説明

アキュムレータ

【課題】 高圧流路への汚染などの悪影響がない、簡単な構成によってコストを低く抑え、コンパクトで機能性の高いアキュムレータを提供する。
【解決手段】 高圧流路3に供するアキュムレータであって、複数の容器を有し、前記高圧流体3と接続する容器A1を介して接続される容器B2を設けて前記容器B2の温度の制御を行うとともに、該容器A1の内容積を、緩衝のため出入する高圧流体3の最大量以上とすることを特徴とする。(1)前記容器A1内に摺動自在なピストンを内蔵し、被緩衝高圧流体3と緩衝流体5の混合を抑制するとともに、(2)容器B2側の空間を容器B2とほぼ同じ温度に制御すると同時に、(3)前記被緩衝高圧流体3あるいは緩衝流体5よりも熱伝導度の低いピストン材によって熱伝導を抑え、加熱緩衝流体5の熱的影響を無視できる程度に抑えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非圧縮性流体の高圧流路に供するアキュムレータに関する。特に、流体の温度を制御して熱的に圧力緩衝を行うアキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧流体の供給装置においては、非圧縮性の高圧流路を流れる液体の一部を貯留あるいは導出させることによって配管系の圧力緩衝を図るために、アキュムレータが用いられる。
【0003】
このとき、非圧縮性の高圧流路に供するアキュムレータとして、被緩衝流体と同種の流体を緩衝流体として使用することは公知技術として知られている。例えば、冷凍機サイクルにおいて、バッファ容器へ冷媒が過剰になると余剰の冷媒を収納し、逆に冷媒が不足するときには冷媒を引出すことにより緩衝することは多用される。バッファ容器内では気体・液体の二相平衡にあり、バッファ容器の温度をほぼ一定保てば気液の割合が変化し、平衡圧力は対応する温度における蒸気圧に調整され圧力の緩衝が可能である。
【0004】
また、超臨界流体に対しても、同種の流体を緩衝流体として用いた技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。超臨界圧の流体を加熱すると圧縮性が生じ、一般の気体と同様にふるまうとの良く知られた性質を利用したものである。
【特許文献1】特開平6−50492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
宇宙開発関連装置、化学反応装置、半導体用装置あるいは超臨界装置などの非圧縮性流体の高圧回路に供するアキュムレータでは、汚染を避けることが重要な課題となることが多い。同種の流体を用いることは、汚染の問題が少なく、アキュムレータが簡潔になることから注目に値する。
【0006】
しかしながら、従来のアキュムレータにあっては、臨界圧以下であっても単純なバッファ容器によって圧力緩衝できるのは被緩衝流体が飽和の液である場合に限られる。過冷却液体の場合にはそのまま応用することができない。
【0007】
また、超臨界流体に対する前記公知技術は、超臨界圧流体の圧縮率の温度依存性に関する詳細な検討により、幾つかの問題点が明らかとなった。
【0008】
臨界圧以下の過冷却流体の場合にも共通する問題点として、第1点は、緩衝のため加熱された流体が直接、高圧流路に放出され、高圧流体の温度を変化させることが挙げられる。被緩衝流体への悪影響に対する対策が必要となる場合がある。
【0009】
第2点は、上記に関連するが、緩衝のため加熱された流体が、同じ圧力を有する低温の圧縮性の乏しい流体と混合したときその体積が減少し、圧力緩衝効果を抑制することである。
【0010】
第3点は、大きな圧力緩衝機能を持つには、緩衝流体を封ずる空間を大きくする必要があり、圧力緩衝手段あるいは装置が大掛かりなものとなり、コスト面での負担が大きくなることである。
【0011】
従って、本発明は、高圧流路への汚染などの悪影響がない、簡単な構成によってコストを低く抑え、コンパクトで機能性の高いアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示すアキュムレータによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明は、高圧流路に供するアキュムレータであって、複数の容器を有し、前記高圧流体と接続する容器Aを介して接続される容器Bを設けて前記容器Bの温度の制御を行うとともに、該容器Aの内容積を、緩衝のため出入する高圧流体の最大量以上とすることを特徴とする。
【0014】
本発明者は、緩衝容器(容器B)を最適温度に制御し圧縮率を大きくとることが有効であるとの知見から、本発明のアキュムレータにおいて、容器Bの容積を小さく収めるために容器Bを最適温度に制御する構成を採用したものである。つまり、一般的なアキュムレータの目的は高圧流路の圧力をほぼ一定に緩衝することにあり、手段として、温度を制御することによって、結果として圧力が制御されることとなる。緩衝流体が二相域の場合であっても、温度が一定であれば気液のバランス調整を介して、容器B内の飽和蒸気圧を一定にするように圧力が制御されることとなる。
【0015】
本発明においては、温度制御された緩衝流体を容器Bにおいて作動させるとともに、制動される高圧流体(被緩衝流体)との間に容器Aを設けることによって、畜圧・緩衝機能を有する容器Bにおける圧力あるいは温度の変化の影響を直接的に高圧流体が作動する高圧流路に及ぼすことを防止することができる。特に、容器Aの内容積を緩衝のため出入する高圧流体の最大量以上とすることによって、容器A自体が緩衝機能を有するとともに、容器B内の流体が容器Aを介して高圧流体に直接混合することを防止することができる。以上のような構成によって、容器Bにおける機能や特性を確保するように、温度あるいは圧力を制御することが非常に精度よく、また容易に行うことができる。
【0016】
また、緩衝流体として被緩衝流体と同種の流体を用いることによって、さらにいくつかの技術的効果を得ることができる。つまり、被緩衝流体と同種の流体を、容器Bに加熱して保存しておくことにより、その圧縮性を利用して熱的に緩衝機能を活かすことができる。また、高圧流体と各空間部の間のシール部分を不要にするとともに、汚染の問題が少なく、圧力緩衝方法を簡潔にすることができる。
【0017】
また、本発明は、上記アキュムレータであって、(1)前記容器A内に摺動自在なピストンを内蔵し、被緩衝高圧流体と緩衝流体の混合を抑制するとともに、(2)容器B側の空間を容器Bとほぼ同じ温度に制御すると同時に、(3)前記被緩衝高圧流体あるいは緩衝流体よりも熱伝導度の低いピストン材によって熱伝導を抑え、加熱緩衝流体の熱的影響を無視できる程度に抑えることを特徴とする。
【0018】
上記のように、容器Aはそれ自身が有する圧力緩衝機能とともに容器Bに対する緩和機能を有しており、こうした緩和機能は容器Aにピストンを設けることによって、さらに強化することが可能であることを見出したものである。つまり、ピストンの受圧面を介して高圧流路の圧力伝達を行うことによって、容器Bへの円滑な圧力伝達を可能にするとともに、流路を絞る機能によって、熱伝達の抵抗としての役割を果し、かつ高圧流体における脈流や揺動を緩和する機能を有することができる。
【0019】
特に、容器A内において容器B側の空間を容器Bとほぼ同じ温度に制御することによって、容器B側の空間内の流体およびピストンの一部も同様の温度となり、ピストンの移動があっても容器B内の温度への影響を与えることがなく、容器Bでの蓄圧・緩衝効果を最大限活かすことができる。また、熱伝導度の低いピストン材を用いることによって、ピストンを介して生じる高圧流体、容器A内の流体および容器B内の流体への温度影響を大きく低減することが可能となる。
【0020】
このとき、前記ピストンの外周に、容器A内面との気密性を供給するシール手段を少なくとも一つ付加したことを特徴とする。
【0021】
容器Aに設けられたピストンは、緩衝流体と被緩衝流体との物理的および熱的な混合を大きく減少する働きがある。本発明ではさらに、ピストンの外周にシール手段を設けて物理的混合を完全に遮断したもので、こうした遮断によって熱的な混合を一層減少させることができる。
【0022】
本発明は、上記アキュムレータであって、前記ピストンの制動を補助するために、弾性体を容器A内面の被緩衝高圧流体側に最接近する折返し位置Pおよび容器B側に最接近する折返し位置Qに付設すると同時に、ピストンが位置Pと位置Qのいずれか一方あるいは両方に位置したときにシール手段の被緩衝高圧流体側と緩衝流体側を連絡するバイパス路により均圧する手段を容器Aに付設したことを特徴とする。
【0023】
アキュムレータは基本的に被緩衝高圧流体の圧力が緩衝流体に伝達する。従って、被緩衝流体の急激な圧力変化が生じた場合、ピストンが容器Aに激突し衝撃で破損する可能性がある。このような場合に、バネなどの弾性体を容器Aの内面に係止するように配し、被緩衝流体からピストンへの押圧を軽減することで、こうした現象を防止し、圧力保持に対する補助的機能を働かせることができる。
【0024】
また、容器Aに被緩衝高圧流体側と緩衝流体側を連絡するバイパス路により均圧する手段を付設することによって、容器B側に封じられた緩衝流体の充填量が不適切になった場合、自動的に緩衝流体の充填量を調整する機構を提供することができる。つまり、例えばシール手段の漏れなどが原因で充填量が少なくなったときは、ピストンが容器B側に押されることになり、逆に充填量が多すぎるときは、ピストンが被緩衝高圧流体側に押されることになる。被緩衝高圧流体側に最も近接する位置Pあるいは容器B側に最も近接する位置Qにピストンが位置したときに、バイパス路が開となって被緩衝高圧流体側と緩衝流体側を連絡することによって、容器B内部の圧力を緩衝機能が働く最適状態に回復することが可能となる。さらに、上記の弾性体との組合せによって、容器B内の緩衝流体が、より最適な条件下で蓄圧・緩衝機能を発揮することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、上記アキュムレータであって、容器Aに代え、あるいは容器Aと容器Bの間に、増圧手段を付加したことを特徴とする。
【0026】
本発明におけるアキュムレータは、緩衝流体の温度を制御することによって、圧縮率の高い最適条件下での蓄圧・緩衝機能を形成している。しかし、高圧流体の圧力が高いときは、高い圧縮率を得るには容器Bにおける作動圧力を下げたい場合がある。このとき、高圧流体側と容器B側との中間に増圧手段を付加することによって、さらに最適な条件を選択することが可能となる。具体的には、ピストンの高圧流体側の受圧面積よりも容器B側の受圧面積を大きくすることによって増圧手段を形成することが可能となる。
本発明は、上記アキュムレータであって、緩衝流体が作動する圧力が緩衝流体の臨界圧力以下の場合において、前記容器Bとして高圧流体システムの原料流体貯蔵槽を利用し、その気相部を前記増圧手段と連絡することを特徴とする。
【0027】
緩衝流体が作動する圧力が緩衝流体の臨界圧力以下の場合においては、高圧流体の原料流体を緩衝流体として利用することが可能であり、アキュムレータのコンパクト化を図ることができるとともに、予備的流体を緩衝流体として有効に利用しシステム全体の効率化を図ることが可能となる。
【0028】
さらに、本発明は、上記アキュムレータであって、前記容器Bの一部に温度制御手段との熱交換を促進する手段を付加したことを特徴とする。
【0029】
本発明におけるアキュムレータは、基本的に緩衝流体の温度を制御することによって圧縮率の高い最適条件下での蓄圧・緩衝機能を形成し、高圧流体での圧力変化が生じても、その変化に追随する機能を有している。しかし、急激な圧力変化が生じた場合には、畜圧・圧力緩衝に時間的な遅れが生じるおそれがある。そこで、容器B内に冷却フィン体などの気液熱接触促進手段を設けることによって、急激な変化にも迅速に追随することができ、容器B内の温度をほぼ一定に維持し、等温過程に近づけることによって、高い畜圧・圧力緩衝機能を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、複数の仕切られた空間の一部を最適温度に制御して緩衝空間を形成することによって、圧力緩衝効果を最大限に引出し、緩衝流体容器をコンパクトに押さえるための手段を提供することができる。特に、緩衝流体として被緩衝流体と同種の流体を用いるので、流体の汚染を伴うことなく、各空間部の間のシール部分および緩衝流体の補充を不要にすることができる。また、緩衝流体と被緩衝流体の中間に空間部さらにはピストンを設けることによって、両者の直接的な物理的あるいは熱的な混合を防止することによって、安定した蓄圧・緩衝機能を確保し、長寿命のアキュムレータを形成することができる。以上のように、本発明によって、高圧流路への汚染などの悪影響がない、簡単な構成によってコストを低く抑え、コンパクトで機能性の高いアキュムレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るアキュムレータの構成(第1構成例)を例示する図であり、容器A1および容器B2から構成される実施形態を説明する。ただし、本発明のアキュムレータはこれに限定されず、目的に応じて種々の変更が可能である。
【0032】
具体的には、制動の対象となる高圧流体(被緩衝流体)3が流れる高圧流路4に接続する容器A1、および容器A1を介して緩衝流体5が存在する容器B2、からアキュムレータが構成されている。容器B2は、その周囲に加熱手段、温度検出手段および断熱手段からなる恒温手段6を配し、緩衝流体5が所定の温度を維持するようになっている。容器B2には接続部7が設けられており、緩衝流体5の充填、あるいは容器B2の容積が少ない時における別容器の追加的接続などに用いられる。
【0033】
このとき、例えば、高圧流路4の圧力上昇が生じた場合、高圧流路4内の高圧流体3が容器A1に流入するとともに、容器A1に存在していた高圧流体3の一部が容器B2に流入し、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を圧縮して増圧する。逆に高圧流路4の圧力低下が生じた場合、容器A1内の高圧流体3が高圧流路4に流入するとともに、容器B2に存在していた高圧流体3の一部が容器A1に流入するとともに、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を膨張して減圧する。これによって、アキュムレータの畜圧あるいは緩衝作用が機能する。
【0034】
アキュムレータの畜圧・緩衝作用は、緩衝流体5の圧縮率が高い程、高い効率を得ることができる。ここで、一般には、液体は圧縮率が小さく気体は圧縮率が大きいことは良く知られたことである。従って、物質が液体から気体に遷移するとき、圧縮率は高温ほど大きくなると思い易い。しかし、後述する発明者の解析を基に、実際に、COを例に臨界圧力以上の条件下での圧縮率の温度変化を調べてみると、図2−1および図2−2の如くである。
【0035】
つまり、圧縮率は、所定圧力条件の下、臨界温度より高い温度でピークを有するカーブとなる。従って、容器B2の温度制御を臨界温度近傍で行うことによって安定かつ非常に圧縮率の高い状態を形成することが可能となる。本発明においては、こうした条件を確保するために、容器B2の周囲に恒温手段6を配し温度制御を行なったものである。従って、容器Bの容積を小さくすることができ、しいては装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0036】
また、本発明においては、容器A1の役割が非常に重要である。つまり、高圧流体3と緩衝容器B2との間に容器A1を設けることによって、畜圧・緩衝機能を有する容器B2における圧力あるいは温度の変化の影響を、直接的に高圧流体3が作動する高圧流路4に及ぼすことを防止することができる。特に、容器A1の内容積を緩衝のため出入する高圧流体3の最大量以上とすることによって、容器B2内の流体が容器A1を介して高圧流体3に直接混合することを確実に防止することができる。また、容器A1自体が所定の空間部を有することによって、緩衝機能を有することになる。以上のような構成によって、容器B2における緩衝機能を確保するように、精度よく温度あるいは圧力を制御することが可能となる。
【0037】
アキュムレータの形状は、円筒状あるいは角柱状など特に限定されるものではない。容器A1および容器B2の容積は、制動対象流体の種類あるいは制動条件によって任意に設定される。
【0038】
なお、容器A1および容器B2に相当する空間部は、各々1つに限定されるものではなく、複数の空間部を直列に配することの緩衝効果あるいは並列に配することの分散効果を生かすことで、より一層容器B2の独立性を確保し、容器B2の機能強化を図ることも可能となる。
【0039】
次に、本発明に係るアキュムレータの第2構成例を、図3に例示する。基本的には、上記第1構成例と同一の構成を形成し、容器A1内に摺動自在なピストン8を内蔵する点、および容器A1の一部が容器B2の恒温手段6内に配される点において、相違する。
【0040】
具体的には、容器A1をピストン8によって分割し、高圧流体3側に設けられた空間1aおよび容器B2側に設けられた空間1bを構成することによって、高圧流体3と緩衝流体5の混合を抑制している。また、空間1bを容器B2と同じ温度に制御するとともに、ピストン8の素材を高圧流体3あるいは緩衝流体5よりも熱伝導度の低くすることによって、ピストン8からの熱伝導を抑え、高圧流体3および加熱緩衝流体5の相互の熱的影響を無視できる程度に抑えている。
【0041】
このとき、例えば、高圧流路4の圧力上昇が生じた場合、高圧流路4内の高圧流体3が容器A1内の空間1aに流入するとともに、ピストン8の空間1a側面を加圧する。ピストン8は、その空間1b側面を介して空間1bを加圧するとともに、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を圧縮して増圧する。空間1aに存在していた高圧流体3の極一部が容器B2に流入することがあるが、ピストン8の容器A1の容器内壁との隙間を小さくすれば無視することができる程度である。逆に高圧流路4の圧力低下が生じた場合、容器A1内の空間1aにある高圧流体3が高圧流路4に流入するとともに、ピストン8の空間1a側面を吸引する。ピストン8は、その空間1b側面を介して空間1bを吸引するとともに、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を膨張して減圧する。これによって、流体の混合が殆どない状態で圧力伝達が行われ、アキュムレータの畜圧あるいは緩衝作用が効率的に機能する。
【0042】
また、空間1bの流体が、高圧流路4の圧力上下によって容器B2と出入りをすることになるが、本発明では、空間1bを容器B2と同じ恒温手段6内に配することで、緩衝流体5の温度変化は殆どないといえる。また、同様に高圧流路4の圧力上下によって移動するピストン8による伝熱効果についても、恒温手段6の効果に加え、ピストン8を低い熱伝導体とすることで、緩衝流体5の温度変化は殆どないようにすることができる。
【0043】
このように、本発明においては、容器A1内のピストン8の役割が非常に重要である。つまり、高圧流体3と緩衝容器B2との間にピストン8を設けることによって、高圧流路4における圧力変化を容器B2に伝達するとともに、両者の間における流体の混合のおそれあるいは熱伝達による影響を効率的に防止することができる。また、容器A1自体が所定の空間部1aおよび1bを有することによって、緩衝機能を有することになる。以上のような構成によって、容器B2における畜圧・緩衝機能を確保し、精度よく温度あるいは圧力を制御することが可能となる。
【0044】
図4は、本発明に係るアキュムレータの第3構成例を示す。基本的には、上記第2構成例と同一の構成を形成し、容器A1内のピストン8の外周部にシール手段9を付加した点において相違する。
【0045】
具体的には、容器A1をピストン8によって分割された、高圧流体3側の空間1aと容器B2側の空間1bをシール手段9によって遮断することによって、高圧流体3と緩衝流体5の混合を完全に抑制している。シール手段9は、1つ以上あればよく、図4では2つ使用している場合を例示している。
【0046】
本発明に係るアキュムレータの第4構成例を、図5に例示する。基本的には、上記構成例と同一の構成を形成するとともに、ピストン8の制動を補助するために弾性体10を容器A内面の被緩衝高圧流体側に最接近する折返し位置Pおよび容器B側に最接近する折返し位置Qに付設し、ピストンが位置Pと位置Qのいずれかに位置したときに空間1aと空間1bとを連絡するバイパス11を設けている。
【0047】
均圧手段とは、緩衝容器B2およびそれと直接あるいは間接的に接続する流路と高圧流路3とを同じ圧力にする手段をいい、アキュムレータの起動時あるいは容器B2の流体のモレや高圧流路3の圧力異常などが生じた場合に、機能させることが有効である。図5では、バイパス11およびシール手段9によって均圧手段を構成する例を示している。均圧手段としてはこれに限定するものではなく、単純に空間1aと空間1bを接続し、その接続中点に流路をON−OFFする機能を有する手段(図示せず)を設ける方法など種々の手段を用いることが可能である。
【0048】
具体的には、図5(A)に示すように、容器A1の内面の位置PおよびQに、弾性体10aおよび10bが設けられている。例えば、高圧流路4の圧力上昇が生じ、ピストン8の空間1a側受圧面を加圧した場合、ピストン8は、その空間1b側受圧面を介して空間1bを加圧するとともに、弾性体10bの反発力によって圧力を減少して、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を押圧する。その圧力減少分だけ緩衝流体5の負担が軽減されることになる。逆に高圧流路4の圧力低下が生じ、ピストン8の空間1a側受圧面を吸引した場合、ピストン8は、その空間1b側受圧面を介して空間1bを吸引するとともに、弾性体10aの反発力によって吸引圧を減少して、容器B2の内部に封入された緩衝流体5を膨張して減圧する。その圧力減少分だけ緩衝流体5の負担が軽減されることになる。これによって、高圧流路4の大きな圧力変動幅に対しても、効率的にアキュムレータの畜圧あるいは緩衝作用を機能させることができる。
【0049】
また、さらに高圧流路4の圧力上昇が生じた場合、図5(B)に示すように、ピストン8が容器B2側に最も近接する位置Qに固定されることとなり、緩衝機能が低下する。このとき、シール材9によって、空間1aと空間1bがバイパス11bで連結され空間1bを介して容器B2に高圧流体3の一部が流入することで、高圧流路4と容器B2との均圧効果が生じ、弾性体10bの反作用と相俟ってピストンを図5(C)のような正常運転時の位置に戻すこととなる。逆に高圧流路4の大きな圧力減少が生じた場合、図5(D)に示すように、ピストン8が高圧流路4側に最も近接する位置Pに固定されることとなり、緩衝機能が低下する。このとき、シール材9によって、空間1aと空間1bがバイパス11aで連結され空間1bを介して容器B2の流体の一部が高圧流体3に流入することで、高圧流路4と容器B2との均圧効果が生じ、弾性体10aの反作用と相俟ってピストンを図5(C)のような正常運転時の位置に戻すこととなる。このように、高圧流路4のさらに大きな圧力変動幅に対しても、効率的にアキュムレータの畜圧あるいは緩衝作用を機能させることができる。
【0050】
弾性体10としては、バネなどを用いることが可能であるが、緩和する応力はバネ圧あるいはバネの長さなどによって調整が容易であり、アキュムレータが用いられる緩衝流体5の種類あるいは高圧流体3の圧力変動状態によって調整することができる。
【0051】
図5では、バイパス11を、配管のみを設けピストン8の外周に配されたシール材9とピストンの配置とを組合せることで形成しているが、バイパス11中に絞りを設け均圧機能を時間的に遅らせて緩衝機能を持たせるなど、これに限られるものではない。また、シール材9およびバイパス11の数量や配置は、図5の例に限定されるものではなく、アキュムレータとして要求される機能に応じて任意に設定可能である。
【0052】
図6は、本発明に係るアキュムレータの第5構成例を示す。容器A1と容器B2の間に増圧手段として容器C12を付加し、容器C12内部に摺動自在なピストン8bを配し、容器A1の内部に配されたピストン8aとを連結部13によって連動させるとともに、ピストン8bの容器B2側の受圧面8dをピストン8aの高圧流路3側の受圧面8cよりも大きな面積を形成し、かつピストン8bによって分割された容器C12の容器B2側空間12bを容器B2の恒温手段6内部に設ける構成を採っている。
【0053】
ここで、容器C12を容器A1と別体とした上記構成例だけではなく、容器A1内部に内蔵し一体化した構成、あるいは容器A1に代えてピストン機構を設けることも可能である。
【0054】
上記アキュムレータを利用した高圧流体システムにおいて、高圧流体3の原料流体貯蔵槽14の気相部15を前記増圧手段である容器C12と連絡した場合の構成例(第6構成例)を、図7に示す。つまり、緩衝流体5が作動する圧力が緩衝流体5の臨界圧力以下の場合においては、容器A1に接続された容器C12を、原料流体貯蔵槽14の気相部15と連絡することで、気相部15が上記の容器B2の役割を果たすこととなり、緩衝機能を有する構成にすることができる。特に、気相部15に温度調節手段16を設けて所定温度に制御した場合には、こうした高圧流体3の原料流体を緩衝流体5として利用することが可能であり、容器B2を省略することが可能となり、アキュムレータのコンパクト化を図ることができるとともに、高圧流体システム全体として非常に効率的かつ機能的なシステムを形成することができる。
【0055】
このときの高圧流体システムの動作は、充填口17を介して原料流体貯蔵槽14に導入された原料は、ポンプ18によって、高圧流体3として高圧流路4に供給される(中間において所定の処理がされる場合もある)。
【0056】
図8は、本発明に係るアキュムレータの第7構成例を示す。上記アキュムレータにおいて、容器B2の内部に恒温手段6との熱交換促進手段20を設けたことを特徴とし、容器B2に対する外部からの急激な変化にも、迅速に追随することができる。つまり、高圧流体3での急激な圧力変化が生じた場合には、容器B2において畜圧・圧力緩衝に時間的な遅れが生じるおそれがあり、容器B2の内部に熱交換促進手段20を設けることによって、容器B2の内部の温度をほぼ一定に維持し、等温過程に近づけることによって、高い畜圧・圧力緩衝機能を保持することが可能となる。
【0057】
熱交換促進手段20としては、具体的には、図8のようなシェルアンドチューブ式熱交換器状のもの、あるいはフィン体を有する管状体を挙げることができ、容器B2内部における緩衝流体5との接触面積が大きく、気液熱接触を促進することができる熱交換率の高い手段が好適である。恒温手段6と接続し、熱交換促進手段20を恒温手段6の制御温度と変わらない温度に維持することで、一層容器B2内の温度を一定に維持することができる。
【0058】
また、恒温手段6内部に容器B2を複数並列的に配列し、直接緩衝流体5と恒温手段6との接触面積を増加させる方法も、容器B2内の温度を一定に維持する上では、有効な手法となる。
【0059】
以下、超臨界圧の場合を中心に圧力緩衝効果を高めるための条件について解析した結果を詳述する。
【0060】
(1)アキュムレータのサイズをコンパクトに収めるには、緩衝用流体の温度を適切に制御することが有効である。つまり、等温的過程におけるアキュムレータのサイズの解析には、下式に示す等温圧縮率κt、
κ=−(dv/dP)t/v=(dρ/dP)t/ρ
が利用できる。
ΔPの範囲でκの変化が無視できる時、ΔPの圧力変化によりΔVの変化を吸収するために必要な緩衝用流体の体積Voは、
=(ΔV/ΔP)/κ .....(1)
と表すことができる。
特に理想気体を用いる時は、
κ=1/P .....(2)
となる。
【0061】
(2)さて、圧縮率には、
κ=−(dv/dP)s/v=(dρ/dP)s/ρ .....(3)
で表される断熱圧縮率κも存在する。
また、音速Vsは、
Vs=sqrt((dρ/dP)s)
と表され、
κ=v/Vs=1/Vs/ρ .....(4)
なる関係が存在する。
特に、アキュムレータでの圧力変化が早いときには、κが重要となる。逆に、緩やかな変化に対し、Vを小さく抑えるにはκの大きな流体を選ぶことが有利である。
【0062】
(3)緩衝流体の特性を特徴づけるには、理想気体の場合との比率であるところの無次元化等温圧縮率K
=P*κ
の導入が有効である。
同様に、断熱圧縮率について無次元化断熱圧縮率K
=P*κ
なる表現も使用する。
κ、κの間には、
κ=κ*Cp/Cv .....(5)
の関係が存在する。
熱力学的に常にCp>Cvであるのでκ>κの関係が成り立つ。
【0063】
(4)大まかな認識として、液体は圧縮率が小さく、気体は圧縮率が大きいことは良く知られたことである。
液体から気体に遷移するとき、圧縮率は高温ほど大きくなると思い易い。
特に断らない限り、以降の解析には、世界的にみて信頼性の高いNISTのデータによった。
【0064】
(5)COを例に(4)、(5)式を利用して、P>PcでKの温度変化を調べてみると図2−1および図2−2の如くである。
図2−1において、Pr、Trは圧力Pおよび温度Tを臨界圧力Pc=73.77bar臨界温度Tc=304.13Kで除した対臨界圧力、対臨界温度である。Pr=1.1のとき、臨界温度より僅かに高い温度Tr=1.015近くで鋭いピーク(K=11.9)を持つ、圧力が上昇するにつれて、ピークの値は小さくなり、幅が大きくなり、また、ピークに対応する温度は高温側に移動していくことが解る。さらに、Prが3と4の間でKのピーク値は1となり、より高い圧力では、Kは全ての温度域で1以下となることが解る。従って、このような高圧で緩衝ガスとしてCOを使うことは、汚染の心配が殆ど無い点を利用する場合に限定される。
【0065】
また、図2−2では、P=1.5Pc(約100.7bar)でのK、Kおよび同圧力・温度におけるNに対するK、Kの値もK_N、K_Nとして示した。COのKの値は54℃近くでピーク値(約2.5)を持つのに対し、Nに対するKの値は示した温度範囲で1以下(0.95〜0.96)である。この圧力においては緩衝ガスとして、ごく一般的に用いられるNに比較しCOを54℃近くに加熱して用いると、汚染の心配が殆ど無いばかりでなく、蓄圧器のサイズをコンパクトに出来るとのメリットも得られることが解る。一方、KについてのNとの比較では67℃以上で僅かにCOが有利との結果である。
のピークが圧力の上昇と供に高温側にずれることは、図10に示したCOの等容曲線(v=vc)で理解できる。図示した範囲ではほとんど直線であり、図2−1、図2−2と比較するとほぼ似た傾向が見られる。P>Pcで等容曲線(v=vc)を横切るあたりで流体密度が液から気体の値に急激に遷移する。その遷移点は圧力PがPcから離れるほど高温側にずれる。圧縮率はPに関する微分的な性質であるので、この遷移点の近くでピークを持つ。これが、Kの大きくなる主要因と判断される。
【0066】
(6)P<Pcの単相域についても、同様にKの温度変化を調べた。
先ず、飽和温度より僅かに過冷却の液体の領域では、略Pc>P>0.9*Pcの範囲でK>1の領域が存在する。温度を上げてゆくと、飽和温度に向けて増加する。また、飽和温度より僅かに過熱の蒸気の領域では低圧域までK>1の領域が存在する。温度を下げてゆくと、飽和温度に向けて増加する。いずれもPcに近づくほどピークの値は大きくなり、P→Pcの極限でT=Tcにおいて発散する。これらP<Pcの領域のKの異常は、P>Pcの領域とつながっている。
【0067】
以上の計算はCOに対するものであるが対応状態の原理に従えば、他の分子に対してもPc、Tcでの換算を行えば、同様の傾向を示すものと判断される。
【0068】
(7)更に、以上の傾向を別の角度からこれを眺めてみる。
Boyle曲線は、(d(Pv)/dp)t=0で定義される。これは、K=1の条件と等価である。
アルゴンに対するBoyle曲線を図11に示す。また、van der Waalsの状態方程式に対するBoyle曲線の例を図12に示す。Boyle曲線は、飽和液の状態から始まり、超臨界点近傍(低温・高圧側を迂回)を通り圧力約3.5Pc(van der Waalsの状態方程式では27/8*Pc)で最高圧となり、低圧高温側の気相へ向う。
実は、この曲線の内部で無次元化等温圧縮率に関しK>1が満たされる。
【0069】
本発明は、上記の解析をもとに緩衝流体5を作動させる最適条件を検証し、具体化を図るものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
上記のように、アキュムレータの使用方法は多枝にわたっている。本願では、基本的な使用方法に限定して記述したが、上記各構成例を任意に組合せることで、さらに有用なシステム構成を形成することが可能である。また、多様な技術との組合せにより、さらに多くの場合にも応用できることは明らかであり、高い汎用性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るアキュムレータの第1構成例を示す説明図
【図2−1】流体の圧縮率の対臨界温度変化を例示する説明図
【図2−2】流体の圧縮率の温度変化を例示する説明図
【図3】本発明に係るアキュムレータの第2構成例を示す説明図
【図4】本発明に係るアキュムレータの第3構成例を示す説明図
【図5】本発明に係るアキュムレータの第4構成例を示す説明図
【図6】本発明に係るアキュムレータの第5構成例を示す説明図
【図7】本発明に係るアキュムレータの第6構成例を示す説明図
【図8】本発明に係るアキュムレータの第7構成例を示す説明図
【図9】COの等容曲線を例示する説明図
【図10】アルゴンに対するBoyle曲線を例示する説明図
【図11】van der Waalsの状態方程式に対するBoyle曲線を例示する説明図
【符号の説明】
【0072】
1 容器A
2 容器B
3 高圧流体(被緩衝流体)
4 高圧流路
5 緩衝流体
6 恒温手段
7 接続部
8 ピストン
9 シール手段
10 弾性体
11 バイパス
12 容器C
13 連結部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流路に供するアキュムレータであって、複数の容器を有し、前記高圧流体と接続する容器Aを介して接続される容器Bを設けて前記容器Bの温度の制御を行うとともに、該容器Aの内容積を、緩衝のため出入する高圧流体の最大量以上とすることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】
(1)前記容器A内に摺動自在なピストンを内蔵し、被緩衝高圧流体と緩衝流体の混合を抑制するとともに、(2)容器B側の空間を容器Bとほぼ同じ温度に制御すると同時に、(3)前記被緩衝高圧流体あるいは緩衝流体よりも熱伝導度の低いピストン材によって熱伝導を抑え、加熱緩衝流体の熱的影響を無視できる程度に抑えることを特徴とする請求項1記載のアキュムレータ。
【請求項3】
前記ピストンの外周に、容器A内面との気密性を供給するシール手段を少なくとも一つ付加したことを特徴とする請求項2記載のアキュムレータ。
【請求項4】
前記ピストンの制動を補助するために、弾性体を容器A内面の被緩衝高圧流体側に最接近する折返し位置Pおよび容器B側に最接近する折返し位置Qに付設すると同時に、ピストンが位置Pと位置Qのいずれか一方あるいは両方に位置したときにシール手段の被緩衝高圧流体側と緩衝流体側を連絡するバイパス路により均圧する手段を容器Aに付設したことを特徴とする請求項3記載のアキュムレータ。
【請求項5】
容器Aに代え、あるいは容器Aと容器Bの間に、増圧手段を付加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアキュムレータ。
【請求項6】
緩衝流体が作動する圧力が緩衝流体の臨界圧力以下の場合において、前記容器Bとして高圧流体システムの原料流体貯蔵槽を利用し、その気相部を前記増圧手段と連絡することを特徴とする請求項5記載のアキュムレータ。
【請求項7】
前記容器Bの一部に温度制御手段との熱交換を促進する手段を付加し等温過程に近づけることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアキュムレータ。


【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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