説明

アクチュエータ駆動用手動発電装置及びアクチュエータ駆動装置

【課題】用途が限られていた手動発電装置の用途を拡大すると共に、小型、軽量化を図る。
【解決手段】本発明の手動発電装置では、可逆動作可能な直流電動機2と、その回転軸3に接続された増速機構4とを器体5に格納すると共に、器体5の外側には、増速機構4の入力軸6に接続されたクランクハンドルと、直流電動機2の電源側に接続された給電ケーブル8とを設け、この給電ケーブル8の先端側には、アクチュエータを構成する直流電動機の電源側コネクタに接続可能なコネクタを設けている。増速機構4は、クランクハンドル7側をウォームホイール15とし、直流電動機2側を複数条のねじのウォーム16としたウォームギヤ機構で構成することにより、大きさと重量を大幅に低減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ駆動用手動発電装置及びアクチュエータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手動式発電装置は、従来から数多く提案されている。その一例を説明すると、まず特許文献1のものは、手持ち可能なケースに、発電機と、平歯車で構成された増速歯車列と、この増速歯車列を構成するクラッチギヤに歯合する往復動操作用ラックギヤを格納し、手動での往復動操作により発電した電流を出力コードを介して取り出すようにした手動発電装置が記載されている。この手動発電装置は、蓄電池無しで懐中電灯等として使用する他、携帯用電気製品の電源蓄電池の充電等に使用できる、というものである。
【0003】
次に、特許文献2のものは、手持ち可能なケースに、発電機と、平歯車で構成された増速歯車列を格納し、充電可能な二次電池の格納部と供給端子部を設けると共に、増速歯車列の入力側にクランクハンドルを設け、供給端子部に、給電ケーブルのコネクタを接続して給電する構成とした手動発電装置が記載されている。この手動発電装置は、緊急時等に携帯機器に電力供給を行う、というものである。
【0004】
次に、特許文献3のものは、先の特許文献1,2と同様に、手持ち可能なケースに、発電機と、平歯車で構成された増速歯車列と、電気二重層キャパシタを格納すると共に、増速歯車列の入力側にクランクハンドルを設けた構成の手動発電装置が記載されている。この手動発電装置は、クランクハンドルにより手動で発電した電力をキャパシタに蓄電し、リード線の端部に設けた出力端子を介して、ラジオ、懐中電器、無線機、携帯電話等の電気機器の電源として使用できるというものである。
【0005】
このように、従来の手動発電装置では、必須の要素である増速機構を、殆ど、平歯車の歯車列で構成しているため、大きさと重量が大となってしまっていた。この他、増速機構にベルト伝動機構を用いるものでは、更に大きさと重量が大となってしまう。
【0006】
特に、二次電池やキャパシタ等の蓄電素子を格納するようにした手動発電装置では、大きさや重量が更に大きくなってしまう。
【0007】
一方、電動ベッドやその他の各種機器に使用する電動アクチュエータは、電動機から減速機構を介して雌雄ねじ等による回転−直動変換機構を構成しているが、この減速機構として、ウォームギヤ機構を用いているものがあり、このようなものでは、必要な減速比を一段で実現することができるため、大きさと重量の低減に大きく寄与している。
【0008】
しかしながらウォームギヤ機構は、ウォームのねじり角を摩擦角よりも大きくすることにより逆駆動可能であることは知られているものの、従来、一般には、減速機構にのみ用いられることが多く、逆駆動は、例えばオルゴールの調速機構等に限定的に利用されている程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3053139号公報
【特許文献2】特開平11−288742号公報
【特許文献3】実用新案登録第3103789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、まず、従来の手動発電装置の用途が、携帯用電気製品等への給電に限られているということであり、従って、本発明では、その用途を広げることを目的の一つとしている。
【0011】
また本発明が解決しようとする課題は、従来の手動発電装置が、増速機構によって大きさと重量が大きいということであり、従って本発明では、この増速機構の小型化、軽量化を図ることを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために本発明では、可逆動作可能な直流電動機と、その回転軸に接続された増速機構とを器体に格納すると共に、器体の外側には、増速機構の入力軸に接続されたクランクハンドルと、直流電動機の電源側に接続された給電ケーブルとを設け、この給電ケーブルの先端側には、アクチュエータを構成する直流電動機の電源側コネクタに接続可能なコネクタを設けたアクチュエータ駆動用手動発電装置を提案する。
【0013】
また本発明では、上記の構成において、増速機構は、クランクハンドル側をウォームホイールとし、直流電動機側をウォームとして構成したアクチュエータ駆動用手動発電装置を提案するもので、そして、このウォームを複数条のねじとして構成したアクチュエータ駆動用手動発電装置を提案する。
【0014】
また本発明では、直流電動機から減速機構を介して回転−直動変換機構を設けたアクチュエータと、上述したアクチュエータ駆動用手動発電装置とから構成されるアクチュエータ駆動装置を提案する。
【0015】
そして本発明では、この構成において、アクチュエータの直流電動機及び減速機構と、手動発電装置の直流電動機及び増速機構を同じ構成としたアクチュエータ駆動装置を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る手動発電装置は、給電ケーブルのコネクタをアクチュエータを構成する直流電動機の電源側コネクタに接続した後、器体を持ち、クランクハンドルを回転駆動する。
【0017】
クランクハンドルの回転は増速機構により増速されて直流発電機の回転子を回転させて起電力が生じ、こうして発生した直流電力は、給電ケーブルを介してアクチュエータを構成する直流電動機に供給されて、アクチュエータを動作させる。
【0018】
例えばアクチュエータをベッドの床部の昇降機構等の変位のための機構に利用している場合には、その動作は、所定の変位を得られれば良く、定速動作等の一定に制御された動作は必ずしも必要としないため、本発明の手動発電装置を用いてアクチュエータを良好に動作させることができる。
【0019】
本発明において、手動発電装置を構成する増速機構は、クランクハンドル側をウォームホイールとし、直流電動機側をウォームとしたウォームギヤ機構で構成することにより、大きさと重量を大幅に低減することができる。
【0020】
この際、ウォームは二条又はそれ以上の条のねじ、即ち、複数条のねじとして構成し、ねじり角を大きくして摩擦の影響を小さくすることができる。一般に、発電装置として必要な回転数は、例えば最低でも1500rpm(25Hz)以上であり、また手動装置で可能な入力回転数は、120rpm(2Hz)が限界値に近いと考えられ、この場合には、増速比は、12.5以上必要である。本発明では、ウォームを二条又はそれ以上の条のねじとすることにより、高い増速比と伝達効率の向上を図ることができ、簡易に操作できる大きさと構造において、前記要件を満たす手動発電装置を実現することができる。
【0021】
本発明において、アクチュエータの直流電動機及び減速機構と、手動発電装置の直流電動機及び増速機構は同じ構成とすることができ、こうすることによりコストの大幅な低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係る手動発電装置の構成及び動作を概念的に示す説明図である。
【図2】図2は本発明に係る手動発電装置の本体の外観説明図である。
【図3】図3は本発明に係る手動発電装置の縦断説明図である。
【図4】図4は本発明に係る手動発電装置の構成要素である直流電動機と増速機構の構成を示す正面図である。
【図5】図5は本発明に係る手動発電装置の構成要素である直流電動機と増速機構の構成を示す平面図である。
【図6】図6は本発明に係る手動発電装置の構成要素である直流電動機と増速機構の構成を示す左側面図である。
【図7】図7は本発明の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る手動発電装置の実施の形態を添付の図1〜図7を参照して説明する。
これらの図において、符号1は本発明に係る手動発電装置を概括的に示すもので、この手動発電装置1は、可逆動作可能な直流電動機2と、その回転軸3に接続された増速機構4とを器体5に格納している。そして器体5の外側には、前記増速機構4の入力軸6に接続されたクランクハンドル7と、直流電動機2の電源側に接続された給電ケーブル8とを設け、この給電ケーブル8の先端側には、アクチュエータ9を構成する直流電動機10の電源側コネクタ11に接続可能な給電コネクタ12を設けた構成である。符号13は受電ケーブル、14はアクチュエータ9の構成要素である減速機構である。尚、この実施の形態では、器体5は、縦断方向に分割した一対の殻体をねじ(図示省略)で結合して、各要素を格納状態に支持する構成である。
【0024】
ここで増速機構4を詳細に説明すると、この増速機構4は図3〜図6に示しているように、クランクハンドル7側をウォームホイール15として、このウォームホイール15に入力軸6を突設しており、そして直流電動機2側を、ウォームホイール15に歯合するウォーム16として構成している。そしてこのウォーム16は、二条ねじとして構成しており、そのねじり角は摩擦角よりも大きくしているため、このウォームギヤ機構は可逆動作可能である。そしてこのようなウォームギヤ機構においては、例えば、1/32という大きな増速比(減速比)を容易に得ることができる。尚、図中2点鎖線で示した符号17の部材は入力軸6、ウォームホイール15及びウォーム16の支持部材を示すものである。
【0025】
以上の構成において、本発明に係る手動発電装置1は、図1に示すように、給電ケーブル8の給電コネクタ12をアクチュエータ9を構成する直流電動機10の電源側コネクタ11に接続した後、器体5を持ち、クランクハンドル7を回転駆動する。
【0026】
クランクハンドル7の回転は増速機構4により増速されて直流発電機2の回転子を回転させて起電力を発生させ、こうして発生した直流電力は、給電ケーブル8を介してアクチュエータ9を構成する直流電動機10に供給されて、アクチュエータ9を動作させる。
【0027】
例えば図7は、アクチュエータ9をベッド18の床部19の昇降機構に利用している例を示すもので、この場合の動作は、所定の変位を得られれば良く、定速動作等の一定に制御された動作は必ずしも必要としないため、本発明の手動発電装置1を用いてアクチュエータ9を良好に動作させ、所定の昇降動作を行うことができる。
【0028】
本発明の手動発電装置1の実施例の仕様を説明すると、次の通りである。
手動による入力 :10〜50[N]
手動での入力軸の回転数:30〜120[rpm]
減速比(増速比) :1/15.5
回転軸の回転数 :465〜1860[rpm]
発電力 :10〜30[VA]
【0029】
この実施の形態においては、手動発電装置1を構成する増速機構4は、クランクハンドル7側をウォームホイール15とし、直流電動機2側を二条ねじのウォーム16としたウォームギヤ機構で構成することにより、大きさと重量を大幅に低減することができ、このため、手で持てる大きさの器体5内に構成要素を格納して、上述した仕様を満たすことができる手動発電装置1を実現することができる。
【0030】
ここで、本発明において、手動発電装置1は、それを構成する直流電動機2及び増速機構4を、本発明の手動発電装置1によって駆動するアクチュエータ9の直流電動機10及び減速機構14と同じ構成とすることができ、こうすることによりコストの大幅な低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の以上の通りであり、各種の用途に用いられるアクチュエータの直流電動機を、小型、軽量の手動発電装置により動作させることができるという格別なる特徴を有するものである。
【0032】
従って、本発明の手動発電装置は、通常時にアクチュエータを駆動する装置として使用したり、停電等により通電ができずにアクチュエータが動作不能となった場合の使用等、非常に利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0033】
1 手動発電装置
2 直流電動機
3 回転軸
4 増速機構
5 器体
6 入力軸
7 クランクハンドル
8 給電ケーブル
9 アクチュエータ
10 直流電動機
11 電源側コネクタ
12 給電コネクタ
13 受電ケーブル
14 減速機構
15 ウォームホイール
16 ウォーム
17 支持部材
18 ベッド
19 床部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆動作可能な直流電動機と、その回転軸に接続された増速機構とを器体に格納すると共に、器体の外側には、増速機構の入力軸に接続されたクランクハンドルと、直流電動機の電源側に接続された給電ケーブルとを設け、この給電ケーブルの先端側には、アクチュエータを構成する直流電動機の電源側コネクタに接続可能なコネクタを設けたことを特徴とするアクチュエータ駆動用手動発電装置。
【請求項2】
増速機構は、クランクハンドル側をウォームホイールとし、直流電動機側をウォームとして構成したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ駆動用手動発電装置。
【請求項3】
ウォームは複数条のねじとして構成したことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ駆動用手動発電装置。
【請求項4】
直流電動機から減速機構を介して回転−直動変換機構を設けたアクチュエータと、請求項1〜3のいずれか1項に記載の手動発電装置とから構成されることを特徴とするアクチュエータ駆動装置。
【請求項5】
アクチュエータの直流電動機及び減速機構と、手動発電装置の直流電動機及び増速機構を同じ構成としたことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81298(P2013−81298A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219645(P2011−219645)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(390039985)パラマウントベッド株式会社 (165)
【Fターム(参考)】