説明

アディポネクチン上昇剤

【課 題】本発明は新規なアディポネクチン上昇剤および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤を提供する。
【解決手段】ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中アディポネクチンの上昇剤、及び肥満又は肥満に起因する疾患の予防または改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アディポネクチンとは脂肪組織特異的に産生されるホルモン因子であり、主に、骨格筋、肝臓、動脈壁細胞に作用して、脂肪の代謝分解を促進したり、糖の取り込みを促進したりする。この作用により、アディポネクチンは、抗糖尿病作用、抗動脈硬化作用、抗高血圧作用などを示すことが知られている。
【0003】
内臓脂肪が増えると、脂肪組織からのアディポネクチンの産生量が低下し、この低アディポネクチン血症が肥満を助長する。また、低アディポネクチン血症は、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症などの肥満に起因する各種疾患を引き起こすと考えられている。従って、アディポネクチンの産生増強は、肥満、肥満による各種疾患、および生活習慣病の予防または治療につながるとして近年注目を浴びている。
【0004】
特許文献1には、ウイルス性、アルコール性、および薬物性の各種肝機能障害の予防、改善および治療に有効な、ホスファチジルセリンを有効成分とする肝機能改善剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ホスファチジルイノシトールを高濃度に含むリン脂質組成物をラットに投与することにより血中コレステロールが減少することから、この混合物が血中中性脂肪および血中コレステロールの代謝改善剤として好適であることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−112731号公報
【特許文献2】特開2000−300186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計比率が40重量%以上であるリン脂質組成物が血中アディポネクチンの濃度を上昇させるという効果を発見し、それによってこのリン脂質組成物が肥満や肥満に起因する各種疾患の予防または改善剤の有効成分として好適に使用できることを見出した。
【0008】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の各項の新規なアディポネクチン上昇剤などを提供する。
項1. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計の比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計の比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。
項2. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルセリンの比率が、30重量%以上である項1に記載のアディポネクチン上昇剤。
項3. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルイノシトールの比率が、40重量%以下である項1又は2に記載のアディポネクチン上昇剤。
項4. リン脂質組成物中に、全体に対して、ホスファチジルセリンが20〜50重量%、ホスファチジルイノシトールが10〜25重量%含まれる項1〜3のいずれかに記載のアディポネクチン上昇剤。
項5. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含む、肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
項6. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルセリンの比率が、30重量%以上である項5に記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
項7. ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルイノシトールの比率が、40重量%以下である項5又は6に記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
項8. リン脂質組成物中に、その全体に対して、ホスファチジルセリンが20〜50重量%、ホスファチジルイノシトールが10〜25重量%含まれる項5〜7のいずれかに記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
項9. 肥満に起因する疾患が、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、肝機能障害、又はメタボリックシンドロームである、項5〜8のいずれかに記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含むことを特徴としている。アディポネクチンは脂肪組織から分泌されるホルモンの一種であり、本発明におけるリン脂質組成物は、このアディポネクチンの血中濃度を上昇させる効果を有する。
【0010】
血中のアディポネクチン濃度が上昇すると、肝臓や骨格筋での脂肪の代謝分解や糖の取り込みが促進され、その結果、肥満や、肥満に起因する疾患が改善される。
具体的には、アディポネクチンは肝臓と骨格筋に作用し、糖の取り込みや脂肪酸の燃焼を促すAMPキナーゼを活性化する。活性化したAMPキナーゼは肝臓では糖新生を抑制するとともに脂肪を燃焼し、骨格筋では糖を取り込むことで脂肪を燃焼させる。その結果、肥満が改善される。また、肝臓では中性脂肪やコレステロールが減少することで脂肪が減り、肥満による肝機能障害や脂肪肝が改善される。また、血中のアディポネクチン濃度が上昇することにより、血中の中性脂肪やコレステロールの濃度が減少し、高脂血症、高血圧、動脈硬化が改善される。また、肝臓における糖新生が抑制され、血中の糖が骨格筋に取り込まれることにより、糖尿病が改善される。
また、血中アディポネクチン濃度が上昇すると、肥満になり難くなるため、肥満や肥満に起因する疾患が予防される。
【0011】
アディポネクチンは、正常な脂肪組織からは適量が分泌されるが、肥満状態の脂肪組織ではその分泌量が減少する傾向がある。従って、本発明の剤は、肥満によってアディポネクチンの分泌量が減少したヒトに好適に使用できる。また、遺伝的に、男性は女性よりもアディポネクチンの分泌量が少ないため、特に男性が好適な対象となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
リン脂質組成物
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防または改善剤は、ホスファチジルセリン(以下、「PS」ということがある)、ホスファチジルイノシトール(以下、「PI」ということがある)、及びホスファチジン酸(以下、「PA」ということがある)の合計重量比が50%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計重量比が40%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含むことを特徴としている。
【0013】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満に起因する疾患の予防または改善剤においては、PSとPIとPAとの合計含有量は、リン脂質組成物の全体に対して、55重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。上記範囲であれば、アディポネクチン上昇効果が十分に得られる。PSとPIとPAとの合計含有量の上限値は、原料組成の観点から、通常80重量%程度である。
また、PSとPIとの合計含有量は、リン脂質組成物の全体に対して、45重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましい。上記範囲であれば、アディポネクチン上昇効果が十分に得られる。PSとPIとの合計含有量の上限値は、原料組成の観点から、通常70重量%程度である。
PS、PI、及びPAの合計に対するPSの比率は30重量%以上が好ましく、45重量%以上がより好ましい。このPSの比率の上限値は通常70重量%程度である。
また、PS、PI、及びPAの合計に対するPIの比率は、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。PS、PI、及びPAの合計に対するPIの比率の下限値は通常20重量%程度である。
また、リン脂質組成物は、全体に対して、PSを20〜50重量%程度、PIを10〜25重量%程度含むことが好ましく、PSを25〜45重量%程度、PIを15〜20重量%程度含むことがより好ましい。
【0014】
上記のリン脂質組成物には、PS、PI、及びPAの酸性リン脂質のほかに、ホスファチジルコリン(以下、「PC」ということもある)、ホスファチジルエタノールアミン(以下、「PE」ということもある)等の中性リン脂質が含まれていても良い。
【0015】
製剤
【0016】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満に起因する疾患の予防または改善剤は、経口的あるいは非経口的に投与することができる。経口投与剤としては散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などの固形製剤あるいはシロップ剤、エリキシル剤などの液状製剤が挙げられる。また、非経口投与剤としては、注射剤などが挙げられる。また、本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満に起因する疾患の予防または改善剤を注射剤で用いる場合、懸濁液、乳化液、リポソーム製剤のいずれであってもよい。
【0017】
上記の各製剤は、常法、例えば第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従って、例えばリン脂質組成物と添加剤等とを混合し、製剤化することにより得ることができる。
具体的には、顆粒剤は、例えばリン脂質組成物に賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えて均等に混和した後、例えば圧縮造粒、転動造粒、噴霧乾燥造粒、押出し造粒、解砕造粒、流動層造粒又は撹拌造粒等で粒状とすればよい。また、錠剤は、例えばリン脂質組成物に賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えて均等に混和したものを、直接圧縮成型して製造するか、リン脂質組成物と賦形剤、結合剤、崩壊剤等で予め製造した顆粒をそのまま、又は上記添加剤を加えて均等に混和した後、圧縮成型して製造すればよい。カプセル剤は、例えばリン脂質組成物に賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えて均等に混和したもの、又は所望により粒状としたもの、あるいは粒状としたものにコーティング剤で剤皮を施したものを、カプセルに充填することにより製造できる。また、固形の経口剤には、滑沢剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、ビタミンなどが含まれていてよい。
賦形剤としては、例えば白糖、乳糖、ブドウ糖、でんぷん又はマンニット等を挙げることができる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、デンプン、結晶セルロース又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はシリカ等を挙げることができる。結合剤としては、例えばアラビアゴム、カルメロース、ゼラチン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース又はポピドン等を挙げることができる。コーティング剤としては、例えばゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウ等、又は腸溶性コーティング剤(例えば酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等)等で剤皮を施してもよい。着色剤としては、例えば食用赤色2号、食用黄色5号、食用青色2号などの食用色素などが挙げられる。安定化剤としては、例えば無水クエン酸、ラウリン酸ナトリウム又はグリセロール等を挙げることができる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、B、B、B12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどが挙げられる。漢方薬(生薬エキス)としては、例えば甘草、当帰、生姜などが挙げられる。
【0018】
シロップ剤やエリキシル剤は、リン脂質組成物を基剤中に懸濁又は乳化させることにより得られる。シロップ剤又はエリキシル剤などの液状製剤に使用し得る基剤としては、例えば、精製水、エタノール又はそれらの混液等の溶剤等が挙げられる。液状製剤には、さらに、懸濁化剤(例えば、アラビアゴム、カンテン、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、乳化剤(例えば、ポリソルベート80、アラビアゴム等)、矯味剤(例えば、単シロップ、ハチミツ、白糖、酒石酸等)、芳香剤(例えば、サリチル酸メチル、ウイキョウ油、オレンジ油、メントール等)、保存剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム等)、緩衝剤(例えば、クエン酸、炭酸水素等)などが含まれていてもよい。
【0019】
注射剤は、常法に従って、例えば無菌操作法によってリン脂質組成物と添加剤を溶剤に溶解することにより製造される。注射剤に使用し得る溶剤としては、例えば注射用蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。注射剤には、さらに、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤又は保存剤等が含まれていてもよい。安定剤、溶解補助剤としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム若しくはメチルセルロース等のセルロース誘導体又はトラガント若しくはアラビアゴム等の天然ゴム類等が挙げられる。界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、水素添加ヒマシ油のポリオキシエチレンエーテル又はレシチン等が挙げられる。乳化剤としては、例えば、ステアリン酸ポリオキシル、ラウロマクロゴール、ポリソルベート80又はアラビアゴム等が挙げられる。無痛化剤としては、例えば、アミノ安息香酸エチル、イノシトール、塩酸メプリルカイン、塩酸リドカイン、クロロブタノール、プロピレングリコール又はベンジルアルコール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、クエン酸もしくはその塩、ブドウ糖、リン酸もしくはその塩又は酢酸もしくはその塩等が挙げられる。保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム又はソルビタン酸塩等が挙げられる。
【0020】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤中のリン脂質組成物の含有量は、対象とする疾患の種類によって異なるが、経口固形製剤の場合、20〜100%(w/w)程度とすればよい。また、経口液体製剤の場合、0.5〜20%(w/v)程度とすればよい。また、注射剤の場合、0.1〜10%(w/v)程度とすればよい。
【0021】
用途
上記リン脂質組成物は、アディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤の有効成分である。
【0022】
本発明において、肥満には、一般的なBMI値や体脂肪率によって分類される「やや肥満」や「肥満」が含まれる。例えば、成人におけるBMI値では25.0以上、体脂肪率では男性は20%以上、女性は26%以上が肥満又はやや肥満に分類されている。また、本発明における肥満には、いわゆるメタボリックシンドロームのように内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が引き起こされやすくなった状態も含まれる。
また、肥満に起因する疾患としては、例えば高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、狭心症、脳卒中、胆石、痛風などが挙げられる。また、肥満に起因する肝障害(薬剤性肝障害を除く、アルコール性又は非アルコール性肝障害が含まれる)も挙げられる。また、メタボリックシンドロームも肥満に起因する疾患に含まれる。
【0023】
さらに、本発明でいう予防は、疾患の発症を完全に抑えることのほか、疾患の進行を抑制することを含み、治療は、疾患が完快することのほか、疾患が改善することを含む。
【0024】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤の投与量は、疾患の種類や程度によって適宜調整すればよく、例えばリン脂質組成物の量に換算して、成人一人当たり、1日に50〜2000mg程度が好ましく、100〜1000mg程度がより好ましい。
【0025】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防または改善剤の投与対象は、肥満の人、やや肥満気味の人、メタボリックシンドロームの人、肥満に起因する上記各疾患を患っている人が好適であるが、肥満になり易い人を含む健常人も投与対象にすることができる。
【0026】
製造方法
上記説明したリン脂質組成物は、例えば、特開2007−014270号公報に記載の方法で製造することができる。
具体的には、本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防または改善剤は、PC及びPEを含むリン脂質組成物に、セリン及びホスホリパーゼD(以下「PLD」ということもある。)を添加してリン脂質の塩基交換反応を行うことにより製造される。
この製造方法で用いられるリン脂質原料はいかなる起源のものでも良いが、植物由来のものが好ましい。中でも、大豆、菜種、ひまわり、パーム由来のものが好ましい。また、市販品として、例えばSLP−WHITE(PC25.6重量%、PE24.1重量%、PA8重量%、PI12重量%、その他約30重量%)、SLP−PIパウダー(一例:PC18重量%、PE22重量%、PA8重量%、PI17重量%、その他約35重量%)(いずれも辻製油製)等を利用することもできる。
また、この製造方法において、出発原料となるリン脂質組成物としては、PC及びPEを合計で35重量%以上含むものを用いればよい。上記の植物由来のリン脂質組成物や上記市販品は、通常、この比率でPC及びPEを含むが、PC及びPEの含有比率が35重量%未満であるときは、高純度リン脂質例えばSLPC55(辻製油製)を添加することにより35重量%以上に調整すればよい。
【0027】
塩基交換反応系中のリン脂質の濃度は、5〜40重量%程度であることが好ましく、10〜30重量%程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分量のリン脂質が得られ、かつ塩基交換反応での転移率が実用上十分になる。
【0028】
この製造方法では、塩基交換反応を行う前に、リン脂質組成物を有機溶媒及び水からなる二相系中で攪拌する。
上記有機溶媒としては特に限定されず、n−ヘプタン、n−ヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。上記有機溶媒としては、極性溶媒及び非極性溶媒を含むものが好ましい。
【0029】
上記水としては、イオン交換水、精製水、蒸留水、水道水等が挙げられ、これらに酢酸等を含有させてpH調整のための緩衝液としてもよい。上記水としては、緩衝液を用いるのが好ましい。上記緩衝液の濃度は、0.1〜2M程度が好ましく、0.4〜1M程度がより好ましい。上記二相系において、水の混合比は、有機溶媒に対して好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは2〜15重量%程度、更に好ましくは5〜10重量%程度である。
【0030】
上記二相系において、有機溶媒が極性溶媒及び非極性溶媒を含む場合、その混合比は特に限定されないが、好ましくは、極性溶媒:非極性溶媒(容積比)が0.5:9.5〜5:5程度である。このような有機溶媒及び水からなる二相系としては、例えば、ヘキサン:アセトン:水、ヘプタン:アセトン:水、ヘキサン:酢酸エチル:水の組み合わせ等が挙げられる。
【0031】
上記リン脂質の攪拌は、好ましくは10〜40℃程度、より好ましくは20〜30℃程度で行う。また、上記攪拌は、30分〜2時間程度行うことが好ましい。攪拌は一般的な攪拌機を用いることができる。攪拌の強度は特に制限はないが、液を上下に混合できる程度でよい。本発明の方法において、上記リン脂質は、通常、有機溶媒に溶解した状態であり、上記攪拌により、リン脂質と有機溶媒及び水がエマルションを形成していてもよい。
【0032】
この製造方法では、有機溶媒及び水からなる二相系中でリン脂質を攪拌した後、セリン含有化合物およびPLDを添加して、PC及び/又はPEの塩基交換反応を行う。
本反応系中におけるセリンの濃度は、好ましくは20〜40重量%程度、より好ましくは25〜30重量%程度である。
【0033】
上記PLDとしては、リン脂質の塩基部分を加水分解することができるものであれば特に限定されず、例えば植物由来のPLD、微生物由来のPLD等が挙げられる。植物由来のPLDとしてはキャベツ、大豆由来のPLD等が挙げられ、微生物由来のPLDとしては放線菌、糸状菌由来のPLD等が挙げられる。
【0034】
本反応系中におけるPLDの濃度は、リン脂質1gに対し、好ましくは5〜200U、より好ましくは20〜100Uである。なお、1Uは、95%大豆ホスファチジルコリンを基質とし、基質濃度0.16%の0.2M酢酸緩衝液(pH4.0、10mMのCaCl、1.3%のTriton X−100を含む)を37℃にて反応させた時、1分間に1μmolのコリンを遊離する酵素量である。
【0035】
上記塩基交換反応は、pH3.5〜10程度の条件で行うことが好ましく、pH4〜9程度がより好ましい。また、反応温度は、10〜40℃程度が好ましく、20〜30℃程度がより好ましい。
【0036】
上記塩基交換反応により、リン脂質中のPC、PE等と、セリンとが反応してPS等が得られる。PIは、通常、上記塩基交換反応においてヒドロキシル基含有化合物と反応しにくいので、原料のリン脂質に含まれるPIがほぼそのままリン脂質組成物に含まれる。
本発明の製造方法により得られるリン脂質組成物の例として、PI及びPSを含むリン脂質組成物以外に、PI及びPAを含むリン脂質組成物、PI及びPEを含むリン脂質組成物等が挙げられる。
【0037】
塩基交換反応を行った後は、例えば加熱等の処理でPLDを失活させ、遠心分離法等により有機溶媒層と水層を分離して有機溶媒層を得たあと、有機溶媒を減圧下で除去することによって濃縮する。次いで、アセトン又はエタノールで晶析を行い、固液分離によって固形物を得、乾燥することにより本発明におけるリン脂質組成物を単離することができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
レシチンとしてSLP−PIパウダー(辻製油株式会社製)7gをヘプタン及びアセトンの混合液70mLと共に混合して溶解させ、レシチン溶液を得た。これとは別に、セリン20g及びホスホリパーゼD(ナガセケムテックス株式会社製)500Uを1M酢酸緩衝液(pH4.5)67mL中に含む酵素含有セリン溶液を調製した。
このレシチン溶液に酵素含有セリン溶液を加え、30℃にて5時間攪拌した。次いで、ヘプタン及びアセトンの混合液75mL及び塩化ナトリウム20gを加え、1時間攪拌し、これを静置して分離した後、有機層を回収し、PI及びPSを含有する有機溶媒溶液を得た。この有機溶媒溶液は固形分8gを含有していた。
【0040】
実施例2
実施例1において、セリン及び酢酸緩衝液の量を1.2倍に調整した他は、実施例1と同様にして、リン脂質組成物を得た。
【0041】
実施例3
実施例1において、原料レシチンとして、SLP−PIパウダー(辻製油株式会社製)に代えて、SLPホワイト(辻製油株式会社製)とSLP−PC55(辻製油株式会社製)との混合物(SLPホワイト:SLP-PC55=9:1(重量比))を用いた他は、実施例1と同様にして、リン脂質組成物を得た。
【0042】
実施例4
実施例1において、原料レシチンとして、SLP−PIパウダー(辻製油株式会社製)に代えて、SLPホワイト(辻製油株式会社製)とSLP−PC55(辻製油株式会社製)との混合物(SLPホワイト:SLP−PC55=8:2(重量比))を用いた他は、実施例1と同様にして、リン脂質組成物を得た。
【0043】
実施例5
実施例1において、得られたリン脂質組成物をさらにエタノールで洗浄した他は、実施例1と同様にして、リン脂質組成物を得た。
<リン脂質組成物の組成>
実施例1〜5で得たリン脂質組成物の組成を以下の表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
組成物の分析条件
上記リン脂質組成物の組成は高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により、下記の条件で行なった。
HPLC条件
使用カラム:ジーエルサイエンス社製 Unisil Q NH(4.6mm I.D.×250mm)
移動相:アセトニトリル/メタノール/50mMリン酸二水素アンモニウム=1856/874/270
流速:1.3mL/分
検出:UV 205nm
【0046】
(1)肥満モデルラットに対する試験1
次に、実施例1(以下、「PIPS」と称する。)のリン脂質組成物を肥満モデルのZuckerラットに与え、その効果を検証した。
食餌組成および飼育方法
6週齢の雄性Zuckerラットを2群に分け(1群6匹)、AIN-76組成に準じた食餌を与える対照群(TG群)と、実施例1のリン脂質組成物(ナガセケムテックス社製PIPS強化大豆リン脂質(商品名:PIPSナガセ))を2%添加したPIPS群を設けた。以上の2群を4週間飼育し、9時間絶食後、エーテル麻酔下で腹部大動脈採血により屠殺を行い、肝臓及び脂肪組織を摘出した。また、血液から血清を得た。
食餌組成を表2に示す。
【表2】

【0047】
血清パラメーターの測定方法
血清脂質濃度はHPLC法および酵素法により測定した。即ち、血清トリグリセリド濃度および血清コレステロール濃度はLiposearch(株式会社スカイライト・バイオテック、秋田)、血清リン脂質濃度はリン脂質E-テストワコー(コリンオキシダーゼ・DAOS法、和光純薬)、血清遊離脂肪酸濃度はNEFA C-テストワコー(ACS・ACOD法、和光純薬)を用いて測定した。血糖値は、グルコースCII-テストワコー(和光純薬)を用いてムタロターゼ・GOD法により測定した。肝機能障害マーカーとしては、グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ基転移酵素(GOT)およびグルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(GPT)(トランスアミナーゼCII-テストワコー、POP・TOOS法、和光純薬)を測定した。血清のインスリン(レビス・ラットインスリンキット、シバヤギ)、アディポネクチン(マウス/ラットアディポネクチンELISAキット、大塚製薬)はELISA法により測定した。
【0048】
肝臓脂質濃度の測定方法
肝臓総脂質はFolchらの方法(Folch, J., et al., J. Biol. Chem., 1957; 226: 497-509.)により抽出・濃縮し、肝臓TG濃度はFletcher法(Flecher, MJ., Clin. Chim. Acta, 1968; 22: 393-397.)、肝臓リン脂質濃度はBartlettらの方法(Bartlett, GR., J. Biol. Chem., 1959; 234: 466-471.)で定量した。肝臓総コレステロール濃度は、コレステロールE-テストワコー(和光純薬)を用いてコレステロールオキシダーゼ・DAOS法により測定した。
【0049】
肝臓脂質代謝関連酵素活性の測定方法
肝臓の各細胞画分の調製は、以下の通り行った。肝臓約2gを氷冷下で6倍容の0.25M スクロース,1mM EDTA,10mM Tris-HCl バッファー (pH7.4)でホモジナイズ後、700×gで10分間遠心分離した上清を、さらに10,000×gで10分間遠心分離することにより、ミトコンドリア画分を沈殿させた。その上清を125,000×g, 60分間超遠心分離し、上清のサイトソル画分と沈殿したミクロソーム画分を得た。各画分のタンパク質量はLowry法(Lowry, OH., et al., J. Biol. Chem., 1951; 193: 265-275.)により測定した。
脂肪酸合成の律速酵素である脂肪酸合成酵素(FAS)活性は、Kellyらの方法(Kelley, DS., et al., Biochem. J.,1986; 235: 87-90.)に従い、サイトソル画分を用いて測定を行った。脂肪酸が合成系にNADPHを供給するグルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)及びリンゴ酸酵素(ME)の活性は、Kellyらの方法(Kelley, DS., et al., Biochem. J.,1984; 217: 543-549.)及びOchoa(Ochoa, S., Methods in Enzymology, 1955; 1: 739-753.)らの方法に従い、サイトソル画分を用いて測定を行った。脂肪酸β酸化系の律速酵素であるカルニチンパルミトイル転移酵素(CPT)活性は、Markwellらの方法(Markwell, MA., et al., J. Biol. Chem., 1973; 248: 3433-3440.)に、ペルオキシソームにおける脂肪酸β酸化活性はLazarowの方法(Lazarow, PB., Methods in Enzymology, 1981; 72: 315-319.)にそれぞれ従い、ミトコンドリア画分を用いて測定を行った。トリグリセリド合成系の律速酵素であるホスファチジン酸ホスホヒドロラーゼ(PAP)活性は、Waltonらの方法(Walton, PA., et al., Anal. Biochem., 1985; 151: 479-486.)に従い、ミクロソーム画分を用いて測定を行った。
【0050】
統計解析
実験によって得られたデータは、Student’s t-testを用いて有意差検定を行った。
【0051】
結果
体重、摂食量、食効率および臓器重量への影響
Zuckerラットにおける体重、摂食量、食効率および臓器重量の変化を表3に示す。
【表3】

【0052】
4週間の飼育において、初体重、終体重、体重増加量および摂食量に群間で差は見られなかった。臓器重量については、肝臓重量にPIPS摂取による有意な低下が認められた。また脾臓において、PIPS摂取により有意な低下が見られた。
【0053】
肝臓脂質濃度に及ぼす影響
Zuckerラットにおける肝臓脂質濃度の変化を表4に示す。
【表4】

【0054】
肝臓のトリグリセリド濃度およびコレステロール濃度は、PIPS摂取により顕著な低下が認められた。一方、リン脂質濃度は群間で有意な差は認められなかった。
【0055】
血清脂質、血糖値、血清中ホルモンおよびサイトカイン濃度に及ぼす影響
Zuckerラットにおける血清脂質の変化を表5に示す。
【表5】

【0056】
Zuckerラットにおけるトリグリセリドの濃度変化を表6に示す。
【表6】

【0057】
Zuckerラットにおけるコレステロールの濃度変化を表7に示す。
【表7】

【0058】
血清のトリグリセリド濃度において、PIPS摂取による有意な上昇が認められた。コレステロール濃度において、PIPS摂取による有意な低下が認められた。リン脂質濃度、遊離脂肪酸濃度および血糖値は群間で差は見られなかった。アディポネクチン濃度は、PIPS摂取により有意に上昇することが認められた。インスリン濃度は、PIPS摂取により低下傾向を示したが有意ではなかった。
【0059】
肝臓障害指標酵素活性に及ぼす影響
Zuckerラットにおける肝臓障害の指標酵素の活性の結果を表8に示す。
【表8】

【0060】
血中の肝臓障害指標酵素活性は、GOTでPIPS摂取による有意な低下が認められた。GPTにおいても、PIPS摂取により低下傾向を示し、肝機能の改善が示唆された。
【0061】
肝臓トリグリセリド代謝関連酵素活性に及ぼす影響
Zuckerラットにおける肝臓トリグリセリドの代謝関連酵素活性の結果を表9に示す。
【表9】

【0062】
脂肪酸合成系酵素である脂肪酸合成酵素とグルコース6リン酸脱水素酵素の活性は、PIPS摂取により有意に低下することが認められた。脂肪酸β酸化系の律速酵素であるカルニチンパルミトイル転移酵素活性は、PIPS摂取により有意に上昇することが認められた。脂肪酸合成系のリンゴ酸酵素、トリグリセリド合成系のホスファチジン酸ホスホヒドラーゼおよびペルオキシソームβ酸化活性においては、群間に差は見られなかった。
【0063】
(2)肥満モデルラットに対する試験2
試験1において、ラットの飼育期間を4週間に代えて3ヶ月とし、ラット数6匹(n=6)を5匹(n=5)にした以外は、試験1と同様の方法で、肥満モデルのZuckerラットに対するリン脂質組成物の作用を検証した。測定したのは、血清中トリグリセライド濃度、及び総コレステロール(T-Cho)濃度である。測定結果を以下の表10に示す。
【表10】

リン脂質組成物の投与により、血清中トリグリセライド濃度、及び総コレステロール(T-Cho)濃度は有意に減少した。
肥満モデルラットに対する試験1の結果及び試験2の結果から、本発明で使用するリン脂質は、高脂血症に対する改善効果、ひいては動脈硬化症に対する改善効果を有することが分る。
【0064】
(3)肥満モデルラットに対する試験3
実施例1のリン脂質組成物に代えて、実施例5のリン脂質組成物を用いた以外は、試験1と同様の方法で、肥満モデルのZuckerラットに対するリン脂質組成物の作用を検証した。測定したのは、肝臓重量、肝臓におけるトリグリセライド濃度、及び各種血清パラメーターである。測定結果を以下の表11〜13に示す。
【0065】
脂肪肝に及ぼす効果
【表11】

リン脂質組成物の投与により、肝臓中の中性脂肪濃度が有意に低下し、肝臓重量も低減し、脂肪肝軽減効果が示唆された。
肝機能改善および抗高脂血症効果
【表12】

リン脂質組成物の投与により、血中AST濃度およびALT濃度の有意な低下が認められ、肝機能の改善が示唆された。また、血中コレステロール濃度の有意な低下及び中性脂肪量の低下傾向が認められた。
【0066】
アディポネクチン上昇効果
【表13】

リン脂質組成物の投与により、血中アディポネクチン濃度の増加傾向が認められた。
【0067】
(4)ヒト肥満者に対する肝機能改善効果試験
BMI>25の男性4名(年齢35〜49歳)に、実施例5の組成物を、毎朝1回、連続して8週間服用させた(摂取量400mg /日)。食後2.5時間の時点で血液を採取し、血中AST濃度、ALT濃度、およびγ−GT濃度を測定した。測定結果を表14に示す。
【表14】

リン脂質組成物の摂取により、血中AST濃度は変化しなかったが、ALT濃度及びγ−GT濃度が低減し、肝機能改善効果が確認された。
【0068】
(5)ヒト肥満者に対する高脂血症改善効果試験
BMI>24の男性5名(年齢29〜49歳)に、実施例5の組成物を、毎朝1回、連続して8週間服用させた(摂取量400mg /日)。食後2.5時間の時点で血液を採取し、血中コレステロール濃度を測定した。測定結果を表15に示す。
【表15】

リン脂質組成物の摂取により、血液中の総コレステロール濃度の低減が認められた。
【0069】
(6)ヒト高血圧既往歴者に対する高血圧改善効果試験
高血圧既往歴のある1名(男性、59歳)に、実施例5の組成物を、毎朝1回、連続して8週間服用させた(摂取量400mg/日)。毎日朝と晩に血圧を測定した。結果を表16、図1、及び図2に示す。
【表16】

リン脂質組成物の摂取により、朝の血圧が収縮期で16低下し、拡張期で11低下し、夜の血圧が収縮期で14低下し、拡張期で6低下した。また、ばらついていた高い血圧値が服用約1(朝)〜1.5ヶ月(夜)後に安定した。
【0070】
(7)ヒトに対するアディポネクチン上昇効果試験
血清中アディポネクチン濃度が低値(4〜6μg/mL)である男性4名(年齢35〜45歳)にPIPSナガセ(実施例1)を400mg含む顆粒製剤を、毎朝1回、連続して8週間服用させた。食後2.5時間の時点で血液を採取し、血清アディポネクチン濃度を測定した。
結果を図3に示す。服用前のアディポネクチン濃度は4.8±0.7μg/mLであったのに対し、服用8週間後には5.7±1.0μg/mLに増大した(p<0.05)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のアディポネクチン上昇剤、および肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤は、血中のアディポネクチン濃度を上昇させることで体内の脂肪燃焼を促進し、肥満、メタボリックシンドロームを含む肥満に起因する疾患を始めとする、様々な生活習慣病に対して予防または改善効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】高血圧既往歴のあるヒトに実施例5のリン脂質組成物を服用させた場合の朝血圧の推移を示す図である。
【図2】高血圧既往歴のあるヒトに実施例5のリン脂質組成物を服用させた場合の夕血圧の推移を示す図である。
【図3】ヒトに実施例5のリン脂質組成物を服用させた前後での血清アディポネクチン濃度を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計の比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計の比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。
【請求項2】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルセリンの比率が、30重量%以上である請求項1に記載のアディポネクチン上昇剤。
【請求項3】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルイノシトールの比率が、40重量%以下である請求項1又は2に記載のアディポネクチン上昇剤。
【請求項4】
リン脂質組成物中に、全体に対して、ホスファチジルセリンが20〜50重量%、ホスファチジルイノシトールが10〜25重量%含まれる請求項1〜3のいずれかに記載のアディポネクチン上昇剤。
【請求項5】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計比率が50重量%以上、且つホスファチジルセリンとホスファチジルイノシトールとの合計比率が40重量%以上であるリン脂質組成物を有効成分として含む、肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
【請求項6】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルセリンの比率が、30重量%以上である請求項5に記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
【請求項7】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジン酸の合計に対するホスファチジルイノシトールの比率が、40重量%以下である請求項5又は6に記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
【請求項8】
リン脂質組成物中に、全体に対して、ホスファチジルセリンが20〜50重量%、ホスファチジルイノシトールが10〜25重量%含まれる請求項5〜7のいずれかに記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。
【請求項9】
肥満に起因する疾患が、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、肝機能障害、又はメタボリックシンドロームである、請求項5〜8のいずれかに記載の肥満又は肥満に起因する疾患の予防若しくは改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−266311(P2008−266311A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71794(P2008−71794)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】