説明

アゾ化合物

式(1)の化合物またはその塩


[式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立に、Hまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し;
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有し;
(iii)式(1)の化合物は、式(1a):


の化合物ではない]。
該化合物は、インキジェット印刷インキに使用するための着色剤として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤用に適する化合物、該化合物を含有するインキおよびインキジェット印刷(「IJP」)におけるそれらの使用に関する。IJPは、インキの液滴を細いノズルから非印刷物上にそのノズルをその非印刷物と接触させることなく排出するノンインパクトプリンティング技術である。
【背景技術】
【0002】
IJPにおいて使用される着色剤およびそれらを含有するインキに対しては多くの厳しい要求性能が存在する。例えば、そのインキは、高い光学密度、良好な耐光性、良好な耐オゾン性および冴えた色を有する鮮鋭でひげのない画像を提供することが望ましい。そのインキは、汚れを防ぐために被印刷物に適用されるとき速やかに乾燥することをしばしば求められるが、それらはあまりに速く乾燥してインキジェットノズルの先端を覆う外皮を形成し、それによってプリンターの性能を低下させてはならない。そのインキは、また、細いノズルを詰まらせかねないような分解または沈殿の形成が無く、長期の保存に対して安定でなければならない。とりわけ、良好な耐光性および耐オゾン性を有する着色剤としての使用に適する化合物に対する必要性が存在する。
【0003】
欧州特許第0486647号および米国特許第5374301号は、アニオン性アゾ化合物を開示している。これらの化合物は良好な耐湿潤性を有するように記載されている。
Acad.Rep.Populare,Romine in 1960、7巻、99〜112頁(ケミカルアブストラクト55:73168による)に公開された論文は、綿布の処理に適する特定の緑色染料の調製およびクロマトグラフ分離について開示している。
【発明の開示】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、式(1)の化合物またはその塩が提供される。
【0005】
【化1】

【0006】
上式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立にHまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し、
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有し、
(iii)式(1)の化合物は、式(1a):
【0007】
【化2】

【0008】
ではない。
は、場合によって置換されている多環式アリールまたは単環式アリールである。好ましくは、Aは、場合によって置換されているナフチルまたはフェニルである。
【0009】
好ましい多環式アリール基としては、ナフチル、アントラシルおよびピレニル基が挙げられる。好ましい単環式アリール基は、フェニル基である。
およびAに存在することができる場合による置換基は、それぞれ独立に、場合によって置換されているアルキル、アルコキシ、アミン、アミド、エステル、ケトンおよびチオエーテル基から、およびハロゲン、酸、−CF、−CN、−NO、アゾ(特にアリールアゾ)および−OH基から好ましくは選択される。
【0010】
好ましい場合により置換されているアルキル基としては、各場合とも置換基、好ましくはハロゲン、カルボキシ、アルコキシ、ヒドロキシおよびスルホから選択される置換基を場合によって持っているC1〜8アルキル、より好ましくはC1〜4アルキルが挙げられる。場合によって置換されているアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−ブチル、s−ブチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシエチル、スルホプロピルおよびカルボキシエチルが挙げられる。
【0011】
好ましい場合により置換されているアルコキシ基としては、各場合とも置換基、好ましくはヒドロキシ、スルホ、ハロゲンおよびカルボキシから選択される置換基を場合によって持っているC1〜8アルコキシ、より好ましくはC1〜4アルコキシが挙げられる。場合によって置換されているアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、カルボキシプロポキシ、カルボキシエトキシ、ヒドロキシエトキシおよびクロロエトキシが挙げられる。
【0012】
好ましい場合により置換されているアミン基は、式−NRのものであって、RおよびRは、それぞれ独立に、Hまたは場合によって置換されているアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり、あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって場合によって置換されている5員環もしくは6員環(例えば、ピペリジン、ピロリドン、ピリジン、ピペリジンまたはモルホリン環)を形成している。
【0013】
およびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって場合によって置換されている5員環もしくは6員環を形成しているとき、その場合による置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸、ヒドロキシ、シアノおよびニトロ基から好ましくは選択される。
【0014】
好ましい場合によって置換されているアミド基は、式−NHC(O)NR、−C(O)NR、−S(O)NRまたは−NHC(O)Rのものであって、式中RはHまたは場合によって置換されているアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり、RおよびRは上で定義したものと同じものである。
【0015】
好ましい場合によって置換されているエステル基は、式−C(O)ORまたは−S(O)ORのものであって、式中Rは、場合によって置換されているアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。
【0016】
好ましい場合によって置換されているケトン基は、式−C(O)Rまたは−S(O)Rのものであって、式中Rは、上で定義したものと同じものである。
好ましい酸基は、−SOHおよび−PO基である。
【0017】
好ましい場合によって置換されているチオエーテル基は、式−SRのものであり、式中Rは、上で定義したものと同じものである。
好ましいハロゲン基は、Cl、F、BrおよびIである。
【0018】
好ましくは、AおよびAは、それぞれ独立に、1個から5個の置換基、より好ましくは1個、2個または3個の置換基を有し、好ましくは−SOHおよび−POから選択される。
【0019】
好ましくは、AおよびAには、両方とも−COSHおよび−COH置換基がなく、より好ましくは、AおよびAには、両方とも−SOHおよび−PO以外の基がない。一実施形態において、AおよびAはそれぞれ、1個、2個または3個の−SOHおよび−PO基から選択される基を持ち、さらなる置換基はない。
【0020】
別の実施形態において、式(1)の化合物中に存在するすべての−SOH基および−PO基は、Aおよび/またはAに結合している。
およびQによって表される場合によって置換されているフェニレン環は、それぞれ独立に、単環式環(例えば、QおよびQは、それぞれ独立に、場合によって置換されている1,4−フェニレン基である)であるか、または多環式環の一部であり得る(例えばQおよびQは、それぞれ独立に、場合によって置換されている1,4−ナフチレンまたは1,4−インドレン基の一部である)。場合によって置換されている多環式環は、アリーレン環またはヘテロアリーレン環であり得る。好ましい多環式ヘテロアリーレン環は、5員または6員環中に1つまたは複数の窒素、硫黄、酸素またはリン原子を含む5員または6員環と縮合した1,4−フェニレン環を含むものである(例えば、式(1)の−N=N−基および−NR−基の両方にパラ結合しているインドール基)。
【0021】
好ましくは、QおよびQは、それぞれ独立に、場合によって置換されているナフチレンの一部であるか、フェニレンであり、より好ましくは、QおよびQは両方とも場合によって置換されているフェニレンであり、いずれの場合も式(1)中に示されている−N=N−基および−NR−基の両方にパラ結合している。
【0022】
およびQ上に存在することができる場合による置換基は、AおよびAについて上で述べたもののいずれかであることが好ましい。
およびQ上に存在することができる場合による置換基は、C1〜4アルコキシ(特にメトキシおよびエトキシ)、C1〜4アルキル(特にメチル)、−NHCONH、−NHSO−C1〜4アルキル(特に−NHSOCH)、−SOHおよび−POから好ましくは選択される。
【0023】
好ましくはQおよびQは、それぞれ1個の置換基を有する。
好ましくは、各Rは、独立に、H、場合によって置換されているアルキルまたは場合によって置換されているアリールである。好ましい場合によって置換されているアルキル基および場合によって置換されているアリール基は、上で挙げたものである。より好ましくは、各Rは、独立に、HまたはC1〜4アルキル、特にHである。
【0024】
本明細書に示されているもの以外の互変異性体の形で存在する式(1)の化合物およびかかる互変異性体は、本発明および特許請求の範囲に含まれる。
式(1)の化合物の好ましい塩の形は、例えばアルカリ金属塩(特にリチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換アンモニウム塩およびそれらの混合塩である。好ましくは、式(1)の化合物の塩は、水に溶解する。
【0025】
好ましいアンモニウムおよび置換アンモニウム塩は、アンモニウムおよびアルキルまたはアリール置換アンモニウム(例えば、アンモニウム、アルカノールアンモニウム、ピリジニウム、ピペリジニウムおよびモルホリニウム)である。
【0026】
式(1)の化合物は、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩あるいはこれらの混合物の形をしていることが特に好ましい。
好ましくは、式(1)の化合物は、−COHまたは−COSH置換基を有していない。
【0027】
好ましくは、式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される1個から6個、特に2個から4個の基を有する。
好ましくは、式(1)の化合物は、2個のみのアゾ基を含有する。2個のみのアゾ基を含有する式(1)の化合物は、例えば、3個のアゾ基を含有するものより良好な色相および色度を有する。このより良好な色相と色度は、本発明の化合物を含有するインキから得られる印刷物が、より明るく、より鮮明であり、写真のインキジェット印刷により適していることを意味する。
【0028】
好ましくは、式(1)の化合物には、フェノール基は、本発明の化合物の色度、明るさおよび耐オゾン性を低下し得るためにこれらは存在しない。
式(1)の化合物には、ニトロ基(−NO)がないことも好ましい。
【0029】
好ましくは、式(1)の化合物は、染料であり、より好ましくは水溶性染料である。好ましくは、式(1)の化合物は、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%の水中の溶解度を有する。
【0030】
好ましくは、式(1)の化合物は、色が黄色、オレンジ色または褐色である。好ましくは、式(1)の化合物は、溶液中5重量%の染料濃度で水に溶解したとき、黄色である。
本発明の化合物は、印刷されたとき特に良好な耐オゾン性、光学密度および特に良好な耐光性を示すインキを調製するために有用である。
【0031】
式(1)の化合物には、繊維反応性の基は、インキの長期間の保存安定性を低下する傾向があるため、そのような基は好ましくは存在しない。繊維反応性基という用語は、当技術分野ではよく理解されており、例えば欧州特許出願公開第0356014号中で用いられている。繊維反応性基は、適切な条件下で、セルロース繊維中に存在する水酸基または天然繊維中に存在するアミノ基と反応して繊維と当該化合物の間で共有結合を形成することができる。
【0032】
好ましくは、Aは、場合によって置換されているフェニルまたはナフチルであり、QおよびQは両方共、場合によって置換されているフェニレンである。
特に、式(1)の好ましい化合物は式(2)から(32)の化合物またはその塩である:
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
【化19】

【0050】
【化20】

【0051】
【化21】

【0052】
【化22】

【0053】
【化23】

【0054】
【化24】

【0055】
【化25】

【0056】
【化26】

【0057】
【化27】

【0058】
【化28】

【0059】
【化29】

【0060】
【化30】

【0061】
【化31】

【0062】
【化32】

【0063】
【化33】

【0064】
式(8)の化合物またはその塩は、それらのさらに良好な耐光性および耐オゾン性のため特に好ましい。
さらなる実施形態において、化合物の次のカテゴリーの1つまたは複数は、式(1)の範囲からは除外される:
カテゴリー1:Aが4−スルホフェニルであり、Aが1,5−ジスルホナフト−3−イルである化合物。
カテゴリー2:Aが4−スルホフェニルではなく、Aが1,5−ジスルホナフト−3−イルである化合物。
カテゴリー3:AおよびAが同一の場合によって置換されているフェニル基であり、QおよびQが同一である化合物。
カテゴリー4:AおよびAが同一の場合によって置換されているフェニル基であり、QおよびQが異なる化合物。
カテゴリー5:AおよびAが同一ではなく、QおよびQが同一であり、Aが1,5−ジスルホナフト−3−イルではない化合物。
カテゴリー6:AおよびAが同一ではなく、QおよびQが同一ではなく、Aが1,5−ジスルホナフト−3−イルではない化合物。
【0065】
式(1)の化合物またはその塩は、例えば、式(33):
【0066】
【化34】

【0067】
(式中、A、A、Q、QおよびRは、上で定義したものと同じである)のモノクロロトリアジニル化合物の加水分解によって調製することができる。
好ましくは、その加水分解は、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムを含むアルカリ性溶液中60℃から80℃の温度で4時間から10時間実施する。
【0068】
式(33)の化合物は、塩化シアヌルの式(34a)の化合物の約1モル当量および式(34b)の化合物の約1モル当量との縮合によって調製することができる。A=A、Q=Qであり、R基の両方が同じである化合物(33)の対称化合物は、塩化シアヌルを式(34a)の化合物の約2モル当量と縮合することによって調製することができる。その縮合は、0℃から40℃の温度および5から7のpHの水溶液中で好ましくは行う:
−N=N−Q−NRH A−N=N−Q−NRH
式(34a) 式(34b)
式中、A、A、Q、QおよびRは、上で定義したものと同じである。
【0069】
式(34a)の化合物は、式A−NHの化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩を生じさせ、得られたジアゾニウム塩を式Q−NRHの化合物とカップリングすることによって調製することができる(式中、A、QおよびRは、上で定義したものと同じである)。
【0070】
式(34b)の化合物は、式(34a)のそれと同様のやり方で調製することができる。
ジアゾ化は、好ましくは20℃より下の温度、より好ましくは0℃から5℃の温度で行う。好ましくは、ジアゾ化は、水を含み、非常に酸性のpH(3より下)を好ましくは有する液体中で行う。鉱酸(例えば、HClまたはHSOあるいはそれらの混合物)が、上記の酸性pHを得るためには一般的に使用される。
【0071】
カップリング反応は、0℃から5℃の温度で一般的には1時間から6時間かけて好ましくは行われる。pHを4から5に調節するために緩衝液(例えば酢酸ナトリウム)を加えることが多くの場合望ましい。カップリング反応は、水を含む液体中で好ましくは実施する。カップリング反応は、25℃でさらに16時間にわたって好ましくは継続する。
【0072】
上記のように、式(1)の化合物は、遊離の酸または塩の形態であり得る。式(1)の塩は、例えば塩の形態をしている前駆物質(例えば式(34aおよび/または34b)の化合物)を用いて調製してもよく、あるいは遊離酸の形態をした式(1)の化合物を、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、または水酸化カリウム、アンモニア、置換アンモニウム化合物もしくはアルカノールアミン)で中和してもよい。塩中のカチオンを、例えばカチオン交換樹脂によって交換することもまた可能である。
【0073】
本発明の第2の態様によれば、式(1)の化合物またはその塩および媒質を含むインキが提供される。
その媒質は、低融点の固体であり得るが、好ましくは液体である。
【0074】
その液体の媒質は、水および有機溶媒を好ましくは含む。
本発明の第2の態様による好ましいインキは、
(a)0.01部から30部の式(1)の化合物またはその塩と、
(b)70部から99.99部の液体媒質と
を含み、すべての部が重量部であり、(a)+(b)の部の数の合計が100である。
【0075】
成分(a)の重量部の数は、好ましくは0.01から25、より好ましくは0.1から20、特に0.5から15、より特別には1から5部である。成分(b)の重量部の数は、好ましくは99.99から75、より好ましくは99.9から80、特に99.5から85、より特別には99から95部である。部(a)+(b)の数は100であり、ここで挙げられているすべての部は、重量部である。
【0076】
好ましくは、式(1)の化合物またはその塩は、液体媒質中に完全に溶解させる。好ましくは、式(1)の化合物またはその塩は、20℃の液体媒質中で少なくとも10重量%の溶解度を有する。これによって、より希薄なインキを用意するために使用することができるインキ濃縮物の調製が可能となる。
【0077】
液体媒質が、水と有機溶媒の混合物を含むとき、水対有機溶媒の重量比は好ましくは99:1から1:99、より好ましくは99:1から50:50、特に95:5から80:20である。
【0078】
好ましくは、その有機溶媒は、水混和性有機溶媒またはかかる有機溶媒の混合物である。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1〜6アルカノール類、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;直鎖状アミド類、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトン類およびケトン−アルコール類、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル類、好ましくはテトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール類、好ましくは、2個から12個の炭素原子を有するジオール類、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、1,2−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコールならびにオリゴ−およびポリアルキレングリコール類、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール類、好ましくはグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオール類のモノC1〜4アルキルエーテル類、好ましくは、2個から12個の炭素原子を有するジオール類のモノC1〜4アルキルエーテル類、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)−エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド類、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル類、好ましくは、カプロラクトン;スルホキシド類、好ましくは、ジメチルスルホキシドおよびスルホランが挙げられる。好ましくは、該液体媒質は水および2種類以上、特に2種類から8種類の水溶性有機溶媒を含む。
【0079】
一実施形態において、該インキは式(1)の化合物またはその塩、液体媒質および場合によっては顔料(例えば、黄色顔料)を含む。この実施形態において、液体媒質は、水およびグリコールモノエーテルおよび1,2−アルカンジオールの混合物を好ましくは含む。グリコールモノエーテル対1,2−アルカンジオールの重量比は、重量で1:2から2:1であることが特に好ましい。
【0080】
特に好ましい水混和性有機溶媒は、環状アミド類、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール類、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;およびジオール類のモノC1〜4アルキルおよびC1〜4アルキルエーテル類、より好ましくは2個から12個の炭素原子を有するジオール類のモノC1〜4アルキルエーテル類、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0081】
水と1つまたは複数の有機溶媒の混合物を含むさらなる適当な液体媒質の例は、本明細書中でそれに対する参考として援用する米国特許第4963189号、米国特許第4703113号、米国特許第4626284号および欧州特許第425150A号に記載されている。
【0082】
好ましくは、低融点固体は、25℃で固体であり、50℃を超える温度で融解する。より好ましくは、低融点固体は、60℃から125℃の範囲内に融点を有する。
この温度範囲で融解する適当な媒質としては、長鎖脂肪酸類、スルホンアミド類、またはアルコール類の、好ましくはC18〜24の鎖を有するものが挙げられる。式(1)の化合物は、低融点固体中に溶解するか、その中に細かく分散させることができる。
【0083】
インキには、反応性染料、特にハロトリアジン基を有するものが存在しないことが好ましい。
本発明の第2の態様によるインキは、1つまたは複数の式(1)の化合物またはその塩を含むことができる。
【0084】
本発明の第2の態様によるインキは、式(1)の化合物またはその塩以外の1つまたは複数のさらなる着色剤を含むことができる。そのさらなる着色剤は、顔料であり得るが、好ましくは染料である。
【0085】
さらなる着色剤が顔料であるとき、その顔料は、好ましくは黄色顔料であり、その例としては、黄色モノアゾ顔料、例えばC.l.Pigment Yellow−1、−2、−3、−10、−60、−73、−74、−75、−120、−151および−175;ジスアゾ顔料、例えば、C.I.Pigment Yellow−12、−13、−14、−16、−17、−81、−83、−93、−95、126、−128、−174および−180;イソインドリノン顔料、例えば、C.I.Pigment Yellow−109、−110、−139および−185;アントラキノン顔料、例えばC.I.Pigment Yellow−23、−108および−147;ならびにキノフタロン顔料、例えば、C.I.Pigment Yellow−138が挙げられる。
【0086】
さらなる着色剤が染料であるとき、その染料は、好ましくはthe Colour Index Internationalに挙げられている黄色染料、特に、C.I.Direct Yellow−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−86、−87、−88、−132、−135、−142または−144;および/またはC.I.Acid Yellow−1、−3、−4、−7、−11、−12、−13、−14、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76または−79である。なお一層のさらなる染料が、米国特許第6878196号(本明細書中でそれに対する参考として援用する、特に、染料1、6B、7Bおよび22B)および米国特許第6855195号に記載されている。
【0087】
一般的には、式(1)の染料およびさらなる着色剤は、1:2から2:1の重量比でインキ中に含める。
インキは、インキジェット印刷インキ中での使用に適する添加剤、例えば、粘度および表面張力調整剤、腐食防止剤、殺生剤(例えばProxel(商標)殺生剤)、コゲーション(kogation)を減少する添加剤、コックル防止剤(例えば、紙のカールを減少する)およびイオン性および非イオン性であり得る界面活性剤(例えば、オレフィンE1010)を含有させることができる。
【0088】
インキのpHは、好ましくは4から11であり、より好ましくは7から10である。
インキの粘度は、好ましくは50mPa.s未満、より好ましくは20mPa.s未満、特に5mPa.s未満である。粘度は、25℃の温度で好ましくは測定する。より好ましくは、粘度は、コーンおよびプレートの幾何学的配置を取り付けたボーリン(Bohlin)社製のレオメーターを用いて25℃で、100rpmで測定する。ずり速度の関数としてのインキの粘度挙動は、好ましくはニュートニアンである。換言すると、例えば、1から1000rpmのずり速度に対応する範囲で、粘度はそのずり速度に実質的に影響されない。
【0089】
加熱式インキジェットプリンターは、インキ中のわずかな不純物に特に敏感である。かかる不純物は、レジスターを腐食するか、印刷ヘッドからインキを発射するために使用されるレジスター上に堆積物を形成する可能性がある。これによって印刷品質が低下する可能性がある。
【0090】
かくして、本発明の第2の態様の一実施形態は、ハロゲン化物イオンの濃度が100万分の500部(500ppm)未満、より好ましくは100ppm未満であるインキジェット印刷インキを提供する。インキが、全体中に有する二価および三価金属は、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満であることが特に好ましい。ppmは、インキの全体重量に関連するイオンまたは金属の重量部を表す。塩化物イオンおよび/または二価および三価金属を除去するための任意の手段、例えば、イオン交換および限外濾過を使用することができる。
【0091】
本発明の第2の態様によるインキは、10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満の平均の細孔の大きさを有するフィルターによって濾過されていることが好ましい。この濾過によって、そうしないとインキジェットプリンターヘッドのノズルを詰まらせる傾向があり得る大き過ぎる粒状物質を実質的に除去する。
【0092】
本発明のインキは、黄色、マゼンタ、シアン、および墨インキを含むインキセットの黄色インキを好ましくは形成する。一般的には、かかるインキセットにおいて、マゼンタインキは、例えば、C.I.Acid Red 52および/またはPro−Jet(商標)Fast Magenta2を含み、シアンインキは、例えば、C.I.Direct Blue 86、199および/またはPro−Jet(商標)Fast Cyan2を含み、墨インキは、例えば、C.I.Direct Black 199および/またはPro−Jet(商標)Fast Black2を含む(Pro−Jetは、Fujifilm Imaging Colorants Limitedの商標である。)。
【0093】
本発明の第3の態様によれば、画像を被印刷物に印刷する方法であって、式(1)の化合物またはその塩を含むインキを、インキジェットプリンターを用いて被印刷物に適用するステップを含む方法が提供される。
【0094】
【化35】

【0095】
上式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立にHまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し;
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有する。
【0096】
好ましくは、本発明の第3の態様による方法において使用される式(1)の化合物またはその塩は、上記と同じである。
好ましくは、そのインキは、本発明の第2の態様で明らかにしたものと同じである。
【0097】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による式(1)の化合物またはその塩を含むインキにより印刷された被印刷物(好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクタースライドまたは繊維材料)が提供される。好ましくは、そのインキは、本発明の第2の態様で明らかにしたものと同じである。
【0098】
本発明の第5の態様によれば、チャンバーおよびインキを含むインキジェットプリンターカートリッジが提供され、そのインキはチャンバー中に存在し、そのインキは本発明の第1の態様による式(1)の化合物またはその塩を含む。好ましくは、そのインキは、本発明の第2の態様で明らかにしたものと同じである。
【0099】
本発明の第6の態様によれば、インキジェット印刷インキを調製するための式(1)の化合物またはその塩の使用が提供される。
【0100】
【化36】

【0101】
上式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立にHまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し、
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有し、前記インキジェット印刷インキは、水および少なくとも1つの水混和性有機溶媒または低融点固体のいずれかを含む。
【0102】
そのインキは、好ましくは上で記載したものと同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0103】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、そこでのすべての部および百分率は、他に断りのない限り重量基準である。
【実施例1】
【0104】
染料(1)
【0105】
【化37】

【0106】
染料(1)を下記の段階(a)から(c)によって調製した。
段階(a)中間体(1a)の調製
【0107】
【化38】

【0108】
3−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸(110g、0.43モル)を、2Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、続いて亜硝酸ナトリウム(33.1g、0.48モル)を加えてpHを7にした水(800ml)中に溶解した。得られた溶液を濃塩酸(120ml)および水(200ml)の混合物に0℃から5℃の温度で滴下して加え、ジアゾニウム塩を生成させた。
【0109】
そのジアゾニウム塩を0℃から5℃の温度で1時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることにより破壊した。m−トルイジン(46g、0.43モル)の溶液を、0℃から5℃の温度で滴下して加え、pHを、酢酸ナトリウムを加えることによって4〜5に調節した。得られた混合物を、0℃から5℃の温度で4時間と、次いで20℃の温度でさらに16時間撹拌した。
【0110】
得られた生成物を塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を濾過によって集め、次いで水酸化ナトリウム溶液の添加によって得られたpH7の水(1000ml)中に溶解した。その生成物を、塩化ナトリウム(200g)の添加によって沈殿させ、濾過によって集め、60℃のオーブン中で乾燥し、赤色固体の形態の中間体(1a)の82gを製造した。
段階(b)中間体(1b)の調製
【0111】
【化39】

【0112】
上の段階(a)から得られた中間体(1a)(21.0g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0113】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
Sigma−Aldrich Coから入手した4−アミノ−1,1’−アゾベンゼン−3,4’−ジスルホン酸(19.9g、0.05モル)のpH7(2Nの炭酸ナトリウム)の水(200ml)中の溶液を、20℃の温度で次に加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0114】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(1b)を、乾燥せずに段階(c)で使用した。
段階(c):染料(1)の調製
【0115】
【化40】

【0116】
上の段階(b)から得られた中間体(1b)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。
【0117】
得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(1)をオレンジ色の固体として得た。
【実施例2】
【0118】
【化41】

【0119】
染料(2)を、下記の段階(a)から(c)によって調製した。
段階(a)中間体(1a)の調製
中間体(1a)を、実施例1、段階(a)において上で記載したようにして調製した。
段階(b)中間体(2b)の調製
【0120】
【化42】

【0121】
上の段階(a)から得られた中間体(1a)(21.0g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0122】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
Pfaltz−Bauerから入手した4−アミノ−3−メトキシアゾベンゼン−3’−スルホン酸(15.4g、0.05モル)のpH7(2Nの炭酸ナトリウム)の水(200ml)中の溶液を、20℃の温度で次に加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0123】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(2b)を、乾燥せずに段階(c)で使用した。
段階(c):染料(2)の調製
上の段階(b)から得られた中間体(2b)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。
【0124】
得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(2)をオレンジ色の固体として得た。
【実施例3】
【0125】
【化43】

【0126】
染料(3)を、下記の段階(a)から(c)によって調製した。
段階(a)中間体(3a)の調製
【0127】
【化44】

【0128】
2−アミノベンゼン−1,4−ジスルホン酸(110g、0.43モル)を、2Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、続いて亜硝酸ナトリウム(32.6g、0.48モル)を加えてpHを7にした水(800ml)中に溶解した。得られた溶液を濃塩酸(120ml)および水(200ml)の混合物に0℃から5℃の温度で滴下して加え、ジアゾニウム塩を生成させた。
【0129】
そのジアゾニウム塩を0℃から5℃の温度で1時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることにより破壊した。m−トルイジン(46g、0.43モル)の溶液を、0℃から5℃の温度で滴下して加え、pHを、酢酸ナトリウムを加えることによって4〜5に調節した。得られた混合物を、0℃から5℃の温度で4時間と、次いで20℃の温度でさらに16時間撹拌した。
【0130】
得られた生成物を塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を濾過によって集め、次いで水酸化ナトリウム溶液の添加によって得られたpH7の水(1000ml)中に溶解した。その生成物を、塩化ナトリウム(200g)の添加によって沈殿させ、濾過によって集め、60℃のオーブン中で乾燥し、赤色固体の形態の中間体(3a)の82gを製造した。
段階(b)中間体(3b)の調製
【0131】
【化45】

【0132】
上の段階(a)から得られた中間体(3a)(22.1g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0133】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
中間体(3a)の第2の溶液を、正確に上記のようにして調製し、これを次に20℃の温度で加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0134】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(3b)を、乾燥せずに段階(c)で使用した。
段階(c):染料(3)の調製
上の段階(b)から得られた中間体(3b)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。
【0135】
得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(3)をオレンジ色の固体として得た。
【実施例4】
【0136】
【化46】

【0137】
染料(4)を、下記の段階(a)から(d)によって調製した。
段階(a)中間体(4a)の調製
【0138】
【化47】

【0139】
5−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸(110g、0.43モル)を、2Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、続いて亜硝酸ナトリウム(32.6g、0.48モル)を加えてpHを7にした水(800ml)中に溶解した。得られた溶液を濃塩酸(120ml)および水(200ml)の混合物に0℃から5℃の温度で滴下して加え、ジアゾニウム塩を生成させた。
【0140】
そのジアゾニウム塩を0℃から5℃の温度で1時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることにより破壊した。m−トルイジン(46g、0.43モル)の溶液を、0℃から5℃の温度で滴下して加え、pHを、酢酸ナトリウムを加えることによって4〜5に調節した。得られた混合物を、0℃から5℃の温度で4時間と、次いで20℃の温度でさらに16時間撹拌した。
【0141】
得られた生成物を塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を濾過によって集め、次いで水酸化ナトリウム溶液の添加によって得られたpH7の水(1000ml)中に溶解した。その生成物を、塩化ナトリウム(200g)の添加によって沈殿させ、濾過によって集め、60℃のオーブン中で乾燥し、赤色固体の形態の中間体(4a)の82gを製造した。
段階(b)中間体(4b)の調製
【0142】
【化48】

【0143】
中間体(4b)は、中間体(4a)に対する上の方法により、m−トルイジンをo−アニシジンに置き換えて調製した。
段階(c)中間体(4c)の調製
【0144】
【化49】

【0145】
上の段階(a)から得られた中間体(4a)(18.6g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0146】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
段階(b)からの生成物(19.4g、0.05モル)のpH7(2Nの炭酸ナトリウム)の水(200ml)中の溶液を、次に20℃の温度で加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0147】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(4c)を、乾燥せずに段階(d)で使用した。
段階(d):染料(4)の調製
上の段階(c)から得られた中間体(4c)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。
【0148】
得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(4)をオレンジ色の固体として得た。
【実施例5】
【0149】
【化50】

【0150】
染料(5)を、下記の段階(a)から(d)によって調製した。
段階(a)中間体(5a)の調製
【0151】
【化51】

【0152】
7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸(129g、0.43モル)を、2Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、続いて亜硝酸ナトリウム(32.6g、0.48モル)を加えてpHを7にした水(800ml)中に溶解した。得られた溶液を、濃塩酸の混合物に滴下して加え、ジアゾニウム塩を生成させた。
【0153】
そのジアゾニウム塩を0℃から5℃の温度で1時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることにより破壊した。m−トルイジン(46g、0.43モル)の溶液を、0℃から5℃の温度で滴下して加え、pHを、酢酸ナトリウムを加えることによって4〜5に調節した。得られた混合物を、0℃から5℃の温度で4時間と、次いで20℃の温度でさらに16時間撹拌した。
【0154】
得られた生成物を塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を濾過によって集め、次いで水酸化ナトリウム溶液の添加によって得られたpH7の水(1000ml)中に溶解した。その生成物を、塩化ナトリウム(200g)の添加によって沈殿させ、濾過によって集め、60℃のオーブン中で乾燥し、赤色固体の形態の中間体(5a)の82gを製造した。
段階(b)中間体(5b)の調製
【0155】
【化52】

【0156】
中間体(5b)は、中間体(5a)に対する上の方法により、7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸を5−アミノベンゼン−1,3−ジスルホン酸に置き換えて調製した。
段階(c)中間体(5c)の調製
【0157】
【化53】

【0158】
上の段階(a)から得られた中間体(5a)(21.0g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0159】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
段階(b)からの生成物(18.6g、0.05モル)のpH7(2Nの炭酸ナトリウム)の水(200ml)中の溶液を、次に20℃の温度で加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0160】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(5c)を、乾燥せずに段階(d)で使用した。
段階(d):染料(5)の調製
上の段階(c)から得られた中間体(5c)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(5)をオレンジ色の固体として得た。
【実施例6】
【0161】
【化54】

【0162】
染料(6)を、下記の段階(a)から(c)によって調製した。
段階(a)中間体(6a)の調製
【0163】
【化55】

【0164】
7−アミノナフタレン−1,3−ジスルホン酸(129g、0.43モル)を、2Nの水酸化ナトリウム溶液を加え、続いて亜硝酸ナトリウム(32.6g、0.48モル)を加えてpHを7にした水(800ml)中に溶解した。得られた溶液を、濃塩酸の混合物に滴下して加え、ジアゾニウム塩を生成させた。
【0165】
そのジアゾニウム塩を0℃から5℃の温度で1時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることにより破壊した。m−トルイジン(46g、0.43モル)の溶液を、0℃から5℃の温度で滴下して加え、pHを、酢酸ナトリウムを加えることによって4〜5に調節した。得られた混合物を、0℃から5℃の温度で4時間と、次いで20℃の温度でさらに16時間撹拌した。
【0166】
得られた生成物を塩の添加によって沈殿させ、その沈殿物を濾過によって集め、次いで水酸化ナトリウム溶液の添加によって得られたpH7の水(1000ml)中に溶解した。その生成物を、塩化ナトリウム(200g)の添加によって沈殿させ、濾過によって集め、60℃のオーブン中で乾燥し、赤色固体の形態の中間体(6a)の82gを製造した。
段階(b)中間体(6b)の調製
【0167】
【化56】

【0168】
上の段階(a)から得られた中間体(6a)(21.0g、0.05モル)を、2Nの炭酸ナトリウムの添加によって調整したpH7の水(200ml)中に溶解した。得られた溶液を、次に塩化シアヌル(9.2g、0.05モル)のアセトン(100ml)と水(300g)中の懸濁液に0℃から5℃で加えた。
【0169】
得られた混合物のpHを6.5に1時間維持し(2N炭酸ナトリウム溶液を使用する)、次いでその温度をそのときそのまま20℃まで温めた。
Pfaltz−Bauerから入手した4−アミノ−3−メトキシアゾベンゼン−3’−スルホン酸(15.4g、0.05モル)のpH7(2Nの炭酸ナトリウム)の水(200ml)中の溶液を、次に20℃の温度で加えた。得られた混合物を、30℃から40℃およびpH7から8(2Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて調整)で、18時間にわたって撹拌した。
【0170】
その生成物を、塩(NaCl)を加えて沈殿させ、その沈殿物を濾過して集め、その生成物、中間体(6b)を、乾燥せずに段階(c)で使用した。
段階(c):染料(6)の調製
上の段階(b)から得られた中間体(6b)、水(1000ml)および48重量%の水酸化ナトリウム溶液(100ml)の混合物を、60℃から70℃の温度で、2時間撹拌し、次いでそのまま20℃まで冷却した。
【0171】
得られた生成物を、塩(NaCl)の添加によって沈殿させ、その沈殿物を、濾過によって集め、その沈殿物を水(500ml)に溶解し、膜チューブ押出しにおける透析により50μS未満の伝導率まで精製した。水を60℃で蒸発させた後、染料(6)をオレンジ色の固体として得た。
【0172】
インキ
表IおよびIIに記載されているインキは、指示された染料、すなわちもっとはっきり言えば、式(1)の化合物またはその塩のいずれかを包含することにより調製することができる。前方の2列目に示されている数字は、該当する成分の部数を表し、すべてが重量部である。このインキは、加熱式またはピエゾ式インキジェットプリンティングによって紙に適用することができる。
【0173】
表IおよびIIにおいては以下の略語が使用されている:
PG =プロピレングリコール
DEG =ジエチレングリコール
NMP =N−メチルピロリドン
DMK =ジメチルケトン
IPA =イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P =2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12 =プロパン−1,2−ジオール
BDL =ブタン−2,3−ジオール
CET =臭化セチルアンモニウム
PHO =NaHPO
TBT =t−ブタノール
TDG =チオジグリコール
【0174】
【表1】

【0175】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物またはその塩
【化1】

[式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立に、Hまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し;
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有し;
(iii)式(1)の化合物は、式(1a):
【化2】

の化合物ではない]。
【請求項2】
2個のみのアゾ基を含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が場合によって置換されているナフチルまたはフェニルである、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
Rによって表される両方の基がHである、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
およびQが場合によって置換されているフェニレンである、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
およびAに−COH基および−COSH基が存在しない、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
−COH基および−COSH基を有していない、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
−SOH基および−PO基から選択される1個から6個の基を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびAが、それぞれ独立に、−SOHおよび−POから選択される1個、2個または3個の基を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の式(1)の化合物またはその塩および媒質を含むインキ。
【請求項11】
媒質が液体である、請求項10に記載のインキ。
【請求項12】
(a)0.01部から30部の式(1)の化合物またはその塩と、
(b)70部から99.99部の液体媒質と
を含み、すべての部が重量部であり、(a)+(b)の部の数の合計が100である、請求項11に記載のインキ。
【請求項13】
画像を被印刷物に印刷する方法であって、式(1)の化合物またはその塩を含むインキを、インキジェットプリンターを用いて被印刷物に適用するステップを含む方法
【化3】

[式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立にHまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し;
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有する]。
【請求項14】
式(1)の化合物が請求項1から9のいずれか一項に記載のものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の式(1)の化合物またはその塩を含むインキにより印刷された被印刷物。
【請求項17】
チャンバーおよびインキを含むインキジェットプリンターカートリッジであって、インキがチャンバー中に存在し、そのインキが請求項1から9のいずれか一項に記載の式(1)の化合物またはその塩を含むインキジェットプリンターカートリッジ。
【請求項18】
インキジェット印刷インキを調製するための式(1)の化合物またはその塩の使用
【化4】

[式中、
は、場合によって置換されているフェニルであり;
は、場合によって置換されているアリールであり;
およびQは、それぞれ独立に、式(1)に示されている−N=N−基および−NR−基にパラ結合している場合によって置換されているフェニレン環であり;
各Rは、独立にHまたは置換基であり;
但し:
(i)式(1)の化合物は、−SOH基および−PO基から選択される少なくとも1つの基を有し、
(ii)式(1)の化合物は、−COH基および−COSH基の総数より多くの−SOH基および−PO基から選択される基を有し、前記インキジェット印刷インキは、水および少なくとも1つの水混和性有機溶媒または低融点固体のいずれかを含む]。

【公表番号】特表2009−503179(P2009−503179A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523440(P2008−523440)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002749
【国際公開番号】WO2007/012828
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】