説明

アゾ化合物

【課題】フェニル基とフェニル基がアゾ基で連結された従来の化合物は単に合成中間体としての用途が記載されているだけであった。
【解決手段】式(I)で示されるアゾ化合物。


(式(I)中、Rは、炭素数4〜20の直鎖状アルキル基、炭素数4〜20の分岐状アルキル基、炭素数4〜20の直鎖状アルコキシ基又は炭素数4〜20の分岐状アルコキシ基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数1〜8の分岐状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状アルコキシ基又は炭素数1〜8の分岐状アルコキシ基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基又はテトラヒドロフルフリル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ化合物等に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ化合物としては、例えば、非特許文献1に、フェニル基とフェニル基とが、アゾ基で連結された下記化合物が開示されている。

【0003】
【非特許文献1】A. Risaliliti, S. Bozzin, A. Stener, Tetrahedron, 25, 143 (1969)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記化合物は単に合成中間体としての用途が記載されているだけであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らが新たな色素を鋭意検討したところ、モル吸光係数が高く、色素としての利用が可能な化合物を見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]記載の発明である。
【0006】
[1]式(I)で示されるアゾ化合物。

(式(I)中、Rは、炭素数4〜20の直鎖状アルキル基、炭素数4〜20の分岐状アルキル基、炭素数4〜20の直鎖状アルコキシ基又は炭素数4〜20の分岐状アルコキシ基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数1〜8の分岐状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状アルコキシ基又は炭素数1〜8の分岐状アルコキシ基を表す。
【0007】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基又はテトラヒドロフルフリル基を表す。R及びRは、互いに結合した炭素数4〜5のアルキレン基であってもよい。R及びRには、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイル基、炭素数1〜6のアルコキシアルコキシカルボニル基、及び炭素数1〜6のアルコキシアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい。)
【0008】
[2] Rが、炭素数4〜20の直鎖状アルキル基である[1]記載のアゾ化合物。
[3] R及びRが、水素原子である[1]又は[2]記載のアゾ化合物。
[4] R及びRが、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基である[1]〜[3]のいずれか記載のアゾ化合物。
[5] [1]〜[4]のいずれか記載のアゾ化合物を含むカラーフィルター。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モル吸光係数が高く、色素として利用が可能な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)と記すことがある)である。

【0011】
式(I)中、Rは、例えば、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-テトラドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基など炭素数4〜20の直鎖状アルキル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの炭素数4〜20の分岐状アルキル基、n-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラドデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基などの炭素数4〜20の直鎖状アルコキシ基、イソブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基などの炭素数4〜20の分岐状アルコキシ基を表す。特に、入手容易なことから、炭素数4〜16の直鎖状アルキル基が好ましい。
【0012】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数1〜8の分岐状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状アルコキシ基又は炭素数1〜8の分岐状アルコキシ基を表す。R及びRの直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び直鎖状アルコキシ基の具体例としては、炭素数1〜8のRとして例示された同様の基が挙げられる。
【0013】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基又はテトラヒドロフルフリル基を表す。
及びRは、互いに結合した炭素数4〜5のアルキレン基であってもよく、具体的には、R及びRが窒素原子とともにモルホリノ基が例示される。
【0014】
及びRには、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素数1〜6の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基などの炭素数5〜8のシクロアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイル基、炭素数1〜6のアルコキシアルコキシカルボニル基、及び炭素数1〜6のアルコキシアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい。
【0015】
及びRには、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイル基、炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシカルボニル基、及び炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい。
【0016】
基が結合されたR及びRとしては、例えば、i-プロピル基、i-ブチル基、i-ペンチル基などの分枝状アルキル基;2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基などのアルコキシアルキル基;2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシアルキル基;2−フェノキシエチル基などのフェノキシアルキル基
;ベンジル基などのようなフェニルアルキル基;2−アセトキシエチル基、4−アセトキシブチル基、2−プロピオニルオキシエチル基などのアルカノイルオキシアルキル基;2−ベンゾイルオキシエチル基などのベンゾイルオキシアルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基などのフェノキシカルボニルオキシアルキル基;2−メトキシカルボニルオキシエチル基、2−エトキシカルボニルオキシエチル基などのアルコキシカルボニルオキシアルキル基;フェノキシカルボニルオキシエチル基などのフェノキシカルボニルオキシアルキル基;2−アセチルエチル基、2−プロピオニルエチル基などのアルカノイルアルキル基;2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル基などのアルコキシアルコキシアルキル基;2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル基などのアルコキシアルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。
【0017】
及びRとには、異なる複数の基が結合していてもよい。基が結合されたR及びRの具体例としては、例えば、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−メトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−メトキシ−2−アセトキシプロピル基、3−エトキシ−2−アセトキシプロピル基等が挙げられる。
【0018】
アゾ化合物(I)の具体例としては、式(I-1)〜式(I−9)で示される化合物が挙げられる。

【0019】
化合物(I)の製造方法の一例を以下に説明する。
式(II)で示されるアニリン誘導体(ジアゾ成分)を、亜硝酸、亜硝酸塩又は亜硝酸エステルによりジアゾ化する。

(式(II)中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
【0020】
次いで、得られたジアゾ化合物を式(III)で示されるアミン誘導体(以下、アミン誘導体(III)と記すことがある)とカップリングすることにより、化合物(I)製造することができる。

(式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
【0021】
また、アミン誘導体(III)は、例えば、式(IV)で示される化合物に、

(式(IV)中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
【0022】
式(V)で示される化合物、及び
−Xa (V)
(式(V)中、Rは前記と同じ意味を表す。Xaは塩素原子、臭素原子、沃素原子、トシルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基などの求核反応によって脱離する基を意味する。)
【0023】
式(VI)で示される化合物を反応させることにより、調製することができる。
−Xb (VI)
(式(VI)中、Rは前記と同じ意味を表す。Xbは塩素原子、臭素原子、沃素原子、トシルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基などの求核反応によって脱離する基を意味する。)
【0024】
式(V)で示される化合物及び式(VI)で示される化合物としては同じ化合物であってもよく、R及びRは、互いに結合する場合には、式(VII)で示される化合物を反応させてもよい。
Xc−R−Xd (VII)
(式(VI)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイル基、炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシカルボニル基、及び炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい、炭素数4〜5のアルキレン基を表す。Xc及びXdは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、沃素原子、トシルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基などの求核反応によって脱離する基を意味する。)
【0025】
かくして得られたアゾ化合物(I)は、通常、350nm〜700nmの領域でλmaxを有し、モル吸光係数が高く、非常に高い色濃度を示す。このことにより、濃い色相を実現することができたり、少量のアゾ化合物(I)で所望の色相を実現することができる。耐溶剤性及び耐熱性等の性能が求められる部品には、色素を少量で用いる場合が多く、本発明のアゾ化合物(I)は、このような耐溶剤性及び耐熱性等の性能が求められる部品用の色素に好適に用いることができる。
また、本発明のアゾ化合物(I)は、単独で用いても色素として優れた効果を奏し、また、調色用色素として他の色素と併用してもよい。
【0026】
本発明のアゾ化合物は、通常、液体である。液体であることから、繊維材料に用いる場合、該化合物を水中に溶解させてから繊維材料に吸着させて用いる必要が必ずしもなく、例えば、ゲストホスト方式の液晶表示装置で用いる場合、本発明のアゾ化合物を液晶組成物中にそのまま溶解させて用いることができる。このように、本発明のアゾ化合物は、液晶組成物中に溶解させやすいという効果を奏する。また、本発明のアゾ化合物は、液晶組成物において、他の色素と併用することも容易である。
また、カラーフィルターで本発明のアゾ化合物を用いる場合、必ずしも有機溶剤又は水に溶解させる必要がなく、さらに、カラーフィルターにおいて他の色素と併用することも容易である。
【0027】
本発明のアゾ化合物(I)は、例えば、ゲストホスト方式のような液晶表示装置、カラーフィルター、光ディスクなどの情報記録分野、繊維分野などの色素として好適に用いられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特記されない限り、質量%及び質量部である。
【0029】
(実施例1)
水50部およびジメチルホルムアミド150部の混合溶媒中に2-ブチルアニリン29.8部を加え、次いで、35%の塩酸75.6部を加え、5℃にて30分間攪拌した。次いで亜硝酸ナトリウム16.4部を加え、5℃にて、1時間攪拌し、ジアゾ化反応を完結させた。他方、N,N-ジメチルアニリン25.4部をジメチルホルムアミド50部に溶解させ、先ほど得られたジアゾ化液を加え、カップリング反応を完結させた。反応後、濾過を行い、得られた粗生成物を、酢酸エチル:ヘキサン=1:5の溶出溶媒を用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて、式(I-1)で表される化合物を得た。式(I-1)で表される化合物をヘキサン中で、極大吸収波長(λmax)を測定したところ、409nmを示し、またモル吸光係数は、22000と高い値を示した。
【0030】
(比較例1)
非特許文献1中、143頁に記載された下記化合物を文献記載の方法に従い、調製した。ヘキサン中で、極大吸収波長(λmax)を測定したところ、322nmを示し、またモル吸光係数は、18000と低い値を示した。

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、モル吸光係数が高く、色素として利用が可能な化合物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示されるアゾ化合物。

(式(I)中、Rは、炭素数4〜20の直鎖状アルキル基、炭素数4〜20の分岐状アルキル基、炭素数4〜20の直鎖状アルコキシ基又は炭素数4〜20の分岐状アルコキシ基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数1〜8の分岐状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状アルコキシ基又は炭素数1〜8の分岐状アルコキシ基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状アルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基又はテトラヒドロフルフリル基を表す。R及びRは、互いに結合した炭素数4〜5のアルキレン基であってもよい。R及びRには、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、フェノキシ基、フェニル基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルカノイル基、炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシカルボニル基、及び炭素数1〜4のアルコシ基を含むアルコキシアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい。)
【請求項2】
が、炭素数4〜20の直鎖状アルキル基である請求項1記載のアゾ化合物。
【請求項3】
及びRが、水素原子である請求項1又は2記載のアゾ化合物。
【請求項4】
及びRが、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基である請求項1〜3のいずれか記載のアゾ化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のアゾ化合物を含むカラーフィルター。

【公開番号】特開2009−190973(P2009−190973A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30011(P2008−30011)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】