説明

アジュバントとしてのコレラホロトキシンの突然変異形

【課題】 毒性の低減した突然変異コレラホロトキシンの提供
【解決手段】 単一または二重アミノ酸置換または挿入を有する突然変異コレラホロトキシンであって、野生型コレラホロトキシンに比べて低減した毒性を有する突然変異コレラホロトキシン。かような突然変異コレラホロトキシンは免疫原性組成物にアジュバントとして、病原性細菌、ウイルス、真菌または寄生生物、ガン細胞、腫瘍細胞、アレルゲンまたは自己分子から選択される抗原に対する脊椎動物の免疫応答を強化するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性突然変異コレラホロトキシンおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の免疫系は病原体を攻撃するために様々なメカニズムを活性化する(非特許文献1)。しかしこれらすべてのメカニズムが免疫感作後に活性化される必要はない。免疫感作により誘導される防御免疫は、病原体に対抗または排除するために適当な免疫応答を誘導する免疫原性組成物の能力に依存する。病原体に依存して、これには細胞性および/または体液性免疫応答が必要となるかもしれない。多くの抗原は投与された時にそれら自体では免疫原性が不十分であるか、または免疫原性ではない。抗原に対する強力な適応免疫応答にはほとんどいつも、抗原が免疫応答を強化する物質であるアジュバントと一緒に投与される必要がある(非特許文献2)。
【0003】
効果的な免疫感作法の必要性は、胃腸管、肺、鼻咽腔または尿生殖器面で、またはそれらを通って身体に入る急性の感染を引き起こす感染性生物に対して特に急がれている。これらの領域は、ほとんどが分泌免疫グロブリンIgAからなる免疫グロブリンを含む粘膜に浸されている(非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5)。この免疫グロブリンは多数のIgA−生産形質細胞に由来し、粘膜の下にある基底膜領域に浸潤する(非特許文献6;非特許文献7参照)。分泌型免疫グロブリンIgAは分泌成分の作用を通して基底面に特異的に輸送される(非特許文献8)。
【0004】
非経口免疫感作処方は通常、分泌型IgA応答を誘導するには非効果的である。分泌型免疫は最もしばしば、粘膜に付随したリンパ様組織の直接的免疫感作を通して達成される。それらが1つの粘膜部位で誘導した後、IgA−生産形質細胞の前駆体が溢出し、そして多様な粘膜組織に染み渡り、ここで最終的に分化して高率のIgA合成が起こる(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。徹底的な研究により、この共通粘膜免疫系を誘導する粘膜免疫感作の可能性(feasibility)が証明された(非特許文献12)。稀な例外はあるが、効果的な免疫感作を達成するためには大用量の抗原が必要なので、この取り組みは精製された抗原に関しては現実的ではなくなった。
【0005】
この問題を克服するために調査された方法の中に、粘膜アジュバントの使用がある。従来技術には抗原の免疫応答を強化する多数のアジュバントが知られている(非特許文献13)。これらのアジュバントは抗原と混合した時、抗原を粒子状とし、抗原が体内により長期間留まることを助け、これによりマクロファージの取り込み上昇を促進し、そして免疫応答を強化する。しかし多くのアジュバントにより誘導される都合の悪い反応、またはそれらが粘膜免疫の誘導において効果が無いことから、免疫原性組成物を送達するためにより良いアジュバントの開発が必要となった。不幸なことには、今日までのアジュバントの開発はほとんど経験により実行されている(非特許文献14)。すなわち抗原性組成物の送達に効果的なアジュバントを開発するためには、合理的およびより直接的な取り組みが必要である。
【0006】
グラム陰性細菌であり、胃腸管の疾患であるコレラの原因菌であるコレラ菌(V.Cholerae)により分泌されるトキシンは、アジュバントとして極めて有力である。コレラトキシン(CT)は382アミノ酸配列(配列番号1)として報告され(非特許文献15)、これは18アミノ酸シグナルを有する(配列番号1のアミノ酸1〜18)。コレラトキシンホロトキシ分子は、トキシンの酵素活性の原因であるCT−A(配列番号2または配列番号1のアミノ酸19〜258)と名付けられた1つのペプチドサブユニット、
およびトキシンの腸表皮細胞ならびにそれらの表面上にガングリオシドGMを含む他の細胞への結合に関与する各々がCT−Bと名付けられた5つの同一ペプチドサブユニット(各々が21アミノ酸シグナル(配列番号1のアミノ酸259〜279)に続いてCT−Bペプチドサブユニット(配列番号1のアミノ酸280〜382)を有する)からなるヘキサヘテロマー複合体である(非特許文献16;非特許文献17)。コレラ菌(V.Cholerae)により生産されるCTは、成熟CT−A(配列番号2)のアミノ酸187位および199位のシステイン間の1つのジスルフィド結合ループ内でタンパク質溶解的に開裂されるCT−Aサブユニットを有する。この開裂は酵素的に活性なA1ポリペプチド(非特許文献18)および断片A1をCT−Bペンタマーに連結するより小さいポリペプチドA2(非特許文献19)を生じる。酵素的に活性な断片CT−A1はエンテロサイト(enterocyte)に入った時に毒性を生じ、調節G−タンパク質(Gsα)をADP−リボシル化する。これはアデニル酸シクラーゼの構成的活性化、cAMPの細胞内濃度の上昇および流体および電解質の小腸管腔への分泌を導き(非特許文献20)、これにより毒性が引き起こされる。インビトロでCTのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、真核細胞内で小胞輸送(vesicle trafficking)に関与することが知られている小GTP−結合タンパク質であるARFと呼ばれるアクセサリータンパク質の存在により刺激される(非特許文献21)。
【0007】
CTと非関連抗原との同時投与(co−administration)、その抗原に対して同時発生の循環および粘膜抗体応答の誘導をもたらすことが報告された(非特許文献22)。ヒトにおいて野生型CTにより引き起こされる下痢のような望ましくない症状の同時発生を最少とするために、実質的に低減した毒性を有するCTホロトキシン形をアジュバントとして使用することが好ましい。CTの突然変異体はより有用なアジュバントを達成する手段として示唆された。実質的に毒性が低減した突然変異コレラトキシンホロトキシン(CT−CRMsと命名)を合理的に設計する1つの方法は、コレラ(CT)および関連する大腸菌(E.coli)の熱不安定性エンテロトキシン(LT−I、LT−IIaおよびLT−IIb)のファミリーに完全に保存されているトキシン分子中のアミノ酸残基を同定し、そして改変することである。実質的に毒性が低減した突然変異CT−CRMsを生成するための別の合理的な方法は、ジフテリアトキシン(DT)および百日咳トキシン(PT)のようなADP−リボシルトランスフェラーゼ酵素活性を有する関連トキシンの骨格を含むCT骨格の構造的配列に基づき、NAD−結合に重要であることが同定されたホロトキシン分子のアミノ酸残基を改変することである(非特許文献23;非特許文献24)。
【0008】
最近、CTのそのように合理的に設計した、遺伝的に解毒された(detoxified)突然変異体が開示され、ここで1つの非保存的アミノ酸置換(グルタミン酸からヒスチジン)が、成熟Aサブユニットのアミノ酸29位でアミノ酸を改変することにより導入された(CT−CRME29H)。生成した突然変異体コレラホロトキシンは実質的に酵素的毒性が低減しているが、優れたアジュバント性(adjuvanting)および免疫原特性を有することが示された(特許文献2、引用により本明細書に編入する)。
【0009】
このように実質的に低減した毒性を有するが、野生型CTホロトキシンと同じかまたは強化されたアジュバント特性を有するCTホロトキシンのさらなる突然変異体を同定し、かつ/または合理的に設計する必要性が存在する。
【0010】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/296,531号明細書
【特許文献2】国際公開第00/18434号パンフレット
【非特許文献1】Janeway,Jr,CA.and Travers,P.,編集、Immunobiology,「健常および疾患における免疫系(The Immune System in Health and Disease)、第2版、カレントバイオロジー社(Current Biology Ltd.)、ロンドン、英国(1996)
【非特許文献2】Audbert,F.M.and Lise,L.D.1993 Immunology Today,14:281−284)
【非特許文献3】Hanson,L.A.,1961 Intl.Arch.Allergy Appl.Immunol.18,241−267
【非特許文献4】Tomasi,T.B.,and Zigelbaum,S.,1963,J.Clin.Invest.,42,1552−1560
【非特許文献5】Tomasi,T.B.,et al.,1965 J.Exptl.Med,121,101−124
【非特許文献6】Brandtzaeg,P.and.Baklein,K,Scand.1976 J.Gastroenterol.,11 (追補36),1〜45
【非特許文献7】Brandtzaeg,P.1984「健常および疾患におけるヒト鼻粘膜および扁桃の免疫機能(Immune Functions of Human Nasal Mucosa and Tonsils in Health and Disease)」、第28頁および以下、肺および上呼吸管の免疫学(Immunology of the Lung and Upper Respiratory Tract)、Bienenstock,J.編集、マグローヒル(McGraw−Hill)、ニューヨーク、ニューヨーク州
【非特許文献8】Solari R,and Kraehenbuhl,J−P,1985 Immunol.Today,6,17−20
【非特許文献9】Crabbe,P.A.,et al.,1969 J.Exptl.Med.,130,723−744
【非特許文献10】Bazin,H.,et al.,1970 J.Immunol.,105,1049−1051
【非特許文献11】Craig,S.W.,and Cebra,J.J.,1971 J.Exptl.Med,134,188−200
【非特許文献12】Mestecky,J.,et al.,1978 J.Clin.Invest.,61,731−737
【非特許文献13】Elson,C.O.and Ealding,W.,1984 J.Immunol.,132,2736−2741
【非特許文献14】Janeway,Jr.,et al.,上記引用の頁12〜25から12〜35
【非特許文献15】Mekalanos,J.J.et al.,1983 Nature,306,551−557
【非特許文献16】Gill,D.M.,1976 Biochem.,15,1242〜1248
【非特許文献17】Cuatrecasas,P.,1973 Biochem.,12,3558〜3566
【非特許文献18】Kassis,S.,et al.,1982 J.Biol.Chem.257,12148〜12152)
【非特許文献19】Mekalanos,J.J.et al.,1979 J.Biol.Chem.254,5855−5861)
【非特許文献20】Gill,D.M.and Meren,R,1978 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,3050〜3054
【非特許文献21】Welsh,C.F.,et al.,「ADP−リボシル化因子:コレラトキシンを活性化し、そして小胞輸送を調節するグアニン−ヌクレオチトキ−結合タンパク質のファミリー(ADP−Ribosylation Factors;A Family of Guanine Nucleotide−Binding Proteins that Activate Cholera Toxin and Regulate Vesicular Transport)」、天然トキシンのハンドブック:疾患における細菌のトキシンおよび毒素因子(Handbook of Natural Toxins:Bacterial Toxins and Virulence Factors in Disease)、p257〜280、第8巻、Moss,J.,et al.,編集、マルセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、ニューヨーク州 1995
【非特許文献22】Mekalanos,J.J.,et al.,1983 Nature,306,551−557)。
【非特許文献23】Holmes,R.K.,「熱−不安定性エンテロトキシン(大腸菌(Escherichia Coli)(Heat−labile enterotoxins(Escherichia Coli)」、タンパク質トキシンおよびそれらの細胞生物学における使用の指針(Guidebook to Protein Toxins and Their Use in Cell Biology)、Montecucco,C and Rappnoli,R,編集、オックスフォード大学出版、オックスフォード、英国(1997)
【非特許文献24】Holmes,R.K.et al.、「グラム−陰性細菌のコレラトキシンおよび関連するエンテロトキシン(Cholera toxins and related enterotoxins of Gram−negative bacteria)」、第225〜256、天然トキシンのハンドブック:疾患における細菌のトキシンおよび毒素因子(Handbook of Natural Toxins:Bacterial Toxins and Virulence Factor in Disease)、第8巻(Moss,J.,et al.,編集、マルセルデッカー社、ニューヨーク、ニューヨーク州 1995
【発明の開示】
【0011】
1つの観点では、本発明は野生型コレラホロトキシン(CT)に比べて、有意に低減した毒性を有するが、免疫系の有力な刺激物として機能する能力を保持したコレラホロトキシンの新規な突然変異した、免疫原性形態(CT−CRMsと命名された)を提供する。具体的には本発明は望ましくは部位特異的突然変異誘発法により生成し、そして野生型CTに比べて有意に低減した毒性を有するが、アジュバント特性に損失がない5個の突然変異コレラホロトキシン(CT−CRMs)に関する。
【0012】
1つの態様では、本発明の新規CT−CRMはCTサブユニットAのアミノ酸配列またはそれらの断片を含んでなり、ここでAサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸残基が別のアミノ酸に置換され、この置換は毒性に実質的な低減をもたらす。本発明の好適な態様では、Aサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンが、トリプトファンまたはグリシンに置換されている。アミノ酸位の決定について、CT−Aの配列は配列番号2に例示されている。しかしCT−Aの他の変異体および断片も使用することができる。
【0013】
別の態様では、本発明の新規な免疫原性突然変異CT−CRMはCTサブユニットAのアミノ酸配列またはそれらの断片を含んでなり、ここでAサブユニットのアミノ酸49位に単一のアミノ酸残基の挿入があり、この挿入は毒性に実質的な低減をもたらす。この観点および本明細書全体を通して、「Aサブユニットの単一(または多数)のアミノ酸残基(1つまたは複数)の挿入があり」と言う時はいつでも、野生型残基(1つまたは複数)のアミノ酸位(1つまたは複数)[挿入アミノ酸番号(1つまたは複数)]が下にずれることを意味する。本発明の好適な態様では、アミノ酸残基ヒスチジンかAサブユニッの
アミノ酸49位に挿入され、これにより元の49、50位等にあったアミノ酸残基は50、51等にずれる。
【0014】
第3の態様では、本発明の新規な免疫原性突然変異CT−CRMは実質的に低減したC
T毒性を有し、そしてCTサブユニットAのアミノ酸配列またはそれらの断片を含んでなり、ここでAサブユニットのアミノ酸35位および36位に2つのアミノ酸残基の挿入があり、この挿入は毒性に実質的な低減をもたらす。本発明の観点の好適な態様では、アミノ酸残基グリシンおよびプロリンがAサブユニットの35位および36位に挿入され、これにより元の35位および36位のアミノ酸残基は37および38等にずれる。
【0015】
さらに別の態様では、本発明の新規な免疫原性突然変異CT−CRMは実質的に低減したCT毒性を有し、そしてCTのサブユニットAのアミノ酸配列またはそれらの断片を含んでなり、ここでAサブユニットのアミノ酸残基30にアミノ酸置換、そしてAサブユニットのアミノ酸31位および32位に2つのアミノ酸残基の挿入があり、この置換および挿入は実質的に低減した毒性をもたらす。本発明の観点の好適な態様では、アミノ酸トリプトファンにAサブユニットのアミノ酸30位のチロシンが置換され、そしてAサブユニットのアミノ酸位31および32にアミノ酸残基アラニンおよびヒスチジンがそれぞれ挿入され、これにより元の31位および32位のアミノ酸残基は33位および34位等にずれる。
【0016】
別の観点では、本発明は突然変異させたCTが今、免疫応答を刺激するトキシンの能力を抑制(compromising)せずに実質的に低減した毒性を有するように、通常の技術を使用して野生型CTのAサブユニットをコードするDNAの部位特異的突然変異誘発法を使用することにより、上記の新規CT−CRMsを生産する方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の観点では、選択した抗原、抗原に対する脊椎動物宿主の免疫応答を強化するためにアジュバントとして上記のような突然変異CT−CRM、および製薬学的に許容され得る希釈剤、賦形剤または担体を含んでなる免疫原性組成物を提供する。好ましくはCT−CRMは選択した抗原に対する脊椎動物宿主の全身性および/または粘膜抗原性免疫応答を生成、または強化するために有用である。選択された抗原は病原性ウイルス、細菌、真菌または寄生生物に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片である。選択される抗原はガン細胞または腫瘍細胞に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片でもよい。選択される抗原はアレルゲンに対するアレルギー応答を緩和するようにIgEの生産を妨害するようなアレルゲンに由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片でもよい。選択される抗原は、脊椎動物宿主のアミロイド沈着を特徴とする疾患を防止し、または処置するために、アミロイド前駆体タンパク質に由来するもののような望ましくない様式、量または場所で宿主より生産されるもの(自己分子)を表す分子の部分に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片に由来するものでよい。
【0018】
本発明の観点の1つの態様では、上記のような選択された抗原と本発明の突然変異した免疫原性のCT−CRMタンパク質、および製薬学的に許容され得る希釈剤、賦形剤または担体を含んでなる選択された免疫原性組成物が提供される。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は1以上の上記の新規な解毒した突然変異コレラホロトキシン(CT−CRMs)の有効なアジュバント量を含むことにより、脊椎動物宿主に免疫応答を誘導するために、免疫原性組成物のアジュバントとしてこれらCT−CRMの使用法、または上記の選択された抗原を含む抗原性組成物の能力を上げる方法を提供する。
【0020】
本発明のさらなる観点では、上記のように実質的に低減した毒性をもつ新規な免疫原性突然変異CT−CRMsをコードするDNA配列が提供される。好ましくはDNA配列(1つまたは複数)は、低減した毒性を有する突然変異AサブユニットおよびサブユニットBの両方をコードする。あるいはDNA配列は低減した毒性をもつ突然変異Aサブユニットのみをコードしてもよく、ここで改変したまたは突然変異CT−Aはさらなる結合ドメインに融合されるか、またはLT−Bと同時発現され、そして同時集合成(co−ass
emble)する。
【0021】
本発明のさらなる観点では、本明細書に記載する免疫原性の解毒された突然変異コレラホロトキシンをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むプラスミドが提供され、そしてここでそのようなDNA配列は宿主細胞でCT−CRMの発現を支配する調節配列に操作可能に連結されている。好ましくは、調節配列は、アラビノース誘導性プロモーターを含んでなる。この観点の1つの態様では、本発明は実質的に低減した毒性をもつ免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むpLP915と命名されたプラスミドに関し、ここでAサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンがトリプトファンに置換されている。本発明の別の態様では、本発明は実質的に低減した毒性をもつ免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むpLP911と命名されたプラスミドに関し、ここでAサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンがグリシンに置換されている。
【0022】
本発明の観点のさらに別の態様では、本発明は実質的に低減した毒性をもつ免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むpLP907と命名されたプラスミドを提供し、ここでAサブユニットのアミノ酸49位にアミノ酸残基ヒスチジンが挿入されている。本観点のさらに別の態様では、本発明は実質的に低減した毒性をもつ免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むpLP909と命名されたプラスミドに関し、ここでAサブユニットのアミノ酸35位および36位にアミノ酸残基グリシンおよびプロリンが挿入されている。さらなる態様では、本発明は実質的に低減した毒性をもつ免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる、単離され、そして精製されたDNA配列を含むpLP910と命名されたプラスミドに関し、ここでAサブユニットのアミノ酸30位のアミノ酸残基チロシンがアミノ酸残基トリプトファンに置換され、そしてAサブユニットのアミノ酸31位および32位にアミノ酸残基アラニンおよびヒスチジンが挿入されている。
【0023】
本発明のさらなる観点では、本明細書に記載するプラスミドで形質転換、感染、形質導入またはトランスフェクションされた適当な宿主細胞系が提供される。免疫原性の、解毒された突然変異コレラホロトキシンは、上記の1つのプラスミドで適当な宿主を形質転換、感染、形質導入またはトランスフェクションし、そして実質的に低減した毒性をもつ該組換え免疫原性突然変異コレラホロトキシンタンパク質の宿主細胞による発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養することにより生産される。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の観点は、以下の本発明の詳細な説明を読めば当業者には容易に明白となるだろう。
【0025】
<発明の詳細な説明>
低減した毒性を現すが、それらの優れたアジュバント特性は保持するコレラホロトキシンの突然変異形、および免疫原性組成物中のアジュバントとしてCTsのこれら突然変異形の用途を本明細書に記載する。
【0026】
A.突然変異体の解毒されたコレラトキシンホロトキシン
本発明のコレラホロトキシン(CT−CRMs)の新規な突然変異体である解毒された免疫原性形態は、野生型CTに比べて有意に低減した毒性が特徴である。しかしそのようなCT−CRMsは免疫系の有力な刺激物としてそれらの能力を保持している。本発明のCT−CRMsは、コレラトキシンの成熟CT−Aサブユニット中に1または数個のアミノ酸置換および/または挿入を特徴とする。本発明の種々の突然変異CT−Aサブユニッ
トは、アジュバント性(adjuvanticity)において野生型CTに似ている突然変異CTホロトキシンを形成するために、CT−Bサブユニットに集成する能力も保持するが、野生型CTに比べて実質的に低減した毒性を現した。本発明のCT−CRMsは野生型CT−Bサブユニットに会合する突然変異体または改変したCT−Aサブユニットを使用して機能的ホロトキシンを作成することができる。あるいは本発明のCT−CRMsは改変または突然変異CT−Bサブユニットに会合する改変または突然変異CT−A サブユニットを含んでなることができる。
【0027】
本発明のCT−CRMsのアミノ酸置換または挿入の位置を記載するアミノ酸位置の数の決定については、成熟CT−Aは配列番号2、すなわち野生型CT配列の配列番号1のアミノ酸19〜258に例示される。コレラホロトキシンのAサブユニットをコードするヌクレオチド配列は、国際公開第93/13202号パンフレットに説明する。同様に、適当な成熟CT−B配列は配列番号1のアミノ酸280〜382で具体的に説明される。しかしコレラ菌(V.cholerae)のCT−AおよびCT−Bの他の変異体、バイオタイプおよび断片も本明細書に記載するアミノ酸置換および挿入を含む配列として使用することができる。例えばC.Shi et al,1993 Sheng Wu Hua Hsueh Tsa Chih,9(4):395−399のELTORバイオタイプ;NCBIデータベース位置No.AAC34728、およびコレラ菌(V.cholerae)トキシンの変異体の他の供給源を参照にされたい。
【0028】
本発明の1つの態様では、本発明の幾つかのCT−CRMsを生じるアミノ酸置換または挿入は、1つのアミノ酸を同様な構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換えること、すなわち保存的アミノ酸の置換の結果である。「保存的」アミノ酸置換または挿入は、関与する残基の極性、電荷、溶解性疎水性、親水性および/または両親媒性における類似に基づき作ることができる。例えば非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファンおよびメチオニンを含む;極性/中性アミノ酸にはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む;正に荷電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む;そして負に荷電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。本発明は、単一アミノ酸置換をもつ2つ、単一アミノ酸挿入をもつ1つ、および二重アミノ酸挿入をもつ1つ、および単一アミノ酸置換および二重アミノ酸挿入をもつ1つのCT−CRMsにより例示される。これらのCT−CRMsは実施例1に詳細に説明するように生成し、表1に説明するようにAサブユニット中に以下の突然変異を含む。
【0029】
【表1】

【0030】
このように1つの態様では、本発明の新規CT−CRMはCTサブユニットAのアミノ酸配列またはそれらの断片を含んでなり、ここでAサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸残基が、実質的に低減した毒性を生じる別のアミノ酸に置換されている。本発明の好適な態様では、Aサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンが、トリプトファンに置換される。本発明の別の好適な態様では、Aサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンが、グリシンに置換される。生成したCT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gはそれぞれ優れたアジュバント特性を示す。
【0031】
本発明の新規CT−CRMは、Aサブユニットのアミノ酸48位のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸位に単一のアミノ酸挿入を含んでなり、この挿入が実質的に低減した毒性を生じる。本発明の好適な態様では、アミノ酸ヒスチジンがAサブユニットのアミノ酸48位のアミノ酸残基に隣接して挿入され、優れたアジュバント特性を示す突然変異CT−CRMT48THを生じる。
【0032】
本発明の別の新規CT−CRMは、Aサブユニットのアミノ酸34位のアミノ酸残基に隣接したアミノ酸35位および36位に二重アミノ酸挿入を含んでなり、この挿入は毒性の実質的低減を生じる。本発明の好適な態様では、アミノ酸グリシンおよびプロリンがAサブユニットのアミノ酸34位のグリシンに隣接して挿入されて突然変異CT−CRMG34GGPを生じ、これは優れたアジュバント特性を示す。
【0033】
本発明のさらに別の新規CT−CRMは、Aサブユニットのアミノ酸30位に単一のアミノ酸置換およびアミノ酸30位のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸31位および32位に二重アミノ酸挿入を含んでなり、この置換および挿入は毒性の実質的な低減を生じる。本発明の好適な態様では、アミノ酸30位のアミノ酸残基チロシンがアミノ酸残基トリプトファンに置換され、そしてその後にアミノ酸残基アラニンおよびヒスチジンが挿入されて突然変異CT−CRMY30WAHを生じ、これは優れたアジュバント特性を示す。
【0034】
本発明のさらに別のCT−CRMsは、上に具体的に記載した少なくとも単一置換または単一もしくは二重突然変異、およびさらに少なくとも1つのさらなる突然変異を、上記に説明した1以上のアミノ酸残基25、30、31、32、34、35、36、48および49以外の位置に含むことができる。国際公開第93/13202号明細書(これは引用により本明細書に編入する)は、コレラホロトキシンの毒性を低減するために役立つCT−Aサブユニット中の一連の突然変異を記載する。これらの突然変異にはアミノ酸7位
のアルギニン、9位のアスパラギン酸、11位のアルギニン、29位のグルタミン酸、44位のヒスチジン、53位のバリン、54位のアルギニン、61位のセリン、63位のセリン、70位のヒスチジン、97位のバリン、104位のチロシン、106位のプロリン、107位のヒスチジン、110位のグルタミン酸、112位のグルタミン酸、114位のセリン、127位のトリプトファン、146位のアルギニンおよびア192位のアルギニンに置換を作成することを含む。引用により本明細書に記載する国際公開第98/42375号パンフレットは、コレラホロトキシンの毒性を低減するために役立つAサブユニット中のアミノ酸109をセリンへ置換することを記載する。
【0035】
本発明に有用な他の有用な突然変異体タンパク質には、上記のように提供される1以上の特別な突然変異を持つ完全長のホロトキシン、および上記の突然変異した残基を含む6量体のCT−CRMポリペプチドまたはそれらの断片を含み、そしてこのタンパク質、ポリペプチドまたは断片はそれが由来する野生型CTのアジュバント性を保持するが、低減した毒性を特徴とする。低減した酵素活性を持つこれらCT−CRMsの免疫学的に活性な断片は、本発明の方法および組成物にも有用となり得る。通常、断片は上記の突然変異誘発部位を含むCT−CRMサブユニットタンパク質の少なくとも少なくとも約25個の連続するアミノ酸を含む。より典型的にはCT−CRMサブユニット断片はAまたはBサブユニットの少なくとも約75個の連続するアミノ酸を含む。CT−CRMサブユニットの別の断片は、いずれかのサブユニットの少なくとも約100個の連続するアミノ酸を含む。CT−CRM CT−Aサブユニットのさらに別の態様は、約150個のアミノ酸または240個未満のアミノ酸を含むことができる。
【0036】
本明細書に記載するCT−CRMsの断片が、脊椎動物宿主に選択した抗原に対する免疫応答を生じる、または強化するならば、以下に記載する方法および組成物に有用である。断片にはCT−CRMサブユニットのカルボキシ−末端領域の短縮を含む。例えばCT−A突然変異体サブユニットのみを含むように短縮化されたCT−CRMは望ましい断片である。同様に、約残基240または250で短縮化されたCT−Aサブユニットは望ましい断片である。本発明のさらに別の断片CT−CRMsを選択することができる。さらなるCT−CRMホロトキシンの断片は、CT−Bサブユニットまたは短縮化CT−Bサブユニットの5個未満の反復を含むことができる。前述の断片は上記のような1以上の特別な突然変異を含んでもよい。
【0037】
他の適当なCT−CRMタンパク質には、1以上のアミノ酸残基が置換された基を含むものを含むことができる。さらに別の適当なCT−CRMホロトキシンタンパク質は、6量体CT−CRMタンパク質の1以上のサブユニットが、分子の半減期を延ばすための化合物のような化合物に融合している(例えばポリエチレングリコール)。
【0038】
別の適当なCT−CRMタンパク質は、さらなるアミノ酸がリーダーまたは分泌配列、またはCT−CRMタンパク質の免疫原性を強化するために使用される配列のような1以上のポリペプチドサブユニットに融合されたものである。CT−CRMsのさらに他の修飾には、CTのN末端でのCT−Aシグナルまたはリーダー配列、すなわち配列番号1のアミノ酸1〜18の上に挙げた削除、および/またはCT−Bシグナルまたはリーダー配列、すなわち配列番号1のアミノ酸259〜279の削除、および/または免疫原性を生じない他の領域の削除を含む。同様に本明細書に記載するCT−CRMsの修飾には、シグナルまたはリーダー配列の他のシグナルまたはリーダー配列への置換を含む。例えば引用により本明細書に編入する米国特許第5,780,601号明細書を参照にされたい。
【0039】
適当なCT−CRMタンパク質のさらに別の例は、多数のホロトキシンタンパク質を一緒にまたは担体に結合する目的で、任意のアミノ酸(例えば−Gly−Ser−)または他のアミノ酸もしくは化学化合物スペーサーがポリペプチドサブユニットの末端に含まれ
る得るものである。例えば有用なCT−CRMsには、担体タンパク質に結合した1以上の上記CT−CRMsまたはそれらのサブユニットを含む。あるいは有用なCT−CRMは、場合により担体タンパク質に結合した多数のCT−CRMsを含む融合タンパク質中に存在することができる。
【0040】
これらの態様に関して、担体タンパク質は選択したCT−CRMの免疫原性を強化することができる望ましくはタンパク質または他の分子である。そのような担体はアジュバント効果も有するより大きな分子でよい。例えば通例のタンパク質担体には、限定するわけではないが大腸菌(E.coli)DnaKタンパク質、ガラクトキナーゼ(GalK、これは細菌においてガラクトース代謝の第1段階を触媒する)、ユビキチン、α−接合因子、β−ガラクトシダーゼおよびインフルエンザNS−1タンパク質を含む。ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドのようなトキソイド(すなわち自然に存在するトキシンをコードする配列、十分な修飾によりその毒性活性を排除する)、それらの各トキシンおよびCRM197(ジフテリアトキシンの非−毒性形、米国特許第5,614,382号明細書)のようなこれらタンパク質の突然変異体も担体として使用することができる。他の担体には緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のエキソトキシンA、大腸菌(E.coli)の熱不安定性トキシンおよびレトロウイルス粒子(レトロウイルスおよびVP6粒子を含む)を含む。あるいは担体タンパク質または他の免疫原性タンパク質の断片またはエピトープを使用してもよい。例えばハプテンを細菌トキシンのT細胞エピトープに結合させることができる。米国特許第5,785,973号明細書を参照にされたい。同様に、種々の細菌熱ショックタンパク質、例えばマイコバクテリアhsp−70を使用してもよい。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は別の有用な担体である。当業者はこの内容に使用するための適当な担体を容易に選択することができる。融合タンパク質はタンパク質様材料を結合するための標準技法により形成することができる。融合物は以下に記載する組換えDNA技術により調製された融合遺伝子構築物から発現させることができる。
【0041】
本明細書に記載する他の適当なCT−CRMsは、酵素的毒性を復活せず、そしてアジュバント性を消失させない修飾により、あるいはそのような特性の組み合わせにより具体的に例示したCT−CRMsから異なることができる。好ましくは、アミノ酸置換は1つのアミノ酸を同様な構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換えること、すなわち保存的アミノ酸置換の結果である。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性疎水性、親水性および/または両親媒性における類似に基づき作ることができる。例えば非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファンおよびメチオニンを含む;極性/中性アミノ酸にはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む;正に荷電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む;そして負に荷電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。
【0042】
例えば、CT−CRMタンパク質のサブユニットの1次配列を改変するが、通常は分子の機能を改変しない保存的アミノ酸の変化を作成することができる。そのような変化の作成には、アミノ酸のハイドロパシック(hydropathic)指数を考慮することができる。ポリペプチドに相互作用的生物学的機能を付与するハイドロパシックなアミノ酸指数の重要性は、一般に当該技術分野で認識されている(Kyte & Doolittle,1982,J.Mol.Biol.157(1):105−32)。特定のアミノ酸を同様のハイドロパシック指数またはスコアを有し、そしてそれでも同様な生物学的活性を持つポリペプチドを生じる他のアミノ酸に置換することができることは知られている。各アミノ酸はその疎水性および荷電特性に基づきハイドロパシック指数が割り当てられた。それらの指数は;イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3
.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタメート(−3.5);グルタメート(−3.5);アスパルテート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0043】
アミノ酸残基の相対的なハイドロパシック特性が生成するポリペプチドの2次および3次構造を決定し、これが次にポリペプチドと酵素、基質、受容体、抗体、抗原等のような他の分子との相互作用を定めると考えられている。当該技術分野ではアミノ酸を、類似のハイドロパシック指数を有する別のアミノ酸に置換し、そして機能的に均等なポリペプチドを得ることができることが知られている。そのような変化において、ハイドロパシック指数が+/−2内であるアミノ酸の置換が好ましく、+/−1内は特に好ましく、そして+/−0.5内はさらに一層好適である。
【0044】
同様のアミノ酸の置換または挿入は親水性に基づき作成することもでき、特にこれにより作成される生物学的に機能的な均等なポリペプチドまたはペプチドを、免疫学的態様での使用に意図する。引用により本明細書に編入する米国特許第4,554,101号明細書は、隣接するアミノ酸の親水性により支配される、ポリペプチドの最大の部分的平均親水性がその免疫原性および抗原性、すなわちポリペプチドの生物学的特性に相関すると述べている。米国特許第4,554,101号明細書に詳細に記載されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられた;アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5±1);トレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を、類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換し、そして生物学的に均等な、そして特に免疫学的に均等なポリペプチドを得ることができると理解されている。そのような変化において、親水性値が±2内であるアミノ酸の置換が好ましく;±1内は特に好ましく;そして±0.5内はさらに一層好適である。
【0045】
上に概説したように、アミノ酸置換は一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、荷電、サイズ等に基づく。様々な前述の特性を考慮する例示的置換は当業者には周知であり、そして:アルギニンとリシン;グルタメートとアスパルテート;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。
【0046】
さらに通常はCT−CRMタンパク質の1次配列を改変しない修飾には、ポリペプチドのインビボまたインビトロでの化学的誘導化、例えばアセチル化、メチル化またはカルボキシル化を含む。また本発明のCT−CRMsとして含まれるのは、グリコシル化により修飾されたこれらタンパク質、例えば合成およびプロセッシング中またはさらなるプロセッシング段階でポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することにより;あるいは哺乳動物のグリコシル化または脱グリコシル化酵素のようなグリコシル化に影響を及ぼす酵素に対してポリペプチドを暴露することにより作られるものを含む。またCT−CRMsとして包含されるのは、リン酸化アミノ酸残基を有する上に確認される突然変異した配列、例えばホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホトレオニンである。
【0047】
また本発明のCT−CRMsとして含まれるのは、タンパク質溶解的分解に対する耐性
を改善し、または溶解性を至適化するために、通例の分子生化学的技法を使用して修飾された上記配列である。そのようなCT−CRMsに含まれるのは、自然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸または自然に存在しない合成アミノ酸を含むものである。本発明のCT−CRMsに存在することができる他の既知の修飾は、限定するわけではないがアシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋結合の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解プロセッシング、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニレーションのようなタンパク質へのトランスファーRNAが媒介するアミノ酸の付加、およびユビキチン化である。
【0048】
CTの構造および機能に影響を及ぼす表1の新規CT−CRMsの表現型効果を評価した。CT−コード遺伝子の部位特異的突然変異誘発法により生成した単一アミノ酸置換、単一アミノ酸挿入、二重アミノ酸挿入または単一アミノ酸置換および二重アミノ酸挿入のいずれかを持つ突然変異Aサブユニットも、非変性ゲル電気泳動アッセイにより決定されるように、サブユニットBの存在下でCT−Bサブユニットと免疫反応性ホロトキシンに集成することができた(表2、実施例2を参照にされたい)。各突然変異ホロトキシンもY−1副腎腫瘍細胞アッセイで試験して、野生型CTホロトキシンに比べてその残存毒性について測定した(表3および4、実施例3を参照にされたい)。これらホロトキシンはそれらのアジュバント性において野生型CTに似ているが、表3に提示される結果は野生型コレラホロトキシンと比べた時、突然変異CT−CRMsが実質的に低減した毒性を有することを示した。単一および二重アミノ酸置換を持つCT−CRMsの残存毒性は、野生型CTに比べて実質的に低減された。これらのデータは突然変異CT−CRMsがホロトキシンであり、そして野生型CTよりも実質的に毒性が低いことを証明している。具体的には突然変異CT−CRMsはY−1マウス副腎細胞アッセイで野生型コレラホロトキシンよりも有意に低い毒性レベルを示した。
【0049】
各突然変異CT−CRMsは、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性アッセイでも野生型CTと比較した(実施例4を参照にされたい)。Y−1副腎細胞アッセイで作成した毒性データと一般に一致するこの結果は、種々のCT−CRMsのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性が野生型CTと比べた時に実質的に低下していることを示した(表5および6)。
【0050】
本明細書で使用する用語および句「低減した毒性を有するホロトキシン」または「実質的に低い毒性」等は、本明細書に記載する5個のCT−CRM突然変異体(CT−CRMR25W、CT−CRMR25G、CT−CRMT43TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH)のような本発明のCT−CRMs突然変異体が、野生型CTに比べて精製したトキシンタンパク質の単位あたり実質的に低い毒性を現すことを意味する。この「低減した毒性」は有意な副作用、特にCTに付随することが知られている、例えば下痢を引き起こすことなく免疫原性組成物中に各突然変異体をアジュバントとして使用することを可能とする。以下により詳細に記載するように、本発明の突然変異CT−CRMsはY−1マウス副腎細胞アッセイで野生型CTよりも有意に低レベルの毒性を、そして野生型CTと比べた時に有意に低減したADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を示す。
【0051】
本発明の免疫原性突然変異CT−CRMsは、生成した突然変異CTタンパク質がアジュバントとして機能し、同時に導入される脊椎動物宿主により安全に免疫寛容となるように低減した毒性と保持されたアジュバント性のバランスを現す。以下の実施例で示すよう
に、マウスモデルのアッセイ系における結果は、本明細書に開示する突然変異CT−CRMsは異なる抗原の鼻内投与後に粘膜および全身性免疫応答を有意に増すことができた。さらに事前に存在する抗−CT免疫応答の存在下でも、突然変異CT−CRMsは効率的な粘膜アジュバントとして役立つことができた。本発明のCT−CRMsのこれら特徴を支持する実験を以下にまとめ、そして実施例でより詳細に述べる。
【0052】
免疫原性組成物中に含める候補として同定された細菌またはウイルス抗原を含む組成物用の粘膜アジュバントとして、突然変異CT−CRMsの効力を評価するために、2つの異なるモデル抗原系を調査した:(1)組換えP4外側膜タンパク質(型を分類できないインフルエンザ(Haemophilus influenzae)細菌(NTHi)のタンパク質“e”(rP4)としても知られている)(米国特許第5,601,831号明細書を参照にされたい)、および(2)モラクセーラ カタラーリス(Moraxella catarrhalis)細菌の自然なUspA2外膜タンパク質(国際公開第98/28333号パンフレット)。
【0053】
重要なことは、データは突然変異CT−CRMsが異なる抗原の鼻内投与後(IN)に粘膜および全身性免疫応答を有意に増すことができることを示す。マウスモデル系での結果は、本明細書に開示されるすべての突然変異CT−CRMsが、これらの異なる抗原の鼻内投与後に粘膜および全身性免疫応答を有意に増すことができたことを示す。さらに事前に存在する抗−CT免疫応答の存在下でも、突然変異CT−CRMsは効率的な粘膜アジュバントとして役立つことができた(表6〜18を参照にされたい)。
【0054】
本発明による免疫原性突然変異CT−CRMsは、タンパク質がアジュバントとして機能し、同時に組成物で免疫感作した脊椎動物宿主により安全に免疫寛容となるように、低減した毒性と保持されたアジュバント性のバランスを現す。
【0055】
B.CT−CRMsをコードする核酸分子
本発明の別の観点には、部位特異的突然変異、置換および/または挿入を有する上記のCT−CRMsおよび/またはそれらのサブユニット、あるいはさらに1以上のそれら突然変異、置換および/または挿入を有することができる断片をコードする、単離された、合成の、または組換え核酸分子および配列を含む。
【0056】
CT−CRMタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる単離されたヌクレオチド分子は、好ましくは宿主細胞中でCT−CRMの発現を支配する調節配列の制御下にあることができる。本明細書に記載するように、そのような核酸分子はインビトロでCT−CRMタンパク質を発現するために、あるいはヒトでインビボでCT−CRMタンパク質の発現を可能とするために使用することができる。
【0057】
本明細書で使用する用語「単離されたヌクレオチド分子または配列」は、自然な環境にある分子または配列に付随し得る他の生物学的成分の混入を含まない核酸セグメントまたは断片を称する。例えば本発明の単離されたヌクレオチド分子または配列の1態様は、自然に存在する状態でそれを挟む配列から分離された配列、例えば自然に存在するゲノム中の断片に隣接する配列のような、断片に通常隣接する配列から取り出されたDNA断片である。さらに本発明のヌクレオチド配列および分子は、本発明のCT−CRMタンパク質をコードするようにすでに改変されている。すなわち用語「単離された核酸分子または配列」は、細胞中の非突然変異核酸、例えばRNAまたはDNAまたはタンパク質に自然に付随する他の成分から実質的に精製された核酸配列または分子にも適用する。本発明の単離されたヌクレオチド分子または配列は、組換え法、合成法、例えば突然変異誘発法、またはそのような方法の組み合わせのような他の常法により調製された配列および分子も包含する。本発明のヌクレオチド配列または分子は、本明細書に提示する具体的なヌクレオ
チド配列のみに限定するとは解釈されず、本明細書に提示するヌクレオチド配列と相同性を共有する(すなわち配列同一性を有する)任意の、かつすべてのヌクレオチド配列を含むと解釈されるべきである。
【0058】
核酸またはそれらの断片に関して言う時、用語「実質的相同性」または「実質的類似性」とは適当なヌクレオチド挿入または欠失を含む核酸と別の核酸(またはその相補鎖)を最適に並列配置した時、GCGバージョン6.1のプログラムであるFASTAのような周知の配列同一性アルゴリズムにより測定されるような、ヌクレオチド塩基の少なくとも約70%にヌクレオチド配列の同一性があることを称する。本明細書で使用する用語「相同的」は、2つのポリマー性分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子または2つのRNA分子、あるいは2つのポリペプチド分子間の配列類似性を称する。2つの分子の両方のヌクレオチドまたはアミノ酸位が同じ単量体ヌクレオチドまたはアミノ酸で占有されている時、例えば2つのDNA分子の各々の位置がアデニンに占有されていれば、それらはその位置で相同的である。2つの配列間の相同性は、対合するかまたは相同的な位置の数の直接的関数であり、例えば2つの化合物配列において位置の半分(例えばサブユット長が10のポリマーの5個の位置)が相同的ならば、2つの配列は50%の相同性である。位置の90%、例えば10のうちの9が対合または相同的ならば、2つの配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGCG5’は50%の相同性を共有する。本明細書で使用する用語「実質的に相同的」とは所望の核酸に対して約70%の相同的、より好ましくは約80%相同的、そして最も好ましくは約90%相同的なDNAまたはRNAを意味する。
【0059】
また本発明は、野生型CTタンパク質に比べて低減した酵素的毒性を有し、そして野生型CTのアジュバント性を保持する本発明のCT−CRMタンパク質またはサブユニットをコードする核酸に対して、少なくとも70%、80%または90%相同的な核酸分子を含んでなる単離されたヌクレオチド分子を対象とする。さらに遺伝暗号の縮重により、本明細書に記載するCT−CRMの突然変異体または置換されたアミノ酸残基をコードする任意の3ヌクレオチドコドンも本発明の範囲内である。
【0060】
本明細書で検討するように、CT−CRMs、突然変異CT−Aサブユニットまたは突然変異CT−Bサブユニット、および/またはそれらをコードするDNA配列、あるいは本明細書に記載する核酸分子または組成物に有用な他の配列は、同定された配列に対するそれらの相同性または同一性の割合により定め、相同性の割合または同一性の割合を算出するために使用するアルゴリズムには以下を含む:Smith−Watermanアルゴリズム(J.F.Collins et al,1988,Comput.Appl.Biosci.,4:67−72;J.F.Collins et al.,分子配列の比較および整列(Molecular Sequence Comparison and
Alignment)、(M.J.Bishop et al,編集)。実践的なアプローチシリーズ:核酸およびタンパク質配列分析XVIII(In Practical
Approach Series Nucleic Acid and Protein Sequence Analysis XVIII)、IRL出版:オックスフォード、英国(1987)pp.417)、およびBLASTおよびFASTAプログラム(E.G.Shpaer et al,1996,Genomics,38:179−191)。これらは引用により本明細書に編入する。
【0061】
本明細書で使用するように2つのDNAが「操作可能に連結された」と記載することは、1本鎖または2本鎖DNAがそれぞれ2つのDNAを含んでなり、そしてDNA配列の少なくとも1つがもう1つのDNAに特徴つけられる生理学的効果を発揮できるように2つのDNAがDNA中に並べられていることを意味する。
【0062】
好ましくは本発明のCT−CRMタンパク質を生産すること、またはそれを細胞でインビボ生産するために投与することに使用するために、各CT−CRMタンパク質コード配列および必要な調節配列は、別のウイルスまたは非−ウイルス組換えベクターに存在する(核酸分子を細胞へ送達するための非−ウイルス法を含む)。あるいは本発明のCT−CRMタンパク質の二重コピーをコードする、または多数の異なるCT−CRMsをコードする2以上のこれら核酸配列をポリシストロン性転写、すなわち多くの遺伝子産物を発現するように設計された単一分子に含めてもよい。
【0063】
本発明はさらに、免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含むベクター、特にプラスミドに関する。望ましい態様には、例えばCT−Aのアミノ酸残基25に単一アミノ酸置換、CT−Aのアミノ酸残基48と49との間に単一アミノ酸挿入、CT−Aのアミノ酸残基34と35との間に二重アミノ酸挿入、またはCT−Aのアミノ酸残基30に単一アミノ酸置換およびアミノ酸30と31との間に二重アミノ酸挿入を有する免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードするDNA配列を含むプラスミドを含む。本明細書に使用する用語「ベクター」は、ウイルスまたは非ウイルス、例えば細菌、外因性またはヘテロロガスな核酸配列をコードするように設計された種に由来するDNA分子を意味する。すなわちこの用語には通例の細菌プラスミドを含む。そのようなプラスミドまたはベクターは、ウイルスまたはファージに由来するプラスミド配列を含むことができる。そのようなベクターは染色体、エピソームおよびウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素およびウイルスに由来するベクターを含む。ベクターはプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝子要素、コスミドおよびファジェミドから派生したような、それらの組み合わせに由来してもよい。この用語にはまた1つの細胞から他の細胞へ遺伝子を移す非−複製ウイルスも含む。この用語は例えばポリリシン化合物等のような核酸を細胞に移すことを促進する非−プラスミドおよび非−ウイルス化合物も含むと解釈すべきである。
【0064】
本発明の核酸分子には非−ウイルスベクター、または本発明に従いCT−CRMタンパク質をコードする配列を宿主細胞に送達する方法を含む。種々の非−ウイルスベクターが当該技術分野では知られており、そしてそれらには限定するわけではないがプラスミド、細菌ベクター、バクテリオファージベクター、「裸の」DNAおよびカチオン性脂質またはポリマーと縮合(condensed)したDNAを含むことができる。
【0065】
細菌ベクターの例には限定するわけではないが、とりわけカルメットとゲランの菌(bacille Calmette Gu rin)(BCG)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、大腸菌(E.coli)およびリステリア(Listeria)に由来する配列を含む。適当なプラスミドベクターには例えばpBR322、pBR325、pACYC177、pACYC184、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pK37、pKC101、pAC105、pVA51,pKH47、pUB110、pMB9、pBR325、ColE1、pSC101、pBR313、pML21、RSF2124、pCR1、RP4、pBAD18およびpBR328を含む。
【0066】
適当な誘導性大腸菌(Escherichia Coli)発現ベクターの例には、pTrc(Amann et al.,1988 Gene69:301−315)、アラビノース発現ベクター(例えば、pBAD18、Guzman et al,1995,J.Bacteriol.177:4121−4130)、およびpETIId(Studier et al.,1990 Methods in Enzymology185:60−89)を含む。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主のRNAポリメラーゼ転写に依存する。p
ETIIdベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現するウイルスRNAポリメラーゼT7gn1により媒介されるT7gn10−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼはlacUV5プロモーターの転写制御下で存在するプロファージが持つT7gn1遺伝子から、宿主のBL21株(DE3)またはHMSI74(DE3)により供給される。pBAD系はaraC遺伝子により調節される誘導性アラビノースプロモーターに依存する。このプロモーターはアラビノースの存在で誘導される。
【0067】
1例としてpLP9911と命名されたプラスミドは、Aサブユニットのアミノ酸25位に単一アミノ酸置換(アルギニンからトリプトファン)を有する、実質的に毒性が低減した免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含む(CT−CRMR25W)。別の例としてpLP9915と命名されたプラスミドは、Aサブユニットのアミノ酸25位に単一アミノ酸置換(アルギニンからグリシン)を有する、実質的に毒性が低減した免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含む(CT−CRMR25G)。pLP9907と命名された第3のプラスミドは、Aサブユニットのアミノ酸48位のアミノ酸残基トレオニンに隣接したアミノ酸49位に単一アミノ酸ヒスチジンが挿入された、実質的に毒性が低減した免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含む(CT−CRMT48TH)。別の例のプラスミドはpLP9909と命名されている。このプラスミドはAサブユニットのアミノ酸34位のアミノ酸残基グリシンに隣接したアミノ酸35位および36位にアミノ酸残基グリシンおよびプロリンの二重アミノ酸挿入が挿入された、実質的に毒性が低減した免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含む(CT−CRMG34GGP)。本発明で例示する別のプラスミドはpLP9910と命名されている。これはAサブユニットのアミノ酸30位に単一アミノ酸置換(アミノ酸30位でアミノ酸残基チロシンのアミノ酸残基トリプトファンへの置換)、およびアミノ酸30位のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸31位および32位にアミノ酸残基の二重アミノ酸挿入(アラニンおよびヒスチジン)がなされた、実質的に毒性が低減した免疫原性突然変異CT−CRMをコードするDNA配列を含んでなる単離され、そして精製されたDNA配列を含む(CT−CRMY30WAH)。
【0068】
別の種類の有用なベクターは1本または2本鎖バクテリオファージベクターである。例えば適当なクローニングベクターには限定するわけではないがとりわけ、バクテリオファージλベクター系、λgt11、μgtμWES.tB、Charon4、λgt−WES−λB、Charon28、Charon4A、λgt−1−λBC、λgt−1−λB、M13mp7、M13mp8またはM13mp9を含む。
【0069】
別の態様では発現ベクターは酵母発現ベクターである。S.セルビシエ(S.cerevisiae)のような酵母中で発現させるためのベクターの例には、pYepSecI(Baldari,et al.,1987 Protein Eng.1(5):433−437)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,1982 Cell,30(3):933−943)、pJRY88(Schultz et al.,1987 Gene,61(2):123−133)、およびpYES2(インビトロゲン社(Invitrogen Corporation)、サンディエゴ、カリフォルニア州)を含む。
【0070】
あるいはバキュロウイルス発現ベクターを使用する。培養した昆虫細胞中(例えばSf9またはSf21細胞)でタンパク質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith et al.,1983 Biotechnol.,2
:434−443)およびpVLシリーズ(Luckow and Summers,1989,Virol.,170(1):31−39)を含む。
【0071】
さらに別の態様では、哺乳動物発現ベクターを哺乳動物細胞での発現に使用する。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,1987 Nature,329:840−842)およびpMT2PC(Kaufman et al.,1987 EMBO J.,61(1):187−93)を含む。哺乳動物細胞で使用する時、発現ベクターの制御機能は、しばしばウイルス調節要素により提供される。
【0072】
組換えベクターの1種類は、組換え1本または2本鎖RNAまたはDNAウイルスベクターである。種々のウイルスベクター系が当該技術分野では知られている。そのようなベクターの例には限定するわけではないが、目的とする選択した核酸組成物を運ぶか、または発現するように構築される組換えアデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)−に基づくベクター、アデノ−随伴ウイルス(AAV)ベクター、ハイブリッドアデノウイルス/AAVベクター、組換えレトロウイルスまたはレンチウイルス、組換えポックスウイルスベクター、組換えワクシニアウイルスベクター、SV−40ベクター、バキュロウイルスのような昆虫ウイルス等を含む。
【0073】
使用できるレトロウイルスには、欧州特許第415 731号明細書;国際公開第90/07936号;同第94/03622号;同第93/25698号;および同第93/25234号パンフレット;米国特許第5,219,740号明細書;国際公開第93/11230号および同第93/10218号パンフレット;Vile and Hart,1993 Cancer Res.53:3860−3864;Vile and Hart,1993 Cancer Res.53:962−967;Ram et al.,1993 Cancer Res.53:83−88;Takamiya et al.,1992 J.Neurosci.Res.33:493−503;Baba et al.,1993 J.Neurosurg.79:729−735;米国特許第4,777,127号明細書;英国特許第2,200,651号明細書;および欧州特許第0 345 242号明細書に記載されているものを含む。適当な組換えレトロウイルスの例には、国際公開第91/02805号パンフレットに記載されているものを含む。
【0074】
アルファウイルスに基づくベクターもCT−CRMタンパク質をコードする核酸分子として使用することができる。そのようなベクターは、例えばシンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネゼエラのウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR1249;ATCC VR−532)を含む広い種々のアルファウイルスから構築することができる。そのようなベクター系の代表例には、米国特許第5,091,309号;同第5,217,879号および同第5,185,440号明細書;ならびに国際公開第92/10578号;同第94/21792号;同第95/27069号;同第95/27044号および同第95/07994号パンフレットに記載されているものを含む。
【0075】
アデノウイルスベクターの例には、Berkner,1988 Biotechniques 6;616−627;Rosenfeld et al.,1991 Science 252;431−434;国際公開第93/19191号パンフレット;Kolls et al.,1994 PNAS 91:215−219;Kass−Eisler et al.,1993 PNAS 90:11498−11502;Guzman et al.,1993 Circulation 88:2838−2848;Guzman et al.,1993 Cir.Res.73:1202−1207;Zabner et al.,1993 Cell 75:207−216;Li et
al.,1993 Hum.Gene Ther.4:403−409;Cailaud
et al.,1993 Eur J Neurosci.5:1287−1291;Vincent et al.,1993 Nat.Genet.5:130−134;Jaffe et al.,1992 Nat.Genet.1:372−378;およびLevreo et al.,1991 Gene 101:195−202に記載されているものを含む。例示のアデノウイルスベクターには、国際公開第94/12649号;同第93/03769号;同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号;および同第95/00655号パンフレットに記載されているものを含む。他のアデノウイルスベクターには、米国特許第6,083,716号明細書に記載されているもののようなチンパンジーアデノウイルスに由来するものを含む。
【0076】
別のウイルスベクターは、アデノ−随伴ウイルス(AAV)のようなパルボウイルスに基づく。代表的な例には、国際公開第93/09239号パンフレット、Samulski et al.,1989 J.Virol.63:3822−3828;Mendelson et al.,1988 Virol.166:154−165;およびFlotte et al.,1993 PNAS 90:10613−10617に記載されているAAVベクターを含む。他の特に望ましいAAVベクターには、AAV1に基づくものを含む;2000年5月18日に公開された国際公開第00/28061号パンフレットを参照にされたい。他の望ましいAAVベクターにはプソイドタイプ(psudotyped)された、すなわちAAV ITRsにヘテロロガスなAAV血清型のカプシドにパッケージされたAAV5’ITRs、導入遺伝子およびAAV3’ITRsからなるミニ遺伝子(minigene)を含むものを含む。そのようなプソイドタイプされたAAVベクターを生産する方法は、国際公開第01/83692号パンフレットに詳細に記載されている。
【0077】
本発明の核酸分子が「裸の(naked)DNA」である態様では、これをとりわけシクロデキストリン−含有ポリマーおよび保護的な相互作用性非縮合(noncondensing)ポリマーのような従来のポリマーまたは従来のものではないポリマーと組み合わることができる。「裸のDNA」およびカチオン性脂質またはポリマーと縮合したDNAは、典型的には化学法を使用して細胞に送達される。細胞送達のために当該技術分野では多数の化学法が知られており、そしてDNAと複合させるために脂質、ポリマーまたはタンパク質を使用すること、場合によりDNAを粒子に縮合すること、そして細胞に送達することを含む。他の非ウイルス化学法には、DNAを縮合するためにカチオンを使用することを含み、これは次にリポソーム中に入れられ、そして本発明に従い使用される。C.Henry,2001 Chemical and Engineering News,79(48):35−41を参照にされたい。
【0078】
本発明のCT−CRMをコードする核酸分子は、「裸のDNA」として(米国特許第5,580,859号明細書)またはブピバカインおよび他の局所麻酔薬のような免疫感作を容易にする薬剤と組成物に配合されるか(米国特許第6,127,170号明細書)のいずれかで直接細胞に導入される。
【0079】
上記のウイルスおよび非ウイルスベクターのすべての成分は、当該技術分野で既知の材料から容易に選択することができ、そして製薬産業から入手することができる。ベクター成分および調節配列の選択は、本発明を限定するとは考えられない。本発明のCT−CRMタンパク質をコードする各核酸配列は、好ましくは哺乳動物または脊椎動物細胞中で各核酸配列の産物の複製および生成を支配する調節配列の制御下にある。用語「プロモーター/調節配列」とは、調節配列に操作可能に連結した核酸の発現に必要なDNA配列を意味する。好ましくはプロモーター/調節配列は細胞中でCT−CRMタンパク質の発現を駆動するように、コード配列の5’末端に配置されている。場合によりプロモーター/調
節配列は組織特異的様式で機能することができる。例えばプロモーター/調節配列は、特定の組織型の細胞中でのみ発現を駆動することができる。場合によりこの配列は中心のプロモーター配列でよく、そして他の場合ではこの配列はエンハンサー配列および組織特異的様式の発現に必要な他の調節要素に含まれることもできる。
【0080】
適当なプロモーターは構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーターおよびその他の中から容易に選択することができる。活性が非特異的であり、そして本発明のCT−CRMタンパク質をコードする核酸分子に使用される構成的プロモーターの例には、限定するわけではないがレトロウイルスラウス肉腫(RSV)プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを含む)(例えば、Boshart et al,Cell,41:521−530(1985)を参照にされたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1αプロモーター(インビトロゲン)を含む。
【0081】
外から供給される化合物により調節される誘導性プロモーターには、限定するわけではないがアラビノースプロモーター、亜鉛−誘導性ヤギメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)−誘導性マウス乳腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(国際公開第98/10088号パンフレット);エクジソン昆虫プロモーター(No et al,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351)、テトラサイクリン−抑制系(Gossen et al,1992 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551)、テトラサイクリン−誘導系(Gossen et al,1995 Science,268:1766−1769、またはHarvey et al,1998 Curr.Opin.Chem.Biol,2:512−518も参照にされたい)、RU486−誘導系(Wang et al,1997 Nat.Biotech,15:239−243およびWang et al,1997 Gene Ther.4:432−441)およびラパマイシン誘導系(Magari et al,1997 J.Clin.Invest.,100:2865−2872)を含む。CT−CRMの発現系で使用するために特に好適なプロモーターは、アラビノース誘導性プロモーターである。
【0082】
この内容で有用となり得る他の種類の誘導性プロモーターは、特異的な生理学的状態、例えば温度または急性期または複製している細胞のみにより調節されるものである。有用な組織−特異的プロモーターには骨格筋β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋肉クレアチンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、ならびに自然に存在するプロモーターより高い活性を持つ合成筋肉プロモーターを含む(。Li et
al.,Nat.Biotech.,17:241−245を参照にされたい)。組織特異的であるプロモーターの例として、とりわけ肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,1997 J.Virol.,71:5124−32;B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,1996 Gene Ther.,3:1002−9;アルファ−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,1996 Hum.Gene.Ther.,7:1503−14)、骨(オステオカルシン、Stein et al.,1997 Mol.Biol.Rep.24:185−96;骨シアロプロテイン、Chen et al.,1996 J.Bone Miner.Res.,11:654−64)、リンパ球(CD2、Hansal et al.,1988 J.Immunol.,161:1063−8;免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体α鎖)、ニューロン(ニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、Andersen et al.,1993 Cell Mol.Neur
obiol.,13:503−15;ニューロフィラメント軽−鎖遺伝子、Piccioli et al.,1991 Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:5611−5:ニューロン特異的ngf遺伝子、Piccioli et al.,1995 Neuron,15:373−84)が知られている。例えばこの内容に有用な既知のプロモーターに関するさらなる一覧は、国際公開第00/55335号パンフレットを参照にされたい。
【0083】
本発明の核酸配列、分子またはベクターに含むためのさらなる調節配列には、限定するわけではないが、エンハンサー配列、ポリアデニレーション配列、スプライスドナーおよびスプライスアクセプター配列、翻訳されるべきポリペプチドのそれぞれ始めおよび終わりの転写開始および終結に関する部位、転写された領域の翻訳のためのリボソーム結合部位、エピトープタグ、核局在化配列、IRES要素、ゴールドバーグ−ホグネスの“TATA”要素、制限酵素開裂部位、選択可能なマーカー等を含む。エンハンサー配列には、例えばSV40DNAの72bpのタンデム反復またはレトロウイルス長末端反復またはLTRs等を含み、そして転写効率を上げるために使用する。プロモーターおよび他の共通ベクター要素の選択は通常であり、そして多くのそのような配列が利用可能であり、それらを用いて本発明に有用なヌクレオチド分子およびベクターを設計する。例えばSambrook et al.,モレキュラークローニング.ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning.A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨーク、(1989)およびそれに引用されている文献、例えば第3,18〜3.26頁および16.17〜16.27頁、ならびにAusubel et al.,分子生物学の現在の手法(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン ウィリー アンド サンズ、ニューヨーク(1989)を参照にされたい。当業者はそのような既知の調節配列の中から容易に選択して本発明の分子を調製することができる。そのような調節配列の選択は、本発明を限定するものではない。
【0084】
C.本発明のCT−CRMタンパク質およびヌクレオチド分子の作成法
抗原性組成物のアジュバントとして突然変異CT−CRMの証明された用途の観点から適当量の突然変異CT−CRMの生産が望ましい。本明細書に開示する本発明のヌクレオチド配列およびCT−CRM、ならびにヌクレオチド分子およびCT−CRMタンパク質を含む組成物の調製または合成は、利用可能な材料を使用して当業者の能力内に十分にある。合成法は本発明を限定するものではない。以下の実施例で本発明のCT−CRMsをコードする配列の現在好適な合成の態様を詳細に説明する。
【0085】
本発明のCT−CRMsおよびヌクレオチド分子および配列は、中でも化学的合成法、組換え遺伝子操作法、部位特異的突然変異誘発法、およびそのような方法の組み合わせにより生成することができる。例えば本発明のヌクレオチド配列/CT−CRMsは既知の化学的合成技術、例えば中でもMerrifield,1963 J.Amer,Chem.Soc.,85:2149−2154;J.Stuart and J.Young、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)、ピアス化学社(Pierce Chemical Company)、ロックフォード、イリノイ州(1984);Matteucci et al.,1981 J.Am.Chem.Soc.,103:3185;Alvarado−Urbina et al.,1980 Science,214:270;およびSinha,N.D.et al.,1984 Nucleic Acids Res.,13:4539に記載されているように固相化学合成により従来通り調製することができる。また例えばタンパク質−構造および分子的特徴(PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES)、第2版、T.E.Creighton,W.H.フリーマン アンド カンパニー(Freeman and Company)、ニューヨー
ク、1993;Wold,F.,「翻訳後タンパク質修飾:展望と将来性(Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects)」、タンパク質の翻訳後の共有的修飾(POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS)の1〜12頁、B.C.Jonson編集、アカデミック出版、ニューヨーク、1983;Seifter et al.,1990 Meth.Enzymol.,182:626−646、およびRattan et al.,1992 Ann.N.Y.Acad.Sci.,663:48−62も参照にされたい。
【0086】
あるいは本発明の組成物は、本明細書に提供される情報を利用して(例えば、Sambrook et al.,同上;Ausubel et al.同上)、CT−CRMタンパク質を場合により他の免疫原および任意のキャリアータンパク質とコードするヌクレオチド分子を宿主微生物内等でクローニングし、そして発現させることによるような、通例の分子生物学技術、部位特異的突然変異誘発法、遺伝子操作またはポリメラーゼ連鎖反応を使用して構築することができる。CT−CRMsおよび任意の免疫原のコード配列は合成的に調製することができる(W.P.C.Stemmer et al.,1995
Gene,164:49)。
【0087】
一般に、組換えDNA技術には上記のようなCT−CRMタンパク質をコードするDNA配列を合成または単離により得、そしてDNA配列をそれが好ましくはアラビノース誘導性プロモーターの存在下で発現される適切なベクター/宿主細胞発現系に導入することが関与する。DNAを発現ベクターに挿入するために記載された任意の方法を使用して、プロモーターおよび他の調節制御要素を選択した組換えベクター内の特別な部位に連結することができる。次いで適当な宿主細胞をそのようなベクターまたはプラスミドを用いて通常の技術により形質転換、感染、形質導入またはトランスフェクションさせる。
【0088】
種々の宿主細胞−ベクター(プラスミド)系を使用して免疫原性突然変異コレラホロトキシンを発現することができる。好ましく含まれるベクター系であるアラビノース誘導性プロモーターは、使用する宿主細胞に適合性がある。ベクターが宿主細胞に(使用する宿主細胞−ベクター系に依存して形質転換、形質導入またはトランスフェクションにより)挿入された時にCT−CRMをコードするDNAが宿主細胞により発現されるように、突然変異CT−CRMsをコードするDNA配列が発現系に挿入され、そしてプロモーター(好ましくはアラビノース誘導性プロモーター)および他の制御要素がベクター内の特別な部位に連結される。
【0089】
ベクターは上記のようなウイルスベクターまたは非ウイルスベクターから選択することができるが、使用する宿主細胞と適合していなければならない。組換えDNAベクターは、(使用するベクター/宿主細胞系に依存して)形質転換、形質導入またはトランスフェクションにより適切な宿主細胞(細菌、ウイルス、酵母、哺乳動物細胞等)に導入することができる。宿主−ベクター系には限定するわけではないが、バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクターを含む酵母のような微生物;ウイルスで感染させた哺乳動物細胞系(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルス等);およびウイルスで感染させた昆虫細胞(例えばバキュロウイルス)を含む。
【0090】
合成核酸分子を使用して本発明のCT−CRMおよび他の組成物をクローニングし、そして発現させるための系には、組換え技術において周知である種々の微生物および細胞の使用を含む。宿主細胞は哺乳動物、昆虫細胞、酵母細胞を含め原核(例えば細菌)細胞および真核細胞を含む生物学上の生物から選択することができる。好ましくは本発明の種々の方法および組成物で使用する細胞は細菌細胞である。適当な細菌細胞には例えば、大腸
菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)およびストレプトミセス(Streptomyces)の種々の株である。サッカロミセス(Saccharomyces)およびピチア(Pichia)のような酵母細胞、およびSf9およびSf21細胞のような昆虫細胞も生産目的のために有用な宿主細胞である。限定するわけではないがチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ニワトリ胚繊維芽細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NIH3T3、PER C6、NSO、VEROまたはCOS細胞を含む哺乳動物細胞ならびに他の通例および通常ではない生物および植物も適当な宿主細胞である。
【0091】
他の適当な宿主細胞の選択および形質転換、培養、増幅、スクリーニングおよび生成物の生産および精製の方法は、既知の技術を参照して当業者が行うことができる。例えば中でもGething and Sambrook,1981 Nature,293:620−625を参照にされたい。
【0092】
典型的には宿主細胞は発現に十分な期間、培養条件下で維持される。培養条件は当該技術分野では周知であり、そしてイオン組成および濃度、温度、pH等を含む。典型的にはトランスフェクションした細胞は培養基で培養条件下にて維持する。種々の細胞型について適当な培地が当該技術分野で知られている。好適な態様では、温度は約20℃から約50℃、より好ましくは約30℃から約40℃、そしてさらにより好ましくは約37℃である。
【0093】
pHは好ましくは6.0の値から約8.0の値、より好ましくは約6.8の値から約7.8の値であり、そして最も好ましくは約7.4である。容量オスモル濃度は好ましくはリットルあたり約200ミリオスモル(mosm/L)から約400mosm/L、より好ましくは約290mosm/Lから約310mosm/Lである。コードされたタンパク質のトランスフェクションおよび発現に必要な他の生物学的条件は、当該技術分野では周知である。
【0094】
組換えCT−CRMタンパク質は宿主細胞またはそれらの膜から、または細胞が培養された培地のいずれかから回収または集められる。回収は組換えCT−CRMタンパク質を単離し、そして精製することを含んでなる。ポリペプチドに関する単離および精製法は当該技術分野では周知であり、そして沈殿、濾過、クロマトグラフィー、電気泳動等のような手法を含む。
【0095】
通例の組換え手段により生産された時、本発明のCT−CRMsは細胞またはそれらの培地から、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティーおよびサイジング(sizing)カラムクロマトグラフィー)、遠心、分別溶解性を含む通例の方法により、あるいは精製またはタンパク質に関する他の任意の標準的技術により単離、そして精製されることができる。原核細胞からヘテロロガスなタンパク質の精製に関して幾つかの方法が存在する。米国特許第4,518,526号;同第4,599,197号;および同第4,734,362号明細書を参照にされたい。しかし生産された精製調製物は、ヒトに対して有害となり得る宿主のトキシンを実質的に含むべきではない。特に大腸菌(E.coli)のようなグラム陰性細菌の宿主細胞中で発現した時、精製されたペプチドまたはタンパク質にはエンドトキシン混入が実質的に排除されるべきである。例えばSambrook et al.,同上を参照にされたい。
【0096】
本発明の方法および組成物で使用するCT−CRMsは、本明細書に挙げる具体的に例示する方法の産物に限定されない。実際にはタンパク質は直前に引用した教科書中の方法により、あるいは本明細書を通して引用した教科書の方法により調製することができる。そのように使用するためにタンパク質組成物を単離し、そして組換え的または合成的に生産することは当業者の技術範囲内である。
【0097】
単一アミノ酸置換をもつ2つ、単一アミノ酸挿入を持つ1つ、および二重アミノ酸置換を持つ2つの表1に掲げた5個の例示的CT−CRMsは、上記の方法の幾つかを使用して実施例1に詳細に記載したように生成した。具体的には1組の突然変異CTクローン(CT−CRMs)を大腸菌(E.coli)で、既知のCTホロトキシン分子をコードするプラスミドについて標準的な部位特異的突然変異誘発プロトコールにより生成した。精製されたCT−CRME29Hホロトキシンが生じる収量は、1リットルの培養基あたり約50μgであったことが事前に示されていた(国際公開第00/18434号パンフレットを参照にされたい)。元のプラスミドに対する修飾を介してCT−CRME29Hの収量を上げる最初の試みは効果がほとんど無いか、または無いことが示された。プラスミドpIIB29Hおよび誘導体とコレラ菌(Vibrio cholerae)DsbAおよび大腸菌(E.coli)/RpoHの同時発現(co−expression)を通して、収量に穏やかな上昇が達成された。同時発現および精製の修飾によりCT−CRME29Hの収量は約2mg/リットルに増加した。
【0098】
本発明のCT−CRMsの発現を上昇させるために、プラスミド中のラクトース誘導性プロモーターをアラビノース誘導性プロモーター(インビトロゲン社、カールスバッド、カリフォルニア州)に置き換え、これをCT−CRMsをコードするDNA配列に操作可能に連結した。クローニング中、プラスミドpIIB29Hはコレラ菌(Vibrio cholerae)2125株に由来するCTサブユニットBをコードするctxB遺伝子に連結されたコレラ菌(Vibrio cholerae)569B株に由来するCTサブユニットAをコードするctxA遺伝子を含むことが決定された。これらの遺伝子の交差整列により、2つのctxB遺伝子間の7塩基置換およびctxA遺伝子間の1塩基変化が示された。これらの塩基置換の幾つかが成熟サブユニットにアミノ酸の変化を導いた。中でも特に注目されるのは、A−2部分内にアミノ酸変化を、またはAサブユニットのホロトキシン集成ドメインを導くctx遺伝子間の置換である。これら遺伝子間の異質性がトキシンの発現またはホロトキシンの集成に負の影響を及ぼすかどうかは知られていなかった。しかし進化的な観点から、両トキシンのサブユニット遺伝子が同じ起源に由来することは好ましいと考えられた。そのまま両ctxAおよびctxB遺伝子を、コレラ菌(Vibrio cholerae)569B株に由来するアラビノース誘導系の構築物に使用した。プラスミドpLP911、pLP915、pLP907、pLP909およびpLP910の構造は実施例1に示す。免疫原性突然変異コレラホロトキシンは、宿主細胞を上記のプラスミドで形質転換、感染、形質導入またはトランスフェクションし、そして宿主細胞を該組換え免疫原性解毒タンパク質が宿主細胞により発現できる条件下で培養することにより生産される。pLP911、pLP915、pLP907、pLP909およびpLP910からCT−CRMsの収量は、それぞれ1リットルのカルチャーあたり7.6、5.6、7.9、27.4および1.9mgの精製物質である。
【0099】
生成したCT−CRMタンパク質または核酸分子は、以下の実施例に記載するように任意の数の選択された抗原と一緒に免疫原性組成物に配合され、そしてインビボアッセイによりアジュバント効力についてスクリーニングする。
【0100】
D.免疫原性組成物
本発明の効果的な免疫原性組成物は、本発明の突然変異コレラホロトキシンを含んでなるものである。好ましくは突然変異コレラホロトキシンCT−CRMは、野生型コレラホロトキシンに比べて低減した毒性を有する。「低減した毒性」により、各突然変異体は有意な副作用、特に野生型CTに付随ことが知られている副作用、例えば下痢を引き起こすことなく免疫原性組成物中にアジュバントとして使用できる。より好ましくは本発明の免疫原性組成物中のCT−CRMは、Aサブユニットのアミノ酸25位に単一アミノ酸置換(アルギニンからトリプトファンまたはアルギニンからグリシン)を有する(CT−CR
R25W、CT−CRMR25G)。別の好適な態様では、CT−CRMはAサブユニットのアミノ酸48位のアミノ酸残基トレオニンに隣接するアミノ酸49位にヒスチジンの単一アミノ酸挿入を有する(CT−CRMT48TH)。第3の好適な態様は、Aサブユニットのアミノ酸34位のアミノ酸残基グリシンに隣接したアミノ酸35位および36位にアミノ酸残基グリシンおよびプロリンの二重アミノ酸挿入を有するCT−CRMである(CT−CRMG34GGP)。第4の例であるCT−CRMは、Aサブユニットのアミノ酸30位に単一アミノ酸置換(チロシンからトリプトファンへ)、およびアミノ酸30位のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸31位および32位にアミノ酸残基アラニンおよびヒスチジンの二重アミノ酸挿入を有する(CT−CRMY30WAH)。1つの態様では、CT−CRMは上記の1以上のさらなる修飾を有してもよい。別の態様では、組成物は選択された抗原および適当な有効なアジュバント量のCT−CRMを含んでなり、ここで該ホロトキシンは該抗原に対する脊椎動物の免疫応答を有意に強化する。本発明の組成物は、上記のような選択された抗原を含んでなる組成物の投与に対して、脊椎動物宿主の抗体応答および細胞性免疫応答を改善することにより免疫応答をモジュレートする。
【0101】
本明細書で使用する用語「有効なアジュバント量(effective adjuvanting amount)」とは、脊椎動物宿主に上昇した免疫応答を誘導するために効果的である本発明の1つのCT−CRM突然変異体の用量を意味する。より具体的な定義では、用語「有効なアジュバント量」とは本明細書に記載する5種のCT−CRM突然変異体の1つ(CT−CRMR25W、CT−CRMR25G、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH)の、脊椎動物宿主に上昇した免疫応答を誘導するために効果的である用量を意味する。具体的には本明細書に開示するCT−CRMsは、異なる抗原の鼻内投与後に粘膜および全身性免疫応答を増す。さらに事前に存在する抗−CT免疫応答の存在下でも、突然変異CT−CRMsは効率的な粘膜アジュバントとして役立つことができた。本発明の免疫原性突然変異CT−CRMsは、生じた突然変異CTタンパク質がアジュバントとして機能し、同時にそれが導入された脊椎動物宿主により安全に免疫寛容となるように、低減した毒性および保持されたアジュバント性のバランスを現す。特に「有効なアジュバント投薬用量または量」は、宿主の年齢、体重および医学的状態ならびに投与法に依存する。適当な用量は当業者により容易に決定される。
【0102】
アジュバントとして本発明の突然変異コレラホロトキシンを含む免疫原性組成物は、広い種々の抗原の中から選択される少なくとも1つの抗原も含む。抗原(1つまたは複数)は、全細胞もしくはウイルス、または1以上のサッカライド、タンパク質サブユニット、ポリペプチド、ペプチドもしくは断片、ポリ−もしくはオリゴヌクレオチド、または他の高分子成分を含んでなることができる。所望により抗原性組成物は同じかまたは異なる病原性微生物に由来する1より多くの抗原を含んでもよい。
【0103】
このように1つの態様では、本発明の免疫原性組成物は選択される抗原として病原性細菌に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含んでなる。アジュバントとしてCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)を含む望ましい細菌性の免疫原性組成物には限定するわけではないが、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(型を決定できる、またはできない両方)、ヘモフィルス ソムナス(Haemophilus sommus)、モラクセラ カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス アガラクティー(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス フェカリス(Streptococcus faecalis)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrh
oeae)、トラコーマ クラミジア(Chlamydia trachomatis)、クラミジア肺炎菌(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア シッタキ(Chlamydia psittaci)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、アロイオコッカス オチジティス(Alloiococcus otiditis)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、豚コレラ菌(Salmonella
choleraesuis)、大腸菌(Escherichi coli)、シゲラ(Shigella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptherieae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、トリ型結核菌(Mycobacterium
avium)−マイコバクテリウム イントラセルラー(Mycobacterium
intracellulare)コンプレックス、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabillis)、プロテウス ベルガリス(Proteus vulgaris)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、レプトスピラ インターロガンス(Leptospira interrogans)、ボレリア ブルグドルフェリ(Borrelia
burgdorferi)、パスツレラ ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバチルス プレウロニューモニア(Actinobacillus pleauropneumoniae)およびマイコプラズマ ガリスセプチム(Mycoplasma galliseptium)により引き起こされる疾患(1つまたは複数)の防止および/または処置を対象とするものを含む。
【0104】
別の態様では、本発明の免疫原性組成物は選択される抗原として病原性ウイルスに由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含んでなる。アジュバントとしてCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)を含む望ましいウイルス免疫原性組成物には、限定するわけではないがRSウイルス、パラインフルエルザウイルス1〜3型、ヒト メタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト パピローマウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、カリシウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、アデノウイルス、狂犬病ウイルス、イヌジステンバーウイルス、牛疫ウイルス、鳥気管支ウイルス(正式には七面鳥鼻気管支ウイルス)、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、コロナウイルス、パルボウイルス、感染性鼻気管支ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、鳥感染性ファブリキウス病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、マレック(Marek’s)病ウイルス、ブタ呼吸および生殖症候群ウイルス、ウマ動脈炎ウイルスおよび種々の脳炎ウイルスにより引き起こされる疾患(1つまたは複数)の防止および/または処置を対象とするものを含む。
【0105】
別の態様では、本発明の免疫原性組成物は選択される抗原として病原性真菌に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含んでなる。アジュバントとしてCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)を含む真菌病原体に対して望ましいス免疫原性組成物には、限定するわけではないがアスペルギルス属(Aspergillis)、ブラストマイセス属(Blastomyces)、カンジダ属(Candida)、コクシジオイデス属(Coccidiodes)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)およびヒストプラスマ属(Histoplasma)により引き起こされる疾患(1つまたは複数)の防止および/または処置を対象とするものを含む。
【0106】
さらに別の態様では、本発明の免疫原性組成物は選択される抗原として病原性寄生生物
に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含んでなる。アジュバントとしてCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)を含む寄生生物に対して望ましい免疫原性組成物には、限定するわけではないがリューシュマニア メジャー(Leishmania major)、回虫属(Ascaris)、鞭虫属(Trichuris)、ジアルジア属(Giardia)、住血吸虫属(Schistosoma)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、トリコモナス属(Trichomonas)、トキソプラズマ ゴンジー(Toxoplasma gondii)およびニューモシスティス カリニ(Pneumocyctis carinii)により引き起こされる疾患(1つまたは複数)の防止および/または処置を対象とするものを含む。
【0107】
アジュバントとしてCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)を含む、非−感染性疾患に対する望ましい免疫原性組成物も本発明の範囲内である。そのような免疫原性組成物には、脊椎動物抗原に対するものを含み、特に限定するわけではないがアレルギー、自己免疫疾患、アルツハイマー病およびガンのような疾患(1つまたは複数)の防止および/または処置に関する抗原に対する組成物を含む。
【0108】
例えば本発明の免疫原性組成物は、ガン細胞または腫瘍細胞に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含むことができる。本発明のCT−CRM突然変異体を含む、脊椎動物において治療用または予防用の抗−ガン効果を誘導する望ましい免疫原性組成物は、限定するわけではないが前立腺特異的抗原、癌−胎児性抗原、MUC−1、Her2、CA−125、MAGE−3、ホルモンおよびホルモン同族体等を含めガン抗原または腫瘍に関連する抗原を利用するものを含む。
【0109】
本発明の他の免疫原性組成物は、脊椎動物宿主のアレルゲンに対する応答をモジュレートするために望ましい、そのような組成物は本発明のCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)およびアレルゲンまたはそれらの断片に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含む。そのようなアレルゲンの例は、米国特許第5,830,877号明細書および国際公開第99/51259号パンフレットに記載され、これは引用により本明細書に編入し、そして花粉、昆虫の毒、動物の鱗屑、菌類の胞子および薬剤(ペニシリンのような)を含む。免疫原性組成物はアレルゲンに対するアレルギー応答をモジュレートするように、アレルギー反応の原因として知られているIgE抗体の生産を妨害する。
【0110】
さらに別の態様では、本発明の免疫原性組成物は選択される抗原として抗原の分子部分に由来するポリペプチド、ペプチドまたは断片を含み、これらは脊椎動物宿主のアミロイド沈着を特徴とするような疾患を防止または処置するように、アミロイド前駆体タンパク質に由来するもののような望ましくない様式、量または場所で宿主により生産されるもの(または自己分子)を表す。本発明のCT−CRM突然変異体を含む、脊椎動物宿主中で自己分子に対する応答をモジュレートするために望ましい組成物は、自己分子またはそれらの断片を含むものを含む。そのような自己分子の例には、糖尿病に関与するβ−鎖インスリン、胃食道反射疾患に関与するG17分子および多発性硬化症、狼瘡および慢性関節リウマチのような疾患において自己免疫応答をダウンレギュレーションする作用物質を含む。
【0111】
本発明のさらに他の免疫原性組成物は、脊椎動物宿主のアミロイド沈着を特徴とする疾患を防止または処置するために望ましい。そのような組成物は本発明のCT−CRM突然変異体(1つまたは複数)ならびにアミロイド前駆体タンパク質(APP)の部分を含む。この疾患はアルツハイマー病、アミロイドーシスまたはアミロイド発生(amyloidogenic)疾患のように様々に言われている。β−アミロイド前駆体タンパク質(Aβペプチドとも呼ばれる)は、APPの42アミノ酸断片であり、これはβおよびγセクレターゼ酵素によるAPPのプロセッシングにより生成し、そして以下の配列を有する
:Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr
Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe Phe
Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly AlaIle Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala(配列番号3)。患者の中にはアミロイド沈着が凝集したAβペプチドの形態を取るものもある。驚くべきことには今、単離されたAβペプチドの投与が脊椎動物のアミロイド沈着のAβペプチド成分に対して免疫応答を誘導することが見いだされた(国際公開第99/27944号パンフレット)。すなわち本発明の態様は、本発明のCT−CRM突然変異体に加えてAβペプチド、ならびにAβペプチドの断片およびAβペプチドに対する抗体またはそれらの断片を含む。1つのそのようなAβペプチドの断片は、以下の配列を有する28アミノ酸ペプチドである(米国特許第4,666,829号明細書:Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys(配列番号4)。
【0112】
そのような免疫原性組成物は、滅菌水または滅菌等張性塩溶液のような免疫学的に許容され得る希釈剤または製薬学的に許容され得る担体をさらに含んでなる。抗原性組成物はそのような希釈剤または担体と通例の様式で混合される。本明細書で使用する用語「製薬学的に許容され得る担体」とは、ヒトまたは他の脊椎動物宿主への投与に適合性がある任意かつすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌および抗菌・カビ剤、等張性かつ吸収遅延剤等を含むことを意図する。適当な担体は当業者には明白であり、そしてほとんど投与経路に依存するだろう。
【0113】
免疫原性組成物は限定するわけではないが懸濁液、溶液、油性または水性賦形剤中の乳液、ペーストおよび移植可能な徐放性または生分解性製剤を含んでもよい。そのような製剤は、限定するわけではないが沈殿防止剤、安定化剤または分散剤を含む1以上のさらなる材料をさらに含んでなる。非経口投与用の製剤の1態様では、再構成する組成物を非経口的に投与する前に、有効成分を適当な賦形剤(例えば滅菌されたパイロジェンを含まない水)で再構成するように、乾燥(すなわち粉末または粒状)形態で提供する。有用な他の非経口的に投与可能な製剤には、有効成分を微晶質状で、リポソーム調製物で、または生分解ポリマー系として含んでなるものを含む。徐放性または移植用の組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、溶解しにくいポリマーまたは溶解しにくい塩のような製薬学的に許容されるポリマー性または疎水性材料を含んでもよい。
【0114】
本発明のタンパク質免疫原性組成物中に存在できるさらに加える成分は、CT−CRMsに加えてアジュバント、保存剤、化学的安定化剤または他の抗原性タンパク質である。典型的には安定化剤、アジュバントおよび保存剤は至適化されて、標的とするヒトまたは動物における効力に最高の配合を決定する。適当な例示的保存剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを含む。使用できる適当な安定化材料には、例えばカザミノ酸、シュクロース、ゼラチン、フェノールレッド、N−Zアミン、二リン酸一カリウム、ラクトース、ラクトアルブミン加水分解物および乾燥ミルクを含む。
【0115】
本発明の抗原性組成物は、突然変異CT−CRMsに加えてさらなるアジュバントを含んでなることができる。免疫応答を強化するために使用する通例の非−CT−CRMアジュバントには、限定するわけではないが引用により本明細書に編入する米国特許第4,912,094号明細書に記載されているMPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA;コリキサ(Corixa)、ハミルトン、モンタナ州)を含む。またアジ
ュバントとしての使用に適するのは、コリキサ(ハミルトン、モンタナ州)から入手可能であり、そして引用により本明細書に編入する米国特許第6,113,918号明細書に記載されている合成脂質A同族体またはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはそれらの誘導体または同族体である。そのようなAGPの1つは529(正式にはRC529として知られている)として知られている2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−b−D−グルコピラノシドである。この529アジュバントは水性状態または安定な乳液として配合される。
【0116】
さらに他の非−CT−CRMアジュバントには鉱物油および水乳液、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム等のようなアルミニウム塩(alum)、Amphigen、Aviridine、L121/スクワレン、D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド、プルロニックポリオール、ムラミル ジペプチド、殺されたボルデテーラ(Bordetella)、引用により本明細書に編入する米国特許第5,057,540号明細書に記載されているStimulon(商標)QS−21(アンチジェニックス(Antigenics)、フラミンガンム、マサチューセッツ州)のようなサポニン、およびISCOMS(免疫刺激複合体)のようなそれらから生成される粒子、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、細菌リポ多糖、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドのような合成ポリヌクレオチド(引用により本明細書に編入する米国特許第6,207,646号明細書)、百日咳トキシン(PT)、または大腸菌(E.coli)の熱不安定性トキシン(LT)、特にLT−K63、LT−R72、CT−S109、PT−K9/G129を含む;例えば引用により本明細書に編入する国際公開第93/13302号および同第92/19265号パンフレットを参照にされたい。
【0117】
種々のサイトカインおよびリンホカインも本発明の免疫原性組成物に含めるのに適当である。1つのそのようなサイトカインは、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、これは引用により本明細書に編入する米国特許第5,078,996号明細書に記載されているヌクレオチド配列を有する。GM−CSF cDNAを含むプラスミドを、大腸菌(E.coli)に形質転換し、そして20110−2209 バージニア州、マナッサス、10801 ブルヴァール大学のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託番号39900で寄託した。サイトカインであるインターロイキン−12(IL−12)は引用により本明細書に編入する米国特許第5,723,127号明細書に記載さている別のアジュバントである(ジェネティック インスティテュート社(Genetics Institute Inc.)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州から入手可能である)。免疫モジュレーティング活性を有することが示された他のサイトカインまたはリンホカインには限定するわけではないが、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、13、14、15、16、17および18、インターフェロン−α、βおよびγ、顆粒球コロニー刺激因子および腫瘍壊死因子αおよびβを含み、そしてアジュバントとしての使用に適する。
【0118】
本発明の免疫原性組成物のさらに他の適当な任意の成分には限定するわけではないが:表面活性物質(例えばヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リソレシチン、ジメチル−ジオクタデシルアンモニウムブロミド)、メトシキヘキサデシルグリセロールおよびプルロニックポリオール;ポリアミン、例えばピラン、デキストランスルフェート、ポリIC、カルボポール;ペプチド、例えばムラミルジペプチド、ジメチルグリシ、ツフツシン(tuftsin);オイルエマルジョン;および鉱物ゲル、例えばリン酸アルミニウム等、および免疫刺激複合体を含む。CT−CRMおよび抗原は、免疫原性組成物に使用するためにリポソームに包含されるか、または多糖、リポ多糖および/または他のポリマーに結合してもよい。
【0119】
本発明のCT−RCM突然変異体(1つまたは複数)または所望するCT−RCMをコードするDNA配列および分子を含む本発明の免疫原性組成物は、ポリヌクレオチド組成物(DNA免疫原性組成物としても知られている)としても有用であり、あるいは選択した抗原をコードするポリヌクレオチドと投与される。例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)2型の完全長の糖タンパク質D(gD2)をCT−CRME29Hと一緒にコードするプラスミドDNA(pDNA)の製剤を皮内経路で投与されたDBALB/cマウスは、HSV gD2のみをコードするプラスミドDNAを皮内経路で受容したマウスよりも高い平均細胞性応答を生じた。さらにプラスミドDNA HSV gD2組成物をCT−CRME29Hと一緒に受容したマウスに関する平均血清抗体力価は、アジュバント無しでプラスミドDNA HSV gD2組成物を受容したマウスに見られる力価とほぼ同じであった。同様に、CT−CRME29Hをアジュバントとして加えたプラスミドDNA
HSV gD2組成物も、アジュバントを加えない組成物を皮内または筋肉内経路で送達した後に見られるレベルに匹敵するレベルで膣洗浄サンプルにgD2−特異的抗体応答を生じた。CT−CRME29HまたはCTをアジュバントとして加え、そして皮内経路で送達したプラスミドDNA HSV gD2組成物で免疫感作したマウスも、アジュバント無しでプラスミドDNA HSV−gD2組成物を受容したマウスよりも実質的に高レベルのガンマインターフェロンおよびIL−5を生成した。このようにCT−CRMsはHSVに対するプラスミドDNA組成物を投与した時、増殖的およびガンマインターフェロン応答を強化する。
【0120】
上記のような担体に加えて、ポリヌクレオチド分子からなる免疫原性組成物は望ましくは、場合により局所麻酔薬、ペプチド、カチオン性脂質を含む脂質、リポソームまたは脂質粒子、ポリリシンのようなポリカチオン、デンドリマーのような分枝した、3次元ポリカチオン、炭水化物、カチオン性両親媒性化合物、界面活性剤、ベンジルアンモニウム表面活性剤または細胞にポリヌクレオチドの輸送を促進する化合物のような任意のポリヌクレオチド促進剤または「共剤(co−agent)」を含む。そのような促進剤にはブピビカイン(引用により本明細書に編入する米国特許第5,593,972号明細書を参照にされたい)を含む。本発明に有用なそのような促進剤または共剤の他の排他的ではない例は、各々が引用により本明細書に編入される米国特許第5,703,055号;同第5,739,111号;同第5,837,533号明細書;1996年4月4日に公開された国際公開第96/10038号パンフレット;および1994年8月8日に公開された国際公開第94/16737号パンフレットに記載されている。
【0121】
より好ましくは、局所麻酔薬は核酸分子と1以上の複合体を形成する量で存在する。局所麻酔薬は本発明の核酸分子またはプラスミドと混合される時、DNAを包む小さい種々の複合体または粒子を形成し、そして均一である。すなわち本発明の免疫原性組成物の1態様では、複合体は局所麻酔薬と本発明の少なくとも1つのプラスミドを混合することより形成される。この混合物から生じる任意の単一複合体は、異なるプラスミドの様々な組み合わせを含むことができる。あるいは本発明の組成物の別の態様では、すべてのプラスミドが単一のボーラス投与で投与される場合、局所麻酔薬は個々のプラスミドと別個に混合され、そして別個の混合物を単一の組成物に合わせて、単一の免疫原性組成物中に所望の比率でプラスミドが存在する事を確実にすることができる。あるいは局所麻酔薬および各プラスミドを別個に混合し、そして別個に投与して所望の比率を得ることができる。ここで今後、用語「複合体」または「1以上の複合体」または「複合体(複数)」は、免疫原性組成物のこの態様を定めるために使用し、この用語は1以上の複合体とCT−CRMをコードするプラスミドおよび抗原をコードするプラスミドの混合物、または別個に形成された複合体の混合物を含む各複合体を包含し、ここで各複合体は唯一の種類のプラスミド、または複合体の1つまたは混合物を含み、ここで各複合体はポリシスストロン性DNAを含む。好ましくは、複合体は直径が約50〜約150nmである。使用する促進剤が
局所麻酔薬、好ましくはプピバカインである時、ポリヌクレオチド組成物の総重量に基づき約0.1重量%から約1.0重量%の量が好ましい。例えば引用により本明細書に編入する国際公開第99/21591号パンフレットも参照にされたい、そしてこれは好ましくは、約0.001〜0.03重量%の間の量で投与される、共剤としてベンジルアンモニウム表面活性剤の包含を教示する。本発明に従い、局所麻酔薬の量は該核酸分子に対する比率で0.01〜2.5重量/容量%の局所麻酔薬対1〜10μg/mlの核酸で存在する。別のそのような範囲は、0.05〜1.25重量/容量%の局所麻酔薬対100μg/ml〜1ml/mlの核酸である。
【0122】
使用する時、そのようなポリヌクレオチド免疫原性組成物はCT−CRMおよび抗原を一過性の基準にてインビボで発現し;遺伝材料は宿主の染色体に挿入または組み込まれない。この使用は、目標が目的の遺伝材料を染色体に挿入または組み込むことである遺伝子療法とは区別される。免疫感作により投与されたポリヌクレオチドが宿主の表現型を形質転換しないことを確認するためのアッセイを使用する(米国特許第6,168,918号明細書)。
【0123】
免疫原性組成物は組成物の選択した投与様式に適する他の添加剤を含んでもよい。本発明の組成物は凍結乾燥したポリヌクレオチドを含んでもよく、これは粉末、液体または懸濁液の剤形を開発するために他の製薬学的に許容される賦形剤と使用することができる。例えばレミングトン:製剤学の科学および実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第2巻、第19版、(1995)、例えば第95章エーロゾル;および国際公開第99/45966号パンフレットを参照にされたい(これらの教示は引用により本明細書に編入する)。これら組成物の投与経路は所望により組み合わせられ、または適合され得る。
【0124】
これらの核酸分子を含む免疫原性組成物は、任意の通例の投与経路を介して投与するために適する添加剤を含むことができる。幾つかの好適な態様では、本発明の免疫原性組成物は例えば液体、粉末、エーロゾル、錠剤、カプセル、腸のコート錠剤またはカプセルまたは座薬の形態でヒト個体に投与するために調製される。
【0125】
本発明の免疫原性組成物は(タンパク質を含むか、または核酸分子を含むいずれの組成物でも)、上記のように、通例の生理学的に許容され得る担体、アジュバントまたは上記の種類の製薬学的調製物に有用な他の材料の選択により限定されることはない。上記の成分から、適当なpH、等張性、安定性および他の通常の特性を有するこれらの製薬学的に許容される組成物の調製は、当業者の技術範囲内である。
【0126】
E.本発明の組成物の使用法
CT−CRM単独またはCT−CRMの組み合わせおよび選択した抗原を含んでなる本発明の免疫原性組成物は、種々の経路によりヒトまたは非−ヒト脊椎動物に投与して抗原、好ましくは上記に確認される疾患を引き起こす抗原に対する免疫応答を強化する。本発明の組成物は、上記の選択した抗原、および有効なアジュバント量の突然変異CT−CRMを含んでなる組成物の投与後に、脊椎動物宿主の抗体応答および細胞性免疫を改善することにより免疫応答をモジュレートし、ここで突然変異CT−CRMは野生型CTに比べて実質的に低減した毒性を有し、そしてここで低減した毒性は単一アミノ酸置換、単一アミノ酸挿入、二重アミノ酸挿入または単一アミノ酸置換および二重アミノ酸挿入の結果である。
【0127】
1つの態様では、CT−CRM(タンパク質として、または核酸分子によりコードされるものとして)を含む免疫原性組成物は、選択した抗原(タンパク質または核酸のいずれかとして)を含んでなる組成物の投与前に投与される。別の態様では、免疫原性組成物は
抗原およびCT−CRMの両方を含む組成物で、あるいは抗原を含有する組成物とは別の組成物として投与されるいずれの場合であっても、免疫原性組成物は抗原と同時に投与される。さらなる態様では、CT−CRMを含む組成物は抗原を含む組成物の後に投与される。抗原および突然変異CT−CRMが同時に投与されることが必要ではないが好ましい。
【0128】
CT−CRMを含む免疫原性組成物は、上記のようにタンパク質またはタンパク質をコードする核酸分子として投与することができる。CT−CRMを含む免疫原性組成物は、タンパク質として投与される選択した抗原と組み合わせてタンパク質として投与することができる。あるいは上記のように、タンパク質としてCT−CRM免疫原性組成物は上記のような抗原をコードする核酸分子と投与することができる。さらに別の代案には、CT−CRMおよび抗原の両方をこれらのタンパク質をコードする核酸配列として投与することを含む。
【0129】
CT−CRMを含む免疫原性組成物を投与するために、任意の適当な投与経路を採用することができる。この経路はCT−CRMおよび抗原が別の組成物または異なる形態で、例えばタンパク質または核酸で投与されるならば、選択した抗原を含む組成物を投与するために選択した経路と同じでも異なってもよい。適当な投与経路は限定するわけではないが、鼻内、経口、膣、直腸、非経口、皮内、経皮(例えば引用により本明細書に編入する国際公開第98/20734号パンフレットを参照にされたい)、筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内および動脈内を含む。適当な経路は使用する免疫原性組成物の性質、および患者の年齢、体重、性別および一般的な健康状態の評価、および免疫原性組成物中に存在する抗原、および担当医師による類似因子に依存して選択される。
【0130】
一般に本発明の免疫原性組成物(1つまたは複数)のCT−CRMおよび/または抗原成分に関する適切な「有効量」または投薬用量の選択も、CT−CRMおよび抗原のタンパク質または核酸状態、使用する免疫原性組成物(1つまたは複数)中の抗原の同一性、ならびに患者の身体的状態、最も特別には免疫感作する個体の一般的な健康状態、年齢および体重にも基づくだろう。免疫原性組成物の投与法および経路ならびにその中のさらなる成分の存在も、CT−CRMおよび抗原の投薬用量および量に影響し得る。有効用量のそのような選択および上方または下方調整は、当業者の技術範囲内である。免疫応答、好ましくは防御応答を誘導する、または有意に悪い副作用無しで患者に外因的効果を生成するために必要なCT−CRMおよび抗原の量は、これらの因子に依存して変動する。適当な用量は当業者に容易に決定される。
【0131】
例として1つの態様では、タンパク質成分、例えば上記のCT−CRM変異体タンパク質および/または抗原を含む組成物について、各用量は約1μgから約20mgの間のタンパク質/mL(滅菌溶液)を含んでなることができる。他の投薬用量範囲も、当業者により企図され得る。最初の用量は任意でよく、続いて所望により追加免疫を繰り返すことができる。
【0132】
別の例では、DNAおよびベクター組成物中のヌクレオチド分子の量は当業者により選択され、そして調整され得る。1つの態様では、各用量は1mLの滅菌溶液あたり約50μgから約1mgの間のCT−CRMをコードするまたは抗原をコードする核酸、例えばDNAプラスミドを含んでなる。
【0133】
組成物に関する用量および投薬処方の回数も当業者により容易に決定され得る。防御はCT−CRMを含む免疫原性組成物の単回投与により付与されるかもしれないし、または防御を維持するために後の追加免疫に加えて選択した抗原を含むか、含まずに数回の投与が必要かもしれない。場合によっては突然変異CT−CRMのアジュバント特性により必
要とされる抗原を含む投与の数を減らすことができ、あるいは投薬処方のタイムコースを減らすことができる。免疫のレベルを監視して必要ならば追加免疫の必要性を決定することができる。
【0134】
本発明をより良く理解するために、以下の実施例を説明する。実施例は具体的説明の目的のみであり、本発明を限定するとは解釈されない。
【0135】
本明細書に引用するすべての技術文献は、引用により本明細書に編入する。
【実施例1】
【0136】
CT突然変異体の発現
A.細菌株、プラスミドおよび成長条件
大腸菌(E.coli)TG1(アマーシャム社(Amersham Corporation)、アーリントンハイツ、イリノイ州)、TX1(FTc、XL1ブルーに由来するlac1を持つTG1のナリジキシン酸耐性誘導体)(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州)、TE1(TG1 endA、FTc、lac1)およびCJ236(FTc、lac1)(バイオラッド(BioRad)、ヘラクレス、カリフォルニア州)を組換えプラスミドをクローニングし、そして変異体タンパク質を発現させるための宿主として使用した。プラスミドを含む株は必要に応じて抗生物質(アンピシリン、50μg/ml;カナマイシン 25μg/ml;テトラサイクリン 10μg/ml)を含むLB寒天プレート上で維持した。
【0137】
B.ctxA遺伝子の突然変異誘発
1本鎖のウラシル含有鋳型(Jobling,M.G.and Holmes,R.K.,1992 Infect.Immun.,60:4915−24)を使用した部位特異的突然変異誘発は、pSKII中の自然なCTオペロンのクローンであるプラスミドpMGJ67(ストラタジーン)に作成されたオリゴヌクレオチド−誘導突然変異体を選択するために使用した。簡単に説明すると、各オリゴヌクレオチドをリン酸化し、そしてdut ungCJ236(FTc、pMGJ67)からレスキューした(resucued)1本鎖DNA鋳型について第2鎖合成を支配するために使用した。連結およびung株TX1の形質転換後、1本鎖DNAをAp形質転換体からレスキューし、そしてジデオキシチェーンターミネーション法により配列決定した(Kunkel,T.A.,1985 Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488−492)。QuickChange突然変異誘発法(ストラタジーン)を使用して、幾つかの突然変異をpARCT2に直接導入した。pARCT2は、LTIIbB遺伝子に由来するシグナル配列を含むctxAおよびctxB遺伝子を含むオペロンを発現するpAR3(国際公開第98/20734号パンフレット)に由来するアラビノース−誘導性クローンであり、そして各遺伝子はpT7−1の誘導体であるベクタープラスミドpT7−7からT7遺伝子10に由来する開始配列を翻訳するために独立して使用する。
【0138】
C.1および2コドン挿入突然変異体
単一コドン挿入は、pMGJ64(pMGJ67の誘導体)を部分消化し、続いて3−塩基粘着末端のフィル−インおよび自己連結によりDdeI制限部位に作成した。2コドンTAB−リンカー挿入突然変異体は、6塩基対ApaIリンカー(GGGCCC)をTABマニュアル(ファルマシア(Pharmacia))に記載されているようにpMGJ64のRsaI部分消化の末端に付加することにより作成した。形質転換体を単一DdeIまたはRsaI部位のいずれかの損失(および新たなApaI部位の存在)について調査し、そしてDNAシークエンシングにより確認した。
【0139】
D.アラビノース促進化CT−CRM発現ベクターの構築
CT−CRME29H(国際公開第00/18434号パンフレット)での事前の実験では、大腸菌(E.coli)での最大生産が合成のctxA遺伝子の上流の合成シャイン−ダルガルノ配列を置換し、そしてアラビノースプロモーター系の制御下にオペロンを配置することにより達成されたことが示された。Aサブユニットに部位特異的突然変異を含むCTオペロンは、すでに記載されたように作成した(同上)。CT−CRMsは、元はβ−ガラトクシダーゼプロモーターの制御下にあり、そして大腸菌(E.coli)中での発現レべルは低かった。PCRを使用してCT−AサブユニットのATGの5’領域を修飾し、そして5’末端のNheI部位に挿入した。対応する3’プライマーをCT−B遺伝子の3’末端のHindIII部位に加えた。使用したプライマーは
【0140】
【化1】

【0141】
であった。
【0142】
PCRを各突然変異体CT−CRMオペロンについて行い、そしてPCR産物を製造元の指示に従いpCR2.1−Topo(インビトロゲン)に連結し、そしてTop10F’細胞に形質転換した。組換え大腸菌(E.coli)をカナマイシン(25μg/ml)およびX−gal(40μg/ml)を含むSOB寒天上にまいた。白色コロニーからのプラスミドを、EcoRIでの消化により挿入物について調査した。正しいサイズの挿入物を含むプラスミドを製造元の指示に従いNheIおよびHindIIIで消化し、そしてCTオペロンを含むDNA段片を低融点アガロースから単離した。プラスミドpBAD18−Cm(インビトロゲン)をNheI−HindIIIで消化し、そして直線状DNAを低融点アガロースから単離した。消化したpBAD18およびCTオペロンは12℃で連結し、そしてTop10F大腸菌(E.coli)に形質転換した。クロラムフェニコール−耐性コロニーに由来するプラスミドを制限分析により挿入物について調査し、そして代表的コロニーを配列決定して部位特異的突然変異の存在を確認した。プラスミドはCT−CRMsを発現させるためにDH5α中で形質転換した。
【0143】
E.大腸菌(E.coli)中でのCT−CRMsの発現
プラスミドpLP9911、pLP915、pLP907、pLP909およびpLP910を含む大腸菌(E.coli)DH5α細胞、CT−CRMsをそれぞれ発現する細胞を、クロラムフェニコール(25μg/ml)およびグリセロール(0.5%)を含むリン酸緩衝化Hy−Soy培地で、37℃にて通気しながら成長させた。カルチャーが約4.5−5.5のOD600に達した時、それらは最終濃度0.5%までL−アラビノースを加えることにより誘導した。カルチャーは誘導後、37℃で通気しながら3時間インキューベーションし、そして次いで細胞を遠心により集めた。細胞ペレットを−20℃に保存した。
【0144】
F.CT−CRMsの調製および精製
細胞ペレットを室温で解凍し、そして10mM NaPOおよび1mM EDTA(pH7.0)に元の9%のカルチャー容量で再懸濁した。細胞懸濁液はミクロ流動化装置を使用して機械的に破壊し、そして10分間、8,500xgで遠心した。細胞溶解物はさらに160,000xgで1時間遠心することにより清澄化した。清澄化した細胞溶解物は、10mM NaPO(pH7.4)で平衡化したカルボキシメチル(CM)−sepharose(商標)カラム(10リットルのカルチャーあたり300mlのCM−Sepharose(商標))(アマーシャム−ファルマシア)に、2ml/分の流速で乗せた。カラムを>10容量の10mM NaPO(pH7.0)を用いて5ml/分
の流速で洗浄した。CT−CRMsE29Hホロトキシンは4カラム容量の10mM NaPO(pH8.3)で溶出した。精製したCT−CRMsはPBS中での透析によりバッファー交換し、そして4℃で保存した。完全なホロトキシンおよび各サブユニットの存在は、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびSDS−PAGEでそれぞれ決定した。未変性PAGEは完全なコレラホロトキシンの分子量と予想される精製された86kDa分子(データは示さず)の存在を示した(Tebbey et al.,2000 Vaccine,18(24):2723−2734)。加えて、SDS−PAGEは完全なホロトキシンを構成するCT−A(27kDa)およびCT−B(12kDa)サブユニットに並んだ2つのバンドを示した(データは示さず)。
【実施例2】
【0145】
未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動
突然変異CT−CRMS、CT−CRMR25W、CT−CRMR25G、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGPおよびCT−CRMY30WAHは、未変性page電気泳動により分析して完全なホロトキシンとして精製後に存在するCT−CRMsの割合を決定した。精製したCT−CRMs、各15μl(種々のタンパク質濃度)を6%の重合化未変性ポリアクリルアミドゲに流した。3種の濃度(300、600および1200ng)のCT−Bを標準として使用した。電気泳動後、ゲルをクーマシーブルーで染色した。次にゲルはデンシトメーターを使用してスキャンし、そしてホロトキシンの割合をCT−CRMsおよびCT−B標準のデンシトメーターの読み取りから算出した。データは95%のCT−CRMR25W、91.20%のCT−CRMR25G、91.00%のCT−CRMT48TH、98.8%のCT−CRMG34GGPおよび90.93%のCT−CRMY30WAHが完全なホロトキシンとして存在することを示した(表2)。
【0146】
【表2】

【実施例3】
【0147】
CT−CRMSの残存毒性に関するY−1副腎細胞アッセイ
コレラトキシン/熱不安定性エンテロトキシンファミリーにおけるエンテロトキシンの毒性を測定するために、インビトロで使用されているマウスY−1副腎腫瘍細胞アッセイで、突然変異CT−CRMsを野生型CTと毒性について比較した。このアッセイはトキシンが細胞表面受容体へ結合し、そして続いてトキシンのA1サブユニットが細胞の細胞質に入ることに依存している。
【0148】
コレラ菌(V.cholerae)から単離された自然なコレラトキシンを、A1−A2連結部にタンパク質溶解的にニックを入れ、ジスルフィド結合のみで一緒に保持されているA1およびA2サブユニットを生じる。これによりA1およびA2サブユニットを不
安定にし、そして互いに容易に解離できるようにする。ニックを入れたCTのA1サブユニットは、細胞表面受容体への結合でA2サブユニットから解離し、そして細胞に入り、ここでそれは調節G−タンパク質(Gsα)をADP−リボシル化し、上記のようにその毒性効果を導く。対照的に、大腸菌(E.coli)で生産されたエンテロトキシン(CTまたはLTのいずれか)はニックを入れず、したがって未だ連結しているA1−A2ペプチドを有する。結果として、コレラ菌(V.cholerae)で生産されたCTは、Y−1副腎細胞アッセイで大腸菌(E.coli)のようなヘテロロガスな細菌で生産されたCTよりも有意に毒性である。
【0149】
第1のY−1副腎細胞アッセイでは、突然変異CT−CRMsをコレラ菌(V.cholerae)に由来するニックを入れた野生型CTと毒性について比較した。このアッセイでは、Y−1副腎細胞(ATCC CCL−79)を96−ウェルの平らなプレートにウェルあたり10細胞の濃度でまいた。その後、精製(クーマシーブルー染色により決定された〜90%純度)したCT−CRMsの3倍の連続希釈物を腫瘍細胞に加え、そして37℃(5%CO)で18時間、インキューベーションした。次いで細胞を光学顕微鏡により毒性の存在(細胞のラウンディング:rounding)について調査した。終点力価は50%より多い細胞ラウンディングを与えるために必要なトキシンの最少濃度と定めた。残存毒性の割合は、CT−CRMsにより誘導される力価で除算し、100を掛けたコレラ菌(V.cholerae)に由来する野生型のニックを入れたCTの終点力価(100%毒性)を使用して算出した。表3に示すデータは、Y−1副腎細胞アッセイを使用して試験した5個の精製された突然変異体ホロトキシン、CT−CRMR25W、CT−CRMR25G、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGPおよびCT−CRMY30WASHの残存毒性が、実質的に低減したことを示す。
【0150】
【表3】

【0151】
第2の別の実験では、上昇したレベルの突然変異CT−CRMを発現する大腸菌(E.coli)の細胞周辺粗抽出物を、大腸菌(E.coli)で発現したニックを入れていない野生型CTホロトキシンに対してY−1副腎細胞アッセイで比較した。Y−1副腎細胞はマルチ−ウェル皿中の10%ウシ胎児血清を含むRPMI培地中で、粗大腸菌(E.coli)細胞溶解物の存在下でインキューベーションした。細胞毒性は前述のように監視した。この実験では、1毒性単位を一晩のインキューベーション後に75〜100%の細胞にラウンディングを生じるトキシンまたは上清の量と定めた。この実験結果を以下の表4に示す。
【0152】
【表4】

【0153】
この実験結果は、CT−CRMR25GおよびCT−CRMY30WAHの毒性が実質的に低減され、CT−CRMR25WおよびCT−CRMT48THの毒性が野生型CTの毒性の約30%であることを示した。理論に拘束されることなく、第2実験で生じた変異体は(表4)、第2実験で使用した大腸菌(E.coli)の細胞周辺粗抽出物が、ニックが入っていない突然変異CT−CRMsを含んだという事実に起因するかもしれない。別の原因は毒性が大腸菌(E.coli)により生産される野生型の、ニックが入っていないCTの毒性の割合として算出されたからかもしれない、ここで大腸菌(E.coli)に由来するニックが入っていない野生型CTは、同じY1細胞アッセイで6250pg/mlの50%細胞ラウンディング用量を有した(データは示さず)。対照的に第1実験では、突然変異CT−CRMsの残存毒性はコレラ菌(V.choleae)により生産される野生型のニックが入ったCTの毒性の割合として算出され、ここでニックが入ったホロトキシンは、同じY1細胞アッセイで125pg/mlの50%細胞ラウンディング用量を有した。結果として、第2実験で報告された残存毒性は第1実験で得られたものより50倍高かった。
【実施例4】
【0154】
ADP−リボシルトランスフェラーゼアッセイ
NAD:アグマチンADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、放射性標識したNADからの[カルボニル−14C]ニコチンアミドの放出として測定した。簡単に説明すると、CTおよびCT−CRMsはトリプシン活性化し、そして30℃で30分間、TEANバッファー(Tris/EDTA/アジ化ナトリウム/塩化ナトリウム)(pH8.0)中で50mM グリシン/20mM ジチオスレイトールとインキューベーションした。その後、反応に以下の材料を加えた:0.1μgのダイズトリプシンインヒビター、50mM リン酸カリウム、10mM アグマチン、20mM ジチオスレイトール、10mM 塩化マグネシウム、100μM GTP、3mM ジミリストイルホスファチジル−コリン、0.2%コレート、0.03mgの卵白アルブミン、100μM[アデニン−U−14C]NAD(デュポン(DuPont)NEN(商標)、ボストン、マサチューセッツ州)、そして水で300μlの最終容量とした。30℃で90分間インキューベーションした後、100μlのサンプルをAG1−X2(バイオ−ラッド)のカラム(0.64x5cm)に乗せ、これを1.0mlの蒸留した/脱イオン化HOで5回、洗浄した。[14C]ADP−リボシルアグマチンを含有する溶出物をラジオアッセイのために回収した。溶出物中の14Cの平均回収は、カラムに乗せたものに対する割合として表す。結果を表5に与える。
【0155】
【表5】

【0156】
ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、基質としてジエチルアミノ(ベンジリジン−アミノ)グアニジン(DEABAG)を使用して独立して測定した(Jobling,M.G.and Holmes,RK2001 J.Bacteriol.183(13):4024−32)。このアッセイでは、精製した細胞溶解物から突然変異CT−CRMsの25μlアリコート(30℃で30分間、1/50重量/重量%のトリプシンと活性化した)を、200μlの2mM DEABAGと0.1M KPO、pH7.5、10μM NAD、4mM DTT中で2時間インキューベーションした。反応は、400mgのDOWEX AG50−X8樹脂を含む800μlのスラリーバッファーを結合未反応基質に加えることにより止めた。上清のADP−リボシル化DEABAGはDEABAGでカリブレーションしたDyNA Quant蛍光計で蛍光の発光により定量した。突然変異CT−CRMG34GGPおよびCT−CRMY30WAHを除き、突然変異CT−CRMsのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、野生型よりも実質的に減少した(表6)。CT−CRMG34GGPおよびCT−CRMY30WAHで見られた高レベルのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、この実験で突然変異CT−CRMsのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性が異なるアッセイプロトコールで異なる基質を使用して測定されたという事実に因るのかもしれない。
【0157】
【表6】

【実施例5】
【0158】
型を分類できないインフルエンザ菌(HAEMOPHILUS INFLUENZAE)(NTHI)の組換えP4外側膜タンパク質(RP4)単独で、またはCT−CRMSと一緒に免疫感作したBALB/Cマウスの免疫応答
BALB/cマウス(6〜8週齢、5マウス/群)に、0、3および5週で塩水中の組換えP4タンパク質(rP4、5μg/用量)、あるいは野生型CT、CT−CRME29H、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25W
たはCT−CRMR25Gを一緒に配合して免疫感作あたり1.0μgの用量で免疫感作した。10μlの総容量を鼻内投与した(鼻孔あたり5μl)。マウスは血清抗体応答をアッセイするために0、2、3、4、5または6日に採血した。最後(6週)の免疫感作から1週間後、マウスは粘膜抗体応答を分析するために屠殺した。
【0159】
群間の有意差はTukey−Kramer HSD多比較試験(rP4タンパク質について)により、またはスチューデントt−検定(UspA2について)により、JMP(商標)統計探査ソフトウェア(SAS研究所社、カリー、ノースカロライナ州)を使用して測定した。
【0160】
0、3、5および6週の血清抗体の分析は、本明細書に開示する任意の突然変異体を1μg/用量の濃度で配合したNTHirP4タンパク質の免疫感作がrP4タンパク質に対する免疫応答を有意に誘導したことを示した。rP4タンパク質に対する全IgG免疫応答の規模は、配合にCT−CRM突然変異体を含めることにより約15〜35倍に上昇した。新規な突然変異トキシン(CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25G)間には、たとえそれらがすべてrP4タンパク質単独よりも有意に高いIgG力価を誘導しても、ステューデントt−検定により全抗−rP4 IgG力価の有意差は観察されなかった(表6)。IgA抗体の個々の血清分析は、配合rP4/CT−CRMR25Gのみが、塩水中のrP4タンパク質を受容した対照群よりもrP4タンパク質に対するIgA抗体の有意により高い力価を誘導したことを示した(表7)。各新規CT−CRM突然変異体の使用は、rP4タンパク質に対する血清IgGサブクラス抗体(IgG1、IgG2aおよびIgG2b)も強化した(表9)。
【0161】
抗−rP4タンパク質抗体応答も、プールした粘膜洗浄サンプル(SAL:唾液腺洗浄サンプル、BAL:気管肺胞洗浄サンプル、VW:膣洗浄サンプル)で分析した(表8)。予想どおり、rP4/塩水を免疫感作したマウスからのBALおよびNW中に抗体の誘導は無かった。しかしCT−CRMT48TH、CT−CRMY30WAHおよびCT−CRMR25Gの有力な粘膜アジュバント能力は明らかに証明可能であった。これらプールサンプルについて統計的分析を行うことができなかったが、幾つかの傾向が現れた。例えばCT−CRMT48TH、CT−CRMY30WAHおよびCT−CRMR25Gを受容したマウスは、試験した各唾液、BALおよびVWサンプル中に上昇したrP4特異的IgA抗体を示した。
【0162】
さらに抗−CT抗体応答も測定した。表7〜11に示すように、すべてのCT突然変異体が全身性および粘膜性のCT−特異的抗体応答を最後の免疫感作から1週間後に強化した。しかし上記実験におけるマウスは実験の完了後にマウス肝炎ウイルスに感染していると決定されたことに注目すべきである。
【0163】
【表7】

【0164】
a.メスBALB/cマウスにNTHi rP4(5μg)を0、3および5週に免疫感作した。IN vax=10μl
b.NTHi rP4免疫原は塩水または1μgの各コレラトキシン、CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gと配合した。
c.ウェルあたり0.2μgのNTHI rP4を用いてELISAを行い、そして0.1のOD405で終点力価を決定した。
d.血清サンプルは0、3、5および6週に集めた;プールしたサンプルは5のnを表す。
【0165】
【表8】

【0166】
a.メスBALB/CマウスにNTHi rP4(5μg)を0、3および5週に免疫感作した。IN vax=10μl
b.NTHi rP4免疫原は塩水または1μgの各コレラトキシン、CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gと配合した。
c.ウェルあたり0.2μgのNTHI rP4を用いてELISAを行い、そして0.1のOD405で終点力価を決定した。
d.粘膜サンプルは6週、1日に集めた;プールしたサンプルは5のnを表す。
【0167】
【表9】

【0168】
a.メスBALB/cマウスにNTHi rP4(5μg)を0、3および5週に免疫感作した。IN vax=10μl
b.NTHi rP4免疫原は塩水または1μgの各コレラトキシン、CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gと配合した。
c.ウェルあたり0.2μgのNTHI rP4を用いてELISAを行い、そして0.1のOD405で終点力価を決定した。
d.血清サンプルは0、3、5および6週に集めた;プールしたサンプルは5のnを表す。
【0169】
【表10】

【0170】
a.メスBALB/CマウスにNTHi rP4(5μg)を0、3および5週に免疫感作した。IN vax=10μl
b.NTHi rP4免疫原は塩水または1μgの各コレラトキシン、CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gと配合した。
c.ウェルあたり0.2μgのNTHI rP4を用いてELISAを行い、そして0.1のOD405で終点力価を決定した。
d.血清サンプルは0、3、5および6週に集めた;プールしたサンプルは5のnを表す。
e.*塩水対照と比べた有意差を示す;は他のIN群と比べた有意差を示す。
【0171】
【表11】

【0172】
a.メスBALB/CマウスにNTHi rP4(5μg)を0、3および5週に免疫感作した。IN vax=10μl
b.NTHi rP4免疫原は塩水または1μgの各コレラトキシン、CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WおよびCT−CRMR25Gと配合した。
c.ウェルあたり0.2μgのNTHI rP4を用いてELISAを行い、そして0.1のOD405で終点力価を決定した。
d.血清サンプルは0、3、5および6週に集めた;プールしたサンプルは5のnを表す。
e.*塩水対照と比べた有意差を示す;は他のIN群と比べた有意差を示す。
【実施例6】
【0173】
M.カタラーリス(CATARRHALIS)のUSPA2外膜タンパク質で免疫感作したBALB/Cマウスの免疫応答
この実験では、突然変異CT−CRMsがM.カタラーリス(catarrhalis)の自然なUspA2外膜タンパク質に対する全身性および粘膜性免疫応答を増す能力を調査した。BALB/Cマウス(6〜8週齢、5マウス/群)に、0、3および5週で免疫感作した。10μlの塩水中の精製されたUspA2(5μg/用量)単独、または0.1μg用量の野生型CTまたは突然変異CT−CRM(CT−CRME29H、CT−CRMR25W、CT−CRMR25G、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGPまたはCT−CRMY30WAH)を含む10μlの配合物を、0、2および4週にBalb/cマウスにIN(5μl/鼻孔)で投与した。0、2、4および6週の血清抗体の分析は、CT−CRMR25Gを除き任意の前記CT−CRM突然変異体を配合したUsp2での免疫感作が、0.1μg/用量の濃度でUspA2に対する抗体応答を強化したことを示した。UspA2に対する全IgG免疫応答の規模は、CT−由来の突然変異体を含めることにより約3〜10倍に上昇した。CT−CRMG34GGP、CT−CRME29Hまたは野生型CTは、スチューデントt−検定によりUspA2/PBSよりも有意に高いIgG力価を誘導した。しかし新規な各突然変異体トキシン(CT−CRME29H、CT−CRMT48TH、CT−CRMG34GGP、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25WまたはCT−CRMR25G)間の全抗−UspA2IgG力価に有意差は観察されなかった。CT−CRMR25Gを除き、各CT突然変異体の使用はUspA2に対する血清IgG1、IgG2aおよびIgGb抗体を強化した(表12)。
【0174】
抗−UspA2抗体応答は、プールした粘膜洗浄サンプルでも分析した(表13)。予想どおり、UspA2/PBSを免疫感作したマウスからの粘膜洗浄物中に抗体の誘導は観察されなかった。しかし各突然変異CTの有力な粘膜アジュバント能は明らかに証明された。これらプールサンプルについて統計的分析を行なわなかったが、幾つかの傾向が現れた。例えばCT−CRMG34GGPを受容したマウスには、集めた各気管肺胞洗浄液(BAL)、鼻洗浄液(NW)および膣洗浄液(VW)サンプル中にUspA2に対するIgGまたはIgA力価の上昇が示された(表13)。対照的にUspA2タンパク質に対する局所免疫応答のアジュバンティングにおいて、いずれの新規突然変異トキシンもCT−CRME29Hまたは野生型CTよりも良くないようであった。血清および粘膜洗浄液中のタンパク質−特異的IgGおよびIgAレべルも28日に調査した。すべての突然変異CTが強化された血清IgG抗体応答を誘導した(データは示さず)。気管、鼻および膣洗浄液中のIgGおよびIgAレべルも測定した。これらの洗浄液中にIgAは検出されず、そしてIgGは2〜3の洗浄液で検出されただけであった(表13)。この実験でマウスは、実験が完了した後にマウス肝炎ウイルスに感染していると決定された。
【0175】
【表12】

【0176】
*BALB/cマウス(5/群)は0、2、4週に鼻内に免疫感作した。
血清および粘膜洗浄液を6週に集めた。抗原用量は5μgであり、そしてアジュバント用量は動物あたり0.1μgであった。IgGサブクラスはプールした血清についてELISAにより測定した。
【0177】
【表13】

【0178】
*BALB/cマウス(5/群)は0、2、4週に鼻内に免疫感作した。
血清および粘膜洗浄液を6週に集めた。抗原用量は5μgであり、そしてアジュバント用量は動物あたり0.1μgであった。IgGおよびIgA力価はプールした血清についてELISAにより測定した。
【実施例7】
【0179】
突然変異トキシンコレラホロトキシンのアジュバント性
毒性、機能性および免疫原性の特徴が異なる突然変異CT−CRMsの総合的なパネルを作成するために、上記のCT−CRM突然変異体を粘膜アジュバントとして分析し、そして各突然変異体の毒性および酵素活性プロフィールを決定した。表14から18にまとめるように、すべての突然変異CT−CRMsが野生型CTに比べて有意に低減した毒性および酵素活性を有する。これらの遺伝的に解毒された突然変異CTsを、M.カタラーリス(catarrhalis)の自然なUspA2タンパク質に対する免疫応答を補助する(adjuvant)能力について評価した。
【0180】
実験は以下のように行った:BALB/cマウス(6〜8週齢、5マウス/群)は0、2および4週に、5μgの精製した自然なUspA2タンパク質(PBS中)で、または免疫感作あたり0.1または1.0μgの用量で野生型CTまたはCT−CRME29HまたはCT−CRMT48THまたはCT−CRMG34GGPまたはCT−CRMY30WAHまたはCT−CRMR25WまたはCT−CRMR25Gを共配合して(co−formulated)免疫感作した。10μlの全容量を鼻内に投与した(5μl/鼻孔)。マウスは血清抗体応答をアッセイするために0、2、4または6週に採血した。最後の免疫感作(6週)から2週間後、マウスは粘膜抗体応答を分析するために屠殺された。UspA2 ELISA力価はOD405で0.1の終点で測定した。群間の有意差はTukey−Kramer HSD多比較試験により、JMP(商標)統計探査ソフトウェア(SAS研究所社、カリー、ノースカロライナ州)を使用して測定した。
【0181】
CT−CRMsのアジュバント性は以下のようにまとめることができる。2、4および6週の血清IgGおよびIgA抗体は、CT−CRMR25Gを除き任意のCT−CRM突然変異体を1μg/用量で配合したUspA2タンパク質の免疫感作が、UspA2タンパク質に対する抗体応答を有意に強化したことを示した(表15)。UspA2タンパク質に対する全IgG免疫応答の規模は、CT−誘導突然変異体(CT−CRMR25Gを除く)を包含することにより約11〜68倍に上昇した(表16)。CT−CRMT48TH、CT−CRMY30WAH、CT−CRMR25W(1μg用量で)およびCT−CRMG34GGP(0.1μgおよび1μgの両方で)は、Tukey−Kramer分析によりUspA2/PBSよりも有意に高いIgGおよびIgA力価を誘導した。しかしCT−CRMR25Gを除き、各新規突然変異トキシン間で全抗−UspA2 IgG力価に有意差は観察されなかった(表16)。CT−CRMR25Gを除き、1μg用量での各CT突然変異トキシンの使用もUspA2に対する血清IgG1、IgG2aおよびIgG2b抗体を強化した(表17)。IgG1およびIgG2a/IgG2b力価の比率は約1.0であり、Th1/Th2型のバランスがとれた免疫応答を示した。
【0182】
抗−UspA2タンパク質抗体応答は、プールした粘膜洗浄サンプルでも分析した(表18)。予想どおり、UspA2/PBSを免疫感作したマウスからの粘膜洗浄液中に抗体の誘導は観察されなかった。しかし各突然変異CT−CRM(CT−CRMR25Gを除く)の有力な粘膜アジュバント能は明らかに証明された。粘膜サンプル中のほとんどで検出されるUspA2特異的粘膜IgA抗体が存在した。これらプールサンプルについて統計的分析を行なわなかったが、幾つかの傾向が現れた。例えばCT−CRMG34GGPまたはCT−CRMR25Wを受容したマウスには、集めた各気管肺胞洗浄液、鼻洗浄液および膣洗浄液サンプル中にUspA2タンパク質に対して上昇したIgGまたはIgA抗体が、野生型CTまたはCT−CRME29Hと同様に示された。
【0183】
これらCT−CRMsは、CT−CRMR25Gを除きM.カタラーリス(catarrhalis)のUspA2タンパク質に関する有力な粘膜アジュバントである。血清抗体データは、CT−CRMR25Gを除きすべてのCT−CRMsが1μg用量でCT−CRME29HとのようにUspA2タンパク質に対する免疫応答を等しく補助することができることを示した(表16)。0.1μg用量で、CT−CRMG34GGPは同じ用量のCT−CRME29Hよりも有力であると思われた(表16)。粘膜洗浄データは、CT−CRMR25Gを除きすべてのこれらCT−CRMsが有力な粘膜アジュバント特性を保持することを示唆しているようである(表18)。さらに表14に示すよう、それらすべてが野生型CTよりも有意に低い残存特性および酵素活性を有する。したがってこれらの突然変異CT−CRMsはさらに効果的な粘膜アジュバントである。
【0184】
【表14】

【0185】
【表15】

【0186】
BALB/cマウス(5群)に、0、2&4週に10μl容量でIN免疫感作した。血清を6週に集めた。UspA2 ELISA力価はOD405が0.1の終点で決定した。Tuke y−Kramer分析は以下を示した:1μg用量の各アジュバントは0.1μg用量の同じアジュバントから統計的に有意である(CT、CT−CRMG34GGPのIgGおよびCT−CRMR25GのIgAを除く)。アスタリスク(*)で報告した表16の結果は、UspA2/PBS群から統計的に有意である。脚注()で示した結果は、すべての0.1μg用量(CTを除く)および1μg用量のCT−CRMR25Gよりも統計的に有意に高い。脚注()で示した結果は、1μg用量のCT−CRMT48THを除き、すべての1μg用量よりも統計的に有意に低い。脚注()で示した結果は、0.1μg用量(CTを除く)および1μg用量のCT−CRMR25Gよりも統計的に有意に高い。脚注()で示した結果は、すべての1μg用量および0.1μg用量のCTおよびCT−CRMG34GGPよりも統計的に有意に低い。
【0187】
【表16】

【0188】
表17に報告する結果は、以下の実験に基づいた。5匹のメスBALB/cマウスの群に、0、2および4週に1μgCT(シグマ)またはCT突然変異体で補助したnUspA2を含有する10μLを鼻内に免疫感作した。終点抗体力価は6週で集めた血清から決定した。データを0.1のOD405を生じる逆希釈の幾何平均(±1)として表17に与える。Tukey−Kramerによる統計分析ではアスタリスク(*)で印を付けた結果がnUspA2/PBS群よりも有意に高いことを示した。
【0189】
【表17】

【0190】
表18のデータについて、BALB/cマウス(5/群)は0、2および4週に10μl容量をIN免疫感作した。粘膜洗浄サンプルを6週目に集めた。UspA2 ELISA力価は、DO405が0.1の終点で決定した。
【0191】
【表18】

【実施例8】
【0192】
RSウイルス(RSV)の精製した自然な融合(F)タンパク質で免疫感作したBALB/Cマウスの免疫応答
本発明の突然変異CT−CRMsがRSウイルス(RSV)タンパク質に対する粘膜免疫応答を増す能力を、精製された自然な融合(F)タンパク質を使用して調査した。
【0193】
自然なBALB/cマウス(8〜10週齢、5/群)に、0および3週にRSVの248/404株に由来する自然な精製された融合(F)タンパク質を免疫感作した(IN、10μl)。タンパク質(3μg/用量)を、1.0または0.1μgの示したCT−CRMを用いて混合物に調製した。対照マウスはCT−CRME29H単独と、野生型CTと、またはPBSと混合したFタンパク質で免疫感作した。ELISAにより終点の抗−Fタンパク質全およびサブクラスIgGおよびIgA力価を決定するために、血清(幾何平均力価±1標準偏差)および気管肺胞洗浄液(BAW)、鼻洗浄液(NW)および膣洗浄液(VW)を2回目の免疫感作から2週間後に集めた。粘膜洗浄液サンプルは終点力価を決定するためにプールした。
【0194】
2回の実験からの結果を表19および20に与える。
【0195】
【表19】

【0196】
【表20】

【0197】
本発明のCT−CRM突然変異体を1.0μg用量で粘膜アジュバントとして使用した時、突然変異CT−CRME29THまたは野生型CTの使用に類似する結果が得られた(表19)。CT−CRME29THまたは野生型CTと混合したFタンパク質で免疫感作した後に誘導された抗−Fタンパク質IgGまたはIgA力価から注目すべき差異は観察されなかった。しかし0.1μg用量で、CT−CRMT48TH、CT−CRMY30WAHおよびCT−CRMR25Gは、血清抗−Fタンパク質IgA力価を増すことがあまりできないようだった。本発明の突然変異体を配合したFタンパク質で免疫感作したマウスの粘膜洗浄液は、CT−CRME29Hまたは野生型CTを混合したFタンパク質により誘導される力価に匹敵するようだった(表20)。
【0198】
このように本発明のすべてのCT−CRM突然変異体はFタンパク質に関するアジュバント活性を有した。
【0199】
本明細書で引用したすべての刊行物および技術文献は、引用により本明細書に編入する。本発明を特定の好適な態様について記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく修飾を行うことができると考える。そのような修飾は特許請求の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型コレラトキシン(CT)のサブユニットAのアミノ酸配列を含んでなる免疫原性突然変異コレラホロトキシン(CT−CRM)であって、該サブユニットAがAサブユニットのアミノ酸25位に少なくとも単一アミノ酸置換を含んでなり、そして突然変異CT−CRMが野生型CTに比べて低減した毒性を有する、上記CT−CRM。
【請求項2】
Aサブユニットのアミノ酸25位のアミノ酸アルギニンが、トリプトファンまたはグリシンに置換されている、請求項1に記載CT−CRM。
【請求項3】
Aサブユニットのアミノ酸25位以外の1つのアミノ酸位で、コレラホロトキシンのAサブユニットに少なくとも1つのさらなる突然変異をさらに含んでなる、請求項1に記載のCT−CRM。
【請求項4】
上記のさらなる突然変異が:
(a)アミノ酸7位のアルギニン、アミノ酸9位のアスパラギン酸、アミノ酸11位のアルギニン、アミノ酸29位のグルタミン酸、アミノ酸44位のヒスチジン、アミノ酸53位のバリン、アミノ酸54位のアルギニン、アミノ酸61位のセリン、アミノ酸63位のセリン、アミノ酸70位のヒスチジン、アミノ酸97位のバリン、アミノ酸104位のチロシン、アミノ酸106位のプロリン、アミノ酸107位のヒスチジン、アミノ酸109位のセリン、アミノ酸110位のグルタミン酸、アミノ酸112位のグルタミン酸、アミノ酸114位のセリン、アミノ酸127位のトリプトファン、アミノ酸146位のアルギニンおよびアミノ酸192位のアルギニンからなる群から選択されるサブユニットAアミノ酸についての置換;
(b)Aサブユニットのアミノ酸49位の単一アミノ酸挿入、
(c)Aサブユニットのアミノ酸35位および36位の二重アミノ酸挿入、
(d)アミノ酸30位の単一アミノ酸置換、および
(e)Aサブユニットのアミノ酸31位および32位の二重挿入、
からなる群から選択される、請求項3に記載のCT−CRM。
【請求項5】
野生型コレラトキシン(CT)のサブユニットAのアミノ酸配列を含んでなる免疫原性突然変異コレラホロトキシン(CT−CRM)であって、該サブユニットAがAサブユニットのアミノ酸35および36位に少なくとも1つの二重アミノ酸挿入を含んでなり、そして突然変異CT−CRMが野生型CTに比べて低減した毒性を有する、上記CT−CRM。
【請求項6】
アミノ酸グリシンおよびプロリンが、野生型アミノ酸34位と35位の間でAサブユニットのアミノ酸35及び36に挿入されている、請求項5に記載のCT−CRM。
【請求項7】
Aサブユニットのアミノ酸35位および36位以外の1つのアミノ酸位で、コレラホロトキシンのAサブユニット中に少なくとも1つのさらなる突然変異をさらに含んでなる、請求項5に記載CT−CRM。
【請求項8】
上記のさらなる突然変異が:
(a)アミノ酸7位のアルギニン、アミノ酸9位のアスパラギン酸、アミノ酸11位のアルギニン、アミノ酸29位のグルタミン酸、アミノ酸44位のヒスチジン、アミノ酸53位のバリン、アミノ酸54位のアルギニン、アミノ酸61位のセリン、アミノ酸63位のセリン、アミノ酸70位のヒスチジン、アミノ酸97位のバリン、アミノ酸104位のチロシン、アミノ酸106位のプロリン、アミノ酸107位のヒスチジン、アミノ酸109位のセリン、アミノ酸110位のグルタミン酸、アミノ酸112位のグルタミン酸、アミ
ノ酸114位のセリン、アミノ酸127位のトリプトファン、アミノ酸146位のアルギニンおよびアミノ酸192位のアルギニンからなる群から選択されるサブユニットAアミノ酸についての置換;
(b)Aサブユニットのアミノ酸25位の単一アミノ酸挿入、
(c)Aサブユニットのアミノ酸49位の単一アミノ酸挿入、
(d)アミノ酸30位の単一アミノ酸置換、および
(e)Aサブユニットのアミノ酸31位および32位の二重挿入、
からなる群から選択される、請求項7に記載のCT−CRM。
【請求項9】
野生型コレラトキシン(CT)のサブユニットAのアミノ酸配列を含んでなる免疫原性突然変異コレラホロトキシン(CT−CRM)であって、該サブユニットAがAサブユニットのアミノ酸30位に少なくとも単一アミノ酸置換およびアミノ酸31位および32位に1つの二重アミノ酸挿入を含んでなり、そして突然変異CT−CRMが野生型CTに比べて低減した毒性を有する、上記CT−CRM。
【請求項10】
Aサブユニットのアミノ酸30位のアミノ酸チロシンがトリプトファンに置換され、そしてアミノ酸アラニンおよびヒツジンが野生型アミノ酸30位と31位の間でAサブユニットのアミノ酸31位および32位に挿入されている、請求項9に記載のCT−CRM。
【請求項11】
Aサブユニットのアミノ酸30位,31位および32位以外の1つのアミノ酸位で、コレラホロトキシンのAサブユニット中に少なくとも1つのさらなる突然変異をさらに含んでなる、請求項9に記載CT−CRM。
【請求項12】
上記のさらなる突然変異が:
(a)アミノ酸7位のアルギニン、アミノ酸9位のアスパラギン酸、アミノ酸11位のアルギニン、アミノ酸29位のグルタミン酸、アミノ酸44位のヒスチジン、アミノ酸53位のバリン、アミノ酸54位のアルギニン、アミノ酸61位のセリン、アミノ酸63位のセリン、アミノ酸70位のヒスチジン、アミノ酸97位のバリン、アミノ酸104位のチロシン、アミノ酸106位のプロリン、アミノ酸107位のヒスチジン、アミノ酸109位のセリン、アミノ酸110位のグルタミン酸、アミノ酸112位のグルタミン酸、アミノ酸114位のセリン、アミノ酸127位のトリプトファン、アミノ酸146位のアルギニンおよびアミノ酸192位からなる群から選択されるサブユニットAアミノ酸についての置換;
(b)Aサブユニットのアミノ酸25位の単一アミノ酸挿入、
(c)Aサブユニットのアミノ酸49位の単一アミノ酸挿入、
(d)Aサブユニットのアミノ酸35位および36位の二重挿入、
からなる群から選択される、請求項11に記載のCT−CRM。
【請求項13】
突然変異ホロトキシンが脊椎動物宿主において抗原に対する免疫応答を強化する、請求項1ないし12のいずれかに記載の突然変異コレラホロトキシン(CT−CRM)を含んでなる免疫原性組成物。
【請求項14】
さらにタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質に由来する断片を含んでなる選択される抗原を含んでなる請求項13に記載の組成物であって、選択される抗原が病原性細菌、ウイルス、真菌または寄生生物、ガン細胞、腫瘍細胞、アレルゲンおよび自己−分子からなる群の員に由来する上記組成物。
【請求項15】
選択される抗原が、型に分類できる、および型に分類できないインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス ソムナス(Haemophilus sommus)、モラクセラ カタラーリス(Moraxella cat
arrhalis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス アガラクティー(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス フェカリス(Streptococcus faecalis)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、トラコーマ クラミジア(Chlamydia trachomatis)、クラミジア肺炎菌(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア シッタキ(Chlamydia psittaci)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、アロイオコッカス オチジティス(Alloiococcus otiditis)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、豚コレラ菌(Salmonella
choleraesuis)、大腸菌(Escherichi coli)、シゲラ(Shigella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptherieae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、トリ型結核菌(Mycobacterium
avium)マイコバクテリウム イントラセルラー(Mycobacterium
intracellulare)コンプレックス、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabillis)、プロテウス ベルガリス(Proteus vulgaris)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、レプトスピラ インターロガンス(Leptospira interrogans)、ボレリア ブルグドルフェリ(Borrelia
burgdorferi)、パスツレラ ヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバチルス プレウロニューモニア(Actinobacillus pleauropneumoniae)およびマイコプラズマ ガリスセプチム(Mycoplasma galliseptium)からなる細菌種に由来する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
抗原がインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)P4外膜タンパク質、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)P6外膜タンパク質、およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)接着および浸透タンパク質(Haps)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)ウレアーゼタンパク質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)グループB組換えクラス1ピリン(rpilin)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)グループBクラス1外膜タンパク質(PorA)からなる群から選択される、請求項15に記載の抗原性組成物。
【請求項17】
選択される抗原が、RSウイルス、パラインフルエルザウイルス1、2、3型、ヒト メタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト パピローマウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、カリシウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、アデノウイルス、狂犬病ウイルス、イヌジステンバーウイルス、牛疫ウイルス、鳥気管支ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、コロナウイルス、パルボウイルス、感染性鼻気管支ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、鳥感染性ファブリキウス病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、ブタ呼吸および生殖症候群ウイルス、ウマ動脈炎ウイルスおよび脳炎ウイルスからなるウイルス種から選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
選択される抗原が、RSウイルス融合タンパク質、および単純ヘルペスウイルス(HSV)2型糖タンパク質D(gD2)からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
選択される抗原が、アスペルギルス属(Aspergillis)、ブラストマイセス属(Blastomyces)、カンジダ属(Candida)、コクシジオイデス属(Coccidiodes)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)およびヒストプラスマ属(Histoplasma)からなる病原性真菌の群から選択される真菌に由来する請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
選択される抗原が、リューシュマニア メジャー(Leishmania major)、回虫属(Ascaris)、鞭虫属(Trichuris)、ジアルジア属(Giardia)、住血吸虫属(Schistosoma)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、トリコモナス属(Trichomonas)、トキソプラズマ ゴンジー(Toxoplasma gondii)およびニューモシスティス カリニ(Pneumocyctis carinii)からなる病原性寄生生物の群から選択される寄生生物に由来する請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
選択される抗原が、前立腺特異的抗原、癌−胎児性抗原、MUC−1、Her2、CA−125、MAGE−3、ホルモンおよびホルモン類似体からなる群から選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
選択される抗原が、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイド前駆体タンパク質の42アミノ酸断片であるAβペプチド、またはAβペプチドの断片からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
さらに希釈剤、賦形剤または担体を含んでなる請求項13に記載の組成物。
【請求項24】
突然変異コレラホロトキシンに加えて第2のアジュバントをさらに含んでなる請求項13に記載の組成物。
【請求項25】
有効成分として請求項1ないし12いずれかに記載の突然変異コレラホロトキシン(CT−CRM)を含んでなる抗原に対する脊椎動物宿主の免疫応答を強化するための製薬学的製剤。
【請求項26】
請求項1ないし12のいずれかに記載の免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードする単離され、そして精製された核酸分子。
【請求項27】
宿主細胞中で上記突然変異ホロトキシンの発現を可能とする調節配列をさらに含んでなり、この配列は該ホロトキシンをコードする配列に操作可能に連結されている、請求項26に記載の分子。
【請求項28】
免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードする配列が宿主細胞中で該突然変異ホロトキシンの発現を可能とする調節配列に操作可能に連結されている、請求項1ないし12のいずれかに記載の免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードする単離され、そして精製された核酸配列を含んでなる核酸分子で形質転換、形質導入、感染またはトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項29】
コレラホロトキシンが野生型コレラホロトキシンに比べて低減した毒性を有する免疫原
性突然変異コレラホロトキシンの生産方法であって、請求項1ないし12のいずれかに記載の免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードする単離され、そして精製された核酸配列を含んでなる核酸分子で形質転換、形質導入、感染またはトランスフェクションされた宿主細胞を培養することを含んでなり、免疫原性突然変異コレラホロトキシンをコードする配列が、宿主細胞中による該免疫原性突然変異コレラホロトキシンの発現を可能とする条件下で該宿主細胞中での該突然変異ホロトキシンの発現を可能とする調節配列に操作可能に連結されている上記方法。
【請求項30】
抗原に対する脊椎動物宿主の免疫応答を強化するための薬剤の調製における、病原性細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、ガン細胞、腫瘍細胞、アレルゲン、自己−分子または脊椎動物抗原から選択される該抗原と組み合わせた請求項1ないし12のいずれかに記載の突然変異コレラホロトキシンの有効アジュバント量での使用。

【公開番号】特開2009−112301(P2009−112301A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256366(P2008−256366)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願2003−501411(P2003−501411)の分割
【原出願日】平成14年6月5日(2002.6.5)
【出願人】(591000791)ワイス・ホールディングズ・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth Holdings Corporation
【出願人】(503447575)ガバメント・オブ・ザ・ユナイテツド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテイド・バイ・ザ・ユニフオームド・サービシズ・ユニバーシテイ・オブ・ザ・ヘルス・サイエンシズ (1)
【Fターム(参考)】