説明

アザライド系抗生物質

【課題】アザライド系抗生物質化合物を提供すること。
【解決手段】下式を有する化合物又はその薬学的に許容し得る塩。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、アザライド系抗生物質化合物の異性体の平衡混合物を含む医薬組成物およびそれらを製造する方法に関する。本発明は、更に、前述の組成物の安定化した形およびそれらを安定化させる方法に関する。本発明は、更に、哺乳動物を処置する方法であって、このような処置を必要としている哺乳動物に、本発明の医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0002】
哺乳動物、魚類および鳥類における広範囲の細菌または原生動物感染に対して活性なマクロライド系抗生物質は、以前から報告されている(例えば、国際特許公開WO98/56802号およびWO99/12552号を参照されたい)。これら化合物は、概して、1個またはそれより多い糖残基が結合している、12〜22個の炭素原子の大環状ラクトン環を有する。マクロライド系抗生物質は、50Sリボソームサブユニットに作用して、微生物におけるタンパク質合成を阻害する。マクロライド系抗生物質の例には、リンコマイシン、エリスロマイシンAの誘導体であるアジスロマイシン、および他のアザライド化合物が含まれる。
【0003】
アザライド化合物を活性成分として含有する医薬組成物の開発は、かなり挑戦しがいのある問題を与えている。若干のアザライドは、溶液中で異性体化することができる。したがって、一つの異性体または一定比率の異性体を含む再現性のある抗生物質組成物の製造は困難になっている。第二に、一定量の特定のアザライド異性体を含有する組成物は、時間経過中に変化しうる。第三に、アザライド類のラクトン環および糖は、弱い酸性または塩基性のpH環境でも容易に加水分解されて、抗生物質組成物の力価および半減期を減少させる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を克服する抗生物質組成物およびそれらを製造する方法を提供することである。
本明細書中のいずれの参考文献の引用も、このような参考文献が本発明の先行技術であるということを示すと解釈されるべきではない。
【0005】
発明の要旨
第一の態様において、本発明は、組成物であって、(a)式I
【0006】
【化1】

【0007】
を有する化合物および式II
【0008】
【化2】

【0009】
を有する化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(b)水;および(c)組成物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む組成物に関する。
【0010】
本発明は、組成物であって、(a)式Iの化合物および式IIの化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(b)水;および(c)組成物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む組成物を得る方法であって、(a)式(I)の化合物、(b)水、および(c)混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの量の1種類またはそれより多い酸を含む混合物を、約50℃〜約90℃の温度に加熱する工程を含む方法に関する。好ましい態様において、その混合物のpHは、約5.0〜約8.0、より好ましくは、約5.0〜約6.0である。
【0011】
本発明は、更に、哺乳動物における細菌または原生動物感染を処置する方法であって、このような処置を必要としている哺乳動物に、治療的有効量の組成物であって、(a)式Iの化合物および式IIの化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(b)水;および(c)組成物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む組成物を投与することを含む方法に関する。好ましい態様において、その混合物のpHは、約5.0〜約8.0、より好ましくは、約5.0〜約6.0である。もう一つ好ましい態様において、細菌または原生動物感染は、ウシ呼吸病、ブタ呼吸病、肺炎、コクシジウム症、アナプラズマ症および伝染性角膜炎から成る群より選択される。
【0012】
本発明は、組成物であって、(a)混合物であって、(i)式(I)の化合物および式(II)の化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(ii)水;および(iii)その混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む混合物;および(b)組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの全量で存在する1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を含む組成物に関する。
【0013】
本発明は、組成物であって、(a)混合物であって、(i)式(I)の化合物および式(II)の化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(ii)水;および(iii)その混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む混合物;および(b)組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの全量で存在する1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を含む組成物を得る方法であって、その混合物に、組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの全量の1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を加える工程を含む方法に関する。
【0014】
本発明は、更に、組成物であって、(a)第一混合物であって、(i)式(I)の化合物および式(II)の化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(ii)水;および(iii)その混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む混合物;および(b)組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの全量で存在する1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を含む組成物を得る方法であって、式(I)の化合物、水、および混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの量の1種類またはそれより多い酸を含む混合物を、約50℃〜約90℃の温度に加熱する工程を含み、ここにおいて、その加熱工程の前、の際またはの後に、1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を、組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの量で加える方法に関する。
【0015】
本発明は、式Iの化合物または式IIの化合物の構造完全性を保存する方法であって、混合物であって、(a)式(I)の化合物および式(II)の化合物;(b)水;および(c)その混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全量で存在する1種類またはそれより多い酸を含む混合物に、1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を加えることによって組成物を形成する工程を含み、その加えられる水混和性補助溶媒の量が、組成物1mLにつき約250mg〜約750mgである方法に関する。
【0016】
本発明は、哺乳動物における細菌または原生動物感染を処置する方法であって、このような処置を必要としている哺乳動物に、有効量の組成物であって、(a)混合物であって、(i)式(I)の化合物および式(II)の化合物が、それぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率のもの;(ii)水;および(iii)その混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの全濃度で存在する1種類またはそれより多い酸を含む混合物;および(b)組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの全量で存在する1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を含む組成物を投与することを含む方法に関する。
【0017】
本発明の組成物の態様において、1種類またはそれより多い酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、D−およびL−乳酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、D−およびL−酒石酸、p−トルエンスルホン酸、アジピン酸、アスパラギン酸、カンフルスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ラウリル硫酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、リンゴ酸、粘液酸、硝酸、ナフタレンスルホン酸、パルミチン酸、D−グルカル酸、ステアリン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、コール酸、エタンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、ラクトビオン酸、リシン酸、マンデル酸、ナパジシル酸、ニコチン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、トリプトファン酸およびそれらの混合物から成る群より選択される。
【0018】
その好ましい態様において、1種類またはそれより多い酸はクエン酸である。もう一つ好ましい態様において、1種類またはそれより多い酸は、クエン酸および塩酸である。より好ましい態様において、クエン酸は、組成物1mLにつき約0.02mmol〜約0.3mmolの量で存在し、そして塩酸は、約5〜約6の組成物pHに達する充分な量で存在する。
【0019】
本発明の組成物の態様において、1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル2−ピロリドン、グリセロールホルマール、ジメチルスルホキシド、セバシン酸ジブチル、ポリソルベート80およびそれらの混合物から成る群より選択される。
【0020】
その態様において、1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒はプロピレングリコールである。その好ましい態様において、プロピレングリコールは、組成物1mLにつき約450mg〜約550mgの量で存在する。
【0021】
本発明の組成物の態様において、組成物は、組成物1mLにつき約0.01mg〜約10mgの量で存在する1種類またはそれより多い酸化防止剤を更に含む。その好ましい態様において、1種類またはそれより多い酸化防止剤は、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、アセチルシステイン、システイン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ尿素、ジチオトレイトール、ジチオエリトレイトール、グルタチオン、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸、没食子酸プロピル、α−トコフェロールおよびそれらの混合物から成る群より選択される。そのより好ましい態様において、1種類またはそれより多い酸化防止剤はモノチオグリセロールである。その特に好ましい態様において、モノチオグリセロールは、約4mg/mL〜約6mg/mL(組成物)の量で存在する。
【0022】
本発明の組成物の態様において、組成物中の(化合物Iおよび化合物IIの)第一混合物の濃度は、約50mg/mL〜約200mg/mLである。その好ましい態様において、組成物中の第一混合物の濃度は、約90mg/mL〜約110mg/mLである。
【0023】
本発明の組成物の特に好ましい態様において、クエン酸は、組成物1mLにつき約0.02mmol〜約0.3mmolの量で存在し、そして塩酸は、約5〜約6の組成物pHに達する充分な量で存在し;プロピレングリコールは、組成物1mLにつき約450mg〜約550mgの量で存在し;そしてモノチオグリセロールは、約4mg/mL〜約6mg/mL(組成物)の量で存在する。
【0024】
本発明は、更に、式
【0025】
【化3】

【0026】
(式中、Rは、OHまたは
【0027】
【化4】

【0028】
であり、そしてここにおいて、
は、HまたはCHである)
を有する化合物またはその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0029】
本発明は、本発明の非制限態様を例示するためのものである詳細な記述および代表的な実施例を参照して、更に充分に理解することができる。
発明の詳細な記述
【0030】
【化5】

【0031】
本発明は、異性体Iおよび異性体II(集合的には、“アザライド異性体”)を約90%±4%対約10%±4%の比率で含む医薬組成物に関する。異性体Iの化学名は、(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)−13−((2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−4−C−((プロピルアミノ)−メチル)−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ−2−エチル−3,4,10−トリヒドロキシ−3,5,8,10,12,14−ヘキサメチル−11−((3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−β−D−キシロヘキソピラノシル)オキシ)−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−15−オンである。異性体IIの化学名は、(3R,6R,8R,9R,10S,11S,12R)−11−((2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−4−C−((プロピルアミノ)メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ)−2−((1R,2R)−1,2−ジヒドロキシ−1−メチルブチル)−8−ヒドロキシ−3,6,8,10,12−ペンタメチル−9−((3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−β−D−キシロヘキソピラノシル)オキシ)−1−オキサ−4−アザシクロトリデカン−13−オンである。異性体Iは、異性体IIのトランスラクトン化反応から形成されうる。同様に、異性体IIは、異性体Iのトランスラクトン化反応から形成されうる。異性体Iを得る方法は、本明細書中に参照により取り込まれる国際公開WO98/56802号に開示されている。異性体IIを得る方法は、下の実施例1に開示されている。アザライド異性体は、活性な抗生物質薬である。いかなる理論にも拘束されたくはないが、本発明は、一部分は、異性体Iおよび異性体IIを約90%±4%対約10%±4%の比率で含む組成物が、アザライド異性体の出発比率とは無関係に、本明細書中に開示された方法を用いて速やかに得ることができるという本出願者の驚くべき発見に基づいている。全く確実ではないが、出願人は、約90%±4%対約10%±4%比率の異性体Iおよび異性体IIが、アザライド異性体の平衡混合物を構成すると考える。したがって、本明細書中で用いられる“異性体の平衡混合物”という用語は、異性体Iおよび異性体IIのそれぞれ約90%±4%対約10%±4%の比率の混合物を意味する。この異性体の平衡混合物を含む抗生物質組成物は、一貫して製造することができ、試験または消費者使用のための標準を与えることができる。したがって、この異性体の平衡混合物を含む組成物は、極めて望ましい。
【0032】
本発明は、更に、異性体の平衡混合物を含む組成物を製造する方法に関する。一つの態様において、この異性体の平衡混合物は、実質的に純粋な異性体Iの溶液から得られる。本明細書中で用いられる“実質的に純粋な”とは、特に断らない限り、少なくとも97%の純度を有することを意味する。もう一つの態様において、異性体の平衡混合物は、異性体Iおよび異性体IIの混合物を含む溶液から得られる。概して、異性体の平衡混合物は、異性体I、好ましくは、実質的に純粋な異性体I、または異性体Iおよび異性体IIの混合物の水溶液を1種類またはそれより多い酸の存在下加熱することによって生じる。好ましい態様において、異性体Iおよび1種類またはそれより多い酸の水溶液を、約5.0〜約8.0、好ましくは、約6.0〜約8.0のpHで、約50℃〜約90℃、好ましくは、約60℃〜約80℃の温度に約0.5〜約24時間、好ましくは、約1〜約10時間加熱する。最も好ましくは、異性体Iおよび異性体IIの溶液を、1種類またはそれより多い酸の存在下において約6.5〜約7.5のpHで約65℃〜約75℃の温度に約1〜約8時間加熱する。異性体Iまたは平衡化される異性体Iおよび異性体IIの混合物の濃度は、約50mg/mL〜約500mg/mL(溶液)、より好ましくは、約100mg/mL〜約300mg/mL(溶液)、そして最も好ましくは、約225mg/mL〜約275mg/mL(溶液)でありうる。
【0033】
異性体の平衡混合物を得るのに有用な適当な酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、D−およびL−乳酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、D−およびL−酒石酸、p−トルエンスルホン酸、アジピン酸、アスパラギン酸、カンフルスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ラウリル硫酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、リンゴ酸、粘液酸、硝酸、ナフタレンスルホン酸、パルミチン酸、D−グルカル酸、ステアリン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、コール酸、エタンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、ラクトビオン酸、リシン酸、マンデル酸、ナパジシル酸、ニコチン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、トリプトファン酸およびそれらの混合物が含まれるが、これに制限されるわけではない。好ましくは、1種類またはそれより多い酸は、クエン酸および塩酸である。存在する場合、クエン酸は、溶液1mLにつき約0.02mmol〜約0.3mmolの濃度で存在する。一つの態様において、溶液1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの酸濃度を用いる。いかなる理論にも拘束されたくはないが、アザライド異性体自体が塩基として作用することから、本出願人は、異性体Iの溶液への酸の添加によって形成される塩は、緩衝化作用をすると考えている。当業者は、望ましいpHに必要な酸の量が、用いられる酸によって異なるであろうということ、および所望の範囲内のpHを維持するために、追加の酸および/または塩基を、酸および異性体Iまたは異性体Iおよび異性体IIの混合物の溶液に加えてよいということを理解するであろう。適当な塩基には、アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、およびアルカリ土類の水酸化物および炭酸塩が含まれるが、これに制限されるわけではない。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好適である。上記の酸および塩基は、好都合には、それらの水溶液の形で用いられる。
【0034】
異性体の平衡混合物を含む組成物(“平衡化組成物”)は、哺乳動物における細菌または原生動物感染を処置するのに有用である。これら平衡化組成物は、安定化された平衡化組成物の形成のための中間体としても有用である。
【0035】
本発明は、更に、安定化された平衡化組成物およびそれらを安定化させる方法であって、それら平衡化組成物を、1種類またはそれより多い水混和性有機溶媒(“補助溶媒”)で希釈することを含む方法に関する。この補助溶媒は、平衡化組成物中の異性体Iおよび異性体IIの比率にほとんど影響しないが、実際、それらの構造完全性を保存する。本明細書中で用いられる異性体Iまたは異性体IIの“構造完全性を保存すること”には、例えば、デスクラジノース(descladinose)アザライドへのそれらの加水分解速度を遅らせること、および例えば、下に定義のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド挿入産物の副生成物形成速度を遅らせることが含まれるが、これに制限されるわけではない。いかなる理論にも拘束されたくはないが、本出願人は、補助溶媒での希釈は、アザライド異性体の安定性を向上させると考えている。更に、補助溶媒の存在によって、安定化した平衡化組成物の注射の際に経験されるあらゆる痛みは、そのように安定化されていない平衡化組成物の注射によって経験されるよりも少ないことがありうる。平衡化組成物を安定化させるのに有用な補助溶媒には、エタノールおよびイソプロパノールのようなアルコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールエーテル;ポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400のようなポリエチレングリコール;プロピレングリコール(“PG”)およびグリセリンのようなグリコール;2−ピロリドンおよびN−メチル2−ピロリドンのようなピロリドン;グリセロールホルマール;ジメチルスルホキシド;セバシン酸ジブチル;ポリソルベート80のようなポリオキシエチレンソルビタンエステル;およびそれらの混合物が含まれるが、これに制限されるわけではない。好ましくは、注射可能溶液中の平衡化組成物を安定化させるのに有用な補助溶媒には、エタノール、ポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400のようなポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンのようなグリコール、2−ピロリドンおよびN−メチル2−ピロリドンのようなピロリドン、グリセロールホルマール、ジメチルスルホキシド、ポリソルベート80のようなポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびそれらの混合物、より好ましくは、グリセロールホルマール、N−メチル2−ピロリドンおよびプロピレングリコール、そして最も好ましくは、プロピレングリコールが含まれるが、これに制限されるわけではない。一つの態様において、医薬組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの量の補助溶媒を用いて、組成物を安定化させる。好ましい態様において、医薬組成物1mLにつき約400mg〜約600mgの量の補助溶媒を用いる。最も好ましい態様において、医薬組成物1mLにつき約450mg〜約550mgの補助溶媒を用いる。
【0036】
一つの態様において、1種類またはそれより多い補助溶媒を、異性体Iに、または平衡化前の異性体Iおよび異性体IIの混合物に加える。この場合、得られた混合物を、約5.0〜約8.0のpHで、好ましくは、約6.0〜約8.0のpHで、約50℃〜約90℃、好ましくは、約60℃〜約80℃の温度に約0.5〜約24時間、好ましくは、約1〜約10時間加熱する。好ましい態様において、アザライド異性体の平衡化は、補助溶媒の不存在下で行われるが、これは、平衡化組成物がほぼ室温まで冷却された後にそれらに加えられる。
【0037】
補助溶媒の添加後、得られた溶液のpHは、その組成物の安定性を更に向上させるように再調整することができる。pHは、当業者に知られている方法によって、例えば、上記の一定量の酸または塩基を、例えば、10%(w/w)原液として加え、得られた溶液のpHを、例えば、pHメーターを用いて測定することなどによって調整される。一つの態様において、得られた溶液のpHは、必要ならば、約4.5〜約7.5、好ましくは、約5.0〜約6.0、最も好ましくは、約5.2〜約5.6に調整する。
【0038】
本発明は、更に、異性体の平衡混合物、水、1種類またはそれより多い酸、および1種類またはそれより多い水混和性補助溶媒を含む医薬組成物に関する。これら医薬組成物中のアザライド異性体の量は、医薬組成物1mLにつき約50mgのアザライド異性体〜医薬組成物1mLにつき約200mgのアザライド異性体である。好ましくは、医薬組成物は、医薬組成物1mLにつき約75mg〜約150mg、より好ましくは、約90mg〜約110mgのアザライド異性体を含む。
【0039】
これら医薬組成物は、また更に、1種類またはそれより多い酸化防止剤を含むことがありうる。酸化防止剤は、医薬組成物の酸化的破壊を妨げるまたはその速度を遅らせる。適当な酸化防止剤には、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、アセチルシステイン、システイン、モノチオグリセロール(“MTG”)、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ尿素、ジチオトレイトール、ジチオエリトレイトール、グルタチオン、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸、没食子酸プロピル、α−トコフェロールおよびそれらの混合物が含まれるが、これに制限されるわけではない。当業者は、酸化防止剤の量が、用いられる酸化防止剤によって異なるということを理解するであろう。好ましい態様において、酸化防止剤は、存在する場合、医薬組成物1mLにつき約0.01mg〜約10mgの量で存在する。より好ましい態様において、酸化防止剤はモノチオグリセロールであり、医薬組成物1mLにつき約1mg〜約8mgの量で存在する。最も好ましい態様において、酸化防止剤はモノチオグリセロールであり、医薬組成物1mLにつき約4mg〜約6mgの量で存在する。
【0040】
これら医薬組成物は、場合により、1種類またはそれより多い保存剤を含む。保存剤は、特に、医薬組成物が空気に暴露される場合、微生物の増殖を妨げるまたはその速度を遅らせるのに有用である。有用な保存剤は、広範囲の微生物に対して有効であり;医薬組成物の寿命にわたって物理的、化学的および微生物学的に安定であり;無毒性であり;充分に可溶性であり;組成物の他の成分と相容性であり;そして味および臭いに関して許容できる。適当な保存剤には、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノールおよびそれらの混合物が含まれるが、これに制限されるわけではない。好ましい態様において、1種類またはそれより多い保存剤は、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベン/プロピルパラベン組合せ、およびフェノールから成る群より選択される。存在する場合、1種類またはそれより多い保存剤は、医薬組成物1mLにつき約0.01mg〜約10mgの量で存在する。好ましくは、1種類またはそれより多い保存剤はフェノールであり、医薬組成物1mLにつき約2.0mg〜約5.0mg、より好ましくは、約2.0mg〜約3.0mgの量で存在する。当業者は、本組成物中で用いられるべき保存剤の量が、選択される保存剤によるであろうということ、および若干の保存剤は、医薬組成物1mLにつき約0.01mgよりなお一層少ない、より低い濃度で用いられてよいということを理解するであろう。
【0041】
好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、約5.0〜約7.0のpHを有し、(1)医薬組成物1mLにつき約50mg〜約200mgの量で存在する異性体の平衡混合物;(2)医薬組成物1mLにつき約0.02mmol〜約0.3mmolの濃度で存在するクエン酸および場合により、そのpH範囲に達するのに有効な一定量の塩酸;(3)医薬組成物1mLにつき約250mg〜約750mgの量で存在するプロピレングリコール;(4)医薬組成物1mLにつき約1mg〜約15mgの量で存在するモノチオグリセロール;および(5)医薬組成物1mLにつき約100mg〜約750mgの量で存在する水を含む。
【0042】
より好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、約5.0〜約6.0のpHを有し、(1)医薬組成物1mLにつき約75mg〜約150mgの量で存在する異性体の平衡混合物;(2)医薬組成物1mLにつき約0.05mmol〜約0.15mmolの量で存在するクエン酸および場合により、そのpH範囲に達するのに有効な一定量の塩酸;(3)医薬組成物1mLにつき約400mg〜約600mgの量で存在するプロピレングリコール;(4)医薬組成物1mLにつき約1mg〜約8mgの量で存在するモノチオグリセロール;および(5)医薬組成物1mLにつき約250mg〜約550mgの量で存在する水を含む。
【0043】
最も好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、約5.2〜約5.6のpHを有し、(1)医薬組成物1mLにつき約90mg〜約110mgの量で存在する異性体の平衡混合物;(2)医薬組成物1mLにつき約0.075mmol〜約0.125mmolの量で存在するクエン酸および場合により、そのpH範囲に達するのに有効な一定量の塩酸;(3)医薬組成物1mLにつき約450mg〜約550mgの量で存在するプロピレングリコール;(4)医薬組成物1mLにつき約4mg〜約6mgの量で存在するモノチオグリセロール;および(5)医薬組成物1mLにつき約300mg〜約500mgの量で存在する水を含む。
【0044】
これら医薬組成物は、次のように製造することができる。試薬を、任意の窒素オーバーレイを含むステンレス鋼製またはガラス内張ジャケット付き容器中に加えた。注射用水をその反応容器に加え、撹拌を開始する。混合物を絶えず撹拌しながら、各追加成分を加える。水1mLにつき約0.02mmol〜約0.5mmolの濃度の酸を加え、溶解させる。場合により、pHを所望の範囲に調整するように、酸の水溶液、例えば、塩酸の10%(w/w)水溶液を加え、溶液を混合する。この時点で、異性体I、または異性体Iおよび異性体IIの混合物を、水および酸の混合物に、凝集を免れるように徐々に且つ少量ずつ加える。異性体I、または異性体Iおよび異性体IIの混合物を溶解させ、得られた溶液のpHを測定する。一つの態様において、異性体Iまたは異性体Iおよび異性体IIの混合物の濃度は、得られた溶液1mLにつき約50mg〜約500mg、好ましくは、約100〜約300mg/mL、そして最も好ましくは、約225〜約275mg/mLである。次に、その溶液を約70℃±10℃の温度に加熱し、そして異性体の平衡混合物が得られるまでこの温度で維持する。異性体の平衡混合物が得られたことを確認する方法には、ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーが含まれる。概して、本明細書中に記載の条件を用いると、異性体の平衡混合物が約1〜約8時間で得られる。いったん異性体の平衡混合物が得られたら、得られた溶液を約25℃±10℃に冷却する。この溶液を医薬組成物として用いることができる。好ましくは、補助溶媒を、医薬組成物1mLにつき約250〜約750mgの量で加える。場合により、酸化防止剤を、医薬組成物1mLにつき約0.01mg〜約10mgの量で加える。存在する場合、保存剤を、医薬組成物1mLにつき約0.01mg〜約10mgの量で加え、そして酸および/または塩基を、例えば、10%(w/w)水溶液としてまたは固体で加えることによって、pHを約5.0〜約8.0、好ましくは、約5.0〜約6.0に調整する。得られた混合物を、所望の量まで希釈する。一つの態様において、異性体の平衡混合物の最終濃度は、得られた医薬組成物1mLにつき約50mg〜約200mg、好ましくは、約75mg〜約150mg、そして最も好ましくは、約90mg〜約110mgである。
【0045】
得られた組成物は、好ましくは、例えば、プレフィルター、例えば、5〜10ミクロンフィルターの後、予め滅菌された0.2ミクロン最終滅菌用フィルターを介して組成物を通過させることによって滅菌される。滅菌用フィルターは、121℃で60分間の湿熱オートクレーブ処理によって滅菌され、そして圧力保持法を用いて、滅菌前および生成物濾過後の完全性について調べられる。滅菌溶液を適当な容器、例えば、ガラスバイアルに加えるが、これらは、乾熱トンネル中において250℃で240分間滅菌され且つ脱発熱処理(depyrogenated)される。容器ヘッドスペースに、不活性ガス、例えば、アルゴンまたは好ましくは、窒素をフラッシュする。それら容器に、洗浄することによって脱発熱処理され且つ121℃で60分間の湿熱オートクレーブ処理によって滅菌されているストッパーで蓋をする。次に、それら容器にオーバーシールをする。当業者は、上記への僅かな修飾を用いて、滅菌組成物を製造することができるということを理解するであろう。
【0046】
本発明は、更に、哺乳動物を処置する方法であって、このような処置を必要としている哺乳動物に、薬学的有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む方法に関する。本発明の医薬組成物は、アクチノバチルス・プレウロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoia)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラ・ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)、H.パラスイス(H. parasuis)、B.ブロンキセプティカ(B. bronchiseptica)、S.コレレスイス(S. choleraesuis)、S.ピロ(S. pilo)、モラクセラ・ボビス(Moraxella bovis)、H.ソムヌス(H. somnus)、M.ボビス(M. bovis)、アイメリア・ズエルニイ(Eimeria zuernii)、アイメリア・ボビス(Eimeria bovis)、A.マージネレ(A. marginale)、M.ヒオニューモニエ(M. hyopneumoniae)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、およびブドウ球菌(staphylococcus)、サルモネラ(salmonella)、クラミジア(chlamydia)、コクシジウム(coccidia)、クリプトスポリジウム(cryptosporidia)、大腸菌(E. coli)、ヘモフィルス(haemophilus)、ネオスポラ(neospora)および連鎖球菌(streptococcus)の種が含まれるがこれに制限されるわけではないグラム陽性細菌、グラム陰性細菌、原生動物およびマイコプラズマによる感染を処置するのに用いることができる。
【0047】
本明細書中で用いられる“処置”という用語は、特に断らない限り、本発明の方法において提供される細菌感染または原生動物感染の処置および予防を含む。
本明細書中で用いられる1種類または複数の“細菌感染”および“原生動物感染”という用語は、特に断らない限り、哺乳動物、魚類および鳥類において起こる細菌感染および原生動物感染、更には、本発明の化合物などの抗生物質を投与することによって処置するまたは予防することができる細菌感染および原生動物感染に関連した疾患を含む。このような細菌感染および原生動物感染、およびこのような感染に関連した疾患には、次が含まれる。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)種による感染に関連した肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎および乳様突起炎;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、C群およびG群連鎖球菌、クロストリジウム・ジフテイエ(Clostridium diptheriae)またはアクチノバチルス・ヘモリティクム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関連した咽頭炎、リウマチ熱および糸球体腎炎;肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pnemoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae またはクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連した気道感染;Staphylococcus aureus、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌(すなわち、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、S.ヘモリティクス(S. hemolyticus)等)、Streptococcus pyogenes、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、C〜F群連鎖球菌(マイニュートコロニー連鎖球菌)、ヴィリダンス型連鎖球菌、コリネバクテリウム・ミヌチシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム属(Clostridium)種またはバルトネラ・ヘンセレエ(Bartonella henselae)による感染に関連した併発症を伴わない皮膚および軟組織感染、膿瘍および骨髄炎、および産褥熱;スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)またはエンテロコッカス属(Enterococcus)種による感染に関連した併発症を伴わない急性尿路感染症;尿道炎および子宮頸管炎;およびトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、デュクレー菌(Haemophilus ducreyi)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウレアプラスマ・ウレアリティクム(Ureaplasma urealyticum)または淋菌(Neiserria gonorrheae)による感染に関連した性感染病;S.aureus(食中毒および毒性ショック症候群)またはA群、B群およびC群連鎖球菌による感染に関連した毒素疾患;ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連した潰瘍;回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)による感染に関連した全身性熱性症候群;ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染に関連したライム病;Chlamydia trachomatis、Neiserria gonorrheae、S.aureus、S.pneumoniae、S.pyogenes、H.influenzae またはリステリア属(Listeria)種による感染に関連した結膜炎、角膜炎および涙嚢炎;鳥型結核菌(Mycobacterium avium)またはミコバクテリウム・イントラセルレア(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連した播種性鳥型結核菌細胞内複合体(MAC)疾患;キャンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)による感染に関連した胃腸炎;クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)種による感染に関連した腸原生動物;ヴィリダンス型連鎖球菌による感染に関連した歯原性感染;百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連した持続性咳;ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)またはバクテロイデス属(Bacteroides)種による感染に関連したガス壊疽;および Helicobacter pylori または Chlamydia pneumoniae による感染に関連したアテローム性動脈硬化症。哺乳動物において処置するまたは予防することができる細菌感染および原生動物感染、およびこのような感染に関連した疾患には、次が含まれる。P.ヘム(P. haem)、P.マルトシダ(multocida)、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)またはボルデテラ属(Boedetella)種による感染に関連したウシ呼吸病;E.coli または原生動物(すなわち、コクシジウム、クリプトスポリジウム等)による感染に関連した雌牛腸疾患;Staph. aureus、ストレプトコッカス・ウベリス(Strep. uberis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Strep. agalactiae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Strep. dysgalactiae)、クレブシエラ属(Klebsiella)種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)または Enterococcus 種による感染に関連した乳用牛乳腺炎;A.プレウロ(A. pleuro)、P.multocida またはマイコプラズマ属(Mycoplasma)種による感染に関連したブタ呼吸病;E.coli、Lawsonia intracellularis、サルモネラ属(Salmonella)またはセルプリナ・ヒオジイスインテリエ(Serpulina hyodyisinteriae)による感染に関連したブタ腸疾患;フソバクテリウム属(Fusobacterium)種による感染に関連した雌牛趾間腐爛;E.coli による感染に関連した雌牛子宮炎;壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)またはバクテロイデス・ノドサス(Bacteroides nodosus)による感染に関連した雌牛毛様いぼ;Moraxella bovis による感染に関連した雌牛ピンクアイ;原生動物(すなわち、ネオスポリウム)による感染に関連した雌牛未成熟流産;E.coli による感染に関連したイヌおよびネコの尿路感染症;Staph. epidermidis、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staph. intermedius)、コウグラーゼ陰性ブドウ球菌またはP.multocida による感染に関連したイヌおよびネコの皮膚および軟組織感染;およびアルカリゲネス属(Alcaligenes)種、Bacteroides 種、クロストリジウム属(Clostridium)種、エンテロバクター属(Enterobacter)種、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、Peptostreptococcus、ポルフィロモナス属またはプレボテラ属(Prevotella)による感染に関連したイヌおよびネコの歯および口内感染。本発明の方法によって処置するまたは予防することができる他の細菌感染および原生動物感染、およびこのような感染に関連した疾患は、J.P.Sanford et al.,“The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy,”26th Edition, (Antimicrobial Theraph,Inc., 1996) に論評されている。
【0048】
細菌および原生動物病原体に対する本発明の化合物の抗細菌および抗原生動物活性は、ヒトまたは動物の病原体の規定の株の成長を阻害する化合物の能力によって示される。
検定I
下記の検定Iは、慣用的な方法および解釈基準を用い、規定のマクロライド耐性機構を迂回する化合物をもたらすことができる化学修飾への方向を与えるように設計される。検定Iにおいて、細菌株のパネルは、特性決定されたマクロライド耐性機構を代表するものを含めた種々の標的病原性種を含むように組み立てられる。このパネルの使用は、力価、活性スペクトル、および耐性機構を回避するのに必要でありうる構造的要素または修飾に関して、化学構造/活性関係を決定することを可能にする。スクリーニングパネルを含む細菌病原体を、下の表に示す。多くの場合、マクロライド感受性親菌株およびそれに由来するマクロライド耐性菌株は両方とも、耐性機構を迂回する化合物の能力のより正確な評価を与えるように利用可能である。ermA/ermB/ermCの呼称の遺伝子を含有する菌株は、Ermメチラーゼによる23SrRNA分子の修飾(メチル化)のために、マクロライド系、リンコサミド類およびストレプトグラミンBの抗生物質に耐性であり、したがって、概して、全3種類の構造クラスの結合を妨げる。二つのタイプのマクロライド流出が記載されており、mrsAは、マクロライド系およびストレプトグラミン系の流入を妨げるブドウ球菌の流出系の成分をコードしているが、mefA/Eは、マクロライド系だけを流出すると考えられる膜貫通タンパク質をコードしている。マクロライド系抗生物質の失活は起こりうるし、2N−ヒドロキシル(mph)のリン酸化によってかまたは大環式ラクトン(エステラーゼ)の切断によって媒介されうる。これら菌株は、慣用的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いておよび/または耐性決定因子を配列決定することによって特性決定することができる。この用途でのPCR技術の使用は、J.Sutcliffe et al.,“Detection Of Erythromycin Resistant Determinants By PCR”, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 40(11),2562-2566(1996) に記載されている。この検定は、マイクロリットルトレー中で行われ、そして The National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)ガイドラインによって公表された Performance Standards for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests - Sixth Edition; Approved Standard にしたがって解釈され、その最小阻止濃度(MIC)を用いて菌株を比較する。アザライド異性体の平衡混合物を、最初に、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に40mg/ml原液として溶解させる。
【0049】
【表1】

【0050】
検定IIを用いて、Pasteurella multocida に対する活性について調べ、検定IIIを用いて、Pasteurella haemolytica に対する活性について調べる。
検定II
この検定は、マイクロリットルフォーマットでの液体希釈法に基づく。P.multocida(59A067菌株)の単一コロニーを、5mlの脳心臓浸出(BHI)ブイヨン中に接種する。アザライド異性体の平衡混合物は、1mgの混合物を125μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させることによって製造される。アザライド異性体の平衡混合物の希釈は、未接種BHIブイヨンを用いて調製する。用いられるアザライド異性体の平衡混合物の濃度は、2倍連続希釈で200μg/mL〜0.098μg/mLである。P.multocida を接種したBHIを、未接種BHIブイヨンで希釈して、10個/200μLの細胞懸濁液を製造する。そのBHI細胞懸濁液を、アザライド異性体の平衡混合物のそれぞれの連続希釈と混合し、37℃で18時間インキュベートする。その最小阻止濃度(MIC)は、未接種対照との比較によって決定されるP.multocida の成長の100%阻止を示す混合物の濃度に等しい。
【0051】
検定III
この検定は、Steers Replicator を用いた寒天希釈法に基づく。寒天平板から単離される2〜5個のコロニーを、BHIブイヨン中に接種し、37℃で振とうしながら(200rpm)一晩インキュベートする。翌日、300μLの充分に成長したP.haemolytica プレ培養物を、3mlの新鮮BHIブイヨン中に接種し、37℃で振とうしながら(200rpm)インキュベートする。アザライド異性体の平衡混合物の適当量をエタノール中に溶解させ、一連の2倍連続希釈を調製する。それぞれの連続希釈2mLを、18mLの溶融BHI寒天と混合し、凝固させる。接種されたP.haemolytica 培養物が0.5 McFarland 標準密度に達した時点で、約5μLのP.haemolytica 培養物を、Steers Replicator を用いて、いろいろな濃度のアザライド異性体の平衡混合物が入っているBHI寒天平板上に接種し、37℃で18時間インキュベートする。混合物の初期濃度は、100〜200μg/mLである。そのMICは、未接種対照との比較によって決定されるP.haemolytica の成長の100%阻止を示す混合物の濃度に等しい。
【0052】
最も好ましくは、微量希釈検定を、本明細書中に参照により取り込まれるNCCLSガイドラインM31−A,Vol.19, No,11,“Performance standards for antimicrobial disk and dilution susceptibility tests for bacteria isolated from animals,”June 1999(ISBN 1−56238−377−9) にしたがって、陽イオン調整された Mueller-Hinton ブイヨンを用いて行う。この検定は、P.haemolytica およびP.multocida 両方に対する化合物のMICを決定するのに用いることができる。例えば、異性体の平衡混合物を、P.haemolytica(ATCC14003)に対してこの標準によって調べ、1μg/mLのMICを有することが判明した。異性体の平衡混合物を、P.multocida(ATCC43137)に対してこの標準によって調べた場合、MICは1μg/mLであることが判明した。
【0053】
検定IV
本発明の医薬組成物の in vivo 活性は、通常はマウスで行われる、当業者に周知の慣用的な動物防御実験によって決定することができる。
【0054】
マウスを、それらの到着時にケージに分け(10匹/ケージ)、用いる前に最低48時間順応させる。被験動物に、0.5mlの3x10CFU/ml細菌懸濁液(P.multocida 菌株59A006)を腹腔内接種する。各実験は、0.1Xチャレンジ用量を感染させた一つおよび1Xチャレンジ用量を感染させた二つを含めた少なくとも3種類の無投薬対照群を有し、10Xチャレンジデータ群も用いてよい。概して、ある与えられた実験における全マウスに、特に、反復シリンジ(Cornwall 7シリンジなど)を用いてチャレンジを投与する場合、30〜90分以内にチャレンジすることができる。チャレンジを開始してから30分後、1回目の医薬組成物処置を行う。被験動物のいずれもが、30分の最後にチャレンジされなかった場合、他の人が医薬組成物投与を始める必要があるかもしれない。投与経路は、皮下または経口投薬である。皮下投薬は、首の後の柔らかな皮膚中に投与されるが、経口投薬は、給餌用針によって与えられる。どちらの場合も、0.2ml/マウスの容量を用いる。組成物は、チャレンジ後30分、4時間および24時間に投与される。同じ経路によって投与される既知の効力の対照組成物を各試験に包含する。被験動物を毎日観察し、各群の生存数を記録する。P.multocida モデル監視は、チャレンジ後96時間(4日間)続ける。
【0055】
PD50は、試験される医薬組成物が、処置の不存在において致命的であると考えられる細菌感染による致死率からある群のマウスの50%を防御する計算用量である。
本発明の医薬組成物は、上記の検定の一つにおいて、特に、検定IVにおいて、抗細菌活性を示す。
【0056】
本発明の医薬組成物は、このような処置を必要としているヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ネコ、イヌおよび他の哺乳動物を処置するのに用いることができる。具体的には、本発明の医薬組成物は、特に、ウシ呼吸病、ブタ呼吸病、肺炎、パスツレラ症、コクシジウム症、アナプラズマ症および伝染性角膜炎を処置するのに用いることができる。これら医薬組成物は、経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、非経口、局所、膣内または直腸経路によって投与することができる。ウシ、ブタまたは他の家畜動物への投与には、医薬組成物を飼料中で投与してよいしまたは飲薬組成物として経口投与してよい。好ましくは、医薬組成物は、筋肉内、静脈内または皮下に注射する。好ましい態様において、医薬組成物は、1日に体重1kgにつき約0.5mgの異性体の平衡混合物(mg/kg/日)〜約20mg/kg/日の用量で投与する。より好ましい態様において、医薬組成物は、約1mg/kg/日〜約10mg/kg/日の用量で投与する。最も好ましい態様において、医薬組成物は、約1.25mg/kg/日〜約5.0mg/kg/日の用量で投与する。医薬組成物は、1日に数回まで、約1〜約15日間、好ましくは、約1〜約5日間投与することができ、適当な場合、反復することができる。当業者は、投薬量の変更が、処置される対象の種、体重および状態、医薬組成物へのその個々の応答、および選択される具体的な投与経路に依ってありうるということを容易に理解するであろう。ある場合には、前述の範囲の下限より低い用量レベルが治療的に有効であるかもしれないが、他の場合には、なお一層多い用量を、このような一層多い用量を当日中の投与のために最初にいくつかの小用量に分割するという条件ならば、全く有害な副作用を引き起こすことなく用いることができる。
【0057】
次の実施例は、本発明の組成物および方法を更に詳しく説明する。本発明が、下に与えられる実施例の具体的な詳細に制限されないということは理解されるはずである。
実施例1
異性体IIの合成。2Lエルレンマイヤーフラスコに、デスメチルアジスロマイシン(190.5g,259.2mmol)、塩化メチレン(572mL)および硫酸マグネシウム(38g)を加えた。その混合物を10分間撹拌後、5L丸底フラスコ中に濾過した。追加の塩化メチレン(2285mL)を加え、その溶液を0〜5℃に冷却した。次に、CBZ−Cl(58.4mL)(CBZ−Cl=クロロギ酸ベンジル)を10分間にわたって加えた。その反応を、約0℃で6時間、次に周囲温度で一晩撹拌した。HPLC分析は、残留する出発物質の存在を示したので、反応を約0℃に再冷却し、追加のCBZ−Cl(19.5mL)を一度に加えた。反応を0℃で5.5時間、次に周囲温度で2.5時間撹拌した。TLCは、完成した反応を示した。その反応を、飽和水性重炭酸ナトリウム(953mL)で急冷し、相を分離した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、濾過し、濃縮して、式(III)の化合物を与えた。
【0058】
【化6】

【0059】
塩化メチレン(901mL)およびDMSO(450mL)中の式(III)の化合物(225.3g)が入っている5L丸底フラスコに−65℃で、無水トリフルオロ酢酸(82.4mL)を加えた。9分で終えた添加の間中、温度を−60℃で維持した。反応を、約−65℃〜−70℃で20分間撹拌した。その反応を、トリエチルアミン(145mL)で急冷後、約−60℃〜−65℃で20分間撹拌した。次に、その反応混合物に水(1127mL)を3分間にわたって加え、その時点で、温度を−2℃に上昇させた。反応混合物を10分間撹拌し、相を分離させた。有機相を水(675mL)で、次に飽和水性塩化ナトリウム(675mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、濾過し、有機溶媒を蒸留によって除去した。MTBEを加え、蒸留して、塩化メチレンおよびDMSOの痕跡を全て除去した。追加のMTBEを加えて、3380mLの全容量とした。MTBE(1126mL)中のジベンゾイル−D−酒石酸一水和物(87.8g)を加えて、濃厚スラリーを形成させた。その混合物を加熱して還流し、一晩撹拌した。周囲温度まで冷却後、固体をブフナー漏斗に集め、MTBEで洗浄した。固体を、乾燥オーブン中において40℃で乾燥させて、258.3gの式(IV)の化合物のジベンゾイル酒石酸塩を与えた。
【0060】
【化7】

【0061】
3L丸底フラスコに、塩化メチレン(800mL)および式(IV)の化合物のジベンゾイル酒石酸塩(188g)を加えた。水(400mL)および炭酸カリウム(45.5g)を加え、その混合物を周囲温度で5分間撹拌した。有機相を分離後、水(250mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾過によって除去し、得られた溶液を窒素流下で蒸発させて、623mLの最終容量とし、遊離塩基ケトンを与えた。
【0062】
5L丸底フラスコに、THF(623mL)および臭化トリメチルスルホニウム(74.7g)を加えた。得られたスラリーを−10℃に冷却し、カリウム tert−ブトキシド(54.4g)を加えた。反応混合物を−10℃で10分間撹拌後、−70℃に5分間にわたって冷却した。遊離塩基ケトンの溶液を、11分間にわたって−60〜−65℃の温度を維持しながら加えた。HPLCは、90分後に反応が完了したことを示した。塩化アンモニウム(315g)の水(1800mL)中溶液を用いて、−60℃で反応を急冷した。その急冷中に、温度は−5℃に上昇した。その反応混合物を5〜10℃に加温し、相を分離した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、濾過し、濃縮して、式(V)の化合物(117.4g)を黄色泡状物として与えた。HPLCは、ピーク領域付近で61.4%の純度を示した。
【0063】
【化8】

【0064】
式(V)の化合物(275g,312mmol)の乾燥メタノール(2.75L)中溶液に、ヨウ化カリウム(518g,3.12mol)およびn−プロピルアミン(250mL,3.04mol)を加えた。混合物を45℃で一晩撹拌した。TLCは、完成した反応を示した。その反応をロータリーエバポレーターで濃縮し、残留物を水(2.5L)と塩化メチレン(2.5L)とに分配した。水性相のpHを、3N水性HClを用いて6.7に調整した。抽出を更に1回繰り返した。合わせた水性相を新たな塩化メチレン(1.5L)と混合し、その水性相のpHを、固体炭酸カリウムを用いて8.5に調整した。相を分離し、水性相を、追加の塩化メチレンで2回再抽出した。合わせた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して、ベージュ色泡状物(230g)を与えた。その泡状物の精製は、スラリー充填シリカゲルカラム上において19/3(v/v)ヘキサン−ジエチルアミンを移動相として用いて行った。この方法で、125gの粗生成物は、72gの異性体Iを白色非晶質泡状物として与えた。
【0065】
異性体Iをアセトニトリル(0.5L)中に周囲温度で溶解させた。次に、脱イオン水(1L)を加えて、沈澱を生じさせた。次に、追加のアセトニトリル(0.5L)を加えて均一溶液を与え、これを周囲温度で30時間撹拌した。HPLC分析は、約20%の全ピーク領域を構成する新しい成分の形成を示した。
【0066】
有機溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。炭酸カリウム(30g)を水性残留物に加えた後、塩化メチレン(0.3L)を加えた。混合物を浸透させ、下方の有機相を除去した。更に2回の抽出(2x0.3L)も行った。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、濾過し、得られた溶液を濃縮して乾燥泡状物(約10g)にした。
【0067】
得られた異性体Iおよび異性体IIの混合物を、塩化メチレンおよび19/3(v/v)ヘキサン−ジエチルアミンの混合物中に溶解させ、スラリー充填シリカゲルカラムに入れた後、19/3システムで溶離した。溶離剤を、画分56で19/6ヘキサン−ジエチルアミンに切り換えた。画分9〜17を一緒にし、濃縮して乾燥泡状物にしたが、これは、未反応の出発物質だけを含有していた。画分52〜72は、一緒にして濃縮したところ、異性体II(HPLCによる79%純度)を含有していた。
【0068】
実施例2
下の表1は、平衡化反応速度へのおよび平衡化後の主要不純物のレベルへの、pH、温度、酸タイプおよび異性体I濃度の作用を示す。反復実験(データは示されていない)は、結果の再現性を示した。異性体IおよびIIの平衡比率(それぞれ約90%±4%対約10%±4%)は、全実験について一致した。データの分析は、pHおよび温度が、平衡化に必要な時間への有意の作用を有するということを示した。いかなる理論にも拘束されたくはないが、より低い平衡化温度またはより低いpH値は、概して、実質的に一層長い平衡化時間をもたらす。平衡化時間は、特に、出発物質の濃度、および用いられる酸のタイプおよび濃度にも依ることがありうる。組成物1mLにつき約300mgまでの濃度の異性体Iを、混合物1mLにつき約0.2mmol〜約1.0mmolの濃度の1種類またはそれより多い酸の存在下においておよび約6.5〜約7.5のpHに達する充分な量の塩酸と一緒に、約40℃〜約80℃の温度で約20時間まで加熱して、約95%〜98%純度である異性体の平衡混合物を生じた。アザライド異性体IおよびIIの平衡化についての平衡化反応速度パラメーターおよび不純物レベルは、pH、平衡化温度、酸のタイプおよび異性体I濃度の関数として決定されており、表1に挙げられる。高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)、核磁気共鳴分光法(“NMR”)、ガスクロマトグラフィー(“GC”)、質量分析法(“MS”)、液体クロマトグラフィー/質量分析法(“LC/MS”)、GC/MSおよび薄層クロマトグラフィー(“TLC”)を含めた既知の方法は、不純物を識別するのに用いることができる。“DS”とは、平衡化前の異性体Iを意味し、比較のために包含される。
【0069】
異性体の平衡混合物を、次のように製造し且つ検定した。40mLの溶液を、実験1A〜11Aの各々において調製し、各溶液を1mLアリコートに分けた後、平衡化をいろいろな時点で一層容易に監視するために加熱した。20mLの溶液を、実験12B〜24Bの各々において調製し、各溶液を0.7mLアリコートに分けた後、加熱した。100mLの溶液を、実験25C〜28Cの各々において調製し、200mLの溶液を、実験29C〜30Cの各々において調製し、そしてそれら溶液から取り出された0.5mLアリコートから平衡化を監視した。60mLの溶液を、実験31D〜33Dおよび35D〜41Dの各々において調製し、170mLの溶液を、実験34Dにおいて調製し、そしてそれら溶液から取り出された0.5mLアリコートから平衡化を監視した。7,200mL〜54,000mLの溶液を、実験42E〜46Eの各々において調製し、そしてそれら溶液から2mL〜5mLアリコートを取り出すことによってから平衡化を監視した。35mL〜50mLの溶液を、実験47F〜50Gの各々において調製し、そして各溶液を1mLアリコートに分けた後、加熱した。水を適当な容器に加えた後、表1の列4に挙げられた酸のタイプおよび量を加えた。酸タイプの前にある“qs”という用語は、列2に挙げられたpHに達するのに充分な酸の量を意味する。0.1Mクエン酸または酒石酸を用いる場合、塩酸も、列2に挙げられたpHを得るのに充分な量で加えた。酸濃度が、カラム4に挙げられている場合(例えば、“0.1Mクエン酸”)、これは、100mg/mLの濃度で存在する異性体Iおよび異性体IIの平衡化した混合物を有する溶液中の酸の濃度である。水および酸の混合物を、酸の全てが溶解するまで(より少ない容量については約5分間またはそれ未満、およびより多い容量については約20分間)撹拌した。異性体Iを、凝集を免れるように徐々に且つ少量ずつ加え、得られた混合物を、溶解するまで(より少ない容量については30分未満、およびより多い容量については約60〜120分間)激しく撹拌した。異性体Iの溶解後、得られた溶液のpHを測定した。そのpHが、列2に挙げられたpHより低い場合、10%水酸化ナトリウムで、列2に挙げられたpHまでそれを上昇させた。pHが、列2に挙げられたpHより高い場合、それを1種類または複数の適当な酸で低下させた。各実験について、溶液を、列3に示された温度で、下記のHPLC検定の一つによって確認されるように異性体の平衡混合物が得られるまで加熱した。ある実験では、混合物を、平衡化(列8の100%より大の百分率)に必要とされるよりも長い時間加熱して、不純物の度合いへの長時間加熱の作用を確認した。
【0070】
アザライド異性体の平衡化を監視するために、反応混合物アリコートを、HPLCにより、平衡化中のいろいろな時点で検定した。表1に示される平衡化実験の大部分について、アリコートを、40mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で希釈して、全試料容量1mLにつき約0.5mgのアザライド異性体濃度とし、そして Asahipak ODP−50、50μm、250x4.0mmカラム(40%アセトニトリル/35%メタノール/25% 40mMリン酸カリウム;pH8.5移動相;流速0.7mL/分;室温)を用いて、外部 Applied Biosystems 783A Programmable Absorbance Detector を装備したHP1090 Liquid Chromatograph でクロマトグラフィーを行った。ピークは、210nmでの紫外線吸収を監視することによって検出した。表1に示される残りの平衡化実験(実験31D〜46E)について、アリコートを、20%アセトニトリル/50%メタノール/30% 50mMリン酸カリウム(pH5.5)で希釈して、全試料容量1mLにつき1.0mgのアザライド異性体濃度とし、そしてYMC Pro-Pack C18、3μm、50x2.0mmカラム(20%アセトニトリル/50%メタノール/30% 50mMリン酸カリウム;pH7.0移動相;流速0.5mL/分;室温)を用いて、内部UV Detector を装備したHP1090 Liquid Chromatograph でクロマトグラフィーを行った。ピークは、210nmでの紫外線吸収を監視することによって検出した。異性体Iおよび異性体IIの相対量は、それらの相対クロマトグラム−ピーク面積比を得ることによって決定した。上のHPLC条件下において、異性体Iは、約13〜23分の保持時間を有し、異性体IIは、約0.8〜0.9の相対保持時間(“RRT”)を有する。“RRT”とは、上記のHPLC条件下の異性体Iの場合に相対する保持時間を意味する。
【0071】
表1の平衡化した試料の純度は、HPLCを用いて、3種類の手順の内の一つにしたがって決定した。実験1A〜24B、48Fおよび50Gにおいて、アリコートを、25mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.5)で希釈して、全試料容量1mLにつき1.25mgのアザライド異性体濃度とし、そして Eclipse XDB−C、5μm、250x4.6mmカラム(22%アセトニトリル/58%メタノール/20% 25mMリン酸カリウム;pH8.0移動相;流速0.6mL/分;室温)を用いて、BAS CC−5/LC−4C Amperometric Detector を装備した Waters Alliance 2690 Separation Module で検定した。ピークは、+0.70Vの一つの電極、+0.88Vの次の電極、および0.5μAの範囲で電気化学的に検出した。実験25C〜41Dにおいて、アリコートを、50mMクエン酸(pH5.5)で希釈して、全試料容量1mLにつき0.25mgのアザライド異性体濃度とし、そしてYMC Pro-Pack C18、3μm、150x4.6mmカラム(70%メタノール/30% 50mMリン酸;pH7.0移動相;流速1mL/分;室温)を用いて、Waters Alliance システムで検定した。ピークは、+0.90Vの一つの電極だけで電気化学的に検出した。実験42E〜43Eにおいて、アリコートを、50mMクエン酸(pH5.5)で希釈して、全試料容量1mLにつき0.25mgのアザライド異性体濃度とし、そしてYMC Pro-Pack C18、3μm、150x4.6mmカラム(70%メタノール/30% 50mMリン酸;pH7.0移動相;流速1mL/分;室温)を用いて、BAS CC−5/LC−4C Amperometric Detector を装備したHP1090 Liquid Chromatograph で検定した。ピークは、+0.90Vの一つの電極だけで電気化学的に検出した。異性体の平衡混合物の百分率(列9)および検定された試料に相対する不純物(列10)は、クロマトグラム中のピーク下面積を用いて決定した。検出された不純物のいくつかは、デスクラジノースアザライド(そのRRTは、Eclipse XDB−Cカラムで約0.26である)、アセトアルデヒド挿入産物(そのRRTは、Eclipse XDB−Cカラムで約1.75である)およびホルムアルデヒド挿入産物(そのRRTは、Eclipse XDB−Cカラムで約1.65である)であった。
【0072】
デスクラジノースアザライドは、次の構造を有する。
【0073】
【化9】

【0074】
アセトアルデヒド挿入産物は、次の構造を有する。
【0075】
【化10】

【0076】
ホルムアルデヒド挿入産物は、次の構造を有する。
【0077】
【化11】

【0078】
デスクラジノースアザライド、アセトアルデヒド挿入産物およびホルムアルデヒド挿入産物、およびそれらの薬学的に許容しうる塩は、抗生物質特性を有し、抗生物質薬として有用である。
【0079】
表1のA群およびB群(実験番号の後の文字で識別される)の実験は、pH、温度、酸のタイプ、酸の濃度、および異性体I濃度の平衡化への作用を決定するために行った。表1のC群の実験は、pHおよび温度の平衡化への作用を詳しく説明する。表1のD群の実験は、pH、温度および酸濃度の平衡化への作用を詳しく説明する。表1のE群の実験は、約7.0のpH、約70℃の平衡化温度および約250mg/mLの異性体I濃度においてである平衡化の好ましい方法を詳しく説明する。F群の実験は、別の酸および平衡化温度の作用を調べ、実験Gは、50%プロピレングリコール補助溶媒の存在下で行った。
【0080】
これら実験の結果は、いろいろな条件下においても、アザライド異性体の平衡化は、一貫して、約90%±4%の異性体Iおよび約10%±4%の異性体IIの形成をもたらすということを示している。平衡化温度およびpHは、平衡化速度への最大の作用を有すると考えられ、概して、温度が高いほど、より高濃度の異性体Iでも、より速い速度をもたらす。しかしながら、ほとんどの場合、平衡化時間が長いほど、より高濃度の不純物を生じ、したがって、最適平衡化条件は、比較的高い平衡化速度もたらすもの、すなわち、異性体の平衡混合物を1〜3時間で形成する条件である。
【0081】
【表2A】

【0082】
【表2B】

【0083】
【表2C】

【0084】
【表2D】

【0085】
【表2E】

【0086】
実施例3
50℃で12週間貯蔵され且つ補助溶媒で安定化された平衡化組成物の安定性を、下の表2に示す。これら結果は、補助溶媒不含組成物が、組成物1mLにつき約250〜約500mgの量の補助溶媒を含有する組成物よりも有意に安定性が小さいということを示している(実験1A〜11B)。約5.4のpHを有し且つプロピレングリコール(“PG”)を組成物1mLにつき約450〜約550mgの量で含有する組成物は、最も安定である。他の補助溶媒を用いて、組成物を安定化させることができるが(実験1E〜2E)、しかしながら、プロピレングリコールが好適である。表2に示されるように、安定性はpHに依存し、そしてそれは、用いられる酸のタイプおよび量、平衡化された異性体混合物の濃度にも依存しうる。
【0087】
これら組成物を次のように製造した。所望の温度(列2)まで加熱し、そして水、酸および異性体Iの混合物を列3に示された時間平衡化させた後、異性体の平衡混合物を室温まで冷却させた。これら混合物が室温に達した時点で、適当量の所望の補助溶媒を加えた(列6)。列6に示される補助溶媒の百分率は、重量−容量百分率である(例えば、50%PGは、医薬組成物1mLにつき500mgのプロピレングリコールである)。酸化防止剤または保存剤を用いる場合、適当量を加えた(列8および9)。溶液のpHを測定し、1種類またはそれより多い酸および/または10%w/w水酸化ナトリウムを加えることによって列5中の値に調整した。次に、得られた溶液の容量を、水を加えることによって調整した。これら組成物を、0.2ミクロン滅菌用フィルターを介して濾過した。バイアルに、層流フード中で充填し、そしてバイアルヘッドスペースを適当なガス混合物(列10)でフラッシュした後、密封した。
【0088】
平衡化および純度は、上の実施例2に記載のようにHPLCを用いて監視した。ガラスバイアル中に密封された安定化された平衡化組成物の安定性は、50℃で12週間貯蔵後に決定された。異性体の平衡混合物の濃度、pH、補助溶媒の量およびタイプ、酸のタイプおよび濃度、空気への暴露、保存剤の存在、および酸化防止剤の存在の作用を監視した。結果を表2に示す。
【0089】
実験1A〜3Aは、安定性への平衡混合物濃度の作用を監視するために行った。実験2A、6Aおよび7Aは、安定性へのpHの作用を監視するために行った。実験2A、4Aおよび5Aは、安定性への補助溶媒量の作用を示し、実験3Aおよび8Aは、酸性pHを得るために、クエン酸およびリン酸の混合物に対立するものとしてクエン酸を単独で用いることの作用を示している。実験1B〜11Bは、安定性へのpHおよびプロピレングリコール(“PG”)補助溶媒の作用を示す。実験1Cおよび2Cは、酸性pHを得るために、酒石酸および塩酸の混合物に対立するものとして酒石酸を単独で用いることの作用を示している。実験9B〜11Bおよび3Cは、混合物の安定性への保存剤の作用を示し、実験9B〜11B、4Cおよび5Cは、混合物の安定性への酸化防止剤の作用を示している。実験6Cおよび7Cは、安定性への、酒石酸および塩酸の混合物またはクエン酸および塩酸の混合物を用いることの作用を示す。実験1D〜12Dは、安定性への異なった量のモノチオグリセロール(“MTG”)酸化防止剤および異なった酸素への暴露度の作用を示す。実験4D〜6Dおよび13D〜18Dは、安定性への組成物のpHおよび酸濃度の作用を示す。
【0090】
これら実験の結果は、50℃で12週間貯蔵後、少なくとも50%のプロピレングリコールを含有し且つ約5.2〜約5.5のpHを有する平衡化組成物は、異性体の平衡混合物の初期濃度の93%を越える濃度を保持しているということを示す。不純物の最高レベルは、補助溶媒不含組成物中で見出された(実験4A)。したがって、補助溶媒の存在は、驚くべきことに且つ意外にも、不純物の量を制限する。高レベルの不純物は、40%未満の補助溶媒および5.0未満のpHを有する組成物中で12週間後に見出された。酸の濃度も、医薬組成物の安定性に影響を与える。比較的低濃度の酸(約20mM)および約5.4のpHを有する組成物は、最大の貯蔵後安定性を示す。しかしながら、低い酸濃度は低い緩衝強度を生じ、これは、変動pHをもたらし、他の時間または温度条件下において比較的高い度合いの不純物をもたらすことがありうる。
【0091】
【表3A】

【0092】
【表3B】

【0093】
【表3C】

【0094】
【表3D】

【0095】
実施例4
組成物1mLにつき100mgの異性体の平衡混合物を含有する52リットルの注射可能医薬組成物を、次のように製造した。窒素(NF等級)を散布した16.584kgの注射用水(USP等級)を、ステンレス鋼製配合容器に加え、撹拌を開始した。窒素をオーバーレイとしても用いて、製造の際の配合容器中の溶液の酸素への暴露を減少させた。約1kgの無水クエン酸(USP等級)をその水に加え、得られた混合物を、酸が溶解するまで撹拌した。塩酸(NF等級)の水(USP等級)中10%(w/w)溶液の1.511kgを、引き続きその混合物に加えた。約97%の異性体Iおよび異性体II(約99:1の比率で)および3%の1種類またはそれより多い不純物を含有する混合物5.357kgを、その撹拌混合物に徐々に加え、溶解させた。得られれた溶液のpHを、塩酸の水中10%(w/w)溶液0.224kgを加えることによって7.0±0.5に調整した。異性体IおよびIIの平衡化は、その溶液を70℃±10℃に105分間加熱することによって達成された。HPLCを用いて決定される平衡化がいったん完了したら、その溶液を25℃±10℃に冷却させ、26.008kgのプロピレングリコール(USP等級)を撹拌混合物に加えた。プロピレングリコールが完全に混合された後、0.26kgのモノチオグリセロール(NF等級)を溶液に加え、そのpHを、塩酸の水中10%(w/w)溶液2.349kgを加えることによって5.4±0.3に再調整した。最終容量は、1.843kgの水を加えることによって52.015リットルに調整した。得られた組成物は、組成物1mLにつき100mgの異性体の平衡混合物、500mg/mLのプロピレングリコール、0.1M濃度のクエン酸および5mg/mL(組成物)の濃度のモノチオグリセロールを含有した。
【0096】
この組成物を、6ミクロンプレフィルターを介して、次に、121℃で60分間の湿熱オートクレーブ処理によって滅菌され且つ圧力保持法を用いて滅菌前および濾過後両方の完全性について調べられた0.2ミクロン最終滅菌用フィルターを介して濾過した。20mLフリント1型血清ガラスバイアル(Wheaton Science Products, Millville, New Jersey)を、乾熱トンネル中において250℃で240分間滅菌し且つ脱発熱処理した。20mmの4432/50グレークロロブチルシリコーン化ストッパー(The West Company, Lionville, PA)を、洗浄することによって脱発熱処理し、121℃で60分間の湿熱オートクレーブ処理によって滅菌した。2,525個の各バイアルに、無菌条件下において、20mLの得られた組成物+0.6mLオーバーフィル(20.6mL/バイアルは、97.1%の実際の医薬物質ロット力価に基づく100mg/mLの異性体の平衡混合物での2.06g/バイアル単位力価の医薬組成物である)を充填し、そのバイアルヘッドスペースに窒素をフラッシュし、そしてバイアルをストッパーおよびオーバーシール(20mmアルブミンシール,製品#5120−1125,The West Company, Lionville, PA)で密封した。
【0097】
本発明は、発明の小数の側面の例示とされる実施例に開示された具体的な態様による範囲に制限されるべきではない。機能的に均等であるあらゆる態様が、本発明の範囲内である。実際上、本明細書中に示され且つ記載されたものに加えた発明の種々の修飾は、当業者に明らかになるであろうし、クレイムの範囲内とされる。
【0098】
本明細書中に開示された全ての参考文献は、参照により本明細書中にそのまま取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、Rは、
【化2】

であり、そしてここにおいて、
は、HまたはCHである)
を有する化合物またはその薬学的に許容しうる塩。

【公開番号】特開2006−282676(P2006−282676A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200807(P2006−200807)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【分割の表示】特願2001−561016(P2001−561016)の分割
【原出願日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】