説明

アスベスト回収方法及び装置

【課題】アスベストの除去とその回収作業に際して空気の特性を充分発揮させることで、作業者への作業負担を可及的に軽減するとともに、アスベストの除去及び回収に必要な構造や設備を簡素化して、効率の良いアスベスト回収装置を提供する。
【解決手段】アスベスト除去ヘッド2が高圧空気発生器4からの圧縮空気の供給を受けて、回転ブラシ部10が回転駆動される。回転ブラシ部10に設けられる剥離用ブラシ11で、下地コンクリート部Cに施工されているアスベストAを剥離しアスベスト片aに破砕する。吸引回収機構3を構成する負圧吸引機6からの負圧がアスベスト吸引ホース7を通じてアスベスト除去ヘッド2に作用しており、アスベスト片aは、アスベスト除去ヘッド2内を通してアスベスト吸引ホース7に吸引され、アスベスト圧縮回収機8に回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、建物の壁や天井に吹き付け施工されているアスベストを施工面から剥離して回収するアスベスト回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)については、労働安全衛生法等により吹付けが原則禁止されるとともに、現在では、青石綿・茶石綿その他の石綿の製造・使用等が禁止され、最近では極一部を除いて全面的な石綿製品の製造・使用等が禁止されている。しかしながら、禁止に至るまでは建築物や輸送機関に使用されてきた。特に建物においては、壁面又は天井における耐火材、断熱材及び防音材等として使用されてきており、アスベストが用いられている建物が現在でも数多く存在している。今後は、特に既存建築物の解体工事が増大することが見込まれている。
【0003】
このような解体工事等におけるアスベストの取扱についてアスベストの封じ込め等を行うように注意喚起がなされている。従来の建物等の解体工事におけるアスベストの除去、特に吹付アスベストの除去に際しては、アスベスト(或いはダイオキシン類)が飛散することを防止して、作業能率の向上及び作業者の健康面の配慮が図られている。そうした配慮としては、予め飛散防止剤を吹き付けてアスベストを湿潤化しておき、湿潤化されたアスベストをケレン棒等により壁面部分又は天井部分から剥離させ、その剥離されたアスベストを固化した状態で廃棄することが行われている。また、作業者は、アスベストに曝されることなく或いはアスベストを吸い込まないように、アスベスト防護服やマスクを装着して作業することが求められている。
【0004】
しかしながら、このようなアスベストの除去作業は、建物又は部屋を外部に対して密封した上でケレン棒等を使用してアスベストを破砕・剥離することで実施されている。そのため、作業者の手作業による負担が大きいと共に、作業者の健康面からすればアスベストが飛散する環境内で長時間作業することは回避すべきであり、結果として作業期間が長くなって、作業能率が低いものとなっている。
【0005】
アスベストの除去に際して、アスベストを湿潤させた後、且つ剥離させる前に、アスベストを冷却して凍結させることで、アスベストを凍結した塊の状態で剥離し、飛散を防止し、アスベストの回収を容易にすることが提案されている。
【特許文献1】特開2006−348704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、アスベストの除去とその回収作業に際して、アスベスト除去の駆動力を得る作動流体として、及び除去されたアスベストを吸い込み回収する流体として、空気の特性を充分発揮させる点で解決すべき課題がある。
【0007】
この発明の目的は、アスベストの除去とその回収作業に際して空気の特性を充分発揮させることで、作業者への作業負担を可及的に軽減するとともに、アスベストの除去及び回収に必要な構造や設備を簡素化して、効率の良いアスベスト回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明によるアスベスト回収装置は、剥離用ブラシを有し空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動される回転ブラシ部と、先端作業面側と反対側に設けられており前記剥離用ブラシで剥離されたアスベストを送出する送出部とを有するアスベスト除去ヘッド、及び前記アスベスト除去ヘッドの前記送出部に接続されて剥離されたアスベストを吸引する吸引装置と、吸引されたアスベストを回収する回収装置とを有する吸引回収機構を備えている。
【0009】
また、この発明によるアスベスト回収方法は、空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動されるアスベスト除去ヘッドの剥離用ブラシでアスベストを剥離し、剥離されたアスベストを、前記アスベスト除去ヘッドの中央部を通して、前記アスベスト除去ヘッドに繋がる吸引回収機構によって回収することから成っている。
【0010】
このアスベスト回収方法及び装置によれば、アスベスト除去ヘッドをアスベスト施工個所に適用することで、空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動される回転ブラシ部が駆動され、剥離用ブラシが駆動されるときの動きによってアスベストをその施工面から剥離する。剥離用ブラシで剥離されたアスベストは、先端作業面側と反対側に設けられている送出部によってアスベスト除去ヘッドから送出される。アスベスト除去ヘッドの送出部に接続されている吸引回収機構の吸引装置は剥離されたアスベストを吸引し、回収装置は当該吸引装置を通して吸引されたアスベストを回収する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によるアスベスト回収方法及び装置は、上記のように構成されているので、アスベストの除去とその回収作業に際して、作動流体として空気の流れを用いてアスベスト剥離用の駆動力を得ており、剥離されたアスベストを空気の流れを用いて吸引し回収している。しかも、アスベスト除去ヘッドの先端作業面側で駆動される剥離用ブラシでアスベストがその施工面から剥離され、剥離されたアスベストは空気とともに、アスベスト除去ヘッドを通して流れてアスベスト除去ヘッドの先端作業面側と反対側に設けられている送出部から送出される。したがって、アスベストの除去とその回収作業に際して空気の特性を充分発揮させることで、アスベスト除去ヘッドに駆動源として電気モータ等の重量のある装置を用いるのとは異なり、アスベスト除去ヘッドが軽量化されて作業者への作業負担が可及的に軽減するとともに、アスベストの除去及び回収に必要な設備が簡素化して、効率の良いアスベスト除去・回収装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付した図面に基づいて、この発明によるアスベスト回収装置の実施例を説明する。図1はこの発明によるアスベスト回収装置の一実施例を説明する全体概略図、図2は図1に示すアスベスト除去ヘッド2の詳細立面図であり、図3はアスベスト除去ヘッド2の詳細平面図である。
【0013】
図1に示すアスベスト回収装置1は、天井壁である下地コンクリート部Cの表面を施工面として、吹き付け施工されたアスベスト(吹き付けアスベスト)Aを除去し回収するのに適用された状態を示している。アスベスト回収装置1は、下地コンクリート部CからアスベストAを剥離して除去するアスベスト除去ヘッド2と、アスベスト除去ヘッド2によよって剥離され除去されたアスベストを吸引し回収する吸引回収機構3を備えている。
【0014】
高圧空気発生器4が発生させた高圧空気は、高圧空気導入ホース5,5を通じてアスベスト除去ヘッド2に供給される。この例では、高圧空気導入ホース5は2本設けられており、アスベスト除去ヘッド2の直径方向に互いに離れた部分で導入されている。アスベスト除去ヘッド2への導入部分は、周方向に等間隔に並べばよく、2個所に限られない。また高圧空気導入ホース5,5は、別々にアスベスト除去ヘッド2に接続させることもなく、途中まで束ねて、或いは図示しないがアスベスト除去ヘッド2から延びてアスベスト除去ヘッド2を操作する操作稈に沿わせて配置することもできる。
【0015】
アスベスト除去ヘッド2には、負圧吸引機6が発生させる負圧がアスベスト吸引ホース7を通じて作用する。負圧吸引機6には、アスベスト吸引ホース7との間においてアスベスト圧縮回収機8が接続されている。アスベスト圧縮回収機8は、アスベスト吸引ホース7を通じて吸引されるアスベスト片aをフィルタによって捉え、アスベスト片aはフィルタのところで圧縮された状態でコンパクトに回収される。負圧吸引機6とアスベスト圧縮回収機8とは本発明における吸引回収機構3を構成している。
【0016】
図2及び図3に示すように、アスベスト除去ヘッド2は、剥離用ブラシ11を有しており空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動される回転ブラシ部10と、先端作業面側と反対側に設けられており剥離用ブラシ11で剥離されたアスベストを送出する送出部12とを有している。回転ブラシ部10はその周囲がケーシング13の上半分で囲まれており、送出部12はケーシング13の下半分内に形成されている。アスベスト吸引ホース7は、送出部12に連通するように、ケーシング13の基端部(最深部)において接続されている。
【0017】
アスベスト除去ヘッド2の回転ブラシ部10は、高圧空気導入ホース5,5からの空気流れの供給を接線方向に受けてヘッド2内で横回転駆動される回転シロッコファン14を有している。回転シロッコファン14は、縦回転軸16と、縦回転軸16から径方向に延びる複数本のステー15を介して縦回転軸16を中心として支持された環状ファン部17とを有している。軸固定用筒部22がケーシング13に対して十字状に配設したステー23を介して回転シロッコファン14の中心位置で支持されている。回転シロッコファン14は、縦回転軸16と環状ファン部17をそれぞれ、軸固定用筒部22内とケーシング13の内部に対して上から落とし込んで収容させ、縦回転軸16を軸固定用筒部22に対して抜け出さないように止めピン18によって固定することで、ケーシング13内に組み付けることができる。環状ファン部17の内側は、剥離したアスベストを送出部に送って吸引するために、通路部19となっている。即ち、通路部19は回転シロッコファン14を貫通する形態で形成されている。アスベスト除去ヘッド2の送出部12は、環状ファン部17の内側に形成されている通路部19を通して前記先端作業面側と連通している。ステー23は、回転シロッコファン14の送出部12側に十字状に設けられているが、通路部19の通路面積を減らさないような形状、配置とされている。なお、回転シロッコファン14は、例えば直径20cm程度の大きさとすることができる。
【0018】
回転シロッコファン14の先端作業面側には、剥離用ブラシ11が縦回転軸16と平行な方向に延びるように立設されている。剥離用ブラシ11は、特に図3に示すように、回転シロッコファン14の径方向外側から内側に向かって延びる弓形アーム20の配列に従って配置されている。各剥離用ブラシ11は、ワイヤ又はその束として、弓形アーム20上の所定間隔を置いた位置に、縦回転軸16と平行な方向に並んで立設されている。弓形アーム20は複数本が周方向に略等間隔に配置されているのが好ましい。弓形アーム20の湾曲の方向は、回転シロッコファン14の回転方向に対して凹となる方向とされている。この湾曲配列によって、剥離用ブラシ11で剥離されたアスベスト片に対して、回転シロッコファン14の径方向内側に寄せ集める作用が与えられる。径方向内側に寄せ集められたアスベスト片は、通路部19を通じて送出部12に吸引される。
【0019】
ケーシング13の端部には、アスベストの飛散を防止するため、剥離用ブラシ11を内側に取り囲む態様で飛散防止スカート21が設けられている。飛散防止スカート21は、ゴム等の柔軟性のある材質によって形成されている。
【0020】
アスベスト除去ヘッド2のケーシング13には、直径方向に対向した2カ所に高圧空気導入ホース5,5がケーシング13の外部から内部へと接線方向に開口する態様で取り付けられており、ここから圧縮エアが回転シロッコファン14に吹き付けられる。エアの吹き付けにより、回転シロッコファン14が高速回転し、それに伴って回転シロッコファン14に固定されている剥離用ブラシ11も高速回転する。下地コンクリート部C吹き付け施工されたアスベストAは、剥離用ブラシ11の回転によりアスベスト片a(図1)に破砕されて掻き剥がされる。
【0021】
高圧空気導入ホース5,5からの一次空気air1としての空気吹出し量よりも、アスベスト吸引ホース7を通じての空気吸込み量は多くなるように設定されている。また、飛散防止スカート21が剥離部の周囲を覆っている。したがって、外部から飛散防止スカート21と天井との間に形成される隙間及び回転シロッコファン14を通して、二次空気air2がアスベスト除去ヘッド2内に取り込まれる。アスベスト吸引ホース7を通じての空気吸込み量は一次空気air1と二次空気air2との合計となる。したがって、剥離用ブラシ11の回転により掻き落とされたアスベスト片aは、アスベスト除去ヘッド2の周囲に飛散することなく、通路部19、送出部12、アスベスト吸引ホース7を通じて除去される。この際、アスベスト片を含む空気の流れは真っ直ぐに直接にアスベスト吸引ホース7に吸い込まれていくので、吸引効率が高くなり、また、アスベスト除去ヘッドの構造も簡素化が進められる。
【0022】
吸引されたアスベストを圧縮して回収するアスベスト圧縮回収機8は、1段目プレフィルタ9aを備えた回収ボックスであり、アスベストを0.3μm以上 99.97%(事実上の100%)回収後、3分の1に圧縮される。アスベスト圧縮回収機8で所定の量のアスベストを回収した場合には、袋の包装体Pとして取り出してそのまま廃棄処分される。負圧吸引機6には、アスベスト圧縮回収機8の1段目プレフィルタ9aを通して吸引された空気を更に濾過する二段目プレフィルタ9bを備えており、吸い込み空気を一段目及び二段目のプレフィルタ9a,9bで二段階に濾過することでアスベスト粉の外部への漏れ防止を図っている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明によるアスベスト回収装置の一実施例を説明する全体概略図である。
【図2】図1に示すアスベスト除去ヘッド2の詳細立面図である。
【図3】図1に示すアスベスト除去ヘッド2の詳細平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 アスベスト回収装置 2 アスベスト除去ヘッド
3 吸引回収機構 4 高圧空気発生器
5 高圧空気導入ホース 6 負圧吸引機
7 アスベスト吸引ホース 8 アスベスト圧縮回収機
10 回転ブラシ部 11 剥離用ブラシ
12 送出部 13 ケーシング
14 回転シロッコファン 15 ステー
16 縦回転軸 17 環状ファン部
18 止めピン 19 通路部
20 アーム 21 飛散防止スカート
22 軸固定用筒部 23 ステー
C 下地コンクリート部 A アスベスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離用ブラシを有し空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動される回転ブラシ部と、先端作業面側と反対側に設けられており前記剥離用ブラシで剥離されたアスベストを送出する送出部とを有するアスベスト除去ヘッド、及び前記アスベスト除去ヘッドの前記送出部に接続されて剥離されたアスベストを吸引する吸引機と、吸引されたアスベストを回収する回収機とを有する吸引回収機構を備えたアスベスト回収装置。
【請求項2】
前記アスベスト除去ヘッドの前記回転ブラシ部は前記空気流れの供給を受けて前記ヘッドの縦回転軸回りに横回転駆動される環状ファン部を有する回転シロッコファンを備えており、前記剥離用ブラシは前記回転シロッコファンに対して前記先端作業面側に設けられており、前記送出部は前記環状ファン部の内側に形成されている通路部を通して前記先端作業面側と連通していることから成る請求項1に記載のアスベスト回収装置。
【請求項3】
前記剥離用ブラシは、前記回転シロッコファンの径方向外側から内側に向かって延びる配列上で、前記縦回転軸に平行な方向に立設されていることから成る請求項2に記載のアスベスト回収装置。
【請求項4】
前記配列は前記回転シロッコファンの回転方向に対して凹となる弓状湾曲していることから成る請求項3に記載のアスベスト回収装置。
【請求項5】
前記アスベスト除去ヘッドは前記回転シロッコファンの周囲と基端側とを囲み且つ内部に前記送出部が形成されるケーシングを備えており、前記縦回転軸は前記ケーシングに立設されていることから成る請求項2〜4のいずれか1項に記載のアスベスト回収装置。
【請求項6】
前記剥離用ブラシを駆動する前記空気流れは圧縮空気であり、前記固定ケーシングには前記圧縮空気の導入管が前記固定ケーシングの内部に開口する態様で取り付けられていることから成る請求項5に記載のアスベスト回収装置。
【請求項7】
前記固定ケーシングには、アスベストの飛散を防止するため、前記剥離用ブラシを内側に取り囲む態様で飛散防止スカートが設けられていることから成る請求項5又は6に記載のアスベスト回収装置。
【請求項8】
前記吸引回収機構は、前記吸引機として前記送出部に吸引作用を及ぼす負圧吸引機と、吸引経路に設けられていて吸引されたアスベストを圧縮して回収するアスベスト圧縮回収機とを備えることから成る請求項1〜7のいずれか1項に記載のアスベスト回収装置。
【請求項9】
空気流れの供給を受けて先端作業面側で駆動されるアスベスト除去ヘッドの剥離用ブラシでアスベストを剥離し、剥離されたアスベストを、前記アスベスト除去ヘッドの中央部を通して、前記アスベスト除去ヘッドに繋がる吸引回収機構によって回収することから成るアスベスト回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−267011(P2008−267011A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112216(P2007−112216)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(506367216)株式会社 三浦組 (2)
【Fターム(参考)】