説明

アシルフラボノイド誘導体の酵素による製造

(a)有機溶媒、グリコシル化フラボノイド又はアグリコンフラボノイド、アシル基供与体及び酵素触媒を含む反応媒体を調製し、(b)更なる量のフラボノイド及び/又はアシル基供与体を、反応中、任意に添加し、そして(c)得られたエステルを、酵素粒子及び溶媒を除去することによって精製することによる、フラボノイドエステル及びフラボノイド誘導体の酵素による合成方法を開示する。本発明の方法の特徴は、反応中に形成される水及び/又はアルコールの濃度を、150 mM 未満であるように調節することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、植物化学及び生物化学、特に、食品、化粧品及び医薬品製剤に使用するフラボノイド誘導体の酵素による製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドの生物学的作用は、長年、良く知られてきている。様々な酸化種を捕捉することによって、フラボノイドは、DNA、脂質及びタンパク質のような生体分子の酸化的損傷を防ぐ。抗酸化試験によれば、ある種のフラボノイドはビタミン C 及び E より効果的である。この主要な特性に加えて、酵素作用並びに動物細胞、ウィルス及び細菌の増殖の阻害を含む、幾つかの他の生物学的作用が立証されている。フラボノイドはまた、脈管系にも作用し、相当な抗酸化能力も有する。
【0003】
フラボノイドの皮膚保護特性及び皮膚洗浄特性、並びにその対老化、対皮膚変色及び皮膚の外観への効果の故に、フラボノイドは化粧品又は皮膚医薬品組成物の成分としても使用されている。フラボノイドはまた、髪の摩擦特性にも作用する。
【0004】
フラボノイドの抗酸化性は、その分子構造に依存する。構造/効果関係の研究は、抗酸化作用が、分子の環 B でのオルト-ヒドロキシル化、遊離ヒドロキシル基の数、環 C の炭素 2 及び 3 の間の二重結合の存在、並びに炭素 3 上のヒドロキシル基の存在に基づくことを示している(図 1)。
【化1】

【0005】
これらの分子の使用は、基本的に、一方では水性媒体及び有機媒体双方への非常に低い溶解性によって、他方では低い安定性によって制限される。フラボノイドは、光、酸素又は酸化剤及び温度上昇によって分解する。これらの制限が、食品、化粧品及び医薬品製剤への、フラボノイドの効果的な使用を妨げている。
この安定性の問題を解決するために様々な既知の方法があり、カプセル化及び酸化防止剤の配合を含む。残念ながら、完全に満足な解決法はなく、向上した安定性を有する、新規なグリコシル化フラボノイド及びアグリコンフラボノイドへの要望が未だに存在している。
【0006】
これら分子の特性を向上するため、酵素的変性及び化学的変性が提案されている。例えば、JP 55157580 及び JP 58131911 は、ピリジンの存在下でのジオキサン中のケルセチンの脂肪酸塩化物によるアシル化について記載している。しかしながら、これらの特許では、アシル化を有毒な溶媒の存在下に行う。その基質転化率は低い。同様に、フラボン、フラボノール及びフラバノンのアシル化が、Coletica の FR 2778663(US 6235294)に記載されている。この反応は、脂肪酸塩化物又は無水脂肪酸の存在下、化学的に行われた。これらの反応は、活性化脂肪酸及び有毒な溶媒(ピリジン、クロロホルム及びトルエン)、並びに高温(100 ℃)を使用する。その基質転化率は低い(約 10〜60 %)。更に、これらの反応は、ポリアシル化生成物を導く選択性を有しない。WO 09966062 は、フラボノイド(ケルセチン、ガランギン、(+)-カテコール)の脂肪酸(ラウリル酸、酪酸、酢酸など)による化学的アシル化及びそれに続くリパーゼ Mucor miehei による酵素加水分解工程について記載している。同発明は、FR 2778663(US 6235294)と同じ欠点を有する。最初のアシル化反応後、形成された生成物はポリアシル化される。モノエステルが望ましい場合、酵素的加水分解は、酵素の失活を避けるため、第一反応で使用した溶媒の除去後、第二工程で行わなければならない。
【0007】
フラボノイド変性はまた、EP 0618203 で記載されており、(+/-)-カテコールの酢酸エチル及びプロピオン酸エチルによるアシル化、並びにエピガロールカテコールのプロピオン酸フェニル及び酪酸フェニルによるアシル化について記載されている。この反応には、高価な酵素(Streptomyces rochei のカルボキシラーゼ)が必要であり、2 つの基質の転化率は非常に低い(アシル基供与体の 1 %未満)。最後に、WO 0179245(Henkel/Cognis)は、フラボノイド(ナリンギン、ルチン、アスパラチン、オリエンチン、ケルセチン、ケンフェロール、cis-オリエンチン、イソケルシトリン)の、様々な酸(p-クロロフェニル酢酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、5-フェニル吉草酸、クマリン酸、オレイン酸、リノール酸)による酵素的アシル化について記載している。同特許は、高濃度の Candida antarctica(40 g/l)及びフラボノイドに基づいて過剰なアシル基供与体を使用する方法について、記載している。この基質転化率は低い(10〜20 %)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の全ての開発は、低い収率を特徴とする。加えて、化学的変性は有毒な溶媒の使用を含み、反応は混合物の生成を導く非特異性のものであり、記載された酵素的反応はグリコシル化フラボノイドに限定されている。従来技術に記載されている低い転化率は、用いた方法が、溶解性の低い基質を用いた反応に適応しておらず、反応中に形成される水によって著しく損なわれるという事実に帰因する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(a)有機溶媒、グリコシル化フラボノイド又はアグリコンフラボノイド、アシル基供与体及び酵素触媒を含む反応媒体を調製し、
(b)更なる量のフラボノイド及び/又はアシル基供与体を、反応中、任意に添加し、
(c)このように得られたエステルを、酵素粒子及び溶媒を除去することによって精製する
フラボノイドエステル及びフラボノイド誘導体の酵素による合成方法であって、反応中に形成される水及び/又はアルコールの濃度を、150 mM 未満であるように調節することを特徴とする方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明、即ち、グリコシル化フラボノイド及びアグリコンフラボノイドの選択的アシル化方法は、その抗酸化性をそのまま維持するか又は向上して、様々な製剤中でのその安定性及び溶解性に関して、フラボノイド誘導体を改良する。これらの変性フラボノイドによって得られるもう 1 つの典型的な利点は、高い生物学的活性を有する二官能性分子を形成することである。
【0011】
従来技術で既知の方法と比較すると、本発明によれば、合成後の複雑かつ面倒な精製操作が軽減される一方で、フラボノイドエステルの最終濃度、転化率(フラボノイド及び元々存在したアシル基供与体両方の転化率)、特に生産性が明確に改善される。
【0012】
本発明の方法は、穏やかな温度及び圧力条件であるが有害な溶媒を用いない酵素的技術に基づき、フラボノイドエステルは、以下の反応式に従った直接エステル化又はエステル交換によって形成される:
フラボノイド + RCOOH → フラボノイド-OCOR + H2O
フラボノイド + RCOOR' → フラボノイド-OCOR + R'OH
[ここで、R' は C1〜4 アルキル基、好ましくは C1〜2 アルキル基である。]。
【0013】
本発明の方法は、反応媒体が最初に水を含まず、そのため反応開始前に存在する水を除去し、反応中に形成される水又はアルコールを反応進行中に除去することを特徴とする。水及び/又はアルコールは、使用する溶媒及び基質にとって適当な濃度、好ましくは 150 mM 未満、より好ましくは 100 mM 未満の濃度に維持される。
【0014】
本発明の方法は、多くのアグリコンフラボノイド及びグリコシル化フラボノイドに適しており、この穏やかな酵素的方法で得られる転化率は、今まで得られていたものより高く、即ち 50〜99 %の範囲である。
【0015】
酵素による合成は、化学的合成より穏やかな条件下で行われ、ピリジン、ベンゼン及び THF のような有害な溶媒の使用、高温、及び追加の精製工程を必要とする塩又はフラボノイド分解生成物のような副生物の形成を回避する。
【0016】
上記の既知の方法と比較すると、本発明によれば、合成後の複雑かつ面倒な精製操作が軽減される一方で、フラボノイドエステルの最終濃度、転化率(フラボノイド及び/又は元々存在したアシル基供与体両方の転化率)、特に生産性が明確に改善される。
【0017】
本発明の方法と既知の方法との 1 つの違いは、著しく高い収率を与え、使用できる異なったフラボノイド(グリコシル化型及びアグリコン型の両方)の数が多い、酵素的方法を行うことである。
【0018】
本発明の主たる目的は、アシル化法に存在する全ての上記欠点を縮減し、フラボノイドエステルの酵素による合成法を提供することである。上記の既知の方法と比較すると、本発明によれば、合成後の複雑かつ面倒な精製工程が軽減される一方で、フラボノイドエステルの最終濃度、転化率(フラボノイド及び/又は元々存在したアシル基供与体両方の転化率)、特に生産性が明確に改善される。
【0019】
このために、本発明は、まず第一に反応媒体を水の濃度が 150 mM 未満、好ましくは 100 mM になるまで乾燥し得、反応中に形成される水及び/又はアルコールの濃度を予め定めた値である 150 mM 未満、好ましくは 100 mM 未満に維持し得る条件下、反応媒体を調製するために、予め定めた量のフラボノイド(グリコシル化型及びアグリコン型)又はフラボノイド誘導体、アシル基供与体、有機溶媒(アシル基供与体になり得る)及び酵素触媒を、適当な設計の反応器に導入することを特徴とする、フラボノイドエステルの酵素による合成に関する。濃度は、形成された水及び/又はアルコールのオンライン除去によって、分子篩への吸着、蒸留又はパーベーパレーションによって、予め定めた値に維持する。この反応は、1 つ以上の基質を用いて、回分操作又は半回分操作として行い得る。半回分操作では、フラボノイドのアシル基供与体に対するモル比を、反応中、適当な基質添加によって一定に保ち得る。即ち、反応媒体の組成を時間の関数として発現させ、それ故、モノアシル化又はマルチアシル化化合物の最大生成の方向に酵素反応を進め、同時に問題となる反応を制限することができる。最後に、このようにして得たフラボノイドエステルを、少なくとも酵素粒子(例えば、デカンテーション、ろ過又は遠心分離によって)及び溶媒(例えば、蒸発、蒸留又は膜ろ過によって)を除去することによって精製する。
【0020】
本発明によれば、高濃度のフラボノイド、アシル基供与体又は蓄積した水の存在下で見られる酵素反応の阻害又は失活を、まず制限することによって反応を行う。酵素反応を阻害し得る濃度に達しないように、反応中、基質を制御しながら徐々に添加し得る。
【0021】
反応は、フラボノイド:アシル基供与体のモル比を、0.01〜20:1、好ましくは 0.02〜10:1 として、行い得る。上記範囲に反応媒体のモル比の値を維持することによって、高い反応速度又は最大割合のモノアシル化フラボノイドが得られる。時間の関数として添加する反応物の種類及び量を制御することによって、時間の関数としてあるプロフィールに従って変化するが反応を通じて上記範囲内にあるよう、モル比を一定に維持するか、又は反応中制御しながら変化させることができる。少なくとも 1 つの反応媒体成分を周期的又は連続的に除去することによって、合成反応を最適化することができる。除去した成分を、場合により分別後、反応器に戻し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一態様では、反応媒体全体を周期的又は連続的に除去し得、除去された 1 つ以上の媒体成分を分別後に反応器に再投入し得る。
本発明の方法を行うために使用する反応器は、好ましくは、温度、水及び/又はアルコール含有量及び圧力を制御でき、反応物を添加でき、生成物を取り出すことができる手段を備えている。
【0023】
合成反応の間、有利には温度を 20〜100 ℃に保ち、反応媒体の分圧を有利には 10 mbar(103 Pa)〜1,000 mbar(105 Pa)の値に調節し、150 mM 未満、好ましくは 100 mM 未満の濃度に調節した含水量で開始し、水及び/又はアルコールの量を 150 mM 未満、好ましくは 100 mM 未満に保ち、反応媒体を有利には穏やかに撹拌する。
【0024】
更に、高純度のフラボノイドエステルを得るために、例えば、残存フラボノイド又は脂質を有機溶媒又は超臨界流体での抽出によって、蒸留又は分子蒸留、沈澱又は結晶化によって、追加の最後の分別を行い得る。
【0025】
本発明の目的に使用されるアグリコンフラボノイド、グリコシル化フラボノイド又はフラボノイド誘導体は、カルコン、フラボン、フラボノール、アントシアン、フラバノン、フラバノール、クマリン、イソフラボン及びキサントンからなる群から選ばれる、あらゆる化合物であり得る。
【0026】
アシル基供与体は、既知の脂肪酸又はそのメチル、エチル、プロピル又はブチルエステルから選ばれる。この脂肪酸を、好ましくは、22 個以下の炭素原子を含み、任意にヒドロキシル、アミノ、メルカプト、ハロゲン及びアルキル-S,S-アルキルからなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい、直鎖又は分枝の飽和、不飽和又は環状脂肪酸(例えば、パルミチン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、11-メルカプトウンデカン酸、チオオクタン酸又はキナ酸)、22 個以下の炭素原子を含む、直鎖又は分枝の飽和又は不飽和脂肪族二酸(例えば、ヘキサデカン二酸又はアゼライン酸)、アリール脂肪族酸及びそれ由来の二量体酸、任意にヒドロキシル、ニトロ、アルキル、アルコキシル及びハロゲン原子からなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい桂皮酸(例えば、カフェ酸(3,4-ジヒドロキシ桂皮酸)、フェルラ酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸)又はクマル酸(4-ヒドロキシ桂皮酸))、任意にヒドロキシル、ニトロ、アルキル、アルコキシル及びハロゲン原子からなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい安息香酸(例えば、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)、バニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸)又はプロトカテク酸(3,4-ジヒドロキシ安息香酸))からなる群から選ぶ。脂肪酸エステルを、好ましくは、上記化合物のメチル又はエチルエステルから選ぶ。
【0027】
溶媒としてのアシル基供与体を用いるか、或いは有機化合物又は有機化合物の混合物であり得、選ばれたフラボノイド又はフラボノイド誘導体及びアシル基供与体を完全に又は部分的に溶解する適当な溶媒中で、反応を行い得る。従って溶媒を、特に以下の物質から選ぶ:プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、イソブタノール、アセトン、プロパノン、ブタノン、ペンタン-2-オン、エタン-1,2-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ジオキサン、アセトニトリル、2-メチルブタン-2-オール、t-ブタノール、2-メチルプロパノール、4-ヒドロキシ-2-メチルペンタノン、ヘプタン及びヘキサンのような脂肪族炭化水素、又はこれら溶媒の 2 つ以上の混合物。
【0028】
使用される酵素触媒は、もちろん、フラボノイド又はフラボノイド誘導体へのアシル基供与体からのアシル基の転移に作用し、促進しなければならず、プロテアーゼ又はリパーゼ(例えば、Candida antarctica、Rhizomucor miehei、Candida cylindracea、Rhizopus arrhizus)、好ましくは担体に固定されているものが、有利である。
【0029】
上記した様々な特性に基づいて、本発明の種々可能な態様が、特に使用される反応物の種類及び達成される好ましい目的に関して存在する。
【0030】
従って、第一の可能な態様は、回分反応器での合成法である(溶媒及び酵素と共に両基質を反応器に導入する)。この場合、溶媒、所望の変性フラボノイドの最終量を得るために必要なフラボノイドの総量(一般に 1〜200 g/l)、及び初めに必要な(溶解フラボノイド/アシル基供与体の)モル比に相当するアシル基供与体としての遊離酸の量(一般に 0.01〜20:1)を反応器に最初に入れる。反応器中の水量を 100 mM 未満の固定値にするために、媒体を、減圧下(10〜500 mbar、好ましくは 50〜250 mbar)、20〜100 ℃、好ましくは 40〜80 ℃の温度に加熱し、生じた蒸気混合物を分子篩充填カラムで乾燥し、その後凝縮して反応器に戻す。必要な場合は、凝縮液を第二の分子篩充填カラムを経て戻す。次いで、酵素を可溶又は固定化状態で添加する(1〜100 g/l、好ましくは 5〜20 g/l)。反応中に形成された水を、反応器内の減圧及び温度をしかるべく調節することによって、分子篩充填カラムで除去する。
【0031】
本発明の第二の可能な態様は、アシル基供与体及び溶媒を反応中に添加する合成法である。この場合、溶媒、所望の変性フラボノイドの最終量を得るために必要なフラボノイドの総量(一般に 1〜200 g/l)、及び初めに必要な(溶解フラボノイド/アシル基供与体の)モル比に相当するアシル基供与体としての遊離酸の量(一般に 0.01〜20:1)を反応器に最初に入れる。反応器中の水量を 100 mM 未満の固定値にするために、媒体を、減圧下(10〜500 mbar、好ましくは 50〜250 mbar)、20〜100 ℃、好ましくは 40〜80 ℃の温度に加熱し、生じた蒸気混合物を分子篩充填カラムで乾燥し、その後凝縮して反応器に戻す。必要な場合は、凝縮液を第二の分子篩充填カラムを経て戻す。次いで、酵素を可溶又は固定化状態で添加する(1〜100 g/l、好ましくは 5〜20 g/l)。反応中、溶媒の一部が分子篩充填カラムを経て蒸発するので、溶媒を添加する。水を気相で交換することによって除去する。蒸気を凝縮し、収集容器に集める。溶媒量を相対的に一定に保つため、(溶解フラボノイド/アシル供与体の)モル比を所望の値に保つような単位時間あたりの量で、反応進行中にアシル基供与体を添加する。従って、反応中にこのモル比を一定に保つことが有利な場合、アシル基供与体を、反応中に消費される速度に相当する速度で添加する。この消費速度は、使用される酵素反応の予備動態解析によって決定され得る。反応中、1 時間に添加されるアシル基供与体の量は、一般に、反応器中の酵素触媒 1 g あたり、0.01〜10 g アシル基供与体/時間である。
【0032】
本発明の第三の態様でもまた、フラボノイド及び溶媒の添加を伴って合成を行い得る。この場合、溶媒、所望の変性フラボノイドの最終量を得るために必要なアシル基供与体としての遊離酸の総量(一般に 1〜500 g/l)、及び初めに必要な(溶解フラボノイド/アシル基供与体の)モル比に相当するフラボノイド量(一般に 1〜200 g/l)を反応器に最初に入れる。反応器中の水量を 100 mM 未満の固定値にするために、媒体を、減圧下(10〜500 mbar、好ましくは 50〜250 mbar)、20〜100 ℃、好ましくは 40〜80 ℃の温度に加熱し、生じた蒸気混合物を分子篩充填カラムで乾燥し、その後凝縮して反応器に戻す。必要な場合は、凝縮液を第二の分子篩充填カラムを経て戻す。次いで、酵素を可溶又は固定化状態で添加する(1〜100 g/l、好ましくは 5〜20 g/l)。反応中、溶媒及び形成された水の一部が蒸発によって除去されるので、溶媒を添加し、減圧を適応する。蒸発速度を、減圧及び温度をしかるべく制御することによって調節する。生じた蒸気を分子篩充填カラムに通す。水を分子篩と接触させることによって除去する。水の除去後、蒸気を凝縮し、後で反応器に戻すために収集容器に集める。反応中、蒸発減を補い、溶媒量を相対的に一定に保つため、水不含有溶媒を任意に添加する。更に、(溶解フラボノイド/アシル供与体の)モル比を所望の値に保つような単位時間あたりの量で、フラボノイドを添加する。従って、反応中にこのモル比を一定に保つことが有利な場合、フラボノイドを、反応中に消費される速度に相当する速度で添加する。この消費速度は、使用される酵素反応の予備動態解析によって決定され得る。反応中、1 時間に添加されるフラボノイドの量は、一般に、反応器中の酵素触媒 1 g あたり、0.01〜10 g フラボノイド/時間である。
【0033】
本発明の第四の態様でも、フラボノイド、アシル基供与体及び溶媒の添加を伴って合成を行い得る。この第四のケースでは、溶媒、様々な濃度のフラボノイド(好ましくは溶媒へのフラボノイド溶解度より高い)、及び初めに必要な(溶解フラボノイド/アシル基供与体の)モル比に相当するアシル基供与体としての遊離酸の量を反応器に最初に入れる。反応器中の水量を 100 mM 未満の固定値にするために、媒体を、減圧下(10〜500 mbar、好ましくは 50〜250 mbar)、20〜100 ℃、好ましくは 40〜80 ℃の温度に加熱し、生じた蒸気混合物を分子篩充填カラムで乾燥し、その後凝縮して反応器に戻す。必要な場合は、凝縮液を第二の分子篩充填カラムを経て戻す。次いで、酵素を可溶又は固定化状態で添加する(1〜100 g/l、好ましくは 5〜20 g/l)。反応中、溶媒を添加し、10〜500 mbar、好ましくは 100〜250 mbar の減圧を適用する。水を除去するため、生じた蒸気を分子篩充填カラムに通す。蒸気を凝縮し、収集容器に集める。反応中、蒸発減を補い、溶媒量を相対的に一定に保つため、水不含有溶媒を任意に添加する。更に、(溶解フラボノイド/アシル供与体の)モル比を所望の値に保つような単位時間あたりの量で、フラボノイドを添加する。反応中にこのモル比を一定に保つことが有利な場合、フラボノイド及びアシル基供与体を、反応中に消費される速度に相当する単位時間あたりの量で添加する。これらの消費速度は、使用される酵素反応の予備動態解析によって決定され得る。
【0034】
本発明の第五の態様では、代替法として、フラボノイド、アシル基供与体及び/又は溶媒並びに場合により酵素触媒の添加及び除去を伴う連続合成法を行い得る。この第五のケースでは、溶媒、様々な濃度のフラボノイド(好ましくは溶媒へのフラボノイド溶解度より高い)、及び初めに必要な(溶解フラボノイド/アシル基供与体の)モル比に相当するアシル基供与体としての遊離酸の量を反応器に最初に入れる。反応器中の水量を 100 mM 未満の固定値にするために、媒体を、減圧下(10〜500 mbar、好ましくは 50〜250 mbar)、20〜100 ℃、好ましくは 40〜80 ℃の温度に加熱し、生じた蒸気混合物を分子篩充填カラムで乾燥し、その後凝縮して反応器に戻す。必要な場合は、凝縮液を第二の分子篩充填カラムを経て戻す。次いで、酵素を可溶又は固定化状態で添加する。反応中、物質を連続的に又は周期的に反応媒体から取り出す。酵素が固定化状態で存在している場合、反応器内に保持し得る。分別後、溶媒及び場合によりフラボノイド及び/又はアシル基供与体を反応器に戻す。反応中、蒸発減及び取り出し量を補うため、水不含有溶媒を添加する。更に、フラボノイド及びアシル供与体のモル比を所望の値に保つような単位時間あたりの量で、これら二成分を添加し得る。上記のように、水を分子篩で除去する。水の除去後、蒸発させた溶媒を凝縮し、反応器に戻す。反応中、フラボノイド及びアシル供与体モル比を一定に保つことが有利な場合、反応中に消費され速度及び各々の除去速度に相当する単位時間あたりの量でこれらを添加する。
【0035】
第六の態様では、アシル基供与体としての遊離酸を、そのメチル、エチル又はブチルエステル、好ましくはそのメチル又はエチルエステルに置き換える以外は、反応を上記のように行う。形成されるアルコールを、上記と同様に除去する。
【0036】
第七の態様では、アシル基供与体を溶媒として用いる。
第八の態様では、媒体中に存在する及び/又は反応中に媒体中で形成される水及び/又はアルコールを、気相又は液層中、パーベーパレーション膜法によって除去する。
【実施例1】
【0037】
ルチンモノパルミテートの合成を、Candida antarctica リパーゼ(Novozym 435)を用いて、250 ml 回分反応器で行った。このリパーゼはマクロ多孔性アクリル樹脂に固定化されたリパーゼである。供給するリパーゼは、7,000 PLU/g(プロピルラウレート合成)の活性、1〜2 重量%の含水量、1〜10 重量%の酵素タンパク質含有量である。
ルチン 0.75 g(1.2 mmol)、パルミチン酸 0.315 g(1.2 mmol)及び t-アミルアルコール 250 ml を、この合成のために使用した。媒体を、減圧下(150 mbar)、60 ℃まで加熱し、形成された蒸気を、60 ℃に加熱し 50 g の分子篩を充填したカラムに通した。このようにして、液相中よりはるかに効果的である気相中で、存在している水を除去した。水不含有蒸気を凝縮し、同量の分子篩を充填した第二カラムを経て、反応器に戻した。このようにして、6 時間後、100 mM 未満の開始含水量を得、基質を溶解した。その後、酵素(2.5 g)を添加した。反応を減圧下(150 mbar)、60 ℃で行い、含水量が 100 mM 未満を維持するよう、最初の乾燥と同様に、形成された水を除去した。
【0038】
この濃度は、減圧及び凝縮器の冷却をしかるべく調整することによって変化させ得る。圧力を調査すると 10〜700 mbar の間で、凝縮器の温度は -20〜5 ℃の間で変化していた。このようにして、反応器中の含水量を、5〜400 mM に調整し得た。
48 時間の反応後、HPLC により生成物を分析すると、2 基質の転化率が約 90 %に達したことが示された。
反応の終了時、酵素をろ過によって回収した。その後、溶媒の蒸発によって媒体を濃縮した。基質残渣を除去するため、2 つの抽出系を使用した。アセトニトリル及びヘプタンの混合物(3:5、v:v)を、パルミチン酸を除去するために使用し、ルチンを水/ヘプタン(2:3、v:v)で除去した。
生成物の構造を、1H-NMR 分析によって確認した:
1H-NMR:(400 MHz, DMSO-d6):δ 0.8 (t, 3H), 1 (d, 3H), 1.25 (m, 24H), 1.45 (m, 2H), 2.1 (m, 2H), 3.1-3.6 (ブロード、C-H 糖), 3.7 (d, 1H), 4.45 (s, 1H), 4.65 (t, 1H), 5.3 (ブロード、OH 糖), 5.1 (ブロード、OH 糖), 5.45 (d, 1H), 6.2 (s, 1H), 6.4 (s, 1H), 6.8 (d, 1H), 7.6 (m, 2H), 12.6 (s, 1H, C5-OH) ppm。
【実施例2】
【0039】
パルミチン酸(0.315 g、1.2 mmol)によるヘスペリジン(0.75 g、1.2 mmol)のアシル化を、上記のように行った。
HPLC 分析により、アシル基供与体の 95 %が 48 時間後に消費されたことが示された。上記と同様の精製法を用いて、ヘスペリジンモノパルミテートを、液/液抽出によって得た。ヘスペリジンの構造を、1H-NMR 分析によって確認した:
1H-NMR:(400 MHz, DMSO-d6):δ 0.83 (t, 3H), 1.0 (d, 3H), 1.05 (ブロード、24H), 1.20 (m, 2H), 2.25 (m, 2H), 3.4-3.6 (ブロード、C-H 糖), 3.8 (s, 3H), 4.15 (s, 1H), 4.58 (s, 1H), 4.75 (m, 2H), 5.0 (m, 1H), 5.18 (dd, 1H), 5.4 (d, 1H), 5.48 (d, 1H), 6.14 (m, 1H), 6.18 (s, 1H), 7.0 (m, 3H), 9.15 (s, 1H), 12.05 (s, 1H) ppm。
【実施例3】
【0040】
パルミチン酸(0.523 g、2 mmol)によるエスクリン(0.75 g、2 mmol)のアシル化を、実施例1に記載したように行った。液体クロマトグラフィー分析により、アシル基供与体の 48 %が 48 時間後に消費されたことが示された。上記と同様の精製法を用いて、エスクリンモノパルミテートを、液/液抽出によって得た。エスクリンの構造を、1H-NMR 分析によって確認した:
1H-NMR:(400 MHz, DMSO-d6):δ 0.8 (t, 3H), 1.15 (ブロード、24H), 1.4 (m, 2H), 2.25 (m, 2H), 3.2 (m, 1H), 3.65 (m, 1H), 4.1 (dd, 1H), 4.35 (d, 1H), 4.85 (d, 1H), 5.25 (s, 1H), 5.35 (d, 1H), 6.2 (d, 1H), 6.8 (s, 1H), 7.3 (s, 1H), 7.85 (d, 1H) ppm。
【実施例4】
【0041】
ラウリン酸によるルチンのアシル化を、27 ml の反応器内で行った。ルチン(100 mg、0.16 mmol)及びラウリン酸(20 mg、0.10 mol)を、20 ml の乾燥 t-アミルアルコールに 60 ℃で溶解させた。分子篩(4 g)の添加によって、反応媒体中で含水量を 100 mM 未満に調節し、維持した。エステル化反応を、Candida antarctica(Novozym 435)のリパーゼ 0.2 g の添加によって開始した。
HPLC 分析により、ルチンのモノエステルへの転化率が 76 %に達したことが示された。
【実施例5】
【0042】
ラウリン酸(54 mg、0.27 mmol)によるエスクリン(100 mg、0.27 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、エスクリンモノエステルへの転化率が 82 %であることが示された。
【実施例6】
【0043】
11-アミノウンデカン酸(55 mg、0.27 mmol)によるエスクリン(100 mg、0.27 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、エスクリンモノエステルへの転化率が 61 %であることが示された。
【実施例7】
【0044】
11-メルカプトウンデカン酸(59 mg、0.27 mmol)によるエスクリン(100 mg、0.27 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
エスクリンのモノエステルへの転化率は 68 %であった(HPLC 分析)。
【実施例8】
【0045】
アジピン酸(40 mg、0.27 mmol)によるエスクリン(100 mg、0.27 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、エスクリンモノエステルへの転化率が 70 %であることが示された。
【実施例9】
【0046】
ドデカン二酸(38 mg、0.16 mmol-等モル)によるルチン(100 mg、0.16 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、ルチンモノエステルへの転化率が 75 %であることが示された。
【実施例10】
【0047】
ドデカン二酸(754 mg、3.27 mmol-酸過剰)によるルチン(100 mg、0.16 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、ルチンの転化率が 75 %で、ジエステルのモノエステルに対する比が 4:1 であることが示された。
【実施例11】
【0048】
ドデカン二酸とルチン(過剰)の反応を、250 ml 反応器内で行った。
ルチン(8 g、13 mmol)及びドデカン二酸(0.3 g、13 mmol)を、200 ml の t-アミルアルコールに溶解し、減圧下(105〜200 mbar)、60 ℃まで加熱した。形成された蒸気を、分子篩充填カラムに通し、回収した。このようにして、数時間後、反応器内で 100 mM 未満の低含水量を得た。その後、Candida antarctica リパーゼ(Novozym 435)2 g を添加した。
ドデカン二酸のドデカンジオイルジルチン(ルチン 2 分子が二酸 1 分子と結合)及びドデカンジオイルルチン(モノエステル)への 100 %の転化率は、4 日後に達成された(HPLC 分析)。
【実施例12】
【0049】
ドデカン二酸(5 g、21.7 mmol-酸過剰)によるエスクリン(8 g、21.7 mmol)のアシル化を、実施例11に記載したように行った。
HPLC 分析により、エスクリンモノエステルへの転化率が 92 %に達したことが示された。
【実施例13】
【0050】
ヘキサデカン二酸(47 mg、0.16 mmol)によるルチン(100 mg、0.16 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
87 %のルチンが転化した(HPLC 分析)。
実施例1に従った液/液抽出の精製法により、ヘキサデカンジオイルルチン(モノエステル)を回収することができる。生成物の構造を、1H-NMR 分析によって確認した:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):δ 0.76 (d, 3H), 1.2 (m, 60H), 1.5 (m, 12H), 2.2 (m, 12H), 3.1-3.6 (ブロード、8H), 3.7 (d, 1H), 4.45 (s, 1H), 4.65 (t, 1H), 5.43 (d, 1H), 6.18 (d, 1H), 6.36 (d, 1H), 6.84 (d, 1H), 7.50 (m, 2H) ppm。
【実施例14】
【0051】
ヘキサデカン二酸(78 mg、0.27 mmol)によるエスクリン(100 mg、0.27 mmol)のアシル化を、実施例4に記載したように行った。
HPLC 分析により、エスクリンモノエステルへの転化率が 89 %に達したことが示された。
【実施例15】
【0052】
チオオクタン酸とエスクリンの反応を、250 ml の 反応器内で行った。エスクリン(0.87 g、2.5 mmol)及びチオオクタン酸(1.23 g、6 mmol)を、250 ml の t-アミルアルコールに溶解し、減圧下(150〜200 mbar)、60 ℃まで加熱した。形成された蒸気を、分子篩充填カラムに通し、回収した。このようにして、21 時間後、反応器内で 100 mM 未満の低含水量を得た。その後、Candida antarctica リパーゼ(Novozym 435)2.5 g を添加した。
70 時間後、50 %のエスクリンが転化した(HPLC 分析)。
反応後、酵素をろ過し、溶媒の蒸発によって反応媒体を濃縮した。過剰なチオオクタン酸を除去するため、水、ヘプタン及びアセトニトリルの混合物(2:3:4、v:v:v)を抽出に用い、その後、エステルをジクロロメタンで抽出することによって回収した。エステルの構造を、1H-NMR 分析によって確認した:
1H NMR:(400 MHz, DMSO d6):1.2-1.9 (ブロード、8H), 2.1-2.4(ブロード、4H), 3.2 (m, 2H), 3.5 (m, 1H), 3.7 (m, 1H), 4.12 (dd, 1H), 4.35 (d, 1H), 4.85 (d, 1H), 5.23 (d, 1H), 5.33 (d, 1H), 6.26(d, 1H), 6.84 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 7.86 (d, 1H) ppm。
【実施例16】
【0053】
フェニルプロピオン酸とルチンの反応を、250 ml の反応容器内で行った。ルチン(8 g、13 mmol)及びフェニルプロピオン酸(10 g、67 mmol)を、200 ml の t-アミルアルコールに溶解し、減圧下(150〜200 mbar)、60 ℃まで加熱した。形成された蒸気を、分子篩充填カラムに通し、回収した。このようにして、17 時間後、反応器内で 100 mM 未満の低含水量を得た。その後、Candida antarctica リパーゼ(Novozym 435)13 g を添加した。
生成物の HPLC 分析により、105 時間の反応時間後、ルチンモノエステルへの転化率は 55 %であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機溶媒、グリコシル化フラボノイド又はアグリコンフラボノイド、アシル基供与体及び酵素触媒を含む反応媒体を調製し、
(b)更なる量のフラボノイド及び/又はアシル基供与体を、反応中、任意に添加し、
(c)このように得られたエステルを、酵素粒子及び溶媒を除去することによって精製する
フラボノイドエステル及びフラボノイド誘導体の酵素による合成方法であって、反応中に形成される水及び/又はアルコールの濃度を、150 mM 未満であるように調節することを特徴とする方法。
【請求項2】
反応中に形成される水及び/又はアルコールの濃度を、100 mM 未満であるように調節することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応媒体中のフラボノイドのアシル基供与体に対するモル比を、反応中、0.01〜20.00 の範囲に調節することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応媒体中のフラボノイドのアシル基供与体に対するモル比を、反応中、0.02〜10.00 の範囲に調整することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
更なる量の、固体状又は溶液状である少なくとも 1 つのフラボノイド、溶媒、可溶又は固定化状態の酵素触媒、及びアシル基供与化合物を、そのまま又は溶媒に溶解して、反応媒体に、連続的に又は周期的に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも 1 つの反応媒体成分を周期的に又は連続的に取り出し、分別後、反応器に戻すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応中、反応媒体全体を周期的に又は連続的に取り出し、分別後、取り出した媒体の 1 つ以上の成分を反応器に戻すことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応中、温度を 20〜100 ℃に調節し、反応媒体の分圧を 10〜1,000 mbar に調節し、反応媒体を撹拌することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
残渣フラボノイド又は残渣アシル基供与体を、有機溶媒又は超臨界流体での抽出によって、蒸留、結晶化、吸着又は沈澱によって除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
製造されたフラボノイドエステルを、沈澱又はクロマトグラフ分離によって分別することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フラボノイドを、カルコン、フラボン、フラボノール、フラバノン、アントシアン、フラバノール、クマリン、イソフラボン及びキサントンからなる群から選ぶことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アシル基供与体化合物を、22 個以下の炭素原子を含み、任意にヒドロキシル、アミノ、メルカプト、ハロゲン及びアルキル-S,S-アルキルからなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい、直鎖又は分枝の飽和、不飽和又は環状脂肪酸(例えば、パルミチン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、11-メルカプトウンデカン酸、チオオクタン酸又はキナ酸)、22 個以下の炭素原子を含む、直鎖又は分枝の飽和又は不飽和脂肪族二酸(例えば、ヘキサデカン二酸又はアゼライン酸)、アリール脂肪族酸及びそれ由来の二量体酸、任意にヒドロキシル、ニトロ、アルキル、アルコキシル及びハロゲン原子からなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい桂皮酸(例えば、カフェ酸(3,4-ジヒドロキシ桂皮酸)、フェルラ酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸)又はクマル酸(4-ヒドロキシ桂皮酸))、任意にヒドロキシル、ニトロ、アルキル、アルコキシル及びハロゲン原子からなる群から選ばれる 1 個以上の置換基で置換されていてよい安息香酸(例えば、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)、バニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸)又はプロトカテク酸(3,4-ジヒドロキシ安息香酸))、又はこれら化合物のメチル、エチル、プロピル又はブチルエステルからなる群から選ぶことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
有機溶媒を、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、イソブタノール、アセトン、プロパノン、ブタノン、ペンタン-2-オン、エタン-1,2-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ジオキサン、アセトニトリル、2-メチルブタン-2-オール、t-ブタノール、2-メチルプロパノール、4-ヒドロキシ-2-メチルペンタノン、ヘプタン及びヘキサンのような脂肪族炭化水素、及びこれら化合物の少なくとも 2 つの混合物からなる群から選ぶことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
有機溶媒がアシル基供与体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酵素触媒がプロテアーゼ又はリパーゼを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
プロテアーゼ又はリパーゼを担体に固定することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水及び/又はアルコールを、気相又は液相中、分子篩によって媒体から除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
水及び/又はアルコールを、気相又は液相中、パーベーパレーションによって媒体から除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508654(P2006−508654A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556169(P2004−556169)
【出願日】平成15年11月22日(2003.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013143
【国際公開番号】WO2004/050889
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】