説明

アクチュエータの制御装置

【課題】小型化に有利であり、また、コストの上昇を抑制できるアクチュエータの制御装置を提供する。
【解決手段】第1バスバー(電源用バスバー)522と第2バスバー(接地用バスバー)524を含んで樹脂成形された回路装置(本体)526を備え、第1バスバー522及び第2バスバー524は、それぞれの少なくとも一部が平板状に形成され表面積が大きい2つの主平面部522a,524aと、主平面部522a,524aに隣り合い、主平面部522a,524aより表面積の小さい2つの副平面部522b,524bとから構成される。回路装置526は、複数の金型内の少なくとも1つの可動金型551を備えた樹脂成形機によって樹脂成形される。第1バスバー522の1つの主平面部522aと第2バスバー524の1つの主平面部524aとが向かい合うように対向配置され、且つ、その対向方向が可動金型551の型抜き方向と異なる方向に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のバスバーを含んで構成される回路装置を備えたアクチュエータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回路装置では、一対のバスバーの平板状部分の主平面(肉厚方向と直交する面)部同士を対向させつつ互いに並行して延びた状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−319665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の金型を用いてバスバーが樹脂と一体となるように樹脂成形を行う場合、金型の抜き方向にバスバーの主平面部が対向して配置されると、一の金型でそれぞれのバスバーを保持しようとしても、該一の金型側に配置されるバスバーが、該一の金型と他方のバスバーとの間で干渉するため、他方のバスバーを該一の金型で保持することが困難となる。
【0005】
このため、他方のバスバーを該一の金型で保持するための保持部を確保するために、いずれか一方のバスバーの形状を変更する必要が生じ、制御装置の小型化に悪影響を与え、また、該制御装置のコスト上昇の要因となる問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであり、主平面部が対向して配置されるバスバーを樹脂成形される回路装置が適用されるアクチュエータの制御装置において、制御装置の小型化に有利であり、また、コストの上昇を抑制できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、
第1バスバーと第2バスバーを含んで樹脂成形された回路装置を備えたアクチュエータの制御装置であって、
前記第1及び第2バスバーは、それぞれの少なくとも一部が平板状に形成され表面積が大きい2つの主平面部と、前記主平面部に隣り合い、該主平面部より表面積の小さい2つの副平面部とから構成され、
前記回路装置は、複数の金型内の少なくとも1つの可動金型を備えた樹脂成形機によって樹脂成形され、
前記樹脂成形された回路装置は、前記第1バスバーの1つの主平面部と前記第2バスバーの1つの主平面部とが向かい合うように対向配置され、且つ、その対向方向が前記可動金型の型抜き方向と異なる方向に配置された前記第1バスバー及び前記第2バスバーを含んで構成される回路装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成により、樹脂成形において、金型の抜き方向にバスバーの主平面部を対向配置する必要がなくなる。このため、一の金型でそれぞれのバスバーを保持する際、該一の金型側に配置されるバスバーが該一の金型と他方のバスバーとの間で干渉することが抑制され、支障なく他方のバスバーを該一の金型で保持することができる。
【0009】
したがって、他方のバスバーを該一の金型で保持するための保持部を確保するために、いずれか一方のバスバーの形状を変更する必要はなく、アクチュエータの制御装置を小型化することができ、また、該制御装置のコスト上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両ブレーキ用電子回路装置を搭載した電動式ブレーキ倍力装置の側面図である。
【図2】同上ブレーキ倍力装置の部分断面図である。
【図3】同上ブレーキ倍力装置のモータ制御ユニットの組立分解斜視図である。
【図4】同上モータ制御ユニットのパワー基板を取り付けた図である。
【図5】同上モータ制御ユニットの制御基板を取り付けた図である。
【図6】同上モータ制御ユニットのフィルタ基板の下面を示す図である。
【図7】同上モータ制御ユニットのフィルタ基板をケースに収容した時の上面から見た時のバスバーの斜視図である。
【図8】図7のバスバーの平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態における樹脂成形の説明図である。
【図10】樹脂成形の参考例を示す図である。
【図11】樹脂成形の参考例を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態における樹脂成形の説明図である。
【図13】図12の突出部の斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態の可動金型における係合穴及びその周辺の構成を型抜き方向の反対側から見た例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両ブレーキ用電子回路装置の第1実施形態を図に基づいて説明する。
【0012】
図1は上記車両ブレーキ用電子回路装置を搭載した電動式ブレーキ倍力装置100の側面図である。
【0013】
ブレーキ倍力装置100は、ブレーキペダルの操作量に基づいてブレーキ制御を行うための作動油の圧力を発生する油圧式ブレーキ機構150と、ブレーキ力を制御する電動モータと、該電動モータを制御するためのモータ制御ユニット300と、前記作動油を蓄えているリザーバ700とを備えている。
油圧制御機構150は、車両後方から前方へ向かう方向に対して車両上方に鋭角のα(例えば10〜15°)だけ傾斜した軸Aを有する。 油圧式ブレーキ機構150は、ボルト152により、エンジンルームR1と車室R2とを仕切る隔壁Wに固定されている。油圧式ブレーキ機構150は、軸方向における一方の側(車両前方側)にマスタシリンダ250及び前記リザーバ700を有している。
【0014】
電動モータは、油圧式ブレーキ機構150のハウジング160の内部に収納されている。電動モータは複数相のモータ、例えば、3相ブラシレスモータを使用する。
【0015】
前記ハウジング160にはその外周に、本実施の形態ではリザーバ700側に、保持台170を形成し、この保持台170にモータ制御ユニット300のケース302が固定される。
【0016】
モータ制御ユニット300は、詳細を後述するが、直流電力を交流電力に変換し、該交流電力を電動モータに供給して駆動を制御するものである。モータ制御ユニット300のケース302には金属製の蓋304が設けられ、ケース302の低部及び外周には冷却のためのフィン312が多数形成されている。該モータ制御ユニット300が、本発明に係るアクチュエータの制御装置に相当する。
【0017】
上記のように、モータ制御ユニット300を、電動式ブレーキ倍力装置100に一体に組み込んだことにより、モータ制御ユニットとブレーキ倍力装置とを別個に配置した場合の面倒な接続作業を回避できる。
【0018】
次に油圧式ブレーキ機構150及び電動モータの構造を、図2を用いて説明する。油圧式ブレーキ機構150の車両後方側は隔壁Wの開口から車室R2内に突出しており、図示していないブレーキペダルに機械的に接続しており、ブレーキペダルの踏込み量である操作量に基づき入力ロッド180が後方側から前方のマスタシリンダ250側へ移動する。入力ロッド180の移動に基づき入力ピストン182もマスタシリンダ250側へ移動する。
【0019】
マスタシリンダ250はハウジング260を有し、内部に形成された円筒状の穴には、フリーピストン266が嵌挿され、該フリーピストン266の車両後方側に圧力室262、前方側に圧力室264が画成されている。フリーピストン266は、基本的には圧力室262と圧力室264との圧力が同一圧力となるように移動する。圧力室262の作動油が図1の吐出口252から供給され、圧力室264の作動油が図1の吐出口254から供給されるので、吐出口252と吐出口254からは同一圧力の作動油が供給される。
【0020】
上記入力ピストン182がブレーキペダルの操作に基づき、マスタシリンダ250側に移動すると、該移動に応じて上記圧力室262の圧力が増加する。この圧力増加によりフリーピストン266が圧力室264の方に移動し、圧力室264の作動油の圧力が同様に増加する。圧力の増加した作動油は吐出口252、254から液圧制御装置(図示せず)に送られ、該液圧制御装置から車両の各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダWCに制動力を発生させるために送られる。
【0021】
上記ブレーキペダルの操作力だけでは十分な作動油の圧力を発生することが困難であり、制御ピストン190が設けられ、前記制御ピストン190の移動を制御するために電動モータ及び移動機構200が設けられる。
【0022】
電動モータは固定子290と回転子296とを有して構成され、回転子296はカバー162に保持された軸受けと移動機構200のハウジング160に保持された軸受けとによって回動自在に支持されている。前記モータ制御ユニット300から交流電力が上記固定子290に供給されると、供給された交流電力に基づき上記回転子296が回転する。固定子290は固定子鉄心292と固定子鉄心292に巻回された固定子巻線294とを有している。回転子296は固定子鉄心292に対向して永久磁石を有しており、該永久磁石は回転子296の磁極を形成する。
【0023】
回転子296の磁極の位置はレゾルバ280により検出されモータ制御ユニット300に送られ、モータ制御ユニット300は回転子296の磁極位置に基づき交流電流を発生し、固定子巻線294に電力バスバー172を介して供給される。レゾルバ280は、回転子296に設けられ回転子296と共に回転するレゾルバロータ284と、レゾルバロータ284の回転位置を検知するレゾルバステータ282とを有し、回転子296の磁極の位置を表す信号が前記レゾルバステータ282から信号線174を介して前記モータ制御ユニット300に出力される。
【0024】
電動モータの回転子296は中空形状を成し、回転子296の内側に電動モータの回転力を軸方向の力に変える移動機構200が設けられ、電動モータの発生するトルクに基づいて制御ピストン190が軸方向に移動する。移動機構200は中空の回転子296に固定されたナット部材202とボール204とネジ部材206とを有し、電動モータの回転子296が回転するとナット部材202が回転する。ナット部材202の回転方向に従ってボール204を介して噛合っている中空のネジ部材206が軸方向において一方(前方)あるいは他方(後方)側に移動する。制御ピストン190の制御方法は色々有るが代表的な制御方法を次に記載する。
【0025】
ブレーキペダルの操作により入力ピストン182がマスタシリンダ250の方向に移動すると、入力ピストン182と制御ピストン190との位置関係の差が生じる。この移動差を無くすように電動モータを制御すると、電動モータの回転トルクによりナット部材202が回転し、ナット部材202と噛合っているネジ部材206が軸方向に沿ってマスタシリンダ250側に移動する。
【0026】
マスタシリンダ250の圧力室262に入力ピストン182と制御ピストン190の両方の力が加わり、前記圧力室262の圧力が増加し、フリーピストン266の作用により圧力室264の圧力も同様に増加する。前記圧力室262及び圧力室264の圧力(作動油の圧力)に基づいてブレーキの制動力が発生する。圧力室262及び圧力室264には、入力ピストン182、制御ピストン190及びフリーピストン266を常時後退方向へ付勢する戻しばねがそれぞれ配設されている。
【0027】
ブレーキペダルの踏み込みがなくなりブレーキペダルの操作が終了すると、作動油の圧力の力に加え前記戻しばねにより入力ピストン182と制御ピストン190は元の位置である軸方向の他方側(後方)に戻され、作動油の圧力が制動制御の前の状態に戻る。
【0028】
今、入力ピストン182と制御ピストン190を同じ速度で軸方向に沿ってマスタシリンダ250の方向に移動したとすると作動油の圧力により働く力は軸に垂直な断面の面積に基づくので、入力ピストン182の軸に垂直な断面の面積に対し制御ピストン190の軸に垂直な断面の面積を大きくすれば、入力ピストン182を押す力に対し何倍もの大きな力で作動油の圧力を高めることができ、大きな制動力を発生することができる。
【0029】
また、入力ピストン182の移動速度に対し早い速度で制御ピストン190をマスタシリンダ方向に移動させると、わずかな操作量に対して大きな制動力を発生することが可能となる。一方、入力ピストン182の移動速度に対し制御ピストン190をゆっくり移動する、あるいは逆方向に移動すると、入力ピストン182の移動量に対して制動力の発生を低く抑えることが可能となる。
【0030】
例えばブレーキペダルの操作に基づいて、車両の走行を行う車両走行用モータで回生制動を行い車両の運動エネルギーを電力に変換する場合には、上記車両走行用モータにより制動力が発生する。この場合は上記作動油の圧力に基づく制動力が小さくてよい、あるいは不要となるので、制御ピストン190を入力ピストン182の移動に比べてゆっくり動かすか、あるいは入力ピストン182の移動と逆方向に動かすこととなる。
【0031】
ブレーキペダルが踏まれていない状態、すなわちブレーキの非作動時では入力ピストン182は非動作状態の位置に有り、マスタシリンダ250の作動油の圧力を制御するための制御ピストン190は非動作状態の位置にある。制御ピストン190及び入力ピストン182が非動作状態の位置にあるのでフリーピストン266は非動作の位置にある。制御ピストン190とフリーピストン266は、上述のとおり非動作状態の位置である他方側すなわちブレーキペダル側にあるので、圧力室262や圧力室264のリリーフポート256や258は開状態となり、圧力室262や圧力室264はリリーフポート256や258を介してリザーバ700と連通した状態にあり、リザーバ700の作動油によって各圧力室262,264は満たされている。
【0032】
ブレーキペダルが踏まれ、上述のとおり入力ピストン182と制御ピストン190とが図2の左側に移動すると圧力室262や圧力室264と各リリーフポート256や258とを連通する通路は制御ピストン190とフリーピストン266とにより遮断され、上述のとおり、入力ピストン182と制御ピストン190の移動に応じて圧力室262の作動油が圧縮されて圧力が上昇し、これに伴いフリーピストン266が図3の左側に移動し、圧力室264の作動油が圧縮されて圧力上昇する。この圧力に基づき制動力が発生する。入力ピストン182と制御ピストン190との間には一対の付勢手段であるばねが設けられており、ブレーキの非作動状態で入力ピストン182と制御ピストン190との相対位置関係が中立位置に保持されるように作用する。
【0033】
次に、本発明に係るモータ制御ユニット300について詳述する。
【0034】
図3は、モータ制御ユニット300の組立分解斜視図を示す。図示のように、モータ制御ユニット300は、金属製のケース302内に、パワー基板352、フィルタ基板360、制御基板380からなる3枚の回路基板が間隔をあけて積層され、蓋304で上面が閉塞されている。
ケース302に取り付けられるフィルタ309は、モータ制御ユニット300のケース302の内部へ水などの液体が侵入するのを抑制する一方で、ケース302の内部における圧力の変動を抑制して該圧力を一定に保つよう、呼吸作用によってケース302の内部と外部との間で空気の流通を可能とするものである。 図4は、パワー基板352をケース302に取り付けた状態の上面を示す。該パワー基板352は、ケース302に固定されている。ケース302は金属製で底面303を有し、その上側は電気部品の組立てのために開口し、ケース302の低部外周にはこのケース302をハウジング160にねじ等で固定するための固定部材301A〜301Dを有している。
【0035】
ケース302の底面303には電動モータに交流電力を送り、さらにハウジング160内部に取り付けられているレゾルバ280の出力信号を受けるための穴314が形成されている。
【0036】
ケース302の内側の底面303に放熱グリスを挟んでパワー基板352が配置され、該パワー基板352がネジによりケース302の底面303に固定される。パワー基板352には直流電力を交流電力に変換するためのインバータ回路(電動モータの駆動回路)を構成するU,V,W各相の半導体素子350Aと350Bが実装されている。
【0037】
本実施形態では半導体素子350Aはインバータ回路のU相とV相とW相の上アームとして動作するパワースイッチング半導体であり、半導体素子350Bはインバータ回路のU相とV相とW相の下アームとして動作するパワースイッチング半導体である。パワー基板352には直流電力を受けるための直流端子358Aと358Bが設けられている。また上記直流電力から作られた交流電力を出力するためのU相とV相とW相の交流端子356Uと356Vと356Wとを有している。
【0038】
パワー基板352には半導体素子350Aと350Bに制御基板380から、該半導体素子350Aと350Bの駆動を制御する制御信号を供給するための端子を列設したリードフレーム320が配設される。上記制御信号を各アームの半導体素子350Aと350Bに加えることで、各半導体素子350A,350Bはスイッチング動作を為し、直流電力を交流電力に変換する。上記リードフレーム320は、上記制御信号の伝送のみならず各基板相互間の信号線の接続を行う働きをする。
【0039】
ケース302に固定され、直流及び交流電力を授受するためのパワー端子部材324は、樹脂に導体を埋め込む構造をなしており、フィルタ基板360に実装される後述の平滑用のコンデンサ362から直流電力を受けるための直流入力端子328Aと直流入力端子328Bとを有する。入力された直流電力をパワー基板352へ出力するための直流出力端子334Aと直流出力端子334Bとを有しており、さらにパワー基板352で発生した交流電力を受けるための交流入力端子334U〜334Wを有している。入力された交流電力を電動モータに供給するための交流出力端子326U〜326Wを有している。
【0040】
パワー端子部材324の直流出力端子334Aがパワー基板352の直流端子358Aにワイヤボンディング330により接続され、同じく直流出力端子334Bが直流端子358Bにワイヤボンディング330により接続される。またパワー基板352の交流端子356Uと356Vと356Wがパワー端子部材324の交流入力端子334U〜334Wにそれぞれワイヤボンディング330により接続される。
【0041】
ケース302の側部開口に固定されたコネクタ306は、直流電力を受けるための電力端子308と信号を授受するための信号端子307とを有している。
【0042】
信号端子307は、ケース302内で垂直に上方に向かって延設されており、後述する制御基板380に半田付けされる。
【0043】
図5は、制御基板380をケース302に取り付けた状態の上面を示す。制御基板380は、6本のボルト384A〜384Fをフィルタ基板360のボルト通し孔402(図6参照)を貫通させ、フィルタ基板360とともにケース302の底部周縁部にねじ留めして締結される。制御基板380にはコンピュータを含む制御回路が取り付けられており、電動モータの駆動回路であるインバータ(半導体素子350A,350B)の駆動を制御するための制御信号がこの基板で作られる。
【0044】
ケース302内で垂直に上方に向かって延設されたコネクタ306の信号端子307は、制御基板380の接続部382に接続される。さらに、一方の端子がパワー基板352に接続されるリードフレーム320の他方の端子は、制御基板382の信号接続部386に接続され、その上端部を半田付けされて接続される。
【0045】
図6は、部品実装済みのフィルタ基板360がケース302に取り付けられた時に、ケース302の底面303側となる下面側を示した図である。
【0046】
フィルタ基板360は、ケース302の底面303に固定されたパワー基板352上部に配置される一方で制御基板380の下部に配置され、パワー基板352と制御基板380に挟まれるようにケース302内に収容される。
【0047】
フィルタ基板360の本体526は、後述するように少なくとも2つの金型を用いて、インサート成形等による樹脂成形を行って構成された樹脂成形体である。
【0048】
フィルタ基板360がケース302に取り付けられた時に下面側となる面には、複数(例えば3つ)のコンデンサ(例えば、電解コンデンサ)362と、セラミックフィルタコンデンサ364、抵抗366等のノイズ除去のために、ノイズフィルタ処理回路として構成される各種電子部品が取り付けられており、また、過電流等から保護するためのリレー370が取り付けられている。
【0049】
コンデンサ362は、後述する電源用バスバー522に供給する電源電流を平滑し、ノイズによる瞬間的な過電流を抑制し、また、電源用バスバー522、接地用バスバー524間で発生するノイズやリップル電流の発生を低減するものである。
【0050】
本体526は、コンデンサ362の取り付け位置の縁部527に、電源(正極)ライン及び接地(負極)ラインの取り出し口526aを備えており、該取り出し口526aの一方の開口端縁部には、電源用バスバー522と一体的に形成された電源接続端子522fが配置されている。モータ制御ユニット300の外部にある電源供給部からコネクタ306を介して供給される直流電流は、前記電源接続端子522fを介してフィルタ基板360の各回路に送電される。
【0051】
また、前記取り出し口526aの電源接続端子522f配置側と対向する側の開口端縁部には、接地用バスバー524と一体的に形成された接地接続端子524fが配置されている。フィルタ基板360の各回路からの接地電流は、接地接続端子524f及びコネクタ306を介して前記電源供給部に送電される。
【0052】
電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、本体526をインサート成形等により樹脂成形する際に本体526内部にモールドされる。そして、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、平板状に形成された部分が、コンデンサ362と本体526の前記取り出し口526aを備えた縁部527との間に配置される。前記各バスバー522,524の平板状部分は、前記縁部527に沿って互いに平行に対向して配置される。
【0053】
また、電源用バスバー522と接地用バスバー524との間の樹脂が、これらバスバー522,524相互を絶縁している。
【0054】
このようにして、電源用バスバー522は、電源供給部からの電力をフィルタ基板360の各回路に送電するための電源ラインとして機能し、また、接地用バスバー524は、フィルタ基板360の接地ラインとして機能する。
【0055】
また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、各平板状部分が対向して配置されることにより、互いの配線インダクタンスが相殺されて低減し、ラジオノイズを低減させることができる。
【0056】
さらに、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、各平板状部分が平行に配置されることにより、配線インダクタンスをより低減し、ラジオノイズの低減効果を高めることができる。
【0057】
また、取り出し口526aとコンデンサ362との間に電源用バスバー522、接地用バスバー524を配置し、取り出し口526aにより近い位置、即ち、フィルタ基板360の電源供給部に近い位置で、コンデンサ362がバスバー522,524に接続されるようにしている。
【0058】
かかる回路のレイアウトにより、フィルタ基板360の各回路に電源供給部からの電力が供給される上流部でリップル電流の発生を抑制でき、これにより、フィルタ基板360の各回路での加熱を抑制することができ、フィルタ基板360の耐久性が向上する。
【0059】
尚、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、これらの表面(後述する副平面部522b,524b)を露出させる等、一部が樹脂で被覆されないようにすることができる。
【0060】
電源用バスバー522及び接地用バスバー524の一部が樹脂で被覆されない場合とは、本体526の樹脂表面とバスバー522,524の表面との間に段差が生じるようにする場合と、該樹脂表面とバスバー522,524の表面との間に段差がない状態でバスバー522,524の表面を露出させて樹脂で被覆しない場合を含むものである。
【0061】
この場合に、導電性異物との接触による電源用バスバー522と接地用バスバー524とのショートの発生を更に低減させる追加の構成として、例えば電源用バスバー522又は接地用バスバー524の露出した部分に絶縁フィルムを付着したり絶縁塗料を塗布する等、絶縁物質を利用したりしてもよい。
【0062】
また、電源用バスバー522と接地用バスバー524との間の樹脂を、露出する表面(後述する副平面部522b,524b)よりも樹脂モールドによって突出させ、該突出部をバスバー522,524間の壁として機能させるようにしてもよい。
【0063】
これら追加の構成によって、導電性異物の付着を抑制し、電源用バスバー522と接地用バスバー524とのショートの発生を抑制する効果を、より高めることができる。
【0064】
また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524を、完全に本体526にモールドする構成としてもよく、導電性異物の接触によるショート発生の抑制効果を更に高めることができる。
【0065】
フィルタ基板360は導体ブリッジ363で複数個に分割された開口361を有しており、リードフレーム320は開口361を通してその上の制御基板380に接続される。
【0066】
次に、電源用バスバー522、接地用バスバー524について、図7、図8を参照して詳細に説明する。
【0067】
図7は、フィルタ基板360をケース302に収容した状態で上方から見た時の、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の斜視図である。したがって、図7は、図6とは反対面における電源用バスバー522及び接地用バスバー524の斜視図となる。図8は、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の平面図である。以下、各基板をケース302に収容した状態で、上下位置関係を説明する。
【0068】
電源ラインとなる電源用バスバー522と、接地ラインとなる接地用バスバー524とは、それぞれ、平板状に形成された部分が離間しつつ平行に配置されている。該平板状部分の互いに対向する2つ面と、これら2つの各面の裏面とが主平面部522a,524aを構成する。また、主平面部522a,524aの幅方向の上下端縁にそれぞれ連接する2つの面が、副平面部522b,524bを構成する。
【0069】
主平面部522a,524aは副平面部522b,524bに対してその表面積が大きく、逆に副平面部522b,524bは主平面部522a,524aよりその表面積が小さい。
【0070】
電源用バスバー522には、前記平板状部分の上端部から突出して屈曲形成される複数の正極側接続端子522gが設けられる。これら複数の正極側接続端子522gは、各コンデンサ362の正極側端子(図示せず)と接続される。
【0071】
同様に、接地用バスバー524には、前記平板状部分の上端部から突出して屈曲形成される複数の負極側接続端子524gが設けられる。これら複数の負極側接続端子524gは、各コンデンサ362の負極側端子(図示せず)と接続される。
【0072】
さらに、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の平板状部分の上端部からそれぞれ突出して屈曲形成された端子部に、別途屈曲形成された端子部材を溶接することにより、それぞれ電源接続端子522f及び接地接続端子524fが設けられる。そして、外部からの電力を、電源接続端子522fを介してフィルタ基板360の各回路に供給する一方、接地接続端子524fによってフィルタ基板360から外部へ接地している。
【0073】
電源接続端子522f及び接地接続端子524fは、前述したとおり、取り出し口526aで対向配置されている。
【0074】
また、電源用バスバー522は、前記平板状部分の一方の先端部(図7で右側)において、上側部分が平板状部分の長手方向と直交する方向に延長して形成されている。この延長部分が平板状部分の上端部で本体526内方に向けて屈曲形成され、該屈曲部522cからフィルタ基板360の周縁部に沿って延設する延設部522dが形成されている。
【0075】
一方、接地用バスバー524は、前記電源用バスバー522の延設部522d形成側とは反対側の先端部(図7で左側)が、前記平板状部分の長手方向に延長して形成されている。この延長部分が、平板状部分の主平面部524a先端部で本体526内方に向けて屈曲形成され、該屈曲部524cからフィルタ基板360の周縁部に沿って延設する延設部524dが形成されている。
【0076】
これら屈曲部522c,524cを設けることにより、電源用バスバー522及び接地用バスバー524を樹脂モールドする際の金型内の樹脂封入圧に対し、強度を増大させることができる。
【0077】
尚、屈曲部522c、524cは、電源用バスバー522または接地用バスバー524のいずれか一方に形成するだけでも効果があるが、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の両方の強度を向上させるためには、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の両方に屈曲部522c、524cを備えることが好ましい。
【0078】
また、電源用バスバー522については、屈曲部522cが平板状部分の上端縁部で折り曲げられるため、樹脂成形前の加工が複雑化し、コストの上昇が懸念される。そこで、樹脂成形前に延設部522dを溶接によって平板状部分に接合する構成として、コスト低減を図ってもよい。
【0079】
また、屈曲部522cは、屈曲部524cと同様に、主平面部522aの先端部から屈曲させるように構成してもよい。
【0080】
電源用バスバー522と接地用バスバー524との平板状部分同士で挟まれる空間は、フィルタ基板360の本体526を樹脂成形するときに、併せて樹脂モールドされる。
【0081】
次に、上記フィルタ基板360の本体526の樹脂成形について、図9を参照して説明する。
【0082】
本体526を樹脂成形する場合、本第1実施形態では2つの金型(2つに分割して構成された金型)を用い、これら金型内に電源用バスバー522、接地用バスバー524を位置決めして固定し、樹脂を注入して成形を行う。
【0083】
金型は、図9(b)に示すように、固定金型550と可動金型551の一対からなる。可動金型551は、固定金型550に対して離接するものであり、可動金型551の内部には、樹脂が流れ込む空間となる樹脂封入部552が設けられている。樹脂封入部552は、フィルタ基板360の本体526の外形に対応して形成されると共に、固定金型550側へ向けて開放されている。
【0084】
本実施形態では、可動金型551は、図9(b)に示す如く固定金型550に対して上方向に離間するようになっている。
【0085】
一方、固定金型550には、各種部品搭載部を成形するために搭載部品の形状に応じた図示しない凸部が形成されている。
【0086】
電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、固定金型550に位置決めされて固定される。
【0087】
電源用バスバー522と接地用バスバー524とを固定金型550へ位置決めする際には、それぞれ上側の副平面部522b,524b及びこれらに接続された電源接続端子522f、接地接続端子524f、正極側接続端子522g、負極側接続端子524gを、直接固定金型550に接触させて位置決めする。これら接続端子の複雑な形状と係合する形状を固定金型550に形成することにより、樹脂整形時におけるバスバー522,524の位置決め精度が向上する。
【0088】
一方、電源用バスバー522と接地用バスバー524の各下側部分が、可動金型551内に収められる。即ち、本実施形態では本体526の下平面526b(図6参照)が可動金型551によって形成される。
【0089】
フィルタ基板360の本体526の下平面526bと、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の下側の各副平面部522b,524bと、の段差はほとんどなく、これら各副平面部522b,524bの表面は、樹脂により被覆されずに露出するようになっている。
【0090】
電源用バスバー522及び接地用バスバー524を完全に樹脂内に封入しても良く、これによりバスバー522,524同士の導電性異物を介した電気的接触によるショートの発生を抑制できるが、副平面部522b,524bを含めて樹脂内に封入する分、フィルタ基板360が厚くなる。これに比べ、各副平面部522b,524bの少なくとも一部を樹脂で被覆せずに露出させることにより、各副平面部522b,524bを被覆する分の樹脂が不要となる。これにより、フィルタ基板360をより薄くでき、また、より軽量化することができる。
【0091】
尚、本実施形態では樹脂封入部552を可動金型551側のみに設けたが、これに限らず固定金型550側のみ、あるいは可動金型551側及び固定金型550側の両方に樹脂封入部552を形成しても良い。
【0092】
固定金型550側に樹脂封入部552が形成される場合においても、電源用バスバー522,接地用バスバー524の副平面部522b,524bを直接固定金型550に接触するように位置決めすることにより、副平面部522b,524bが露出し、これにより、フィルタ基板360の薄型化や軽量化の効果を得ることができる。
【0093】
尚、電源用バスバー522と接地用バスバー524のそれぞれの副平面部522b,524bを直接固定金型550に接触させずに、別体の型を固定金型550に設置し、この別体の型に電源用バスバー522と接地用バスバー524とを配置して位置決めするようにしてもよい。この場合も、副平面部522b,524bが樹脂で被覆されずに露出させることができる。
【0094】
ここで、固定金型550に電源用バスバー522と接地用バスバー524とを支持する際に、電源用バスバー522の主平面部522a及び接地用バスバー524の主平面部524aの対向方向は、可動金型551の離接方向とは異なる方向に設定される。
【0095】
例えば図9(b)に示すように固定金型550を図示下側に配置し、固定金型550の上方に可動金型551を配置して、可動金型551を上下方向に離接させる場合、電源用バスバー522、接地用バスバー524の主平面部522a,524aの対向方向は図9(b)の横方向(水平方向)とされ、可動金型551の離接方向に対してほぼ直角方向とされる。
【0096】
そして、可動金型551が固定金型550に接近して固定金型550と接続された後に樹脂が金型の樹脂封入部552内に流し込まれ、冷却硬化後、本体526が樹脂成形される。
【0097】
ここで上述したように、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の下端部側は、電源接続端子522f、接地接続端子524f、正極側接続端子522g、負極側接続端子524g等を固定金型550に係合把持することによって安定して支持できる。一方、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の上端部側は、樹脂封入部552内にあって可動金型551には支持されていないため、樹脂の封入圧によって変形することが懸念される。
【0098】
この点、本実施形態では、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、それぞれに形成された屈曲部522c及び屈曲部524cによって強度が向上されているため、樹脂の封入圧による変形が抑制される。該強度向上により、特に、電源用バスバー522と接地用バスバー524とが相互に接近して接触すること、ひいては通電時にショートしてしまうことを抑制することができ、フィルタ基板360の不良品の発生を抑制できる。
【0099】
尚、金型内での樹脂モールドの前に、電源用バスバー522と接地用バスバー524との間に、これらを絶縁する樹脂板を予め挿入しておいてもよい。これにより、樹脂の封入圧による電源用バスバー522及び接地用バスバー524相互の接近抑制効果がより高められ、フィルタ基板360の不良品発生抑制効果をより向上できる。
【0100】
また、樹脂封入部552への樹脂の封入時に電源用バスバー522及び接地用バスバー524の変形が生じたとしても、該バスバーの変形に倣って樹脂板も変形しつつ樹脂モールドされる。これにより、樹脂板を挟みこんだ部分で電源用バスバー522及び接地用バスバー524と該樹脂板とが剥離することを抑制でき、ひいては本体526の樹脂に気泡が混入することを抑制できる。
【0101】
このように、成形されたフィルタ基板360の本体526は、図9(a)ないし、より詳しくは図6のように構成される。
【0102】
尚、図9は、本体526の電源用バスバー522及び接地用バスバー524が樹脂モールドされる部分を部分的に図示したものである。ここで、図3に示すべく、部品実装済みのフィルタ基板360をケース302に取り付けた時にケース302の底面303側となる下面側が可動金型551により形成される。また、ケース302の蓋304側となるフィルタ基板360の上面側が固定金型550により形成される。さらに、上面側から下面側に向かう方向が、可動金型551が固定金型550から離間する方向、即ち、可動金型551の型抜き方向となる。
【0103】
したがって、図9(a)は、可動金型551側からの斜視図であり、また、図6の本体526の下平面526bを上側にした時における上側からの斜視図である。
【0104】
尚、本実施形態において本体526を樹脂成形する場合には、電源用バスバー522及び接地用バスバー524を固定金型550に支持したが、これに限らず可動金型551に支持して、バスバー522,524の位置決めを行ってもよい。しかし、可動金型551は離接中に固定金型550との位置ずれが生じやすいため、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の位置決めの精度が低下する恐れがあるので、バスバー522,524の支持は固定金型550に対して行うのが好ましい。
【0105】
また、複数の金型がすべて可動金型である樹脂成形機で樹脂成形を行う場合には、離接距離が最も短い可動金型に電源用バスバー522及び接地用バスバー524を支持することが好ましく、離接距離が短いために可動金型の位置ずれが抑制されるので、バスバー522,524の位置決めの精度を向上させることができる。
【0106】
次に図10ないし、図11に本実施形態の解決しようとする課題が生じる参考例を提示し、本実施形態の解決しようとする課題について説明する。
【0107】
図10(a)は、樹脂モールドにより成形した本体426における平板状のバスバー422,424の配線部分を示した斜視図である。図10(b)は、バスバー422,424を金型内に配置した時の断面図であり、図10(a)のa1−a1線での断面に相当する位置を示した図である。
【0108】
また、図11(a)は、図10とは別の参考例であり、樹脂モールドにより成形した本体426のバスバー422,424の配線部分を示した斜視図である。図10(b)は、バスバー422,424を金型内に配置した図であり、図10(a)のb1−b1線での断面に相当する位置を示した図である。
【0109】
本体426は、本実施形態の本体526に相当する。
【0110】
従って、図10(a)及び図11(a)では、図示下側(バスバー422側)を、可動金型451が固定金型450から離間する方向(可動金型451の型抜き方向)としている。一方、図10(b)及び図11(b)では、図示上側を、可動金型451の型抜き方向としている。
【0111】
図10と図11とは、バスバー422,424の配置及びバスバー422,424の形状が一部異なる。
【0112】
これら参考例では、バスバー422の主平面部422aとバスバー424の主平面部424aとの対向方向を、可動金型451の固定金型450に対する離接方向(型抜き方向)と一致させている。
【0113】
ここで、バスバー422,424の固定を上述した通り固定金型450により行うことでバスバー422,424の位置決め精度が向上するため、固定金型450にバスバー422,424を固定したい要求がある。
【0114】
しかし、主平面部422a,424aの対向方向が可動金型451の離接方向と一致していると、可動金型451側のバスバー422を固定金型450に支持しようとしても、固定金型450側に配置されるバスバー424が固定金型450とバスバー422との間で干渉するため、バスバー422の支持が困難となる。
【0115】
このため、図10(a)ないし(b)に示すように、バスバー422を、幅方向、即ち可動金型451の離接方向に対して垂直となる方向にずらして配置する必要が生じる。また、固定金型450には、バスバー422を固定保持するための保持部451を備える必要がある。
【0116】
かかるバスバー422,424の配置によって樹脂成形された本体426では、バスバー422,424の幅方向が本体426の横方向に一致し、さらに、バスバー422,424相互を幅方向にずらして配置することになる。このため、バスバー422,424による占有スペースが本体426の横方向(水平方向)に拡大してしまい、本体426の大型化の要因となる。
【0117】
従って、本実施形態のモータ制御ユニット300のフィルタ回路360に、図10に示すバスバー422,424の配置を適応すると、フィルタ回路360の本体526が大型化し、ひいては、モータ制御ユニット300の大型化を招く惧れがある。
【0118】
また、バスバー422,424は、配置位置が幅方向に相互にずれるため、互いの配線インダクタンスが相殺されて低減し、ラジオノイズを低減させる効果が減少する惧れがある。
【0119】
図11に示すものでは、固定金型450側にあるバスバー424に、2つの貫通孔424iを形成している。また、貫通孔424iの形成に伴うバスバー424の主平面部424aの面積減少分を補償すべく、バスバー424の副平面部424bにおける貫通孔424iの周辺の部分を幅方向に膨出させて突き出し部424jを形成している。
【0120】
さらに、固定金型450には、可動金型451側に向けて突出する2個の保持部450aが設けられる。
【0121】
そして、バスバー422,424を重ね合わせつつ2個の保持部450aをバスバー424の2個の貫通孔424iにそれぞれ挿通させ、保持部450aの先端により可動金型451側のバスバー422を保持している。なお、1つの貫通孔424iのみがバスバー424に形成される場合もある。
【0122】
しかし、この構成においても、バスバー422,424の主平面部422a,424aの対向方向が金型の離接方向と一致しているため、バスバー422,424の幅方向が本体426の横方向に一致する。これにより、バスバー422,424による占有スペースが本体426の横方向(水平方向)に拡大し、本体426の大型化の要因となる。
【0123】
従って、本実施形態のモータ制御ユニット300のフィルタ基板360に図11に示すバスバー422,424の配置を適用した場合も、フィルタ基板360の本体526が大型化してモータ制御ユニット300の大型化を招く惧れがある。
【0124】
また、バスバー422,424の一方の形状を他方の形状に対して変更する必要があるためコスト上昇の要因となる。さらに、該一対のバスバー形状の相違によって、互いの配線インダクタンスが相殺されて低減することによるラジオノイズの低減効果が減少する惧れがある。
【0125】
これに対し、本実施形態では前述のように電源用バスバー522及び接地用バスバー524の主平面部522a,524aの対向方向が、可動金型551の離接方向とは異なる方向に設定されている。また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524が、図9(b)に示すように、主平面部522a,524aを本体526の縦方向に立てた縦配置とされる。これらのことから、本実施形態では、本体526の占有スペースが水平方向へ拡大することが抑制され、本体526及びモータ制御ユニット300の小型化を図ることができる。
【0126】
尚、電源用バスバー522及び接地用バスバー524が上記の縦配置とされることで本体526の厚さが大きくなる懸念がある。しかし、バスバー522,524の幅(本体526の厚さ)と比較して、本体526に搭載される部品の直径の方が大きいこと、あるいは、配線レイアウトの関係から要求される本体526の厚さの方が大きいこと等により、実質的に本体526の大型化には繋がり難い。
【0127】
また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の平板状部分を対向して配置されることにより、互いの配線インダクタンスが相殺されて低減し、ラジオノイズを低減させることができる。
【0128】
さらに、電源用バスバー522及び接地用バスバー524が対向して配置される平板状部分を平行に配置することにより、より配線インダクタンスを低減し、ラジオノイズの低減効果を高めることができる。
【0129】
また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524が対向して配置される平板状部分の形状を同一とすることによっても、配線インダクタンスの低減効果を高めることができる。
【0130】
また、取り出し口526aとコンデンサ362との間に電源用バスバー522及び接地用バスバー524を設け、電源用バスバー522を電源ライン、接地用バスバー524を接地ラインとしてそれぞれ機能させるとともに、これらバスバー522,524をコンデンサ362と接続するようにした。このため、取り出し口526aにより近い位置、即ち、フィルタ基板360の電源供給部に近い位置でコンデンサ362がバスバー522,524(特に、対向配置された平板状部分)に接続される。
【0131】
これにより、フィルタ基板360の各回路に電源を供給する際、これら回路の上流部でリップル電流の発生を抑制できるので、フィルタ基板360の各回路は、加熱が抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0132】
また、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の両方を、固定金型550に直接的に固定することが可能となると共に、固定の際に図10,11で示したようなバスバー522,524相互間で干渉が生じることを抑制できる。
【0133】
このため、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、固定金型550への固定のために形状を互いに異ならせる必要が無い。したがって、これらを同一形状部品で形成した場合には、部品の種類が増加することによるフィルタ基板360ないしモータ制御ユニット300のコスト増加を抑制することができる。
【0134】
本発明の第2実施形態について図12に基づいて説明する。
【0135】
本実施形態は、基本的に前記第1実施形態とその構成を共通とするものであり、前記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0136】
図12は、図9(a),(b)同様、本体526の電源用バスバー522及び接地用バスバー524が樹脂モールドされる部分を部分的に図示したものである。
【0137】
第1実施形態と同様、ケース302への取り付け時におけるフィルタ基板360の下面が、可動金型551により形成され、ケース302の蓋304側となるフィルタ基板360の上面が固定金型550により形成される。そして、フィルタ基板360の下面が、可動金型551が固定金型550から離間する方向、即ち、可動金型551の型抜き方向を向く。
【0138】
また、フィルタ基板360は複数のコンデンサ362を備え、電源用バスバー522には複数の正極側接続端子522gが設けられ、接地用バスバー524にも複数の負極側接続端子524gが設けられていることも第1実施形態と同様である。
【0139】
本第2実施形態は、第1実施形態と異なり、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の平板状部分において、樹脂モールド時に可動金型551側となる副平面部522b,524bに、それぞれ可動金型551と係合する突出部522e,524eを備えている点を特徴とする。
【0140】
図12(c)は、図12(a)の電源用バスバー522と接地用バスバー524が対向して配置される平板状部分の拡大図である。
【0141】
電源用バスバー522の突出部522eは、副平面部522bからバスバーの幅方向に突出して、例えば1〜3個(本実施形態は2個を例示)形成されている。突出部522eの厚さは、副平面部522bの厚さと同一である。
【0142】
一方、接地用バスバー524にも電源用バスバー522と同様に、副平面部524bからバスバーの幅方向に突出して、例えば1〜3個(本実施形態は2個を例示)形成されている。突出部524eの厚さは、副平面部524bの厚さと同一である。
【0143】
尚、本実施形態では、一対の突出部524eは、平板部524hの長手方向について一対の突出部522eに挟まれた位置に設けられる。
【0144】
また、突出部522e,524eは、正極側接続端子522g及び負極側接続端子524gが設けられている副平面部522b,524bとは反対側の副平面部522b,524bに設けることが好ましい。
【0145】
一方、可動金型551には、前記各突出部522e,524eと係合する係合穴554が形成されている。該係合穴554は、樹脂成形の際に可動金型551を固定金型550に接合したとき、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の突出部522e,524eと係合する。
【0146】
このように、樹脂成形時に突出部522e,524eを係合穴554に係合させることにより、電源用バスバー522及び接地用バスバー524が、金型に対してより高精度に位置決め保持される。
【0147】
そして、各突出部522e,524eが上記のように可動金型551に位置決め保持されることにより、バスバー522,524全体にわたって強度が増大するため、樹脂封入圧に対する変形抑制効果が高められる。
【0148】
これにより、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の変形による相互の接触が抑制され、本体526への部品実装後にバスバー522,524を通電する際のショートの発生を抑制でき、ひいてはフィルタ基板360の不良品の発生を抑制できる。
【0149】
特に、図13に示すように、突出部522eを、平板部522hの長手方向について、正極側接続端子522gに挟まれた位置に設け、また、突出部524eを、平板部524hの長手方向について、負極側接続端子524gに挟まれた位置に設けるのが好ましい。
【0150】
このようにすれば、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の許容変形量を小さくする必要がある領域、即ち、バスバー522,524同士が対向し、コンデンサ362などの電子部品の搭載位置との距離が短い平板状部分において、樹脂封入圧に対するバスバー522,524の強度をより向上できる。
【0151】
これにより、電源用バスバー522及び接地用バスバー524は、樹脂封入圧による変形をより一層抑制でき、バスバー522,524相互の接触によるショート発生、ひいてはフィルタ基板360の不良品発生の抑制効果がより高められる。
【0152】
図14(a)〜(c)は、係合穴554及びその周辺の構成を、型抜き方向の反対側(固定金型550側)から見たときの、異なる複数の例を示す。
【0153】
図14(a)の例では、2つの突出部522e,524eに、1つの係合穴554で係合させる形状としている。即ち、該係合穴554は、各突出部522e,524eと係合する2つの係合部が、突出部522e,524eの寸法誤差や樹脂成形時のバスバー取付位置誤差に対してスムーズに係合できる寸法に形成されている。そして、前記2つの係合部の端縁部同士を繋げて1つの係合穴554が形成される。ここで、各突出部522e,524eは、係合穴554の対応する係合部内で若干の移動が許容されるが、突出部522e,524e同士が接触することのないように、係合穴554の外形寸法が設定されている。
【0154】
これにより、樹脂モールドの際、突出部522e,524e同士の接近を抑制して、電源用バスバー522と接地用バスバー524との平板状部分同士を適正に離間した状態に維持し、バスバー522,524相互の絶縁性能を良好に確保することができる。
【0155】
図14(b)の例では、係合穴554は、突出部522eが係合する係合穴554aと、突出部524eが係合する係合穴554bと、の2つの穴に分離して形成されている。また、係合穴554a,554bの間の位置には、絶縁用穴556が形成されている。該絶縁用穴556には樹脂成形時に樹脂が充填され、該充填された樹脂は硬化後に本体526と一体となって、突出部522eと突出部524eとの間に立設する壁となる。この壁が障害となって、電源用バスバー522と接地用バスバー524との間への導電性異物の侵入,付着を抑制でき、バスバー522,524相互の絶縁性能をより良好に確保できる。
【0156】
なお、係合穴554a,554b及び絶縁用穴556の角部同士を接合して1つの係合穴554を形成する構成としてもよい。
【0157】
また、本例のように2つの係合穴554a,554b間の距離を大きくするだけでも、突出部522e,524e同士の導電性異物を介してのショートを抑制できる効果は高められる。したがって、係合穴554a,554bの距離を所定以上に設定して、絶縁用穴556による樹脂壁形成を省略する構成としてもよい。
【0158】
図14(c)は、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の各平板状部分の長手方向について同一位置に、一対の突出部524eと一対の突出部522eとを設けた場合の例を示す。この場合、突出部522eと突出部524eとが、平板状部分の肉厚方向に対向する。
【0159】
本例では、(b)と同様、係合穴554は、突出部522eの係合する係合穴554aと、突出部524eの係合する係合穴554bとで構成される。本例の場合は、係合穴554aと係合穴554bとを繋げて1つの方形状の係合穴554とすると、樹脂成形時の突出部522e,524e相互の接近抑制効果が得られないので、係合穴554aと係合穴554bとの2つに分離して形成する。
【0160】
また、係合穴554a,554bの間の位置には、絶縁用穴556が形成されている。これにより、(b)と同様、絶縁用穴556に充填された樹脂が、硬化後に突出部522eと突出部524eとの間に立設する壁となって、導電性異物の侵入,付着を抑制し、電源用バスバー522と接地用バスバー524との絶縁性能を良好に確保できる。
【0161】
特に、本例のように、突出部522e,524e同士が対向して距離が小さい場合には、樹脂壁を形成することによって導電性異物の侵入,付着を抑制する効果が大きい。
【0162】
一方、図14(c)の例では、上記のように一対の突出部522eと一対の突出部524eとを対向させることにより、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の平板状部分の形状同一化をより促進できる。このため、電源用バスバー522及び接地用バスバー524について、配線インダクタンスの低減効果、ひいてはリップル電流の発生抑制効果をより高めることができる。
【0163】
尚、突出部522e,524eは、電源用バスバー522又は接地用バスバー524の一方のみに設けるようにしても良い。
【0164】
また、突出部522e,524eは、コンデンサ362と接続する複数ずつの正極側接続端子522g及び負極側接続端子524g、さらに電源接続端子522f,接地接続端子524f等の電気接続端子が設けられる各副平面部522b,524bとは反対側の副平面部522b,524bに設けられる。このため、前述の各電気接続端子のレイアウトに対する影響を抑制しつつ、突出部522e,524eを配置することが出来る。
【0165】
さらに、突出部522e,524eは、前述の各電気接続端子との距離を十分に確保することが出来るので、これら各電気接続端子との間についても、導電性異物の付着によるショートが発生するのを抑制することができる。
【0166】
本実施形態は、突出部522e,524eを設けず、かつ、電源用バスバー522と接地用バスバー524との間にこれらを絶縁する樹脂板を予め挿入して金型内で樹脂モールドを行う場合と比べて、低コストで実施できる。一方、上記樹脂板を使用しつつ電源用バスバー522及び接地用バスバー524に突出部522e,524eを設けてもよく、電源用バスバー522及び接地用バスバー524の樹脂封入圧による変形抑制効果をより高めることができる。
【符号の説明】
【0167】
300 モータ制御ユニット
362 コンデンサ
522 電源用バスバー
522a 主平面部
522b 副平面部
522d 延設部
522e 突出部
524 接地用バスバー
524a 主平面部
524b 副平面部
524d 延設部
524e 突出部
526 本体
550 固定金型
551 可動金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バスバーと第2バスバーを含んで樹脂成形された回路装置を備えたアクチュエータの制御装置であって、
前記第1及び第2バスバーは、それぞれの少なくとも一部が平板状に形成され表面積が大きい2つの主平面部と、前記主平面部に隣り合い、該主平面部より表面積の小さい2つの副平面部とから構成され、
前記回路装置は、複数の金型内の少なくとも1つの可動金型を備えた樹脂成形機によって樹脂成形され、
前記樹脂成形された回路装置は、前記第1バスバーの1つの主平面部と前記第2バスバーの1つの主平面部とが向かい合うように対向配置され、且つ、その対向方向が前記可動金型の型抜き方向と異なる方向に配置された前記第1バスバー及び前記第2バスバーを含んで構成される回路装置を備えたことを特徴とするアクチュエータの制御装置。
【請求項2】
前記第1バスバーは、直流電源の正極側に接続されると共にコンデンサの正極側端子に接続され、前記第2バスバーは、前記直流電源の負極側に接続されると共に前記コンデンサの負極側端子に接続されるバスバーであり、
前記第1バスバーには、該第1バスバーと前記コンデンサの正極側端子とを接続する第1接続部を備え、
前記第2バスバーには、該第2バスバーと前記コンデンサの負極側端子とを接続する第2接続部を備え、
前記第1接続部及び前記第2接続部が、前記第1バスバーの前記主平面部と第2バスバーの前記主平面部とが対向配置される位置に配置された回路装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項3】
固定金型と可動金型を備えた該樹脂成形機によって前記第1バスバー及び第2バスバーを樹脂封入しつつ回路装置が樹脂成形され、
前記樹脂成形された回路装置の前記第1バスバー及び第2バスバーの前記主平面部が対向配置される部分において少なくとも一方のバスバーの前記可動金型側に面する副平面部に、前記可動金型に形成された係合溝に係合する突出部を備えた第1バスバー及び第2バスバーを含んで構成される回路装置を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項4】
固定金型と可動金型を備えた該樹脂成形機によって前記第1バスバー及び第2バスバーを樹脂封入しつつ回路装置が樹脂成形され、
前記樹脂成形された回路装置の前記第1バスバー及び第2バスバーの前記主平面部が対向配置される部分において、これら対向する主平面部間に樹脂板を挟着した状態で前記樹脂成形される第1バスバー及び第2バスバーを含んで構成される回路装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項5】
前記第1バスバー又は第2バスバーの少なくとも一方のバスバーにおいて、前記主平面部が対向する平板状部分における両端部のうち少なくとも一方から延長して屈曲形成された延設部が配置される第1バスバー及び第2バスバーを含む回路装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のアクチュエータの制御装置。
【請求項6】
樹脂成形された回路装置は、前記第1バスバーの1つの主平面と前記第2バスバーの1つの主平面が向かい合うように対向配置され、その対向方向が前記可動金型の型抜き方向に直角であり、または、回路装置の上面または下面と水平方向と同一である第1バスバー及び第2バスバーを含む回路装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−135712(P2011−135712A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293797(P2009−293797)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】