説明

アクチュエータ装置およびそれを搭載する光ピックアップ装置

【課題】低コストで小型のアクチュエータ装置を実現する。
【解決手段】本発明に係るアクチュエータ装置1は、対物レンズ2を保持するレンズホルダ3と、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させるフォーカス/トラッキング駆動手段とを備えている。フォーカス/トラッキング駆動手段は、容器4と、磁性流体5と、フォーカスコイル6a〜6d、6A〜6Dとトラッキングコイル7a〜7d、7A〜7Dとを備えている。図示しない電流源によって、各コイルに電流を選択可能に流すことにより、磁性流体5に磁界をかけ、磁性流体5に流れを発生させることで、レンズホルダ3に駆動力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手段を利用して光ディスクに所定の情報を記録または再生する光ピックアップ装置に用いられるアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクなどの記録媒体に光学的手段を利用して情報を記録または再生するピックアップ(光記録再生装置)において、光ディスクの記録面に光を照射して光信号を読んだり情報を記録するため、対物レンズが前記光ディスクの記録面に対向するようにレンズホルダに載置されている。レンズホルダはベース部材に対して移動可能に設けられ、光ピックアップ装置は、レンズホルダを集光方向であるフォーカシング方向およびトラッキング方向(ラジアル方向)に移動させるレンズホルダ駆動手段を有するアクチュエータ装置を備えている。
【0003】
アクチュエータ装置の従来例を、図5に基づき説明する。
【0004】
図5は、従来のアクチュエータ装置100を示す斜視図である。同図では、ベース部101とホルダ支持部102とで構成されるベース部に、レンズホルダ103が移動可能に設けられている。レンズホルダ103には対物レンズ104が載置されており、レンズホルダ103は、フォーカシング方向およびトラッキング方向へ移動が可能なように、複数の弾性部材105a、105b、105c、105dによってホルダ支持部102に懸架されている。レンズホルダ103をフォーカシング方向およびトラッキング方向に駆動させるレンズホルダ駆動手段は、一対のマグネット106a、106bと駆動コイルとで構成され、マグネット106a、106bは、レンズホルダ103の両側に各々取り付けられ、所定の磁気回路を形成する。
【0005】
前記駆動コイルは、フォーカスコイル107aおよびトラッキングコイル107b、107cで構成され、フォーカスコイル107aとトラッキングコイル107b、107cとは、互いに直交するように巻線されてベース部101に設けられている。フォーカスコイル107aは、マグネット106aと所定の間隔で対向し、トラッキングコイル107b、107cは、マグネット106bと所定の間隔で対向している。
【0006】
このように構成された従来のアクチュエータ装置100では、フォーカスコイル107aおよびトラッキングコイル107b、107cに流れる電流の方向および大きさを制御し、対向するマグネット106a、106bとの間に駆動力を発生させ、レンズホルダ103をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させることによって、対物レンズ104のフォーカシング動作およびトラッキング動作を実現している。
【0007】
上記のアクチュエータ装置100と同様の構成は、例えば特許文献1および2に開示されている。また、特許文献2には、対物レンズのチルト制御を可能とする技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−200459号公報(2007年8月9日公開)
【特許文献2】特開2006−134541号公報(2006年5月25日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したような従来のアクチュエータ装置100は、可動部であるレンズホルダ103に、フォーカスコイル107aおよびトラッキングコイル107b、107cが取り付けられる構成であるため、レンズホルダ103の質量が大きくなる。このため、マグネット106a、106bで構成される磁気回路には大きな駆動力が求められる。ここで、大きな駆動力を得るためには、磁束密度が大きく高価で希少金属であるマグネットを多量に使う必要があるため、光ピックアップ装置のコストアップを招いていた。またレンズホルダ103は、弾性部材105a、105b、105c、105dによって支持されるため、アクチュエータ装置の小型化も困難であった。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、低コストで小型のアクチュエータ装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータ装置は、光ディスクに対して記録または再生を行なうための光スポットを集光する対物レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダを移動させるレンズホルダ駆動手段と、を備えたアクチュエータ装置において、前記レンズホルダ駆動手段は、前記アクチュエータ装置のベース上に載置され、粘性を有する磁性流体と、複数のコイルと、を備え、前記レンズホルダは、その一部が前記磁性流体に浸漬された状態で、移動可能に保持され、前記コイルに電流を流すことにより、前記コイルは前記磁性流体に磁界をかけ、前記磁性流体に流れを発生させることで、前記レンズホルダに駆動力を加えることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、対物レンズを保持するレンズホルダを移動させるレンズホルダ駆動手段が、粘性を有する磁性流体と、複数のコイルと、を備え、レンズホルダの一部が磁性流体に浸漬されている。コイルに電流が流されると、磁性流体に磁界がかけられて磁性流体に流れが発生する。この流れにより、レンズホルダの磁性流体に浸漬されている部分に駆動力が加わり、レンズホルダが移動する。ここで、移動する部分はレンズホルダのみであり、レンズホルダ駆動手段のコイルや容器は移動しないので、コイル等も移動させる従来構成に比べ、アクチュエータ装置の可動部の軽量化を図ることができる。また、ワイヤ等の弾性部材を持たないため、アクチュエータ装置全体を小型化することができる。さらに、レンズホルダ駆動手段は、磁気回路としてコイルと磁性流体とを備える構成であり、マグネットは使用していないので、希少金属の使用量を減らすことができる。したがって、低コストで小型のアクチュエータ装置を実現することができる。
【0013】
本発明に係るアクチュエータ装置では、上記複数のコイルには、前記光ディスクのフォーカシング方向に配置された複数のフォーカスコイルが含まれ、前記フォーカスコイルの少なくともいずれかに電流を流すことにより、前記レンズホルダに前記フォーカシング方向の駆動力が加えられることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、フォーカシング方向に配置された複数のフォーカスコイルのいずれかに電流が流れることにより、磁性流体にフォーカシング方向の流れが発生する。この流れにより、レンズホルダにフォーカシング方向の駆動力が加えられ、レンズホルダのフォーカシング方向の移動が可能となる。
【0015】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記レンズホルダは、前記磁性流体に浸漬された前記フォーカシング方向に垂直な平板を有するフォーカシング駆動力伝達部を備え、前記フォーカスコイルに電流が流れていない状態において、前記フォーカシング駆動力伝達部の前記フォーカシング方向の位置は、前記複数のフォーカスコイルのいずれか2つの間にあることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、複数のフォーカスコイルのいずれか2つが、フォーカシング方向に沿ってフォーカシング駆動力伝達部を挟む位置にある。フォーカシング駆動力伝達部の上側のフォーカスコイルに電流が流れると、フォーカシング駆動力伝達部周辺の磁性流体に上方向の流れが発生する。また、フォーカシング駆動力伝達部の下側のフォーカスコイルに電流が流れると、フォーカシング駆動力伝達部周辺の磁性流体に下方向の流れが発生する。ここで、フォーカシング駆動力伝達部はフォーカシング方向に垂直な平板であるので、磁性流体の流れによってフォーカシング方向の駆動力をレンズホルダに効率よく伝えることができる。
【0017】
本発明に係るアクチュエータ装置では、上記複数のコイルには、前記光ディスクのトラッキング方向に配置された複数のトラッキングコイルが含まれ、前記トラッキングコイルの少なくともいずれかに電流を流すことにより、前記レンズホルダにトラッキング方向の駆動力が加えられることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、トラッキング方向に配置された複数のトラッキングコイルのいずれかに電流が流れることにより、磁性流体にトラッキング方向の流れが発生する。この流れにより、レンズホルダにトラッキング方向の駆動力が加えられ、レンズホルダのトラッキング方向の移動が可能となる。
【0019】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記レンズホルダは、少なくとも一部が前記磁性流体に浸漬されたトラッキング方向に垂直な平板であるトラッキング駆動力伝達部を備え、前記トラッキングコイルに電流が流れていない状態において、前記トラッキング駆動力伝達部のトラッキング方向の位置は、前記複数のトラッキングコイルのいずれか2つの間にあることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、複数のトラッキングコイルのいずれか2つが、トラッキング方向に沿ってトラッキング駆動力伝達部を挟む位置にある。トラッキング駆動力伝達部の一方側のトラッキングコイルに電流が流れると、トラッキング駆動力伝達部周辺の磁性流体に当該一方側に向かう流れが発生する。また、トラッキング駆動力伝達部の他方側のトラッキングコイルに電流が流れると、トラッキング駆動力伝達部周辺の磁性流体に当該他方側に向かう流れが発生する。ここで、トラッキング駆動力伝達部はトラッキング方向に垂直な平板であるので、磁性流体の流れによってトラッキング方向の駆動力をレンズホルダに効率よく伝えることができる。
【0021】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記レンズホルダは、前記フォーカシング駆動力伝達部を複数備え、前記フォーカシング駆動力伝達部のうち、2つのフォーカシング駆動力伝達部は、前記対物レンズに対して対称となる位置にあり、前記複数のフォーカスコイルには、前記フォーカシング方向に配置された2つのフォーカスコイルと、前記対物レンズに関して当該2つのフォーカスコイルと対称である他の2つのフォーカスコイルとが含まれ、各コイルに電流が流れていない状態において、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部の一方の前記フォーカシング方向における位置が、前記2つのフォーカスコイルの間にあり、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部の他方の前記フォーカシング方向における位置が、前記他の2つのフォーカスコイルの間にあることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、フォーカシング方向に配置された前記2つのフォーカスコイルの上側に電流が流れ、フォーカシング方向に配置された前記他の2つのフォーカスコイルの上側に電流が流れると、対物レンズに対して対称となる位置にある前記2つのフォーカシング駆動力伝達部には、上方向の駆動力が伝えられる。また、前記2つのフォーカスコイルの下側に電流が流れ、前記他の2つのフォーカスコイルの下側に電流が流れると、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部には、下方向の駆動力が伝えられる。これにより、レンズホルダのフォーカシング方向の移動が可能となる。
【0023】
これに加え、前記2つのフォーカスコイルの上側に電流が流れ、前記他の2つのフォーカスコイルの下側に電流が流れると、2つのフォーカシング駆動力伝達部のうち、前記2つのフォーカスコイル側のフォーカシング駆動力伝達部に上方向の駆動力が伝えられ、前記他の2つのフォーカスコイル側のフォーカシング駆動力伝達部に下方向の駆動力が伝えられる。これにより、レンズホルダは、前記2つのフォーカスコイル側が高くなるように傾く。同様に、前記2つのフォーカスコイルの下側に電流が流れ、前記他の2つのフォーカスコイルの上側に電流が流れると、2つのフォーカシング駆動力伝達部のうち、前記2つのフォーカスコイル側のフォーカシング駆動力伝達部に下方向の駆動力が伝えられ、前記他の2つのフォーカスコイル側のフォーカシング駆動力伝達部に上方向の駆動力が伝えられる。これにより、レンズホルダは、前記他の2つのフォーカスコイル側が高くなるように傾く。以上のように、レンズホルダのチルト制御も可能となる。
【0024】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部は、前記光ディスクのトラッキング方向に配置されていることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、2つのフォーカシング駆動力伝達部の一方に上方向の駆動力を伝え、2つのフォーカシング駆動力伝達部の他方に下方向の駆動力を伝えるように、フォーカスコイルに流す電流を制御することにより、2つのフォーカシング駆動力伝達部の前記一方側が前記他方側よりも高くなるようにレンズホルダが傾く。ここで、2つのフォーカシング駆動力伝達部は、トラッキング方向に配置されているので、レンズホルダのトラッキング方向のチルト制御が可能となる。
【0026】
本発明に係るアクチュエータ装置では、フォーカシング方向とトラッキング方向との両方に垂直な方向をタンジェンシャル方向として、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部は、タンジェンシャル方向に配置されていることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、2つのフォーカシング駆動力伝達部の一方に上方向の駆動力を伝え、2つのフォーカシング駆動力伝達部の他方に下方向の駆動力を伝えるように、フォーカスコイルに流す電流を制御することにより、2つのフォーカシング駆動力伝達部の前記一方側が前記他方側よりも高くなるようにレンズホルダが傾く。ここで、2つのフォーカシング駆動力伝達部は、タンジェンシャル方向に配置されているので、レンズホルダのタンジェンシャル方向のチルト制御が可能となる。
【0028】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記レンズホルダは、前記トラッキング駆動力伝達部を複数備え、各トラッキング駆動力伝達部は、トラッキング方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、複数のトラッキング駆動力伝達部の各々に対して、トラッキングコイルによってトラッキング方向の駆動力が加えられるので、レンズホルダに対する推力を向上させることができる。
【0030】
本発明に係るアクチュエータ装置では、フォーカシング方向とトラッキング方向との両方に垂直な方向をタンジェンシャル方向として、前記複数のトラッキングコイルには、トラッキング方向に配置された2つのトラッキングコイルと、前記対物レンズを含むタンジェンシャル方向に垂直な面に関して、当該2つのトラッキングコイルと対称である他の2つのトラッキングコイルとが含まれることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、前記2つのトラッキングコイルと他の2つのトラッキングコイルとで、レンズホルダのトラッキング駆動力伝達部にトラッキング方向の駆動力を加えることができる。ここで、前記2つのトラッキングコイルと他の2つのトラッキングコイルとは、対物レンズを含むタンジェンシャル方向に垂直な面に関して対称であるので、レンズホルダをバランスよくトラッキング方向に移動させることができる。
【0032】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記複数のトラッキングコイルには、トラッキング方向に配置された2つのトラッキングコイルと、前記対物レンズに関して当該2つのトラッキングコイルと対称である他の2つのトラッキングコイルとが含まれることが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、前記2つのトラッキングコイルの一方のトラッキングコイルによって、トラッキング駆動力伝達部にトラッキング方向の一方への駆動力を加え、前記他の2つのトラッキングコイルのうち、当該一方のトラッキングコイルと対物レンズに関して対称となるトラッキングコイルによって、トラッキング駆動力伝達部にトラッキング方向の他方への駆動力を加えることにより、レンズホルダを水平方向に回動させることができる。これにより、レンズホルダの回動制御が可能となる。
【0034】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記磁性流体は、前記アクチュエータ装置のベース上に載置された容器に注入されていてもよい。
【0035】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記レンズホルダは、前記容器の内部に移動可能に保持されていることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、磁性流体の流れによって駆動力をレンズホルダに効率よく伝えられる。
【0037】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記コイルは、前記容器の側面に取り付けられていることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、磁性流体に磁界をかける位置にコイルを容易に保持することができる。
【0039】
本発明に係るアクチュエータ装置では、前記磁性流体は、磁性イオン液体であることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、磁性イオン液体は、液体として存在する温度範囲が広いため蒸発しにくく、また外部磁界に対し強く応答をするなどの特徴を持つので、レンズホルダを容易に移動させることができる。
【0041】
本発明に係る光ピックアップ装置は、上記のいずれかのアクチュエータ装置を搭載している。これにより、低コストで小型の光ピックアップ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上のように、本発明に係るアクチュエータ装置は、光ディスクに対して記録または再生を行なうための光スポットを集光する対物レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダを移動させるレンズホルダ駆動手段と、を備えたアクチュエータ装置において、前記レンズホルダ駆動手段は、前記アクチュエータ装置のベース上に載置され、粘性を有する磁性流体と、複数のコイルと、を備え、前記レンズホルダは、その一部が前記磁性流体に浸漬された状態で、移動可能に保持され、前記コイルに電流を流すことにより、前記コイルは前記磁性流体に磁界をかけ、前記磁性流体に流れを発生させることで、前記レンズホルダに駆動力を加える構成である。したがって、低コストで小型のアクチュエータ装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ装置を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すアクチュエータ装置を反対方向から見た状態を示している。
【図2】(a)および(b)は、レンズホルダが保持される容器を二等分するトラッキング方向に垂直な面で、上記アクチュエータ装置を切った部分断面図である。
【図3】(a)および(b)は、レンズホルダが保持される容器を二等分するタンジェンシャル方向に垂直な面で、上記アクチュエータ装置を切った部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例に係るレンズホルダの構成を示す斜視図である。
【図5】従来のアクチュエータ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の一実施形態について図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0045】
(アクチュエータ装置の構成)
図1(a)および(b)は、本実施形態に係るアクチュエータ装置1を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すアクチュエータ装置1を反対方向から見た状態を示している。両図において、上下方向がフォーカシング方向であり、両側矢印に示す方向がトラッキング方向である。また以下の説明では、フォーカシング方向とトラッキング方向との両方に垂直な方向をタンジェンシャル方向とする。
【0046】
アクチュエータ装置1は、対物レンズ2を保持するレンズホルダ3と、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させるフォーカス/トラッキング駆動手段(レンズホルダ駆動手段)とを備えている。フォーカス/トラッキング駆動手段は、容器4と、磁性流体5と、フォーカスコイル6a〜6d、6A〜6Dとトラッキングコイル7a〜7d、7A〜7Dとを備えている。
【0047】
レンズホルダ3は、本体部3aと、2つのフォーカシング駆動力伝達部3b、3Bと、2つのトラッキング駆動力伝達部3c、3Cとで構成されている。本体部3aは、フォーカシング方向に垂直な矩形平板であり、本体部3aの上面中央に対物レンズ2が載置される。フォーカシング駆動力伝達部3b、3B、およびトラッキング駆動力伝達部3c、3Cについては、後述する。
【0048】
容器4は、フォーカシング方向(光ディスクに近づく方向)側に開口4aを有する直方体であり、ベース部8に設置されている。開口4aの内側には、さらに長方形状の開口4bが形成されており、開口4bの内部に、光ディスクからの光信号を処理する光学系が内蔵される。
【0049】
(磁性流体)
容器4の開口4aには、適正な量の磁性流体5が注入されている。磁性流体5は、強磁性で粘度を有する液体であり、例えば、1−ブチル−3−メチル-イミダゾリウムカチオン(bmin+)と塩化鉄酸アニオン(FeCl)とから構成される塩化鉄酸1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムなどの磁性イオン液体である。磁性イオン液体は、液体として存在する温度範囲が広いため蒸発しにくく、また外部磁界に対し強く応答をするなどの特徴を持つ。また、磁性イオン液体の外部磁界に対する応答は、磁化率だけでなく、液体の密度、粘度、表面張力などによって決まる。そのため、本実施形態では、磁性流体5の密度および粘性は、使用されるレンズホルダ3の質量に応じて、重力や動作応答を考慮して設計されている。なお、磁性流体5は、微量な磁性粉が混合された流体であってもよく、または、磁性粉を使用しない流体であってもよい。
【0050】
なお、磁性流体5として、一般に市販されている従来の磁性流体を使用してもよい。ただし、従来の磁性流体は、強磁性体のナノ粒子の表面を界面活性処理し、油などの媒質に一様に懸濁させた流体であるため、固相と液相に相分離する可能性があり、蒸発しやすいという欠点がある。これに対して、磁気イオン液体は単一成分の物質であるため、磁性流体5として、より好適である。
【0051】
(フォーカスコイルおよびトラッキングコイル)
フォーカスコイル6a〜6d、6A〜6Dおよびトラッキングコイル7a〜7d、7A〜7Dは、容器4の側面に取り付けられている。具体的には、図1(a)に示すように、フォーカスコイル6a、6bは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の一方の中央付近に、フォーカシング方向に並んで配置されている。同様に、図1(b)に示すように、フォーカスコイル6A、6Bは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の他方の中央付近に、フォーカシング方向に並んで配置されている。すなわち、フォーカスコイル6a、6bとフォーカスコイル6A、6Bとは、対物レンズ2に関して、互いに対称となるように配置されている。
【0052】
また、図1(a)に示すように、フォーカスコイル6c、6dは、容器4のトラッキング方向に垂直な2つの側面の一方の中央付近に、フォーカシング方向に並んで配置されている。同様に、図1(b)に示すように、フォーカスコイル6C、6Dは、容器4のトラッキング方向に垂直な2つの側面の他方の中央付近に、フォーカシング方向に並んで配置されている。すなわち、フォーカスコイル6c、6dとフォーカスコイル6C、6Dとは、対物レンズ2に関して、互いに対称となるように配置されている。
【0053】
また、図1(a)に示すように、トラッキングコイル7a、7bは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の一方の図中左側に、トラッキング方向に並んで配置されており、トラッキングコイル7c、7dは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の一方の図中右側に、トラッキング方向に並んで配置されている。同様に、図1(b)に示すように、トラッキングコイル7A、7Bは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の他方の図中左側に、トラッキング方向に並んで配置されており、トラッキングコイル7C、7Dは、容器4のタンジェンシャル方向に垂直な2つの側面の他方の図中右側に、トラッキング方向に並んで配置されている。
【0054】
すなわち、トラッキングコイル7a、7bとトラッキングコイル7A、7Bとは、容器4を二等分するタンジェンシャル方向に垂直な平面(対物レンズ2を含みタンジェンシャル方向に垂直な平面)に関して互いに対称であり、同様に、トラッキングコイル7c、7dとトラッキングコイル7C、7Dとは、容器4を二等分するタンジェンシャル方向に垂直な平面に関して互いに対称である。また、トラッキングコイル7a、7bとトラッキングコイル7D、7Cとは、対物レンズ2に関して互いに対称であり、同様に、トラッキングコイル7c、7dとトラッキングコイル7B、7Aとは、対物レンズ2に関して互いに対称である。
【0055】
また、各コイルは図示していない外部に設けられた電流源に接続されており、当該電流源は、各コイルに選択可能に電流を流すことができる。
【0056】
(レンズホルダ)
続いて、レンズホルダ3の形状について説明する。上述のように、レンズホルダ3は、本体部3aと、2つのフォーカシング駆動力伝達部3b、3Bと、2つのトラッキング駆動力伝達部3c、3Cとで構成され、本体部3aは、フォーカシング方向に垂直な矩形平板であり、本体部3aの上面中央に対物レンズ2が載置される。
【0057】
フォーカシング駆動力伝達部3b、3Bは、タンジェンシャル方向に垂直な側板とフォーカシング方向に垂直な底板とが繋ぎ合わされた、L字形状の断面を有する平板である。図1(a)に示すように、一方のフォーカシング駆動力伝達部3bは、本体部3aのタンジェンシャル方向に対向する2辺の一方に延設され、図1(b)に示すように、他方のフォーカシング駆動力伝達部3Bは、本体部3aのタンジェンシャル方向に対向する2辺の他方に延設されている。すなわち、フォーカシング駆動力伝達部3bとフォーカシング駆動力伝達部3Bとは、対物レンズ2に対して対称となる位置にある。
【0058】
トラッキング駆動力伝達部3c、3Cは、トラッキング方向に垂直な平板である。図1(a)に示すように、一方のトラッキング駆動力伝達部3cは、本体部3aのトラッキング方向に対向する2辺の一方に延設され、図1(b)に示すように、他方のトラッキング駆動力伝達部3Cは、本体部3aのトラッキング方向に対向する2辺の他方に延設されている。すなわち、各トラッキング駆動力伝達部3c、3Cは、トラッキング方向に並んで配置されている。
【0059】
以上のように構成されるレンズホルダ3は、本体部3aが容器4の内側の開口4bの上方に位置するように、少なくともフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動可能に、容器4に設置される。このとき、フォーカシング駆動力伝達部3b、3Bの側板とトラッキング駆動力伝達部3c、3Cとが、開口4bを形成する矩形枠を取り囲み、フォーカシング駆動力伝達部3b、3Bの底板とトラッキング駆動力伝達部3c、3Cの少なくとも一部とが、磁性流体5に浸漬された状態となる。
【0060】
フォーカス/トラッキング駆動手段は、フォーカスコイル6a〜6d、6A〜6Dおよびトラッキングコイル7a〜7d、7A〜7Dの各コイルに流す電流を制御することにより、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させる。まず、レンズホルダ3のフォーカシング方向の移動について、図2を参照して説明する。
【0061】
(フォーカシング方向の移動)
図2(a)および(b)は、容器4を二等分するトラッキング方向に垂直な面で、アクチュエータ装置1を切った部分断面図である。同図では、レンズホルダ3の一方のフォーカシング駆動力伝達部3bと、フォーカスコイル6a、6bとが示されている。
【0062】
フォーカスコイル6a、6bに電流が流されていない初期状態では、フォーカシング駆動力伝達部3bの底板の高さは、フォーカスコイル6aとフォーカスコイル6bとの間にある。続いて、図示しない電流源からフォーカスコイル6aに電流を流すことによりフォーカスコイル6aは電磁石となり、磁性流体5に磁界をかける。これにより、レンズホルダ3のフォーカシング駆動力伝達部3b周辺の磁性流体5は上方向へ押し上げられ変形する。すなわち、フォーカシング駆動力伝達部3b周辺の磁性流体5に上方向の流れが発生し、この流れによってフォーカシング駆動力伝達部3bに上方向の駆動力が伝えられ、図2(a)に示すように、フォーカシング駆動力伝達部3bは上方向に移動する。レンズホルダ3が所定の高さまで達すると、フォーカシング駆動力伝達部3bに加わる駆動力とレンズホルダ3の重力とが等しくなり、平衡状態に達する。
【0063】
また、図示しない電流源からフォーカスコイル6bに電流を流すことによりフォーカスコイル6bは電磁石となり、レンズホルダ3のフォーカシング駆動力伝達部3b周辺の磁性流体5は下方向へ押し下げられ変形する。すなわち、フォーカシング駆動力伝達部3b周辺の磁性流体5に下方向の流れが発生し、この流れによってフォーカシング駆動力伝達部3bに下方向の駆動力が伝えられ、図2(b)に示すように、フォーカシング駆動力伝達部3bは下方向に移動する。レンズホルダ3が所定の深さまで達すると、フォーカシング駆動力伝達部3bに加わる駆動力とレンズホルダ3の浮力とが等しくなり、平衡状態に達する。
【0064】
このように、フォーカスコイル6a、6bに流す電流を制御することにより、フォーカシング駆動力伝達部3bが上下に移動するので、レンズホルダ3をフォーカシング方向に移動させることができる。また、フォーカシング駆動力伝達部3bに加わる駆動力は、フォーカスコイル6a、6bに流す電流値に比例するので、電流源からの電流値を制御することにより、レンズホルダ3の変位量を制御することができる。
【0065】
また、図1(b)に示すフォーカスコイル6A、6Bに対しても、フォーカスコイル6Aに電流を流すことにより、フォーカシング駆動力伝達部3Bを上方向に移動させ、フォーカスコイル6Bに電流を流すことにより、フォーカシング駆動力伝達部3Bを下方向に移動させることができる。このように、フォーカスコイル6a、6bとフォーカスコイル6A、6Bとを連動させることにより、レンズホルダ3に対する推力および応答性をさらに向上させることができる。
【0066】
(トラッキング方向の移動)
次に、レンズホルダ3のトラッキング方向の移動について、図3を参照して説明する。図3(a)および(b)は、容器4を二等分するタンジェンシャル方向に垂直な面で、アクチュエータ装置1を切った部分断面図である。同図では、レンズホルダ3の一方のトラッキング駆動力伝達部3cと、トラッキングコイル7a、7b、7A、7Bとが示されている。なお以下では、便宜上、トラッキング駆動力伝達部3cとトラッキングコイル7a、7bとの位置関係について説明する。
【0067】
トラッキングコイル7a、7bに電流が流されていない初期状態では、トラッキング駆動力伝達部3cのトラッキング方向の位置は、トラッキングコイル7aとトラッキングコイル7bとの間にある。続いて、図示しない電流源からトラッキングコイル7aに電流を流すことによりトラッキングコイル7aは電磁石となり、レンズホルダ3のトラッキング駆動力伝達部3c周辺の磁性流体5は図中右方向へ押され変形する。すなわち、トラッキング駆動力伝達部3c周辺の磁性流体5に右方向の流れが発生し、この流れによってトラッキング駆動力伝達部3cに右方向の駆動力が伝えられ、図3(a)に示すように、トラッキング駆動力伝達部3cは右方向に移動する。
【0068】
また、図示しない電流源からトラッキングコイル7bに電流を流すことによりトラッキングコイル7bは電磁石となり、レンズホルダ3のトラッキング駆動力伝達部3c周辺の磁性流体5は図中左方向へ押され変形する。すなわち、トラッキング駆動力伝達部3c周辺の磁性流体5に左方向の流れが発生し、この流れによってトラッキング駆動力伝達部3cに左方向の駆動力が伝えられ、図3(b)に示すように、トラッキング駆動力伝達部3cは左方向に移動する。
【0069】
このように、トラッキングコイル7a、7bに流す電流を制御することにより、トラッキング駆動力伝達部3cが左右に移動するので、レンズホルダ3をトラッキング方向に移動させることができる。
【0070】
また、図1(a)に示すトラッキングコイル7c、7dに対して、トラッキングコイル7aに電流を流すときにトラッキングコイル7cに電流を流し、トラッキングコイル7bに電流を流すときにトラッキングコイル7dに電流を流すことにより、トラッキング駆動力伝達部3Cをトラッキング方向に移動させることができる。これにより、さらに安定してレンズホルダ3をトラッキング方向に移動させることができる。
【0071】
さらに、図1(b)に示すトラッキングコイル7A〜7Dに対しても、トラッキングコイル7a、7cに電流を流すときにトラッキングコイル7A、7Cに電流を流し、トラッキングコイル7b、7dに電流を流すときにトラッキングコイル7B、7Dに電流を流してもよい。これにより、推力および応答性が向上する他、レンズホルダ3への伝達力をバランスよく与えることができる。
【0072】
以上のように、トラッキングコイル7a〜7d、7A〜7Dに流す電流を制御することにより、レンズホルダ3をトラッキング方向に移動させることができる。
【0073】
なお、レンズホルダ3のフォーカシング方向の移動は、図1(a)に示すフォーカスコイル6c、6dおよび図1(b)に示すフォーカスコイル6C、6Dを用いて行ってもよい。具体的には、フォーカスコイル6cおよびフォーカスコイル6Cに電流を流すことにより、レンズホルダ3を上方向に移動させ、フォーカスコイル6dおよびフォーカスコイル6Dに電流を流すことにより、レンズホルダ3を下方向に移動させることができる。
【0074】
(レンズホルダの回動制御)
また、本実施形態に係るアクチュエータ装置1では、フォーカス/トラッキング駆動手段は、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させるだけでなく、レンズホルダ3の水平方向の回動制御も可能となっている。
【0075】
例えば、図1(a)に示すトラッキングコイル7aおよび図1(b)に示すトラッキングコイル7Dに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のトラッキング駆動力伝達部3cの図1(a)における左側部分に図1(a)における右手前方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部3Cの図1(a)における右側部分に図1(a)における左奥方向の力が加えられる。これにより、上方向から見て反時計回りの回転力が、レンズホルダ3に対して加えられる。また、図1(a)に示すトラッキングコイル7bおよび図1(b)に示すトラッキングコイル7Cに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のトラッキング駆動力伝達部3cの図1(a)における左側部分に図1(a)における左奥方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部3Cの図1(a)における右側部分に図1(a)における右手前方向の力が加えられる。これにより、上方向から見て時計回りの回転力が、レンズホルダ3に対して加えられる。
【0076】
同様の回動制御は、図1(a)に示すトラッキングコイル7c、7dおよび図1(b)に示すトラッキングコイル7A、7Bによっても可能である。具体的には、図1(a)に示すトラッキングコイル7dおよび図1(b)に示すトラッキングコイル7Aに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のトラッキング駆動力伝達部3cの図1(a)における右側部分に図1(a)における右手前方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部3Cの図1(a)における左側部分に図1(a)における左奥方向の力が加えられる。これにより、上方向から見て時計回りの回転力が、レンズホルダ3に対して加えられる。また、図1(a)に示すトラッキングコイル7cおよび図1(b)に示すトラッキングコイル7Bに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のトラッキング駆動力伝達部3cの図1(a)における右側部分に図1(a)における左奥方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部3Cの図1(a)における左側部分に図1(a)における右手前方向の力が加えられる。これにより、上方向から見て反時計回りの回転力が、レンズホルダ3に対して加えられる。
【0077】
このように、トラッキングコイル7a〜7dおよびトラッキングコイル7A〜7Dに流す電流を制御することにより、レンズホルダ3の水平方向の回動制御が可能となる。
【0078】
(対物レンズ2のタンジェンシャル方向のチルト制御)
さらに、フォーカス/トラッキング駆動手段は、対物レンズ2のタンジェンシャル方向のチルト制御も可能となっている。
【0079】
具体的には、図1(a)に示すフォーカスコイル6aおよび図1(b)に示すフォーカスコイル6Bに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のフォーカシング駆動力伝達部3bに対して上方向の力が加えられ、他方のフォーカシング駆動力伝達部3Bに対して下方向の力が加えられる。これにより、レンズホルダ3は、図1(a)における右奥側が低くなるように傾く。また、図1(a)に示すフォーカスコイル6bおよび図1(b)に示すフォーカスコイル6Aに電流を流すと、レンズホルダ3の一方のフォーカシング駆動力伝達部3bに対して下方向の力が加えられ、他方のフォーカシング駆動力伝達部3Bに対して上方向の力が加えられる。これにより、レンズホルダ3は、図1(a)における左手前側が低くなるように傾く。
【0080】
このように、フォーカスコイル6a、6bおよびフォーカスコイル6A、6Bに流す電流を制御することにより、対物レンズ2のタンジェンシャル方向の傾きを制御することができる。
【0081】
(対物レンズ2のトラッキング方向のチルト制御)
また、本実施形態では、レンズホルダを図4に示す構成とすることにより、対物レンズ2のトラッキング方向のチルト制御も可能である。
【0082】
図4は、本実施形態の変形例に係るレンズホルダ13の構成を示す斜視図である。レンズホルダ13は、図1(a)に示すレンズホルダ3において、トラッキング駆動力伝達部3c、3Cの代わりにトラッキング駆動力伝達部13c、13Cを備える構成である。トラッキング駆動力伝達部13c、13Cは、それぞれトラッキング駆動力伝達部3c、3Cの底辺に、フォーカシング方向に垂直な底板を繋ぎ合わせた構成である。
【0083】
レンズホルダ13を図1(a)に示す容器に設置した状態で、例えば、図1(a)に示すフォーカスコイル6cおよび図1(b)に示すフォーカスコイル6Dに電流を流すと、レンズホルダ13の一方のトラッキング駆動力伝達部13cの底板に対して上方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部13Cの底板に対して下方向の力が加えられる。これにより、レンズホルダ13は、図1(a)における左奥側が低くなるように傾く。また、図1(a)に示すフォーカスコイル6dおよび図1(b)に示すフォーカスコイル6Cに電流を流すと、レンズホルダ13の一方のトラッキング駆動力伝達部13cの底板に対して下方向の力が加えられ、他方のトラッキング駆動力伝達部13Cの底板に対して上方向の力が加えられる。これにより、レンズホルダ13は、図1(a)における右手前側が低くなるように傾く。
【0084】
このように、フォーカスコイル6c、6dおよびフォーカスコイル6C、6Dに流す電流を制御することにより、対物レンズ2のトラッキング方向の傾きを制御することができる。なお、この場合、フォーカスコイル6c、6dおよびフォーカスコイル6C、6Dによって、レンズホルダ13をフォーカシング方向に移動させることも可能である。
【0085】
具体的には、図示しない電流源からフォーカスコイル6c、6Cに電流を流すことにより、レンズホルダ13のトラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板周辺の磁性流体5は上方向へ押し上げられ変形する。すなわち、トラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板周辺の磁性流体5に上方向の流れが発生し、この流れによってトラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板に上方向の駆動力が伝えられ、トラッキング駆動力伝達部13c、13Cは上方向に移動する。また、図示しない電流源からフォーカスコイル6d、6Dに電流を流すことにより、レンズホルダ13のトラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板周辺の磁性流体5は下方向へ押し上げられ変形する。すなわち、トラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板周辺の磁性流体5に下方向の流れが発生し、この流れによってトラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板に下方向の駆動力が伝えられ、トラッキング駆動力伝達部13c、13Cは下方向に移動する。すなわち、トラッキング駆動力伝達部13c、13Cの底板は、フォーカシング駆動力伝達部3b、3Bの底板と同様に、フォーカシング方向の駆動力をレンズホルダ13に伝える手段として機能する。
【0086】
さらに、フォーカスコイル6a、6c、6A、6Cまたはフォーカスコイル6b、6d、6B、6Dに電流を流すことにより、レンズホルダ13をより安定してフォーカシング方向に移動させることができる。
【0087】
(実施形態の総括)
以上述べたように、本実施形態に係るアクチュエータ装置によれば、対物レンズが載置されたレンズホルダのみを可動部とすることで、可動部の軽量化を図ることができる。また、ワイヤ等の弾性部材を持たないため、アクチュエータ装置全体を小型化することができる。また、磁気回路としてフォーカスコイルとトラッキングコイルを容器の側面に設け、マグネットの代わりに磁性流体を使用することで、希少金属の使用量を減らすことができ、低コストのアクチュエータ装置を提供することができる。
【0088】
また、本実施形態に係るアクチュエータ装置を光ピックアップ装置に用いることにより、低コストで小型の光ピックアップ装置を実現することができる。
【0089】
なお、アクチュエータ装置に磁性流体を設けた構成は、例えば、特開平1−39641号公報に開示されている。しかしながら、当該公報では、磁界中に置かれた磁性流体は、その吸着性によって、主に可動部を保持し、振動を抑制することを目的としたものであり、本実施形態における磁性流体のように、可動部そのものの駆動源としては利用されていない。
【0090】
本実施形態では、磁性流体が注入されている容器が直方体であり、レンズホルダの本体部が矩形の平板であったが、レンズホルダが、容器の内部に移動可能に保持されるのであれば、レンズホルダおよび容器の形状は、これに限定されない。例えば、レンズホルダの本体部が円形または楕円形であり、容器が円柱形状であってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、フォーカスコイルおよびトラッキングコイルが容器の側面に取り付けられる構成であったが、各コイルが磁性流体に磁界をかけて磁性流体を変形させることができるのであれば、各コイルの位置はこれに限定されない。例えば、各コイルを容器の内面に取り付けてもよく、あるいは、コイルを保持する手段によって、各コイルを容器の側面から離間した状態で保持してもよい。また、フォーカスコイルおよびトラッキングコイルの個数も、実施形態に記載の個数に限定されない。
【0092】
また、本実施形態では、レンズホルダのフォーカシング駆動力伝達部の底板は、フォーカシング方向に垂直であったが、磁性流体からのフォーカシング方向の駆動力をレンズホルダに伝えられる形状であれば、必ずしもフォーカシング方向に垂直でなくてもよい。同様に、レンズホルダのトラッキング駆動力伝達部は、トラッキング方向に垂直な平板であったが、磁性流体からのトラッキング方向の駆動力をレンズホルダに伝えられる形状であれば、必ずしもトラッキング方向に垂直でなくてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、各コイルを容器の4つの側面に取り付けた構成であったが、必ずしも4つの側面全てにコイルを取り付けなくてもよい。例えば、図1(a)に示すフォーカスコイル6a、6bおよびトラッキングコイル7a〜7dのみを容器4に取り付ける構成としてもよい。当該構成であっても、レンズホルダ3をフォーカシング方向およびトラッキング方向に移動させることは可能であり、また、コイルの数を減らせるので、さらにコストを低減することができる。
【0094】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、光ピックアップ装置に好適である。
【符号の説明】
【0096】
1 アクチュエータ装置
2 対物レンズ
3 レンズホルダ
3a 本体部
3b フォーカシング駆動力伝達部
3B フォーカシング駆動力伝達部
3c トラッキング駆動力伝達部
3C トラッキング駆動力伝達部
4 容器
4a 開口
4b 開口
5 磁性流体
6a フォーカスコイル
6b フォーカスコイル
6c フォーカスコイル
6d フォーカスコイル
6A フォーカスコイル
6B フォーカスコイル
6C フォーカスコイル
6D フォーカスコイル
7a トラッキングコイル
7b トラッキングコイル
7c トラッキングコイル
7d トラッキングコイル
7A トラッキングコイル
7B トラッキングコイル
7C トラッキングコイル
7D トラッキングコイル
8 ベース部
13 レンズホルダ
13c トラッキング駆動力伝達部
13C トラッキング駆動力伝達部
100 アクチュエータ装置
101 ベース部
102 ホルダ支持部
103 レンズホルダ
104 対物レンズ
105a 弾性部材
106a マグネット
106b マグネット
107a フォーカスコイル
107b トラッキングコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して記録または再生を行なうための光スポットを集光する対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを移動させるレンズホルダ駆動手段と、を備えたアクチュエータ装置において、
前記レンズホルダ駆動手段は、
粘性を有する磁性流体と、
複数のコイルと、を備え、
前記レンズホルダは、その一部が前記磁性流体に浸漬された状態で、移動可能に保持され、
前記コイルに電流を流すことにより、前記コイルは前記磁性流体に磁界をかけ、前記磁性流体に流れを発生させることで、前記レンズホルダに駆動力を加えることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
上記複数のコイルには、前記光ディスクのフォーカシング方向に配置された複数のフォーカスコイルが含まれ、
前記フォーカスコイルの少なくともいずれかに電流を流すことにより、前記レンズホルダに前記フォーカシング方向の駆動力が加えられることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記レンズホルダは、前記磁性流体に浸漬された前記フォーカシング方向に垂直な平板を有するフォーカシング駆動力伝達部を備え、
前記フォーカスコイルに電流が流れていない状態において、前記フォーカシング駆動力伝達部の前記フォーカシング方向の位置は、前記複数のフォーカスコイルのいずれか2つの間にあることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
上記複数のコイルには、前記光ディスクのトラッキング方向に配置された複数のトラッキングコイルが含まれ、
前記トラッキングコイルの少なくともいずれかに電流を流すことにより、前記レンズホルダにトラッキング方向の駆動力が加えられることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記レンズホルダは、少なくとも一部が前記磁性流体に浸漬されたトラッキング方向に垂直な平板であるトラッキング駆動力伝達部を備え、
前記トラッキングコイルに電流が流れていない状態において、前記トラッキング駆動力伝達部のトラッキング方向の位置は、前記複数のトラッキングコイルのいずれか2つの間にあることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記レンズホルダは、前記フォーカシング駆動力伝達部を複数備え、
前記フォーカシング駆動力伝達部のうち、2つのフォーカシング駆動力伝達部は、前記対物レンズに対して対称となる位置にあり、
前記複数のフォーカスコイルには、前記フォーカシング方向に配置された2つのフォーカスコイルと、前記対物レンズに関して当該2つのフォーカスコイルと対称である他の2つのフォーカスコイルとが含まれ、
各コイルに電流が流れていない状態において、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部の一方の前記フォーカシング方向における位置が、前記2つのフォーカスコイルの間にあり、前記2つのフォーカシング駆動力伝達部の他方の前記フォーカシング方向における位置が、前記他の2つのフォーカスコイルの間にあることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記2つのフォーカシング駆動力伝達部は、前記光ディスクのトラッキング方向に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
フォーカシング方向とトラッキング方向との両方に垂直な方向をタンジェンシャル方向として、
前記2つのフォーカシング駆動力伝達部は、タンジェンシャル方向に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記レンズホルダは、前記トラッキング駆動力伝達部を複数備え、
各トラッキング駆動力伝達部は、トラッキング方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
フォーカシング方向とトラッキング方向との両方に垂直な方向をタンジェンシャル方向として、
前記複数のトラッキングコイルには、トラッキング方向に配置された2つのトラッキングコイルと、前記対物レンズを含むタンジェンシャル方向に垂直な面に関して、当該2つのトラッキングコイルと対称である他の2つのトラッキングコイルとが含まれることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記複数のトラッキングコイルには、トラッキング方向に配置された2つのトラッキングコイルと、前記対物レンズに関して当該2つのトラッキングコイルと対称である他の2つのトラッキングコイルとが含まれることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】
前記磁性流体は、前記アクチュエータ装置のベース上に載置された容器に注入されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項13】
前記レンズホルダは、前記容器の内部に移動可能に保持されていることを特徴とする請求項12に記載のアクチュエータ装置。
【請求項14】
前記コイルは、前記容器の側面に取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載のアクチュエータ装置。
【請求項15】
前記磁性流体は、磁性イオン液体であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のアクチュエータ装置を搭載する光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−141910(P2011−141910A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−337(P2010−337)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】