説明

アクセルペダル装置

【課題】急な踏込み操作が為された場合にその踏込み操作を機械的に制限するロック機構を有するアクセルペダル装置において、踏込み操作に対する制限が温度変化にあまり影響されることなく安定して行われるようにする。
【解決手段】第1スライド部材28と第2スライド部材32との相対変位速度が所定値以下の場合は、噛合歯車44が摩擦力に抗して回転させられることによりロック部材36がアンロック位置に保持され、操作ペダル16の踏込み操作が許容されるが、その相対変位速度が所定値を超えると、摩擦力による噛合歯車44の回転抵抗でロック部材36がロック位置へ回動させられ、伸縮装置20の踏込み変形(短縮変形)がポール40により機械的に規制されて操作ペダル16の踏込み操作が阻止される。これにより、操作ペダル16の急な踏込み操作による車両の急発進が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクセルペダル装置に係り、特に、急な踏込み操作が為された場合にその踏込み操作を機械的に制限するロック機構を有するアクセルペダル装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の急発進を防止するために、アクセルペダル装置の操作ペダルの急な踏込み操作を機械的に制限する技術が考えられている。特許文献1に記載の装置はその一例で、変形速度が大きいと粘度が増すダイラタンシー素材を利用し、緩やかな踏込み操作に対してはダイラタンシー素材が変形してその踏込み操作を許容するが、急な踏込み操作に対してはダイラタンシー素材が硬化してその踏込み操作を制限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−258818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイラタンシー素材は温度によって特性が変化し、それに伴って踏込み操作に対する制限がばらつくという問題があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、踏込み操作に対する制限が温度変化にあまり影響されることなく安定して行われるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、踏込み操作される操作ペダルを有するアクセルペダル装置において、(a) 一直線方向へ相対変位可能な一対のスライド部材を備えていて前記操作ペダルと車体側部材との間に配設され、その操作ペダルの踏込み操作に伴ってその一直線方向へ機械的に伸長または短縮するように踏込み変形させられる伸縮装置と、(b) 前記一対のスライド部材の何れか一方の第1スライド部材に移動可能に配設されたロック部材を備えており、そのロック部材がアンロック位置に保持されている間は前記伸縮装置の前記踏込み変形を許容するが、そのロック部材がロック位置へ移動させられるとその伸縮装置のその踏込み変形を機械的に規制するロック機構と、(c) 前記一対のスライド部材の他方の第2スライド部材および前記ロック部材の何れか一方に、所定の摩擦力を有する状態で前記一直線方向と直角な中心線まわりに回転可能に配設されるとともに、その第2スライド部材およびロック部材の他方と係合させられ、前記第1スライド部材とその第2スライド部材との相対変位速度が所定値以下の場合は前記摩擦力に抗して前記中心線まわりに回転させられることにより前記ロック部材が前記アンロック位置に保持されるが、その相対変位速度がその所定値を超えるとその摩擦力による回転抵抗でそのロック部材を前記ロック位置へ移動させるクラッチ部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明のアクセルペダル装置において、(a) 前記第2スライド部材には前記一直線方向に三角山形状の多数の噛合歯が設けられている一方、(b) 前記ロック部材は前記一直線方向に長い長手形状を成していて、その長手形状の中間位置で前記クラッチ部材の中心線と平行な支持軸まわりに回動可能に前記第1スライド部材に配設されており、(c) 前記クラッチ部材は、前記ロック部材の前記長手形状の一端部に前記中心線まわりに回転可能に配設されているとともに、そのロック部材が前記アンロック位置へ回動した状態で前記噛合歯と噛み合わされる三角山形状の多数の歯を有する噛合歯車であり、(d) 前記ロック部材は、前記噛合歯車が前記噛合歯と噛み合う前記アンロック位置において、前記摩擦力による回転抵抗で歯面の傾斜によりその噛合歯車がその噛合歯から逃げる方向へ前記支持軸まわりに回動させられることにより、前記長手形状の他端部がその噛合歯に接近する前記ロック位置へ回動させられることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明のアクセルペダル装置において、前記ロック機構は、前記ロック部材が前記アンロック位置へ回動した状態では前記噛合歯車が前記噛合歯と噛み合う方向へ回動するようにそのロック部材を付勢し、そのロック部材が前記ロック位置へ回動した状態ではそのロック部材の他端部がその噛合歯に接近する方向へ回動するようにそのロック部材を付勢するターンオーバスプリングを備えていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第2発明または第3発明のアクセルペダル装置において、前記ロック機構は、前記支持軸と平行な軸まわりに回動可能に前記第1スライド部材に配設されたポールを備えており、前記ロック部材が前記ロック位置へ回動させられることによりそのポールが機械的に前記噛合歯と噛み合わされて前記伸縮装置の前記踏込み変形を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このようなアクセルペダル装置においては、第1スライド部材と第2スライド部材との相対変位速度が所定値以下の場合は、クラッチ部材が摩擦力に抗して回転させられることによりロック部材がアンロック位置に保持され、操作ペダルの踏込み操作が許容されるが、その相対変位速度が所定値を超えると、摩擦力によるクラッチ部材の回転抵抗でロック部材がロック位置へ移動させられ、伸縮装置の踏込み変形が機械的に規制されて操作ペダルの踏込み操作が制限される。これにより、操作ペダルの急な踏込み操作による急激な出力増大(車両の急発進等)が防止される。
【0011】
ここで、上記ロック部材は、第1スライド部材と第2スライド部材との相対変位速度すなわち操作ペダルの踏込み速度が所定値を超えると、クラッチ部材の回転抵抗に基づいてアンロック位置からロック位置へ移動させられるため、温度変化の影響をあまり受けることなく常に略一定の踏込み速度で確実にロック位置へ移動させられて操作ペダルの踏込み操作が制限される。また、クラッチ部材に回転抵抗を付与する摩擦力の大きさを変更することで、操作ペダルの踏込み操作が制限される踏込み速度を容易に調整することができる。
【0012】
第2発明では、ロック部材が支持軸まわりに回動可能に配設されているとともに、クラッチ部材として噛合歯車が設けられて噛合歯と噛み合わされ、操作ペダルの踏込み速度が大きい場合にはその噛合歯車の回転抵抗で歯面の傾斜により噛合歯から逃げる方向へロック部材が回動させられ、ロック位置まで回動させられることにより伸縮装置の踏込み変形が規制されるため、ロック部材のロック位置への移動(回動)を含むロック機構のロック作動が安定して行われる。
【0013】
第3発明では、ロック部材がアンロック位置およびロック位置にそれぞれ保持されるようにターンオーバスプリングによって付勢されるため、操作ペダルの踏込み操作を許容したり制限したりするロック機構の作動が一層安定する。また、ロック部材をアンロック位置に保持する際のターンオーバスプリングの付勢力を変更することで、操作ペダルの踏込み操作が制限される踏込み速度を調整することができる。
【0014】
第4発明では、ロック部材がロック位置へ回動させられることにより機械的に噛合歯と噛み合わされて伸縮装置の踏込み変形を阻止するポールがロック部材と別個に設けられているため、操作ペダルの踏込み操作を確実に阻止できるとともに、ロック部材の形状や強度に関する設計の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である車両用アクセルペダル装置を説明する図で、(a) は全体を示す概略側面図、(b) はロック機構部分を拡大して示す断面図である。
【図2】図1の実施例において、ロック機構により踏込み操作が阻止される状態を示す図で、図1の(b) に相当する断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す図で、図1の(a) に相当する概略側面図である。
【図4】本発明の更に別の実施例を示す図で、図1の(b) に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、自動車等の車両用のアクセルペダル装置に好適に適用されるが、操作ペダルが踏込み操作されることにより動力源の出力を増大させる車両用以外のアクセルペダル装置にも適用され得る。このアクセルペダル装置は、操作ペダルの踏込み操作量(ストロークや押圧力)を電気的に検出し、駆動アクチュエータによってエンジン等の動力源の出力を制御することもできるが、操作ペダルにケーブルやリンク等が連結されてスロットル弁等の出力調整装置が機械的に制御されるようになっていても良い。
【0017】
伸縮装置は、操作ペダルが踏込み操作されることによって伸長するように配設されても、短縮するように配設されても良い。ロック機構のロック部材は、例えば支持軸まわりに回動可能に第1スライド部材に配設されるが、一直線方向と交差する方向へ移動可能に第1スライド部材に配設され、カム等により第2スライド部材に係合させられるロック位置へ移動させられることにより、伸縮装置の踏込み変形(伸長または短縮)を規制することもできるなど、種々の態様が可能である。また、第4発明のように、噛合歯と噛み合わされるポールを別個に設けることもできるが、ロック部材に係止爪等を一体的に設け、第2スライド部材に係止させて踏込み変形を規制することもできる。摩擦接触によって伸縮装置の踏込み変形を規制することも可能である。
【0018】
所定の摩擦力を有する状態で一直線方向と直角な中心線まわりに回転可能に配設されるクラッチ部材は、第2スライド部材に設けることもできるし、ロック部材に設けることもできる。このクラッチ部材の摩擦力は、例えばウェーブワッシャや皿ばねなどの弾性部材を所定の圧縮状態で配設することによって付与できるとともに、その圧縮状態を変更することで摩擦力の大きさ、更には操作ペダルの踏込み操作が制限される踏込み速度を調整することができる。第2スライド部材やロック部材に対してクラッチ部材をねじ等により取り付ける際の面接触による摩擦だけで所定の摩擦力を付与できるとともに、締付トルクを変更して摩擦力を調整することも可能である。
【0019】
第2発明では、第2スライド部材に多数の噛合歯が設けられ、ロック部材に配設された噛合歯車と噛み合わされるようになっているが、第2スライド部材に噛合歯車を配設してロック部材に設けられた1または複数の噛合歯と噛み合わせるようにしても良い。これ等の噛合歯車および噛合歯の歯は、例えば三角山形状の山頂が尖った三角形状が望ましいが、山頂に平坦面が設けられていても良い。
【0020】
第3発明のターンオーバスプリングとしては、例えばねじりコイルスプリングが好適に用いられるが、引張コイルスプリングや圧縮コイルスプリング等の他のスプリングを採用することもできる。第1発明や第2発明の実施に際しては必ずしもターンオーバスプリングは必要でなく、一旦ロック位置へ回動したロック部材が、操作ペダルの踏込み速度の低下に伴ってリターンスプリング等によりアンロック位置へ戻り回動させられることにより、そのまま操作ペダルを踏込み操作できるようになっていても良い。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用のアクセルペダル装置10を説明する図で、(a) は全体を示す概略側面図、(b) はロック機構部分を示す断面図である。このアクセルペダル装置10は、車両のフロア12の近傍に設けられた回動軸14の軸心まわりに回動可能に配設された操作ペダル16を備えており、運転者の足18によって矢印Aで示すように図1(a) における左方向(車両前方)へ踏込み操作されるようになっている。この操作ペダル16の裏側(車両前側)には伸縮装置20が配設され、操作ペダル16の踏込み操作に伴って短縮するように踏込み変形させられるとともに、その伸縮装置20には、踏込み変形(短縮変形)を規制するロック機構22が配設されている。操作ペダル16は、図示しないリターンスプリングやストッパにより図1(a) に示す原位置まで戻り回動させられるようになっている。
【0022】
伸縮装置20は、前記回動軸14と平行な連結ピン24まわりに回動可能に車体側部材26に連結された第1スライド部材28と、同じく回動軸14と平行な連結ピン30まわりに回動可能に操作ペダル16に連結された第2スライド部材32とを備えている。第1スライド部材28および第2スライド部材32は、図1(a) に示す側面視において連結ピン24と30とを結ぶ一直線上にそれぞれ位置させられているとともに、その一直線方向の相対変位可能に嵌合されており、これにより全体として一直線方向へ伸縮可能とされている。そして、それ等の第1スライド部材28および第2スライド部材32の嵌合部分に前記ロック機構22が配設され、第2スライド部材32が第1スライド部材28に対して図1の(b) に矢印Bで示す方向へ相対変位させられる踏込み変形(短縮変形)を規制するようになっている。なお、本実施例では、操作ペダル16の踏込み操作に伴って連結ピン24まわりに回動させられる第1スライド部材28の回動角度が、図示しない回転角度センサによりアクセル操作量として電気的に検出され、そのアクセル操作量に応じてエンジン等の動力源の出力が電気的に制御される。
【0023】
ロック機構22は、伸縮装置20の伸縮方向である一直線方向と直角な支持軸34まわりに回動可能に第1スライド部材28に設けられたロック部材36と、その支持軸34と平行な軸38まわりに回動可能に第1スライド部材28に配設されたポール40とを備えている。第1スライド部材28は、ロック機構22が配設される部分が断面コの字形状とされており、そのコの字形状の内側部分に上記ロック部材36およびポール40が配設されている。ロック部材36は長手形状を成しているとともに、支持軸34によって第1スライド部材28に取り付けられる中間部分で折り曲げられたくの字形状を成しており、その一端部には支持軸34と平行なピン42まわりに相対回転可能に噛合歯車44が取り付けられている。
【0024】
上記噛合歯車44はクラッチ部材として機能するもので、所定の摩擦力を有する状態、すなわち所定の回転抵抗を有する状態で、中心線まわりに回転可能にピン42によりロック部材36に配設されている。この摩擦力は、例えばウェーブワッシャや皿ばねなどの弾性部材を所定の圧縮状態で配設することによって付与できるとともに、その圧縮状態を変更することで摩擦力の大きさを調整することができるが、ねじ等により所定の締付トルクで噛合歯車44をロック部材36に取り付けるだけで、それ等の間の摩擦接触により所定の回転抵抗を付与することもできる。
【0025】
噛合歯車44は、外周部に先端が尖った三角山形状の多数の歯を備えており、第2スライド部材32に前記一直線方向に設けられた三角山形状の多数の噛合歯46と噛み合わされるようになっている。ロック部材36にはターンオーバスプリング48が掛け止められており、図1の(b) に示すように噛合歯車44が噛合歯46と噛み合うアンロック位置へ回動させられた状態では、そのターンオーバスプリング48の付勢力に従ってそのアンロック位置に保持される。本実施例では、ターンオーバスプリング48としてねじりコイルスプリングが用いられている。
【0026】
そして、ロック部材36がアンロック位置に保持されている状態で操作ペダル16が踏込み操作され、第2スライド部材32が矢印Bで示す方向へ相対変位させられると、噛合歯車44には図1(b) においてピン42の右まわりに回転する方向のモーメントが加えられる。その場合に、噛合歯車44は所定の回転抵抗を有する状態でロック部材36に配設されているため、第2スライド部材32の相対変位速度が所定値以下の間は回転抵抗に抗して噛合歯車44がピン42まわりに回転させられ、ロック部材36はアンロック位置に保持されるが、第2スライド部材32の相対変位速度が所定値を超えると、噛合歯車44がピン42まわりに回転する前に噛合歯46から逃げるようにロック部材36がターンオーバスプリング48の付勢力に抗して支持軸34の左まわりに回動させられるようになる。噛合歯車44および噛合歯46の歯は三角山形状を成しているため、その歯面の傾斜によって噛合歯車44には噛合歯46から離間する方向(図1(b) における上方)の力が加えられ、ロック部材36が支持軸34の左まわりに回動させられる。図1の(b) は、ロック部材36がアンロック位置に保持されたまま操作ペダル16が踏込み操作され、噛合歯車44を回転させつつ第2スライド部材32が矢印B方向へ相対変位させられた状態である。
【0027】
一方、図2は、操作ペダル16が比較的速い踏込み速度で踏込み操作され、その踏込み操作に伴ってロック部材36が支持軸34の左まわりに回動させられるとともに、ターンオーバスプリング48の付勢方向が逆転してロック位置に保持されているロック状態である。このようにロック部材36がロック位置まで回動させられると、前記ポール40が軸38の右まわりに回動させられて噛合歯46と噛み合わされ、第2スライド部材32がそれ以上矢印B方向へ相対変位することが阻止され、操作ペダル16をそれ以上踏込み操作することが防止される。ロック部材36のロック位置は、ポール40と噛合歯46との噛合によって規定されている。また、この図2の状態で操作ペダル16の踏込み操作が解除され、その操作ペダル16の戻り回動に伴って第2スライド部材32が図の右方向へ相対的に後退させられると、ポール40が噛合歯46によって軸38の左まわりに回動させられるとともに、ロック部材36が支持軸34の右まわりに回動させられ、ターンオーバスプリング48の付勢方向が逆転して図1(b) のアンロック状態に復帰する。ポール40は、図示しないスプリングによりターンオーバスプリング48よりも小さな付勢力で軸38の左まわりに回動するように付勢されており、図1の(b) に示すようにロック部材36の他端部と係合する状態に保持される。
【0028】
このように本実施例のアクセルペダル装置10においては、操作ペダル16が通常の踏力により緩やかに踏込み操作され、第1スライド部材28と第2スライド部材32との相対変位速度が所定値以下の場合は、噛合歯車44が摩擦力に抗して回転させられることによりロック部材36がアンロック位置に保持され、操作ペダル16の踏込み操作が許容される。これに対し、操作ペダル16が通常より大きな踏力で急激に踏込み操作され、第1スライド部材28と第2スライド部材32との相対変位速度が所定値を超えると、摩擦力による噛合歯車44の回転抵抗でロック部材36がロック位置へ向かって回動させられ、伸縮装置20の踏込み変形(短縮変形)がポール40により機械的に規制されて操作ペダル16の踏込み操作が阻止される。これにより、操作ペダル16の急な踏込み操作による車両の急発進が防止される。
【0029】
ここで、上記ロック部材36は、第1スライド部材28と第2スライド部材32との相対変位速度すなわち操作ペダル16の踏込み速度が所定値を超えると、噛合歯車44の回転抵抗に基づいてアンロック位置からロック位置へ回動させられるため、温度変化の影響をあまり受けることなく常に略一定の踏込み速度で確実にロック位置へ回動させられ、操作ペダル16の踏込み操作を制限することができる。また、噛合歯車44に回転抵抗を付与する摩擦力の大きさを変更することで、操作ペダル16の踏込み操作が制限される踏込み速度を容易に調整することができる。
【0030】
また、本実施例では、ロック部材36が支持軸34まわりに回動可能に配設されているとともに、クラッチ部材として噛合歯車44が設けられて噛合歯46と噛み合わされ、操作ペダル16の踏込み速度が大きい場合にはその噛合歯車44の回転抵抗で歯面の傾斜により噛合歯46から逃げる方向へロック部材36が回動させられ、ロック位置まで回動させられることにより伸縮装置20の踏込み変形(短縮変形)が規制されるため、ロック部材36のロック位置への移動(回動)を含むロック機構22のロック作動が安定して行われる。
【0031】
また、本実施例では、ロック部材36がアンロック位置およびロック位置にそれぞれ保持されるようにターンオーバスプリング48によって付勢されるため、操作ペダル16の踏込み操作を許容したり制限したりするロック機構22の作動が一層安定する。また、ロック部材36をアンロック位置に保持する際のターンオーバスプリング48の付勢力(ばね力や掛止位置など)を変更することで、操作ペダル16の踏込み操作が制限される踏込み速度を調整することができる。
【0032】
また、本実施例では、ロック部材36がロック位置へ回動させられることにより機械的に噛合歯46と噛み合わされて伸縮装置20の踏込み変形を阻止するポール40がロック部材36と別個に設けられているため、操作ペダル16の踏込み操作を確実に阻止できるとともに、ロック部材36の形状や強度に関する設計の自由度が高くなる。
【0033】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0034】
前記実施例では伸縮装置20を構成している第1スライド部材28の回動角度がアクセル操作量として検出されるようになっていたが、図3に示すように、アクセル操作量を検出するための検知レバー50とは別個に伸縮装置20を操作ペダル16とフロア12との間に配設するようにしても良い。検知レバー50は、回動軸14と平行な連結ピン52まわりに回動可能に車体側部材26に配設されているとともに、図示しない付勢手段(スプリングなど)により左まわりに回転する方向へ付勢されて、先端部が操作ペダル16の裏面に接するように押圧されており、その操作ペダル16の踏込み操作に伴って連結ピン52まわりに回動させられるようになっている。この実施例においても、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。なお、フロア12は車体側部材に相当する。
【0035】
図4の実施例は、前記ポール40を用いることなく第2スライド部材32の矢印B方向の相対変位を規制するロック機構60を備えている。このロック機構60のロック部材62は、両端部が噛合歯46に接近するように折れ曲がったくの字形状を成しており、前記実施例と同様に中間部において支持軸34まわりに回動可能に第1スライド部材28に配設されているとともに、一端部にはクラッチ部材として噛合歯車44がピン42まわりに回転可能に配設されているが、他端部には噛合歯46と噛み合う係止爪64が一体に設けられている。そして、ロック部材62が一点鎖線で示すロック位置へ回動させられると、係止爪64が噛合歯46と噛み合わされることにより、第2スライド部材32のそれ以上の相対変位が阻止され、操作ペダル16のそれ以上の踏込み操作が防止される。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
10:アクセルペダル装置 12:フロア(車体側部材) 16:操作ペダル 20:伸縮装置 22、60:ロック機構 28:第1スライド部材 32:第2スライド部材 34:支持軸 36、62:ロック部材 40:ポール 44:噛合歯車(クラッチ部材) 46:噛合歯 48:ターンオーバスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏込み操作される操作ペダルを有するアクセルペダル装置において、
一直線方向へ相対変位可能な一対のスライド部材を備えていて前記操作ペダルと車体側部材との間に配設され、該操作ペダルの踏込み操作に伴って該一直線方向へ機械的に伸長または短縮するように踏込み変形させられる伸縮装置と、
前記一対のスライド部材の何れか一方の第1スライド部材に移動可能に配設されたロック部材を備えており、該ロック部材がアンロック位置に保持されている間は前記伸縮装置の前記踏込み変形を許容するが、該ロック部材がロック位置へ移動させられると該伸縮装置の該踏込み変形を機械的に規制するロック機構と、
前記一対のスライド部材の他方の第2スライド部材および前記ロック部材の何れか一方に、所定の摩擦力を有する状態で前記一直線方向と直角な中心線まわりに回転可能に配設されるとともに、該第2スライド部材および該ロック部材の他方と係合させられ、前記第1スライド部材と該第2スライド部材との相対変位速度が所定値以下の場合は前記摩擦力に抗して前記中心線まわりに回転させられることにより前記ロック部材が前記アンロック位置に保持されるが、該相対変位速度が該所定値を超えると該摩擦力による回転抵抗で該ロック部材を前記ロック位置へ移動させるクラッチ部材と、
を有することを特徴とするアクセルペダル装置。
【請求項2】
前記第2スライド部材には前記一直線方向に三角山形状の多数の噛合歯が設けられている一方、
前記ロック部材は前記一直線方向に長い長手形状を成していて、該長手形状の中間位置で前記クラッチ部材の中心線と平行な支持軸まわりに回動可能に前記第1スライド部材に配設されており、
前記クラッチ部材は、前記ロック部材の前記長手形状の一端部に前記中心線まわりに回転可能に配設されているとともに、該ロック部材が前記アンロック位置へ回動した状態で前記噛合歯と噛み合わされる三角山形状の多数の歯を有する噛合歯車であり、
前記ロック部材は、前記噛合歯車が前記噛合歯と噛み合う前記アンロック位置において、前記摩擦力による回転抵抗で歯面の傾斜により該噛合歯車が該噛合歯から逃げる方向へ前記支持軸まわりに回動させられることにより、前記長手形状の他端部が該噛合歯に接近する前記ロック位置へ回動させられる
ことを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ロック部材が前記アンロック位置へ回動した状態では前記噛合歯車が前記噛合歯と噛み合う方向へ回動するように該ロック部材を付勢し、該ロック部材が前記ロック位置へ回動した状態では該ロック部材の他端部が該噛合歯に接近する方向へ回動するように該ロック部材を付勢するターンオーバスプリングを備えている
ことを特徴とする請求項2に記載のアクセルペダル装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記支持軸と平行な軸まわりに回動可能に前記第1スライド部材に配設されたポールを備えており、前記ロック部材が前記ロック位置へ回動させられることにより該ポールが機械的に前記噛合歯と噛み合わされて前記伸縮装置の前記踏込み変形を阻止する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアクセルペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153180(P2012−153180A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11606(P2011−11606)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】