説明

アキシャルギャップ型電動車用モータ

【課題】本発明は、励磁コイルで発生する磁束の漏れを低減することで回転トルクをより大きくし得るアキシャルギャップ型の電動車用モータを提供する。
【解決手段】本発明の電動車用モータMTaは、中心から所定の距離だけ離れた位置であって周方向に所定の間隔で配設される複数の永久磁石片12を持ちロータとして機能するホイールベースWBを備える車輪WHaと、ホイールベースWBの軸方向の両端面に間隔を空けてそれぞれ対向する第1および第2励磁コイル20、30と、第1および第2励磁コイル20、30におけるホイールベースWBに対向する第1および第2励磁コイル一方端面と対向する第1および第2励磁コイル他方端面に対向する第1および第2ステータコア40、50と、車輪WHaの外側を通って第1ステータコア40と第2ステータコア50とを連結する連結コア60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動輪に直接的に設けられ、前記駆動輪を駆動するアキシャルギャップ型電動車用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への負荷を低減するべく、総合的な燃費を向上させ、トータルな二酸化炭素の排出を抑制することができることから、モータ(電動機)を用いた、いわゆるハイブリッド自動車や電気自動車が盛んに研究開発されている。また、モータを用いた車両には、このようなハイブリッド自動車や電気自動車だけでなく、電動オートバイ(電動バイク)、電動スクータおよびアシスト自転車等の電動二輪車あるいは電動車椅子等も知られている。
【0003】
このようなモータを搭載した車両には、共通の課題として、例えば乗り心地を悪くするコギングトルクの問題や体積当たりのトルクの増大化の問題がある。このような問題を解消するために、例えば、特許文献1に電動二輪車用モータが提案されている。
【0004】
この特許文献1に開示の電動二輪車用モータは、電動二輪車の駆動輪を減速機を介して駆動する電動モータを有し、前記電動モータは、固定子を外囲する回転子が配設されたアウターロータ型ブラシレスモータであり、かつ前記固定子の外形が150〜200mmであり、前記固定子にコイルが集中巻きされ、前記回転子の極数が24であり、かつ前記固定子のスロット数が27であり、主磁気回路として前記回転子に周方向に配設された複数の円弧状マグネットがネオジマグネットであり、前記固定子と前記回転子との間のエアギャップが前記ネオジマグネットの厚さの0.5〜1.5倍であり、前記固定子に設けられたティースの巻線部分の周方向幅が当該ティースの先端部分の周方向幅の0.4〜0.6倍であるものである。前記特許文献1によれば、このような構成の電動二輪車用モータは、コギングトルクの影響を小さくすることができ、大きなトルクを発生させることができる一方、コンパクト化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−284726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示の電動二輪車用モータは、減速機を介して駆動輪を駆動するため、機械損失を生じてしまい、効率的に駆動輪を駆動することが難しい。そのため、モータを駆動輪に組み込んだインホイール方式とすることが考えられるが、ラジアルギャップ型であってアウターローラ型であるため、固定子のサイズ等から生じる制約によってそのラジアルギャップ位置は、駆動輪における比較的大きな半径位置、例えば、半径の中央に位置し、そこで回転トルクを発生することになるので、大きな回転トルクを得るためには、比較的大きな電流を必要としてしまう。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、励磁コイルで発生する磁束の漏れを低減することによって回転トルクをより大きくすることができるアキシャルギャップ型電動車用モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるアキシャルギャップ型電動車用モータは、ホイールベースを備える車輪と、複数の永久磁石片を備えるロータと、前記ロータにおける軸方向の端面に間隔を空けて対向する励磁コイルと前記励磁コイルによって生じた磁束を通すコアとを備えるステータとを備え、前記ロータにおける複数の永久磁石片は、前記車輪のホイールベースに、その中心から所定の距離だけ離れた位置であって周方向に所定の間隔で配設され、前記ステータの励磁コイルは、前記ロータにおける軸方向の一方端面に前記間隔を空けて対向する第1励磁コイルと、前記ロータにおける軸方向の他方端面に前記間隔を空けて対向する第2励磁コイルとを備え、前記ステータのコアは、前記第1励磁コイルにおける前記ロータに対向する第1励磁コイル一方端面と対向する第1励磁コイル他方端面に対向する第1ステータコアと、前記第2励磁コイルにおける前記ロータに対向する第2励磁コイル一方端面と対向する第2励磁コイル他方端面に対向する第2ステータコアと、前記車輪の外側を通って前記第1ステータコアと前記第2ステータコアとを連結する連結コアとを備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータでは、第1および第2励磁コイルの第1および第2励磁コイル他方端面は、磁束線の開放端となるが、これら第1および第2励磁コイルの第1および第2励磁コイル他方端面にそれぞれ対向する第1および第2ステータコアで磁束を収集し、これら第1および第2ステータコアでそれぞれ収集した磁束を連結コアに通すことによって、磁束線を閉ループとすることができる。この結果、このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータは、漏れ磁束を低減することができ、回転トルクをより大きくすることができる。
【0010】
また、他の一態様では、上述のアキシャルギャップ型電動車用モータにおいて、前記第1および第2励磁コイルのそれぞれは、帯状の導体部材であって、前記帯状の導体部材の幅方向が前記ロータの永久磁石によって形成される磁束の方向と略一致するように、渦巻き状に巻き回されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータでは、第1および第2励磁コイルのそれぞれは、帯状(テープ状、リボン状)の導体部材であって、前記帯状の導体部材の幅方向が前記ロータの永久磁石によって形成される磁束の方向と略一致するように、渦巻き状に巻き回されているので、磁束に直交する面における前記導体部材の断面積が小さくなる。このため、このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータは、その渦電流損を小さくすることができ、その効率を向上することができる。
【0012】
また、他の一態様では、上述のアキシャルギャップ型電動車用モータにおいて、前記ロータは、前記ホイールベースの磁性と異なる磁性を持つ磁性体片を前記永久磁石片に代えて備え、前記第1および第2励磁コイルは、それぞれ、複数であり、前記複数の第1および第2励磁コイルは、スイッチドリアクタンス作用によって前記ステータに対し前記ロータが回転するように給電されることを特徴とする。
【0013】
このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータは、永久磁石に代えて磁性体片を備えるので、比較的高価なレアメタルを含有する永久磁石を用いずに済み、低コスト化が可能となる。また、このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータは、車輪に永久磁石を用いないので、例えば路面から鉄粉等を吸着しないので、その除去も不要となる。
【0014】
また、他の一態様では、これら上述のアキシャルギャップ型電動車用モータにおいて、前記ステータのコアは、磁気的に等方性を有し、軟磁性粉末を成型したものであることを特徴とする。
【0015】
このような構成のアキシャルギャップ型電動車用モータは、所望の磁気特性が比較的容易に得られるとともに、比較的容易に所望の形状に成形され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるアキシャルギャップ型電動車用モータは、励磁コイルで発生する磁束の漏れを低減することによって回転トルクをより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態における電動車用モータを搭載した車輪の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電動車用モータの構成を示す図である。
【図3】第2実施形態における電動車用モータを搭載した車輪の外観構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0019】
(第1実施形態)
本実施形態におけるアキシャルギャップ型電動車用モータを用いた電動車両の一例として、電動スクータの場合について説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態における電動車用モータを搭載した車輪の外観構成を示す斜視図である。図1は、内部を透視することができるように第1励磁ステータコアが仮想線で示されている。なお、図1には、車輪の一方面のみが示されている。図2は、図1に示す電動車用モータの構成を示す図である。図2(A)は、斜視図であり、図2(B)は、第1ステータコア40および第1励磁コイル30を除いた状態における正面図である。
【0021】
電動スクータは、大略、車体フレームと、前記車体フレームの進行方向前方に操舵可能に設けられたフロントフォーク(フロントアーム)に回転自在に支持された前輪(操舵輪)と、前記車体フレームの進行方向後方に設けられたリアフォーク(リアアーム)に回転自在に支持された後輪と、前記フロントフォークの上端に設けられ前記前輪を操舵するハンドルと、前記車体フレームに設けられ運転者が着座するシートと、電動車用モータMTaとを備えて構成されている。この電動車用モータMTaは、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の車輪(ホイール)に直接的に設けられる(インホイール方式)。すなわち、この電動車用モータMTaによって発生した回転トルクを例えばギア等の減速機を介することなく直接前記車輪に伝達して前記車輪を駆動することができるように電動車用モータMTaが前記車輪に組み込まれ、これら前記車輪および電動車用モータMTaが構成される。
【0022】
このような車輪(ホイール)WHaは、例えば、図1に示すように、ホイールベースWBと、ホイールベースWBの外周に配置されたタイヤTYと、ホイールベースWBをロータとして機能させることによってホイールベースWBに一体的に設けられた電動車用モータMTaとを備えて構成されている。
【0023】
ホイールベースWBは、円板状のホイールディスクWDと、ホイールディスクWDの外周に一体的に設けられた略円筒状のホイールリムWRとを備えて構成されており、ホイールリムWRの外周にタイヤTYが組み付けられている。
【0024】
そして、車輪WHaのホイールベースWBには、電動車用モータMTaが一体的に設けられている。より具体的には、本実施形態では、ホイールベースWBにおけるホイールディスクWDには、その周辺部分に複数の永久磁石片12が配設されている。すなわち、図1および図2に示すように、ホイールディスクWDには、その中心から所定の距離だけ離れた位置であって周方向に等間隔で永久磁石片12の外形と略同形である円形の開口部WDAが、複数の永久磁石片12と同数だけ形成されており、この各開口部WDAに複数の永久磁石片12が、嵌め込まれて例えばエポキシ系の接着剤等によって接着固定されている。これによって、ホイールディスクWDは、ロータとして機能するように構成される。永久磁石片12は、図1および図2に示す例では、略円板状(略円柱形状)であるが、その形状は、特に限定されない。これら複数の永久磁石片12は、その磁極を軸方向に向けており(ホイールディスクWDの各表面に磁極Sおよび磁極Nがあり)、周方向で互いに隣接する各永久磁石片12の各磁極は、互いに逆方向を向いている。
【0025】
このようなホイールベースWBのホイールディスクWDをロータとして機能させる電動車用モータMTaは、アキシャルギャップ構造の電動機(アキシャルギャップ型電動機)であり、前記複数の永久磁石片12を備えるロータと、前記ロータにおける軸方向の端面に間隔を空けて対向する励磁コイルと前記励磁コイルによって生じた磁束を通すコアとを備えるステータとを備えて構成される。より具体的には、図1および図2に示すように、電動車用モータMTaは、上述したようにロータ(回転子)として機能する複数の永久磁石片12を備えるホイールベースWBのホイールディスクWDと、第1および第2励磁コイル20、30と、第1および第2ステータコア(ヨーク)40、50と、連結コア(連結ヨーク)60とを備えて構成され、ホイールディスクWD(ホイールディスクWDの軸に垂直な面)に対し左右対称に構成されている。第1および第2ステータコア40、50と連結コア60とから前記コアが構成され、これら第1および第2励磁コイル20、30と第1および第2ステータコア40、50と連結コア60とから前記ステータ(固定子)が構成されている。
【0026】
第1および第2励磁コイル20、30は、それぞれ、絶縁被覆した長尺の導体部材を所定の回数だけ巻き回したものであり、通電することによって、磁場を発生するものである。
【0027】
本実施形態の電動車用モータMTaでは、3相交流電力によって駆動されるために、その励磁コイルの個数(スロット数)は、3×n(nは正整数)であり、永久磁石片12の個数(極数)は、コギングトルクを低減するために、スロット数:極数=3:4の比率となるように、4×nに設定されている。図1ないし図3に示す例では、スロット数が3であって極数が24に設定されており、第1励磁コイル20は、U相第1励磁コイル20uと、V相第1励磁コイル20vと、W相第1励磁コイル20wとを備え、第2励磁コイル30は、U相第2励磁コイル30uと、V相第2励磁コイル30vと、W相第2励磁コイル30wとを備え、そして、永久磁石片12は、24個の永久磁石片12−1〜12−24を備えている。
【0028】
これらU相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wは、それぞれ、コイル21u、21v、21wと、コイル21u、21v、21wにU相、V相およびW相の各相の三相交流を給電するために、一対の接続端子22u−1、22u−2;22v−1、22v−2;22w−1、22w−2を備えて構成され、U相、V相およびW相第2励磁コイル30u、30v、30wは、それぞれ、コイル31u、31v、31wと、コイル31u、31v、31wにU相、V相およびW相の各相の三相交流を給電するために、一対の接続端子32u−1、32u−2;32v−1、32v−2;32w−1、32w−2を備えて構成される。
【0029】
これらコイル21u、21v、21w;31u、31v、31wは、それぞれ、例えば断面丸形(○形)や断面矩形(□形)等の絶縁被覆した長尺な導体部材を巻回することによって構成されてもよいが、本実施形態では、これらコイル21u、21v、21w;31u、31v、31wは、それぞれ、絶縁被覆した帯状の導体部材(帯状の線材)を、該導体部材の幅方向がコイル21u、21v、21w;31u、31v、31wの軸方向に沿うように巻回することによって構成される。帯状とは、導体部材の厚さ(径方向の長さ)tよりも幅(軸方向の長さ)Wの方が大きい場合をいい、すなわち、幅Wと厚さtとの間に、W>t(W/t>1)の関係が成り立つ。このように本実施形態の第1および第2励磁コイル20(20u、20v、20w)、30(30u、30v、30w)は、いわゆるフラットワイズ巻線構造であり、いわゆる渦電流損失を低減する点で有利である。
【0030】
そして、好ましくは、これらコイル21u、21v、21w;31u、31v、31wは、それぞれ、絶縁被覆した帯状の導体部材であって、この帯状の導体部材の幅方向が、ロータとして機能するホイールベースWBのホイールディスクWDの永久磁石片12によって形成される磁束の方向と略一致するように、渦巻き状に巻き回される。このように構成することによって、磁束に直交する面における前記導体部材の断面積が小さくなるため、その渦電流損を小さくすることができ、その効率を向上することができる。
【0031】
このような帯状の導体部材を用いる場合では、導体層と絶縁層とをその厚み方向に積層して、コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wが形成される。前記帯状の導体部材(導体層の部材)は、たとえば、銅、アルミ、またはその合金等から形成される。前記帯状の導体部材は、絶縁性の樹脂等により被覆され、テープ面同士が電気的に接触しないように絶縁が確保される。なお、絶縁シートを挟むことで絶縁性が確保されてもよい。
【0032】
一般に、コイルに流れる交流電流は、導体部材の表皮厚みδまでの範囲しか流れず、導体部材断面全体に一様に電流が流れていない。この表皮厚みδは、一般に、コイルに流れる交流電流の周波数(角周波数)をωとし、コイルの導体部材の透磁率をμとし、その電気電導率をσとする場合に、δ=(2/ωμσ)1/2で表わされる。ここで、前記帯状の導体部材の厚みを前記表皮厚みδより厚くすると、導体部材において電流が流れない無効な部分が存在し、その導体部材の体積が無駄に増加することになって、コイルの巻線効率が低下してしまう。さらに、磁場がテープ状の導体平面に平行にかかる場合でも、導体部材に流れる渦電流の損失が増加することになる。これに対して、前記導体部材の厚みを前記表皮厚みδ以下にすると、電流の流れない無駄な導体部材の部分が無くなり、導体部材全体に電流が流れてコイル巻線の効率が向上し、コンパクトにコイルを構成することが可能となる。さらに、磁場がテープ状の導体平面に平行にかかるようにすれば、導体部材に流れる渦電流の損失を大幅に低減できる。したがって、前記コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wには、前記表皮厚みδ以下の厚みの導体部材が前記線材として用いられることが好ましい。
【0033】
また、前記帯状の導体部材の厚みをtとし、前記帯状の導体部材の幅をWとする場合に、幅Wは、前記帯状の導体部材に流す電流の大きさによって決まるが、t/W≦1の条件を満足することが好ましく、さらに好ましくは、t/W≦1/10の条件を満足することである。上記一例では、その限界のt/W=1/30である。t/W≦1/10とすると、実効的な導体部材の占積率を向上させることができ、かつ、渦電流損を大幅に低減することが可能である。
【0034】
また、これら第1および第2励磁コイル20、30は、コギングトルクを低減するべく、空芯コイルであって、コアレスである。
【0035】
そして、第1励磁コイル20におけるU相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wは、永久磁石片12における一方の磁極面に対向するように、この順番で周方向に等間隔で配置され、第2励磁コイル30におけるU相、V相およびW相第1励磁コイル30u、30v、30wは、永久磁石片12における他方の磁極面に対向するように、この順番で周方向に等間隔で配置される。したがって、第1励磁コイル20におけるU相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wと第2励磁コイル30におけるU相、V相およびW相第1励磁コイル30u、30v、30wとは、ロータとして機能するホイールベースWBのホイールディスクWDを介して、同相同士で、互いに対向している。
【0036】
第1および第2ステータコア40、50は、それぞれ、例えば、所定の幅および所定の長さを持つ弧状の板状体であり、軸方向の内側面(ホイールベースWBのホイールディスクWDに対向する面側)には、凹所が形成されている。第1ステータコア40の前記凹所は、U相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wの各コイル21u、21v、21wを前記周方向に並べて嵌め込むことができるような3個の円柱形状を連ねた形状である。前記円柱形状の径は、各コイル21u、21v、21wの外径に応じた径とされている。そして、第1ステータコア40には、U相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wにおける前記一対の接続端子22u−1、22u−2;22v−1、22v−2;22w−1、22w−2を挿通するために、適所に複数の貫通孔が形成されている。同様に、第2ステータコア50の前記凹所は、U相、V相およびW相第2励磁コイル30u、30v、30wの各コイル31u、31v、31wを前記周方向に並べて嵌め込むことができるような3個の円柱形状を連ねた形状である。前記円柱形状の径は、各コイル31u、31v、31wの外径に応じた径とされている。そして、第2ステータコア50には、U相、V相およびW相第2励磁コイル30u、30v、30wにおける前記一対の接続端子32u−1、32u−2;32v−1、32v−2;32w−1、32w−2を挿通するために、適所に複数の貫通孔が形成されている。
【0037】
第1および第2ステータコア40、50は、それぞれ、所定の磁気特性を有する材料で構成される。第1および第2ステータコア40、50は、磁束線をよりよく収集するために、比較的高透磁率であることが好ましい。第1および第2ステータコア40、50は、それぞれ、例えば、珪素鋼板や電磁鋼板によって形成されてもよいが、本実施形態では、所望の磁気特性の実現容易性および所望の形状の成形容易性の観点から、例えば、磁気的に等方性を有し、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物を成形したものであることが好ましい。軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合率比を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、第1および第2ステータコア40、50の磁気特性を所望の磁気特性に容易に実現することが可能となる。また、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物であるので、様々な形状に成形することができ、第1および第2ステータコア40、50の形状を所望の形状に容易に成形することが可能となる。
【0038】
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。
【0039】
このような第1および第2ステータコア40、50は、それぞれ、例えば、公知の常套手段を用いることによって、軟磁性体粉末としての鉄粉と、非磁性体粉末としての樹脂とを混合して成形、例えば圧粉成形したものである。
【0040】
連結コア60は、切り欠きのある略環形状(切り欠きのある略リング形状、切り欠きのあるドーナツ形状、U字形状)であり、所定の磁気特性を有する材料で構成され、第1および第2ステータコア40、50と同様に形成される。図1に示す例では、連結コア60は、1個であるが、U相、V相およびW相第1および第2励磁コイル20u;30u、20v;30v、20w;30wのそれぞれに対応するように、互いに並設される3個の第1ないし第3連結コアを備えて構成されてもよい。
【0041】
そして、第1ステータコア40には、その前記凹所に、前記一対の接続端子22u−1、22u−2;22v−1、22v−2;22w−1、22w−2のそれぞれが前記各貫通孔から外部に臨むように、U相、V相およびW相第1励磁コイル20u、20v、20wのそれぞれが嵌め込まれて例えば接着剤によって接着固定され、同様に、第2ステータコア50には、その前記凹所に、前記一対の接続端子32u−1、32u−2;32v−1、32v−2;32w−1、32w−2のそれぞれが前記各貫通孔から外部に臨むように、U相、V相およびW相第2励磁コイル30u、30v、30wのそれぞれが嵌め込まれて例えば接着剤によって接着固定される。そして、第1ステータコア40の第1励磁コイル20がその第1励磁コイル一方端面でホイールベースWBのホイールディスクWDにおける軸方向の一方端面に所定の間隔を空けて配置されるように、かつ、第2ステータコア50の第2励磁コイル30がその第2励磁コイル一方端面でホイールベースWBのホイールディスクWDにおける軸方向の他方端面に所定の間隔を空けて配置されるように、連結コア60の一方端が第1ステータコア40に例えば接着剤によって接着固定されて連結されるとともに、連結コア60の他方端が第2ステータコア50に例えば接着剤によって接着固定されて連結される。
【0042】
これによって第1励磁コイル20(20u、20v、20w)が、ホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)における軸方向の一方端面に前記間隔を空けて対向し、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)が、ホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)における軸方向の他方端面に前記間隔を空けて対向するように、電動車用モータMTaは、構成される。さらに、第1ステータコア40が、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)におけるホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)に対向する第1励磁コイル一方端面と対向する第1励磁コイル他方端面に覆うように対向し、第2ステータコア50が、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)におけるホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)に対向する第2励磁コイル一方端面と対向する第2励磁コイル他方端面に覆うように対向し、連結コア60が、車輪WHaの外側を通って第1ステータコア40と第2ステータコア50とを連結するように、電動車用モータMTaは、構成される。
【0043】
すなわち、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル一方端面は、ホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)における軸方向の一方端面に前記間隔を空けて対向するとともに、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル他方端面は、第1ステータコア40に覆われるように第1ステータコア40に対向している。同様に、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル一方端面は、ホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)における軸方向の他方端面に前記間隔を空けて対向するとともに、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル他方端面は、第2ステータコア50に覆われるように第2ステータコア50に対向している。
【0044】
また、ホイールベースWBのホイールディスクWDには、ロット状の図略の軸が挿通されて固定される。そして、例えば後輪が駆動輪である場合には、前記図略の軸の両端部が前記リアフォークによって回転自在に支持される。
【0045】
このような構成の電動車用モータMTaでは、例えば、蓄電池の直流電力がインバータによって3相交流電力に変換され、この変換されたU相、V相およびW相の各交流電力が第1励磁コイル20u、20v、20wのそれぞれに給電されるとともに、第2励磁コイル30u、30v、30wのそれぞれに給電される。この3相交流電力の給電によって第1および第2励磁コイル20u、20v、20w;30u、30v、30wのそれぞれには、所定の位相差で電磁力が生じ、この電磁力によってホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)の永久磁石片12(12−1〜12−24)との間でいわゆるリニアモータのように吸引および反発されて、ホイールベースWBのホイールディスクWDが回転する。
【0046】
ここで、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル他方端面から出る磁束線は、第1ステータコア40によって収集され、この収集された磁束線は、第1ステータコア40から連結コア60を通り、第2ステータコア50から出て、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル他方端面に入り、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル一方端面からホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)を介して第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル一方端面に環流する。あるいは、第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル他方端面から出る磁束線は、第2ステータコア50によって収集され、この収集された磁束線は、第2ステータコア50から連結コア60を通り、第1ステータコア40から出て、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル他方端面に入り、第1励磁コイル20(20u、20v、20w)の第1励磁コイル一方端面からホイールベースWBのホイールディスクWD(ロータ)を介して第2励磁コイル30(30u、30v、30w)の第2励磁コイル一方端面に環流する。
【0047】
このように本実施形態の電動車用モータMTaでは、第1および第2励磁コイル20、30の第1および第2励磁コイル他方端面は、磁束線の開放端となるが、磁束線は、これら第1および第2励磁コイル20、30の第1および第2励磁コイル他方端面にそれぞれ対向する第1および第2ステータコア40、50で収集され、これら第1および第2ステータコア40、50でそれぞれ収集された磁束線は、連結コア60に通すことによって、環流され、磁束線が閉ループとなる。この結果、第1実施形態の電動車用モータMTaは、漏れ磁束を低減することができ、回転トルクをより大きくすることができる。
【0048】
そして、上述のように構成される本実施形態の電動車用モータMTaでは、コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wの導体部材が円柱状の線材では表皮効果で電流の流れが少なくなる部分があるのに対して、上述のように、帯状の線材を用いることによって、線材の断面(電流の流路断面)において、内部側の面積を減少させて電流密度を向上し、さらに渦電流も少なくすることができ、より大きなトルクを得ることができるとともに、AT(アンペアターン)が小さく、組立て(リサイクル時の分解も)が容易であり、かつ巻線自体の構造が強固になり、断線や磁歪による疲労にも強くすることができる。
【0049】
なお、上述の電動車用モータMTaにおいて、コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wとそれを搭載するステータ側の第1および第2ステータコア40、50との隙間に充填される熱伝導性の部材をさらに備えることが好ましい。同じ厚みに巻いても、円柱状の線材では、線間に空気が入り込み、熱伝導が悪くなるのに対して、このような構成では、帯状の線材を用い、さらにいわゆるシングルパンケーキ巻き構造を採用することによって、コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wの内部で発生した熱を、銅などの線材の良好な熱伝導性によって、該コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wの端部まで伝導させ、前記熱伝導性の部材を介して第1および第2ステータコア40、50にまで良好な熱伝導性で伝導することができ、該コイル21u、21v、21w;31u、31v、31wの放熱性を向上することができる。これによって、界磁電流を大きくして大きなトルクを得ることができ、或いは同じトルクでは小型化することができる。次の第2実施形態においても同様である。なお、一般に、熱絶縁体の伝導度が1W/mK程度以下であるのに対して、前記熱伝導性の部材としては、100W/mK以上の高熱伝導度を有するものであればよい。
【0050】
次ぎに、別の実施形態について説明する。
【0051】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における電動車用モータを搭載した車輪の外観構成を示す図である。図3は、内部を透視することができるように第1励磁ステータコアが仮想線で示されている。なお、図3には、車輪の一方面のみが示されている。
【0052】
第1実施形態における電動車用モータMTaは、第1および第2励磁コイルと永久磁石片12との間に作用する磁力によってロータとして機能するホイールベースWBを回転させるものであるが、第2実施形態における電動車用モータMTbは、図3に示すように、永久磁石片12(12−1〜12−24)に代えて、ホイールベースWBのホイールディスクWDの磁性と異なる磁性を持つ磁性体片70(70−1〜70−24)を備え、スイッチドリアクタンスモータを構成するものである。このため、第2実施形態における残余の構成は、第1実施形態における電動車用モータMTaと同様であるので、その説明を省略する。スイッチドリアクタンスモータは、励磁コイルへ通電するタイミングをロータの回転に応じて切り換え、ロータとステータとの磁極間に作用する磁気吸引力を利用することによってトルクを発生させる電動機である。
【0053】
第2実施形態の車輪WHbにおけるホイールベースWBには、電動車用モータMTbが一体的に設けられている。より具体的には、本実施形態では、ホイールベースWBにおけるホイールディスクWDには、その周辺部分に複数の磁性体片70が配設されている。すなわち、図3に示すように、ホイールディスクWDには、その中心から所定の距離だけ離れた位置であって周方向に等間隔で磁性体片70の外形と略同形である円形の開口部WDBが、複数の磁性体片70と同数だけ形成されており、この各開口部WDBに複数の磁性体片70が、嵌め込まれて例えばエポキシ系の接着剤等によって接着固定されている。これによって、ホイールディスクWDは、ロータとして機能するように構成される。磁性体片70は、図3に示す例では、略円板状(略円柱形状)であるが、その形状は、特に限定されない。
【0054】
この磁性体片70は、ホイールベースWBにおけるホイールディスクWDの磁性と異なる磁性を持つ材料で構成される。例えば、磁性体片70は、ホイールベースWBにおけるホイールディスクWDの磁性よりも強い磁性を持つ材料で構成される。より大きなトルクを発生させるべく、磁性体片70は、外部磁場が無くても自発磁化を持つことが可能である強磁性体材料で構成されることが好ましく、磁性体片70は、略室温(25℃)程度で強磁性を示す鉄、コバルト、ニッケルおよびガドリニウム(18℃)等の材料から構成されることがより好ましい。
【0055】
そして、本実施形態における電動車用モータMTbは、図略の給電制御部を備え、この給電制御部によって複数の第1および第2励磁コイル20u、20v、20w;30u、30v、30wは、スイッチドリアクタンス作用によって前記ステータに対し前記ロータが回転するように給電される。
【0056】
より具体的には、まず、第1および第2励磁コイル20、30において、第1励磁コイル20uと第2励磁コイル30uとが、直列に電気的接続され、第1励磁コイル20vと第2励磁コイル30vとが直列に電気的に接続され、そして、第1励磁コイル20wと第2励磁コイル30wとが直列に電気的に接続される。これら互いに直列に電気的に接続された3個の組の中で、磁性体片70と最も強く吸引力が働く組のコイルに給電が行われ、回転方向のトルクを生じさせる。そして、ホイールベースWBの回転に伴い、回転方向において隣の組のコイルに前記給電をバトンタッチして行くことによって吸引力磁界を回転させることができる。このようにホイールベースWBと第1および第2励磁コイル20、30との相対位置に応じて励磁タイミング(給電タイミング)を決定することによって、ホイールベースWB(車輪WHb)を任意の方向(時計回りまたは反時計回り)に回転トルクを与え続けることができる。
【0057】
第2実施形態における電動車用モータMTbは、第1実施形態における電動車用モータMTaと同様に、漏れ磁束を低減することができ、回転トルクをより大きくすることができる。そして、第2実施形態における電動車用モータMTbは、永久磁石片12に代えて磁性体片70を備えるので、例えばネオジオム系永久磁石等のような比較的高価なレアメタルを含有する永久磁石を用いずに済み、低コスト化が可能となる。また、第2実施形態における電動車用モータMTbは、車輪WHbに永久磁石片12を用いないので、例えば路面から鉄粉等を吸着しないので、その除去も不要となる。
【0058】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0059】
MTa、MTb アキシャルギャップ型電動車用モータ
12 永久磁石片
20、20u、20v、20w 第1励磁コイル
30、30u、30v、30w 第2励磁コイル
40 第1ステータコア
50 第2ステータコア
60 連結コア
70 磁性体片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールベースを備える車輪と、
複数の永久磁石片を備えるロータと、
前記ロータにおける軸方向の端面に間隔を空けて対向する励磁コイルと前記励磁コイルによって生じた磁束を通すコアとを備えるステータとを備え、
前記ロータにおける複数の永久磁石片は、前記車輪のホイールベースに、その中心から所定の距離だけ離れた位置であって周方向に所定の間隔で配設され、
前記ステータの励磁コイルは、前記ロータにおける軸方向の一方端面に前記間隔を空けて対向する第1励磁コイルと、前記ロータにおける軸方向の他方端面に前記間隔を空けて対向する第2励磁コイルとを備え、
前記ステータのコアは、前記第1励磁コイルにおける前記ロータに対向する第1励磁コイル一方端面と対向する第1励磁コイル他方端面に対向する第1ステータコアと、前記第2励磁コイルにおける前記ロータに対向する第2励磁コイル一方端面と対向する第2励磁コイル他方端面に対向する第2ステータコアと、前記車輪の外側を通って前記第1ステータコアと前記第2ステータコアとを連結する連結コアとを備えること
を特徴とするアキシャルギャップ型電動車用モータ。
【請求項2】
前記第1および第2励磁コイルのそれぞれは、帯状の導体部材であって、前記帯状の導体部材の幅方向が前記ロータの永久磁石によって形成される磁束の方向と略一致するように、渦巻き状に巻き回されていること
を特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型電動車用モータ。
【請求項3】
前記ロータは、前記ホイールベースの磁性と異なる磁性を持つ磁性体片を前記永久磁石片に代えて備え、
前記第1および第2励磁コイルは、それぞれ、複数であり、
前記複数の第1および第2励磁コイルは、スイッチドリアクタンス作用によって前記ステータに対し前記ロータが回転するように給電されること
を特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型電動車用モータ。
【請求項4】
前記ステータのコアは、磁気的に等方性を有し、軟磁性粉末を成型したものであること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアキシャルギャップ型電動車用モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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