説明

アズルミン酸炭化物及びその製造方法

【課題】生産性及び経済性が高められた、アズルミン酸炭化物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】アズルミン酸を不活性ガス雰囲気下、反応器中で加熱処理することにより、アズルミン酸炭化物を製造する方法において、反応器中における不活性ガスの平均滞留時間が0.5分以上となるようにアズルミン酸を加熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アズルミン酸炭化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料は、従来、吸着材等として主に使用されていたが、導電性等の電子材料物性、高い熱伝導率、低い熱膨張率、軽さ、耐熱性等の基本的な性質を持つために幅広い用途が検討されるようになってきている。特に最近では、その電子材料物性が着目されており、リチウムイオン二次電池負極、キャパシタ用電極等の電子材料分野での使用、あるいは、その検討が為されている。
【0003】
近年になって、かかる炭素材料に窒素元素を含有させて炭素材料の物性の幅をさらに広げて発展させようとする種々の試みが報告されている。例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド、ポリアニリン、ポリピロール、フタロシアニンとフラン樹脂前駆体との混合物、ポリアクリロニトリル等を炭化させる方法が提案されている。
【0004】
これらに対し、本発明者らは、アズルミン酸を炭化させることによって、多くの窒素を含有した窒素含有炭素材料が得られることを見出している(特許文献1参照)。また、本発明者らは、得られた窒素含有炭素材料がリチウムイオン二次電池の電極、キャパシタの電極、燃料電池の電極として優れた機能を有することを見出し(特許文献2参照)、さらには、水素吸蔵能力をも有することをも見出している(特許文献3参照)。
【0005】
吸着材、触媒担体、キャパシタ等の用途においては、比表面積が大きいことが好ましい。本発明者らは、図3に示すように、アズルミン酸から不活性ガス雰囲気中で焼成して炭化物を製造し、続いて二酸化炭素や水蒸気雰囲気中で焼成して賦活するという二段の工程を経ることによって、大きな比表面積を有する窒素含有炭素材料が得られることを見出している(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/043311号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/123380号パンフレット
【特許文献3】特開2008−239419号公報
【特許文献4】特開2008−239418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の製法では、大きな比表面積を有するアズルミン酸炭化物を製造するためにアズルミン酸を加熱処理する工程と、続いて得られた加熱処理物を賦活する工程との二段の工程を行う必要がある。そのため、大量生産及び工業化を推進する観点から、生産性及び経済性の改善が切望されていた。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性及び経済性が高められた、アズルミン酸炭化物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定条件下でアズルミン酸を加熱処理することによって、驚くべきことに、この加熱処理のみで大きな比表面積を有するアズルミン酸炭化物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
(1)アズルミン酸を不活性ガス雰囲気下、反応器中で加熱処理することにより、アズルミン酸炭化物を製造する方法において、反応器中における不活性ガスの平均滞留時間が0.5分以上となるようにアズルミン酸を加熱処理することを特徴とする、アズルミン酸炭化物の製造方法。
(2)上記(1)に記載の製造方法により製造されたアズルミン酸炭化物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱処理のみの一段の工程によって、アズルミン酸から大きな比表面積を有するアズルミン酸炭化物を製造することができる。したがって、従来において必須とされていた賦活工程を省略することができ、これにより、工程数の減少及び設備の簡易化が図られるので、生産性及び経済性が飛躍的に高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
図1は、本実施形態のアズルミン酸炭化物の製造方法を説明するための工程図である。
図1に示すように、本実施形態のアズルミン酸炭化物の製造方法は、青酸を重合する工程S10と、アズルミン酸を不活性ガス雰囲気下で加熱処理してアズルミン酸炭化物を製造する工程S12とを有するものである。ここで、「アズルミン酸」とは、主として青酸(シアン化水素)を重合して得られる重合物の総称である。以下、各工程を詳述する。
【0014】
まず、工程S10において、主として青酸を含む原料を重合してアズルミン酸を得る。
工程S10で用いる青酸は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、青酸は、プロピレン、イソブチレン、tert−ブチルアルコール、プロパン又はイソブタン等をアンモニア又は酸素含有ガス等と触媒存在下で反応させる気相接触反応によってアクリロニトリルやメタクリロニトリルを製造する方法において副生される。この方法によれば、青酸を非常に安価に得ることが可能である。なお、この種の気相接触反応は従来公知の反応であるため、その反応条件も公知のものであればよい。また、青酸を増産するために、例えば、アンモ酸化反応によって青酸を生成するような原料(例えば、メタノール等)を、反応器に供給してもよい。
また、青酸は、天然ガスの主成分であるメタンをアンモニアおよび酸素含有ガスと触媒存在下で反応させるアンドリュッソー法によって生成される。この方法においても、メタンを用いるため、青酸を非常に安価に得ることが可能である。
もちろん、青酸は、青化ソーダ等を用いる実験室的な製造方法によっても生成され、このようにして得られたものも用いることができるが、青酸を多量且つ安価に製造できる観点から、上記の工業的に製造されたものを用いることが好ましい。
【0015】
工程S10において、主として青酸を含む原料を重合して、黒色から黒褐色の重合物であるアズルミン酸が得られる。ここで、高純度のアズルミン酸を得る観点から、上記原料の全体量に対して、青酸以外の重合性物質の存在比が、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。言い換えると、上記原料中の青酸の存在比は、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0016】
なお、アズルミン酸は、青酸及び場合によっては少量のそれ以外の重合性物質を種々の方法で重合させることにより製造することができる。
重合方法としては、例えば、液化青酸や青酸水溶液を加熱する方法、それらを長時間放置する方法、それらに塩基を添加する方法、それらに光を照射する方法、それらに高エネルギーの放射をする方法、それらの存在下で種々の放電を行う方法、シアン化カリウム水溶液の電気分解が挙げられる。その他、例えば、Angew.Chem.72巻、p379−384(1960年)及びその引用文献、あるいは、真空科学、16巻、p64−72(1969年)及びその引用文献に記載の公知の方法を例示することができる。
【0017】
液化青酸や青酸水溶液に塩基を添加してその塩基の存在下に青酸を重合させる方法において、上記塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、有機塩基、アンモニア、アンモニア水などを例示することができる。有機塩基としては、例えば、一級アミンRNH、二級アミンRNH、三級アミンRN、四級アンモニウム塩Rが挙げられる。ここで、R、R、R、Rは、互いに同一又は異なってもよい炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、又はこれらが結合して得られる基を示し、これらはさらに置換基を有していてもよい。これら有機塩基の中でも、脂肪族又は環式脂肪族の第三級アミンが好ましい。そのような第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、N−メチルピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)が挙げられる。上記例示した塩基は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、アズルミン酸は、プロピレン等のアンモ酸化工程で副生する青酸の精製工程から回収することによっても得ることができる。
【0018】
本実施形態で用いるアズルミン酸の組成は、CHN分析計を用いて測定することができる。アズルミン酸中の炭素原子のモル数に対する窒素原子のモル数の比((窒素原子のモル数)/(炭素原子のモル数))は、0.2〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.9、さらに好ましくは0.4〜0.9である。なお、アズルミン酸は、その製造方法、組成、製造ロットが異なるもの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
次に、工程S12において、アズルミン酸を不活性ガス雰囲気下、反応器中で加熱処理して、アズルミン酸炭化物を製造する。
このとき反応器中における不活性ガスの平均滞留時間が0.5分以上となるようにアズルミン酸を加熱処理することにより、従来において必須とされていた賦活処理を行わなくても、比表面積の大きなアズルミン酸炭化物が得られる。
【0020】
工程S12で用いる不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、二酸化炭素等が挙げられる。これらの中でも、不活性ガスとして窒素ガスを用いることが好ましい。なお、不活性ガス中の酸素濃度は、5体積%以下が好ましく、より好ましくは1体積%以下、特に好ましくは1000体積ppm以下である。
【0021】
工程S12で用いる反応器(炭化炉)は、不活性ガスを反応器内に導入でき、その不活性ガスの導入量を後述する条件下に調整可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉等が挙げられる。
【0022】
不活性ガスの平均滞留時間tは、下記式(1)によって計算される。
t(min)=V(cc)/F(Ncc/min) ・・・ (1)
ここでV(cc)は反応器の容積であり、F(Ncc/min)は標準条件における不活性ガスの流量である。ここで、反応器の容積とは、不活性ガスの導入路及び導出路を除く反応器の容積である。具体的には、図2に示すように、(a)炭化炉が縦型の管型反応器である場合は、アズルミン酸が占めている容積であり、(b)炭化炉が横型の管型反応器である場合は、アズルミン酸が置かれている上部空間を含めた容積であり、(c)炭化炉がマッフル炉のような槽型反応器である場合は、マッフル炉の容積である。なお、図2(a)〜(c)においては、反応器の容積を点線で囲んで図示した。
【0023】
不活性ガスの平均滞留時間tは、0.5分以上であれば特に限定されないが、1分以上が好ましく、特に好ましくは3分以上である。不活性ガスの平均滞留時間tは0.5分未満では、得られるアズルミン酸炭化物の比表面積が十分に大きくならない。一方、不活性ガスの平均滞留時間tの上限は、特に限定されない。例えば、不活性ガスを反応器内に封入した場合は、不活性ガスの平均滞留時間tは無限大と看做す。但し、工業化の観点から、不活性ガスの平均滞留時間は100時間以下が好ましく、特に好ましくは10時間以下である。不活性ガスの供給は連続的でも断続的でもよい。平均滞留時間tはこれらの観点および所望する比表面積に応じて、適宜選択すればよい。
【0024】
加熱処理の条件は、下記の条件が例示されるが、これらに限定されるものではない。加熱処理に要する温度や時間、処理圧力を下記の範囲内に設定することで、所望のアズルミン酸炭化物を一層容易に得ることができる。
【0025】
加熱処理の温度は、600〜3000℃であることが好ましく、より好ましくは500〜2000℃、さらに好ましくは650〜1500℃、特に好ましくは700〜1200℃である。この加熱処理の温度を上述の範囲に設定することで、アズルミン酸炭化物の結晶性を高めつつ、窒素含有量が多いという効果が得られる。
【0026】
加熱処理の時間は、1分間〜100時間であることが好ましく、より好ましくは5分間〜10時間、さらに好ましくは15分間〜5時間、特に好ましくは30分間〜2時間である。
【0027】
なお、加熱処理は、大気圧下で行うことができ、また、減圧下、つまり大気圧よりも低い圧力環境で行うこともできる。加熱処理の際の圧力環境は、不活性ガスを用いる場合、0.01〜5MPaであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1MPa、さらに好ましくは0.08〜0.3MPa、特に好ましくは0.09〜0.15MPaである。
【0028】
本実施形態によれば、従来のように、アズルミン酸を加熱処理する工程と続いて得られた加熱処理物を賦活する工程との二段の工程を必須とせず、上述した加熱処理工程の一段の工程によって、大きな比表面積を有するアズルミン酸炭化物が得られる。そのため、本実施形態のアズルミン酸炭化物の製造方法及びアズルミン酸炭化物は、従来に比して、簡易、且つ、省資源及び省エネルギーであり、その結果、生産性及び経済性に優れる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができ、かかる変更は本願の特許請求の範囲に包含される。
【0030】
<分析方法>
(比表面積)
ユアサアイオニクス社製ガス吸着量測定装置、商品名「AUTOSORB−3−MP」を用い、試料を300℃で8時間真空脱気した後、その試料へ液体窒素温度で窒素を導入して吸着等温線を測定し、そこから試料の比表面積を求めた。
【0031】
<製造例>
(アズルミン酸の製造)
水350gに青酸150gを溶解させた水溶液を調製し、この水溶液の攪拌を行いながら、25%アンモニア水溶液120gを10分かけてその水溶液に添加し、得られた混合水溶液を35℃に加熱した。すると、青酸の重合が始まり黒褐色の重合物が析出し始め、温度は徐々に上昇し45℃となった。重合が始まって2時間後から30質量%青酸水溶液を200g/hの速度で添加し始め、4時間かけて添加した。青酸水溶液の添加中は反応温度を50℃に保つように冷却してコントロールした。青酸水溶液の添加終了後、冷却を停止したところ温度は90℃に上昇し、この温度で約1時間留まった後、温度は徐々に降下した。その後、そのままの状態で100時間反応を行った。得られた黒色沈殿物をろ過によって分離した。このときの沈殿物の収率は用いた青酸の全量に対して97%であった。分離後の沈殿物を水洗した後、乾燥器にて120℃で5時間乾燥させてアズルミン酸を得た。
【0032】
[実施例1]
製造例で得られたアズルミン酸10gを内径25mmの縦型の石英管に充填し(アズルミン酸の層高は8cmであった)、大気圧下、10Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、実施例1のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、39cc(=1.25×1.25×3.14×8)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0033】
[実施例2]
製造例で得られたアズルミン酸10gを長さ100mmのアルミナボートに均等に充填し、内径60mmの横型の石英管に設置した。大気圧下、100Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、実施例2のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、282cc(=3×3×3.14×10)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0034】
[実施例3]
製造例で得られたアズルミン酸10gを長さ100mmのアルミナボートに均等に充填し300mm×300mm×300mmのマッフル炉に設置した。大気圧下、1000Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、実施例3のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、27000cc(=30×30×30)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0035】
[実施例4]
製造例で得られたアズルミン酸10gを長さ100mmのアルミナボートに均等に充填し300mm×300mm×300mmのマッフル炉に設置した。大気圧下、250Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、実施例4のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、27000cc(=30×30×30)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0036】
[比較例1]
製造例で得られたアズルミン酸10gを内径25mmの縦型の石英管に充填し(アズルミン酸の層高は8cmであった)、大気圧下、300Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、比較例1のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、39cc(=1.25×1.25×3.14×8)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0037】
[比較例2]
製造例で得られたアズルミン酸10gを内径25mmの縦型の石英管に充填し(アズルミン酸の層高は8cmであった)、大気圧下、500Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、比較例2のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、39cc(=1.25×1.25×3.14×8)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0038】
[比較例3]
製造例で得られたアズルミン酸10gを内径25mmの縦型の石英管に充填し(アズルミン酸の層高は8cmであった)、大気圧下、600Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて1000℃まで昇温した。その後、さらに1000℃で1時間保持することで、比較例3のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、39cc(=1.25×1.25×3.14×8)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0039】
[実施例5]
製造例で得られたアズルミン酸10gを長さ100mmのアルミナボートに均等に充填し300mm×300mm×300mmのマッフル炉に設置した。大気圧下、1000Ncc/min.の窒素ガス気流中で70分間かけて800℃まで昇温した。その後、さらに800℃で1時間保持することで、実施例5のアズルミン酸炭化物を得た。この反応器の容積は、27000cc(=30×30×30)であった。
式(1)に基づいて算出した平均滞留時間t、及び、比表面積を、表1に示す。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の製造方法によれば、従来において必須とされていた賦活工程を省略することができ、工程数の減少及び設備の簡易化が図られ、生産性及び経済性が飛躍的に高められるとともに、省資源及び省エネルギーに貢献できるので、吸着剤、キャパシタ用電極、燃料電池電極などの電子材料分野、及びこれを備える電子・電気材料、電子・電気デバイス、並びにそれらを備える各種機器、設備、システム等において、広く且つ有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態のアズルミン酸炭化物の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】本実施形態で例示した反応器(炭化炉)を説明するための模式図である。
【図3】従来技術のアズルミン酸炭化物の製造方法を説明するための工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アズルミン酸を不活性ガス雰囲気下、反応器中で加熱処理することにより、アズルミン酸炭化物を製造する方法において、
反応器中における不活性ガスの平均滞留時間が0.5分以上となるようにアズルミン酸を加熱処理することを特徴とする、
アズルミン酸炭化物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造されたアズルミン酸炭化物。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−150112(P2010−150112A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332818(P2008−332818)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】