように、ロータ3a、3bは、それぞれ例えば圧粉磁心で形成された平面視楔形の8個のロータコア7が周方向に45度の間隔で配設された構成である。各ロータコア7は、外径側、内径側の突起したポール8a、8bをロータヨーク部8cで繋いだ構成であり、外径側、内径側に磁極部非磁性金属のリング体9a、9bが嵌められて放射状(環状)に固定される。ロータコア7間(隣接コア間)の隙間は、空間であってもよいが、例えば非磁性体の樹脂の充填部10で形成され、各ロータコア7は磁気的に独立している。
【0038】
図4は表側ステータ5aの磁極面の平面図を示し、表側ステータ5a、裏側ステータ5bは外径側、内径側に非磁性体金属のリング体11a、11bが嵌められて一体化されている。さらに、外径側のリング体11aの外側には、各相の一対の端子等を覆う樹脂被覆体12が重ねて設けられている。表側ステータ5aと裏側ステータ5bは同じ形状、構造であり、それぞれ、例えば圧粉磁心で形成された平面視楔形の12個(相当たり90度の間隔の4個)のステータコア13が周方向に30度の間隔で配設される。
【0039】
なお、図2はロータ3a、3bを図3のA−A線で切断し、ステータ5a、5bを図4のB−B線で切断した断面図である。
【0040】
各ステータコア13間(隣接コア間)の隙間は、図4では空間であるが、非磁性体の樹脂の充填部であってもよく、空間または充填部により各ステータコア13は磁気的に独立している。
【0041】
各ステータコア13は、本発明の対の磁極を形成する外径側の磁極14aと内径側の磁極14bの突起したティースを磁極間のステータヨーク部14cで繋いだ構成である。
【0042】
各ステータヨーク部14cは、ステータ磁極対14の磁極14a、14bを励磁する各相のステータコイル15が巻装される。ステータコイル15は、表側ステータ5a、裏側ステータ5bそれぞれの各ステータコア13のステータ磁極対14の磁極14a、14bを個別に励磁するように、表側ステータ5a、裏側ステータ5bそれぞれの各ステータコア13のステータヨーク部14cに別個に巻装されてもよいが、本実施形態の場合、各1個のステータコイル15が、表側ステータ5aと裏側ステータ5bの同じ位置のステータコア13のステータヨーク部14cにそれらを束ねるように外装された樹脂性のカセットホルダ16を介して巻装され、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの同じ位置のステータコア13の磁極14a、14bの励磁に共用される。
【0043】
このとき、各ステータコイル15は、図4に四角枠で囲んだN、Sに示すように、例えば磁極14a、14bの励磁極性が両隣のステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性と逆になるように、巻き方向あるいは通電方向が両隣のステータコイル15と逆に設定される。
【0044】
図5(a)、(b)は隣合う2位置(具体的には、例えば図4の位置P1、P2)それぞれのステータコイル15が巻装された状態の表側ステータ5a、裏側ステータ5bの斜視図であり、ステータコイル15の通電の起磁力により、同図(a)のステータコア13は磁極14aがS極、磁極14bがN極に励磁され、同図(b)のステータコア13は磁極14aがN極、磁極14bがS極に励磁される。それらの図中の矢印線はステータコイル15の起磁力の方向を示す。
【0045】
上記構成がアキシャルギャップモータ1aの基本的な構成であり、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの通電相のステータコイル15が通電されると、表側ステータ5a、裏側ステータ5bの通電相のステータコア13の磁極14a、14bが例えばN極、S極に励磁され、図2に示すように、ステータコア13の磁極(N極)14aからロータコア7を通ってステータコア13の磁極(S極)14bに至り、磁極14aに戻る破線の矢印線φ1の励磁磁束のループ磁路が形成され、このループ磁路を通る励磁磁束に基づく、ロータ3a、3bとステータ5a、5bとの磁気的な吸引動作によってアキシャルギャップモータ1aは回転する。
【0046】
本実施形態においては、ステータコイル15の励磁磁束によるステータコア13の磁気飽和を緩和するため、図1に示すように、ステータ5a、5bの各ステータコア13の略ステータヨーク部14cの磁極面の反対側を凹状部に形成し、磁気飽和緩和用の磁束を発生する表裏共用の各永久磁石17aを、N極、S極がステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性と同じ向きになるように(ステータコア13が通電時に外径側の磁極14aがN極となる向きに励磁されるのであれば、永久磁石17aは外径向きにN極になる向きに)着磁して表側、裏側の各ステータコア13のつき合わせた凹状部に接着して配置する。
【0047】
各永久磁石17aは磁路がステータコア13のステータヨーク部分14cで短絡され、その磁束は、図1の永久磁石17aのN極からステータコア13の裏面側を通って永久磁石17aのS極に戻る破線の矢印線φ2のループの短絡磁束であり、表側ステータ5a、裏側ステータ5bのステータコア13の通電時は、ステータコア13をS極からN極に向かう励磁磁束に対して、ステータコア13のN極からS極に向かう逆向きの磁束(磁気飽和緩和用の磁束)である。
【0048】
そして、磁極14a、14bが励磁されないステータコイル15の非通電時には、磁気飽和緩和用の磁束のうちのステータ5a、5bからロータ3a、3bへ進む分は僅かである(ステータコア13のステータヨーク部14cで短絡される磁気抵抗は、ステータ5a、5bとロータ3a、3bとの間のギャッブ磁気抵抗よりもかなり小さいため、磁束のほとんどは各ステータコア13内で短絡される)。
【0049】
一方、ステータコイル15が通電されて磁極14a、14bが励磁される通電時は、ステータコイル15の通電による励磁方向と永久磁石17aの着磁の磁化方向(N極、S極の向き)とが同じであり、ステータコイル15の起磁力により生じた励磁磁束は、前記したように、各ステータコア13から外部のロータコア7を通って各ステータコア13に戻る。
【0050】
このとき、ステータコイル15の起磁力により生じる励磁磁束と、ステータヨーク部分12cを通る永久磁石17aの短絡磁束とは逆向きであって磁気飽和緩和用の磁束を形成し、この磁束により、ステータヨーク部12cの磁束密度は負の方向ヘ移動し、ステータヨーク部14cの磁束密度の変化範囲が図1(a)に示したように範囲βから範囲αに広がる。そのため、各ステータコア13は磁気飽和が緩和されて励磁磁束による磁気飽和が生じにくくなり、図1(b)に示したように、前記起磁力に対する各ステータコイル15の鎖交磁束は永久磁石による磁束飽和緩和により増加する。
【0051】
したがって、各永久磁石17aの磁束と各ステータコア13のステータコイル15の励磁磁束との協働で、各ステータコア13の厚みを薄くしてアキシャルギャップモータ1aのトルクを増大することができ、アキシャルギャップモータ1aの大型化を防止しつつトルクアップを図ることができる。
【0052】
なお、アキシャルギャップモータ1aのステータが、両面を磁極面とする両面ステータ4aで形成され、両面ステータ4aの表側ステータ5aと裏側ステータ5bの各ステータコア13の磁極14a、14bが、表裏共用のステータコイル15の通電でともに励磁されるので、部品数が一層少なくなってアキシャルギャップモータ1aの一層の小型化等を図ることができる利点もある。
【0053】
各ステータコア13において、励磁磁束の極性と永久磁石17aの磁束の極性とは同じ向きであり、永久磁石17aの逆バイアス磁束が外径側をN極にする極性であれば、ステータコイル15の通電時の励磁磁束の極性も外径側がN極になるので、永久磁石17aが励磁磁束の逆磁界に晒されない構造になり、永久磁石17aに高Br(Br:残留磁束密度)・低Hcj(Hcj:保磁力)の小型のものを使用することができ、さらには、フェライト磁石などの低グレード磁石を用いることも可能になる利点がある。
【0054】
各ステータコア13の永久磁石17aの着磁極性は、各ロータコア7、各ステータコア13が磁気的に独立しているので、表側ステータ5a、裏側ステータ5bにおいて、ステータコア13毎にそれぞれの磁極14a、14bの磁極対の極性に応じて別個独立に設定してよく、ステータコア13の磁極14a、14bの極性の設定によっては、両隣のステータコア13の永久磁石17aと同じ極性になってもよい。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の変形例である第2の実施形態について、図6、図7を参照して説明する。
【0056】
図6は本実施形態のアキシャルギャップモータ1bのステータ5c、5dを図7のC−C線に沿って切断した場合のモータの断面図であり、図7は図4に対応する表側ステータ5cの磁極面の平面図であり、それらの図面において、図2〜図5と同一符号は、同位置もしくは相当するものを示す。なお、図7においては後述する界磁コイル18を一部切り欠いて示している。
【0057】
アキシャルギャップモータ1bがアキシャルギャップモータ1aと異なる点は、アキシャルギャップモータ1aの両面ステータ4aに代えてつぎの構成の両面ステータ4bを備える点である。
【0058】
両面ステータ4bは、両面ステータ4aの表側ステータ5a、裏側ステータ5bに対応する表側ステータ5c、裏側ステータ5dを備える。ステータ5c、5dにおいては、(a)後述する界磁コイル18の直流界磁を一括して励磁磁束に重畳するため、各ステータコア13の磁極14a、14bが、各ステータコイル15の通電によって同じ極性、例えば図7に示すように外径側の磁極14aがN極、内径側の磁極がS極の極性に励磁される。(b)アキシャルギャップモータ1aの各永久磁石17aに代えて、各ステータコア13の磁極14a、14bの励磁極性に応じて全て外径側がN極の永久磁石17bが、各ステータコア13の磁極面の裏側のつき合わせた凹状部に配置される。(c)ステータ5c、5dそれぞれに、各ステータコア13のステータヨーク部14cのステータコイル15に重なるように、環状の界磁コイル18を磁極面側に配置し、界磁コイル18の直流界磁の磁束を各ステータコイル15の励磁磁束に一括して重畳し、励磁磁束量を増加する。
【0059】
したがって、本実施形態のアキシャルギャップモータ1bは、界磁コイル18の直流界磁の磁束の重畳に基づき、アキシャルギャップモータ1aより励磁磁束が増加して一層のトルク増加を図ることができる。
【0060】
なお、表側ステータ5c、裏側ステータ5dにおいて、各ステータコア13の磁極14aをS極、内径側の磁極14bをN極に励磁し、永久磁石17bを全て外径側がS極になるように着磁してもよいのは勿論である。
【0061】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、図8、図9を参照して説明する。
【0062】
図8(a)は本実施形態のアキシャルギャップモータ1cのロータ3cの磁極面を示し、同図(b)は(a)のD−D線の断面図である。図9はロータ3cに対向するロータ5cの磁極面を示す。それらの図面において、図6、図7と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。
【0063】
本実施形態のアキシャルギャップモータ1cは、本発明の永久磁石を少なくともロータ側に配置したものであり、具体的には、図6、図7の第2の実施形態のアキシャルギャップモータ1bにおいて、ロータ3a、3bを図8(a)のロータ3cに置き換え、両面ステータ4bの表側ステータ5c、裏側ステータ5dを、例えば、永久磁石17bおよび界磁コイル18を省いた図8(b)のステータ5cに置き換えた構成としたものである。
【0064】
すなわち、アキシャルギャップモータ1cは、表側、裏側のステータ5cの各ステータコア13の磁極14a、14bが、ステータコイル15の通電により、同じ励磁極性、例えば図9に示すように外径側の磁極14aがいずれもN極、内径側の磁極14bがいずれもS極に励磁される。本発明の永久磁石を少なくともロータ側に配置する場合、各永久磁石の径方向の着磁極性を同じ向きに揃えるため、各ステータコア13の励磁極性も同じ向きに設定される。
【0065】
また、表側、裏側のステータ5cに対向する表側、裏側のロータ3cは、各ロータコア7のロータヨーク部8cの近傍、例えば、ロータヨーク部8cの左右の少なくともいずれか一方、ここでは両方に、ステータ5cの各ステータコア13の励磁極性とは逆の着磁極性、すなわち、外径側がS極で内径側がN極の極性に径方向に着磁された永久磁石17cが配置される。
【0066】
この場合、表側、裏側のステータ5cの各ステータコア13の励磁磁束は、磁極14aのN極からロータ3cの対向するロータコア7の外径側のポール8a、ロータヨーク部8c、内径側のポール8bを通って磁極14bのS極に入り、ステータコア13内をS極からN極に戻る。また、ロータ3cにおいて、各ロータコア7のロータヨーク部8cの左右の永久磁石17cは、図8の破線の矢印線のループに示すように、内径側のN極から、ロータコア7の内径側のポール8b、ロータヨーク部8c、外径側のポール8aを通って外径側のS極に入る磁束を発生する。
【0067】
したがって、通電励磁されるステータコア13に接近するロータコア7においては、外径側から内径側に向かう励磁磁束に対して、永久磁石17cの磁束が内径側から外径側に向かう磁気飽和緩和用の逆向きの磁束になり、励磁磁束によるロータコア7の磁気飽和が永久磁石17cの磁束で緩和される。その結果、各ステータコア13の励磁磁束を、各ロータコア7により多く通過させることができるようになり、アキシャルギャップモータ1cのトルクを増大できる。
【0068】
そして、各ロータコア7を通過する励磁磁束が増えるので、各ロータコア7を薄くして表側、裏側のロータ3cを薄型化することができ、アキシャルギャップモータの体格を小さくできる。なお、各永久磁石17cは各ロータコア7の左右の空いている側面に配置されるので、それによってアキシャルギャップモータ1cの体格が増加することもない。
【0069】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、図10〜図12を参照して説明する。
【0070】
図10は本実施形態のアキシャルギャップモータ1dを示し、アキシャルギャップモータ1dは、第2の実施形態の両面ステータ4bと第3の実施形態のロータ3cとを組合せ、ロータ3cからなる永久磁石17bを備えた表側のロータ3d、裏側のロータ3eの磁極面を、両面ステータ4bの永久磁石17aおよび界磁コイル18を備えた表側ステータ5c、裏側ステータ5dの磁極面に対向するように設けた構成である。
【0071】
図11はロータ3dの磁極面を示し、ロータ3d、3eは同じ構成であり、各ロータコア7のロータヨーク部8cの左右に永久磁石17bが配置されている。図12は両面ステータ4bの表側ステータ5cの磁極面を示し、表側ステータ5c、裏側ステータ5dは同じ構成であり、それぞれの各ステータコア13のステータヨーク部14cの磁極面側には界磁コイル18が設けられ、その裏側には図10に示すように表裏共用の各永久磁石17bが設けられている。なお、図10は図11のE−E線またはF−F線でロータ3d、3eを切断し、図12のG−G線でステータ5c、5dを切断した断面図である。
【0072】
上記のように構成されたアキシャルギャップモータ1dは、ロータ3d、表側ステータ5cの組合せ、ロータ3e、裏側ステータ5dの組合せそれぞれにおいて、ステータコイル15が通電されて磁極14a、14bが励磁されるステータコア13の励磁磁束は、磁極14aのN極から、接近するロータコア7のポール8a、8bを通って磁極4bのS極に入ってS極からN極に戻る際、ロータコア7の永久磁石17cの磁気飽和緩和用の逆向きの磁束によってロータコア7での磁気飽和が緩和され、さらに、ステータコア13の永久磁石17bによってステータコア13での磁気飽和も緩和されるので、磁束量が一層増加する。しかも、界磁コイル18の直流界磁の磁束が励磁磁束に重畳されるので、磁束量がさらに増加する。
【0073】
したがって、本実施形態のアキシャルギャップモータ1dは、ステータ3d、3eおよび両面ステータ4bのステータ5c、5dをともに小型化した構成で極めて大きなトルクを発生することができる。
【0074】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について、図13、図14を参照して説明する。それらの図面において、図1〜図5と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。
【0075】
図13は本実施形態のアキシャルギャップモータ1eを示し、アキシャルギャップモータ1eは、例えば第1の実施形態のロータ3a、3bと、両面ステータ4aに代わる両面ステータ4cとを組合せた構成である。
【0076】
両面ステータ4cは、第1の実施形態の表側ステータ5a、裏側ステータ5bに代わる表側ステータ5e、裏側ステータ5fを備える。
【0077】
図14は表側ステータ5eの磁極面を示し、ステータ5e、5fは同じ形状、構成であり、各ステータコア13間の空間部に周方向に着磁された外径側、内径側の永久磁石17d、17eが配設される。なお、ステータ5e、5fには、ステータ5a、5bの永久磁石17aは設けられず、磁極面の裏面側が例えば非磁性の樹脂体19等で磁気的に絶縁した状態で付き合わされる。また、図13はステータ5e、5fを図14のH−H線で切断した断面図である。
【0078】
そして、永久磁石17d、17eは、各ステータコア13の励磁磁極である磁極14a、14bの極性と同じ極性の磁極が、磁極14a、14bの側面に対面する。
【0079】
ここで、各ステータコア13は、ステータヨーク部14cに巻装されたステータコイル15の通電により、励磁極性が周方向に隣り合うステータコア13間で逆向きになり、磁極14a、14bの極性が両隣のステータコア13の磁極14a、14bの極性と逆になることから、図14に示すように、磁極14aがN極、磁極14bがS極に励磁されるステータコア13の磁極14a、14bには、外径側の永久磁石17dのN極、内径側の永久磁石17eのS極が対面して接合し、外径側の永久磁石17dのS極、内径側の永久磁石17eのN極は、磁極14aがS極、磁極14bがN極に励磁される隣のステータコア13の磁極14a、14bに対面して接合する。
【0080】
この場合、ステータコイル15の通電により、ステータ5e、5fの例えば磁極14aがS極、磁極14bがN極になるステータコア13の励磁磁束は、図13の破線の矢印線φ1に示すように、励磁磁束が磁極14bからロータ3a、3bの内径側、外径側を通って磁極14aに入り、ステータコア13内で磁極14aから磁極14bに至るループ磁路を通る。なお、磁極14aがN極、磁極14bがS極になるステータコア13の励磁磁束は、図13の破線の矢印線φ1と逆向きのループ磁路を通る。
【0081】
一方、永久磁石17d、17eの磁束は、ステータコイル15が通電されていなければ、図14の破線の矢印線φ3に示すように、例えば、外径側の永久磁石17dのN極から、対面するステータコア13の外径側、内径側および、内径側の永久磁石17eのS極、N極、隣のステータコア13の内径側、外径側を通って外径側の永久磁石17dのS極、N極に至るループ磁路(もともとは磁気的に独立していたステータコア13を永久磁石17d、17eでつないだ磁路)を通る。また、図14の破線の矢印線φ4に示すように、内径側の永久磁石17eのN極から、対面するステータコア13の内径側、外径側および、外径側の永久磁石17dのS極、N極、隣のステータコア13の外径側、内径側を通って内径側の永久磁石17eのS極、N極に至るループ磁路(同様に、もともとは磁気的に独立していたステータコア13を永久磁石17d、17eでつないだ磁路)を通る。
【0082】
そして、ステータコイル15が通電されず、磁極14a14bが励磁されない間は、永久磁石17d、17eにより発生する磁束は、隣同士のステータコア13を磁気的に結んた矢印線φ3、φ4のループ磁路に沿ってステータコア13内を周回する。
【0083】
つぎに、ステータコイル15が通電されて励磁磁束が発生すると、励磁磁束は、磁気抵抗の比較的小さなステータコア13、ロータコア7間の矢印線φ1のループ磁路を通る。このとき、永久磁石17d、17eは等価的に大きなギャップ(空隙)とみなされるので、漏れ磁束はごく僅かになる。そして、励磁磁束がステータコア13内を永久磁石17d、17eの磁束とは逆方向に進むので、永久磁石17d、17eの磁束が磁気飽和緩和用の逆向きの磁束を形成し、この磁束によって励磁磁束はステータコアコア13で磁気飽和に至りにくくなる。また、ステータコイル15が通電されて励磁磁束が発生すると、ステータ13内を周回していた永久磁石17d、17eの磁束は、励磁磁束によりステータコア13内を周回する磁路ループが堰止められ、励磁磁束と同じように、ステータコア13、ロータコア7間のループ磁路を通るようになって励磁磁束の増加に寄与する。したがって、励磁磁束の磁束量が増加し、アキシャルギャップモータ1eのトルクが増大する。
【0084】
そして、各ステータコア13間の周方向の隙間に永久磁石17d、17eを配置するので、アキシャルギャップモータ1eは永久磁石17d、17eによる体格の増加は生じない。そのため、アキシャルギャップモータ1eも小型の構成でトルクを増加できる。
【0085】
なお、永久磁石17d、17eは逆磁界に晒されるが、永久磁石17d、17eは厚み(周方向の長さ)が厚く(長く)なる。そして、永久磁石17d、17eは、厚みを厚くすることにより減磁に強<なり、安価な低グレードの永久磁石を使用することができ、問題はない。
【0086】
(第6の実施形態)
第5の実施形態の変形例である第6の実施形態について、図15、図16を参照して説明する。それらの図面において、図13、図14と同一符号は同一もしくは相当するものを示す。なお、図15はステータ5g、5hを図16のI−I線で切断した断面図である。
【0087】
本実施形態のアキシャルギャップモータ1fは、アキシャルギャップモータ1eの両面ステータ4cを両面ステータ4dに取り替えた構成である。両面ステータ4dは、両面ステータ4cのステータ5e、5fに代えて表側ステータ5g、裏側ステータ5hを備える。ステータ5g、5hは図16に示すように永久磁石17d、17eを周方向に交互に配置した構成である。
【0088】
そして、アキシャルギャップモータ1fの各ステータコア13は、ステータヨーク部14cに巻装されたステータコイル15の通電により、アキシャルギャップモータ1eの各ステータコア13と同様、励磁磁束が図15の破線の矢印線φ1に示すループ磁路を通り、磁極14aがS極、磁極14bがN極になるステータコア13の励磁磁束は、励磁磁束が磁極14bからロータ3a、3bの内径側、外径側を通って磁極14aに入り、ステータコア13内で磁極14aから磁極14bに至る。
【0089】
一方、永久磁石17d、17eの磁束は、ステータコイル15が通電されなければ、図16の破線の矢印線に示すように、外径側の永久磁石17dのN極から対面するステータコア7の外径側(N極)および内径側(S極)、内径側の永久磁石17eの対面するS極およびN極、隣のロータコア7の内径側(N極)および外径側(S極)、その隣の外径側の永久磁石17cのN極、…のステータ5g、5hそれぞれの磁極面を周回する。
【0090】
そして、ステータコイル15が通電されると、この通電で励磁されたステータコア13においては、S極(磁極4bまたは磁極4a)からN極(磁極4aまたは磁極4b)に戻る励磁磁束に対して、永久磁石17d、17eの磁束は逆向きの磁気飽和緩和用の磁束になる。
【0091】
そのため、アキシャルギャップモータ1fも、各永久磁石17d、17eの磁束とステータコイル15の通電により発生するステータ5g、5hの励磁磁束との協働で、励磁磁束による各ステータコア13の磁気飽和が緩和されて生じにくくなり、励磁磁束が増加してトルクが増大する。
【0092】
そして、アキシャルギャップモータ1e、1fの場合、永久磁石17c、17dにはステータコイル15の励磁により逆磁界がかかるが、永久磁石17d、17eを減磁に至らない磁石厚さ(具体的には周方向の長さ)にすれば、それ以上に永久磁石17d、17eを厚くしても磁束は増加しにくく、磁石厚さの効果は小さいことから、本実施形態のアキシャルギャップモータ1fでは、各ステータコア13間に永久磁石17d、17e交互に配置して、永久磁石17d、17eの配置数を少なくし、アキシャルギャップモータ1eより一層軽量、安価な構成としたものである。なお、永久磁石17d、17eには安価な低グレードの永久磁石を使用することが可能であるのは勿論である。
【0093】
そして、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、ロータコア7やステータコア13の個数は、8個、12個に限るものではない。また、駆動相の相数も3相に限るものではない。さらに、ロータコア7やステータコア13の形状、ポール8a、8bや磁極14a、14bの形状等も各実施形態の形状等に限るものではない。また、各ステータコイル15の構造や形状もどのようであってもよい。
【0094】
また、第2、第3、第4の実施形態のように、各ステータコア13の磁極14a、14bの極性が揃えられる場合(例えば外径側の磁極14aの極性が全てのステータコア13についてN極またはS極の同じ磁極になる場合)には、ステータに対向するロータは、ロータ3a、3bのようなリラクタンスモータロータ、ロータ3c、3d、3eのような永久磁石を配置したロータのいずれであってもよく、この場合、ロータとステータの両方に永久磁石を配置することが可能であり、界磁コイルを備えることもできる。なお、界磁コイルはロータ側に設けてもよいが、その場合には、ロータとともに回転する界磁コイルに給電するためのスリップリング等を要する。
【0095】
つぎに、本発明が適用されるアキシャルギャップモータは、ステータの磁極面が片面のアキシャルギャップモータであってもよく、具体的には、例えば表側ステータ5a、5c、5e、5gと表側のロータ3a、3dとで構成されたアキシャルギャップモータであってもよく、この場合も各実施形態の効果を奏するのは勿論である。
【0096】
つぎに、各実施形態のアキシャルギャップモータ1a〜1fは、いずれもそれぞれの構成をモータ軸2の方向に複数組み配置していわゆる多段構成にすることも可能であり、これらの場合も前記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
そして、本発明は、電気自動車等の駆動モータとしてのSRモータなどの種々の用途のアキシャルギャップモータに適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1a〜1f アキシャルギャップモータ
3a〜3e ロータ
4a〜4d、5a〜5h ステータ
7 ロータタコア
8a、8b ポール
8c ロータヨーク部
13 ステータコア
14a、14b 磁極
14c ステータヨーク部
15 ステータコイル
17a〜17e 永久磁石
18 界磁コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの磁極面とロータの磁極面とがモータ軸方向に対向するアキシャルギャップモータであって、
前記ステータは、楔形の複数のステータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記各ステータコアの外径側部分が外径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの内径側部分が前記内径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの前記外径側の磁極と前記内径側の磁極とを繋ぐステータヨーク部それぞれに前記外径側の磁極と前記内径側の磁極の各磁極対を励磁するステータコイルが巻装され、
前記ロータは、楔形の複数のロータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、
前記ステータおよび前記ロータの少なくともいずれかに、前記ステータコイルの通電により発生する励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石が配置されることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記各永久磁石は、前記各ステ−タコアの前記ステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、前記ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記各ステータコアの前記励磁磁束の極性は同じであり、
前記各永久磁石は、前記各ロータコアの外径側部分と内径側部分とを繋ぐロータヨーク部近傍それぞれに、前記各ステータコイルにより励磁される極性に対して逆向きの着磁極性で径方向に設けられることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記ステータコイルは、各ステータコアの前記ステータヨーク部それぞれに励磁極性が隣り合うステータコアどうしで逆向きになるように巻装され、
前記各永久磁石は、前記各ステータコア間に前記各ステータコアの励磁磁極と同じ極性の磁極が前記各ステータヨークに対面するように着磁方向を周方向にして配置されることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項1】
ステータの磁極面とロータの磁極面とがモータ軸方向に対向するアキシャルギャップモータであって、
前記ステータは、楔形の複数のステータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、前記各ステータコアの外径側部分が外径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの内径側部分が前記内径側の磁極を形成し、前記各ステータコアの前記外径側の磁極と前記内径側の磁極とを繋ぐステータヨーク部それぞれに前記外径側の磁極と前記内径側の磁極の各磁極対を励磁するステータコイルが巻装され、
前記ロータは、楔形の複数のロータコアが磁気的に独立した状態で周方向に配設され、
前記ステータおよび前記ロータの少なくともいずれかに、前記ステータコイルの通電により発生する励磁磁束と逆向きの磁気飽和緩和用の磁束を形成する複数の永久磁石が配置されることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記各永久磁石は、前記各ステ−タコアの前記ステータヨーク部の磁極面の裏面側それぞれに、前記ステータコイルの励磁極性と同じ着磁極性で径方向に設けられることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記各ステータコアの前記励磁磁束の極性は同じであり、
前記各永久磁石は、前記各ロータコアの外径側部分と内径側部分とを繋ぐロータヨーク部近傍それぞれに、前記各ステータコイルにより励磁される極性に対して逆向きの着磁極性で径方向に設けられることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記ステータコイルは、各ステータコアの前記ステータヨーク部それぞれに励磁極性が隣り合うステータコアどうしで逆向きになるように巻装され、
前記各永久磁石は、前記各ステータコア間に前記各ステータコアの励磁磁極と同じ極性の磁極が前記各ステータヨークに対面するように着磁方向を周方向にして配置されることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−165506(P2012−165506A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22313(P2011−22313)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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