説明

アディポネクチン調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物及び医薬

【課題】 アディポネクチンを調節する作用があり、天然物由来で安全性が高く、アディポネクチン調節作用を有するアディポネクチン調製剤を提供する。
【解決手段】 ホップ苞抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするアディポネクチン調節剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、ホップ苞より得られるアディポネクチン調節剤、それを含有する飲食品、食品添加物及び医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップはアサ科の多年生植物であり、その毬果(未受精の雌花が成熟したもの)を一般にホップと呼んでいる。このホップのルプリン部分(毬果の内苞の根元に形成される黄色の顆粒)は、ホップの苦味、芳香の主体であり、ビール醸造において酵母、麦芽と並んで重要なビール原料である。またホップは、民間療法では鎮静剤や抗催淫剤として通用している。
【0003】
一方、ホップ苞はホップ毬果よりルプリン部分を除いたものであり、ビール醸造には有用とされず、場合によってはビール醸造の際にホップ苞は取り除かれ、副産物として生ずる。その際、ホップ苞は土壌改良用の肥料として用いられる他に特に有用な利用法は見出されておらず、より付加価値の高い利用法の開発が望まれている。
【0004】
日本人の糖尿病・肥満患者は、糖尿病患者だけで推定700万人でその数はなお増加の一途をたどっている。糖尿病の大部分を占める一般のII型糖尿病及び肥満は、複数の原因遺伝子が組合わさり、更に生活習慣などの環境因子が重なって発症する多因子病である。糖尿病・肥満増加の最大の原因は食生活の欧米化、特に高脂肪食と身体活動の減少など生活習慣に起因したインスリン抵抗性の増大と考えられる。
【0005】
また、現在、動脈硬化性疾患は日本人の死因統計で癌と並んで大きな位置を占め、またその多くは働き盛りに突然発症して、社会的にも家庭的にも極めて大きな損失を与えることから、その効果的な予防及び治療対策の確立は必須の課題である(非特許文献1)。
【0006】
アディポネクチン(adiponectin)は脂肪細胞に特異的に高発現する分泌蛋白質として
発見されたが、その後の研究で単球の血管内皮細胞への接着や、平滑筋細胞の増殖を抑制するなど、抗動脈硬化的な作用を持つことが明らかとなった。
【0007】
糖尿病との関係については、動物モデルにおいて、II型糖尿病サルにおいて、インスリン抵抗性の進行に伴いアディポネクチンが低値になること、グルコースクランプにおける糖取り込み指標(M値)に相関して、血中アディポネクチンが上昇することが示されている(非特許文献2)。さらに、II型糖尿病マウス(db/dbマウス、KKAマウス)への生理的濃度のアディポネクチン投与により、インスリン抵抗性が改善すること、脂肪欠損マウスでのインスリン抵抗性をアディポネクチン投与が改善することも示され、アディポネクチンの発現低下又は欠乏は、肥満インスリン抵抗性の原因であり、ひいては肥満及び2型糖尿病の原因であることが判明している。(非特許文献3)。
【0008】
また、冠動脈疾患患者や肥満患者では健常人に比べてアディポネクチンの血中濃度が低値を示すことが報告されている。
【0009】
このように、脂肪組織特異的なタンパク質であるアディポネクチンは、血管平滑筋の増殖、遊走抑制作用、抗動脈硬化作用、単球やマクロファージの活性化抑制作用、抗炎症作用などが知られていたが、さらに、最近の研究により、肝線維化抑制、正常肝細胞増殖促進効果のあることも確かめられている。
【0010】
したがって、このような生活習慣病の根本的予防法や治療法を確立することが急務となっている。
【非特許文献1】動脈硬化性疾患診療ガイドライン、日本動脈硬化学会編、2002
【非特許文献2】DIABETES Vol.50:1126・1133(2001)
【非特許文献3】Nature Medecine Vol. 7: 941-946 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
薬物治療の普及は安易に薬剤に依存し、ライフスタイルの改善が十分おこなわれない恐れもある。しかしながら、現状では、天然物由来であって、生活習慣病に対する幅広い機能性を有し、かつ、副作用の可能性が極めて小さいという点において、十分満足できるものは見出されておらず、これらの性質を満足するアディポネクチン調節剤が切望されている。
本発明が解決しようとする課題は、アディポネクチンを調節する効果があり、天然物質由来で安全性が高く、アディポネクチン調節作用を有するアディポネクチン調節剤、飲食品、食品添加物または医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明者らはホップ苞抽出物が、アディポネクチン調節作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の内容を要旨とするものである。
(1)ホップ苞抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするアディポネクチン調節剤。
(2)前記ホップ苞抽出物がホップ苞由来ポリフェノールであることを特徴とする(1)に記載のアディポネクチン調節剤。
(3)ホップ苞抽出物であり、かつ分画分子量1,000以上の限外ろ過膜により処理した際に膜を透過しない物質を有効成分として含有することを特徴とするアディポネクチン調節剤。
(4)ホップ苞に含有されるポリフェノール様物質であり、かつ分画分子量が1,000以上の限外ろ過膜により処理した際に膜を透過しない物質であるアディポネクチン調節剤。(5)(1)または(2)に記載のアディポネクチン調節剤を含有する飲食品。
(6)(1)または(2)に記載のアディポネクチン調節剤を含有する食品添加物。
(7)(1)または(2)に記載のアディポネクチン調節剤を含有する医薬。
【発明の効果】
【0014】
本発明のホップ苞抽出物を有効成分とするアディポネクチン調節剤は、副作用が極めて少なくアディポネクチンを調節することができる。
【0015】
また、上記のアディポネクチン調節剤を有効成分として含有する飲食品、食品添加物及び医薬は、副作用が極めて少なくアディポネクチンを調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アディポネクチンの発現低下又は欠乏は、肥満インスリン抵抗性の原因であり、ひいては肥満及びII型糖尿病の原因であることが判明している。さらに、冠動脈疾患患者や肥満患者では健常人に比べてアディポネクチンの血中濃度が低値を示すことが報告されている。よって、本発明におけるアディポネクチン調節剤とは、アディポネクチンの血中濃度を正常に調節するものを指す。
【0017】
本発明におけるホップ苞由来ポリフェノールは、ホップ苞抽出物中に由来ポリフェノールを有効成分として含まれているものである。本発明におけるアディポネクチン調節剤は、ホップ苞抽出物あるいはホップ苞由来ポリフェノールのいずれでもよいが、好ましくはホップ苞由来ポリフェノールである。精製度の高いホップ苞由来ポリフェノールは、飲食品等に添加する場合、おりや濁りを発生しにくく、また、飲食品等自身に与える風味の影響も抑えることができるといった加工上の応用性が高い。
【0018】
本発明で使用するホップ苞由来ポリフェノールを含有するホップ苞抽出物は、ホップ毬果よりルプリン部分を除いて得られるものであり、一般に、ホップ毬果を粉砕後、篩い分けによってルプリン部分を除くことによってホップ苞を得る。しかし、最近のビール醸造において、ホップ苞を篩い分けして除去する手間を省くために、ビール醸造に有用でないホップ苞を取り除かずにホップ毬果をそのままペレット状に成形し、ホップペレットとして、ビール醸造に利用する傾向にある。したがって、本発明の原料としては、ホップ苞を含むものであれば特に限定せず、ホップ苞を含むホップ毬果やホップペレットを原料としてもなんら問題ない。
【0019】
ホップ苞抽出物の抽出方法としては、特に限定されるものではないが、例えば原料であるホップ苞またはホップ苞を含むホップ毬果やホップペレットなどを、4〜95℃、好ましくは30〜60℃で0〜50%、好ましくは10〜40%のエタノールと混和し、抽出する。原料と抽出溶媒の割合は、1:20〜100(重量比)、好ましくは1:30〜90(重量比)であり、攪拌下、20〜60分、好ましくは30〜50分で行う。5〜75℃、好ましくは15〜25℃で珪藻土(商品名「シリカ300S」、中央シリカ社製)濾過によりさらに清澄化を行う。ホップ苞抽出物は中性脂肪代謝制御作用を有するため、中性脂肪低減代謝制御剤として有用である。
【0020】
ホップ苞抽出物又はホップ苞由来ポリフェノールはアディポネクチン調節作用を有するため、アディポネクチン調節剤として有用である。
【0021】
ホップ苞抽出物からホップ苞由来ポリフェノールを得るには、例えば、ホップ苞抽出物をポリフェノール様物質を吸着する吸着樹脂で吸着処理して、ホップ苞抽出液からホップ苞由来ポリフェノール様物質を分離精製すればよい。吸着処理方法は特に限定されないが、例えばホップ苞抽出液を0〜40℃、好ましくは15〜25℃で吸着樹脂に吸着させればよい。
【0022】
吸着樹脂は、ポリフェノール様物質を吸着するものであれば特に限定されないが、例えば親水性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製「トヨパールHW40」)、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製「セパビーズSP−825」)、ゲル型合成樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンHP-20」)を挙げることができる。これらの吸着樹脂を充填した吸着カラムにホップ苞抽出物を通液し、ポリフェノール様物質を吸着させる。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールでポリフェノール様物質を溶出させればよい。
【0023】
ホップ苞抽出物またはホップ苞由来ポリフェノール様物質のうち、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜で処理した際に膜を透過しない物質がアディポネクチンを調節する点で好ましい。
【0024】
次に、限外ろ過膜を用いる方法について述べる。上記の抽出工程または吸着工程で得られたホップ苞抽出物またはホップ苞由来ポリフェノール様物質を含む処理液を、分画分子量が1,000以上、好ましくは10,000〜50,000の限外ろ過膜で処理する。その際必要があれば、ホップ苞由来ポリフェノール様物質を含む処理液を減圧濃縮し、エタノール濃度を下げておくこともできる。また処理は、抽出溶媒の有機溶媒濃度や抽出溶媒とホップまたはホップ苞の割合にもよるが、およそ上残り液の量が処理開始時の1/10〜1/100、好ましくは1/20〜1/100になるまで行う。その際の圧力は9.8kPa〜981kPa、好ましくは98kPa〜686kPaである。このまま液体状態で利用することも可能であるが、下記記述のとおり、乾燥させることもできる。得られた画分からエタノールを25〜100℃、好ましくは35〜90℃で減圧濃縮し、濃縮液をそのまま或いはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥を行い、抽出粉末品を得る。
【0025】
なお、ホップ苞由来ポリフェノール様物質であって、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜により処理した際に膜を通過しない物質を得る方法は、上記方法に限定されるものではなく、ホップ苞由来抽出物を分画分子量1,000以上の限外ろ過膜で処理した後、限外ろ過膜を透過しない処理液を、ゲル状高分子で吸着処理をしてもよい。
【0026】
本発明のアディポネクチン調節剤により、アディポネクチンを調節する効果を得るための成人1日あたりの投与量は、ホップ苞抽出物あるいはホップ苞ポリフェノールとして、100〜2500 mgであるが、好ましくは150〜1500 mg、更に好ましくは150〜1000 mg、特に150〜750 mgであるのが好ましい。
【0027】
本発明のアディポネクチン調節剤を利用する場合、ポリフェノール類の吸収の点から、1日あたりのホップ苞抽出物量またはホップ苞由来ポリフェノール量を少ない回数で摂取する方がポリフェノール類の血中濃度が高くなり、ポリフェノール類の作用を発現しやすい。
【0028】
本発明のアディポネクチン調節剤は、飲料を含む、広く食品一般に食品添加物として添加して用いることができ、例えばスープ類、飲料(ジュース、酒、ミネラルウォーター、コーヒー、茶、ノンアルコールビール等)、菓子類(ガム、キャンディー、チョコレート、スナック、ゼリー等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)に好適に用いられる。
【0029】
本発明のアディポネクチン調節剤を含む医薬品の剤形は特に限定されないが、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、形態に応じて当分野において通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、薬剤用担体等を添加して通常使用されている方法によって製造することができる。
【0030】
実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0031】
(製造例1)ゲル型合成樹脂によるホップ毬花からの調製
ホップ毬花20gを乳鉢で粉砕し、2Lの水で攪拌下、90℃、40分間抽出した。ろ過後、放冷し、抽出液を親水性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製トヨパールHW40)80mLを充填したカラムに2時間かけて通液し(SV=12.5)、ついで400mLの5%エ
タノール水溶液で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して無臭のかすかに苦味を呈した淡黄色の粉末0.8gを得た。ホップ毬花からの収率は4%であった。
【0032】
(製造例2)ゲル型合成樹脂によるホップ苞からの調製
ホップ苞20gを600mLの50%エタノール水溶液で攪拌下、80℃、40分間抽出した。ろ過後、容積が300mLになるまで減圧濃縮し、その濃縮液をスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製セパビーズSP−825)80mLを充填したカラムに1時間かけて通液し(SV=3.75)、ついで400mLの水で洗浄した。さらに同カラムに80%エタノール水溶液400mLを通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して無臭のかすかに苦味を呈した淡黄色の粉末1.6gを得た。ホップ苞からの収率は8%であった。
【0033】
(製造例3)限外ろ過膜によるホップ毬花からの調製
ホップ毬花20gを乳鉢で粉砕し、2Lの水で攪拌下、95℃、40分間抽出した。ろ過後、放冷し、抽出液を分画分子量が50,000の限外ろ過膜(アミコン社製XM50)により、98kPa、室温下、20mLになるまで処理した。得られた上残り液を減圧乾固し、無臭のかすかに苦味を呈した淡黄色の粉末0.2gを得た。ホップ毬花からの収率は1%であった。
【0034】
(製造例4)限外ろ過膜によるホップ苞からの調製
ホップ苞20gを600mLの50%エタノール水溶液で攪拌下、80℃、40分間抽出した。ろ過後、抽出液を分画分子量が10,000の限外ろ過膜(アミコン社製YM10)により、294kPa、室温下、60mLになるまで処理した。得られた上残り液を凍結乾燥して無臭のかすかに苦味を呈した淡黄色の粉末0.8gを得た。ホップ苞からの収率は4%であった。
【0035】
(製造例5)ゲル型合成樹脂によるホップ苞からの調製品のさらなる精製)
製造例2(ゲル型合成樹脂によるホップ苞からの調製)で得たゲル型合成樹脂によるホップ苞からの調製品0.8gを、500mLの10%エタノール水溶液に溶解し、分画分子量が10,000の限外ろ過膜(アミコン社製YM10)により、98kPa、室温下、20mLになるまで処理した。得られた上残り液を凍結乾燥して無臭のかすかに苦味を呈した淡黄色の粉末0.4gを得た。
【0036】
(比較例1)錠剤
ラクトース140gとコーンスターチ17gとを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
【0037】
(実施例1)錠剤
製造例1で得られたホップ苞ポリフェノール150gとラクトース90gとコーンスターチ17gを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
【0038】
(試験例1)ホップ苞ポリフェノールの脂肪蓄積抑制作用(ヒト)
次に、臨床試験により、ホップ苞ポリフェノールの脂肪蓄積抑制作用を検討した。
【0039】
[方法]
1) 対象
有償ボランティアで、本試験への参加を自発的に志願した20歳以上の男女の中から、試験開始4週間前に実施した予備試験において、肥満指数が22<BMI≦30を示す50名を選択した。ただし、脂質代謝に影響を及ぼす可能性のある医薬品や健康食品を服用している者、食品アレルギーの既往歴のある者、本試験開始1ヶ月以内に200 ml、または、3ヶ月以内に400 mlを越えるような採血(献血など)をした者、試験責任医師が試験参加に不適であると判断した者は対象から除外した。この50名を、試験に直接参加しない医師が、予備試験の検査結果(血液、理学的検査)および摂取前に行ったCT検査結果をもとに、年齢、体重、身長、肥満指数、血圧、中性脂肪、全脂肪面積(TFA)、内臓脂肪面積(VFA)、および皮下脂肪面積(SFA)ウェスト/ヒップ等の背景がそろうように2群に分けた。なお、本試験は、ヘルシンキ宣言の主旨に従い、被験者に対しては研究内容、方法などについて十分な説明を行ない、文書による同意を得て実施した。
【0040】
2) 試験食
本試験食は、実施例1で製造されたホップ苞ポリフェノールを含有した錠剤(150mg/1錠)および比較例1で製造されたポリフェノールが配合されていない対照食(プラセボ錠剤)とした。また、試験実施前に、試験責任医師が、風味、香りなどの官能面やパッケージなどにより、被験飲料とプラセボ錠剤間で区別がつかないことを確認した。
【0041】
3) 摂取方法とスケジュール 試験は、無作為割付による2重盲検法を採用した並行2群間比較試験とした。試験期間は、前観察期間4週間、摂取期間12週間、摂取終了後の観察期間4週間の計20週間を設定した。被験者は、2つのグループに分け、次の方法で試験錠剤を摂取させた。
【0042】
A群:ホップ苞ポリフェノール含有被験錠剤(150 mg/1錠)を夕食前に各4錠摂取(計4錠/日)、以下 ホップ苞ポリフェノール被験錠剤摂取群
B群:プラセボ錠剤(150 mg/1錠)を夕食前に各4錠摂取 (計4錠/日)、以下 プラセボ錠剤摂取群 なお、被験者には、試験錠剤を毎日摂取することを除いて、それまでの食生活、喫煙および運動などの日常生活を変えないように指導した。
【0043】
4) 血液検査
全ての被験者に、摂取開始日、摂取12週間後(摂取終了)において、アディポネクチン、Na、Ca、Cl、K、GPT(ALT)、LDH、総ビリルビン、UIBC、Fe、γ-GTP、総蛋白質、尿素窒素、血球成分(白血球、赤血球、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、血小板数)の測定項目を実施した。すべての検査に際しては、食事や運動などの外因的影響を避けるため、12時間以上の絶食を行い、来院後10分以上の安静状態を維持した後、座位にて採血を実施した。
【0044】
[結果]
結果を表1に示した。アディポネクチンについては、プラセボカプセル摂取群において、摂取12週間後に有意な低下が認められた (p<0.001)。群間比較において、プラセボカプセル摂取群とホップ苞ポリフェノール被験カプセル摂取群間 (p<0.05)で有意な差が認められた。また、各種血液検査から異常は認められなかった。摂取期間中、問題となるような訴えは全く見られなかった。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
ホップ苞抽出物を有効成分とするアディポネクチン調節剤、副作用が極めて少なくアディポネクチンを調節することができるので、本発明は有用である。
【0047】
また、上記のアディポネクチン調節剤を有効成分として含有する飲食品、食品添加物及び医薬は、副作用が極めて少なくアディポネクチンを調節することができるので、本発明は有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ苞抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするアディポネクチン調節剤。
【請求項2】
前記ホップ苞抽出物がホップ苞由来ポリフェノールであることを特徴とする請求項1に記載のアディポネクチン調節剤。
【請求項3】
ホップ苞抽出物であり、分画分子量1,000以上の限外ろ過膜により処理した際に膜を透過しない物質であるアディポネクチン調節剤。
【請求項4】
ホップ苞に含有されるポリフェノール様物質であり、かつ分画分子量が1,000以上の限外ろ過膜により処理した際に膜を透過しない物質であるアディポネクチン調節剤。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアディポネクチン調節剤を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項1または2に記載のアディポネクチン調節剤を含有する食品添加物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のアディポネクチン調節剤を含有する医薬。

【公開番号】特開2006−193501(P2006−193501A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124433(P2005−124433)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】