説明

アジュバントおよび免疫刺激活性を有するトリテルペンサポニンアナログ

【課題】新規なアジュバントを提供すること。
【解決手段】脂質、脂肪酸、ポリエチレングリコールまたはテルペンのような脂肪親和性部分が、トリテルペンサポニンの3−O−グルクロン酸上に存在するカルボキシル基を介して非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニンに共有結合される、化合物。Quillajaデスアシルサポニン、lucyoside PまたはGypsophila、SaponariaおよびAcanthophyllum由来のサポニンのようなサポニンの3−O−グルクロン酸への脂肪親和性部分の結合は、体液性および細胞媒介免疫のアジュバント効果を強化する。さらに、非アシル化または脱アシル化サポニンの3−O−グルクロン酸残基への脂肪親和性部分の結合は、本来のサポニンよりも、精製が容易であり、毒性が少なく、化学的に安定であり、そして等しいかより良好なアジュバント特性を有するサポニンアナログを生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、アジュバントおよび免疫刺激剤の分野に関する。さらに特定すると、本発明は、新規なトリテルペンサポニン−脂肪親和体結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
サポニンは、二次代謝産物として産生されるグリコシド化合物である。これらは高等植物およびいくつかの棘皮動物門の海洋無脊椎動物の間で広く分布している(ApSimonら、Stud. Org. Chem. 17:273−286(1984))。これらの抗菌活性のため、植物サポニンは微生物(特に真菌)に対する効果的な化学的防御力を有する(Priceら、CRCCrit. Rev. Food Sci. Nutr. 26:27−135(1987))。サポニンは多くの海洋無脊椎動物の毒性特性の原因である(ApSimonら、Stud.Org. Chem. 17:273−286(1984))。サポニンの化学構造は、広範な薬理学的および生物学的活性(いくつかの可能なおよび有効な免疫学的活性を含む)を与える。さらに、この化合物のファミリーのメンバーは、起泡特性(同定する特性)、界面活性特性(これはこれらの溶血特性に起因する)、コレステロール結合性、真菌毒性、軟体動物駆除性、避妊性、増殖抑制性、去痰性、抗炎症性、鎮痛性、抗ウイルス性、心血管、酵素阻害性および抗腫瘍活性を有する(Hostettmann,K.ら、MethodsPlant Biochem. 7:435−471(1991);Lacaille−Dubois, M.A.およびWagner, H.、Phytomedicine2:363−386(1996);Price, K.R.ら、CRC Crit. Rev. Food Sci. Nutr. 26:27−135(1987))。
【0003】
構造的に、サポニンは1つ以上の糖鎖に結合した任意のアグリコン(サポゲニン)からなる。いくつかの場合において、サポニンは、これらの構造の部分として、酢酸、マロン酸、アンゲリカ酸などような有機酸とアシル化され得る(Massiot,G.およびLavaud, C.、Stud. Nat. Prod. Chem. 15:187−224(1995))。これらの複雑な構造は、600ダルトン〜2000ダルトンより大きい範囲の分子量を有する。これらの疎水性(アグリコン)および親水性(糖)部分の不斉分布は、これらの化合物に対する両親媒性を与え、これはこれらの界面活性剤様特性に大きな原因がある。したがって、サポニンは動物の細胞膜のコレステロール成分と相互作用して、孔を形成し得、血液細胞の溶血のような膜破壊および細胞死を導き得る。
【0004】
【化1】

サポニンは上に示したようなアグリコン組成物に分類され得る:
1.トリテルペングリコシド
2.ステロイドグリコシド
3.ステロイドアルカロイドグリコシド
ステロイドアルカロイドグリコシドまたはグリコアルカロイドは、ステロイドグリコシドとともに多くの物理的および生物学的特性を共有するが、これらのステロイド構造は窒素を含むので、アルカロイドグリコシドは通常別々に考慮される。頻繁に、アグリコンはヒドロキシメチル、アルデヒドまたはカルボキシル基に酸化され得るメチル置換基を有し;これらの部分はサポニンの生物学的活性のいくつかにおいての役割を果たし得る。広範なサポニンの研究から、トリテルペンは天然に最も優性であるだけでなく、最も興味深い生物学的および薬理学的特性を有するものであることも明白である。
【0005】
サポニンは、グリコシドエーテルまたはエステル結合を介してアグリコンに結合した1つ以上の直線または分枝糖鎖を有する。いくつかのサポニンにおいて、アシル化糖の存在はまた検出されている。アグリコンに結合した糖鎖の数にしたがって、サポニンはモノデスモシンサポニン(monodesmosidic saponin)(1つの糖鎖を有する)、またはビデスモシンサポニン(bidesmosidicsaponin)(2つの糖鎖を有る)であり得る。モノデスモシンサポニンにおいて、糖鎖は典型的にアグリコンのC−3でグリコシドエーテル結合によって結合されている。C−3結合糖鎖に加えて、ビデスモシンサポニンは、エステル結合によるC−28(トリテルペンサポニン)またはC−26(ステロイドサポニン)で第2の糖鎖結合を有する。典型的なエステルの傾向のために、ビデスモシンサポニンは緩やかな加水分解によりモノデスモシン形態に容易に転換される(Hostettmann,K.ら、MethodsPlant Biochem. 7:435−471(1991))(図2)。明らかに、モノデスモシンサポニンはそのビデスモシン形態より植物において有意に生物学的活性である。例えば、HederaへリックスにおけるビデスモシンhederaサポニンCのモノデスモシン形態(α−へリックス)への酵素的変換は高抗菌活性を有する産物を生じる(Wagner,H.およびHorhammer,L.Pharmacognosy and Phytochemistry, Springer−Verlag, Berlin(1971))。一般に、モノデスモシンサポニンはビデスモシンサポニンより溶血する傾向もある。この特性は抗真菌活性とよく関連するようである。おそらく、サポニンは、真菌の膜結合ステロールと相互作用することによって、細胞の透過性を変化させて、生物死に導く(Price,K.R.ら、CRCCrit.Rev.Food Sci.Nutr. 26:27−135(1987))。結果として、植物病原性真菌の宿主の範囲は、宿主生物のサポニンを酵素的に解毒するそれらの能力により機能的に決定されるようである(Bowyer,P.ら、Science267:371−374(1995))。しかし、アシル化されたquillajaサポニンは、モノデスモシン形態がアシル化または非アシル化ビデスモシン形態より顕著に少ない効果的な溶血剤であるので、例外的であるようである(Pillion,D.J.ら、J.Pharm.Sci.、84:1276−1279(1996))。生物学的に活性なモノデスモシン形態が植物の防御に必要とされるまで、ビデスモシンサポニンは、これらの化合物の貯蔵および/または輸送についての有用な形態として最も機能するようである(Hostettmann,K.ら、MethodsPlant Biochem. 7:435−471(1991);Osbourn,A.E.ら、Adv,Exp.Med.Biol.、404:547−555(1996))。対照的に、動物において、ビデスモシンサポニンは強力な生物学的および薬理学的に活性を有し得、植物生理学の任意の局面に完全に関係しない。
【0006】
Quillajasaponaria Molina樹(Quillajasaponins)の樹皮由来のサポニンアジュバントは化学的および免疫学的によく特徴付けられた産物である(Dalsgaard,k.Arch.Gesamte Virusforsch. 44:243(1974);Dalsgaard,K.、Acta Vet.Scand.19(Suppl.69):1(1978);Higuchi,R.ら、Phytochemistry 26:229(1987);同26:2357(1987);同27:1168(1988);Kensil.C.ら、J.Immunol.146:431(1991);Kensilら、米国特許第5,057,540号(1991);Kensilら、Vaccines92:35(1992);Bomford,R.ら、Vaccine 10:572(1992);およびKensil,Cら、米国特許第5,273,965号(1993))。
【0007】
これらのサポニンアジュバントは、O−アシル化トリテルペングリコシド構造に密接に関係するファミリーである。これらはアグリコントリテルペン(キラヤ酸(quillaic acid))を有し、3位および23位、ならびに23位におけるアルデヒド基に結合される分枝した糖鎖を有する。Quillajasaponinの独特な特徴は、C−3ヒドロキシ基のフコピラノース結合においてキラヤ酸の28位へのエステル結合により連結されたアシロイルアシル部分の存在である。これらのアシル部分は3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸5−O−α−L−ラムノピラノシル−(1→2)−α−L−アラビノフラノシド、および5−O−αL−アラビノフラノシドとして同定されている。
【0008】
Higuchi,R.ら(Phytochemistry26:229(1987);同27:1168(1988)、およびKensil,C.ら(米国特許第5,057,540号、同Vaccine 92:35(1992)、および米国特許第5,273,965号(1993))は、フコシル残基とアシロイルアシル残基との間の3−O−グリコシド結合が緩やかなアルカリ加水分解により切断されて、デスアシルサポニン(desacylsaponin)を生じ得ることを実証している。Quillajasaponin由来のこれらのデスアシルサポニンは、本来のサポニンより親水性である。明らかに、Quillajasaponinの脱アシル化は、抗体の産生およびCTI応答により測定されるような、アジュバント活性の顕著な欠損を生じる(Kensilら、米国特許第5,057,540号、22欄、35〜49行;Kensilら、Vaccines92:35(1992);およびKensilら、米国特許第5,273,965号、7欄、62行)。
【0009】
Quillajasaponinは、それらの間に最小の差異を有するトリテルペノイドグリコシドの構造的に密接に関連した約20個の混合物として見出され(Higuchi,R.ら、Phytochemistry26:229(1987);同26:2357(1987);同27:1169(1988);Kensilら、米国特許第5,057,540号(1991);Kensilら、Vaccines92:35(1992))、これらの分離を困難にしている。これらのトリテルペノイドのグループは、T−細胞免疫を誘導するのに応答可能なアルデヒド基を有するが、特定の多糖類と同様の様式で、これらのアルデヒド部分は体液性免疫を強化するようである(おそらく、リンパ球レセプターと相互作用することによって)(BohnJ.およびJ.BeMiller、Carbohydrate Polymers 28:3(1995))。実際に、PCT公開出願WO90/03184は、アルコールへ還元されるトリテルペノイドアルデヒドを有するサポニンが、抗体応答をなお誘導し得ることを記載している。quillajasaponinの他の成分であるアシロイルアシル基は、同様にアジュバント活性としての役割を果たすようである。ノルモテルペンカルボン酸(normoterpenecarboxylic acid)により形成されるアシロイルアシル部分は、いくつかの精製されたQuillajasaponinで観測される毒性特性のいくつかに対して部分的に応答可能であると考えられる理由もある(Kensil,C.ら、J.Immunol.146:431(1991))。したがって、本来のサポニンよりも、精製が容易であり、毒性が潜在的に少なく、化学的に安定であり、そして等しいかより良好なアジュバント特性を有する修飾されたQuillajasaponinを開発することは商業目的である。
【0010】
免疫系は特異的免疫および非特異的免疫の両方を示し得る(Klein,J.ら、Immunology(第2版)、Blackwell Science Inc.、Boston(1997))。一般に、所定の抗原に対して細胞表面上の特異的レセプターを示す、BおよびTリンパ球は、特異的免疫を産生する。免疫系は、以下の2つの様式で異なる抗原に応答し得る:1)体液性媒介性免疫、これは抗原または免疫グロブリンのB細胞刺激および産生をを含む[他の細胞はまた、抗原応答の生成にも関与し、例えば抗原提示細胞(APC;マクロファージを含む)、およびヘルパーT−細胞(ThlおよびTh2)]、および2)細胞媒介性免疫(CMI)、これは一般に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含むT−細胞に関与するが、他の細胞もまた、CTL応答の生成にも関与する(例えば、Thlおよび/またはTh2細胞およびAPC)。
【0011】
非特異性免疫は、種々の細胞およびファゴサイトーシスのような機構(外来粒子または抗原の飲み込み(engulfing))を、マクロファージまたは顆粒球、およびとりわけナチュラルキラー(NK)細胞活性によって包含する。非特異性免疫は、ほとんど進化がなく発達された機構に依存し(例えば、重要な宿主防御機構であるファゴサイトーシス)、そして特異性および記憶の得られる特性、特異的免疫応答の特徴を提示しない。非特異性免疫は脊椎動物系により生まれつきである。加えて、非特異的免疫に関する細胞は、BおよびT細胞と重要な様式で相互作用して免疫応答を引き起こす。特異的免疫と非特異的免疫との間の鍵となる差異は、BおよびT細胞特異性に基づく。これらの細胞は、特異的抗原と活性化した後、優先的にその反応性を得、そして特異的抗原に未来の曝露の事象において記憶を提示する機構を有する。結果として、ワクチン接種(特異性および記憶に関する)は、有害な病原体に対する防御に有効なプロトコルである。
【0012】
不活性化されたワクチンの臨床成分(サブユニットワクチンを含む)は、アジュバントである。アジュバントは、非免疫原性化合物であり、抗原と共に投与した場合(混合するか、抗原の投与前に与えるかのいずれかで)、特定の抗原に免疫応答を強化または修飾する。したがって、体液性および/または細胞媒介性免疫応答は、アジュバントと共に抗原を投与する場合により有効である。さらに、アジュバントは、産生された免疫グロブリン(ヒトIgGについてのIgG1、IgG 2、IgG 3、およびIgG 4;マウスIgGについてのIgG 1、IgG 2a、IgG 2b、およびIgG 3)のサブクラス(アイソタイプ)、ならびにそれらの親和性に影響することによって、免疫応答の質を変化し得る。マウスにおけるThl細胞により調節された応答は、IgG1、IgG 2a、IgG 2b、およびより少ない範囲のIgG 3を誘導し、そしてまた抗原に対するCMI応答に好都合である。抗原に対するIgG応答がTh2型細胞により調節される場合、IgG1およびIgAの産生を優位に強化する。
【0013】
免疫応答を強化するのに使用されてきたアジュバントは、アルミニウム化合物(一般に「ミョウバン」と呼ばれる全てのもの)、水中油型エマルジョン(しばしば他の化合物を含む)、フロイント完全アジュバント(CFA、乾燥、加熱して殺したMycobacterium結核菌生物体を含む水中油型エマルジョン)、および百日咳アジュバント(殺したBordatella百日咳生物体の生理活性水懸濁液)を含む。一般に、これらのアジュバントは、抗原の貯蔵庫(depot)を生じることによるおよび免疫系に抗原の徐放を可能にすることによる、そして観測される活性について応答可能であると考えられる非特異性炎症を生じることによる作用の機構を有すると考えられる(Cox,J.C.ら、Vaccine15:248−256(1997))。いくつかのサポニンは、アジュバント活性を含む免疫刺激活性の異なるタイプを有することが示されている。これらの活性は、前に概説してきた(Shibata,S.、NewNat. Prod. Plant Pharmacol. Biol. Ther. Act., Proc. Int. Congr. 第1巻、177−198(1977);Price,K.R.ら、CRC Crit. Rev. Food Sci. Nutr. 26:27−135(1987);Schopke, Th.、およびHiller,K.、Pharmazie45:313−342(1990);Lacaille−Dubois, M.A.ら、Phytomedicine 2:363−386(1996))。
【0014】
PCT公開出願WO93/05789は、免疫原性の乏しいタンパク質が、精製され、アシル化されたQuillajaサポニン画分に3−O−グルクロン酸のカルボキシル基を介して共有結合される結合体を記載する。より高度な免疫応答を誘導するこれらの結合体への遊離quillajasapoininの付加は、以下を示唆する:(I)共有結合したquillajasaponinは付加サポニン分子についての関係部位として役に立つこと、および(II)アジュバント効果がタンパク質抗原と関係するサポニンの数に依存すること。
【0015】
PCT公開出願WO90/03184は、少なくとも1つの脂質および少なくとも1つサポニンを含む免疫刺激複合体(ISCOM)を記載し、これは必要に応じてサポニンに加えてアジュバントを含み得る。これらのマトリックスは、免疫調節剤およびワクチンとして有用であることを教示される。脂質およびサポニンは、互いに共有結合するよりむしろ、物理的会合状態にある。QuilA(Quallaja サポニン抽出物)は、好ましいサポニンである。さらに参考文献は、アジュバント(Quil Aに加えて)のISCOMマトリックスへ添加する利点をを教示する。参考文献は好適な疎水性特性を欠損するアジュバントがISCOMマトリックスへの取り込みについて疎水性領域を含むように修飾され得ることを教示する。
【0016】
非特許文献1は、脂質が種々のサポニンと混合されて、ISCOMを形成することを教示する。参考文献は、Quillajaサポニン、GypsophilaサポニンおよびSaponariaサポニンがアジュバント活性化を試験された唯一のサポニンであったことを教示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Bomford,R.ら、Vaccine(1992)10:572−577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
強化されたアジュバント活性およびより低い毒性を有するアジュバントについての必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
本発明は、サポニン−脂肪親和体結合体として本明細書中で呼ばれる、新規な化合物に関し、これは、
(1)3−O−グルクロン酸残基を有する非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニンは、以下(2)に共有結合し:
(2)とりわけ脂肪酸、脂肪アミン、リン脂質、テルペン、ポリエチレングリコールのような脂肪親和性領域を有する化合物;
ここで(1)はトリテルペンサポニンの3−O−グルクロン酸残基に存在するカルボキシル炭素原子を介して(2)に結合する。
【0020】
本発明はまた1つ以上のサポニン−脂肪親和体結合体、および1つ以上の薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたは賦形剤を含む、薬学的および獣医学的組成物に関する。これらの組成物は、動物およびヒトで、免疫賦活薬として使用され得る。
【0021】
本発明はまた1つ以上の抗原およびサポニン−脂肪親和体結合体を含む、ワクチンに関する。
【0022】
本発明はまた、有効量のサポニン−脂肪親和体結合体を投与して1つ以上の抗原に対する哺乳動物の免疫応答を強化する工程を含む、哺乳動物における免疫応答の相乗作用を強化することに関する。
【0023】
本発明はまた1つ以上の抗原およびサポニン−脂肪親和体結合体を投与する工程を含む、ワクチン接種の方法に関する。
【0024】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)トリテルペンサポニン−脂肪親和体結合体であって、
3−グルクロン酸残基を含む非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニン;および
脂肪親和性部分;
を含み、
ここで該サポニンおよび該脂肪親和性部分は、互いに、直接またはリンカー基を介してのいずれかで共有結合し、そして該直接の結合または該リンカーへの結合は該3−グルクロン酸残基のカルボキシル炭素と該脂肪親和性残基あるいはリンカー基上の適切な官能基との間の共有結合によって生じる、トリテルペンサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目2)前記トリテルペンサポニンは、(a)3位および28位に結合した分岐糖鎖および4位に連結または結合したアルデヒド基を有するトリテルペンアグリコン核構造を有し;および(b)本来非アシル化されているか、またはトリテルペンアグリコンの28位において糖に結合するアシル基もしくはアシロイル基の除去が必要である、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目3)前記トリテルペンサポニンが、キラヤ酸(quillaic acid)またはギプソゲニン(gypsogenin)核構造を有する、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目4)前記デスアシルサポニンまたは非アシル化サポニンが、Quillajaデスアシルサポニン、S.jenisseensisデスアシルサポニン、Gypsophilaサポニン、Saponariaサポニン、AcanthophyllumサポニンおよびlucyosideP サポニンからなる群から選択される、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目5)前記脂肪親和性部分が、脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪酸のモノ−またはポリ−C2〜C4アルキレンオキシ誘導体、脂肪族アルコールのモノ−またはポリ−C2〜C4アルキレンオキシ誘導体、グリコシル脂肪酸、糖脂質、リン脂質、もしくはモノ−またはジ−アシルグリセロールの1つ以上の残基を含む、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目6)前記脂肪親和性部分が、1つ以上のC6〜C20脂肪酸の残基を含む、項目5に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目7)前記脂肪親和性部分が、C14〜C24脂肪酸の残基を含む、項目6に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目8)前記脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸からなる群から選択される、項目7に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目9)前記脂肪親和性部分が、1つ以上の脂肪族アミン、脂肪族アルコールまたは脂肪族メルカプタン残基を含む、項目5に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目10)前記脂肪族アミン、脂肪族アルコールまたは脂肪族メルカプタンが、6〜20個の炭素原子を有する、項目9に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目11)前記脂肪親和性部分がノニルアミンまたはドデシルアミンの残基である、項目10に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目12)前記脂肪親和性部分がテルペノイドの残基である、項目5に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目13)前記脂肪親和性部分がレチナールAの残基である、項目12に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目14)前記脂肪親和性部分が1つ以上のホスホグリセリド、モノアシルグリセロールまたはジアシルグリセロール残基を含む、項目5に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目15)前記脂肪親和性部分がグリコシル脂肪酸または糖脂質の残基である、項目5に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目16)前記脂肪親和性部分がグルコサミン−リシノール酸の残基である、項目15に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目17)前記非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニンが、前記脂肪親和性部分に、前記トリテルペンサポニンの3−グルクロン酸残基と、前記脂肪親和性残基の反応性官能基との間の共有結合を介して直接結合される、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目18)前記非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニンが、前記脂肪親和性残基に、二官能基性リンカーを介して結合され、該二官能基性リンカーは前記トリテルペンサポニンの3−グルクロン酸残基と、該脂肪親和性残基の反応性官能基と結合を形成する第2の官能基との間で結合を形成する第1の官能基を有する、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目19)前記連結基が、−NH−CH2−CH2−NH−、−NH−CH(COOH)−CH2−NH−、−NH−CH2−CH(COOH)−NH−、−NH−CH2−CH2−CH2−NH−、−O−(CH2)−NH−、−S−(CH2)−NH−、−S−(CH2)−C(O)−NH−CH2−C(O)−、−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−、−NH−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(CH3)2−C(O)−および−NH−NH−C(O)−(CH2)−C(O)−NH−N=からなる群から選択され、ここでrはそれぞれの場合に2〜5である、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目20)前記結合体が、以下の式IIで表されるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体:
【0025】
【化2】

ここで、Rはグルコースまたは水素であり;Rはアピオースまたはキシロースであり;XはS、O、NHまたは連結基であり;そして
は脂肪親和性部分である。
(項目21)前記結合体が、以下の式IIIで表されるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体:
【0026】
【化3】

ここで、XはS、O、NHまたは連結基であり;そして
は脂肪親和性部分である。
(項目22)前記結合体が、以下の式IVで表されるか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩である、項目1に記載のサポニン−脂肪親和体結合体:
【0027】
【化4】

ここで、XはS、O、NHまたは連結基であり;そして
は脂肪親和性部分である。
(項目23)前記Xが連結基であり、そして該連結基が二官能基性分子である、項目20〜22のいずれか1項に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目24)前記XがNHである、項目20〜22のいずれか1項に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目25)前記XがOである、項目20〜22のいずれか1項に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目26)前記XがSである、項目20〜22のいずれか1項に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目27)前記Rが脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、ポリエチレングリコール、グリコシル脂肪酸、糖脂質、リン酸脂質およびモノアシルグリセロールおよびジアシルグリセロールからなる群から選択される脂肪親和性部分である、項目20〜22のいずれか1項に記載のサポニン−脂肪親和体結合体。
(項目28)項目1に記載の1つ以上のサポニン−脂肪親和体結合体、および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
(項目29)さらに抗原を含む、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目30)以下を含む、ワクチン:
(a)項目1に記載の1つ以上のサポニン−脂肪親和体結合体;
(b)免疫学的に有効量の抗原;および
(c)薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤。
(項目31)動物の免疫応答を強化する方法であって、項目28に記載の組成物を、免疫応答の強化を必要とする動物に、該動物の該免疫応答を強化するのに有効量で投与する工程を含む、方法。
(項目32)動物の抗原に対する免疫応答を可能にする方法であって、項目29に記載の組成物を、該抗原に対する該動物の該免疫応答を可能にするのに有効量で投与する工程を含む、方法。
(項目33)動物にワクチン接種する方法であって、該動物に項目30に記載のワクチンを投与する工程を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1−1】図1はQuillaja、GypsophillaおよびSaponaria由来のサポニンについての代表的な化学構造を例示する。
【図1−2】図1はQuillaja、GypsophillaおよびSaponaria由来のサポニンについての代表的な化学構造を例示する。
【図2−1】図2は、(a)Acanthophyllum squarrosumおよび(b)lucyoside P由来のサポニンについての代表的な化学構造を例示する。
【図2−2】図2は、(a)Acanthophyllum squarrosumおよび(b)lucyoside P由来のサポニンについての代表的な化学構造を例示する。
【図3】図3は、OVA単独によって、およびミョウバン、quillajaサポニン、脱アシル化したquillajaサポニンのおよび本発明の実施例3のquillajaサポニン脂肪親和体結合体(GPI−0100)の異なる投与量の存在下で誘発される抗OVAIgG初期免疫応答の比較を示す。
【図4】図4はフロイント完全アジュバント、quillajaサポニン、本発明のquillajaサポニン−脂肪親和体結合体、ミョウバン、およびOVA単独の存在下で、OVA抗原との免疫化について代表的な力価終点を示す。抗原−特異的抗体結合に起因する吸光度は血清希釈の対数の関数としてプロットした。
【図5】図5は、OVA単独によって、およびミョウバン、quillajaサポニン、およびquillajaサポニン脂肪親和体結合体(GPI−0100)の種々の投与量の存在下で誘発される二次抗OVAIgG初期免疫応答についてのlog力価終点の比較を示す。
【図6】図6は、IgGアイソタイプ産生における、ミョウバン、quillajaサポニンの効果、および本発明のquillajaサポニン−脂肪親和体結合体の異なる投与量の効果を示す。log力価終点は、各アイソタイプに対する抗体特異性を使用して決定される。
【図7】図7は、OVA単独で2回、またはミョウバン、quillajaサポニン、脱アシル化したquillajaサポニンの異なる投与量、および本発明のquillajaサポニン−脂肪親和体結合体(GPI−0100)の存在下で免疫化されたマウスから単離されたT−リンパ球において誘導されるインビトロにおける増殖応答の比較を示す。プライミングの程度を、2または10μgのいずれかのOVAで脾臓細胞を刺激し、そして3H−チミジン取り込みの増加変化(Δ3H−TdR取り込み、c.p.m.)を測定することによって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、以下を含む、本明細書中でサポニン−脂肪親和体結合体として呼ばれる、新規な化合物に関する:
(1)以下(2)に共有結合した、3−O−グルクロン酸残基を有する非アシル化または脱アシル化トリテルペンサポニン:
(2)例えば、1つ以上の脂肪酸、脂肪アミン、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、テルペンまたはポリエチレングリコールである、脂肪親和性部分;
ここで(2)は直接かまたは適切な連結基を介してかのいずれかで、トリテルペンサポニンの3−O−グルクロン酸残基上に存在するカルボキシル炭素原子を介して(1)に結合される。
【0030】
サポニン(例えば、Quillajaデスアシルサポニン、Silenejenisseenis 野生デスアシルサポニン、lucyoside PおよびGypsophila SaponariaおよびAcanthophyllumsquarrosum’sサポニン)の3−O−グルクロン酸への脂肪親和性部分の結合は、体液性および細胞媒介免疫におけるアジュバント効果を強化する。さらに、非アシル化または脱アシル化サポニンの3−O−グルクロン酸残基への脂肪親和性部分の結合は、本来のサポニンよりも、精製が容易であり、毒性が少なく、化学的に安定であり、そして等しいかより良好なアジュバント特性を有するサポニンアナログを生じる。
【0031】
最も広範な実施態様において、本発明は1つ以上の修飾されたサポニンに関し、ここで上記修飾されたサポニンは、(a)3位および28位に結合した分枝糖鎖および4位に連結または結合したアルデヒド基を有するトリテルペンアグリコン核構造(例えば、キラヤ酸(quillaicacid)、ギプソゲニン(gypsogenin)など)を有する;(b)本来非アシル化されているか、またはトリテルペンアグリコンの28位で糖類に結合されるアシルまたはアシロイル基の除去を必要とするかのいずれか;および(c)直接かまたはリンカー部分を介してかのいずれかで、トリテルペンアグリコンの3位でグルクロン酸のカルボン酸に共有結合される脂肪親和性部分を有する。
【0032】
本明細書中に使用されるように、句「脂肪親和性部分」および「脂肪親和性分子の残基」は、非極性であるかまたはサポニンの3−O−glcA残基を有する非極性領域を有する1つ以上の化合物の適切な官能基の共有結合相互作用により結合される部分をいう。脂肪親和性部分は両親媒性化合物の部分であり得る。両親媒性化合物は、極性および非極性領域の両方を含む分子の化合物である。界面活性剤は、両親媒性化合物の例である。界面活性剤は、代表的に、しばしばアルキル、アリールまたはテルペン構造である非極性部分を有する。さらに、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性であり得る極性部分を有する。アニオン性基の例は、カルボキシレート、ホスフェート、スルホネートおよびスルフェートである。カチオン性領域の例は、アミン塩および第4級アンモニウム塩である。両性界面活性剤はアニオン性およびカチオン性領域の両方を有する。非イオン性領域は、代表的に、脂肪酸カルボキシ基の誘導体であり、そして糖類およびポリオキシエチレン誘導体を含む。
【0033】
脂肪親和性部分はまた非極性領域を有する2つ以上の化合物を含み得、ここで化合物の各々は、次に3−O−グルクロン酸(glucoronic acid)に共有結合する連結基に完全に結合している。
【0034】
いくつかの脂肪親和体含有化合物(例えば、脂肪族アミンおよびアルコール、脂肪酸、ポリエチレングリコールおよびテルペン)は、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基および非アシル化サポニンの3−O−glcA残基に添加され得る。脂肪親和体は、飽和または不飽和であり得る脂肪族または環式構造であり得る。例示の目的で、脂肪酸、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、グリコシル−脂肪酸、糖脂質、リン脂質およびモノおよびジアシルグリセロールは、非アシル化サポニンまたはデスアシルサポニンに共有結合され得る。結合は、3−グルクロン酸部分の酸部分かまたはこの位で活性化酸官能基のいずれかと共有的に反応する脂肪親和性部分上の官能基を介し得る。あるいは、二官能性リンカーはサポニンの3−O−glcA残基に脂肪親和体を結合するのに使用され得る。
【0035】
有用な脂肪酸は、C6〜C24脂肪酸、好ましくはC7〜C18脂肪酸を含む。有用な脂肪酸の例には、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸のような飽和脂肪酸;およびパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸のような不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0036】
有用な脂肪族アミン、脂肪族アルコールおよび脂肪族メルカプタンは、約6〜約24個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜16個の炭素原子、そして最も好ましくは8〜12炭素原子を有する直鎖または分枝、飽和または不飽和脂肪族基を有するアミンおよびアルコールおよびメルカプタン(RSH)を含む。有用な脂肪族アミンの例には、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、スフィンゴシンおよびフィトスフィンゴシン(phytosphingosine)が挙げられる。有用な脂肪族アルコールの例には、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、チミルアルコール(chimylalcohol)およびセラキルアルコール(serachyl alcohol)が挙げられる。
【0037】
有用なテルペノイドには、レチノール、レチナール、ビサボロール(bisabolol)、シトラール、シトロネラル、シトロネロールおよびリナロールが挙げられる。 有用なモノおよびジアシルグリセロールには、モノおよびジエステル化グリセロールが挙げられ、ここでアシル基は8〜20個の炭素原子、好ましくは8〜16個の炭素原子を含む。
【0038】
有用なポリエチレングリコールは式H−(O−CH−CH)OHを有し、ここでエチレンオキシド単位の数であるnは4〜14である。有用なポリエチレングリコールの例には、PEG200(n=4)、PEG400(n=8〜9)、およびPEG600(n=12〜14)が挙げられる。
【0039】
有用なポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテルは、エチレンオキシド単位(n)が1〜8との間であり、およびアルキル基がC〜C18である。
【0040】
両親媒性特性を有する側鎖(すなわち親水性および疎水性基の非対称な配置)は、(a)ミセルの形成ならびに抗原の凝集、および(b)細胞レセプターに対するトリテルペンアルデヒドの接触可能性(accessibility)を促進する。これはまた、このような側鎖における負に荷電したカルボキシル基の存在がテルペン基の反発に寄与し得、それによって回転の自由度をより大きくすることを可能にする。この最後の因子は、イミン形成カルボニル基に対する細胞レセプターの接触可能性を増大する。
【0041】
デスアシルサポニンおよび非アシルサポニンは脂肪親和性部分に直接連結され得るか、または連結基を介して連結され得る。用語「連結基」は、デスアシルサポニン、非アシル化サポニンまたはそれらの混合物を脂肪親和性分子に共有結合するために使用され得る1つ以上の二官能基性分子を意図する。このリンカー基はトリテルペン核構造上の3−O−グルクロン酸部分のカルボン酸基、および脂肪親和性分子上に存在する適切な官能基に共有結合する。
【0042】
サポニンおよび脂肪親和性分子を連結するために使用され得るリンカー基の非限定の例は、アルキレンジアミン(NH−(CH)−NH)(ここでnは2〜12である);アミノアルコール(HO−(CH)−NH)(ここでrは2〜12である);および必要に応じてカルボキシ保護されたアミノ酸;エチレンおよびポリエチレングリコール(H−(O−CH−CH)−OH(ここでnは1〜4である)アミノメルカプタンおよびメルカプトカルボン酸である。
【0043】
本発明は、本明細書中に記載した理由のために上記の構造的要件に合致するいかなるサポニンも有用である。
【0044】
本明細書中に使用されるように、用語「非アシル化サポニン」または「非アシルサポニン」は、トリテルペンの28位にそれ自体結合されるオリゴ糖残基に結合されたアシル基またはアシロイル基を欠損するサポニンを言う。
【0045】
本明細書中に使用されるように、用語「デスアシルサポニン(deacylsaponin)」または「脱アシル化サポニン」は、トリテルペンの28位にそれ自体結合されるオリゴ糖残基からアシル基またはアシロイル基を除去するために修飾されたサポニンを言う。
【0046】
Quillaja、GypsophilaおよびSaponariaは、有用なサポニンであり、これら全ては28位においてエステル結合で連結した分枝オリゴ糖、および分枝オリゴ糖に連結するQuillajaおよびGypsophilaの3−O−グルクロン酸(3−O−glcA)を4位に連結または結合するアルデヒド基を有するトリテルペンアグリコンを有する。Q.saponariaおよびS.jenisseenis由来のサポニンは、アシル部分を含むが、Gypsophila、Saponaria、およびAcanthophyllum由来のサポニンは、アシル部分を含まない。これら各々の非アシル化または脱アシル化サポニンは本発明に有用である。
【0047】
他のトリテルペンサポニンはまた、本願の目的である脂質結合体の調製に適切である。これらの新規なサポニンは、Quillaja saponaria Molina、Gypsophila sp.、またはSaponaria officinalis由来のサポニンと同様の構造特性を有する;すなわち、これらはアルデヒドおよびそれらのアグリコンに連結したグルコン酸残基を有する。これらの付加サポニンは、Acanthophyllumsquarrosumから単離された、ビデスモシンサポニン、スカロシド A(squarroside A);サポニンlucyoside P;およびSilenejenisseensis Willdから単離された2つのアシル化サポニンである。以下は、これらの化合物の簡単な説明である。
【0048】
SquarrosideAは、アグリコンgypsogeninのC−3およびC−28に連結された2つのオリゴ糖鎖を含むビデスモシンサポニンである。これは、gypsophilaサポニンと同様に、アグリコンのC−4に連結したアルデヒド基およびC−3でグルクロン酸残基を有する。さらに、これはC−28でアセチル化フコース残基を含む。スカロシドA(Squarroside A)はインビトロリンパ球増殖試験によって測定されたような免疫調節活性を有する。これらの明らかな非特異的免疫調節効果は、投与量に依存した:μg範囲の濃度での抑制効果およびpg範囲の刺激効果。
【0049】
LucyosidePは、アグリコンキラヤ酸のC−3およびC−28、ならびにC−4でアルデヒド基に連結した炭水化物残基を有するビデスモシンサポニンである。LucyosidePはC−3にグルクロン酸残基を有する。
【0050】
2つのアシル化サポニンは、Caryophyllacea Silene jenisseensisから単離されている。これらのサポニンはアグリコンキラヤ酸のC−3およびC−28に連結した炭水化物を有する。C−3およびC−28に連結した炭水化物残基は、それぞれグルクロン酸およびフコースである。フコース残基は、p−メトキシシンナモイル基でアシル化され、trans−およびcis−p−メトキシシンナモイルトリテルペン(tritepene)グリコシドを生じる。これらのサポニンはアルデヒド基を有するが、インビトロでの化学発光顆粒球アッセイにより検出されるような明らかな免疫刺激活性を有さない。しかし、p−メトキシシンナモイル部分は、化学発光を発生するのに必要とされる反応性酸素の活性を妨害することが可能である。
【0051】
上記のサポニンの全ては、単離されて精製されている。しかし、Silene jenisseensis由来のアシル化サポニンは、cis−およびtrans−異性体形態の混合物としてのみ得られる。Q.saponariaサポニンと同様にSilenejenisseensis由来のこれらのアシル化サポニンは、1時間、室温での約0.2N KOHによる穏やかなアルカリ加水分解によって容易に脱アシル化される。次いで、脱アシル化サポニンは本明細書中に記載された手順の1つにより修飾されて免疫刺激性およびアジュバント活性を有するアナログを生じる。
【0052】
本発明に使用する化合物の好ましい基は、3−O−グルクロン酸のカルボキシル基と化学反応により脂肪親和性部分に結合した脱アシル化quillajaサポニンである。
【0053】
したがって、本発明の好ましい実施態様は式IIの化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する:
【0054】
【化5】

ここで、
はグルコースまたは水素であり;Rはアピオースまたはキシロースであり、好ましくはアピオースであり;XはS、O、NHまたは連結基であり;およびRは脂肪親和性分子の残基である。
【0055】
Xの好ましい値はOおよびNHを含む。さらに、多数の二官能性連結基は、好ましい。有用な実施例は、以下を含む:
−NH−CH−CH−NH−、−NH−CH(COOH)−CH−NH−、−NH−CH−CH(COOH)−NH−、−NH−CH−CH−CH−NH−、−O−(CH)−NH−、−S−(CH)−NH−、−S−(CH)−C(O)−、−NH−CH−C(O)−、−O−CH−CH−O−CH−CH−O−、−NH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(CH)−C(O)−および−NH−NH−C(O)−(CH)−C(O)−NH−N=であり、ここで各場合においてrは2〜5である。
【0056】
好ましいR基には、脂肪酸残基、テルペノイド、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、脂肪族メルカプタン、ポリエチレングリコール、グリコシル脂肪酸、脂肪酸と脂肪アルコールとのモノおよびポリC2〜C4アルキレンオキシ誘導体、糖脂質、リン脂質、および3−O−glcAカルボニル基または二官能性リンカー上の適切な官能基に共有結合され得るジおよびトリアシルグリセロールが挙げられる。
【0057】
残基の有用な例には、アラキドン酸、カプリル酸、レチナール、デカナール、カルプリルアルデヒド(carprylaidehyde)、ノニルアミン、ノナノール、ドデシルアミン、ドデカノール、オクチルグルコピラノシド、ラウリン酸、ラウリルメルカプタン、スフィンゴシン、ジヒドロシフィンゴシン、4−オクチルベンズアルデヒド、ビタミンAおよびグルコサミン−リシノール酸結合体の残基が挙げられる。
【0058】
同様に、Gypsophilia、SaponariaおよびAcanthophyllumサポニンの3−グルクロン酸のカルボン酸部分、サポニンlucyosidePおよびS.jenisseenis由来の脱アシル化サポニンは、本明細書中にさらに十分に記載されているように、直接かまたは適切なリンカーを介してのいずれかで、酸が適切な試薬と反応して脂肪親和性部分へアミドまたはエステル連結を形成して結合体を生成するために修飾され得る。それによって、グルクロン酸は−C(O)−X−Rに転換され、ここでXおよびRは上記で定義された通りである。
【0059】
GypsophiliaおよびSaponariaサポニンが反応することによって形成されるサポニン−脂肪親和体結合体は、それぞれ式IIIおよび式IVで表される:
【0060】
【化6】

ここで、XおよびRは上記で定義した通りである。
【0061】
Quillajasaponin混合物の穏やかなアルカリ加水分解は、28−O−エステル結合の切断およびサポニンの脱アシル化を生じ、2つの主要な、1つのグルコピラノシル残基の異なる密接に関連する生成物を得る(Higuchi,R.ら、Phytochemistry26:229(1987);同26:2357(1987);同27:1169(1988);Kensilら、米国特許第5,057,540号(1991);Kensilら、Vaccines92:35(1992))。クロマトグラフィー手順により分離され得るこれらの主要な2つのデスアシルサポニンは、親のサポニンより、より親水性であり、そしてより少ないアジュバント活性を有する。しかし、丁度2つの化合物への20を越えるQuillajasaponin種の還元は、半合成アジュバントの開発および生成についての出発物質の実質的な源を提供する。
【0062】
好ましい出発物質としては式Iにより表される脱アシル化Quillajasaponinが挙げられ:
【0063】
【化7】

ここでRはグルコースまたは水素であり;およびRはアピオースまたはキシロースである。好ましい実施態様において、本明細書中に記載される単離手段を用いることによって、2つの脱アシル化Quillajasaponin、DS−1およびDS−2は単離され得、そして単一物かまたは混合物としてのいずれかで使用され得る。DS−1は式Iの化合物を言い、ここでRはHであり;およびRはアピオースまたはキシロースである。DS−2は式Iの化合物を言い、ここでRはグルコース;およびRはアピオースまたはキシロースである。
【0064】
全体の60%〜70%の間の脱アシル化キラヤサポニン(quillajasaponin)(DS−2画分に相当する)がR1にグルコース残基を有する。その他の30%〜40%の脱アシル化キラヤサポニン(ここでQS−21誘導化生成物が優勢である)は、DS−1に相当し、その炭水化物部分にどのようなグルコース残基も有さない。余分のグルコース残基はより高い親水性をDS−2に授与し、DS−2は逆相HPLCにおいてDS−1よりも早く溶出する。アピオースの代わりにキシロースを有するごく一部のQS−21を除いて、キラヤサポニンの大部分は位置R2にアピオースを有する。キシロース置換基は、大抵画分DS−1において見いだされるはずである。結合体を調製するためにDS−1とDS−2との完全な混合物を使用することが好ましい。
【0065】
アジュバント活性を変更することなくキラヤサポニンの3−O−glcA残基が修飾され得るため、このカルボキシル基は、デスアシルサポニンの化学的修飾のための唯一の部位を提供する。理論に束縛されることを望まないが、3−O−glcAで脂肪親和性または両親媒性の鎖を組み込むことは、アルカリ加水分解によりキラヤサポニンから除去される28−O−アシル基を官能的に置換する。この修飾は、最初のキラヤサポニンのものと匹敵するか、またはより良い、異なる物理化学的性質およびアジュバント活性を持つネオサポニンをもたらす。この修飾はまた、Gypsophilasp., Saponaria officinalis由来の非アシル化サポニン、およびサポニンスクワロシド(squarroside)、ならびにルシオサイド(lucyoside)Pとともに、一次免疫応答におけるそれらのアジュバント効果を改良するために使用され得る。
【0066】
デスアシルサポニンおよび非アシル化サポニンは、グルクロン酸の活性エステルを調製し、続いて活性エステルを連結基または脂肪親和性分子の求核官能基と反応させることにより、脂肪親和性または両親媒性の分子に連結され得る。本発明の実施において使用され得る活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、およびp−ニトロフェノールのグルクロネートを含む。活性エステルは、サポニンのカルボキシ基を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジド(ethylcarbodiimidemethiodide)(EDCI)のような脱水剤の存在下、アルコールと反応させることにより調製され得る。次いで、連結基または脂肪親和性/両親媒性分子は、水性溶液中活性化エステルと混合されて結合体を与える。
【0067】
サポニンと脂肪親和性または両親媒性分子との間の連結基が望まれる場合、サポニングルクロン酸の活性エステルは上記で記載されるように調製され、そして連結基、例えば2−アミノエタノール、アルキレンジアミン、グリシンのようなアミノ酸、またはグリシンtert−ブチルエステルのようなカルボキシ保護アミノ酸と反応させられる。連結基が保護カルボキシル基を含む場合、保護基が除去され、そして連結基の活性エステルが調製される(上記で記載されるとおり)。次いで、活性エステルは、脂肪親和性分子と反応して結合体を与える。あるいは、脂肪親和性分子は、無水コハク酸で誘導体化されて脂肪親和性コハク酸結合体を与え得、これはEDCまたはEDCIの存在下、連結基に遊離のアミノまたはヒドロキシル基を有するサポニン−連結基誘導体と縮合し得る。
【0068】
遊離のアミノ基(アルキレンジアミンから由来する)を持つ連結基、および遊離アミノ基のヘテロ二官能架橋基(例えば、脂肪親和性チオール化合物の遊離スルフヒドリル基と続いて反応する、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドシクロヘキサン)−1−カルボキシレート)との架橋を含むサポニン−連結基結合体を調製することもまた可能である。そのような連結基の例には、2−アミノエタノールのようなアミノアルコール、およびエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンなどのようなジアミンが挙げられる。次いで、脂肪親和性分子は、最初に無水コハク酸でコハク酸誘導体を形成し、続いてDCC、EDC、またはEDCIでサポニン−連結基結合体とともに縮合することにより、連結基にカップリングされ得る。
【0069】
本発明のさらなる局面は、ビオチニル基が、脱アシル化サポニンまたはジプソフィラおよびサポナリアサポニンのような非アシル化サポニンの3−O−glcAに付加されているサポニンアナログに関する。ビオチニル基の組み込みは、放射活性、蛍光、常磁性のような検出可能な標識、または他の型のタグもしくはレポート基(reportinggroup)で標識化されているアビジンまたはストレプトアビジンと結合することを可能にする。これらの化合物の標識化は、診断目的のためのそれらのインビボまたはインビトロでの検出を可能にする。例えば、FACSシステムが、サポニンアナログについての細胞表面レセプターを持つT−細胞の検出および測定のために用いられ得る。これらのレセプターの存在は、どの細胞が潜在的にイミン形成基により刺激されて免疫応答を生成し得るかを示す。標識化アビジンまたはストレプトアビジンの結合は、ビオチニル化サポニンアナログが細胞表面レセプターに結合される前または後のいずれかで行われ得る。
【0070】
本発明の結合体、ならびに有用な出発材料は、以下の手順に従って調製され得る。参照されるスキームは、請求の範囲の前の説明の段落の終わりに示される。
【0071】
出発材料の調製
Quillajaデスアシルサポニンを調製するための穏やかなアルカリ加水分解に基づく2つの手順がある。最初の手順は、Higuchi,R.ら(Phytochemistry 26:229 (1987)、本明細書中で全て参考として援用される)により記載されており、Quillaja樹皮によるアルコール抽出物で開始し、そして2種のデスアシルサポニン(1および2)がクロマトグラフィー手順により分離される(スキーム1を参照のこと)。この方法は、両方の生成物に対して乏しい回収率を与える。
【0072】
第二の手順は、Kensil,C.ら(米国特許第5,057,540号、本明細書中で全て参考として援用される)により記載されており、限外濾過により、またはゲルクロマトグラフィーにより部分的に精製されたキラヤサポニンで開始する(Dalsgaard、Arch.Gesamte Virusforsch. 44:243 (1974);Acta Vet. Scand. 19 (Suppl. 69):1 (1978))。デスアシルサポニン1(DS−1)および2(DS−2)は、クロマトグラフィー方法により分離される。この手順は両方の生成物に対して良好な回収率を与える。
【0073】
デスアシルサポニン1および2の調整および単離のためのさらなるスキームは、スキーム2において示される。
【0074】
デスアシルサポニン1および2は、それらの化学的修飾の前に分離される。例えば、毒性、再現性、有効性、および潜在的調節排出に依存して、1および2の修飾混合物をアジュバントとして使用することが可能である。
【0075】
そのうえ、S.jenisseensisサポニン由来の脱アシル化サポニンが塩基性加水分解により形成され得る。スキーム3を参照のこと。加水分解反応は、トランス−p−メトキシシンナモイル基の除去をもたらす。
【0076】
脂肪酸−デスアシルサポニン結合体
脂肪酸は、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基を修飾するのに適している。アラキドン酸のような特定の不飽和脂肪酸が、テルペノイドと類似の剛直な構造を有する一連の二重結合を有し、そして好ましい。好適な脂肪酸の他の例には、カプリル酸、カプロン酸、カプリン酸、リノール酸、パルミチン酸、リシノール酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、およびエイコサペンタン酸が挙げられる。
【0077】
カルボジイミドまたは混合無水物の手順を使用して、ジアミンが、アミド結合により単一のモノカルボン酸とカップリングされ、遊離アミノ基を持つ生成物を与え得る。次いで、この−NH2基は、カルボジイミド方法を使用して、デスアシルサポニンの3−O−glcAの−COOHとカップリングされる。最終生成物は、3−O−glcA残基に付加した脂肪酸を持つデスアシルサポニンである。
【0078】
以下は、本発明の脂肪酸−デスアシルサポニン結合体を形成するための一般的プロトコルである。
【0079】
i) 脂肪酸−ジアミン生成物の形成:カプリル酸またはアラキドン酸のような脂肪酸は、エタノールのようなアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、または他の好都合な有機溶媒中、N−ヒドロスクシンイミド(NHS)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と反応させることにより、そのNHSエステルへ活性化され得る。反応は、暗中0〜4℃で混合しながら行われ、脂肪酸の1モルに対して、約1モルのDDC、および1.5〜2.0モルのNHSを有する。反応の4〜6時間後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過により除去し、そして濾液を、脂肪酸に対して5〜10倍モル過剰のジアミンを含む有機溶媒に加える。ジアミンは、好ましくはエチレンジアミンまたはプロピレンジアミンである。反応は、暗中0〜4℃で約8時間、混合しながら行われる。生成物、安定なアミド結合により単一の脂肪酸残基とカップリングしたジアミンは、選択的抽出、沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより、他の反応物から分離され得る。
【0080】
脂肪酸−ジアミンの調製のための別の手順は、混合無水物法である:アラキドン酸およびトリ−n−ブチルアミンを、酸の1モルに対して約2モルのアミンを使用してジオキサンに溶解する。冷却した溶液に、クロロ炭酸イソブチル(脂肪酸1モルあたり1モル)を混合して加え、そして0.5〜1時間反応させる。この混合物を、8〜10倍モル過剰のジアミンを含むジオキサンに一部加え、そして撹拌および冷却しながら4時間反応させる。脂肪酸−ジアミンは、抽出され、そして沈殿および/またはクロマトグラフィーにより分離され得る。修飾脂肪酸は、デスアシルサポニンに付加するために使用される。
【0081】
ii) 脂肪酸−ジアミン生成物のデスアシルサポニンへの付加:
デスアシルサポニンの3−O−glcA残基のカルボキシルは、上記で記載されるようにカルボジイミド手順により活性化される。反応は、DMF、ジオキサン、または他の極性溶媒中で行われ、デスアシルサポニン1モルに対して、約1モルのDCCおよび1.5〜2.0モルのNHSを有する。反応は、暗中0〜4℃で4〜6時間行われ、そして沈殿したジシクロヘキシル尿素は濾過により除去される。濾液を、デスアシルサポニンに対してほぼ等モル量で脂肪酸−ジアミン生成物を含むDMFまたはジオキサン溶液に加える;その後、25℃で約8時間反応させる。生成物、3−O−glcA残基に付加した脂肪酸残基を有するデスアシルサポニンからなる結合体は、微分抽出、沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより分離される。単離された結合体は、水に溶解され、そして凍結乾燥される。
【0082】
テルペノイド−デスアシルサポニン結合体
テルペンは、キラヤサポニン由来のアシロイルアシル基と幾分類似の構造的特徴を有する。従って、テルペンおよびテルペンから誘導される化合物(テルペノイド)は、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基に共役させるのに適した脂肪親和性分子である。有用なテルペノイドは、デスアシルサポニンまたは二官能連結基のいずれかと反応し得る官能基を含む。テルペノイドに見いだされるこの性質を持つ代表的な官能基は、アルコール、アルデヒド、およびケトン官能基を含む。レチナール(免疫において重要な役割を有するビタミンAアルデヒド)は、そのような化合物の例である。単一のジアミン分子がレチナールの1つとカップリングして、遊離のアミノ基を持つレチナールを与える。この生成物は、カルボジイミド法を使用して脱アシル化サポニンに付加される。
【0083】

i) レチナール−ジアミン生成物の形成:レチナールおよび10倍モル過剰のエチレンジアミンを含むメタノール溶液に、メタノールに溶解したシアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodiumcyanoborohydride)を加える。反応を、約8時間進行させて、可逆的シッフ塩基を安定なアルキルアミン結合へ還元する。必要であれば、pHを酢酸またはトリフルオロ酢酸のような有機酸で調整する。レチナール−ジアミン生成物は、選択的溶媒抽出、沈殿、および/または結晶化により回収される。
【0084】

ii) レチナール−ジアミン生成物のデスアシルサポニンへの付加:デスアシルサポニンの3−O−glcA残基のカルボキシルは、上記で記載されるカルボジイミド手順により活性化される。反応は、DMF、ジオキサン、または他の適した溶媒中で行われ、デスアシルサポニン1モルに対して、1モルのDCCおよび1.5〜2.0モルのNHSを有する。暗中0〜4℃で4〜6時間反応させた後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過により除去する。濾液を、デスアシルサポニンに対して等モル量のレチナール−ジアミン生成物を含むDMFまたはジオキサンに加え、そして混合物を25℃で約8時間反応させる。生成物、3−O−glcA残基に付加したレチナール残基を含むデスアシルサポニンは、溶媒抽出、沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより分離される。単離されたネオサポニンは、水に溶解され、そして凍結乾燥される。
【0085】
脂肪族アミン−デスアシルサポニン結合体
アミン由来の脂肪族基は、アミノ基を3−O−glcA残基の−COOHにカップリングさせてアミド結合を形成することにより、キラヤデスアシルサポニンに付加され得る。デスアシルサポニンの3−O−glcA残基のカルボキシルは、上記で記載されるカルボジイミド手順により活性化される。反応は、DMF、ジオキサン、または他の溶媒中で行われ、デスアシルサポニン1モルに対して、約1モルのDCCおよび1.5〜2.0モルのNHSを有する。この混合物を、暗中0〜4℃で4〜6時間反応させ、そして沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過により除去する。濾液を、デスアシルサポニンに対して等モル量で脂肪族アミンを含むDMFまたはジオキサン溶液に加え、そして25℃で約8時間反応させる。生成物、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基を介して脂肪族鎖と結合したデスアシルサポニンは、微分抽出、沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより分離される。単離された結合体は、水に溶解され、そして凍結乾燥される。
【0086】
グリコシル−脂肪酸:デスアシルサポニン結合体
Quillajaサポニンのアシロイルアシル部分の1つが二糖類に連結されて、構造[5−O−α−L−ラムノピラノシル(1→2)−α−L−アラビノフラノシル−3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−オクタノイル]−3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−オクタノイル]を形成する。この構造は、エステル結合によりフコピラノシル残基のC3−ヒドロキシル基に連結されている(図1)。従って、別の化学的修飾は、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基に付加したグリコシル化脂肪親和体を有する結合体である。
【0087】
i) グリコシル化脂肪酸の調製:不飽和リシノール酸のようなアルコール基を含む脂肪酸を、乾燥アセトンに溶解し、アセトンに溶解したトシルクロリドと混合する。反応混合物を撹拌しながら、ピリジンまたはトリエチルアミンを加えて遊離したHClを中和する。トシルクロリドはヒドロキシル基を活性スルホネートに転化する。スルホネートは、抽出または他の適切な手順により、他の反応物から分離される。活性スルホネートを、DMF、または他の適切な溶媒中、pH9.5で、グルコサミンと混合する。スルホネートは、グルコサミンのアミノ基と反応した後、アミンと最初の−OH基−保有炭素との間の安定な連結を形成する良好な脱離基である。当該分野で公知の他の良好な脱離基が、スルホネートと置換され得る。グルコサミン−リシノール酸生成物は、抽出、沈殿、または他の手順により回収される。この生成物は、脂肪酸−ジアミン生成物の形成のために上記で記載されるものと同等の様式で、カルボジイミド法により活性化され、そしてジアミンと反応する。
【0088】
ii) グルコサミン−リシノール酸生成物のデスアシルサポニンへの付加:カルボジイミド法を使用してジアミンと反応することにより導入された遊離のアミン基を持つグルコサミン−リシノール酸結合体は、カルボジイミド反応を再び使用して、または混合無水物法を使用して(ともに、脂肪酸−ジアミン生成物のデスアシルサポニンへの付加のために上記で記載されるように)、デスアシルサポニンと反応させる。生成する結合体は、抽出、沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより回収される。結合体は、水に溶解され、そして凍結乾燥される。この結合体は、デスアシルサポニンの3−O−glcA残基と共有結合したグルコサミン−リシノール酸からなる。
【0089】
疎水性/親水性側鎖を有するキラヤサポニンアナログの合成
両親媒性特性を持つ側鎖、すなわち親水性基および疎水性基の非対称な分配は、(a)ミセルの形成および抗原との会合、ならびに(b)トリテルペンアルデヒドの細胞レセプターへの接近可能性を助長する。そのような側鎖の負電荷を帯びたカルボキシル基の存在がトリテルペン基の反発に寄与し得、その結果それらにより大きな回転自由度を可能にすることもまたあり得る。この最後の要因は、細胞レセプターのイミン形成カルボニル基への接近可能性を増加させる。
【0090】
電荷を帯びた疎水性−親水性側鎖(side−arm)を持つサポニンアナログの合成
i) N−オクチル−モノオキシエチレン(monoxyethylene)のエピクロロヒドリンとの反応:50mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した0.05モル(9.9ml)のN−オクチル−モノオキシエチレンに、撹拌しながら1当量(0.05モル)のペンタンで洗ったNaHを加えて、アルコキシドを形成する。撹拌しながらアルコキシド溶液を、35mlのDMF+0.2モル(15.6ml)のエピクロロヒドリンに加える。<60℃で反応させ、そして反応をTLCにより追跡する。250mlの水を加えることにより反応を止める。水性溶液を、90mlの塩化メチレンで3回抽出し、活性化N−オクチル−モノオキシエチレンの分配のためにその回に達する。集めた有機溶媒相を硫酸マグネシウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーターで溶媒を除去する。シロップ状の残渣が活性化生成物(11)である。TLCにより純度を確認する;必要であれば、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する(スキーム4を参照のこと)。
【0091】

ii) 2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸(システイン)のn−オクチル−モノオキシエチレンへの付加:
シロップ状の残渣(11)(<0.05モル)を30mlの0.2Mリン酸カリウム緩衝液(50%DMF中、pH7.8〜8.4)に溶解することにより、エポキシ化n−オクチル−モノオキシエチレンの新しい溶液を調製する。(11)を、少量のアリコートで撹拌しながら、60mlの0.2Mリン酸カリウム緩衝液(50%DMF中、pH7.8〜8.4)に新しく溶解した0.10モル(12.10g)のL−システインに加える。必要であれば、システイン溶液のpHを、1MのKOHまたは1Mのリン酸のいずれかでpH7.8〜8.4に調整する。窒素雰囲気下適度に撹拌しながら、35〜40℃で一晩反応させる。ロータリーエバポレーションにより濃縮し、そしてトルエンで、または溶解するのであればクロロホルムで、n−オクチル−モノオキシエチレンシステイニル誘導体(12)(分子量351.34)を抽出する。過剰のシステインおよび他の塩は、水相に留まっているか、または有機溶媒中に沈殿するはずである。有機相を濾過し、そして水で2回抽出して、いずれのリン酸カリウムも除去する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥する。過剰のシステインを除去すること、または溶媒を変えること(例えば、トルエンからクロロホルムへ)が必要であれば、シリカゲルでのクロマトグラフィーを使用する。ロータリーエバポレーションにより溶媒を除去すると、生成物(12)は、シロップ状の残渣であるはずである。その純度をシリカゲルでのTLCにより、または(11)およびシステインに対するHPLCにより確認する(スキーム4を参照のこと)。
【0092】

iii) キラヤサポニングルクロン酸の活性化:
10mlのDMF/ピリジン(60:40、v/v)に溶解した0.4g(約240モル)の脱アシル化キラヤサポニンに、480μモル(100mg)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および480μモル(56mg)のN−ヒドロキシスクインイミド(NHS)を加える。室温で一晩撹拌しながら、反応を進行させる。(湿気から保護する)。さらに50mgのDCCおよび28mgのNHSを加え、そしてさらに1時間反応を続ける。反応系を1時間約0〜4℃まで冷却し、そして非常に細かいガラスフィルターを通して濾過して、不溶性のDCC副生成物ジシクロヘキシル尿素を除去する。ロータリーエバポレーターでピリジンを除去し、そして40mlの冷酢酸エチル(EtOAc)を加えて、DS−サポニン:NHS誘導体(13)を沈殿させる。冷凍庫中で1〜2時間後、沈殿した誘導体を細かいガラス濾紙で濾過することにより収集し、そして濾紙上の沈殿物(ppt)をさらにEtOAcで洗う。生成物(13)は、減圧下強力な乾燥で保管され得る(スキーム5を参照のこと)。
【0093】

iv) 活性化DS−サポニンの疎水性/親水性側鎖への連結:
DS−サポニン:NHS誘導体(13)(収率100%と仮定して約240μモル)を、約5mlのDMF/ピリジン(60:40、v/v)に溶解する。(13)の溶液に、5mlのピリジンに溶解した0.20g(約0.5モル)の誘導体(12)を加えて、(13)の約2倍モル過剰にする。湿気から保護し、そして室温で8〜12時間反応させて、n−オクチル−モノオキシエチレンシステイニル側鎖(14)を持つサポニンアナログを得る。反応の進行を、溶媒としてn−ブタノール−ピリジン−水(3:2:1)、およびヨウ素を使用して、または検出のために炭化(charring)してTLCにより確認する。ロータリーエバポレーターでピリジンを反応混合物から除去し、約30mlの冷EtOAcを加え、そして冷凍庫に3〜5時間保管して(14)を沈殿させる。沈殿物(14)を、細かいガラス濾紙で濾過することにより収集し、そして沈殿物をEtOAcで洗って、EtOAcに可溶性のはずである残留(12)を除去する。必要であれば、(14)をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製する。サポニンアナログを水に溶解し、そしてそれを凍結乾燥する。(14)をHPLCにより分析し、そして質量分析により確認する(スキーム6を参照のこと)。
【0094】
電荷を持たない疎水性−親水性側鎖(side−arm)を持つサポニンアナログの合成

電荷を持たない側鎖(side−arm)を有するキラヤサポニンアナログの合成は、上記で記載される合成と共通する工程(1)および(3)を有する。工程(2)および(4)はかなり似通っており、そしてここで記載される。
【0095】
エチレンジアミンのn−オクチル−モノオキシエチレン(monooy ethylene)への付加
シロップ状の残渣(11、上記の工程iに従い調製)(>0.05モル)を、30mlのアセトニトル0.2N炭酸カリウムに溶解する。(11)を少量のアリコートで撹拌しながら、60mlの0.2Mピペラジン−0.2N炭酸カリウムに溶解した0.40モル(26.7ml)のエチレンジアミンに加える。反応を室温で一晩撹拌しながら行う。HClで中和し、ロータリーエバポレーションにより濃縮し、そしてN−オクチル−モノオキシエチレンエチレンジアミン誘導体(15)(分子量332.30)を、好ましくはクロロホルムに、そうでなければトルエンに溶解する。(エチレンジアミンHClは、特にそれが水和している場合には有機溶媒に不溶性であり得る。)エチレンジアミンHClが有機溶媒に不溶性である場合、細かいガラスフィルターを通して濾過し、そして有機相を水で抽出して、残留するエチレンジアミンを除去する。乾燥した硫酸マグネシウムを有機相に加えることにより、有機相を乾燥する。エチレンジアミンが溶媒抽出により除去され得ない場合、または溶媒を変える必要がある場合(例えばトルエンからクロロホルムへ)、シリカゲルでのクロマトグラフィーを使用する。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去する。生成物はシロップ状の残渣であるはずである。その純度を、(11)およびエチレンジアミンに対するTLCまたはHPLCにより確認する(スキーム6を参照のこと)。
【0096】
活性化DS−サポニンの疎水性/親水性側鎖への連結
DS−サポニン:NHS誘導体(13、上記の工程iiiに従い調製)(収率100%と仮定して約240μモル)を、約5mlのDMF/ピリジン(60:40、v/v)に溶解する。(13)に、5mlのピリジンに溶解した0.33gm(1mmol)の誘導体(15)を加え、(13)の約4倍モル過剰にする。室温で8〜12時間反応させて(湿気から保護する)N−オクチル−モノオキシエチレンエチレンジアミン側鎖を持つサポニンアナログ(16)を得る。反応の進行をTLCまたはHPLCにより確認する。ロータリーエバポレーターでピリジンを反応混合物から除去し、約30mlの冷EtOAcを加え、そして冷凍庫に3〜5時間保管して(16)を沈澱させる。沈澱物(16)を、細かいガラス濾紙で濾過することにより収集し、そして沈澱物をEtOAcで洗ってEtOAcに溶解するはずである残留物(15)を除去する。必要であれば、(16)をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する。サポニンアナログを水に溶解し、そしてそれを凍結乾燥する。(16)をHPLCにより分析し、そして質量分析により確認する(スキーム7を参照のこと)。
【0097】
一般の部
トルエンは減圧下ロータリーエバポレートにより除去され得る(bp760 110.6℃)。DMFは減圧下ロータリーエバポレートにより除去され得る(bp3976℃、bp3.7 25℃)。
【0098】
2,3−ジアミノプロピオン酸およびエチレンジアミンのN−オクチル−モノオキシエチレン誘導体は、アルコール、ケトン、および芳香族溶媒のような、いくつかの有機溶媒に可溶性のはずであるが、しかし石油エーテルに不溶性である。有機相の水での抽出の間、N−オクチル−モノエチレン誘導体の洗浄性能のために乳濁液を形成する可能性がある。これらの乳濁液は、懸濁液を暖めるか、または遠心分離するかのいずれかにより、壊され得る。
【0099】
サポニンアナログはEtOAc、エタノールおよびイソプロパノールのようなアルコール、ならびにアセトンに不溶性のはずである。
【0100】

脂肪親和性基の関連トリテルペンサポニンへの付加
先に示されるように、GypsophilaおよびSaponaria由来の非アシル化トリテルペノイドサポニンは、二次免疫応答において顕著なアジュバント効果を有する。しかしながら、キラヤサポニンとは異なり、それらの一次免疫応答における効果はわずかである。脂肪酸部分のこれらのサポニンへの付加が、初期一次免疫応答の間のそれらのアジュバント活性を改良することが予期される。キラヤサポニンの独自アジュバント活性における脂肪酸基の提唱される役割に対する強力な状況証拠は、これらのサポニンの一つであるQS−7により提供される(Kensil,C.ら、J. Immunol. 146:431 (1991);Kensilら、米国特許第5,057,540 (1991))。非常に親水性であるこのサポニンは、(a)脱アシル化Quillajaサポニンの保持時間と匹敵する保持時間を有し、そして(b)キラヤサポニンのアシロイルアシル部分に伴うグリコシル残基であるアラビノースを欠く。これらの特徴は、QS−7が非アシル化されることを強力に示唆する。このサポニンはまた、アシル化Quillajaサポニンとは異なる活性を有する:QS−7は、脱アシル化キラヤサポニンの挙動と似て、非毒性、非溶血性である。QS−7は体液免疫を増強しながら、抗体イソタイププロフィールに対するそれらの効果はQS−12で観察されるものと異なっている。これらの性質は、アシロイル部分が独自アジュバント活性ならびに他のキラヤサポニンで観察される毒性に対して応答し得ることを示唆する。従って、適切な脂肪親和性部分を非アシル化アジュバントサポニンへ付加することは、体液および細胞媒介免疫におけるそれらのアジュバント効果を増強し、ならびにQuillajaサポニンで観察される毒性を制限することが予想される。後者は、これらのアジュバントの小児ワクチンへの首尾良い応用のために非常に重要な要求である。
【0101】
いくつかのサポニンのアジュバントおよび免疫刺激性質は、明らかに特定の構造的要求を有し、それは(a)4位に連結または接続したアルデヒド基を持つトリテルペンアグリコン、および(b)アグリコンの3位および/または28位における分岐糖鎖を含む。トリテルペン基の役割は、続いて起こるアルデヒド基のある巻き込み(involvement)とともに、細胞膜でコレステロールに結合することを促進することであり得る。分岐糖鎖は、過ヨウ素酸塩酸化により修飾されたキラヤサポニンのアジュバント活性が失われることにより示唆されるように、体液免疫の刺激のために重要であるようである。
【0102】
キラヤサポニンのアジュバント活性が密接なサポニン:抗原会合(association)を必要とし得ること、およびそれらのアシル基がそれらの疎水性を増強することによりこの会合を促進することが、仮定されてきた。タンパク質と結合したサポニンと会合したキラヤサポニン分子の数の増加が増強したアジュバント活性をもたらすこともまた示されてきた。明らかに、キラヤサポニン分子は、ミセル様構造を形成するそれらのアシル部分の間の疎水性相互作用により、互いに支え合っている。キラヤサポニンのアジュバント活性の、GypsophilaoldhamianaおよびSaponaria officinalis由来の非アシル化サポニンのアジュバント活性との比較は、幾分類似の活性を示した。しかしながら、キラヤサポニンは非常により大きな一次免疫応答を顕在化させる(Bomford,R.ら、Vaccine 10:572 (1992))。この発見は、キラヤサポニンの疎水性アシル部分がそれらのデスアシルサポニンの固有のアジュバント性質を増強することを示唆している。
【0103】
Quillaja、Gypsophila、およびSaponaria由来のサポニンの構造の比較は、いくつかの類似性を示す(図1)。それら全てが、23位におけるアルデヒド基、28位におけるエステル結合により連結された分岐オリゴ糖類、および3−O−グルクロン酸(3−O−glcA)(QuillajaおよびGypsophilaにおいては分岐オリゴ糖に連結されている)を持つトリテルペンアグリコンを有する。しかしながら、キラヤサポニンは、アシロイルアシル部分を持つ唯一のものである。キラヤサポニンの構造/機能研究は、23−アルデヒド基、オリゴ糖類鎖の完全性(integrity)、および28−O−アシル基の存在が、完全なアジュバント活性のために必要不可欠であることを示している。3−O−glcA残基は明らかに、アジュバント活性を失うことなく修飾され得る。実際、3−O−glcAグリコシド残基は、キラヤサポニンを抗原に結合させるために使用されてきた(Kensil,C. ら、Vaccines 92:35 (1992))。これらのサポニンについてのアジュバント活性の比較は、キラヤサポニンが顕著により良好な一次免疫応答を誘導するが、しかしそれら全てが強力な二次免疫応答を誘導することを示す(表I)。この異なる効果は、一次免疫応答におけるキラヤサポニンのアシロイルアシル残基についての主要な役割を示唆する。キラヤアシル化サポニンにより誘導される一次免疫応答と比較して、キラヤデスアシルサポニンにより誘導される明らかにより低い一次免疫応答は、この提案される役割のための支持を提供する。
【0104】
【化8】

GypsophilaおよびSaponariaサポニンの修飾は、Quillajaデスアシルサポニンについて先に記載されたものと類似の様式で、新規部分のサポニンへの付加部位として3−O−glcA残基のカルボキシルを使用して行われた。これらの構造中に新規の脂肪親和性部分を持つネオサポニンは、本来のサポニン分子よりも良好なアジュバント性質を有するはずである。
【0105】
他の非アシル化トリテルペンサポニン(例えば、スクワロシドA(squarroside A)、ルシオサイドP(lucyoside P)、およびS. jenisseensis脱アシル化サポニン)もまた、アジュバント活性および免疫刺激性質のための構造的要求を有する。例えば、サポニンスクワロシドA(図2)は、インビトロでのリンパ組織増殖性試験により測定されるように、免疫調節活性を有することが示されている。従って、これらのサポニンはそれらの3−O−グルクロン酸残基へ脂肪親和性鎖を付加することにより修飾され、改良されたアジュバント性質を持つネオサポニンを生成し得る。
【0106】
免疫アジュバントは、個体に投与されるかまたはインビトロで試験される場合、抗原が投与された被検体の抗原に対する免疫応答を増加するか、または免疫系から細胞の特定の活性を増強する化合物である。ある抗原は、単独で投与される場合には弱い免疫原性であるか、または被検体の有用な免疫応答を呼び起こす濃度で被検体に対して毒性である。免疫アジュバントは、抗原をより強力な免疫原性にすることにより、抗原に対する被検体の免疫応答を増強し得る。アジュバント効果はまた、被検体に有用な免疫応答を達成するためのより少ない容量の抗原を投与し得るようにし得る。
【0107】
免疫アジュバントは、サイトカインネットワークを改変または「免疫調節」し、免疫応答を上方調節(up−regulating)し得る。この免疫調節に付随して、どのT−細胞、Th1またはTh2がこの免疫応答をマウントするかの選択もまた存在する。Th1応答は、抗体に適合する補体、およびIL−2、IL−12、およびγ−インターフェロンに伴う強力な遅延型過敏症反応を顕在化する。CTL応答の誘導は、TH1応答に伴うようである。Th2応答は、高レベルのIgE、ならびにサイトカインIL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10に伴う。アルデヒド含有サポニンは強力なTh1応答を誘導する。しかしながら、それらのアナログのいくつかはTh2応答を誘導し得る。
【0108】
本発明の化合物および組成物の免疫原−誘導活性は、多数の公知の方法により測定され得る。本発明の組成物の投与に際して特定の抗原に対する抗体の力価の増加は、免疫原活性の測定のために使用され得る(Dalsgaard, K. Acta Veterinia Scandinavica 69:1〜40 (1978))。1つの方法は、1種以上の外来性抗原を含む試験組成物をCD−1マウスに皮内で注入することを要求する。血清をマウスから2週間後に採取し、そして抗免疫原抗体についてELISAにより試験する。
【0109】
本発明の組成物は、被検体の抗原に対する活性な免疫を誘導するワクチンとして有用である。本発明の組成物の有益な効果を経験し得る任意の動物は、処置され得る被検体の範囲内である。被検体は、好ましくは哺乳動物であり、そしてより好ましくはヒトである。
【0110】
本発明のサポニン−脂肪親和体結合体は、単独のアジュバントとして用いられ得るか、または代替的に、非サポニンアジュバントと一緒に投与され得る。本発明とともに有用な、そのような非サポニンアジュバントは以下を含む:油アジュバント(例えば、フロイント完全および不完全)、リポソーム、鉱物塩(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、および炭素)、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、ポリマー(例えば、非イオン性ブロックポリマー、ポリホスファゼン、シアノアクリレート、ポリメラーゼ−(DL−ラクチド−co−グリコシド)、数ある中で、および特定の天然物質(例えば、脂質Aおよびその誘導体、Mycobacteriumtuberculosis由来のワックスD、ならびにCorynebacterium parvum、Bordetella pertussis、およびBrucella属のメンバーに見いだされる物質)、ウシ血清アルブミン、ジフテリア変性毒素、破傷風変性毒素、エデスチン、キーホール−リンペット(keyhole−limpet)ヘモシアニン、シュードモナス菌毒素A、コレラゲノイド(choleragenoid)、コレラ毒素、百日咳毒、ウイルスタンパク質、および真核生物タンパク質(例えば、インターフェロン、インターロイキン、または腫瘍壊死因子)。そのようなタンパク質は、当業者に公知の方法に従い、天然の、または組換え供給源から得られ得る。組換え供給源から得られる場合、非サポニンアジュバントは、少なくとも分子の免疫刺激性部分を含むタンパク質フラグメントを含み得る。本発明の実施において使用され得る他の公知の免疫刺激性巨大分子は、以下を含むがこれらに制限されない:多糖類、tRNA、非代謝性合成ポリマー(例えば、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン)、4’,4−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸および4−ニトロ−2−アミノ安息香酸の混合重縮合(相対的に大きい分子量を持つ)(Sela,M.、Science 166:1365〜1374 (1969)を参照のこと)、または糖脂質、脂質、または炭水化物。
【0111】
本発明の化学的に修飾されたサポニンは、広範囲な投与量および投与される1種以上の特定の抗原に対して広範な比で投与される場合、アジュバント効果を示す。
【0112】
化学的に修飾されたサポニンは、個別に、または抗原に対する免疫応答の向上を達成するために他の実質的に純粋なアジュバントと混合してのいずれかで投与され得る。化学的に修飾されたサポニンは、実質的に純粋な修飾サポニンであり得るか、または化学的に修飾されたサポニンの混合物の形態であり得る。
【0113】
本発明のサポニン脂肪親和体結合体は、1種以上の抗原に対する免疫応答を向上するために利用され得る。本発明の免疫応答誘発組成物に適した代表的な抗原は、以下のいずれかに由来する抗原を含む:インフルエンザ、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、HIV−1、HIV−2、狂犬病、はしか、B型肝炎、または口蹄疫(hoof and mouth disease)のようなウイルス;炭疽、ジフテリア、ライム病、または結核のようなバクテリア;あるいは、BabeosisbovisまたはPlasmodiumのような原生動物。抗原は、タンパク質、ペプチド、多糖類、またはそれらの混合物であり得る。タンパク質およびペプチドは、天然の供給源から精製され得るか、固相合成により合成され得るか、または組換え遺伝学の手段により得られ得る。抗原は、分子の1個以上の免疫原性領域を含むタンパク質フラグメントを含み得る。
【0114】
本発明のサポニン結合体は、DNAワクチンの使用により生成される抗原に対する免疫応答を向上するために使用され得る。抗原をコードするこれらのワクチンにおけるDNAの配列は、「裸」であるかまたはリポソームのような送達系中に含まれるかのいずれかであり得る。このアプローチを使用する代表的なワクチンは、インフルエンザ、ヘルペス、サイトメガロウイルス、HIV−1、HTLV−1、FIVのようなウイルスワクチン、ガンワクチン、および寄生虫ワクチンである。サポニン結合体は、DNAと一緒に、あるいはDNA投与より先のおよび/または後の時間で投与され得る。
【0115】
ガン細胞はしばしば、その表面上に、切り型の表皮性成長因子、葉酸結合タンパク質、上皮ムチン、メラノフェリン(melanoferrin)、癌胚抗原、前立腺特異膜抗原、HER2−neuのような特徴的な抗原を有し、これらは治療的ガンワクチンに使用するための候補である。腫瘍抗原は、通常のものであるかまたは身体の通常の成分に関連しているため、免疫系はしばしば、腫瘍細胞を破壊するためにこれらの抗原に対して効果的な免疫応答をマウントすることに失敗する。そのような応答を達成するために、キラヤサポニンおよびサポニン−脂肪親和体結合体が利用され得る。アルデヒドを含むトリテルペノイドサポニンアジュバントは、特定のT−細胞に存在するレセプタータンパク質(単数または複数)のアミノ基と反応して、シッフ塩基を形成することにより働く。この反応の結果として、外因性タンパク質は、内因性抗原をプロセシングするための経路に入り、細胞溶解性または細胞毒性T細胞(CTL)の産生を導かされる。この独特のアジュバント効果は、その表面上に免疫化のために使用される腫瘍抗原を持つ腫瘍細胞を探して破壊する抗原特異的CTLの産生を誘導する。本発明のサポニン結合体はまた、ガングリオシド、Thomsen−Friedenreich(T)抗原などのような炭水化物腫瘍抗原とともに使用され得る。
【0116】
本発明のサポニン結合体はまた、特に免疫不全患者における慢性感染症疾患の処置のために、免疫系を強化するために単独で投与され得る。本発明の結合体が治療的または予防的処置のために用いられ得る感染症疾患の例は、米国特許第5,508,310号において記載される。サポニン結合体による免疫系の強化はまた、院内感染および/または手術後感染の危険性を制限するための予防的手段として有用であり得る。
【0117】
本発明の方法において有用な化合物の投与は、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、鼻内、または任意の他の適切な手段によるものであり得る。投与される投薬量は、年齢、体重、同時に行う処置の種類(もし、あれば)、および投与される抗原の性質に依存し得る。一般に、サポニン/抗原結合体は、広範な投薬量で、および投与される抗原に対する広範な比で投与され得る。最初の投薬は、免疫応答を向上するために約4週間の期間後、続いて追加抗原投薬(booster dosage)を行い得る。さらなる追加抗原投薬もまた投与され得る。
【0118】
本発明のサポニン−脂肪親和体結合体は、カプセル、液体溶液、乳濁液、懸濁液、または経口投与のためのエリキシルのような形態で、あるいは溶液、乳濁液、または懸濁液のような滅菌液体形態で用いられ得る。生理食塩水、またはリン酸緩衝化生理食塩水のような任意の不活性キャリア、または本発明の方法において使用される化合物が本発明の方法における使用に対して適した溶解性能を有する任意のそのようなキャリアが好ましくは使用される。
【0119】
本発明のサポニン−脂肪親和体結合体は、リポソームとともに用いられ得、ここでサポニンは、リポソーム調製の脂質材料と緩やかに会合して(結合体は二分子膜内にはないが、脂質と会合している)、ある場合にはリポソームの二分子膜内に捕獲されて、リポソームの二分子膜の一方または両方内にあり得る。例えば、Fullertonの米国特許第4,235,877号を参照のこと。
【0120】
本発明はまた、個体の免疫化のためのキットを提供し、これは1個以上の容器手段を持つ閉じた空間内に受けるために区画されたキャリアを含み、ここで第一の容器は本発明のサポニン−脂肪親和体結合体を含む。キットはまた、少なくとも1個の他の容器手段を含み、これは本明細書中で記載されるようなサポニンアジュバントまたは他のアジュバントを含む。
【0121】
ビオチニル基の関連トリテルペンサポニンへの付加
先に示したように、ビオチン化サポニンアナログは、免疫系のどの細胞がイミン形成サポニンと反応しうるレセプターを有するかを同定し、そして決定するための有用な試薬である。これらのサポニン(例えば、quilaja、gypsophila、およびsaponaria由来のもの)は、APC上で発現し、そしてT−細胞上のCD28レセプターと反応する共刺激リガンドB7.1と置き換わる。B7.1またはイミン形成サポニンアジュバントでの共刺激において、T−細胞は活性化されて抗原特異的CLTを形成する。これらのタグ化サポニンアナログの使用は、脱アシル化または非アシル化サポニンと結合し得る細胞表面レセプターを有するT−細胞の存在を、定性的にまたは定量的に測定することにより、免疫応答プロセスの進行の測定を可能にする。
【0122】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であって、限定するものではない。通常遭遇し、そして当業者に明らかである多種の条件およびパラメーターの他の適切な改変および付加が、本発明の精神および範囲内である。
【実施例】
【0123】
実施例1
Quillajaデスアシルサポニン(4)の調製

必要なトリテルペンサポニン出発物質は、アシル化された、Quillaja saponaria Molinaサポリンの市販の調製物から得ることができる。例示の目的で、2種の市販の調製物を使用し得る:
(a)Quillajaサポニン(実用等級、FisherScientificから得られる)は、約25%(w/w)のサポニンおよび75%(w/w)の水溶性混入物(すなわち、オリゴ糖、タンニン、など)を含む;および
(b)透析されたQuillajaサポニンまたはQuilA(Accurate ChemicalsまたはSigma Chemical Co.より得られる)は、メタノール不溶性混入物を有する>80%(w/w)のサポニンである。
【0124】
実用等級のQuillajaサポニンをさらに、以下のように精製することができる。
【0125】
A.実用等級のサポニン調製物(1)を、20〜25%(w/v)の濃度まで水中に溶解し、そして1N酢酸を用いてpHを約4に調節して、濁った溶液を形成する。濁った溶液を、標準透析袋に注ぎ、そして24時間、水の25〜50容積のうち3〜4の交換に対して透析する。水を、透析の4〜8時間ごとに換える。次いで、透析液を凍結乾燥して白色調製物を得る。透析の後、サポニン調製物(2)はメタノールに不溶の混入物(おそらく色素またはタンニン)を含む。収率:実用等級のサポニン調製物の初期重量の±25%であり、これは、本来のサポニンの約95%(w/w)を示す。
【0126】
B.1グラムの乾燥サポニン調製物(2)を、50mlのメタノールで60℃で20〜25分間抽出する。懸濁液を濾過し、不溶の物質を30mlのメタノールで60℃で20〜25分間再抽出する。透明なメタノール性濾液をプールし、回転エバポレーターを用いて乾燥する。メタノールで抽出したサポニン調製物(3)は、メタノールに不溶の混入物を含まない。収率は、調製物(2)の70%までである。
【0127】
Quillajaサポニンのアシル基を、穏やかなアルカリ性加水分解によって除去して、4つの異なるデスアシルサポニン(2つは異性体)、および3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、および3,5−ジヒドロキシ−6−メチルオクタン酸5−O−α−L−ラムノピラノシル−(1→2)−α−アラビノフラノシドを得る。例示の目的で、以下のアルカリ性加水分解法は、これらの脱アシル化サポニン(4)の調製において、有用である。
【0128】
(i)メタノールで抽出したサポニン(3)(60mg/ml)を50%メタノール中の6% NaCO3とともに1時間沸騰し、反応混合物をDowex 50W−X8H+(スルホン化したポリスチレンジビニルベンゼン樹脂である、合成の、強酸性陽イオン交換体)で中和し、そして濾過する。濾液を回転エバポレーターを用いて濃縮し、そして酢酸エチルと水との間で分配する。水相はほとんどのデスアシルサポニンを含み、一方、有機EtOAc相はオクタン酸のほとんどを含む。窒素ガスを通すかまたは回転エバポレーターを用いて、EtOAcを水相から除去し、そしてデスアシルサポニン水溶液(4)を凍結乾燥する。
【0129】
(ii)メタノールで抽出したサポニン(3、0.1グラム)を3mlの90%のn−プロパノール中で再懸濁する。この懸濁物/溶液を、5N NaOHストック溶液の添加によって0.5NNaOHに調整し、そして室温(20〜25℃)で2時間混合する。懸濁液を、50×gで5分間遠心分離して、淡色の上清を得、これを廃棄し、そして茶色がかった粒状の沈殿物を得る。3mlの90%n−プロパノールで再懸濁し、50×gで遠心分離することによって、沈殿物を3回洗浄する。得られるデスアシルサポニン(4)のペレットを3mlの水に再溶解し、そして凍結乾燥する。
【0130】
あるいは、メタノールで抽出したサポニン(3)を水に溶解して、20mg/ml
のサポニンを有する溶液を形成して、溶液を0.15Mトリエチルアミンの最終濃度、pH12に調節する。40〜50℃で1時間の後、pH7まで酢酸を添加することによってアルカリ性加水分解を終結する。反応混合物を酢酸エチルで抽出して、トリエチルアミンおよびいくらかの加水分解生成物を除去する。デスアシルサポニン(4)は、水相に残るはずである。別の手順では、(3)(10mg/ml)を濃アンモニアに溶解し、溶液を室温で5時間攪拌し、そして窒素流下でアンモニアを除去する。水溶液を80mlの酢酸エチルで抽出し、そして有機相を廃棄する。デスアシルサポニンを含む水相を凍結および凍結乾燥する。
【0131】

実施例2
Gypsophylaサポニンからのサポニンの精製

10mM酢酸中、粗gypsophylaサポニンの5%溶液を、4℃で、20容積の10mM酢酸に対して約2,000ダルトンの分子量カットオフを有する透析袋で透析する。酢酸溶液を、4時間後に2回交換する。(この工程は、多糖類およびいくらかの小分子量混入物を除去する)。透析した溶液を回転エバポレーターで濃縮し、凍結乾燥する。1グラムの透析したgypsophylaサポニンを、50mlの純粋なメタノール(MeOH)を用いて2回、室温で、それぞれ24時間、抽出し、そして濾過する。不溶性物質が存在する場合、室温で、50mlのMeOH:水(40/60)を用いて1回抽出し、そして濾過して不溶性物質を除去する。濾液をプールし、回転エバポレーターで約40℃で濃縮してシロップ状サポニン抽出物(I)を得る。この抽出物を水に溶解して5%サポニン溶液を得、そしてこの溶液を2回、0.5容積の酢酸エチルで抽出する。水相をFractogelTSK HW−4OFのクロマトグラフィーにかけ、0.05M Na2CO3含有水中の、MeOH 0〜50%(v/v)勾配を用いて溶出する。試料を、溶媒としてn−ブタノール:酢酸:水(4/1/5)を用いるシリカゲルのTLCによって分析し、サポニンを、Liebermann:Burchard反応を用いて可視化した。あるいは、(I)からのサポニンを、5容積の酢酸エチルの添加によって沈殿させ、溶媒としてクロロホルム:MeOH:水(64:40:8)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって分取し得る。gypsophylaサポニンのアナログは、脱アシル化quillajaサポニンのために開発された同様の手順を用いて調製し得る。
【0132】

実施例3
グルクロン酸のカルボキシル基を介した脂肪族アミンの付加

C6〜C20の脂肪族アミン、好ましくはC9またはC12の脂肪族アミンを、カルボジイミド法を用いて、デスアシルサポニン(4)のグルクロン酸残基のカルボキシルに付加し得、結合したデスアシルサポニン(5)を得る。DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、または水溶性EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)のいずれかを、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)または水溶性スルホ−NHSとともにまたは無しで使用し得る。反応を、有機溶媒(たとえば、ジオキサン、DMF(ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、アルコールおよびピリジン)単独または混合物中で、無水または水とともに行う。水の存在は、Quillajaデスアシルサポニンの溶解特性(50%メタノール、50%n−プロパノール、水性DMSO、およびDMF、ならびに無水THFまたはジオキサン、および同様の特性を有する他の溶媒に溶解し得る)によって影響される。
【0133】

(i)1工程の方法
(a)1mlの50%n−プロパノール中に溶解した100mg(60μモル)のデスアシルサポニン(4)に、50% n−プロパノール中の1mlの0.6Mドデシルアミン溶液(600μモル)を加える。次いで、3Nリン酸を用いてpHを5と7との間に調節する。得られた溶液に600μモルの乾燥EDC(95mg)を攪拌して入れ、6〜8時間(0℃〜10℃)混合する。さらに300μモル(47mg)のEDCを加え、反応を0℃〜10℃で1晩進行させる。反応は、Dowex50タイプ樹脂を用いて遊離のアルキルアミンを除去することによって停止し得る。(この樹脂はまた、EDC由来のアシル尿素を除去し得る。)樹脂を濾過によって除去する。結合したデスアシルサポニン(5)を含む濾液を、5容積のn−プロパノールと混合して、(5)を沈殿させる。沈殿物を収集し、水に溶解し、透析してそして凍結乾燥する。
【0134】

(b)デスアシルサポニンが無水ピリジンに、単独で、または無水THFとともに可溶である場合、反応はDCCを用いて行い得る。100mgの(4)(60μモル)を、ピリジンおよび/またはTHF中に、1ml以上5ml以下を用いて溶解する。その後、ピリジンおよび/またはTHF中1mlの0.3Mドデシルアミン溶液(300μモル)を反応混合物に添加し、続いて、300μモルの乾燥DCCを添加する。混合物を0℃〜10で1晩混合しながら反応させる。この反応の間、不溶性ジシクロヘキシル尿素が形成され;これを遠心分離によって除去する。結合したデスアシルサポニン(5)を含む上清を10容積のEtOAcを用いて希釈して(5)を沈殿させる。遊離のアルキルアミンを含むEtOAc、残りのDCC、ならびにピリジンおよび/またはTHFを廃棄する。沈殿物をEtOAcで洗浄し、水に溶解し、そしてEtOAc除去の前にEtOAcで再抽出し、凍結乾燥する。
【0135】

(ii)2工程の方法
(a)1mlの50%n−プロパノール中に溶解した100mg(60μモル)のデスアシルサポニン(4)に、50% n−プロパノール中の0.2mlの0.6Mドデシルアミン溶液(120μモル)を加える。3Nリン酸(カルボン酸は避けるべきである)を用いて、混合物のpHをpH5〜7に調節する。120μモルの乾燥EDC(10mg)および120μモルのスルホ−NHS(26mg)を、攪拌しながら反応混合物に添加し、反応を0℃〜10℃で1晩進行させる。5容積のn−プロパノールを添加して、結合したデスアシルサポニン(5)を沈殿させる。沈殿物を収集し、水に溶解し、透析してそして凍結乾燥する。
【0136】

(b)デスアシルサポニンが無水ピリジンに、単独で、または無水THFと混合して、可溶である場合、反応はDCCを用いて行い得る。100mgの(4)(60μモル)を、ピリジンおよび/またはTHF中に、1ml以上5ml以下の溶媒を用いて溶解する。ピリジンおよび/またはTHF中0.4mlの0.3Mドデシルアミン溶液(120μモル)をデスアシルサポニン溶液に添加し、続いて、120μモルの乾燥DCCおよび120μモルの乾燥NHSを添加する。混合物を0℃〜10℃で1晩混合しながら反応させる。不溶性ジシクロヘキシル尿素が形成され、これを遠心分離によって除去する。結合したデスアシルサポニン(5)を含む上清を10容積のEtOAcを用いて希釈して(5)を沈殿させ、そして遊離のアルキルアミン、残りのDCC、およびNHSを除去する。沈殿物を水に溶解し、そしてEtOAcで再抽出した後、回転エバポレーターで濃縮し、凍結乾燥する。修飾を質量スペクトルによって確認する。
【0137】
本発明の他の好ましい実施態様は、脱アシル化または非アシル化サポニンの3−O−グルクロン酸残基のカルボキシル基で2個以上の疎水性鎖を導入するものである。複数の脂肪親和性鎖のこの付加は、以下に記述のものを含む異なる化学的アプローチを用いてなされ得る。好ましくは、2または3個の脂肪親和性側鎖を含む分子が、直接または二官能性のリンカーを介して、3−O−グルクロン酸に共有結合される。
【0138】

実施例4
デスアシルサポニンへのホスファチジルエタノールアミンジパルミトイルの付加

3mlの無水DMF/ピリジン(60:40、v/v)に溶解した0.35g(210mmol)のデスアシルサポニン(4)に、室温で、DMF/ピリジン中の280mmolのホスファチジルエタノールアミン脂肪酸誘導体(ジパルミトイル、ジステアロイルなど)を添加する。この反応混合物に、400〜600mmolの乾燥DCC(0.08〜0.125g)および400mmolの乾燥NHS(0.05g)を混合しながら加え、室温で12〜16時間混合しながら反応させる。反応混合物を1時間4℃まで冷却し、濾過して不溶性のジシクロヘキシル尿素、DCC副生成物を除去する。結合したデスアシルサポニンを含む濾液に、10容積の冷エタノールを加えて、結合したデスアシルサポニンを沈殿させ、そして残りのDCC、NHS、および遊離のホスファチジルエタノールアミン脂肪酸誘導体を除去する。0〜4℃で2〜4時間後、沈殿したサポニン結合体を濾過により収集する。沈殿物を、10〜20mlの酢酸エチルを用いて濾紙上で洗浄する。次いで、沈殿したサポニン結合体を10mlの水に溶解し、この溶液を1容積の酢酸エチルで抽出する。水溶液から酢酸エチルを回転エバポレーターを用いて除去し、そしてサンプルを凍結乾燥する。
【0139】

実施例5
デスアシルサポニンへのL−2,4−ジアミノ酪酸ジミリストイルの付加

25mlのアセトニトリルに溶解した0.63g(2.5mmol)の塩化ミリストイルに、2.10g(11mmol)の2,4−ジアミノ酪酸二塩酸塩、および2.00gの炭酸カリウムを添加する。混合物を、65℃で12〜16時間攪拌しながら反応させる。その後、この反応混合物を減圧下で乾燥し、そして残渣を酢酸エチルに溶解して水で抽出し、硫酸マグネシウムで飽和させた水で再度抽出する。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥する。硫酸マグネシウムは濾過によって除去する。濾液を減圧下で溶解し、化合物の純度をシリカゲルTLCによって確認する。必要ならば、ジミリストイル誘導体を、シリカゲルのクロマトグラフィーによって精製する。
【0140】
5mlの無水DMF/ピリジン(60:40、v/v)に溶解した0.40g(240mmol)のデスアシルサポニン(4)に、室温で、0.23gのジミリストイル誘導体を含む2mlのDMF/ピリジンを添加する。その後、480〜720mmolの乾燥DCC(0.10〜0.15g)および480mmolの乾燥NHS(約0.06g)を混合しながら加え、室温で12〜16時間混合しながら反応させる。反応混合物を1時間4℃まで冷却し、濾過して不溶性のジシクロヘキシル尿素、DCC副生成物を除去する。結合したデスアシルサポニンを含む濾液に、10容積の冷エタノールを加えて、結合したデスアシルサポニンを沈殿させ、そして残りのDCC、NHS、および遊離のジミリストイル誘導体を除去する。0〜4℃で2〜4時間後、沈殿したサポニン結合体を濾過により収集する。沈殿物を、20〜30mlの酢酸エチルを用いて濾紙上で洗浄する。沈殿したサポニン結合体を20mlの水に溶解し、この溶液を1容積の酢酸エチルで抽出する。水溶液から酢酸エチルを回転エバポレーターを用いて除去し、そして凍結乾燥する。サンプルの純度をシリカゲルTLCによって確認する。必要ならば、結合したデスアシルサポニンは、シリカゲルのクロマトグラフィーによって精製し得る。
【0141】

実施例6
クエン酸−トリパルミトイルのデスアシルサポニンへの付加

20mlのアセトニトリルまたはピリジンに溶解した0.50g(2.5ミリモル)のクエン酸に、3.60g(15ミリモル)の1−ヘキサデシルアミンを混合しながら添加する。この溶液に、35ミリモルの乾燥DCC(7.20g)および35ミリモルのNHS(4.00g)を添加し、そして一晩室温で反応させる。反応混合物を4℃まで1時間冷却し、そして濾過して不溶のジシクロヘキシル尿素を除去する。減圧下で回転エバポレーターにおいて溶媒を除去する。乾燥残渣をアルコールに溶解し、そして残留アルキルアミンを強酸性樹脂(Dowex50)で除去する。生成物の純度をシリカゲルTLCにより調べる。必要ならば、生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製する。クエン酸−トリパルミトイル誘導体(1.87g、2ミリモル)を20mlのアセトニトリルに溶解し、そして2.5ミリモルの1,1’−カルボニルジイミジゾール(imidizole)(CDI)(0.40g)を添加し、そして混合物を4時間、室温で、無水条件下において反応させる。次いで、5倍過剰のエチレンジアミン(10ミリモル、約0.65ml)を反応混合物に添加し、そしてさらに2〜3時間、室温で反応させる。その後、残留CDIを破壊するために、10%の水を添加し、そして溶媒を減圧下で除去する。反応生成物を適切な溶媒(例えば、メタノールまたはクロロホルム)に溶解し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。アミノ化クエン酸−トリパルミトイル誘導体(分子量、約1019.7)を含む画分をプールし、そして溶媒を減圧下で除去する。
【0142】
脱アシル化サポニン結合体を、ピリジン/DMF(40:60、v/v)中において1モルのデスアシルサポニンを1.5モルのアミノ化クエン酸−トリパルミトイル誘導体と、前記のDCC/NHS法を用いて、反応させることにより調製する。濾過して不溶のジシクロヘキシル尿素を除去した後、結合体化サポニンを数容量の酢酸エチルを用いて沈殿させ、水に再溶解して凍結乾燥する。
【0143】

実施例7
ステロイド部分またはトリペルテノイド部分を有するサポニンアナログの調製

本開示の発明は、脂肪親和性部分として疎水性直鎖に限定されない。非芳香族環式化合物および芳香族環式化合物ならびに複素環式化合物(例えば、トリテルペノイドおよびステロイド)もまた、脂肪親和性部分として使用され得る。例として、ステロイド誘導体の調製をここに記載する。10mlのピリジン中2ミリモルのデオキシコール酸(0.79g)に、10ミリモル(0.67ml)のエチレンジアミン、続いて4ミリモルの乾燥DCC(0.82g)および4ミリモルのNHS(0.50g)を、混合しながら添加する。混合物を25℃で1晩反応させる。次いで、反応系を冷却し、そして不溶のDCC副生成物を濾過し、そして減圧下で溶媒を除去する。生成物を少容量のクロロホルム−メタノール(3:2、v/v)または類似の溶媒に溶解し、そしてアミノ化生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーによりエチレンジアミンから分離する。溶媒を減圧下で除去する。
【0144】
脱アシル化サポニン結合体を、1モルのデスアシルサポニンと2モルのアミノ化デオキシコール酸誘導体とを、上記のDCC/NHS法を使用して、反応させることにより調製する。結合体化サポニンをアルコールを用いて沈殿させ、水に再溶解して、そして凍結乾燥させる。
【0145】

実施例8
抗原としてオボアルブミン(OVA)を用いてのアジュバント効果についての試験

アジュバント効果は、免疫処方物中への潜在的アジュバントの添加に起因する、抗原特異的抗体力価の増加により評価され得る。増加した力価は、増加した抗体濃度および/または増加した抗原/抗体親和性から生じる。サポニンのアジュバント効果は、モルモットの口蹄疫ワクチンに対する中和抗体の力価の増加(Dalsgaard,K.、Archiv.furdie gesamte Virusforschung 44:243−254 91974)、BSA/サポニン混合物でワクチン接種したモルモットでの(放射状免疫拡散法により測定される)BSAに対する沈降性抗体の力価の増加(Dalsgaard,K.,ActaVeterinaria Scandinavica 69:1−40(1978))、およびKLH/サポニンで免疫したマウスでの(ELISAにより測定した)抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)抗体の力価の増加(Scottら、Int.Archs.Allergyappl.Immun.77:409−412(1985))により、以前に測定されている。
【0146】
アジュバント効果の評価を、サポニン非存在下におけるOVAでの免疫と比較した場合の、OVA/サポニン、OVA/脱アシル化サポニンまたはOVA/サポニンアナログでの免疫に続く抗OVA抗体の増加により測定し得る。サポニン結合体画分でのアジュバント活性を以下のようにして測定する:CD2F1マウス(8〜10週齢)を以下の処方で皮内免疫する:200μlPBS中の20μg OVA(Sigma)および本発明もしくはquillajaサポニンのアジュバント(10〜2500μgの範囲の用量で)またはquillajaサポニン(10μgの用量で)。2回の免疫を2週間の間隔で与える。コントロールマウスは、PBSまたはOVAを有するPBSのいずれかを、200μgの水酸化アルミニウムとともに注射する。血清を免疫後2週間目に回収する。抗OVA抗体をELISAにより測定する:ImmulonIIプレートを、A、C、EおよびG列を、一晩4℃で100μlのOVA溶液で(PBS中10mg/ml)でコートした。プレートをPBSで2回洗浄する。全ウェルで、1ウェルあたり100μl希釈液(PBS中2%カゼイン酸加水分解物(Oxoid,w/v))を用いて1.5時間、37℃でインキュベートすることにより非特異的結合を阻害する。プレートを蒸留水中0.05%のTween20界面活性剤で4回洗浄する。血清を、1:20、1:100、1:500、1:2500、1:12,500、1:62,500、1:312,500および1:1,562,500の希釈で、A+B、C+D、E+FおよびG+Hの列でそれぞれ(100μl/ウェル)、1時間室温でインキュベートする。プレートを上記のように洗浄する。Boehringer−Mannheim西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(1/5000で5%OVA中に希釈)を30分間室温でインキュベートする(1ウェルあたり100μl、全ウェル)。プレートを上記のように洗浄する。ペルオキシダーゼ反応の程度を、2,2’−アジド−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(室温で30分反応、450nmで測定した吸光度)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(10分)との反応により測定する(全抗体結合に対する非特異的抗体結合の反応を、各血清希釈物についての抗原ポジティブウェルの吸光度から抗原ネガティブウェルの吸光度の減算により除去する)。一次免疫応答の間に産生されたIgGを、1:20血清希釈物を使用して得た吸光値を検量線中に内挿することにより測定する。検量線を、既知量の抗−OVAIgGモノクローナル抗体(これは免疫血清サンプルを用いて同時に処理される)を用いて構築する。2次抗−OVA IgG免疫応答は以下のようにして、終点力価から決定する:抗原特異的結合に起因する吸光度を血清希釈物の対数の関数としてプロットし、そして終点力価を0.25の吸光度を得る血清希釈物から推定する。3.6以下の終点力価をアジュバントなしの免疫由来の血清により得、そして5.0近傍またはそれより大きい終点力価を異なるアジュバントで得た。10μgのアジュバント用量での透析したQuillajasaponaria Malinaサポニンは、PBS中のOVAと比較してほぼ2桁の程度で力価を増加する。OVA+脱アシル化quillajaサポニンを用いる免疫由来の1次免疫応答により、PBS中のOVAにより誘発されたIgGより低いレベルのIgGを生じる。
【0147】
実施例3で調製された結合体を、10、50および250μgの用量でアジュバント活性について試験した。結合体は、一次および二次免疫応答の間の抗OVA IgGの産生に良好な用量依存アジュバント効果を示した(図3、4、5、6)。この結合体により、quillajaサポニンにより誘導される力価に近い終点力価(すなわち、4.70〜5.85)を得る。quillajaサポニンとは対照的に、この結合体は、優先的にIgG1の産生を刺激する。試験した用量範囲(10〜250μg)では、この結合体を用いてネガティブな副作用は観察されなかった。
【0148】

実施例9
抗原としてOVAを用いたT細胞免疫に対するアジュバント効果についての試験

多数のウイルスワクチンにおいて、そしておそらくガンワクチンにおいて、タンパク質抗原とともに使用されるアジュバントは、強い特異的な細胞媒介性免疫(CMI)または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の産生を伴うT細胞免疫応答を誘発するはずである。現在のところ、quillajaサポニンはT細胞免疫を誘発し得る唯一のアジュバントである(Newmanら、J.Immuno.148:2357(1992))。他のアジュバント(ムラミルジペプチド、グルカン、IL−2のような免疫調節因子などを含む)は、外因性タンパク質に対する体液性免疫応答を刺激し得るのみであり(Cod,J.C.およびCoulter,A.R.、Vaccine15:248(1997))、これはガンおよびいくつかのウイルスワクチンの場合はほとんど価値がない。quillajaサポニンの脱アシル化は非毒性生成物を生じるが、抗体産生(Kensilら、Vaccines92:35(1992))およびCTL応答(Kensilら、Saponins Used in Traditional and ModernMedicine;Kamasaki,K.,Waller,D.R.編、Plenum,N.Y.、印刷中)により測定した場合はアジュバント活性を有さない。体液性免疫およびT細胞免疫の刺激、ならびにごくわずかな毒性により、本発明の半合成アナログまたはサポニン脂肪親和体結合体はウイルスワクチンまたはガンワクチンの調製に適切である。これらのアジュバントにより誘導されたT細胞免疫は以下によりインビトロでアッセイされ得る:(i)芽球化現象(これは抗原に対する感作T細胞の増殖応答を測定する)、または(ii)タンパク質抗原に対するCTLプライミングの増強の測定。
【0149】
T細胞免疫に対するアジュバント効果を、以下のプロトコールに従う細胞増殖アッセイにより測定する。6〜8週齢の雌C57BL/6マウスを以下の処方で皮下で2回、免疫する:200μl PBS中で、20μg OVA(Sigma)および本発明のもしくは脱アシル化quillajaサポニンのアジュバント(10〜250μgの範囲の用量で)またはquillajaサポニン(10μgの用量で)。2回の免疫を2週間の間隔で与える。コントロールマウスは、PBSまたはOVA含有PBSのいずれかを、200μgの水酸化アルミニウムとともに注射する。2回目の免疫後の2週間目に、脾臓を取り出し、そしてナイロンメッシュを介して押し出すことにより破壊する。細胞を洗浄し、そして10%熱不活化ウシ胎仔血清、100μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlペニシリン、10μg/mlゲンタマイシン、2mML−グルタミンおよび2×10−5M 2−メルカプトエタノールを有するRPMI1640培地に再懸濁する。2×10脾臓細胞をマイクロタイタープレートウェルに100μlの容量で分配し、そして培地単独(バックグラウンドとして使用するため)、3μg/mlConcavalin A、2μg/mlのOVAまたは10μg/mlのOVAのいずれかで3連で培養する。72時間培養後、細胞を1μCiのトリチウム化チミジン(H−チミジン、AmershamInternational)で16時間パルスし、そしてSkatron(Sterling,VA)半自動回収機を使用して回収する。細胞性DNAに取り込まれた標識の量を、液体シンチレーションカウント法により測定する。細胞増殖を、2μgまたは10μgのOVAのいずれかでインビトロで刺激した脾臓細胞の間の取り込まれたH−チミジンの差異(Δcpm)として表す。OVAの存在下でのH−チミジンの取込みから決定されるように、OVA+quillajaサポニンで免疫したマウス由来のTリンパ球は、ミョウバンを用いて観察された増殖応答よりも有意に高い増殖応答を示す。OVAおよび異なる用量の脱アシル化quillajaサポニンで免疫したマウス由来のT細胞は、ミョウバンを用いて観察される増殖応答よりも低い増殖応答を示した。OVA+50または250μgのサポニン結合体で免疫したマウス由来のTリンパ球は、インビトロにおいて、quillajaサポニンを用いて観察される増殖応答(Δc.p.m.)と類似かまたはかなり高い増殖応答を示した(図7)。
【0150】

実施例10
グルクロン酸のカルボキシル基へのビオチンの付加

〜C脂肪族ジアミンを、実施例2に記載のカルボジイミド法を用いて、gypsophila、saponariaまたは脱アシル化quillajaサポニン由来のサポニンのグルクロン酸残基のカルボキシル基に付加する。ビオチン基の付加を、ビオチン(Pierce)の活性エステル誘導体(S−NHS)をサポニンのC〜C脂肪族ジアミン誘導体の遊離のアミノ基へと連結することにより達成する。
【0151】

実施例11
ビオチン化サポニンのT細胞に対する結合試験

リンパ芽球、白血球細胞または培養細胞を、PBS中、37℃でビオチン化サポニンと共に、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下または非存在下で、インキュベートする。インキュベーション後、細胞をBSAを含むPBSで洗浄し、そして遠心分離により回収する。洗浄および再懸濁した細胞に、FITC−結合体化アビジンまたはストレプトアビジン(strepavidin)(xxmg/ml)を添加し、混合物をxx℃でxx分間インキュベートする。細胞を10%ウシ胎仔血清含有PBSで洗浄し、そしてサンプルを蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーにより分析する。ビオチン化サポニンとともに、シアノ水素化ホウ素非存在下でインキュベートした細胞を使用して、バックグラウンドの基準を提供する。シアノ水素化ホウ素存在下でインキュベートした細胞は、CD28細胞表面レセプターを有するT細胞(これはイミン形成サポニン(ビオチン化されたものを含む)を結合し得る)の基準を提供する。これらの細胞はB7.1による同時刺激、およびそれによる活性化に対して感受性である。
【0152】
ここに本発明を十分に記載したので、当業者は本発明の範囲またはそのいずれの実施態様にも影響することなく、条件、処方および他のパラメーターの広範かつ等価な範囲内で、本発明が行われ得ることを理解する。本明細書中に引用した全ての特許および刊行物は、本明細書中においてその全体が参考として全面的に援用される。
【0153】
【化9】

【0154】
【化10】

【0155】
【化11】

【0156】
【化12】

【0157】
【化13】

【0158】
【化14】

【0159】
【化15】

【0160】
【化16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載のワクチン接種の方法。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−174031(P2010−174031A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84524(P2010−84524)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【分割の表示】特願平10−550555の分割
【原出願日】平成10年5月20日(1998.5.20)
【出願人】(500154995)ガレニカ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】