説明

アクリル系樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 波長分散性に優れ、十分な位相差発現性を有し、さらに破断伸度に優れるフィルム状のアクリル系樹脂組成物およびそれに好適なアクリル系樹脂組成物、ならびにそれらの製造方法を提供すること
【解決手段】
アクリル系樹脂を含有し、次式(1)〜(3)を満たし、かつ、破断伸度が10%以上であることを特徴とするフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系樹脂組成物およびその製造方法に関し、フィルム状のアクリル系樹脂組成物およびその製造方法に関する。特に位相差フィルム用途に好適なアクリル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムは、主にSTN(Super Twisted Nematic;超ねじれネマティック)方式の液晶ディスプレイで発生する色相のずれを補償するために、偏光フィルムと貼り合わせて使用される。現在、位相差フィルムには、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン等の樹脂が使用されているが、波長分散性が悪いため、2枚以上の位相差フィルムをその主軸が平行にならないように積層する方法が用いられるが、構成部材の削減および貼合コストの削減が求められていた(特許文献1〜4)。
【0003】
一方、アクリル樹脂やメタクリル樹脂などのアクリル系樹脂は、透明プラスチック材料の中でも特に、優れた透明性、表面光沢、耐候性を有し、さらに、成形性も良好で、表面硬度などの機械的性質のバランスにも優れている。そのうえ、熱分解により容易にほぼ100%の収率でモノマーとして回収することができ、モノマーリサイクルに適したポリマーでもある。そのため、プラスチックレンズ、導光体、光学フィルムなど光学用途に幅広く使用されている。しかしながら、アクリル系樹脂は元来、複屈折の起こりにくい代表的な等方材料であり、むしろ等方性が要求される用途に重用され、異方性が求められる即ち十分な位相差発現性を有する位相差フィルムへの適用は従来考え難いものであった。またゴム粒子を含有しないPMMAが位相差を発現することが知られているが、位相差発現性が充分でなく、また伸度が小さく、製膜時や、貼合時に破れが生じる問題があった。
【0004】
さらに位相差フィルムについて述べると、位相差フィルムには1/4波長位相差フィルム、1/2波長位相差フィルム等があるが、例えば1/4波長位相差フィルムは、可視光波長域で、位相差がそれぞれの波長の1/4であることが好ましい。ここで、波長x(nm)の位相差をR(x) (nm)と記載する。即ち、1/4波長位相差フィルムにおいて波長R(480.4)(nm)、R(548.3)(nm)、R(628.2)(nm)の理想値は以下の通りである。
【0005】
R(480.4)(nm) = 480.4(nm)/4 = 120.1(nm)
R(548.3)(nm) = 548.3(nm)/4 = 137.1(nm)
R(628.2)(nm) = 628.2(nm)/4 = 157.1(nm)
これらの式を満たしているとき、例えば反射型液晶テレビの位相差フィルムとして使用したときに、波長による光漏れが少なく好ましい。
【0006】
当然、この理想値は1/4波長位相差フィルムと1/2波長位相差フィルムで異なるが、それぞれの位相差の比、例えばR(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)およびR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)は一定である。ここで位相差の比を位相差の波長分散性と呼ぶ(以下、「波長分散性」)。R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)およびR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)の理想値は次式(4)、(5)で示される。
【0007】
R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) = 0.88 ・・・(4)
R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) = 1.15 ・・・(5)
現在、市販されている位相差フィルムの多くはこの理想値から大きく離れており、全ての可視光波長域を理想値に近づける目的で2枚あるいはそれ以上の位相差フィルムを、その主軸が平行にならないように積層する方法が用いられるが、構成部材の削減および貼合コストの削減から1枚で上式(4)および(5)を満たす位相差フィルムが求められていた。
【特許文献1】特開2004−082714号公報
【特許文献2】特開1992−362130号公報
【特許文献3】特開1993−2108号公報
【特許文献4】特開1995−287122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明の目的は、波長分散性に優れ、十分な位相差発現性を有し、さらに破断伸度に優れるフィルム状のアクリル系樹脂組成物およびそれに好適なアクリル系樹脂組成物、ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち本願発明の第1の発明は、
1.アクリル系樹脂を含有し、次式(1)〜(3)を満たし、かつ、破断伸度が10%以上であることを特徴とするフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
2. ガラス転移温度(T)が100℃以上であることを特徴とする上記1に記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
3.アクリル系樹脂が、エステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を有することを特徴とする上記いずれかに記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
4.アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでなることを特徴とする上記いずれかに記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
5.アクリル系樹脂組成物が、化学式(1)〜(3)のうち少なくとも1つの構造単位を含んでなることを特徴とする上記のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
化学式(1)において、
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基。
化学式(2)において
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
6.アクリル系樹脂組成物が化学式(4)で表される構造単位を含んでなることを特徴とする前記いずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
7.化学式(4)で表される構造単位のアクリル系樹脂組成物に対する質量分率が20〜40質量%であることを特徴とする前記のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
8.ゴム粒子をアクリル系樹脂に対して7〜40質量%含有することを特徴とする1〜7のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
9.厚みが7〜200μmであって全光線透過率が80%以上であることを特徴とする1〜8のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【0014】
また、第2の発明として
10.アクリル樹脂を含有するアクリル系樹脂組成物であって、フィルム状に成形したとき、未延伸または、T±20℃のいずれかの温度で300%延伸したとき次式(1)〜(3)を満たしかつ、破断伸度が10%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂組成物。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
11.ガラス転移温度(T)が100℃以上であることを特徴とする前記10のアクリル系樹脂組成物。
12.アクリル系樹脂が、エステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を有することを特徴とする前記10又は11記載のアクリル系樹脂組成物。
13.アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでいることを特徴とする10〜12のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
14.アクリル系樹脂組成物が、化学式(1)〜(3)のうち少なくとも1つの構造単位を含んでいることを特徴とする10〜13のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
化学式(1)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(2)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
15.アクリル系樹脂組成物が化学式(4)で表される構造単位を含んでなることを特徴とする10〜14のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
16.化学式(4)で表される構造単位のアクリル系樹脂組成物に対する質量分率が20〜40質量%であることを特徴とする前記アクリル系樹脂組成物。
17.ゴム粒子をアクリル系樹脂に対して7〜40質量%含有することを特徴とする10〜16のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【0019】
また第3の発明は、第1の発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化する工程、さらにエステル化またはアミド化する工程、さらにフィルム状に成形し、延伸する工程を含むことを特徴とするアクリル系樹脂組成物の製造方法である。
【0020】
また第4の発明は、第2の発明のアクリル系樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化する工程、さらにエステル化またはアミド化する工程を含むことを特徴とするアクリル系樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、波長分散性に優れ、十分な位相差発現性を有し、さらに破断伸度に優れるフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において、以下の用語を使用する。
アクリル系原料ポリマー:酸ハロゲン化、エステル化、アミド化によって後述のアクリル系樹脂を得るための原料となるポリマー。
ゴム粒子含有アクリル系原料ポリマー:ゴム粒子の形状のものを含むアクリル系原料ポリマー。
酸ハロゲン化アクリル系原料ポリマー:アクリル系原料ポリマーを酸ハロゲン化せしめたもの。
ゴム粒子含有酸ハロゲン化アクリル系原料ポリマー:ゴム粒子の形状のものを含むアクリル系原料ポリマーを酸ハロゲン化せしめたもの。
アクリル系樹脂:ポリマーに(メタ)アクリル酸エステル構造または(メタ)アクリルアミド構造を含むもの。
アクリル系樹脂組成物: アクリル系樹脂を含有する樹脂組成物。アクリル系樹脂のみからなる態様を含む。
【0023】
まず第1の発明について説明する。第1の発明では、フィルム状のアクリル系樹脂組成物が、次式(1)〜(3)を満たすことが重要である。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)。
【0024】
波長分散性に関する式(1)および(2)を満たすことにより波長分散性の優れた位相差フィルムとなる。「位相差フィルム」とは、ある波長の光が通過する時に進相軸の位相と、遅相軸の位相に差を生じさせるフィルムを言う。ここで進相軸とは光が最も早く通過する面内の方向であり、遅相軸とは、これと直交する面内の方向である。
本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物は特異な構造を有することにより、背景技術の欄で述べた式(4)および(5)の値に近い値を与えるため好ましい。R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)の値は好ましくは式(1)の範囲であり、より好ましくは式(6)の範囲であり最も好ましくは式(4)の値、0.88である。0.88に近づくことにより1/4波長位相差フィルムとした時に、これを用いた円偏光板は480.4nmおよび548.3nmの波長で円偏光を与えることができ、好ましい。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.85 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.00 ・・・(6)
R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) = 0.88 ・・・(4)。
【0025】
さらに長波長側の628.2nmにおいても、同様にR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)の値は好ましくは式(2)の範囲であり、より好ましくは式(7)の範囲であり最も好ましくは式(5)の値、1.15である。1.15に近づくことにより1/4波長位相差フィルムとした時に、これを用いた円偏光板は548.3nmおよび628.2nmの波長で円偏光を与えることができ、好ましい。
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
1.00 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(7)
R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) = 1.15 ・・・(5)。
【0026】
位相差発現性:1/4波長位相差フィルムとしての使用のためには、R(550) (nm)は137.5(nm)であることが理想であり、1/2波長位相差フィルムとしての使用のためには、R(550)(nm)は275(nm)であることが好ましい。位相差はフィルムの延伸により付与することが一般的であるが、従来のアクリルフィルムは、どのような延伸条件に於いても十分な位相差を付与することができなかった。すなわち位相差発現性が悪かった。
位相差は複屈折×フィルム厚みで与えられるため位相差発現性が悪い場合はフィルム厚みを厚くすることで、目的の位相差とするが、これは液晶ディスプレイなど位相差フィルムが使用される用途の薄膜化、軽量化の要求にそぐわない。
【0027】
薄いフィルムで1/4波長位相差フィルムとして使用するためには、次式(3)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは次式(8)を満たすことが好ましい。
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 5.0×10−4 ・・・(8)。
【0028】
通常のアクリル樹脂の位相差発現性が悪いのに対し、本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物は特異な構造を有することにより、十分な位相差を発現できるため好ましい。
本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物は、そのガラス転移温度(T)が100℃以上であることが好ましい。位相差フィルムはTを越える温度では位相差が変化することがある。液晶ディスプレイを屋外、あるいは車内で使用する場合、温度は90℃近くまで上昇することがある。この温度での位相差変化を抑制する目的でTは100℃以上であることが好ましい。
【0029】
一方、フィルムの延伸は、一般にT付近で行うので、Tが高すぎるとフィルムの延伸に必要な温度が高くなる。そのため、コストが高くなり生産性が低下することがあるので上限は特にないが一般的には400℃以下であればよい。
より好ましくはTは下の方では120℃以上、150℃以上であり、上の方では、350℃以下である。150℃以上のTを有することにより、屋外での使用に於いても位相差変化が殆ど生じなくなる。
【0030】
本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物は、主鎖からエステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を一部有することが好ましい。この構造を有することにより、優れた波長分散性と位相差発現性を両立できる。
【0031】
また、本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでなることが好ましく、より好ましくは化学式(1)〜(3)で表される構造単位のうち少なくとも1つを含むことである。さらに好ましくは化学式(4)で表される構造単位を含んでなることである。当該構造単位はTの上昇に寄与するが、この量が多くなると破断伸度が低下する傾向にある。この観点から、アクリル系樹脂組成物に対して脂環式の六員環、または五員環を有する基は、下の方としては20質量%以上、さらには25質量%以上、上の方としては40質量%以下、さらには35質量%以下であることが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
化学式(1)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(2)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において、R:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
【0034】
【化6】

【0035】
特に本発明のアクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂に対してゴム粒子を7〜40質量%含有することが好ましい。ゴム粒子を7質量%以上含有することで破断伸度が向上する。一方、40質量%を超える場合はTが低下するので好ましくない。ゴム粒子の添加量はより好ましくは12質量%以上20質量%以下である。
【0036】
例えば、本発明において添加物として採用するゴム粒子は、重合体成分から構成され、ゴム弾性を有するものであればよい。1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成される多層構造(コア・シェル型)重合体も好ましい。中でも無色透明なゴム粒子が好ましく、特に、用いるアクリル系樹脂との屈折率が近似しているものが、フィルムとした際の透明性を得る上で好ましい。
【0037】
ゴム粒子を構成する重合体は、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分を必須成分とし、その他に好ましく含まれる成分として、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα―メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分、ブタジエン単位やイソプレン単位などの共役成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを挙げることができる。
【0038】
これらのなかでも、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴム粒子が好ましく、例えば、アクリル成分およびシリコーン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分およびスチレン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分および共役ジエン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分、シリコーン成分およびスチレン成分から構成されるゴム質重合体などが上げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位、ブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋成分を含むものも好ましい。
【0039】
なかでも、アクリル酸アルキルエステル単位と芳香族ビニル系単位との組み合わせは好ましい。アクリル酸アルキルエステル単位、中でもアクリル酸ブチルは靭性向上に極めて効果的であり、これに芳香族ビニル系単位、例えばスチレンを共重合させることによってゴム粒子の屈折率を調整することができる。
【0040】
コア・シェル型のゴム粒子における、コアとシェルとの重量比としては、双方の総和に対して、コア層が50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。
【0041】
かかるゴム粒子としては例えば、アクリル酸ブチル/スチレン(50〜90質量%/10〜50質量%) 共重合ゴムをコア層とし、メタクリル酸メチル/メタクリル酸(50〜90質量%/10〜50質量%)重合体 をシェル層とするコア・シェル型のアクリル弾性体粒子が挙げられる。より好ましくは、アクリル酸ブチル/スチレン(70〜80質量%/20〜30質量%)共重合ゴムをコア層とし、メタクリル酸メチル/メタクリル酸(60〜80質量%/20〜40質量%)重合体をシェル層とするコア・シェル型のアクリル弾性体粒子である。
【0042】
アクリル弾性体粒子の平均粒子径としては、透過型電子顕微鏡を用いて100個の粒子について円相当径を求め、その平均値を平均粒子径とした場合の平均粒子径は70〜300nmとすることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。平均粒径が70nm未満の場合は破断伸度の向上が十分でないことがあり、300nmを超える場合はTが低下することがある。
【0043】
コア・シェル型のアクリル弾性体粒子の市販品として例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵科学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”、およびクレラ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明のフィルム状のアクリル樹脂組成物の厚みは下の方としては7μm以上、さらには10μm以上、上の方としては200μm以下、150μm以下であることが好ましい。厚みが7μm未満の場合ハンドリング性が悪化する場合がある。また厚みが200μmを越えると薄膜、軽量化という位相差フィルムの要求特性にそぐわない。光線透過率は高い方が好ましく、例えば80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは90%以上である。光線透過率に上限は無いが、一般に100%以下である。
【0045】
次に第2の発明について説明する。第2の発明は、アクリル系樹脂組成物である。それをフィルム状に成形し、未延伸または、T±20℃のいずれかの温度で300%延伸したとき次式(1)〜(3)を満たしかつ、破断伸度が10%以上であることが重要である。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)。 第2の発明のアクリル系樹脂組成物をフィルム状に成形し、未延伸または、T±20℃のいずれかの温度で300%延伸したとき、従来技術の欄で示した式(3)を満たし、式(4)および式(5)の理想値に近い値を与えるため好ましい。未延伸のフィルムが式(3)を満たさない場合、延伸により位相差を付与することができ、式(3)を満足する。300%未満の延伸したフィルムが式(3)を満足している場合、300%延伸したフィルムが式(3)を満たすことは自明である。
【0046】
R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm)の値は好ましくは式(1)の範囲であり、より好ましくは式(6)の範囲であり最も好ましくは式(4)の値、0.88である。0.88に近づくことにより1/4波長位相差フィルムとした時に、これを用いた円偏光板は480.4nmおよび548.3nmの波長で円偏光を与えることができ、好ましい。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.85 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.00 ・・・(6)
R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) = 0.88 ・・・(4)。
【0047】
さらに長波長側の628.2nmにおいても、同様にR(628.2)(nm)/R(548.3)(nm)の値は好ましくは式(2)の範囲であり、より好ましくは式(7)の範囲であり最も好ましくは式(5)の値、1.15である。1.15に近づくことにより1/4波長位相差フィルムとした時に、これを用いた円偏光板は548.3nmおよび628.2nmの波長で円偏光を与えることができ、好ましい。
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
1.00 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(7)
R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) = 1.15 ・・・(5)。
位相差発現性:1/4波長位相差フィルムとしての使用のためには、R(550)(nm)は137.5(nm)であることが理想であり、1/2波長位相差フィルムとしての使用のためには、R(550)(nm)は275(nm)であることが理想である。位相差はフィルムの延伸により付与することが一般的であるが、従来のアクリルフィルムは、どのような延伸条件に於いても十分な位相差を付与することができなかった。すなわち位相差発現性が悪かった。
【0048】
位相差は複屈折×フィルム厚みで与えられるため位相差発現性が悪い場合はフィルム厚みを厚くすることで、目的の位相差とするが、これは液晶ディスプレイなど位相差フィルムが使用される用途の薄膜化、軽量化の要求にそぐわない。
薄いフィルムで1/4波長位相差フィルムとして使用するためには、次式(3)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは次式(8)を満たすことが好ましい。
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 5.0×10−4 ・・・(8)。
【0049】
通常のアクリル樹脂の位相差発現性が悪いのに対し、本発明のアクリル系樹脂組成物は特異な構造を有することにより、十分な位相差を発現できるため好ましい。
【0050】
第2の発明のアクリル系樹脂組成物は、そのガラス転移温度(T)が100℃以上であることが好ましい。位相差フィルムはTを越える温度では位相差が変化することがある。液晶ディスプレイを屋外、あるいは車内で使用する場合、温度は90℃近くまで上昇することがある。この温度での位相差変化を抑制する目的でTは100℃以上であることが好ましい。
【0051】
一方、フィルムの延伸は、一般にT付近で行うので、Tが高すぎるとフィルムの延伸に必要な温度が高くなる。そのため、コストが高くなり生産性が低下することがあるので上限は特にないが一般的には400℃以下であればよい。より好ましくはTgは下の方では120℃以上、150℃以上であり、上の方では、350℃以下である。150℃以上のTを有することにより、屋外での使用に於いても位相差変化が殆ど生じなくなる。
【0052】
本発明のアクリル系樹脂組成物は、主鎖からエステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を一部有することが好ましい。この構造を有することにより、優れた波長分散性と位相差発現性を両立する。
【0053】
また、このアクリル系樹脂組成物も、アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでなることが好ましく、より好ましくは化学式(1)〜(3)で表される構造単位のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。さらに好ましくは化学式(4)で表される構造単位を含んでなることである。当該構造単位はTの向上に寄与するが、この量が多くなると破断伸度が低下する傾向にある。この観点からアクリル系樹脂組成物に対して脂環式の六員環、または五員環を有する基は、下の方としては20質量%以上、さらには25質量%以上、上の方としては40質量%以下、さらには35質量%以下であることが好ましい。
【0054】
【化7】

【0055】
化学式(1)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(2)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
【0056】
【化8】

【0057】
第2の発明においても、アクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂に対してゴム粒子を7〜40質量%含有することが好ましい。ゴム粒子を7質量%以上含有することで破断伸度が向上する。一方、40質量%を超える場合はTが低下するので好ましくない。ゴム粒子の添加量はより好ましくは12質量%以上20質量%以下である。
【0058】
例えば、本発明において添加物として採用するゴム粒子は、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよく、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成される多層構造(コア・シェル型)重合体である。中でも無色透明なゴム粒子が好ましく、特に、用いるアクリル系樹脂との屈折率が近似しているものが、フィルムとした際の透明性を得る上で好ましい。
【0059】
ゴム粒子を構成する重合体は、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分を必須成分とし、その他に好ましく含まれる成分として、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα―メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分、ブタジエン単位やイソプレン単位などの共役成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを挙げることができる。
【0060】
これらのなかでも、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴム粒子が好ましく、例えば、アクリル成分およびシリコーン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分およびスチレン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分および共役ジエン成分から構成されるゴム質重合体、アクリル成分、シリコーン成分およびスチレン成分から構成されるゴム質重合体などが上げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位、ブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋成分を含むものも好ましい。
【0061】
なかでも、アクリル酸アルキルエステル単位と芳香族ビニル系単位との組み合わせは好ましい。アクリル酸アルキルエステル単位、中でもアクリル酸ブチルは靭性向上に極めて効果的であり、これに芳香族ビニル系単位、例えばスチレンを共重合させることによってゴム粒子の屈折率を調整することができる。
コア・シェル型のゴム粒子における、コアとシェルとの重量比としては、双方の総和に対して、コア層が50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。
【0062】
かかるゴム粒子としては例えば、アクリル酸ブチル/スチレン(50〜90質量%/10〜50質量%)共重合ゴムをコア層とし、メタクリル酸メチル/メタクリル酸(50〜90質量%/10〜50質量%)重合体をシェル層とするコア・シェル型のアクリル弾性体粒子が挙げられる。より好ましくは、アクリル酸ブチル/スチレン(70〜80質量%/20〜30質量%)共重合ゴムをコア層とし、メタクリル酸メチル/メタクリル酸(60〜80質量%/20〜40質量%)重合体をシェル層とするコア・シェル型のアクリル弾性体粒子である。
【0063】
アクリル弾性体粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて100個の粒子について円相当径を求め、その平均値を平均粒子径とした。観察に際して、染色剤としてOsO、RuOの水溶液等、公知の手法を用いてアクリル弾性体粒子を染色して観察することが好ましい。アクリル弾性体粒子の平均粒子径が70〜300nmであることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである、70nm未満の場合は破断伸度の向上が十分でないことがあり、300nmを超える場合はTが低下することがある。
【0064】
コア・シェル型のアクリル弾性体粒子の市販品として例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵科学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”、およびクレラ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
第1の発明、第2の発明に共通して、アクリル系樹脂組成物は、アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸塩、エステル、酸無水物などのカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化する工程、さらにエステル化またはアミド化する工程によって製造することができる。すなわちかかる工程により、フィルムとした場合、良好な波長分散性と位相差発現性、破断伸度を併せ持つアクリル系樹脂組成物を得ることができる。アクリル系原料ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、などが挙げられ、特に、(メタ)アクリル酸構造を含んでいるものは、酸ハロゲン化が容易であるため好ましく使用され、充分な位相差の発現を目的として、アクリル系原料ポリマーに対してメタクリル酸単位が3〜10質量%含まれることが好ましい。メタクリル酸が10質量%を超える場合には、無色透明性が低下することがある。さらに、耐熱性の向上と破断伸度の低下を両立させるために、メタクリル酸メチル単位50〜90質量%およびグルタル酸無水物単位50〜10質量%を有するアクリル系原料ポリマーがより好ましい。また、市販のアクリル系樹脂を用いてもよいし、公知の方法で合成したアクリル系樹脂を用いてもよい。またスチレン、ブタジエンなど他の成分を共重合させたものも使用できABS樹脂、AS樹脂が例示される。
【0066】
酸ハロゲン化に用いるハロゲン化剤としては例えば、塩化チオニル、塩化ベンゾイル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、塩化スルフリル、塩化オキザリル、四塩化炭素、四塩化炭素、ジブロモトリフェニルホスホラン、フッ化シアヌル、1−ジメチルアミノ−1−ハロ−2−メチルプロペンなどが挙げられる。中でも塩化チオニルは、低沸点(約79度)で、かつ副反応生成物が気体(HCl、SO)であるため生成物との分離が容易な点で好ましい。
【0067】
アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を酸ハロゲン化する際には、アクリル系原料ポリマーを溶融状態としてもよいし、任意の溶媒に溶かして溶液状態としてもよいが、ハロゲン化剤の沸点より低い温度で反応を進めることができる溶液状態で酸ハロゲン化を行うことが好ましい。アクリル系原料ポリマーに対する溶媒としては、酸ハロゲン化剤と反応しないものが好ましく、ベンゼン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホロアミド、ピリジン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。塩化チオニルを用いる場合には、塩化チオニルと反応しないアルデヒド類やケトン類が、溶媒として好ましい。ケトン類の溶媒としては例えば、メチルエチルケトンを採用できる。
【0068】
酸ハロゲン化の反応時には、塩化亜鉛、ピリジン、ヨウ素、トリエチルアミンなどを適宜触媒として加えてもよい。
【0069】
溶液に、上記のハロゲン化剤を加え、攪拌しながら反応させることにより酸ハロゲン化できる。また、反応の促進と収率の向上のために適宜温度を加えながら反応を進めることが好ましいが、酸ハロゲン化剤の沸点等を考慮して温度を制御することが好ましく、例えば塩化チオニルを用いる場合、その沸点は約79℃であるので、加温はそれ以下の温度とすることが好ましい。
【0070】
この酸ハロゲン化の工程に関して例を挙げると、アクリル弾性体粒子をアクリル系原料ポリマーに対して20質量%添加したゴム粒子含有アクリル系原料ポリマーのペレットをメチルエチルケトンなどの溶剤に対してポリマー濃度が25質量%になるように加え、冷却管を備え付けた3つ口セパラブルフラスコを用いて室温で撹拌することによりゴム粒子含有アクリル系重合体の溶液を準備する。このゴム粒子含有アクリル系原料ポリマー溶液に塩化チオニルをハロゲン化剤として加える。反応は氷冷しながらもしくは室温〜60度程度まで湯浴を用いて加熱しながら行う。60度以上に温度を上げると、塩化チオニルが蒸発し酸ハロゲン化が進まないことがある。
【0071】
エステル化またはアミド化は、酸ハロゲン化した溶液、すなわち酸ハロゲン化アクリル系原料ポリマー又は ゴム粒子含有酸ハロゲン化アクリル系原料ポリマーの溶液に、アルコール類、アミン類、または反応を阻害しない限りはそれらの双方を加え、室温または本発明の目的を損なわない範囲で加温しながら攪拌することにより進行させることができる。
【0072】
エステル化に用いるアルコール類は特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、位相差の発現がしやすいポリマーとして上述したとおり、主鎖から直接又は間接に芳香族基を結合させるために、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基を含む芳香族アルコールが好ましい。さらに、水酸基が1つのものを用いてエステル化した樹脂を原料とするフィルムは延伸むらによる位相差発現のむらが生じにくい傾向があり、また、水酸基が2つのものは延伸倍率を調節することにより、発現する位相差を調整しやすいという傾向があり、水酸基が1つのものも2つのものも好ましく使用される。水酸基が1つの芳香族アルコールとして、2−ナフトール、4−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,4,6−トリフェニルフェノール、1−ナフトール、2−ヒドロキシフルオレン、9−ペンタノ−ル、1−ヒドロキシピレン、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、トランス−4−ヒドロキシスチルベンなどが挙げられ、水酸基が2つの芳香族アルコールとしては、4,4−ジヒドロキシビフェニル(DHB)、9、9’−ビスヒドロキシフェニルフルオレン、ジエチルスチルペントール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノールが挙げられる。特に、4,4’− DHB、2−ナフトール、4−フェニルフェノールが位相差の発現と優れた波長分散性を両立できるので好ましい。
【0073】
アミド化に用いるアミド類は、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、位相差の発現がしやすいポリマーとして上述したとおり、主鎖から直接又は間接に芳香族基を結合させるために、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基を含む芳香族アミンが好ましい。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0074】
アミド化の反応はエステル化の反応と同様に進めることができ、化合物としてはエステル化の際に添加するアルコールをアミンに変更するだけで良い。

脂環式の六員環、または五員環を有する基を含むアクリル系樹脂組成物の製造方法として、上述の化学式(4)の構造を含有させる方法を用いて、例を挙げる。
メタクリル酸単量体とメタクリル酸メチル単量体とを重合させ、共重合体とする。単量体の割合としては、配合した単量体の総和を100質量%として、メタクリル酸単量体は15〜45質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。また、メタクリル酸メチル単量体は55〜85質量%が好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。この共重合体を適当な触媒下または非存在下で加熱すると、共重合体内において隣接する2単位のメタクリル酸単位同士のカルボキシル基から脱水されて、あるいは隣接するメタクリル酸メチル単位からアルコールが脱離して、1単位の化学式(4)が生成する。
メタクリル酸単量体の含有量を15〜45質量%とすることによって、メタクリル酸単量体とメタクリル酸メチル単量体との共重合体を加熱した際に化学式(4)の含有量を20〜40質量%の好ましい範囲とすることができ、耐熱性、無色透明性の優れたアクリル系樹脂組成物となりやすく好ましい。
【0075】
共重合体を加熱して脱水および/または脱アルコールさせる、すなわち分子内環化を行う方法としては例えば、ベントを有する加熱した押出し基を用いる方法や、不活性ガス雰囲気下または真空下で加熱脱気できる装置を用いる方法が生産性の観点から好ましい。
【0076】
分子内環下反応のために加熱する温度としては、当該反応を円滑に進行されるという点から、180〜300℃が好ましく、より好ましくは200〜280℃である。
分子内環下反応のための加熱する時間としては、所望する共重合組成に応じて適宜設定すればよいが、通常1〜60分間が好ましく、より好ましくは2〜30分間、さらに好ましくは3〜20分間である。
【0077】
このようにして目的とするアクリル系樹脂組成物が得られる。なおアクリル系樹脂は他の共重合成分、例えばスチレン、ブタジエンを含んでいてもよい。第1の発明および第2の発明に共通してアクリル系樹脂組成物の各成分分析は、公知の方法で行えるが、例えば、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)法、赤外分光法を用いることができる。アクリル系樹脂組成物に含まれているゴム粒子などの添加剤を除去する際には、例えば、アクリル系樹脂組成物をアセトンに溶解し、この溶液を遠心分離することで、アセトン可溶成分とアセトン不溶成分とに分離する方法が挙げられる。このアセトン可溶成分を減圧乾燥したものを用いて、各成分組成を測定することができる。
【0078】
また第1の発明、第2の発明に共通してアクリル系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、表面形成性や、加工性などの向上を目的として、アクリル系原料ポリマーに対して50質量%以下の無機質または有機質の添加物を含有させることも好ましい。
【0079】
無機質の添加物としては例えば、SiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、その他の金属微粒子等が挙げられる。
【0080】
有機質の添加物としては例えば、酸化防止剤や、UV吸収剤や、ゴム粒子、架橋ポリビニルベンゼン粒子、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子等が挙げられる。
あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子も添加物として挙げられる。
【0081】
第1の発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物製造方法については特に限定はなく、公知の溶融製膜、あるいは公知の溶液製膜にて製膜することができるが、好ましくは溶液製膜法である。溶融製膜法を用いるとエステル化、アミド化後にアクリル系樹脂組成物の溶液を加熱して、溶媒を除去した後に樹脂を溶融する工程が必要になるが、溶液製膜法を用いることでエステル化、アミド化後のアクリル系樹脂組成物の溶液をそのまま製膜における原液としての利用が可能になる。溶液製膜として、例えばポリマーフィルム上キャスト法、キャスティングドラム法、金属ベルト上キャスト方などが例示でき、この中で後述するようにポリマーフィルム上キャスト法が好ましい。
【0082】
本発明のフィルム状のアクリル系樹脂組成物製造において、本発明のアクリル系樹脂組成物の溶液を塗布する支持体として、ポリマーフィルム、ドラム、エンドレスベルトなどいずれを用いても良いが、支持体との剥離性が良好なポリマーフィルムを用いることが好ましい。溶媒に耐性があるポリマーフィルムであれば、特に限定はないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられ、剛性、厚みムラ、無欠点性、コストなどのバランスに優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0083】
さらに、上記支持体に離型剤を塗布するとフィルムの剥離性がさらに良好となるため好ましい。離型剤としては、例えばシリコン樹脂系、フッ素樹脂系、アクリル系、ポリビニルアルコール系などを用いることができる。
【0084】
特に、第1の発明のフィルム状のアクリル組成物を製造する方法としては、位相差を付与するために、上述のとおりアクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化する工程、さらにエステル化またはアミド化する工程を行い、フィルム状に成形した後、さらに延伸する工程とすることが好ましい。延伸工程は、製膜中に行っても良いし、一度製膜して巻き上げた後でもよく、溶液製膜法の乾式法について例を挙げる。公知の溶液製膜法の乾式法で製膜し、乾燥工程を終えたフィルムを延伸しても良いし、公知の溶液製膜法の乾式法の乾燥工程において、フィルムの乾燥と同時に延伸を行っても良い。フィルムの支持体を剥離して延伸しても良いし、支持体と共に延伸しても良い。延伸倍率として1〜4倍の範囲内に有ることが好ましく、より好ましくは2〜3倍である。2倍未満の場合、位相差の付与が不充分のことがあり、4倍を超えて延伸するとフィルムが破れることがある。延伸は、フィルムのT±20℃のいずれかの温度で延伸することが好ましい。
【0085】
また、液晶性を付与したアクリル径樹脂組成物は製膜工程で自己配向するため延伸工程を必要としない。さらにUV配向、磁場配向などの公知の方法を用いて配向せしめても構わない。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0087】
(1)全光線透過率
下記測定器を用いて測定した。
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用) (スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
光学条件:JIS−K7105−1981に準拠。
【0088】
(2)位相差
下記測定器を用いて測定した。
装置:自動複屈折計 KOBRA−21ADH/DSP (王子計測機器製)
測定径:φ5mm
測定波長:400〜800nm
波長480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの時の位相差をそれぞれR(480.4)(nm)、R(548.3)(nm)、R(628.2)(nm)とした。
【0089】
また、R(550)(nm)の値は、次式(5)のコーシーの式を用いて算出した。
R(λ)=a+b/λ+c/λ+d/λ
式のa〜dの算出に用いた波長は480.4nm、548.3nm、628.2nm、752.7nmの4つである。
【0090】
(3)破断伸度
下記測定器を用いて測定した。
装置:ロボットテンシロンRTA (オリエンテック社製)
温度:23℃
相対湿度:65%
引張速度:300 mm/分
試験片は製膜方向またはバーコーターの移動方向をMD方向、これと直交する方向をTD方向として、TD方向について幅10mmで長さ50mmの試料とした。試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
破断伸度が10%以上のものを○、そうでないものを×と評価した。
【0091】
(4)ガラス転移温度(T
下記測定器を用いて測定し、フィルムの動的貯蔵弾性率E’の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度からTを求めた。
装置:動的粘弾性測定装置 DMS6100(セイコーインスツルメント社製)
測定範囲:25℃〜200℃
昇温速度:2℃/分
測定周波数:1Hz
試験長:20mm。
【0092】
本発明の実施例1〜15、比較例1において、アクリル系原料ポリマー、ゴム粒子として以下のものを用いた。
アクリル系原料ポリマー:メタクリル酸メチル由来の構造/化学式(4)/メタクリル酸由来の構造=74mol%/23mol%/3mol%
ゴム粒子:コア・シェル型のアクリル弾性体粒子、ガンツ化成社製AC2034
前記ゴム粒子のコア層:アクリル酸ブチル/スチレン=75質量%/25質量%の共重合ゴム
前記ゴム粒子のシェル層:メタクリル酸メチル/メタクリル酸=70質量%/30質量%の重合体
ゴム粒子含有アクリル系原料ポリマー:アクリル系原料ポリマーおよびアクリル系原料ポリマーに対してゴム粒子を20質量%添加したもの。
【0093】
また、比較例2において、アクリル系原料ポリマーとして以下のものを用いた。
アクリル系原料ポリマー:メタクリル酸メチル由来の構造/化学式(4)/メタクリル酸由来の構造=74mol%/23mol%/3mol%
実施例1〜15において、ハロゲン化の条件、エステル化またはアミド化の反応条件を表1にまとめた。
【0094】
実施例1〜15、比較例1、2に関して、下記の要領で得たフィルムのT、延伸条件(延伸温度、延伸倍率)、延伸後のフィルムの位相差、破断伸度、全光線透過率を表2にまとめた。
【0095】
(実施例1)
攪拌機を備えた300mlの3つ口セパラブルフラスコ中に、ゴム粒子含有アクリル系原料ポリマーのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度 25質量%)を60g入れた。セパラブルフラスコの口の1つには冷却管をつけた。また、セパラブルフラスコは50℃の水浴につけた。この溶液の中に、塩化チオニルを468μl添加し、50℃の水浴中で3時間撹拌した。水浴をはずした後、4、4’−DHBを1.2g添加し、室温で3時間撹拌した。
【0096】
得られたアクリル系樹脂組成物の溶液の一部を、表面に離型剤としてアルキルアクリレート樹脂層(メタクリル酸メチル/メタクリル酸ドデシル/アクリル酸/アニオン性反応性乳化剤=40質量部/60質量部/1質量部/2質量部)を厚み50nmとなるように塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)を固定したガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを50℃で10分間加熱し、自己支持性のフィルムを得た。得られたフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして金枠に固定して、さらに100℃で10分間、120℃で20分間、140℃で20分間、170℃で40分間加熱し、フィルムを得た。得られたフィルムをポリマーのキャスト方向の両端を保持して120℃のオーブンに入れ、2.3倍の1軸延伸を行った。得たフィルムの位相差値を測定し、表2にまとめた。
【0097】
製膜とは別に、組成分析を行った。家庭用ジューサーミキサーに水200gを入れ、さらに得られたアクリル系樹脂組成物の溶液のうち約20g加えてアクリル系樹脂組成物を固化させる。これをミキサーで切断、撹拌して粉末状のアクリル系樹脂組成物を得る。これを濾取し、濾液を捨てた。新しい水200gと濾取したアクリル系樹脂組成物を家庭用ジューサーミキサーに入れ、再度、切断、撹拌して粉末状のアクリル系樹脂組成物を得、濾取した。濾取したアクリル系樹脂組成物をソックスレー抽出器を用いて、エタノール還流下24時間抽出し、未反応の4、4’−DHBを除去した。アクリル系樹脂組成物をソックスレー抽出器から取り出し、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、アクリル系樹脂組成物を得た。得たアクリル系樹脂組成物30mgを重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定した。ゴム粒子含有アクリル系原料ポリマーと比べ、6〜9Hzに芳香族由来のピークの積分値が増加した。このことからアクリル系樹脂組成物はゴム粒子含有アクリル系原料ポリマーに4、4’−DHBが付加した物であることを確認した。
【0098】
(実施例2〜15)
酸ハロゲン化剤の種類、添加量、添加剤の種類、添加量、反応条件、延伸条件を変えた以外は、実施例1と同様にアクリル系樹脂組成物の溶液焼成、製膜、延伸した。
【0099】
得たフィルムの位相差を測定し、物性を表2にまとめた。
【0100】
また、製膜とは別に、組成分析を行い、添加剤の付加を確認した。
【0101】
(比較例1)
ゴム粒子含有アクリル系原料ポリマーのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度 25質量%)の一部を、実施例1と同様に製膜してフィルムを得た。
【0102】
得られたフィルムを実施例1と同様にして延伸を行い、得たフィルムの位相差を測定し、表2にまとめた。
【0103】
(比較例2)
アクリル系原料ポリマーのメチルエチルケトン溶液(ポリマー濃度 25質量%)の一部を、実施例1と同様に製膜してフィルムを得た。
【0104】
得られたフィルムを実施例1と同様にして延伸を行い、得たフィルムの位相差を測定し、表2にまとめた。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂を含有し、次式(1)〜(3)を満たし、かつ、破断伸度が10%以上であることを特徴とするフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm) ≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
【請求項2】
ガラス転移温度(T)が100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル系樹脂が、エステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項5】
アクリル系樹脂組成物が、化学式(1)〜(3)のうち少なくとも1つの構造単位を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【化1】

化学式(1)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基。
化学式(2)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
【請求項6】
アクリル系樹脂組成物が化学式(4)で表される構造単位を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【化2】

【請求項7】
化学式(4)で表される構造単位のアクリル系樹脂組成物に対する質量分率が20〜40質量%であることを特徴とする請求項6記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項8】
ゴム粒子をアクリル系樹脂に対して7〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項9】
厚みが7〜200μmであって全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のフィルム状のアクリル系樹脂組成物。
【請求項10】
アクリル樹脂を含有するアクリル系樹脂組成物であって、フィルム状に成形したとき、未延伸または、T±20℃のいずれかの温度で300%延伸したとき次式(1)〜(3)を満たしかつ、破断伸度が10%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂組成物。
0.80 ≦ R(480.4)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.03 ・・・(1)
0.97 ≦ R(628.2)(nm)/R(548.3)(nm) ≦ 1.20 ・・・(2)
R(550)(nm)/厚み(nm)≧ 3.0×10−4 ・・・(3)
【請求項11】
ガラス転移温度(T)が100℃以上であることを特徴とする請求項10記載のアクリル系樹脂組成物。
【請求項12】
アクリル系樹脂が、エステル結合又はアミド結合を介して直接又は間接に芳香族基が結合する構造を有することを特徴とする請求項10又は11記載のアクリル系樹脂組成物。
【請求項13】
アクリル系樹脂組成物が、脂環式の六員環、または五員環を有する基を含んでいることを特徴とする請求項10〜12のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【請求項14】
アクリル系樹脂組成物が、化学式(1)〜(3)のうち少なくとも1つの構造単位を含んでいることを特徴とする請求項10〜13のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【化3】

化学式(1)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(2)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
化学式(3)において;
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
:水素、または炭素数1〜5の任意の脂肪族炭化水素基
【請求項15】
アクリル系樹脂組成物が化学式(4)で表される構造単位を含んでなることを特徴とする請求項10〜14のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【化4】

【請求項16】
化学式(4)で表される構造単位のアクリル系樹脂組成物に対する質量分率が20〜40質量%であることを特徴とする請求項15記載のアクリル系樹脂組成物。
【請求項17】
ゴム粒子をアクリル系樹脂に対して7〜40質量%含有することを特徴とする請求項10〜16のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化する工程、さらにエステル化またはアミド化する工程、さらにフィルム状に成形し、延伸する工程を含むことを特徴とするフィルム状のアクリル系樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項10〜17のいずれか記載のアクリル系樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系原料ポリマーのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の部位を、酸ハロゲン化し、さらにエステル化またはアミド化する工程を含むことを特徴とするアクリル系樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−257263(P2006−257263A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76617(P2005−76617)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】