アクティブフェーズドアレイアンテナ装置
【課題】 二次監視レーダにおいて、効果的にサイドローブを抑圧することができる円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナ装置を得る。
【解決手段】 円筒状に配置された複数のアンテナ素子1-1〜1-48と、これらアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべくこれらアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュール101〜148 と、アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、アンテナ素子の全数を用いて第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、制御手段は、第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する送受信モジュールを介して第一のビーム形成用の信号を供給し、第二のビーム形成用の信号をアンテナ素子の全数へ対応する送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性とする。
【解決手段】 円筒状に配置された複数のアンテナ素子1-1〜1-48と、これらアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべくこれらアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュール101〜148 と、アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、アンテナ素子の全数を用いて第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、制御手段は、第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する送受信モジュールを介して第一のビーム形成用の信号を供給し、第二のビーム形成用の信号をアンテナ素子の全数へ対応する送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブフェーズドアレイアンテナ装置に関し、特にレーダなどに使用されるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される二次監視レーダにおいては、指向性を持った第一のビームの他に、この第一のビームのサイドローブを抑圧するための無指向性の第二のビームが必要である。本発明に関連する円筒状のアクティブフェーズドアレイアンテナを用いた二次監視レーダにおいては、円筒状に配置したアレイアンテナにより第一のビームを形成し、第二のビーム形成は、別に無指向性アンテナを配置して実現している。
【0003】
しかし、この方式では、第一のビームを形成するアンテナと第二のビームを形成するアンテナとの上下位置が異なり、地面や海面等に対する反射によるロービングに差が生じてしまう。そのために、仰角によっては、無指向性アンテナで形成される第二のビームの利得が第一のビームのサイドローブレベルより低くなり、サイドローブ抑圧効果が低下する問題がある。
【0004】
円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおける上述したロービング差の問題を解決するために、特許文献1に開示のアンテナ装置が提案されている。このアンテナ装置では、円筒状にアンテナ素子が配置されたアレイアンテナにおいて、第一のビームを形成する1部のアンテナ素子以外の等間隔の3素子を用いて、無指向性の第二のビームを形成するものである。これは、第一のビームとサイドローブ抑圧用の第二のビームとが同じ円筒状アンテナで形成されることにより、両者の上下位置が同一になるために、ロービングの差がなくなり、サイドローブ抑圧性能を向上させる効果がある。
【0005】
図8に、この特許文献1に開示のアンテナ装置の構成を示す。送受信部86から送信される電力を、分岐結合器86Aにおいて、第一の電力分配器84と第二の電力分配器85とにそれぞれ分配し、スイッチマトリク83とスイッチ回路82とによって、アンテナ素子1−1〜1−48のなかから、使用するアンテナ素子を選択して、この選択されたアンテナ素子から電波を放射する電子走査アンテナ装置である。
【0006】
ここで、第一の電力分配器84は、指向性を持った第一のビーム形成用の分配器であり、第二の電力分配器85は、サイドローブ抑圧用の第二のビームを形成するための分配器である。第二の電力分配器85で分配される電力は、スイッチ回路82によって、等間隔の3素子のアンテナ素子に供給され、これにより、サイドローブ抑圧用パターン、すなわち無指向性の放射パターンを形成している。
【0007】
各ビームの電力は、放射パターンの指向性利得Gd と送信電力Pt とによって決まる。サイドローブ抑圧用パターンは、無指向性の放射パターンになるため第一のビームに対して指向性利得Gd は小さくなり、サイドローブを抑圧できるレベルに達しない場合がある。しかし、分岐結合器86Aの分配比を適当な値に設定して第二のビームの送信電力Pt を大きくすることにより、サイドローブより大きな電力レベルにすることが可能になる。
【0008】
図9は、この場合における放射パターン特性を示すが、3素子で形成された無指向性のパターンが、サイドローブを抑圧していることが示されている。
【0009】
しかしながら、図8に示した構成からも分かるように、この装置は、集中給電型のパッシブ方式のフェーズドアレイアンテナであり、各アンテナ素子に送受信モジュールを備えたアクティブフェーズドアレイアンテナには適さない。アクティブフェーズドアレイアンテナの各送受信モジュールは、等しい電力を出力するため、使用するアンテナ素子の数(送受信モジュールの数)がそのまま送信電力Pt の電力比になってしまうため、サイドローブ抑圧用ビームの電力レベルを大きくすることができない。
【0010】
例えば、第一のビームを16個のアンテナ素子で形成し、サイドローブ抑圧用の第二のビームを3個のアンテナ素子で形成する場合、3/16となってサイドローブ抑圧ビームの送信電力Pt はメインビームに比べて約−7dB低くなってしまう。よって、無指向性ビームはサイドローブを抑圧できるレベルに達しないという問題が生じてしまう。
【0011】
第一のビームを形成するために使用するアンテナ素子の数にもよるが、例えば、本例の様に、第一のビームを16個のアンテナ素子で形成する場合は、第一のビームの送信電力Pt と、サイドローブ抑圧ビームである第二のビームの送信電力Pt とはほぼ等しい値に設定する必要がある。
【0012】
また、他の本発明に関連する技術として、円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおける前述のロービング差の問題を解決し、第一のビームの利得が高い場合でも、効果的にサイドローブを抑圧する手段として、特許文献2に開示の技術がある。
【0013】
この技術では、円筒状に配置されたアンテナ素子の全素子に対して、図10に示す様に振幅にウエイトを付けることによって、指向性を持った第二のビーム(略無指向性パターン)を形成し、図11に示す様に第一のビームのサイドローブを抑圧するというものである。
【0014】
しかしながら、この技術においても、集中給電型のパッシブ方式のフェーズドアレイアンテナであり、アンテナ素子に一対一で送受信モジュールを備えたアクティブフェーズドアレイアンテナには適さない。本発明が対象とするアクティブフェーズドアレイアンテナでは、上述した様に、アンテナ素子に一対一対応で送受信モジュールを備える構成であるので、個々のアンテナ素子への給電は独立したものとなっている。
【0015】
そのために、このパッシブフェーズドアレイアンテナの技術を、本発明が対象とするアクティブフェーズドアレイアンテナに適用すると、各送受信モジュールに設けられている可変減衰器により、各アンテナ素子の給電ウェイトを調整することになるが、この場合、送受信電力が当該減衰器によって低下してしまうという問題が生じる。一方、特許文献2におけるパッシブフェーズドアレイアンテナでは、減衰器ではなく、分配比を調整するだけであるので、全体の送受信電力は低下しないことになる。このように、アクティブ型とパッシブ型とでは相違することになる。
【0016】
また、アクティブ型では、送受信モジュールが独立しているので、第一のビームを複数形成して同時に放射することも可能である。この場合、全周に亘って一定利得を保った無指向性のパターンが必要になってくるが、特許文献2の技術のような指向性(略無指向性)を持った第二のビームでは、複数のビームのサイドローブの抑圧はできないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2580822号公報
【特許文献2】特開平3−143104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
第一の問題点は、円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおいて、無指向性アンテナを別に配置すると、アンテナの上下位置の差から指向性を持った第一のビームと、第一のビームのサイドローブを抑圧するための第二のビームとのロービングの差が生じ、サイドローブ抑圧効果が低下することである。
【0019】
第二の問題は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、第一のビームを形成するアンテナ素子以外の等間隔の3素子で無指向性の第二のビームを形成しても、第二のビームの送信電力が足りないためにサイドローブが抑圧できないということである。
【0020】
第三の問題点は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、ウェイトを付けた全アンテナ素子を使用して第二のビームを形成する場合、送受信モジュールの減衰器によって第二のビームの送信電力が低下し、効果的にサイドローブを抑圧できないということである。
【0021】
第四の問題点は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、第一のビームを複数同時に形成する場合、ウェイトを付けた全アンテナ素子を使用して第二のビームを形成しても、全周に亘り第一のビームのサイドローブを抑圧できないということである。
【0022】
本発明の目的は、二次監視レーダにおいて、効果的にサイドローブを抑圧することができる円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置は、
円筒状に配置された複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべく、前記複数のアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュールと、
前記アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、前記アンテナ素子の全数を用いて前記第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する前記送受信モジュールを介して前記第一のビーム形成用の信号を供給するよう制御し、
また、前記第二のビーム形成用の信号を前記アンテナ素子の全数へ対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、指向性を持った第一のビームとサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームとを、同一の円筒状アンテナで形成することにより、各ビームの上下位置が同一になるために、ロービングの差がなくなり、よってサイドローブ抑圧性能を向上させるという効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、円筒状に配置された全アンテナ素子または等間隔に間引いたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射することにより、無指向性の放射パターンを形成するようにしたので、サイドローブ抑圧ビームの送信電力も確保でき、効果的にサイドローブを抑圧できるという効果がある。
【0026】
更にはまた、本発明によれば、円筒状に配置された等間隔に間引かれたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射し、無指向性の放射パターンを形成することにより、サイドローブ抑圧と共に消費電力の低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】図1のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置における送受信モジュールの構成を示す図である。
【図3】図1のアクティブフェーズアレイアンテナ装置において、第一のビームと第二のビームとの励振アンテナ素子と電波放射方向とを示す図である。
【図4】図3による第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図5】本発明に関連するアレイアンテナ装置を用いた場合の第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置における第二のビームの励振アンテナ素子と電波放射方向を示す図である。
【図7】図6の第一のビームと第二のビームの放射パターンを示す図である。
【図8】本発明に関連する円筒状フェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図9】図9の装置における第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図10】本発明に関連する他の円筒状フェーズドアレイアンテナ装置において、ビーム形成時の全素子に与えるウェイトを示す図である。
【図11】図10に示したウェイトでの第一のビームと第二のビームの放射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図であり、本例では、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナ1において、アンテナ素子として48素子1−1〜1−48を例としたものである。
【0029】
これら各アンテナ素子には、送受信信号の電力増幅及び位相制御を行うための送受信モジュール101〜148が1対1で接続されている。また、送受信モジュール101〜148には、本発明を実現するための第一のビームと第二のビームとのそれぞれの信号を分離するための分配器101−12〜148−12が具備されている。
【0030】
第一のビームの信号系統は分配器2に接続されており、分配器2では、円筒上の120度分の開口、すなわち全素子数の1/3の数のアンテナ素子を使って第一のビームを形成するように、選択するアンテナ素子を切替える機能を有している。ビーム合成器3は、分配器2で選択されたアンテナ素子への送受信信号の分配及び合成を行っている。送受信部5はビーム合成器3に接続され、第一のビームの送受信信号の送信及び受信を行っている。
【0031】
一方、第二のビームの信号系統はビーム合成器4に接続されており、ビーム合成器4では、全アンテナ素子への送受信信号の分配及び合成を行っている。送受信部6はビーム合成器4に接続され、第二のビームの送受信信号の送信及び受信を行っている。制御器7は、分配器2のアンテナ素子選択のためのスイッチ切替制御及び送受信モジュール101〜148の移相器、切替スイッチ、電力増幅器などの制御を行っている。
【0032】
図2は、図1で示した送受信モジュール101〜148の内部系統図の例である。送受信モジュールは、第一のビームの位相制御のための移相器11と、第一のビームと第二のビームとの信号を分けるための分配器12と、送信と受信を切替えるための切替スイッチ13と、送信信号を増幅する電力増幅器14と、ビーム形成のための振幅ウエイト制御のためのATT(可変減衰器)15と、送信信号と受信信号を分離するサーキュレータ16と、過電力保護のためのリミッタ17と、受信信号を増幅するための低雑音増幅器18と、ビーム形成のための振幅ウエイト制御のためのATT19によって構成されている。
【0033】
次に、図1に示した本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の動作について、図1,2及び3を用いて説明する。
【0034】
第一のビームについては、第一のビーム用の送受信部5から送信信号が出力され、ビーム合成器3により全素子数の1/3に分配される。1/3に分配された信号は、分配器2により、円筒状に配置されたどのアンテナ素子に給電を行うかが選択される。そして、これら選択されたアンテナ素子に接続された送受信モジュールへ信号が供給される。
【0035】
供給された送信信号は、送受信モジュールの移相器11で位相制御された後、分配器12及び切替スイッチ13を経て電力増幅器14にて電力増幅される。電力増幅された信号は、ATT15にて所望の振幅値に制御されてサーキュレータ16を通ってアンテナ素子に給電される。
【0036】
ATT15は、低サイドローブ化のために、各アンテナ素子へ給電される振幅ウエイトを制御するためのものであるが、例えば、シニング(間引き)技術などを用いて低サイドローブ化を図る場合には、ATT15を削除することも可能である。
【0037】
受信時には、アンテナ素子から受信した信号が、サーキュレータ16からリミッタ17を経て低雑音増幅器18で増幅される。増幅された信号は、ATT19によって振幅ウエイトの制御がされるが、前述したと同様に削除することも可能である。なお、切替スイッチ13からの信号の流れは、送信時の逆の経路なので説明を省略する。
【0038】
図3(a)に、第一のビーム形成のためにアンテナ素子1−1〜1−17の全素子数の1/3が選択された例を示す。この場合、選択された各アンテナ素子からの電波放射は、図の矢印に示す電波放射方向に位相が揃うように送受信モジュールで位相制御されて第一のビームが形成される。
【0039】
次に、第二のビームについては、第二のビーム用の送受信部6から送信信号が出力され、ビーム合成器4により全送受信モジュールに送信信号が分配される。送受信モジュールに供給された送信信号は、分配器12から切替スイッチ13を通って電力増幅器14にて電力増幅され、ATT15及びサーキュレータ16を通ってアンテナ素子に給電される。但し、第二のビームについては、各アンテナ素子からの出力を等振幅、等位相にするためATT15での振幅制御は行わない。
【0040】
受信時には、アンテナ素子から受信した信号がサーキュレータ16からリミッタ17を経て、低雑音増幅器18で増幅された信号がATT19、切替スイッチ13及び分配器12を経て、ビーム合成器4へ送られる。受信時にも、等振幅にするために、ATT19での振幅制御は行わない。以下、送信時の逆経路となる。
【0041】
図3(b)に、第二のビーム形成としてアンテナ素子1−1〜1−48の全素子が選択された例を示す。この時、全アンテナ素子に与える振幅、位相を等振幅、等位相にすることにより、すなわち、振幅制御、位相制御をしないことにより、図の矢印で示すように、全方向に電波が放射され、無指向性のパターンが形成される。また、振幅制御をしないために、送信電力の低下も生じない。図4に、前述の動作で形成される第一のビームと第二のビームとの放射パターンの例を示している。
【0042】
図5には、比較のために、特許文献1に開示の方式を本アクティブフェーズドアレイアンテナに適用した場合の放射パターン例を示す。特許文献1の方式では、第二のビームが第一のビームのサイドローブを抑圧できないが、本発明においては、図4に示す様に、第二のビームが第一のビームのサイドローブを全周に亘って抑圧できる様になる。ここで、本放射パターンの計算においては、製造等で発生する適当な誤差を与えている。
【0043】
以上説明したように、本発明による円筒状にアンテナ素子を配置したアクティブフェーズドアレイアンテナ装置は、第一のビームのサイドローブを第二のビームで効果的に抑圧でき、また、第一のビームと第二のビームとの上下位置が同じであるために、ロービングの差が低減できることになる。
【0044】
本例では、アンテナ素子が48素子のアレイアンテナを例にとっているが、アンテナ素子数は任意である。また、第一のビーム形成は全アンテナ素子数の1/3(120度分の開口)としたが、例えば、1/4(90度開口)など、任意に設定できることは明白である。
【0045】
なお、分配器12は、第一のビームの信号と第二のビームの信号とを分ける機能を持つが、切替スイッチなどを用いて構成することも可能である。また、第一のビームは一つの場合を例にとったが、例えば、一つのビームを全アンテナ素子の1/3(120度分の開口)で形成し、残りの2/3のアンテナ素子を用いて複数のビームを同時に形成することも可能である。
【0046】
図6は本発明の他の実施の形態を示す図である。円筒状のアレイアンテナにおいて全アンテナ素子を用いて無指向性の放射パターンを形成する場合、アンテナ素子の間隔が離れると、放射パターンにリップルが生じる。しかしながら、例えば、図6に示すように、アンテナ素子を1個おきに間引いた場合でも(白丸が間引いたアンテナ素子を示す)、図7の第二のビームの放射パターンのように、第一のビームのサイドローブを抑圧できる。
【0047】
従って、第一のビームのサイドローブレベル及び送信電力と、第二のビームの放射パターンのリップル及び送信電力との関係から、第二のビーム形成に必要なアンテナ素子への給電を減らすことが可能である。
【0048】
以上の様に、本発明は、第二のビーム形成において、円筒状の全アンテナ素子を励振せずに、第一のビームと第二のビームとが所望の性能を満足できる等間隔に間引いた状態で動作させる場合も含まれる。
【0049】
以上述べたように、本発明では、指向性を持った第一のビームとサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームとが同一の円筒状アンテナで形成されることにより、各ビームの上下位置が同一になるためロービングの差がなくなり、サイドローブ抑圧性能が向上する。
【0050】
また、円筒状に配置された全アンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射することにより、無指向性の放射パターンを形成するため、サイドローブ抑圧ビームの送信電力も確保でき、効果的にサイドローブを抑圧できる。
【0051】
更にはまた、円筒状に配置された等間隔に間引かれたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射し、無指向性の放射パターンを形成することにより、サイドローブ抑圧と共に消費電力の低減が図れることになる。
【符号の説明】
【0052】
1 アンテナ
1−1〜1−48 アンテナ素子
2 分配器
3,4 ビーム合成器
5,6 送受信部
7 制御部
101〜148 送受信モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブフェーズドアレイアンテナ装置に関し、特にレーダなどに使用されるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される二次監視レーダにおいては、指向性を持った第一のビームの他に、この第一のビームのサイドローブを抑圧するための無指向性の第二のビームが必要である。本発明に関連する円筒状のアクティブフェーズドアレイアンテナを用いた二次監視レーダにおいては、円筒状に配置したアレイアンテナにより第一のビームを形成し、第二のビーム形成は、別に無指向性アンテナを配置して実現している。
【0003】
しかし、この方式では、第一のビームを形成するアンテナと第二のビームを形成するアンテナとの上下位置が異なり、地面や海面等に対する反射によるロービングに差が生じてしまう。そのために、仰角によっては、無指向性アンテナで形成される第二のビームの利得が第一のビームのサイドローブレベルより低くなり、サイドローブ抑圧効果が低下する問題がある。
【0004】
円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおける上述したロービング差の問題を解決するために、特許文献1に開示のアンテナ装置が提案されている。このアンテナ装置では、円筒状にアンテナ素子が配置されたアレイアンテナにおいて、第一のビームを形成する1部のアンテナ素子以外の等間隔の3素子を用いて、無指向性の第二のビームを形成するものである。これは、第一のビームとサイドローブ抑圧用の第二のビームとが同じ円筒状アンテナで形成されることにより、両者の上下位置が同一になるために、ロービングの差がなくなり、サイドローブ抑圧性能を向上させる効果がある。
【0005】
図8に、この特許文献1に開示のアンテナ装置の構成を示す。送受信部86から送信される電力を、分岐結合器86Aにおいて、第一の電力分配器84と第二の電力分配器85とにそれぞれ分配し、スイッチマトリク83とスイッチ回路82とによって、アンテナ素子1−1〜1−48のなかから、使用するアンテナ素子を選択して、この選択されたアンテナ素子から電波を放射する電子走査アンテナ装置である。
【0006】
ここで、第一の電力分配器84は、指向性を持った第一のビーム形成用の分配器であり、第二の電力分配器85は、サイドローブ抑圧用の第二のビームを形成するための分配器である。第二の電力分配器85で分配される電力は、スイッチ回路82によって、等間隔の3素子のアンテナ素子に供給され、これにより、サイドローブ抑圧用パターン、すなわち無指向性の放射パターンを形成している。
【0007】
各ビームの電力は、放射パターンの指向性利得Gd と送信電力Pt とによって決まる。サイドローブ抑圧用パターンは、無指向性の放射パターンになるため第一のビームに対して指向性利得Gd は小さくなり、サイドローブを抑圧できるレベルに達しない場合がある。しかし、分岐結合器86Aの分配比を適当な値に設定して第二のビームの送信電力Pt を大きくすることにより、サイドローブより大きな電力レベルにすることが可能になる。
【0008】
図9は、この場合における放射パターン特性を示すが、3素子で形成された無指向性のパターンが、サイドローブを抑圧していることが示されている。
【0009】
しかしながら、図8に示した構成からも分かるように、この装置は、集中給電型のパッシブ方式のフェーズドアレイアンテナであり、各アンテナ素子に送受信モジュールを備えたアクティブフェーズドアレイアンテナには適さない。アクティブフェーズドアレイアンテナの各送受信モジュールは、等しい電力を出力するため、使用するアンテナ素子の数(送受信モジュールの数)がそのまま送信電力Pt の電力比になってしまうため、サイドローブ抑圧用ビームの電力レベルを大きくすることができない。
【0010】
例えば、第一のビームを16個のアンテナ素子で形成し、サイドローブ抑圧用の第二のビームを3個のアンテナ素子で形成する場合、3/16となってサイドローブ抑圧ビームの送信電力Pt はメインビームに比べて約−7dB低くなってしまう。よって、無指向性ビームはサイドローブを抑圧できるレベルに達しないという問題が生じてしまう。
【0011】
第一のビームを形成するために使用するアンテナ素子の数にもよるが、例えば、本例の様に、第一のビームを16個のアンテナ素子で形成する場合は、第一のビームの送信電力Pt と、サイドローブ抑圧ビームである第二のビームの送信電力Pt とはほぼ等しい値に設定する必要がある。
【0012】
また、他の本発明に関連する技術として、円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおける前述のロービング差の問題を解決し、第一のビームの利得が高い場合でも、効果的にサイドローブを抑圧する手段として、特許文献2に開示の技術がある。
【0013】
この技術では、円筒状に配置されたアンテナ素子の全素子に対して、図10に示す様に振幅にウエイトを付けることによって、指向性を持った第二のビーム(略無指向性パターン)を形成し、図11に示す様に第一のビームのサイドローブを抑圧するというものである。
【0014】
しかしながら、この技術においても、集中給電型のパッシブ方式のフェーズドアレイアンテナであり、アンテナ素子に一対一で送受信モジュールを備えたアクティブフェーズドアレイアンテナには適さない。本発明が対象とするアクティブフェーズドアレイアンテナでは、上述した様に、アンテナ素子に一対一対応で送受信モジュールを備える構成であるので、個々のアンテナ素子への給電は独立したものとなっている。
【0015】
そのために、このパッシブフェーズドアレイアンテナの技術を、本発明が対象とするアクティブフェーズドアレイアンテナに適用すると、各送受信モジュールに設けられている可変減衰器により、各アンテナ素子の給電ウェイトを調整することになるが、この場合、送受信電力が当該減衰器によって低下してしまうという問題が生じる。一方、特許文献2におけるパッシブフェーズドアレイアンテナでは、減衰器ではなく、分配比を調整するだけであるので、全体の送受信電力は低下しないことになる。このように、アクティブ型とパッシブ型とでは相違することになる。
【0016】
また、アクティブ型では、送受信モジュールが独立しているので、第一のビームを複数形成して同時に放射することも可能である。この場合、全周に亘って一定利得を保った無指向性のパターンが必要になってくるが、特許文献2の技術のような指向性(略無指向性)を持った第二のビームでは、複数のビームのサイドローブの抑圧はできないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2580822号公報
【特許文献2】特開平3−143104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
第一の問題点は、円筒状にアンテナ素子を配置したアレイアンテナにおいて、無指向性アンテナを別に配置すると、アンテナの上下位置の差から指向性を持った第一のビームと、第一のビームのサイドローブを抑圧するための第二のビームとのロービングの差が生じ、サイドローブ抑圧効果が低下することである。
【0019】
第二の問題は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、第一のビームを形成するアンテナ素子以外の等間隔の3素子で無指向性の第二のビームを形成しても、第二のビームの送信電力が足りないためにサイドローブが抑圧できないということである。
【0020】
第三の問題点は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、ウェイトを付けた全アンテナ素子を使用して第二のビームを形成する場合、送受信モジュールの減衰器によって第二のビームの送信電力が低下し、効果的にサイドローブを抑圧できないということである。
【0021】
第四の問題点は、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナにおいて、第一のビームを複数同時に形成する場合、ウェイトを付けた全アンテナ素子を使用して第二のビームを形成しても、全周に亘り第一のビームのサイドローブを抑圧できないということである。
【0022】
本発明の目的は、二次監視レーダにおいて、効果的にサイドローブを抑圧することができる円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置は、
円筒状に配置された複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべく、前記複数のアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュールと、
前記アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、前記アンテナ素子の全数を用いて前記第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する前記送受信モジュールを介して前記第一のビーム形成用の信号を供給するよう制御し、
また、前記第二のビーム形成用の信号を前記アンテナ素子の全数へ対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、指向性を持った第一のビームとサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームとを、同一の円筒状アンテナで形成することにより、各ビームの上下位置が同一になるために、ロービングの差がなくなり、よってサイドローブ抑圧性能を向上させるという効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、円筒状に配置された全アンテナ素子または等間隔に間引いたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射することにより、無指向性の放射パターンを形成するようにしたので、サイドローブ抑圧ビームの送信電力も確保でき、効果的にサイドローブを抑圧できるという効果がある。
【0026】
更にはまた、本発明によれば、円筒状に配置された等間隔に間引かれたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射し、無指向性の放射パターンを形成することにより、サイドローブ抑圧と共に消費電力の低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】図1のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置における送受信モジュールの構成を示す図である。
【図3】図1のアクティブフェーズアレイアンテナ装置において、第一のビームと第二のビームとの励振アンテナ素子と電波放射方向とを示す図である。
【図4】図3による第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図5】本発明に関連するアレイアンテナ装置を用いた場合の第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置における第二のビームの励振アンテナ素子と電波放射方向を示す図である。
【図7】図6の第一のビームと第二のビームの放射パターンを示す図である。
【図8】本発明に関連する円筒状フェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図9】図9の装置における第一のビームと第二のビームとの放射パターンを示す図である。
【図10】本発明に関連する他の円筒状フェーズドアレイアンテナ装置において、ビーム形成時の全素子に与えるウェイトを示す図である。
【図11】図10に示したウェイトでの第一のビームと第二のビームの放射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の構成を示す図であり、本例では、円筒状アクティブフェーズドアレイアンテナ1において、アンテナ素子として48素子1−1〜1−48を例としたものである。
【0029】
これら各アンテナ素子には、送受信信号の電力増幅及び位相制御を行うための送受信モジュール101〜148が1対1で接続されている。また、送受信モジュール101〜148には、本発明を実現するための第一のビームと第二のビームとのそれぞれの信号を分離するための分配器101−12〜148−12が具備されている。
【0030】
第一のビームの信号系統は分配器2に接続されており、分配器2では、円筒上の120度分の開口、すなわち全素子数の1/3の数のアンテナ素子を使って第一のビームを形成するように、選択するアンテナ素子を切替える機能を有している。ビーム合成器3は、分配器2で選択されたアンテナ素子への送受信信号の分配及び合成を行っている。送受信部5はビーム合成器3に接続され、第一のビームの送受信信号の送信及び受信を行っている。
【0031】
一方、第二のビームの信号系統はビーム合成器4に接続されており、ビーム合成器4では、全アンテナ素子への送受信信号の分配及び合成を行っている。送受信部6はビーム合成器4に接続され、第二のビームの送受信信号の送信及び受信を行っている。制御器7は、分配器2のアンテナ素子選択のためのスイッチ切替制御及び送受信モジュール101〜148の移相器、切替スイッチ、電力増幅器などの制御を行っている。
【0032】
図2は、図1で示した送受信モジュール101〜148の内部系統図の例である。送受信モジュールは、第一のビームの位相制御のための移相器11と、第一のビームと第二のビームとの信号を分けるための分配器12と、送信と受信を切替えるための切替スイッチ13と、送信信号を増幅する電力増幅器14と、ビーム形成のための振幅ウエイト制御のためのATT(可変減衰器)15と、送信信号と受信信号を分離するサーキュレータ16と、過電力保護のためのリミッタ17と、受信信号を増幅するための低雑音増幅器18と、ビーム形成のための振幅ウエイト制御のためのATT19によって構成されている。
【0033】
次に、図1に示した本発明の一実施の形態によるアクティブフェーズドアレイアンテナ装置の動作について、図1,2及び3を用いて説明する。
【0034】
第一のビームについては、第一のビーム用の送受信部5から送信信号が出力され、ビーム合成器3により全素子数の1/3に分配される。1/3に分配された信号は、分配器2により、円筒状に配置されたどのアンテナ素子に給電を行うかが選択される。そして、これら選択されたアンテナ素子に接続された送受信モジュールへ信号が供給される。
【0035】
供給された送信信号は、送受信モジュールの移相器11で位相制御された後、分配器12及び切替スイッチ13を経て電力増幅器14にて電力増幅される。電力増幅された信号は、ATT15にて所望の振幅値に制御されてサーキュレータ16を通ってアンテナ素子に給電される。
【0036】
ATT15は、低サイドローブ化のために、各アンテナ素子へ給電される振幅ウエイトを制御するためのものであるが、例えば、シニング(間引き)技術などを用いて低サイドローブ化を図る場合には、ATT15を削除することも可能である。
【0037】
受信時には、アンテナ素子から受信した信号が、サーキュレータ16からリミッタ17を経て低雑音増幅器18で増幅される。増幅された信号は、ATT19によって振幅ウエイトの制御がされるが、前述したと同様に削除することも可能である。なお、切替スイッチ13からの信号の流れは、送信時の逆の経路なので説明を省略する。
【0038】
図3(a)に、第一のビーム形成のためにアンテナ素子1−1〜1−17の全素子数の1/3が選択された例を示す。この場合、選択された各アンテナ素子からの電波放射は、図の矢印に示す電波放射方向に位相が揃うように送受信モジュールで位相制御されて第一のビームが形成される。
【0039】
次に、第二のビームについては、第二のビーム用の送受信部6から送信信号が出力され、ビーム合成器4により全送受信モジュールに送信信号が分配される。送受信モジュールに供給された送信信号は、分配器12から切替スイッチ13を通って電力増幅器14にて電力増幅され、ATT15及びサーキュレータ16を通ってアンテナ素子に給電される。但し、第二のビームについては、各アンテナ素子からの出力を等振幅、等位相にするためATT15での振幅制御は行わない。
【0040】
受信時には、アンテナ素子から受信した信号がサーキュレータ16からリミッタ17を経て、低雑音増幅器18で増幅された信号がATT19、切替スイッチ13及び分配器12を経て、ビーム合成器4へ送られる。受信時にも、等振幅にするために、ATT19での振幅制御は行わない。以下、送信時の逆経路となる。
【0041】
図3(b)に、第二のビーム形成としてアンテナ素子1−1〜1−48の全素子が選択された例を示す。この時、全アンテナ素子に与える振幅、位相を等振幅、等位相にすることにより、すなわち、振幅制御、位相制御をしないことにより、図の矢印で示すように、全方向に電波が放射され、無指向性のパターンが形成される。また、振幅制御をしないために、送信電力の低下も生じない。図4に、前述の動作で形成される第一のビームと第二のビームとの放射パターンの例を示している。
【0042】
図5には、比較のために、特許文献1に開示の方式を本アクティブフェーズドアレイアンテナに適用した場合の放射パターン例を示す。特許文献1の方式では、第二のビームが第一のビームのサイドローブを抑圧できないが、本発明においては、図4に示す様に、第二のビームが第一のビームのサイドローブを全周に亘って抑圧できる様になる。ここで、本放射パターンの計算においては、製造等で発生する適当な誤差を与えている。
【0043】
以上説明したように、本発明による円筒状にアンテナ素子を配置したアクティブフェーズドアレイアンテナ装置は、第一のビームのサイドローブを第二のビームで効果的に抑圧でき、また、第一のビームと第二のビームとの上下位置が同じであるために、ロービングの差が低減できることになる。
【0044】
本例では、アンテナ素子が48素子のアレイアンテナを例にとっているが、アンテナ素子数は任意である。また、第一のビーム形成は全アンテナ素子数の1/3(120度分の開口)としたが、例えば、1/4(90度開口)など、任意に設定できることは明白である。
【0045】
なお、分配器12は、第一のビームの信号と第二のビームの信号とを分ける機能を持つが、切替スイッチなどを用いて構成することも可能である。また、第一のビームは一つの場合を例にとったが、例えば、一つのビームを全アンテナ素子の1/3(120度分の開口)で形成し、残りの2/3のアンテナ素子を用いて複数のビームを同時に形成することも可能である。
【0046】
図6は本発明の他の実施の形態を示す図である。円筒状のアレイアンテナにおいて全アンテナ素子を用いて無指向性の放射パターンを形成する場合、アンテナ素子の間隔が離れると、放射パターンにリップルが生じる。しかしながら、例えば、図6に示すように、アンテナ素子を1個おきに間引いた場合でも(白丸が間引いたアンテナ素子を示す)、図7の第二のビームの放射パターンのように、第一のビームのサイドローブを抑圧できる。
【0047】
従って、第一のビームのサイドローブレベル及び送信電力と、第二のビームの放射パターンのリップル及び送信電力との関係から、第二のビーム形成に必要なアンテナ素子への給電を減らすことが可能である。
【0048】
以上の様に、本発明は、第二のビーム形成において、円筒状の全アンテナ素子を励振せずに、第一のビームと第二のビームとが所望の性能を満足できる等間隔に間引いた状態で動作させる場合も含まれる。
【0049】
以上述べたように、本発明では、指向性を持った第一のビームとサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームとが同一の円筒状アンテナで形成されることにより、各ビームの上下位置が同一になるためロービングの差がなくなり、サイドローブ抑圧性能が向上する。
【0050】
また、円筒状に配置された全アンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射することにより、無指向性の放射パターンを形成するため、サイドローブ抑圧ビームの送信電力も確保でき、効果的にサイドローブを抑圧できる。
【0051】
更にはまた、円筒状に配置された等間隔に間引かれたアンテナ素子から等振幅、等位相の電波を放射し、無指向性の放射パターンを形成することにより、サイドローブ抑圧と共に消費電力の低減が図れることになる。
【符号の説明】
【0052】
1 アンテナ
1−1〜1−48 アンテナ素子
2 分配器
3,4 ビーム合成器
5,6 送受信部
7 制御部
101〜148 送受信モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に配置された複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべく、前記複数のアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュールと、
前記アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、前記アンテナ素子の全数を用いて前記第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する前記送受信モジュールを介して前記第一のビーム形成用の信号を供給するよう制御し、
また、前記第二のビーム形成用の信号を前記アンテナ素子の全数へ対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とするアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、更に、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子の各々に対して供給する前記第一のビーム形成用の信号の振幅および位相を、前記所定の指向性が得られるように制御することを特徴とする請求項1記載のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、更に、
前記第二のビームを形成するために、前記複数のアンテナ素子全数に代えて、等間隔に間引いたアンテナ素子に対して第二のビーム形成用の信号を、対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とする請求項1または2記載のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項1】
円筒状に配置された複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対する送受信信号の増幅制御および位相制御を行うべく、前記複数のアンテナ素子の各々に対応して設けられた複数の送受信モジュールと、
前記アンテナ素子の一部を用いて所定の指向性を有する第一のビームを形成し、前記アンテナ素子の全数を用いて前記第一のビームのサイドローブ抑圧用の無指向性の第二のビームを形成する制御手段とを含み、
前記制御手段は、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子を選択してこの選択されたアンテナ素子へ対応する前記送受信モジュールを介して前記第一のビーム形成用の信号を供給するよう制御し、
また、前記第二のビーム形成用の信号を前記アンテナ素子の全数へ対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とするアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、更に、
前記第一のビームを形成するアンテナ素子の各々に対して供給する前記第一のビーム形成用の信号の振幅および位相を、前記所定の指向性が得られるように制御することを特徴とする請求項1記載のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、更に、
前記第二のビームを形成するために、前記複数のアンテナ素子全数に代えて、等間隔に間引いたアンテナ素子に対して第二のビーム形成用の信号を、対応する前記送受信モジュールを介して等振幅、等位相で供給して無指向性となるように制御することを特徴とする請求項1または2記載のアクティブフェーズドアレイアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−176512(P2011−176512A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38055(P2010−38055)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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