説明

アタッチメントを備える搬送用歯付ベルト

【課題】アタッチメントの溶着部の剥離・亀裂の発生に起因する溶着部の強度低下を防止して、溶着部の剥離・亀裂に起因するベルト本体からのアタッチメントの脱落による搬送物へのアタッチメントの混入防止効果を高め、しかも搬送物に混入したアタッチメントの破片または脱落したアタッチメントを確実に探知可能なアタッチメント付きの搬送用歯付ベルトを提供する。
【解決手段】歯付ベルト100は、プーリ140と噛み合う多数の歯110を有するベルト本体101と、ベルト本体101の背面120に溶着されている溶着部132を有するアタッチメント130とを備える。アタッチメント130は、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属135を含有する。溶着部132の全体は、背面120が巻掛け部101aにおいて平面状態の平面部121内に、または、ベルト長さ方向で、歯110の歯元111の歯元形成範囲S1内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト本体の背面に溶着されているアタッチメントを備える搬送用歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
アタッチメントを備える搬送用ベルトにおいて、アタッチメントがベルト本体の背面に溶着されることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、アタッチメントが、金属探知機により探知可能な金属を含有している樹脂から形成されることも知られている(例えば、特許文献1)。
さらに、食品等の搬送物を搬送する搬送装置の部品の破片、または食品等の扱いに使用される用具の破片が、食品等に混入した場合に、食品等に混入している破片を探知することができるように、該部品または該用具が、金属探知機により探知可能な金属を含有していることも知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−222126号公報(段落0002,0016)
【特許文献2】特開2004−224557号公報(段落0013−0015)
【特許文献3】登録実用新案第3149839号公報(段落0015−0017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アタッチメントがベルト本体の背面に溶着されたベルトにおいて、プーリに巻き掛けられた部分である巻掛け部では、ベルト本体の背面がプーリの外周面に沿って湾曲するため、溶着部には、背面の湾曲に起因する応力が発生して、背面からの溶着部の剥離や溶着部での亀裂(以下、「溶着部の剥離・亀裂」という。)が生じることがあり、そのような場合には、アタッチメントの溶着強度が低下して、ベルトの耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
また、搬送物とアタッチメントとの衝突など、アタッチメントに何らかの衝撃が加えられるなどの原因により、アタッチメントの一部が分離して破片となって搬送物に混入すること、または、溶着部の剥離・亀裂に起因してベルト本体から脱落したアタッチメントが搬送物に混入することがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するものであり、本発明の目的は、ベルト本体の背面に溶着されるアタッチメントの溶着部の構造により、溶着部の剥離・亀裂の発生に起因する溶着部の強度低下を防止して、耐久性を向上させながら、溶着部の剥離・亀裂に起因するベルト本体からのアタッチメントの脱落による搬送物へのアタッチメントの混入防止効果を高め、しかもアタッチメントの破片、またはベルト本体から脱落したアタッチメントが搬送物に混入した場合にも、該破片または脱落したアタッチメントを確実に探知する、アタッチメント付きの搬送用歯付ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、請求項1に係る発明は、プーリに巻き掛けられるとともに前記プーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、前記ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、前記背面に載置された搬送物を搬送する搬送用歯付ベルトにおいて、前記アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、前記溶着部の全体が、ベルト長さ方向で、前記歯の歯元の形成範囲内に位置することにより、前述の課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、プーリに巻き掛けられるとともに前記プーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、前記ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、前記背面に載置された搬送物を搬送する搬送用歯付ベルトにおいて、前記アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、前記ベルト本体が、前記プーリに巻き掛けられている部分である巻掛け部と、前記巻掛け部以外の非巻掛け部とに分けられるときに、前記背面が、前記巻掛け部および前記非巻掛け部において面形状が不変状態に維持される形状不変部を有し、前記溶着部の全体が、前記形状不変部に溶着されていることにより、前述の課題を解決したものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記溶着部の全体が、前記ベルト長さ方向で、前記歯の歯先の形成範囲内に位置していることにより、前述の課題を解決したものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記溶着部が、前記アタッチメントの溶着部形成部位に形成され、前記溶着部形成部位の形成材料が、前記ベルト本体の形成材料である熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂であることにより、前述の課題を解決したものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記搬送物は食品であり、前記ベルト本体が有するすべての心線が、アラミドから形成されていることにより、前述の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
そこで、本発明の搬送用歯付ベルトは、プーリに巻き掛けられるとともにプーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、背面に載置された搬送物を搬送することにより、背面上に載置された搬送物は、アタッチメントにより反搬送方向への移動が防止されるため、搬送物が転がりやすい場合や搬送路である背面が傾斜する場合などにおいても、歯付ベルトは搬送物を確実に搬送することができるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、請求項1に係る本発明の搬送用歯付ベルトによれば、アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、溶着部の全体が、ベルト長さ方向で、歯の歯元の形成範囲内に位置していることにより、歯付ベルトが該プーリの外周を走行するときに、歯元の形成範囲では、歯の曲げ剛性により、背面がプーリの外周に沿って周方向に湾曲することが抑制されて、プーリ間を走行しているときの歯付ベルトの背面の面形状の変化が抑制されるので、背面の湾曲による溶着部の剥離・亀裂の発生が抑制されて、溶着部の剥離・亀裂に起因する溶着部の強度低下が防止され、アタッチメントを備える歯付ベルトの耐久性を向上させることができるとともに、溶着部の剥離・亀裂に起因するベルト本体からのアタッチメントの脱落の発生が抑制されるので、ベルト本体に溶着されたアタッチメントの搬送物への混入防止効果を高めることができる。
さらに、アタッチメントの破片が発生したとしても、また、溶着部の剥離・亀裂に起因してベルト本体からのアタッチメントの脱落が発生したとしても、該破片または脱落したアタッチメントが搬送物に混入した場合には、金属探知機により、破片または脱落したアタッチメントに含まれている被探知金属を探知することで、搬送物に混入している破片または脱落したアタッチメントを確実に探知することができる。
このように、本発明によれば、ベルト本体の背面に溶着されるアタッチメントの、搬送物への混入に関して、溶着部の剥離・亀裂に起因するベルト本体からのアタッチメントの脱落の発生抑制効果の向上、および搬送物に混入している脱落したアタッチメントの確実な探知という二重の安全策が講じられた搬送用歯付ベルトが得られる。
【0014】
請求項2に係る本発明の搬送用歯付ベルトによれば、ベルト本体が、プーリに巻き掛けられている部分である巻掛け部と、巻掛け部以外の非巻掛け部とに分けられるときに、背面が、巻掛け部および非巻掛け部において面形状が不変状態に維持される形状不変部を有し、溶着部の全体が、形状不変部に溶着されていることにより、歯付ベルトが該プーリの外周を走行するときに、背面において、溶着部が溶着されている形状不変部では、プーリ間を走行しているときの歯付ベルトの背面の面形状の変化が抑制されて、該面形状が維持されるので、背面の面形状の変化に起因する溶着部の剥離・亀裂の発生が抑制される。このため、請求項1に係る発明と同様の効果を奏することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明の搬送用歯付ベルトによれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、溶着部の全体が、ベルト長さ方向で、歯の歯先の形成範囲内に位置することにより、溶着部の全体が、ベルト長さの方向で、歯元の形成範囲内で、かつ歯先の形成範囲内に位置するために、歯付ベルトにおいて剛性が極めて高い部位に位置することになるので、プーリの外径が小さい場合やベルト張力が大きい場合にも、背面の面形状の変化を抑制することができるので、溶着部の剥離・亀裂の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項4に係る本発明の搬送用歯付ベルトによれば、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、溶着部が、アタッチメントの溶着部形成部位に形成され、溶着部形成部位の形成材料が、ベルト本体の形成材料である熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂であることにより、アタッチメントにおいて溶着部が形成される溶着部形成部位と、溶着部が溶着される背面を有するベルト本体とが、同一材料の熱可塑性樹脂により形成されるので、溶着部での溶着強度が大きくなり、溶着部の剥離・亀裂の発生を一層抑制することができる。
【0017】
請求項5に係る本発明の搬送用歯付ベルトによれば、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
搬送物は食品であり、ベルト本体が有するすべての心線が、アラミドから形成されていることにより、搬送物が食品であるために、歯付ベルトは定期的に洗浄水により洗浄されるにも拘わらず、すべての心線が耐水性に優れたアラミド製であるので、錆の発生により寿命が短いスチール製の心線とは異なり、心線の耐久性が向上して、歯付ベルトの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例である搬送用歯付ベルトの要部斜視図。
【図2】図1の歯付ベルトがプーリに巻き掛けられたときの横断面での要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の搬送用歯付ベルトは、プーリに巻き掛けられるとともに前記プーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、前記ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、前記背面に載置された搬送物を搬送する搬送用歯付ベルトにおいて、前記アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、前記溶着部の全体が、ベルト長さ方向で、前記歯の歯元の形成範囲内に位置するにより、溶着部の剥離・亀裂の発生に起因する溶着部の強度低下を防止して、耐久性を向上させながら、溶着部の剥離・亀裂に起因するベルト本体からのアタッチメントの脱落による搬送物へのアタッチメントの混入防止効果を高め、しかもアタッチメントの破片、またはベルト本体から脱落したアタッチメントが搬送物に混入した場合にも、該破片または脱落したアタッチメントを確実に探知するものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0020】
例えば、金属探知機は、磁気またはX線を利用したものであってもよい。
また、ベルト本体が被探知金属を含有していてもよく、これにより、ベルト本体の破片が搬送物に混入した場合にも、該破片を金属探知機により確実に探知することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を図1,図2を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施例である搬送用歯付ベルト100は、搬送ラインとしての食品製造ラインにおいて使用され、図示されない搬送物としての食品(以下、「搬送食品」という。)を搬送する。
【0022】
歯付ベルト100は、駆動プーリおよび被動プーリを含む複数の歯付プーリから構成されるプーリ群の各プーリ(図2には、前記プーリ群の1つのプーリ140が示されている。)に巻き掛けられるベルト本体101と、ベルト本体101の搬送面である背面120に溶着されている溶着部132を有する1以上のアタッチメント130とを備える。
溶着部132の全体は、ベルト長さ方向およびベルト幅方向に直交する方向(以下、「直交方向」という。)でアタッチメント130において背面120寄りの部分である溶着部形成部位131に形成されている。
【0023】
ベルト本体101は、前記各プーリに巻き掛けられる無端の長尺体であるベルト基部102と、ベルト基部102に埋設された心線103と、ベルト基部102の内周側にベルト長さ方向に所定のピッチで配列されて前記各プーリと順次噛み合う多数の歯110とを有する。ベルト基部102は、その内周側において、ベルト長さ方向で隣接する歯110同士の間に歯底部104を形成している。
【0024】
一体に形成されているベルト基部102および各歯110は、樹脂材料である熱可塑性樹脂、本実施例ではポリウレタンにより一体成形されている。ベルト基部102に設けられてベルト本体101が有するすべての心線103は、合成樹脂、本実施例ではアラミドにより形成されている。
また、アタッチメント130は、樹脂材料である熱可塑性樹脂、本実施例ではポリウレタンにより、溶着部形成部位131とともに一体成形されている。
【0025】
本実施例において複数のアタッチメント130は、ベルト長さ方向に複数である所定数の歯110が配置される間隔を置いて、背面120に溶着部132にて固着されている。各アタッチメント130は、ほぼ直方体の部材であり、ベルト基部102が有する面である背面120に対して前記直交方向に長くなるように背面120から突出していて、背面120上の搬送食品との当接により、該搬送食品がベルト本体101に対して搬送方向とは反対方向(すなわち、反搬送方向)に移動することを防止する。溶着部132の形状は、面状であってもよいし、帯状であってもよい。
なお、明細書において、「ほぼ」との表現は、「ほぼ」との修飾語がない場合を含むとともに、「ほぼ」との修飾語がない場合とは厳密には一致しないものの、「ほぼ」との修飾語がない場合と比べて作用効果に関して有意の差異がない範囲を意味している。
【0026】
図2を併せて参照すると、前記プーリ群を構成する複数のプーリを代表して示されるプーリ140は、その外周面に複数のプーリ歯141を有する歯付プーリであり、本実施例では歯付ベルト100により伝達される動力で回転駆動される被動プーリである。
各プーリ歯141と噛合する各歯110は、ベルト長さ方向における歯元形成範囲S1に亘って設けられる歯元111と、ベルト長さ方向における歯先形成範囲S2に亘って設けられる歯先112とを有している。
そして、ベルト長さ方向での歯元111および歯先112のそれぞれの形成範囲である歯元形成範囲S1および歯先形成範囲S2は、それぞれベルト幅方向(すなわち、歯110の歯幅方向)で一定であり、歯元形成範囲S1は歯先形成範囲S2の全体を含んでいる。
【0027】
また、前記プーリ群に掛け渡されたベルト本体101が、図2に代表して示されるように、プーリ140に巻き付けられている部分である巻掛け部101a(図2参照)と、巻掛け部101a以外の部分である非巻掛け部101b(図1参照)とに分けられるとき、背面120は、巻掛け部101aおよび非巻掛け部101bにおいて面形状が不変状態に維持される形状不変部としての平面部121と、巻掛け部101aおよび非巻掛け部101bにおいて面形状が変化する形状変化部122とを有している。
【0028】
平面部121は、巻掛け部101aおよび非巻掛け部101bにおいて平面状態である一方、形状変化部122は、巻掛け部101aにおいて周方向(または、プーリ140の回転方向)に湾曲した曲面状態であり、非巻掛け部101bにおいては、ほぼ平面、または巻掛け部101aでの曲面よりも曲率が小さい曲面である。
なお、周方向および径方向は、それぞれプーリ140の回転中心線(以下、「プーリ中心線」という。)を中心とする周方向および径方向である。
【0029】
平面部121は、巻掛け部101aにおいては径方向(非巻掛け部101bにおいては直交方向)で歯110に対向する部分であり、歯110での曲げ剛性が大きいことにより、巻掛け部101aにおいて面形状が湾曲状態になることが抑制または防止されて、その面形状がプーリ中心線にほぼ平行な1つのほぼ平面(横断面での形状では、ほぼ直線)になる状態である前記平面状態になる部分である。
そして、本実施例では、歯元形成範囲S1には平面部121の全体が含まれ、平面部121には歯先形成範囲S2の全体が含まれる。
したがって、歯元形成範囲S1が平面部121の全体と一致していてもよい。
ここで、横断面とは、部材がプーリ中心線に直交する平面で切断されたときの断面である。
【0030】
一方、形状変化部122は、巻掛け部101aにおいては径方向(非巻掛け部101bにおいては直交方向)で歯底部104に対向する部分であり、該歯底部104での曲げ剛性が歯110よりも小さいために、その面形状がプーリ歯141の歯先112のためにプーリ140の外周に沿って湾曲した曲面(例えば、円柱面(横断面での形状は、円弧))となる部分である。
なお、前記不変状態(例えば、平面状態)とは、前記形状不変部(例えば、平面部121)における背面120の面形状が、ほぼ変化しない(ほぼ平面である)状態を意味している。
【0031】
背面120に溶着されている溶着部132の全体は、ベルト長さ方向で、歯元形成範囲S1内に位置し、ベルト幅方向で、ベルト幅(または、歯幅)の範囲内、本実施例では、ベルト幅よりも狭い範囲に位置している。
したがって、ベルト長さ方向での溶着部132の幅は、歯元形成範囲S1以下であり、本実施例では、歯元形成範囲S1以下で、かつ歯先形成範囲S2以下である(図2参照)。そして、溶着部132の全体は平面部121に溶着されている。
なお、別の例として、ベルト長さ方向での溶着部132の幅は、歯元形成範囲S1以下で、かつ歯先形成範囲S2以上であってもよい。
【0032】
ベルト幅方向での任意の位置における、ベルト幅方向に直交する平面での断面および横断面で、歯110の形状は、ベルト長さ方向での歯110の中央を通る中心線C(図2に、横断面での中心線Cが示されている。)を対称線として、ほぼ線対称であり、溶着部132も、該中心線Cを対称線としてほぼ線対称の形状を有する。
そして、本実施例では、各歯110において、中心線Cは、ベルト長さ方向に直交する1つの平面(または、巻掛け部101aでは、プーリ中心線を含む1つの平面)である中心平面P上に位置する。
そして、中心平面P上の中心線Cに対する歯110および溶着部132のこのような形状により、巻掛け部101aにおいて、前記形状不変部(例えば、平面部121)での背面120の面形状を前記不変状態(例えば、平面状態)とすることが容易になる。
【0033】
アタッチメント130は、金属探知機(図示されず)により探知可能な被探知金属135を含有する熱可塑性樹脂により形成されている。
そして、本実施例において、アタッチメント130の形成材料である該熱可塑性樹脂は、ベルト本体101の形成材料である熱可塑性樹脂と同じである。
アタッチメント130と背面120の平面部121との溶着は、熱溶着、超音波溶着、レーザー溶着、振動溶着などの溶着手段により行われる。
【0034】
被探知金属135は、磁気を利用して金属を探知する金属探知機による探知が可能な材料、例えば強磁性材料であり、アタッチメント130内に、アタッチメント130の破片が搬送食品に混入したときに、金属探知機により該破片の探知が可能となる程度の分散状態で、すなわち均一に分散されている。
したがって、非探知金属は、アタッチメント130の形成材料である該熱可塑性樹脂に前記分散状態が実現できる程度の均一な状態で分散されて含有されている。
被探知金属135は、粉末状の強磁性材料であり、本実施例では黒色酸化鉄粉である。別の例として、被探知金属135は、短繊維状または微小片化されたフレーク片状の強磁性材料であってもよく、さらに黒色酸化鉄以外の材料であってもよい。
【0035】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
歯付ベルト100は、プーリ140に巻き掛けられるとともにプーリ140と噛み合う多数の歯110を有するベルト本体101と、ベルト本体101の背面120に溶着されている溶着部132を有するアタッチメント130と、を備え、背面120に載置された搬送食品を搬送する。
この構成により、背面120上に載置された搬送食品は、アタッチメント130により反搬送方向への移動が防止されるため、搬送食品が転がりやすい場合や搬送路である背面120が傾斜する場合などにおいても、歯付ベルト100は搬送食品を確実に搬送することができる。
【0036】
アタッチメント130が、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属135(例えば、黒色酸化鉄粉)を含有し、溶着部132の全体が、歯元形成範囲S1内において、平面部121に位置する。
この構成により、歯付ベルト100がプーリ140の外周を走行するときに、歯元形成範囲S1では、歯110の曲げ剛性により、背面120がプーリ群の各プーリ(例えば、プーリ140)の外周に沿って周方向に湾曲することが抑制されて、前記プーリ群のプーリ間を走行しているときの歯付ベルト100の背面120の面形状の変化が抑制されて、該面形状が維持されるので、背面120の湾曲による溶着部132の剥離・亀裂の発生が抑制されて、溶着部132の剥離・亀裂に起因する溶着部132の強度低下が防止され、アタッチメント130を備える歯付ベルト100の耐久性を向上させることができる。しかも、溶着部132の剥離・亀裂に起因するベルト本体101からのアタッチメント130の脱落の発生が抑制されるので、ベルト本体101に溶着されたアタッチメント130の搬送食品への混入防止効果を高めることができる。
さらに、アタッチメント130の破片が発生したとしても、また、溶着部132の剥離・亀裂に起因してベルト本体101からのアタッチメント130の脱落が発生したとしても、該破片または脱落したアタッチメント130が搬送食品に混入した場合には、金属探知機により、破片または脱落したアタッチメント130に含まれている被探知金属135を探知することで、搬送食品に混入しているアタッチメント130の破片または脱落したアタッチメント130を確実に探知することができる。
【0037】
このように、ベルト本体101の背面120に溶着されるアタッチメント130の、搬送食品への混入に関して、溶着部132の剥離・亀裂に起因するベルト本体101からのアタッチメント130の脱落の発生抑制効果の向上、および搬送食品に混入している脱落したアタッチメント130の確実な探知という二重の安全策が講じられた歯付ベルト100が得られる。
さらに、形状不変部が平面部121であることにより、背面120の形状、したがってベルト本体101のベルト基部102の形状が簡単化されるので、平面部121を有する歯付ベルト100のコストを削減することができる。
【0038】
溶着部132の全体が、ベルト長さの方向で、歯元形成範囲S1内で、かつ歯先形成範囲S2内に位置するために、溶着部132の全体が歯付ベルト100において剛性が極めて高い部位に位置することになるので、プーリの外径が小さい場合やベルト張力が大きい場合にも、背面120の面形状の変化を抑制するので、溶着部132の剥離・亀裂の発生を抑制することができる。
【0039】
アタッチメント130の形成材料が、ベルト本体101の形成材料である熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂(例えば、ポリウレタン)であることにより、アタッチメント130と溶着部132が溶着される背面120を有するベルト本体101とが同一材料の熱可塑性樹脂により形成されるので、溶着部132での溶着強度が大きくなり、溶着部132の剥離・亀裂の発生を一層抑制することができる。
【0040】
歯付ベルト100により搬送される搬送物が搬送食品であり、ベルト本体101が有するすべての心線103が、アラミドから形成されていることにより、搬送食品が搬送食品であるために、歯付ベルト100は定期的に洗浄水により洗浄されるにも拘わらず、すべての心線103が耐水性に優れたアラミド製であるので、錆の発生により寿命が短いスチール製の心線とは異なり、心線103の耐久性が向上して、歯付ベルト100の耐久性を向上させることができる。
【0041】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
背面120の形状不変部または平面部121は、歯110の剛性を部分的に利用することにより、または歯110の剛性を利用することなく、例えば、背面120に形成された部分(例えば、台状の部分)により構成されてもよい。
この場合、平面部121は、歯元形成範囲S1内または歯先形成範囲S2内に位置していてもよいし、または、平面部121の少なくとも一部が、歯元形成範囲S1外または歯先形成範囲S2外に位置していてもよい。
形状不変部において、不変状態に維持される面形状は、1つの平面以外に、複数の平面から構成される複合平面、曲面および少なくとも1つの平面から構成される複合面、または、曲面であってもよい。
アタッチメント130が複数の別個の部材により構成される場合、溶着部132を有する溶着部形成部位131が、少なくともベルト基部102と同じ形成材料で形成されていればよい。
ベルト基部102およびアタッチメント130のそれぞれを形成している樹脂材料は異なっていてもよい。
搬送物は、食品以外のもの(例えば、医薬品、樹脂製品)であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
100・・・搬送用歯付ベルト
101・・・ベルト本体
101a・・・巻掛け部
103・・・心線
110・・・歯
111・・・歯元
112・・・歯先
120・・・背面
121・・・平面部
130・・・アタッチメント
131・・・溶着部形成部位
132・・・溶着部
135・・・被探知金属
140・・・プーリ
S1・・・歯元形成範囲
S2・・・歯先形成範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに巻き掛けられるとともに前記プーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、前記ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、前記背面に載置された搬送物を搬送する搬送用歯付ベルトにおいて、
前記アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、
前記溶着部の全体が、ベルト長さ方向で、前記歯の歯元の形成範囲内に位置していることを特徴とする搬送用歯付ベルト。
【請求項2】
プーリに巻き掛けられるとともに前記プーリと噛み合う多数の歯を有するベルト本体と、前記ベルト本体の背面に溶着されている溶着部を有するアタッチメントと、を備え、前記背面に載置された搬送物を搬送する搬送用歯付ベルトにおいて、
前記アタッチメントが、金属探知機により探知可能であるとともに均一に分散された被探知金属を含有し、
前記ベルト本体が、前記プーリに巻き掛けられている部分である巻掛け部と、前記巻掛け部以外の非巻掛け部とに分けられるときに、前記背面が、前記巻掛け部および前記非巻掛け部において面形状が不変状態に維持される形状不変部を有し、
前記溶着部の全体が、前記形状不変部に溶着されていることを特徴とする搬送用歯付ベルト。
【請求項3】
前記溶着部の全体が、前記ベルト長さ方向で、前記歯の歯先の形成範囲内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の搬送用歯付ベルト。
【請求項4】
前記溶着部が、前記アタッチメントの溶着部形成部位に形成され、
前記溶着部形成部位の形成材料が、前記ベルト本体の形成材料である熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の搬送用歯付ベルト。
【請求項5】
前記搬送物は食品であり、
前記ベルト本体が有するすべての心線が、アラミドから形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の搬送用歯付ベルト。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43741(P2013−43741A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181959(P2011−181959)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(595027549)アラム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】