説明

アクリル系樹脂の製造方法

【課題】圧力制御機構を有する押出機に於いて、反応効率を向上させると共に、押出変動を抑制して反応均一性を大幅に向上させる事が可能な熱可塑性樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】固体状の樹脂原料を可塑化し、第1段目反応の反応試剤を供給して反応を行う第1押出機と、第1押出機から供給された溶融樹脂に第2段目反応の副原料を供給して反応及び/又は脱揮を行う第2押出機と、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品と、第1押出機内圧力制御機構を有する反応押出機に於いて、式(1)を満足するよう各種反応パラメータを調整することにより所望の反応率を得ることができる。特に、アクリル樹脂とイミド化剤との反応によりイミド樹脂を製造することに有効である。


式中、圧力をPMPa、反応試剤濃度をC部、押出機最高温部温度をQ℃、反応時間をt分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応押出機によるアクリル系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機を用いて樹脂を加熱溶融し、溶融樹脂と反応剤とを連続的に反応させる反応押出法は、反応槽等で行うバッチ式法と比較して生産性に優れ、低コストで効率良くアクリル系樹脂を製造出来るという特徴を有している。
【0003】
しかしながら、従来の熱可塑性樹脂を溶融させて反応させる製造方法は反応効率及び反応均一性が制御できず、改良の余地がある。
【0004】
これまで、反応効率及び反応均一性を向上させる方法として、押出機を用いた変性熱可塑性樹脂の製造方法に関して、反応媒体として二酸化炭素を用いる事により、反応効率を向上させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、反応媒体を用いる為、設備が複雑化して高価になると共に、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
また、押出機内でアクリル樹脂にイミド化剤を加えてイミド化反応させる方法において押出機バレル温度を150℃以上200℃未満とすることにより所望の樹脂物性を得る方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような方法はバレル温度が制限されるため所望の樹脂物性を得るための制御幅が限られ、生産性に改善の余地があった。
【特許文献1】特開2002−256042
【特許文献2】特開2005−23273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、反応押出機において、反応効率を向上させると共に、反応押出機にて所望の反応率を得る事が可能なアクリル系樹脂の製造方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、固体状の樹脂原料を可塑化し、第1段目反応の反応試剤を供給して反応を行う第1押出機と、第1押出機から供給された溶融樹脂に第2段目反応の副原料を供給して反応及び/又は脱揮を行う第2押出機と、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品と、第1押出機内圧力制御機構を有する反応押出機に於いて、式(1)を満足するよう各種反応パラメータを調整することにより所望の反応率を得ることができる。
【0008】
即ち、本発明は、下記(i)〜(v)に関する。
(i)圧力制御機構を有する押出機でアクリル系樹脂を製造する方法において系内圧力をPMPa、反応試剤濃度をC部、押出機最高温部温度をQ℃、反応時間をt分とした時、下記数式(1)を満たすことを特徴とするアクリル系樹脂の製造方法。
【0009】
【数1】

【0010】
(ii)前記反応試剤がイミド化剤であることを特徴とする、(i)に記載の製造方法。
【0011】
(iii)
下記一般式(2)で表される単位、又は、下記一般式(2)で表される単位及び下記一般式(3)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を主原料とすることを特徴とする、(i)または(ii)に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
【0012】
【化1】

(但し、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R6は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0013】
【化2】

(但し、R7は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R8は、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
(iv)
【0014】
下記数式(3)を満たすことを特徴とする(i)〜(iii)のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
【数2】

【0016】
(v)アクリル系樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、前記一般式(2)で表される単位及び/又は前記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、(i)〜(iv)の何れか1項に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
【0017】
【化3】

(但し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧力制御機構を有する押出機でアクリル系樹脂を製造する方法において系内圧力、反応試剤濃度、押出機最高温部温度、反応時間を反応操作因子とすることで反応率を制御することができる熱可塑性樹脂の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、圧力制御機構を有する押出機でアクリル系樹脂を製造する方法において系内圧力をPMPa、反応試剤濃度をC部、押出機最高温部温度をQ℃、反応時間をt分とした時、下記数式(1)を満たすことを特徴とするアクリル系樹脂の製造方法に関する。
【0020】
【数3】

【0021】
まず、圧力制御機構を有する押出機について説明する。圧力制御機構を有する押出機とは、樹脂流路容積を変化させ、圧力損失を制御可能な装置である。好ましい圧力制御機構は、バルブ、例えば定流圧力弁等、その他ギアポンプ、オリフィス等を例示することができるが、押出機自体に組み込まれていてもよい。
【0022】
圧力制御機構を取り付ける位置は、反応試剤供給口から下流側の位置であれば特に制限されないが、反応部圧力を高くすることができることから押出機樹脂吐出口近くに設置することが好ましい。また、第2押出機を有するタンデム型押出機などでは、圧力制御機構の種類によっては、圧力制御機構と、接続部品または第2押出機原料供給口(第2押出機で混練が開始される位置)が一体となっている場合などは、実体として圧力差が生じる部分を圧力制御機構の位置と称することもある。
【0023】
本発明に於ける押出機としては、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等各種押出機が適用出来る。その中でも、特に、混錬/分散能力が高い点で各種二軸押出機を適用するのが好ましく、混錬/分散能力、生産性が高い事から同方向噛合型二軸押出機が更に好ましい。また、タンデム型押出機を用いてもよい。タンデム型押出機とは、例えば、第1押出機、第2押出機の2台を、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品(以下、単に接続部品と略記することもある)で接続したものがあげられる。必要に応じてさらに、第3押出機を接続部品で接続したものであってもよい。少なくとも2基以上であれば、接続台数は適宜設定できる。第1押出機、第2押出機、および第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、を有するタンデム型押出機を用い、第1押出機と第2押出機で異なる反応を行うことも可能である。図1に、タンデム型反応押出機の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。同図に示すように、第1押出機(1)と第2押出機(2)がタンデム型に配置されている。タンデム型とは、図1のような並列配列でも、第1押出機(1)と第2押出機(2)が直角に配列される直交配列のどちらでも構わない。第1押出機(1)の吐出口(6)は、接続部品(3)を介して、第2押出機(2)の原料供給口(7)に接続されている。
【0024】
本発明で得られるアクリル系樹脂の主原料としては、無水マレイン酸等の酸無水物又はそれらと炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系モノマー及びそれらの少なくとも1種を重合した重合体(アクリル系樹脂)などをあげることができる。なかでも、下記一般式(2)で示される繰り返し単位と、下記一般式(3)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体等が好ましい。
【0025】
【化4】

(但し、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R6は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0026】
【化5】

(但し、R7は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R8は、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【0027】
前記式(2)においてR4として好ましくは、水素原子であり、R5として好ましくはメチル基である。R6として好ましくはメチル基である。また、前記式(3)においてR7として好ましくは水素であり、R8として好ましくはフェニル基である。
【0028】
本発明において、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又はメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体を重合し、これをイミド樹脂化する場合、本発明で用いる事ができる(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、イミド化反応が可能であれば、リニアー(線状)ポリマーであっても、またブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、架橋ポリマーであっても構わない。ブロックポリマーはA−B型、A−B−C型、A−B−A型、又はこれら以外のいずれのタイプのブロックポリマーであっても構わない。コアシェルポリマーはただ一層のコア及びただ一層のシェルのみからなるものであっても、それぞれが多層になっていても構わない。
【0029】
本製造方法にて得られるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマー及びそれらの少なくとも1種を重合した重合体を、さらに重合、変成、または反応させたものがあげられ、具体的には、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、マレイミド・オレフィン系樹脂、グルタルイミド系樹脂、ラクトン環含有重合体、グルタル酸無水物含有樹脂などの樹脂またはこれらを混合してなる樹脂組成物が挙げられる。好ましくはグルタルイミド系樹脂である。
【0030】
例えば、得られるアクリル系樹脂がN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の場合、製造法として、第1押出機では、無水マレイン酸・イソブテン共重合体(株式会社クラレ製、品名イソバン6)をメチルアミンと処理して、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体を合成し、第2押出機では揮発分を除く脱揮工程を行う反応をあげることができ、(例えば、WO01/037007号公報に記載)本発明に適用することができる。
【0031】
本発明における反応試剤としては主原料と反応し、アクリル系樹脂を与えるものであれば特に制限されない。
【0032】
次に、本発明における下記数式(1)について説明する。
【0033】
【数4】

【0034】
ここで、系内圧力PMPaとは押出機反応部における最高圧力である。具体的には、押出機や圧力制御機構に設置した圧力計測機器、反応試剤圧入部又はラインに設置した圧力計測機器、その他押出機内の圧力を解析し得る計測機器における最高の圧力である。P値は2MPa以上50MPa以下であることが好ましい。より好ましくは2MPa以上20MPa以下、さらに好ましくは2MPa以上15MPa以下である。P値が2MPa未満の場合、押出機に於ける反応効率が低くなると共に、反応部にて反応副生成物が発泡、分離し、押出変動が大きくなり、反応が不均一になる為、好ましくない。
【0035】
又、押出機内圧力が50MPaより高い場合、特に、押出機減速機の耐圧仕様を超える場合などは押出機が破損する事もあり、好ましくない。
【0036】
反応試剤濃度C部とは供給樹脂量100重量部とした時の反応試剤供給重量部である。反応試剤の添加量は必要な物性によって適宜決定してやればよい。好ましくは、主原料の100重量部に対して、5〜30重量部である。より好ましくは5〜25重量部、さらに好ましくは8〜20重量部である。1重量部未満であると反応率が低くなり、50重量部より多い場合は生産コストが高くなるため好ましくない。
【0037】
押出機最高温部温度Q℃とは押出機反応試剤圧入部から圧力制御機構までの反応部における押出機の最高温箇所の温度である。最高温箇所の温度とは、バレル温度、押出機に設置した樹脂温度計の指示値から解析した温度、樹脂の温度を実測した値といった押出機内における反応部温度を計測できる機器の内、最も高い温度を指す。Q値は220℃以上320℃以下であることが好ましい。より好ましくは240℃以上310℃以下、さらに好ましくは250℃以上300℃以下である。220℃未満であると反応効率が低下することで生産性が低下するため好ましくない。320℃より高くなると樹脂に熱劣化が生じるため好ましくない。
【0038】
反応時間t分とは樹脂と反応試剤が圧力制御機構を有する押出機中へ供給されてから樹脂と反応試剤が分離されるまでの時間である。反応時間は0.2分以上60分以下であることが好ましい。より好ましくは0.35分以上30分以下、さらに好ましくは0.5分以上15分以下である。0.2分以下であると反応率が低く、60分を越えると樹脂に熱劣化が生じるため好ましくない。
【0039】
本発明においては、下記数式(2);
【0040】
【数5】

で表される数式(2)の値が0.20以上、0.99以下であることが好ましい。数式(2)の下限値としては、0.30以上であることがさらに好ましく、0.35以上であることが特に好ましい。上限値としては、0.90以下であることが好ましく0.85以下であることが特に好ましい。0.25未満または0.99よりも大きいと反応が十分に進行せず好ましくない。
【0041】
ここでは、アクリル系樹脂として、グルタルイミド系樹脂(以下、イミド樹脂ということもある)を製造する方法を例にとって説明する。具体的には、圧力制御機構を有するタンデム型反応押出機で第一押出機にてアクリル系樹脂とイミド化剤とを処理する反応を説明する。
【0042】
反応試剤として例えば、イミド化剤をあげることができる。イミド化剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有アミン、アンモニアなどが挙げられる。又、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素の如き、加熱によりこれらのアミンを発生する尿素系化合物を用いる事も出来る。これらのイミド化剤の内、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンが好ましく、中でも、メチルアミンが特に好ましい。
【0043】
グルタルイミド系樹脂においては、イミド化率は20%以上、95%以下が好ましく、40%以上、90%以下がさらに好ましく、50%以上、80%以下がとりわけ好ましい。前述の数式(1)を満たさない場合、上記範囲のイミド化率を有するイミド樹脂を得ることができない。
【0044】
タンデム型反応押出機の第1押出機に於いて、先ずアクリル系樹脂を原料樹脂(主原料)として用い、これにアンモニア又は置換アミン等の第1段目反応の副原料(以下、イミド化剤と呼ぶ事がある)を処理した樹脂(以下、イミド樹脂中間体1と呼ぶ事がある)を得る事が出来る。
【0045】
このイミド樹脂中間体1は、上記タンデム型反応押出機の第2押出機に於いて、第2段目反応の副原料(以下、エステル化剤と呼ぶ事がある)で処理し、必要により加熱処理等を行うことで、樹脂中に残存する酸成分(カルボキシル基および酸無水物基由来のモノ)の割合を制御する(以下、イミド樹脂中間体2と呼ぶ事がある)事が出来る。この際、エステル化剤によって処理する事無く、加熱処理等のみを行う事も出来る。第2押出機において、加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混錬/分散)のみを行った場合、イミド樹脂中間体1におけるカルボキシル基同士の脱水反応および/またはカルボキシル基とアルキルエステル基の脱アルコール反応、等によりカルボキシル基の一部または全部を酸無水物基とする事が出来る。加熱処理温度は過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色等を抑制する為に、反応温度は150〜320℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、更には200〜280℃が好ましい。
【0046】
更に、減圧脱揮等により、イミド樹脂中間体2中に含まれるエステル化剤を除去してもよい。
【0047】
本発明のイミド樹脂中間体1及びイミド樹脂中間体2を得るには、イミド化或いは酸成分制御を進行させ、且つ、過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色等を抑制する為に、反応温度は150〜320℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、更には200〜280℃が好ましい。
【0048】
前述のような製造方法以外でも、本発明のタンデム型反応押出機でイミド樹脂が得られる方法であれば、特に製造方法に制限はない。
【0049】
本発明においては、原料は、固体状態の樹脂を用いることができ、第1押出機(1)の原料供給口(5)より、フィーダー装置等で供給され、押出機内で加熱溶融される。フィーダー装置としては、定重量フィーダー、定容積フィーダー等が挙げられる。押出機内で樹脂が溶融された後の部分に設けられた第1段目反応の副原料供給口(8)から、ポンプ等などの供給装置を用いて、固体、液体又は気体状態の副原料を供給し、樹脂と副原料の第1段目反応を行う。
【0050】
第1押出機における第1段目反応生成物は樹脂吐出口から単離されることなく、樹脂吐出口に接続した接続部品を経由して第2押出機原料供給口へ導かれ、第2押出機へ投入される。
【0051】
次いで、第2押出機(2)原料供給口(7)後に設けられたベント口(9)で、第1押出機から供給された第1押出機における反応生成物中の第1段目反応の未反応副原料、反応副生成物、分解物などを除去する。ベント口の圧力は大気圧下、または真空下等が挙げられ、好ましくは真空下である。又、ベント口は必要に応じて複数個設ける事も可能である。
【0052】
イミド樹脂中間体1をエステル化剤で処理、及び/又は加熱処理する際、又はイミド樹脂中間体2に対して、一般に用いられる触媒、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤などを本発明の目的が損なわれない範囲で添加しても良い。
【0053】
上述のように得られるイミド樹脂としては、たとえば、前述の方法で主原料及び副原料の種類や量を適宜設定することで種々のものを製造することができるが、具体的には下記一般式(1)で表される単位と、前記一般式(2)で表される単位及び/又は前記一般式(3)で表される単位とを有するものがあげられる。
【0054】
【化6】

(但し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0055】
本発明のイミド樹脂を構成する、第一の構成単位は、前記一般式(1)で表されるものであり、一般的にグルタルイミド単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(1)をグルタルイミド単位と省略して示す事がある。)。
【0056】
好ましいグルタルイミド単位としては、R1、R2が水素又はメチル基であり、R3が水素、メチル基、ブチル基、又はシクロヘキシル基である。R1がメチル基であり、R2が水素であり、R3がメチル基である場合が、特に好ましい。
【0057】
該グルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R1、R2、R3が異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0058】
尚、グルタルイミド単位は、上述したイミド樹脂を製造する方法において説明した主原料をイミド化する事により形成する事が可能である。
【0059】
イミド樹脂を構成する、第二の構成単位は、前記一般式(2)で表されるものであり、一般的には(メタ)アクリル酸エステル単位と呼ばれる事が多い(ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを示す。以下、一般式(2)を(メタ)アクリル酸エステル単位と省略して示す事がある。)。
【0060】
イミド樹脂を製造する際に、先ず(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体を重合し、これを後イミド化して形成する場合、具体的に(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0061】
これら第二の構成単位は、単一の種類でもよく、R4、R5、R6が異なる複数の種類を含んでいても構わない。同様に、前記(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料も複数の種類を混合して用いても構わない。
【0062】
本発明のイミド樹脂に必要に応じて含有させる第三の構成単位は、前記一般式(3)で表されるものであり、一般的には芳香族ビニル単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(3)を芳香族ビニル単位と省略して示す事がある。)
【0063】
好ましい芳香族ビニル構成単位としては、R7が水素及びR8がフェニル基であるスチレン、R7がメチル基及びR8がフェニル基であるα−メチルスチレン等が挙げられる。これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0064】
これら第三の構成単位は、単一の種類でもよく、R7、R8が異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0065】
グルタルイミド系樹脂中の、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、例えばR3の構造にも依存するが、イミド樹脂の20重量%以上が好ましい。グルタルイミド単位の、好ましい含有量は、20重量%から95重量%であり、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは、50〜80重量%である。グルタルイミド単位の割合がこの範囲より小さい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれる事がある。また、この範囲を超えると不必要に耐熱性、溶融粘度が上がり、成形加工性が悪くなる他、得られるフィルムの機械的強度は極端に脆くなり、又、透明性が損なわれる事がある。
【0066】
イミド樹脂の、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、必要とされる物性に応じて設定すればよく、特に制限されないが、イミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、1重量%以上が好ましい。芳香族ビニル単位の、好ましい含有量は、1重量%から40重量%であり、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは、1〜25重量%である。芳香族ビニル単位がこの範囲より大きい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足する。この範囲より小さい場合、得られるフィルムの機械的強度が低下することがある。
【0067】
主原料である、一般式(2)、(3)及び、副原料であるイミド化剤の割合を調整することで、一般式(1)で表される単位と、一般式(2)で表される単位及び/又は一般式(3)で表される単位とを任意の割合で含有するイミド樹脂を得ることができ、一般式(1)、(2)、(3)の割合を調整することで、各種要求される物性に調整する事が可能である。例えば、本発明のイミド樹脂を、先ずメチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を重合した後にイミド化して形成する場合、例えば(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルの重合割合を調整することで一般式(3)の割合を決め(一般式(3)の割合を0とする事も可能)、更にイミド化時のイミド化剤の添加割合を調整する事で、更に一般式(1)、(2)の割合を調整する事ができる。
【0068】
イミド樹脂には、必要に応じ、更に、第四の構成単位が共重合されていてもかまわない。第四の構成単位として、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を用いる事ができる。これらは熱可塑性樹脂中に、直接共重合してあっても良く、グラフト共重合してあっても構わない。第四の構成単位は、主原料中に含まれている事が好ましい。
【0069】
本発明の製造法において得られるイミド樹脂中で、一般式(3)を含有するタイプは、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体中の各構成単位量及びグルタルイミド単位の含有量を調節する事で実質的に配向複屈折を有さない特徴を付与する事も可能である。また、一般式(3)の含有量を少なくしたり、一般式(3)を含有させなかったりすること、または、一般式(1)の含有量を増やすことで、正の配向複屈折を有するイミド樹脂を製造することもできる。配向複屈折とは所定の温度、所定の延伸倍率で延伸した場合に発現する複屈折の事をいう。本明細書中では、特にことわりのない限り、イミド樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、一軸に100%延伸した場合に発現する複屈折の事をいうものとする。
【0070】
ここで配向複屈折は、ポリマー構造由来の固有複屈折と分子配向状態に由来する配向分布関数の積であり、延伸軸方向の屈折率(nx)と、それと直行する軸方向の屈折率(ny)から、次式
△nor=nx−ny
で定義され、位相差計により測定される位相差Re(nm)を厚みd(μm)で割った値である。
【0071】
配向複屈折△nor=Re/d
配向複屈折は上記したように、延伸軸方向の屈折率(nx)とそれと直行する軸方向の屈折率(ny)の差であるので、nxがnyより大きい場合は正の値を示し、逆にnxがnyより小さい場合は負の値を示す。前記のイミド樹脂においては、用いる用途に応じて配向複屈折の値を調節することが可能である。
【0072】
実質的に配向複屈折を有さない前記イミド樹脂の配向複屈折の値としては、−0.1×10-3〜0.1×10-3である事が好ましく、−0.01×10-3〜0.01×10-3である事がより好ましい。
【0073】
実質的に配向複屈折を有さないイミド樹脂を得る為には、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体中の各構成単位量を調節、更にイミド化の程度を調製する必要があり、一般式(1)で示される繰り返し単位と、一般式(3)で示される繰り返し単位が、重量比で0.5:1.0〜10.0:1.0の範囲にあることが好ましく、2.0:1.0〜9.0:1.0の範囲がより好ましく、3.0:1.0〜7.0:1.0の範囲が更に好ましく、4.0:1.0〜6.5:1.0の範囲がとりわけ好ましい。
【0074】
又、本発明のイミド樹脂は、1×104ないし5×105の重量平均分子量を有する事が好ましい。熱可塑性樹脂の製造過程で、樹脂に対して過剰な熱履歴を与えると熱分解が生じ、重量平均分子量が1×104を下回る。更には、架橋が生じ、重量平均分子量が5×105を上回る場合もある。本発明に於ける熱可塑性樹脂の製造方法を適用すれば、熱可塑性樹脂の製造過程で、樹脂に対する熱履歴が低減でき、上記重量平均分子量の範囲を達成できる。重量平均分子量が1×104を下回る場合には、フィルムにした場合の機械的強度が不足し、5×105を上回る場合には、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する事がある。
【0075】
本発明のイミド樹脂に於けるガラス転移温度は110℃以上である事が好ましく、120℃以上である事がより好ましい。ガラス転移温度が上記の値を下回ると、耐熱性が要求される用途においては適用範囲が制限される。
【0076】
本発明のイミド樹脂には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂を添加する事が出来る。成形加工の際には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等を本発明の目的が損なわれない範囲で添加しても良い。
【0077】
本発明を用いてイミド樹脂を合成する場合、得られるイミド樹脂は、イミド化率のバラツキが1%以内である新規な熱可塑性樹脂を得ることができる。
【0078】
また、酸化のバラツキも0.1mmol/g以内であるイミド樹脂を得ることができる。
【0079】
ここで、イミド化率のバラツキとは、イミド樹脂の生産開始後、イミド樹脂中間体1を得る反応が安定した後、30分の間で、生成する樹脂の単位時間(1分)当たりのイミド化率の最大値と最小値の差のことである。
【0080】
酸成分のバラツキとは、イミド樹脂の生産開始後、イミド樹脂中間体1を得る反応、又はイミド樹脂中間体2を得る反応が安定した後、30分の間で、生成する樹脂の単位時間(1分)当たりの酸成分の最大値と最小値の差のことである。
本発明のイミド樹脂から得られる成形品は、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等の映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズ等のレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤー等の光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルム等の情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクター等の光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフ等の車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品等の医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジング等の建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具、等に使用可能である。
【実施例】
【0081】
本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で測定した物性の各測定方法は次の通りである。
【0082】
(1)イミド化率の測定
生成物のペレット1gをジクロロメタン5ccに溶解し、日本分光社製IR計を用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたスペクトルより、1720cm-1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm-1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)の比からイミド化率を求めた。ここで、イミド化率とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0083】
(2)樹脂中に残存する酸成分の割合の測定
ジクロロメタン37.5mlに生成物のペレット0.3gを溶解させ、メタノール37.5mlを添加した。この溶液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Aml)を測定した。
【0084】
次に、ジクロロメタン37.5mlとメタノール37.5mlの混合液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Bml)を測定した。
【0085】
樹脂中に残存する酸成分(カルボキシル基および酸無水物基由来のモノ)の割合をCmmol/gとし、次式で求めた。
【0086】
C=0.1×((5−A−B)/0.3)
【0087】
(3)バラツキ
本実施例、比較例においては、製造開始1時間後から1分毎に30分間ペレットを採取し、上記方法でイミド化率及び酸成分の割合を測定した。得られた測定値の最大値と最小値の差をそれぞれイミド化率のバラツキ、及び、酸成分のバラツキとした。
【0088】
(実施例1)
装置としては、図1に示すものと同等なものを使用した。タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機(1)、第2押出機(2)共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機原料供給口に原料樹脂を供給した。第1段目反応副原料(イミド化剤)、第2段目反応副原料(エステル化剤)の供給位置は図1に示すものと同等とした。又、第1押出機、第2押出機に於けるベントの位置も図1に示すものと同等とし、各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し(接続部品(3))、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構(4)には定流圧力弁を用いた。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極める為に、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
【0089】
第1押出機に関して、原料樹脂として、市販のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(新日鐵化学(株)製MS−800)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は60rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して16部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
【0090】
第2押出機に関して、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して2.4部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.6部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去し、イミド樹脂を得た。
【0091】
上記条件で約7日間の製造を行い、得られたイミド樹脂は、イミド化率73%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分(カルボキシル基および酸無水物基由来のモノ)の割合0.20mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは1.0MPaであった。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例2)
系内圧力5MPa、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して14部、エステル化剤添加量4.3重量部をとした以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0093】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率53%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.20mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力のバラツキは1.0MPaであった。
【0094】
(実施例3)
原料樹脂として、市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学(株)製スミペックスMG)を使用し、炭酸ジメチルの添加量を4部、トリエチルアミンの添加量を1部(それぞれ原料樹脂100部に対して)とした以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0095】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは1.0MPaであった。
【0096】
(実施例4)
原料樹脂供給量200kg/hとした以外は実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率63%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは1.0MPaであった。
【0097】
(比較例1)
系内圧力5MPa、反応試剤15重量部、押出機最高温部温度200℃とした以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率18%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは1.0MPaであった。
【0098】
(比較例2)
原料樹脂供給量300kg/h、第一押出機スクリュー回転数120rpm、系内圧力5MPa、反応試剤5重量部、押出機最高温部温度330℃とした以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率10%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは1.0MPaであった。
【0099】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明によるタンデム型反応押出機の構成図である。
【符号の説明】
【0101】
1 第1押出機
2 第2押出機
3 接続部品
4 第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力 制御機構
5 第1押出機原料供給口
6 第1押出機吐出口
7 第2押出機原料供給口
8 第1段目反応の副原料供給口
9 第2押出機ベント口
10 第2段目反応の副原料供給口
11 第2押出機ベント口
12 各種添加剤供給口
13 第二押出機ベント口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力制御機構を有する押出機でアクリル系樹脂を製造する方法において系内圧力をPMPa、反応試剤濃度をC部、押出機最高温部温度をQ℃、反応時間をt分とした時、下記数式(1)を満たすことを特徴とするアクリル系樹脂の製造方法。
【数1】

【請求項2】
前記反応試剤がイミド化剤であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される単位、又は、下記一般式(2)で表される単位及び下記一般式(3)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を主原料とすることを特徴とする、請求項1または2に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
【化1】

(但し、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R6は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化2】

(但し、R7は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R8は、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項4】
下記数式(3)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【数2】

【請求項5】
アクリル系樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、前記一般式(2)で表される単位及び/又は前記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
【化3】

(但し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)

【図1】
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【公開番号】特開2010−77362(P2010−77362A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250559(P2008−250559)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】