説明

アクチュエータ

【課題】精度を損ねることなく組付性を向上することができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】ケース11に突設されたストッパ31と、ウォームホイール15に突設されストッパ31に当接してウォームホイール15を所定の初期位置に回動規制する係合突部32と、ケース11に収容され第1脚部33bがストッパ31に係止され第2脚部33cがストッパ31よりもその突出方向の外側で係合突部32に係止され、該係合突部32がストッパ31に当接する側にウォームホイール15を回動付勢するトーションコイルスプリング33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータとして種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載されたアクチュエータは、車両の施解錠に係るロック装置に適用されるもので、その筐体をなすケース(1)には、電動モータ(24)により回転駆動される出力部材(12)が収容されている。また、ケースには、その底面に突設された半円筒状のばね取付用壁(11)及び該ばね取付用壁の内周側で出力部材の底面に突設された半円筒状の係合片(19)に両脚部(18、18)が共に係止可能な復帰ばね(17)が収容されている。そして、電動モータの駆動力から解放された出力部材は、復帰ばねによりその両脚部が共にばね取付用壁及び係合片に係止される所定の中立位置に復帰するように回動付勢されている。一方、出力部材は、電動モータの駆動力により復帰ばねの付勢力に抗して正逆回転することで、当該回転方向に応じて選択的に施錠状態及び解錠状態に切り替えるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に記載されたアクチュエータのように、車両ドアを閉状態で保持可能なラッチ機構の解除に係るリリース装置に適用されるものも知られている。このアクチュエータの筐体をなすケース(201)にも、電動モータ(203)により回転駆動される出力部材(205)が収容されている。また、ケースには、該ケース及び出力部材に両脚部(206a、206a)がそれぞれ係止された復帰ばね(206)が収容されている。そして、電動モータの駆動力から解放された出力部材は、復帰ばねにより所定の初期位置に復帰するように回動付勢されている。一方、出力部材は、電動モータの駆動力により復帰ばねの付勢力に抗して所定方向に回転することでラッチ機構を解除するようになっている。つまり、特許文献1のように、所定の中立位置からの正逆回転によって動作を切り替える構成ではないため、自ずと機械的・電気的構成が簡素化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−13881号公報
【特許文献2】特開2005−315022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2では、出力部材の所定の初期位置は、復帰ばねに付加される外力や振動等の影響を受けて変動するため、初期位置の位置精度にばらつきが生じる可能性がある。そこで、ケース及び出力部材にそれぞれストッパ及び係合突部を配設し、これらストッパ及び係合突部が当接する出力部材の回動位置を所定の初期位置として、復帰ばねにより復帰させることも提案されている。
【0006】
しかしながら、このように復帰ばねを介在させてケースに出力部材を組み付ける場合には、例えばケースの適宜位置に復帰ばねの一側の脚部である第1脚部を係止した状態で、復帰ばねの弾性復帰状態(自由状態)のままその他側の脚部である第2脚部を出力部材の適宜位置に係止し、仮組み状態のまま復帰ばねの付勢力に抗してストッパ及び係合突部が当接するまで出力部材を回転させる必要がある。この場合、不安定な仮組み状態で出力部材を初期位置へと回転させることになり、例えば組付作業時に復帰ばねの脚部(第1又は第2脚部)がケース又は出力部材から外れる可能性がある。
【0007】
従って、出力部材等の組付作業を容易にするためには、これら部材の部品精度を著しく高く設定する一方で、各部材間に所要の間隙を設定する必要がある。また、ケースに収容されている復帰ばね等に出力部材を組み付けることになるため、該出力部材に邪魔されて目視での組付作業が困難になり、部材間の位置合わせが困難になってしまう。
【0008】
本発明の目的は、精度を損ねることなく組付性を向上することができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、筐体をなすケースと、該ケースに回動自在に収容され電動モータにより回転駆動される出力部材とを備えるアクチュエータにおいて、前記ケースに突設されたストッパと、前記出力部材に突設され、前記ストッパに当接して前記出力部材を所定の初期位置に回動規制する係合突部と、前記ケースに収容され、一側の脚部である第1脚部が前記ケースに係止され、他側の脚部である第2脚部が前記ストッパよりもその突出方向の外側で前記係合突部に係止され、該係合突部が前記ストッパに当接する側に前記出力部材を回動付勢するトーションコイルスプリングとを備えることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記電動モータの駆動力から解放された前記出力部材は、前記トーションコイルスプリングによりその両脚部(第1及び第2脚部)がそれぞれ前記ケース及び前記係合突部に係止されることで、該係合突部が前記ストッパに当接する側、即ち前記所定の初期位置に復帰するように回動付勢されている。一方、前記出力部材は、前記電動モータの駆動力により前記トーションコイルスプリングの付勢力に抗して前記係合突部が前記ストッパから離隔する所定方向に回動することで、所要の動作を行う。
【0011】
ここで、前記係合突部は、前記出力部材を前記所定の初期位置に回動規制するために前記ストッパに当接させる部位であり、且つ、前記トーションコイルスプリングの前記第2脚部に係止させる部位でもある。従って、前記出力部材は、前記トーションコイルスプリングを介在させて前記ケースに組み付けることになる。この場合、まず、前記トーションコイルスプリングの前記第1脚部を前記ケースに係止させた状態で前記トーションコイルスプリングを前記ケースに仮組みする。このとき、前記トーションコイルスプリングは、弾性復帰状態(自由状態)で前記ケースに収容されており、前記第2脚部は、前記ストッパよりもその突出方向の外側に配置されている。続いて、例えば前記ストッパから外側への前記第2脚部の突出分の係合代で該第2脚部を前記係合突部に係止させ、前記係合突部が前記ストッパを乗り越える回動位置(所定の初期位置に相当する回動位置)まで、前記トーションコイルスプリングの付勢力に抗して前記出力部材を回動させる。そして、この状態で、前記出力部材を前記ケースに向かう軸方向に移動させると、前記第2脚部及び前記係合突部の係合代を増加しつつ該係合突部が周方向で前記ストッパに当接する。そして、前記出力部材は、前記トーションコイルスプリングを介在させた状態で前記所定の初期位置に配置され、前記ケースへの前記出力部材の組付けが完了する。このように、前記出力部材の前記ケースへの組付けを円滑に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータにおいて、前記ストッパは、前記出力部材は、前記電動モータの駆動力により前記トーションコイルスプリングの付勢力に抗して回動する際、周方向における反対側から前記係合突部を当接させて前記出力部材を所定の最大回動位置に回動規制する最大回動位置ストッパとして兼用されてなることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記ストッパを、前記最大回動位置ストッパとして兼用することで、例えばこれらを個別に設ける場合に比べて、前記ケースをより簡素な形状にできる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアクチュエータにおいて、前記ストッパの突出方向における先端側の端面である第1端面は、前記トーションコイルスプリングともども前記出力部材を前記所定の初期位置に組み付ける際に、前記係合突部の突出方向における先端側の端面である第2端面を当接させて当該組み付けを案内することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記出力部材等を前記所定の初期位置に組み付ける際、前記第1端面は、前記第2端面を当接させて当該組み付けを案内するため、前記出力部材及び前記トーションコイルスプリングの組付性を向上することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアクチュエータにおいて、前記第1端面は、前記出力部材の回転軸を中心とした円弧形状であることを要旨とする。
同構成によれば、前記第1端面は、前記出力部材の回転軸を中心とした円弧形状であるため、該出力部材を回転させて組み付ければ、前記第2端面を前記第1端面に必ず当接させることができる。そのため、前記出力部材及び前記トーションコイルスプリングの組付性をより好適にすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、前記ストッパが前記出力部材を前記所定の最大回動位置に回動規制する際、前記第2脚部は、前記ストッパよりもその突出方向の外側で前記係合突部に係止されていることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記ストッパが前記出力部材を前記所定の最大回動位置に回動規制する際、前記第2脚部が周方向で前記ストッパ及び前記係合突部間に挟まることを抑制でき、前記第2脚部の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、精度を損ねることなく組付性を向上することができるアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1のウォームホイールを外した平面図。
【図3】同実施形態の車両ドアの開可能状態での平面図。
【図4】図3のウォームホイールを外した平面図。
【図5】(a)〜(c)は、同実施形態の組付態様を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図5を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るアクチュエータは、自動車などの車両ドア(図示略)に搭載されるリリース装置に適用されるもので、その筐体をなす樹脂材からなる箱状のケース11には、図示右側で電動モータ12が収容されている。この電動モータ12の図示左右方向に軸心の延びる回転軸12aは、ケース11の中央部でこれに軸支されており、回転軸12aにはウォーム13が固着されている。
【0021】
ケース11には、ウォーム13の図示上側で底面から支持部14が突設されている。図2に示すように、この支持部14は、円環状の段差14aを介して先端側の縮径された段付き円筒形状を呈しており、図1に示すように、支持部14には、段差14aに載置される態様でその先端部14bにウォームホイール15が回転自在に支持されている。すなわち、ウォームホイール15は、その中心部に円筒状の軸部15aを有しており、該軸部15aに先端部14bが挿入されることでこれに回転自在に支持されている。このウォームホイール15は、ウォーム13と噛合しており、該ウォーム13(回転軸12a)の回転に連動して支持部14周りに回転する。ウォームホイール15は、ウォーム13と共にウォームギヤを構成する。なお、ウォームホイール15には、軸部15aから図示反時計回転方向に向かうに従い、径方向外側に向かう略渦巻き状のカム部15bが形成されている。
【0022】
また、ケース11には、図2に示すように、支持部14の外周側となる図示下側で該支持部14と同心で底面から部分円筒状(円弧壁状)のストッパ31が突設されている。ストッパ31の突出方向における先端側の端面である第1端面31cは、支持部14の中心(ウォームホイール15の回転軸)を中心とした円弧形状である。一方、ウォームホイール15には、その底面からケース11の底面に向かう側(図2において紙面に直交する奥側)に、略扁平円柱状の係合突部32が突設されている。係合突部32の突出方向における先端側の端面である第2端面32a(図5参照)は、略扁平円形状である。ストッパ31は、支持部14周りのウォームホイール15の回転に際し、係合突部32の回動軌跡を遮るように配置されている。従って、支持部14周りのウォームホイール15の回動範囲は、係合突部32がストッパ31の図示左側の端面31aに当接する所定の回動位置(以下、「初期位置Ps」ともいう)から、図4に示すように、係合突部32がストッパ31の図示右側(反対側)の端面31bに当接する所定の回動位置(以下、「最大回動位置Pm」ともいう)までに規制されている。
【0023】
さらに、ケース11には、ストッパ31の内周側となる支持部14周りに、トーションコイルスプリング33が収容されている。図5(a)〜(c)に示すように、このトーションコイルスプリング33は、支持部14の基端側から先端側に向かって時計回転方向に巻回されてなる、該支持部14と略同心のコイル部33aを有するとともに、該コイル部33aに繋がる支持部14の基端側の端末を折り返してなる第1脚部33bを有し、更にコイル部33aに繋がる支持部14の基端側の端末を折り返してなる第2脚部33cを有する。なお、コイル部33aの先端は、ストッパ31よりもその突出方向(支持部14の軸線方向)の外側に配置されており、従って、第2脚部33cも、ストッパ31よりもその突出方向の外側に配置されている。
【0024】
そして、第1脚部33bは、ストッパ31の端面31bに係止されている。一方、第2脚部33cは、トーションコイルスプリング33の弾性復帰状態(自由状態)で端面31b近傍に配置されるととともに、該端面31bから端面31a近傍までその付勢力に抗して図示時計回転方向に回動した状態でウォームホイール15の係合突部32に係止されている。これにより、ウォームホイール15は、係合突部32がストッパ31の端面31aに当接する側である図示反時計回転方向、即ち初期位置Psに回動付勢されている。従って、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33の付勢力に抗して図示時計回転方向に回転することで、係合突部32がストッパ31の端面31bに当接する最大回動位置Pmへと移動する。
【0025】
つまり、係合突部32は、ウォームホイール15を初期位置Ps又は最大回動位置Pmに回動規制するためにストッパ31に当接させる部位であり、且つ、トーションコイルスプリング33の第2脚部33cに係止させる部位でもある。なお、トーションコイルスプリング33の第2脚部33cは、ストッパ31よりもその突出方向の外側で係合突部32に係止されているため、初期位置Ps及び最大回動位置Pmのいずれにおいてもウォームホイール15の係合突部32とストッパ31との間に挟まれることはない。
【0026】
ケース11には、回転軸12aの図示左側で底面から段付き円筒形状の支持部16が突設されており、該支持部16には、略T字状のリリースレバー17が回転自在に支持されている。このリリースレバー17は、支持部16からウォームホイール15に向かう径方向に延出して軸部15a等に外接可能な入力アーム17aを有するとともに、支持部16から図示下方に向かう径方向に延出して先端部をケース11の外側に露出する出力アーム17bを有する。そして、図1に示すように、ウォームホイール15が初期位置Psにあるとき、入力アーム17aは軸部15aに外接している。また、例えばウォームホイール15が初期位置Psからトーションコイルスプリング33の付勢力に抗して図示時計回転方向に回転すると、リリースレバー17は、入力アーム17aがカム部15bに案内されることで、これに連動して図示時計回転方向に回動する。そして、図3に示すように、ウォームホイール15が最大回動位置Pmに達するまで、これに連動して図示時計回転方向に回動する。
【0027】
車両ドアには、図1に示すように、適宜のブラケットを介してラッチ機構21が設置されている。このラッチ機構21は、互いに平行な軸心周りにブラケットに回動自在に連結されたラッチ22及びポール23を備えており、車両ボディ(図示略)に固着されたストライカ20と係脱可能となっている。すなわち、車両ドアを閉操作する際にストライカ20に押圧されるラッチ22が回動してストライカ20と係合し、同時にポール23がラッチ22を回り止めすることで車両ドアを閉状態で保持する。また、図3に示すように、電動モータ12の駆動力でウォームホイール15を回転駆動し、これに連動するリリースレバー17の出力アーム17bでポール23のフランジ状の係合片23aを押圧すると、ポール23が回動してラッチ22の回り止めを解除する。これにより、ラッチ22はラッチ復帰スプリング(図示略)に付勢されて戻り回動し、ストライカ20との係合状態を解除して車両ドアを開可能状態にする。このとき、ラッチ22は、車両ドアの閉操作時にストライカ20と係合可能な姿勢となっている。なお、電動モータ12の駆動力から解放されると、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33に付勢されて初期位置Psまで戻り回動する。これに伴い、係合片23aにおけるリリースレバー17の押圧力から解放されるポール23は、ポール復帰スプリング(図示略)に付勢されて図1に示す回動位置まで戻り回動する。一方、ポール23の戻り回動に伴い係合片23aに出力アーム17bが押圧され、カム部15bに入力アーム17aが係合されるリリースレバー17は、これらに連動して図1に示す回動位置まで戻り回動する。
【0028】
次に、本実施形態の組付態様について説明する。
図5(a)に示すように、まず、ケース11の支持部14周りとなるストッパ31の内周側で、弾性復帰状態(自由状態)にあるトーションコイルスプリング33のコイル部33aを同軸上に配置・収容し、第1脚部33bをストッパ31の端面31bに係止する。このとき、トーションコイルスプリング33のコイル部33a先端は、ストッパ31よりもその突出方向の外側に配置されており、第2脚部33cは、ストッパ31の端面31b近傍でストッパ31よりもその突出方向の外側に配置されている。
【0029】
続いて、図5(b)に示すように、ケース11の先端部14bにウォームホイール15の軸部15aを挿入しつつ、ストッパ31から外側への第2脚部33cの突出分の係合代で該第2脚部33cにウォームホイール15の係合突部32を概略係止する。このとき、係合突部32の第2端面32aは、ストッパ31の第1端面31cに当接する。
【0030】
この状態で、トーションコイルスプリング33の付勢力に抗してウォームホイール15を先端部14b周りに図示時計回転方向に回動させる。このとき、ストッパ31の第1端面31cは、係合突部32の第2端面32aを当接させて当該組み付けを案内する。そして、ストッパ31上(第1端面31c)を摺動する係合突部32がストッパ31を乗り越える回動位置、即ち初期位置Psに相当する回動位置までウォームホイール15が回動すると、ウォームホイール15を軸方向に移動させて、該ウォームホイール15の軸部15aをケース11の先端部14bに更に挿入しつつ、ウォームホイール15を段差14aに載置する。このとき、図5(c)に示すように、第2脚部33c及び係合突部32の係合代を増加させる態様で該係合突部32が周方向でストッパ31の端面31aに当接する。そして、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33を介在させた状態で初期位置Psに配置され、ケース11に対するウォームホイール15の組付けが完了する。
【0031】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、図1に示すように、ストライカ20及びラッチ機構21が係合して車両ドアが閉状態で保持されており、電動モータ12の駆動力から解放されているウォームホイール15が初期位置Psに配置されているものとする。この状態で、電動モータ12に回転駆動されるウォームホイール15がトーションコイルスプリング33の付勢力に抗して図示時計回転方向に回転し、これに連動するリリースレバー17が図示時計回転方向に回動すると、図3に示すように、出力アーム17bがポール23の係合片23aを押圧することで、ポール23が回動してラッチ22の回り止めを解除する。これにより、ラッチ22はラッチ復帰スプリング(図示略)に付勢されて戻り回動し、ストライカ20との係合状態を解除して車両ドアを開可能状態にする。このとき、ウォームホイール15は、係合突部32がストッパ31の端面31bに当接することでその回転が係止され、最大回動位置Pmに配置される。
【0032】
その後、電動モータ12の駆動力から解放されると、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33に付勢されて図示反時計回転方向に戻り回転する。このとき、ウォームホイール15は、係合突部32がストッパ31の端面31bに当接することでその回転が係止され、初期位置Psに配置される。これに伴い、リリースレバー17の押圧力から解放されるポール23は、ポール復帰スプリング(図示略)に付勢されて図1に示す回動位置まで戻り回動する。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33を介在させてケース11に組み付けることになる。この場合、まず、トーションコイルスプリング33の第1脚部33bをケース11(端面31b)に係止させた状態でトーションコイルスプリング33をケース11に仮組みする。このとき、トーションコイルスプリング33は、弾性復帰状態(自由状態)でケース11に収容されており、第2脚部33cは、ストッパ31よりもその突出方向の外側に配置されている。続いて、ストッパ31から外側への第2脚部33cの突出分の係合代で該第2脚部33cを係合突部32に係止させ、係合突部32がストッパ31を乗り越える回動位置(初期位置Psに相当する回動位置)まで、トーションコイルスプリング33の付勢力に抗してウォームホイール15を回動させる。そして、この状態で、ウォームホイール15をケース11の底面に向かう軸方向に移動させると、第2脚部33c及び係合突部32の係合代を増加しつつ該係合突部32が周方向でストッパ31(端面31a)に当接する。そして、ウォームホイール15は、トーションコイルスプリング33を介在させた状態で初期位置Psに配置され、ケース11へのウォームホイール15の組付けが完了する。このように、ウォームホイール15のケース11への組付けを円滑に行うことができる。そして、ウォームホイール15等の組付作業を容易にするために、部材間に徒に間隙を設定する必要がないため、がたつきやこれに起因する異音の発生を抑えることができる。
【0034】
(2)本実施形態では、ストッパ31を、ウォームホイール15を所定の最大回動位置Pmに回動規制する最大回動位置ストッパとして兼用することで、例えばこれらを個別に設ける場合に比べて、ケース11をより簡素な形状にできる。
【0035】
(3)本実施形態では、ストッパ31がウォームホイール15を最大回動位置Pmに回動規制する際、第2脚部33cは、ストッパ31よりもその突出方向の外側で係合突部32に係止されている。従って、ストッパ31がウォームホイール15を最大回動位置Pmに回動規制する際、第2脚部33cが周方向でストッパ31及び係合突部32間に挟まることを抑制でき、第2脚部33cの劣化を抑制することができる。
【0036】
(4)本実施形態では、ケース11のストッパ31でウォームホイール15(係合突部32)を回動規制する極めて簡易なストッパ構造を採用することができる。
(5)本実施形態では、トーションコイルスプリング33ともどもウォームホイール15を初期位置Psに組み付ける際に、ストッパ31の第1端面31cは、係合突部32の第2端面32aを当接させて当該組み付けを案内するため、ウォームホイール15及び前記トーションコイルスプリング33の組付性を向上することができる。
【0037】
(6)本実施形態では、ストッパ31の第1端面31cは、ウォームホイール15の回転軸を中心とした円弧形状であるため、該ウォームホイール15を回転させて組み付ければ、第2端面32aを第1端面31cに必ず当接させることができる。そのため、ウォームホイール15及び前記トーションコイルスプリング33の組付性をより好適にすることができる。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、ストッパ31は、初期位置Psにのみウォームホイール15を回動規制するものであってもよい。この場合、ケース11の適宜位置に、ウォームホイール15を最大回動位置Pmに回動規制する最大回動位置ストッパを別設してもよい。また、初期位置Psにのみウォームホイール15を回動規制するストッパ31は、第2脚部33cから周方向に離隔するように当該方向に縮小されていてもよい。この場合、トーションコイルスプリング33の弾性復帰状態(自由状態)では、ストッパ31から外側への第2脚部33cの突出分の係合代で該第2脚部33cを係合突部32に係止させた際に、該係合突部32を摺動し得る壁部(ストッパ31)が存在しない。
【0039】
・前記実施形態において、トーションコイルスプリング33の第1脚部33bは、ストッパ31の端面31b以外のケース11の適宜位置に係止されていてもよい。
・前記実施形態において、第2脚部33cがストッパ31よりもその突出方向の外側に配置されているのであれば、ウォームホイール15の組付け後にトーションコイルスプリング33のコイル部33aが軸方向に圧縮されていてもよい。
【0040】
・前記実施形態において、ストッパ31の第1端面31c及び係合突部32の第2端面32aの各々は、突出方向におけるいわゆる先端面に限定されるものではない。例えばストッパ31又は係合突部32の先端部に形成した段差面などであってもよい。
【0041】
・前記実施形態において、出力部材は、ウォームギヤを構成するウォームホイール15に限定されるものではなく、電動モータ12に駆動される適宜のギヤやレバーなどであってもよい。
【0042】
・本発明は、車両ドアを閉状態で保持すべくラッチ機構21を駆動するクローザ装置に適用してもよい。あるいは、電動モータの駆動力によりトーションコイルスプリングの付勢力に抗して出力部材を回転させて所要の動作を行う適宜の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
11…ケース、12…電動モータ、15…ウォームホイール(出力部材)、31…ストッパ(最大回動位置ストッパ)、31c…第1端面、32…係合突部、32a…第2端面、33…トーションコイルスプリング、33b…第1脚部、33c…第2脚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体をなすケースと、該ケースに回動自在に収容され電動モータにより回転駆動される出力部材とを備えるアクチュエータにおいて、
前記ケースに突設されたストッパと、
前記出力部材に突設され、前記ストッパに当接して前記出力部材を所定の初期位置に回動規制する係合突部と、
前記ケースに収容され、一側の脚部である第1脚部が前記ケースに係止され、他側の脚部である第2脚部が前記ストッパよりもその突出方向の外側で前記係合突部に係止され、該係合突部が前記ストッパに当接する側に前記出力部材を回動付勢するトーションコイルスプリングとを備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記ストッパは、前記出力部材は、前記電動モータの駆動力により前記トーションコイルスプリングの付勢力に抗して回動する際、周方向における反対側から前記係合突部を当接させて前記出力部材を所定の最大回動位置に回動規制する最大回動位置ストッパとして兼用されてなることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクチュエータにおいて、
前記ストッパの突出方向における先端側の端面である第1端面は、前記トーションコイルスプリングともども前記出力部材を前記所定の初期位置に組み付ける際に、前記係合突部の突出方向における先端側の端面である第2端面を当接させて当該組み付けを案内することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータにおいて、
前記第1端面は、前記出力部材の回転軸を中心とした円弧形状であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記ストッパが前記出力部材を前記所定の最大回動位置に回動規制する際、前記第2脚部は、前記ストッパよりもその突出方向の外側で前記係合突部に係止されていることを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−219510(P2012−219510A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86474(P2011−86474)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】