説明

アデノウイルス血清型26ベクター、核酸およびそれにより製造されたウイルス

アデノウイルス血清型はそれらの天然指向性において異なる。アデノウイルスの種々の血清型は、少なくともそれらのカプシドタンパク質(例えば、ペントンベースおよびヘキソンタンパク質)、細胞結合をもたらすタンパク質(例えば、ファイバータンパク質)およびアデノウイルスの複製に関与するタンパク質において異なることが判明している。指向性およびカプシドタンパク質における血清型間のこの相違は、カプシドタンパク質の修飾によりアデノウイルス指向性を改変することを目的とした多くの研究努力につながっている。本発明は、カプシドタンパク質の修飾のそのような要件を回避するものであり、本発明は、希有アデノウイルス血清型である血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルス、および該代替的組換えアデノウイルスの製造方法を提供する。また、異種遺伝子の運搬および発現のために組換えアデノウイルスを使用する手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノウイルス血清型26ベクター、核酸およびそれにより製造されたウイルスに関する。
【背景技術】
【0002】
アデノウイルスは、いくつかの鳥類および哺乳類宿主において同定されている非外包性正二十面体ウイルスである(Homeら,1959 J.Mol.Biol.1:84−86;Horwitz,1990 In Virology,B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編,pps.1679−1721)。最初のヒトアデノウイルス(Ad)は40年以上前に分離された。それ以来、種々の哺乳類種に感染する100を超える異なるアデノウイルス血清型が分離されており、それらのうちの51個はヒト由来である(Straus,1984,In The Adenoviruses,H.Ginsberg編,pps.451−498,New York:Plenus Press;Hierholzerら,1988 J.Infect.Dis.158:804−813;SchnurおよびDondero,1993,Intervirology;36:79−83;De Jongら,l999 J Clin.Microbiol.,37:3940−5)。ラットおよびアカゲザル赤血球の赤血球凝集特性、DNA相同性、制限酵素切断パターン、G+C含量比および腫瘍原性を含む多数の生化学的、化学的、免疫学的および構造的基準に基づき、ヒト血清型は6つの亜属(A〜F)に分類されている(Straus,前掲;Horwitz,前掲)。
【0003】
アデノウイルスは異種遺伝子の運搬および発現のための魅力的な標的である。アデノウイルスは多種多様な細胞(分裂細胞および非分裂細胞)に感染する能力を有し、非常に効率的にそのDNAを感染宿主細胞内に導入する。アデノウイルスが免疫適格性個体における重篤なヒト病理に関連していることは見出されていない。該ウイルスはそのDNAを宿主細胞内に非常に効率的に導入し、多種多様な細胞に感染しうる。さらに、該ウイルスは、高いウイルス力価で大量に産生されうる。アデノウイルスゲノムは非常に詳細に特徴づけられており、約30,000〜45,000塩基対の直鎖状二本鎖DNA分子よりなる。さらに、いくつかの異なる血清型が存在するにもかかわらず、種々の血清型の間にはいくらかの全般的な保存性が見出される。
【0004】
遺伝子運搬ビヒクルとしてのアデノウイルスの利用における安全性は、該ウイルスゲノムの必須初期領域1(「E1」)の欠失/修飾により該ウイルスを複製欠損型にして該ウイルスのE1活性を欠損(または実質的に欠損)させて意図される宿主/ワクチン内での複製を不能にすることにより増強されうる。例えば、Brodyら,1994 Ann N Y Acad Sci.,716:90−101を参照されたい。さらに、E1以外のアデノウイルス遺伝子の欠失(例えば、E2、E3および/またはE4におけるもの)は、異種遺伝子担持のための、より大きな容量を有するアデノウイルスベクターを与える。現在のところ、亜群Cの2つの良く特徴づけられたアデノウイルス血清型、すなわち、血清型5(「Ad5」)および2(「Ad2」)が、最も広範に使用されている遺伝子運搬ベクターを構成する。
【0005】
アデノベクターの使用にまつわる1つの懸念は、該ウイルス自体により惹起され及び該ウイルス自体に対する細胞性および体液性免疫応答の可能性に関するものである(Chirmuleら,1999 Gene Ther.6:1574−1583)。ベクターの初期投与に伴う免疫応答は有利でありうるが(Zhangら,2001 Mol.Ther.3:697−707)、該ベクターを再投与した場合には(ブースター免疫化;Kass−Eislerら,1996 Gene Ther.3:154−162;Chirmuleら,1999 J.Immunol.163:448−455)、全身レベルのアデノウイルス特異的中和抗体の生成は、劣悪なトランスダクションを引き起こしうる。本発明者ら自身の疫学的研究からの科学的文献およびデータは、北米のほとんどの人々が抗Ad5中和抗体価を有し、約3分の1が比較的高い力価(>200)を有することを示唆している。世界の他の地域は、典型的には、抗Ad5抗体の、より高い頻度およびレベルを示す。ヒトにおけるそのような自然アデノウイルス感染から生じたこれら及び他のアデノウイルス血清型に対する血清特異的抗体は、アデノベクターによる異種ポリペプチドの投与に対する応答の度合に影響を及ぼしうる(Chirmuleら,1999 Gene Tlier.6:1574−1583)。したがって、血清型がアデノウイルス血清型2および5ほどは広まっていない場合には特に、遺伝子導入ベクターとして、代替的アデノウイルス血清型に基づくアデノウイルスベクターを開発することが必要とされている。
【0006】
亜群Dアデノウイルスであるアデノウイルス血清型26は1961年に最初に分離され、1963年に承認参考株として確立された(L.Rosenら,1961 J.Proc.Soc.Exp.Biol.Med.107:434−437;H.G.Pereiraら,1963 Virology 20:613−620)。参考ウマ抗血清において決定された46個の他のヒトアデノウイルスに対するその抗原関連性が考察されている(J.C.Hierholzerら,1991 Arch.Virol.121:179−197)。Ad26に関しては、いくつかの配列情報が公開されている。Ad26ヘキソンタンパク質の部分配列(1129および916bp)がTakeuchiら,1999 J.Clin.Microbiol 37:3392−3394(GenBankアクセッション番号AB023554)およびShimadaら,2004 J.Clin.Microbiol.42:1577−1584(GenBankアクセッション番号AB099360)に開示されている。Ad26のウイルス関連RNA領域の配列ならびに末端前(pre−terminal)タンパク質および52/55Kタンパク質の部分配列(521bp)がMa & Matthews,1996 J.Virol.,70:5083−5099およびGenBank(アクセッション番号U52546)に開示されている。
【0007】
ワクチンおよび遺伝子治療の分野は、代替的アデノウイルス血清型、特に、ヒト集団において十分には示されていないAd26のような血清型に関する更なる知見から、大きな利益を得るであろう。特に関心が持たれるのは、代替的アデノウイルス血清型に基づく組換えアデノウイルスベクター、およびそのような組換えアデノウイルスベクターの入手手段である。当技術分野におけるこの要求は、アデノウイルス血清型26に基づく組換えアデノウイルスベクターに関する本出願の開示により満たされる。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、希有(rare)アデノウイルス血清型である血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルスベクター、および該代替的血清型に基づく組換えアデノウイルスの製造方法に関する。また、異種遺伝子の運搬および発現において該組換えアデノウイルスベクターを使用する手段を提供する。本明細書中では更に、調節配列に機能しうる形で連結された1以上のトランスジーン(異種遺伝子)を含む、血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルスベクターを開示する。そのような組換えアデノウイルス血清型26ベクターの、宿主への投与は、単独での投与であるか或いは組合せ法および/または初回−追加抗原刺激法であるかには無関係に、取り込まれたトランスジーンの効率的な発現をもたらし、投与された特定の抗原を特異的に認識しうる免疫応答を効果的に誘導する。本明細書に記載の組換えウイルスは、より広くヒト集団で見出される傾向にあるアデノウイルス血清型(例えば、Ad5およびAd2)に対する既存免疫を逃れる先天的能力を有する。したがって、そのような組換えアデノウイルスの使用は、関心のある特定の異種核酸を発現させるための改良手段となる。
【0009】
発明の詳細な説明
希有アデノウイルス血清型は、より一般に用いられるアデノウイルス血清型(例えば、アデノウイルス血清型2および5)と比較して固有の利点を有する。なぜなら、それによる異種遺伝子の効率的な標的部位運搬および発現は既存免疫によっては制限されないと考えられるからである。また、異なるアデノウイルス血清型は、それらの異なるキャプシド構造を有するため、異なる指向性を示し、したがって、異なる組織を標的化する可能性をもたらし、それがワクチンまたは遺伝子治療目的に用いられた場合には、おそらく、より優れた免疫応答の惹起をもたらすであろう。しかし、これらの希有アデノウイルス血清型は、複製欠損型にされると、典型的には、増殖およびレスキューが困難となり、したがって、現在のところ十分には特徴づけられていない。
【0010】
本出願人は、最近、1つのそのような希有複製欠損型代替的血清型であるアデノウイルス血清型26(亜群Dアデノウイルス)をレスキューし増殖させることに成功した。本出願人は、本明細書中に、異種トランスジーンの運搬および発現においてこれらのアデノウイルスが有効に機能することを示す。
【0011】
したがって、本発明は、遺伝子治療またはワクチン接種プロトコールにおける使用に適した血清型26の組換えアデノウイルスベクターに関する。本明細書中にはアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)が図1A−1〜1A−11に示されているが、当業者に理解されるとおり、アデノウイルス血清型26の任意の機能的ホモログまたは異なる株が本発明の実施形態を構成し、本発明のベクター、方法および組成物において使用されうる。Ad26配列内の配列変異は本出願人により認識されている。したがって、配列変異を有するAd26ベクターは本発明の実施形態として包含される。以下は、Ad26内で見出されうる配列変異の具体例のいくつかである(配列番号1に基づく塩基対番号):(1)塩基対5972は“G”ではなく“T”;(2)塩基対7632は“A”ではなく“G”;(3)塩基対7668は“T”ではなく“G”;(4)塩基対11095は“C”ではなく“G”;(5)塩基対11560は“A”ではなく“G”;(6)塩基対12215は“A”ではなく“G”;(7)塩基対12296は“G”ではなく“T”;(8)塩基対12320は“T”ではなく“G”;(9)塩基対12357は“T”ではなく“C”;(10)塩基対12392は“T”ではなく“C”;(11)塩基対12437は“A”ではなく“G”;(12)塩基対12470は“G”ではなく“A”;(13)塩基対12539は“T”ではなく“C”;(14)塩基対12608は“T”ではなく“G”;(15)塩基対12734は“T”ではなく“C”;(16)塩基対12764は“G”ではなく“A”;(17)塩基対12767は“C”ではなく“T”;(18)塩基対12794は“C”ではなく“T”;(19)塩基対12842は“C”ではなく“T”;(20)塩基対12879は“T”ではなく“C”;(21)塩基対13038は“A”ではなく“G”;(22)塩基対13085−13088は“GAGG”ではなく“CCGC”;(23)塩基対13094は“C”ではなく“A”;(24)塩基対13216は“C”ではなく“T”;(25)塩基対13448は“A”ではなく“G”;(26)塩基対15297は“C”ではなく“T”;(27)塩基対15300は“T”ではなく“C”;(28)塩基対16226は“C”ではなく“A”;(29)塩基対16237は“C”ではなく“G”;(30)塩基対16379は“A”ではなく“G”;(31)塩基対16897は“T”ではなく“C”;(32)塩基対19626は“A”ではなく“C”;(33)塩基対19662は“T”ではなく“C”;(34)塩基対19665は“A”ではなく“C”;(35)塩基対19669は“T”ではなく“C”;(36)塩基対19785は“A”ではなく“C”;(37)塩基対19848は“T”ではなく“C”;(38)塩基対19851は“C”ではなく“T”;(39)塩基対19857は“C”ではなく“T”;(40)塩基対20205は“G”ではなく“A”;(41)塩基対20253は“T”ではなく“C”;(42)塩基対20277は“C”ではなく“G”;(43)塩基対21598は“A”ではなく“G”;(44)塩基対21601は“A”ではなく“G”;(45)塩基対21757は“G”ではなく“A”;(46)塩基対21688は“T”ではなく“G”;(47)塩基対21790は“A”ではなく“G”;(48)塩基対22176は“T”ではなく“G”;(49)塩基対22518と22519との間に3塩基対(TTC)の付加;(50)塩基対22567は“T”ではなく“C”;(51)塩基対22571は“G”ではなく“A”;(52)塩基対22582と22583との間に6塩基対(GGCAGT)の付加;(53)塩基対22597は“C”ではなく“T”;(54)塩基対22605は“G”ではなく“C”;(55)塩基対22748は“C”ではなく“T”;(56)塩基対23206は“A”ではなく“G”;(57)塩基対26536は“G”ではなく“A”;および(58)塩基対30217−30231は欠失。
【0012】
当業者は、本明細書中に開示されている配列情報が与えられれば、アデノウイルス血清型26配列の他の変異体を更に特定することが可能である。血清型の分類は当技術分野において十分に理解されている。アデノウイルス血清型は、当技術分野においては、ラットおよびアカゲザル赤血球の赤血球凝集特性、DNA相同性、制限酵素切断パターン、G+C含量比および腫瘍原性を含む(これらに限定されるものではない)当技術分野において認識されている多数の生物学的、化学的、免疫学的および構造的基準により区別されている(Straus,前掲;Horwitz,前掲)。与えられた血清型は、ウイルスDNAの制限マッピング、ウイルスDNAの移動度の分析、電気泳動後のSDSポリアクリルアミドゲル上のビリオンポリペプチドの移動度の分析、血清型を定める配列を含有する特にキャプシド遺伝子(例えば、ヘキソン)からの既知配列との配列情報の比較、およびATCCから入手可能な特定の血清型に関する参考血清との配列の比較を含む(これらに限定されるものではない)多数の方法により特定されうる。SDS−PAGEによるアデノウイルス血清型の分類はWadellら,1980 Ann.N.Y.Acad.Sci.354:16−42において考察されている。制限マッピングによるアデノウイルス血清型の分類はWadellら,Current Topics in Microbiology and Immunology 110:191−220において考察されている。
【0013】
本発明のアデノウイルス血清型26ベクターは、少なくとも部分的にE1における欠失/修飾を有し、生じるウイルスはE1活性を欠いていて(または実質的に欠いていて)、意図される宿主において該ベクターは複製不能となる。好ましくは、E1領域は完全に欠失または不活性化している。該アデノウイルスはE3および他の初期領域における追加的な欠失を含有しうるが、E2および/またはE4が欠失している場合には、組換え複製欠損型アデノウイルスベクターを作製するためにはE2および/またはE4相補細胞系を要するかもしれない。
【0014】
本発明の方法で有用なアデノウイルスベクターは、Graham & Prevec,1991 In Methods in Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols,(Murray,EJ.編),p.109;およびHittら,1997“Human Adenovirus Vectors for Gene Transfer into Mammalian Cells”Advances in Pharmacology 40:137−206に概説されているような良く知られた技術を用いて構築することが可能である。
【0015】
本明細書に記載の組換えアデノウイルスの増殖およびレスキューに使用するE1相補細胞系は、該ウイルスが複製するのに不可欠な要素を供与すべきであり、該要素は、該細胞の遺伝物質内にコードされていても、あるいはトランスで与えられてもよい。さらに、該E1相補細胞系および該ベクターは、該ベクターの核酸と該細胞系の核酸との間の相同組換えを可能にして複製可能ウイルス(または複製可能アデノウイルス「RCA」)を与えうる重複要素を含有しないことが好ましい。本発明の方法での使用に適したアデノウイルスを得るためには、適当なE1および任意の他の重要な欠失領域を発現しうる任意の細胞系を使用することが可能であるが、増殖細胞は、網膜または腎臓に由来するヒト細胞である場合が多い。胚細胞、例えば羊膜細胞はE1相補性細胞系の作製に特に適していることが示されている。いくつかの細胞系が入手可能であり、これらには、PER.C6(登録商標)(ECACC寄託番号96022940)、911、293およびE1 A549が含まれるが、これらに限定されるものではない。PER.C6(登録商標)細胞系は、WO 97/00326(1997年1月3日付け公開)および発行された米国特許第6,033,908号に記載されている。PER.C6(登録商標)は、複製欠損型(FG)アデノウイルスの産生を相補するが相同組換えによる複製可能アデノウイルスの産生を妨げるよう設計されたE1遺伝子セグメントで形質導入された初代ヒト網膜芽細胞細胞系である。293細胞はGrahamら,19777 J.Gen.Virol.36:59−72に記載されている。非C群アデノウイルスベクターの増殖およびレスキューのためには、増殖しているウイルスにおいて欠失したE1領域に対して相補性であるE1領域を発現する細胞系を使用することが可能である。例えば、組換えAd26E1欠失ベクターの増殖に適した細胞の具体例はアデノウイルス26または別のD群血清型の初期領域1(E1)を発現する。あるいは、同一血清型に由来するE1およびE4の領域を発現する細胞系を使用することが可能である。例えば、米国特許第6,270,996号を参照されたい。もう1つの代替手段は、入手可能なE1発現細胞系(例えば、PER.C6(登録商標)、A549または293)において非C群アデノウイルスを増殖させることであろう。この後者の方法は、増殖させるアデノウイルス内への、決定的に重要なE4領域の取り込みを含む。その決定的に重要なE4領域は、該相補性細胞系のE1遺伝子産物(特にE1B 55K領域)のものと同じ又は非常に類似した血清型のウイルスに固有のものであり、典型的には、少なくともE4オープンリーディングフレーム6(「ORF6」)を含む。2004年3月4日付け公開のPCT/US2003/026145を参照されたい。当業者は、本発明の方法に有用な組換え複製欠損型アデノウイルスの製造に適した多数の他の方法を容易に理解し行うことが可能である。どのような手段を用いたとしても、ウイルス製造後、ウイルスを精製し、製剤化し、宿主への投与の前に保存することが可能である。
【0016】
血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルスを製造するためのそのような方法は本発明の一部とみなされる。特に、そのような方法は、(1)血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルスベクターを適当なアデノウイルスE1相補性細胞内に導入し、(2)ウイルス粒子を産生させることを含む。そのようにして産生されたウイルス粒子、および本発明の組換え複製欠損型アデノウイルス血清型26ベクターを含む宿主細胞は、本発明の追加的な態様を構成する。「単離された宿主細胞」は、本明細書中では、トランスジェニックヒトを含まない細胞の集団と定義される。
【0017】
本発明のアデノウイルスベクターは、より一般に使用されるアデノウイルス血清型を介した投与または再投与を個体の免疫応答が実際に妨げる場合に特に、異種ポリペプチドの発現の実施に非常に好適である。したがって、本発明の特定の実施形態は、関心のあるポリペプチドをコードする異種核酸を含む、血清型26の組換え複製欠損型アデノウイルスベクターである。発現される核酸はDNAおよび/またはRNAであることが可能であり、二本鎖または一本鎖でありうる。該核酸は、E1と平行(ベクターバックボーンに対して5’から3’へ転写される)または逆平行(ベクターバックボーンに対して3’から5’へ転写される)の配向に挿入されうる。該核酸は、所望の宿主(例えば、哺乳類宿主)内での発現のためにコドンが最適化されうる。該異種核酸は発現カセットの形態でありうる。遺伝子発現カセットは、(a)関心のあるタンパク質または抗原をコードする核酸、(b)該タンパク質/抗原をコードする核酸に機能しうる形で連結された異種プロモーター、および(c)転写終結シグナルを含有しうる。
【0018】
特定の実施形態においては、該異種プロモーターは真核生物RNAポリメラーゼにより認識される。本発明での使用に適したプロモーターの一例は、最初期ヒトサイトメガロウイルスプロモーターである(Chapmanら,1991 Nucl.Acids Res.19:3979−3986)。本発明で使用されうるプロモーターの更なる例としては、強力免疫グロブリンプロモーター、EF1αプロモーター、マウスCMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、SV40初期/後期プロモーターおよびβアクチンプロモーターが挙げられるが、意図される宿主内で該異種核酸の発現を引き起こしうる任意のプロモーターが本発明の方法において使用されうると当業者に認識されうる。該プロモーターは、Tetオペレーター配列のような調節可能配列を含みうる。転写および発現の調節の可能性をもたらすこのような配列は、遺伝子転写の抑制/モジュレーションが望まれる場合に有用である。アデノウイルス遺伝子発現カセットは転写終結配列を含むことが可能であり、その具体例としては、ウシ成長ホルモン終結/ポリアデニル化シグナル(bGHpA)または以下のとおりに定められる49ヌクレオチド長の短い合成ポリAシグナル(SPA)が挙げられる:AATAAAAGATCTTTATTTTCATTAGATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTG(配列番号5)。リーダーまたはシグナルペプチドをトランスジーン内に含有させることも可能である。特定の実施形態においては、リーダーは組織特異的プラスミノーゲンアクチベータータンパク質tPAに由来する。
【0019】
関心のある異種核酸は、典型的には、免疫原性および/または治療用タンパク質をコードする。好ましい治療用タンパク質としては、投与後に個々の宿主において何らかの測定可能な治療利益をもたらすものが挙げられる。好ましい免疫原性タンパク質としては、個体において防御性および/または有益な免疫応答を惹起しうるタンパク質が挙げられる。本明細書中に例示されている本発明の特定の実施形態は、開示されているベクター、方法および組成物による、代表的な免疫原性タンパク質(HIV Gag、Nefおよび/またはPol)をコードする核酸の運搬であるが、治療用または免疫原性タンパク質をコードする任意の遺伝子が、本明細書中に開示されている方法に従い使用されることが可能であり、本発明の重要な実施形態を構成する。本発明のベクター、方法および組成物は、存在/機能が或る与えられた宿主において所望の効果[特に、前記のいずれかの特定の核酸、タンパク質、抗原、断片または活性の存在または非存在に関連した、それらにより生じる、(正または負に)引き起こされる、悪化する又は修飾される種々の状態の治療/改変/修飾において有用な治療用/免疫原性効果]をもたらす任意のポリペプチドの運搬を行うために使用することが可能である。アデノウイルス血清型26ベクターは有意なレベルのgag特異的T細胞を誘導することが判明した(図5)。さらに、該結果は、開示されているベクターでの免疫化がHIV特異的CD4+およびCD8+ T細胞の両方を惹起しうることを示した(図6)。これらの結果は、血清型5のアデノウイルスベクターと共に初回−追加法においてAd26を使用した場合に特に顕著であった。
【0020】
したがって、本発明の1つの態様は、HIV抗原/タンパク質をコードする異種核酸を保持するアデノウイルス血清型26に基づくベクター、ベクター組成物およびそれらの使用方法に関する。ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)は後天性免疫不全症候群(エイズ)および関連障害の原因因子である。HIVはレトロウイルス科のRNAウイルスであり、全レトロウイルスの5’LTR−gag−pol−env−LTR 3’体制を示す。HIVの組込み形態はプロウイルスとして公知であり、約9.8Kb長である。該ウイルスゲノムの各末端は、長末端反復配列(LTR)として公知のフランキング配列を含有する。
【0021】
HIV抗原/タンパク質をコードする異種核酸は、HIV−1およびHIV−2、株A、B、C、D、E、F、G、H、I、O、IIIB、LAV、SF2、CM235およびUS4を含む(これらに限定されるものではない)任意のHIV株に由来しうる。例えば、Myersら編,“Human Retroviruses and ADDS:1995(Los Alamos National Laboratory,Los Alamos NM 97545)を参照されたい。本明細書中に開示されている方法での使用に適したもう1つのHIV株はHIV株CAM−1である(Myersら編,“Human Retroviruses and AIDS”:1995,IIA3−IIA19)。この遺伝子はクレードB(北米/欧州)配列のコンセンサスアミノ酸配列に酷似している。HIV遺伝子配列は種々のクレードのHIV−1に基づくことが可能であり、その具体例としては、クレードA、BおよびCが挙げられる。多数のHIV株の遺伝子の配列がGenBankから公に入手可能であり、HIVの一次(primary)野外分離体は、これらの株を入手可能にするようQuality Biological(Gaithersburg,MD)に委託しているNational Institute of Allergy and Infectious Diseases(NIAID)から入手可能である。また、株は、World Health Organization(WHO),Geneva Switzerlandからも入手可能である。
【0022】
HIV遺伝子は少なくとも9つのタンパク質をコードしており、以下の3つのクラスに分けられる:主要構造タンパク質(Gag、PolおよびEnv)、調節タンパク質(TatおよびRev)および補助タンパク質(Vpu、Vpr、VifおよびNef)。gag遺伝子は、未スプライシングウイルスmRNAから発現される55キロダルトン(kDa)の前駆体タンパク質(p55)をコードしており、pol遺伝子の産物であるHIVプロテアーゼによりタンパク質分解的にプロセシングされる。成熟p55タンパク質産物はp17(マトリックス)、p24(カプシド)、p9(ヌクレオカプシド)およびp6である。pol遺伝子は、ウイルス複製に必要なタンパク質、すなわち、プロテアーゼ(Pro、P10)、逆転写酵素(RT、P50)、インテグラーゼ(IN、p31)およびRNアーゼH(RNアーゼ、p15)の活性をコードしている。これらのウイルスタンパク質はGagまたはGag−Pol融合タンパク質(リボソームフレームシフトにより産生される)として発現される。ついで該55kDaおよび160kDa gagpol前駆体タンパク質は、それらの成熟産物へと、ウイルスによりコードされるプロテアーゼによりタンパク質分解的にプロセシングされる。nef遺伝子は、CD4発現のダウンレギュレーション、T細胞活性の阻害およびHIV感染性の刺激のようないくつかの活性を有することが示されている初期補助HIVタンパク質(Nef)をコードしている。env遺伝子は、160キロダルトン(kDa)の前駆体(gp160)として翻訳されるウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードしている。ついで、該前駆体は細胞プロテアーゼにより切断されて、外部の120kDaエンベロープ糖タンパク質(gp120)および膜貫通型41kDaエンベロープ糖タンパク質(gp41)を与える。gp120およびgp41は会合したままであり、ウイルス粒子上およびHIV感染細胞の表面上に提示される。tat遺伝子は、HIV複製に必須の転写トランスアクチベーターであるRNA結合タンパク質であるTatタンパク質の、長い形態および短い形態をコードしている。rev遺伝子は、RNA結合タンパク質である13kDaのRevタンパク質をコードしている。Revタンパク質は、Rev応答配列(RRE)と称されるウイルスRNAの領域に結合する。Revタンパク質は核から細胞質への未スプライシングウイルスRNAの転移を促進する。Revタンパク質は、HIV後期遺伝子発現、そしてHIV複製に必要である。
【0023】
本発明の方法および組成物においては、任意のHIV抗原をコードする核酸(それらの具体例には、前記遺伝子、それらの活性および/もしくは免疫原性断片をコードする核酸、ならびに/または前記のいずれかの修飾体/誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない)を使用することが可能である。本発明は、コドン最適化HIV gag(コドン最適化完全長(「FL」)GagおよびtPA−Gag融合タンパク質のp55形態を含むが、何らこれらに限定されるものではない)、HIV pol、HIV nef、HIV env、HIV tat、HIV revおよび免疫学的に関連する修飾体/誘導体を含むHIV抗原をコードする核酸の種々のコドン最適化形態をも含む。本明細書中に例示されている実施形態は、コドン最適化Nef抗原、コドン最適化p55 Gag抗原およびコドン最適化Pol抗原をコードする核酸を使用する。コドン最適化HIV−1 gag遺伝子は2001年1月11日付け公開のPCT国際出願PCT/US00/18332(WO 01/02607)に開示されている。コドン最適化HIV−1 env遺伝子は、それぞれ1997年8月28日付け公開(WO 97/31115)および1997年12月24日付け公開(WO 97/48370)のPCT国際出願PCT/US97/02294およびPCT/US97/10517に開示されている。コドン最適化HIV−1 pol遺伝子は、2000年12月21日付け出願の米国特許出願第09/745,221号および同様に2000年12月21日付け出願のPCT国際出願PCT/US00/34724に開示されている。コドン最適化HIV−1 nef遺伝子は、2000年12月15日付け出願の米国特許出願第09/738,782号および同様に2000年12月15日付け出願のPCT国際出願PCT/US00/34162に開示されている。特定のHIV抗原またはその免疫学的に関連した部分もしくは修飾体/誘導体をコードする適当なヌクレオチド配列(限定的なものではないが、前記のものを含む)を選択することは当業者の認識範囲内に十分に含まれる。本明細書中で定義されるとおり、「免疫学的に関連」、「免疫原性」または「抗原性」は、(1)ウイルス抗原に関しては、該タンパク質が、投与されると、該ウイルスの増殖および/もしくは広がりを遅延させるのに並びに/又は個体内のウイルス負荷を減少させるのに十分な個体内における測定可能な免疫応答を惹起しうること、あるいは(2)ヌクレオチド配列に関しては、該配列が、前記の能力を有するタンパク質をコードしうることを意味する。さらに、当業者は、所望の結果をもたらしうるタンパク質、抗原、誘導体または断片をコードする任意の核酸(コドン最適化されていてもされていなくてもよい配列)が本発明の方法および組成物において有用であると理解することが可能である。
【0024】
本発明のベクター、方法および組成物において使用しうるコドン最適化gag遺伝子の一例は、2001年1月11日付け公開のPCT/US00/18332に開示されているものである(図7、配列番号3を参照されたい)。該配列はHIV−1株CAM−1に由来し、完全長p55 gagをコードしている。HIV−1株CAM−1のgag遺伝子を選択したのは、それがクレードB(北米/欧州)配列のコンセンサスアミノ酸配列(Los Alamos HIVデータベース)に酷似しているからである。該配列は、インビボ哺乳類発現を最高にするためにヒトにとって好ましい(「ヒト化」)コドンが組込まれるよう設計した(Lathe,1985,J.Mol.Biol.183:1−12)。
【0025】
逆転写酵素(または、ポリメラーゼおよびRNアーゼH活性よりなるRT)およびインテグラーゼ(IN)のコード配列を含む種々の合成polオープンリーディングフレームがPCT/US00/34724に開示されている。それにおけるタンパク質配列は、IIIBのクローン分離体であるHxb2rに基づいている。この配列はコンセンサスクレードB配列に最も近く、848個中僅か16個が非同一残基であることが示されている(Korberら,1998,Human retroviruses and AIDS,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico)。
【0026】
本発明のこの態様の特定の実施形態は、wt−pol構築物(本明細書中、「wt−pol」または「wt−pol(コドン最適化)」と称される)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含むベクターに関する。この場合、プロテアーゼ(PR)活性をコードする配列が欠失していて、RT(逆転写酵素およびRNアーゼH活性)およびINインテグラーゼ活性をコードする最適化「野生型」配列が残されている。このタンパク質をコードするDNA分子は本明細書中では配列番号6(図9A−1〜図9A−2)として開示されており、オープンリーディングフレームはヌクレオチド10−12の開始Met残基からヌクレオチド2560−2562の終止コドンまでに含有される。野生型pol構築物(配列番号7;図10A−1〜10A−2)のオープンリーディングフレームは850アミノ酸を含有する。
【0027】
他の特定の実施形態は、最適化HIV−1 polを含むベクターに関する。この場合、プロテアーゼ活性をコードする野生型配列の部分の欠失に加えて、発現されるタンパク質のHIV−1 pol(RT−RH−IN)活性に有害な、活性部位残基の突然変異の組合せが導入されている。したがって、本発明は、少なくとも部分的に、好ましくは実質的にRT、RNアーゼおよび/またはIN活性を阻止する突然変異を含有する、PR活性をコードする配列を欠くHIV−1 polを含むアデノウイルスベクターに関する。本明細書中に開示する方法および組成物において有用なアデノウイルスベクター構築物の一部または一群であるHIV pol突然変異体の1つのタイプには、発現されるタンパク質のRT、RNアーゼおよび/またはIN領域内の活性部位を有効に改変してHIV−1 PolのRT、RNアーゼHおよび/またはIN機能の酵素活性の実質的な低下をもたらす点突然変異を引き起こす少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む突然変異核酸分子が含まれうるが、これらに限定されるものではない。本発明のこの部分の特定の実施形態においては、HIV−1 DNA pol構築物は、RT、RNアーゼHおよびIN活性を有効に阻止する、Polコード領域内の突然変異を含有する。特定のHIV−1 pol含有構築物は、PolのRT、RNアーゼHおよびINドメインの活性部位を改変して各活性を少なくとも実質的に阻止する少なくとも1つの点突然変異を含有する。そのようなHIV Pol突然変異体は、十中八九、それぞれRT、RNアーゼHおよびIN活性をもたらす各触媒ドメインの内部または周囲に少なくとも1つの点突然変異を含む。この目的のために、特定の実施形態は、PR、RT、RNアーゼまたはIN活性を有さない不活性化Polタンパク質(IA Pol:配列番号8;図11A−1〜11A−3)を与える9個のコドン置換突然変異をコード核酸が含み、3個のそのような点突然変異がRT、RNアーゼおよびIN触媒ドメインのそれぞれにおいて存在する、HIV−1 polを含むアデノウイルスベクターに関する。したがって、意図される1つの例示においては、以下の表1に示す9個すべての突然変異を含有する、IA−Polをコードする核酸分子を適当な様態で含むアデノウイルスベクター構築物を使用する。置換のための更なるアミノ酸残基は、PolのRNアーゼドメイン内に位置するAsp551である。本明細書に開示されている突然変異の任意の組合せが適している可能性があり、したがって、本発明のベクター、方法および組成物において使用されうる。付加および欠失突然変異が意図され、本発明の範囲内に含まれるが、好ましい突然変異は、野生型アミノ酸から代替的アミノ酸残基への置換をもたらす点突然変異である。
【0028】
【表1】

【0029】
HIV−1 Polの活性部位の内部および周辺のエピトープを改変する可能性を減少させるために、本発明のIApol突然変異アデノウイルスベクター構築物内に点突然変異を組込むことが好ましい。この目的のために、配列番号8(図11A−1〜11A−3)は、本明細書中で「IApol」と称される、表1に示す9個の突然変異に加えてコドン最適化polをコードするヌクレオチド配列を開示する。
【0030】
polを含むアデノウイルスベクターの具体例の1つにおいては(表1を参照されたい)、ポリメラーゼの三つ組触媒基(すなわち、Asp112、Asp187およびAsp188)を含むすべての残基をアラニン(Ala)残基で置換することが可能である(Larderら,Nature 1987,327:716−717;Larderら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.1989,86:4803−4807)。RNアーゼH活性を阻止するために、Asp445、Glu480およびAsp500において3個の追加的な突然変異を組込むことが可能であり、各残基はそれぞれAla残基で置換される(Daviesら,1991,Science 252:,88−95;Schatzら,1989,FEBS Lett.257:311−314;Mizrahiら,1990,Nucl.Acids.Res.18:pp.5359−5353)。HIV polインテグラーゼの機能はAsp626、Asp678およびGlu714における3個の突然変異により阻止されうる。この場合もまた、これらの残基のそれぞれがAla残基で置換されうる(Wiskerchenら,1995,J.Virol.69:376−386;Leavittら,1993,J.Biol.Chem.268:2113−2119)。配列番号8のアミノ酸残基Pro3はRT遺伝子の出発点を示す。IA−Polの完全なアミノ酸配列は本明細書中に配列番号8として開示されており、図11A−1〜図11A−3に示されている。
【0031】
突然変異の任意の組合せが適している可能性があり、したがって、単独で、他の異種遺伝子と共に、組合せ法で、および/または初回−追加法の一部として投与される本明細書中に開示されているアデノウイルスHIV構築物、方法および組成物において使用されうると理解されるであろう。例えば、それぞれ逆転写酵素、RNアーゼHおよびインテグラーゼコード領域内の3個の残基のうちの2個だけを突然変異させる一方で、これらの酵素活性を尚も阻止することが可能であろう。
【0032】
本発明のもう1つの主題は、真核生物輸送シグナルペプチドまたはリーダーペプチド(例えば、免疫グロブリンリーダーペプチドのような高発現哺乳類タンパク質において見出されるもの)を含むコドン最適化HIV−1 Polを含むアデノウイルスベクター構築物を使用する方法、ベクターおよび組成物である。任意の機能性リーダーペプチドが効力に関して試験されうる。それぞれのDNAは公知の組換えDNA法により修飾されうる。代替手段においては、前記のとおり、リーダー/シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を、関心のあるPolタンパク質のオープンリーディングフレームを収容するDNAベクター内に挿入することが可能である。クローニング法には無関係に、最終産物は、関心のある修飾HIV−1 Polタンパク質(リーダーペプチドを含有するHIV−1 Polタンパク質が含まれるが、これに限定されるものではない)をコードするヌクレオチド配列と共に有効な遺伝子発現のためのベクター成分を含むベクター構築物である。
【0033】
本明細書中に開示されている遺伝子配列の設計は、インビボ哺乳類発現を最高にするための、該配列内の各アミノ酸残基に関する、ヒトにとって好ましい(「ヒト化」)コドンの使用を含む(Lathe,1985,J.Mol.Biol.183:1−12)。配列番号6および8におけるコドン使用を調べることにより理解されうるとおり、哺乳類における最適化のための以下のコドン使用が好ましい:Met(ATG)、Gly(GGC)、Lys(AAG)、Trp(TGG)、Ser(TCC)、Arg(AGG)、Val(GTG)、Pro(CCC)、Thr(ACC)、Glu(GAG);Leu(CTG)、His(CAC)、Ile(ATC)、Asn(AAC)、Cys(TGC)、Ala(GCC)、Gln(CAG)、Phe(TTC)およびTyr(TAC)。哺乳類(ヒト)コドン最適化に関する更なる考察のためには、WO 97/31115(PCT/US97/02294)を参照されたい。当業者は別形態のコドン最適化を使用することが可能であり、あるいは本発明の範囲内のHIVワクチン構築物を作製する場合にはこの工程を省略することが可能であると意図される。したがって、本発明はまた、コドン最適化されていない又は部分的にコドン最適化された形態の核酸分子およびHIVタンパク質の種々の野生型および修飾形態をコードする関連組換えアデノウイルスHIV構築物を含む/使用するベクター、方法および組成物に関する。しかし、これらの構築物のコドン最適化は本発明の好ましい実施形態を構成する。
【0034】
本発明における特定の実施形態において有用なHIV−1 nefおよびHIV−1 nef修飾体のコドン最適化形態は、2000年12月15日付け出願の米国特許出願第09/738,782号および同様に2000年12月15日付け出願のPCT国際出願PCT/US00/34162に見出されうる。特定のコドン最適化nefおよびnef修飾体は、ヒトのような哺乳類系における発現に関してコドンが最適化されている、HIV−1 jrfl分離体に由来するHIV−1 Nefをコードする核酸に関する。このタンパク質をコードするDNA分子は本明細書中の配列番号10(図12)に開示されており、一方、発現されるオープンリーディングフレームは本明細書中に配列番号11として開示されている。図14A−1〜14A−2は、HIV−nefのオープンリーディングフレームを含むコドン最適化ヌクレオチドと野生型との比較を示す。配列番号10のオープンリーディングフレームはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基およびヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンを含む。配列番号10のオープンリーディングフレームは、コドン最適化DNAワクチンベクターの使用により発現される216アミノ酸のHIV−1 Nefタンパク質を与える。その216アミノ酸のHIV−1 Nef(jrfl)タンパク質は本明細書中に配列番号11;図13として開示されている。本発明におけるもう1つの実施形態を構成する修飾nef最適化コード領域は、アミノ末端ミリスチル部位における修飾(Gly−2からAla−2へ)およびLeu−174−Leu−175ジロイシンモチーフからAla−174−Ala−175への置換をオープンリーディングフレームがコードしている、本明細書中にopt nef(G2A,LLAA)として記載されている、最適化HIV−1 Nefをコードする核酸分子に関する。このタンパク質をコードするDNA分子は本明細書中に配列番号13として開示されており、一方、発現されるオープンリーディングフレームは本明細書中に配列番号14として開示されている。本発明の実施形態の1つを構成する更にもう1つの修飾nef最適化コード領域は、アミノ末端ミリスチル化部位における修飾(Gly−2からAla−2へ)をオープンリーディングフレームがコードしている、本明細書中にopt nef(G2A)として記載されている、最適化HIV−1 Nefをコードする核酸分子に関する。このタンパク質をコードするDNA分子は本明細書中に配列番号15として開示されており、一方、発現されるオープンリーディングフレームは本明細書中に配列番号16として開示されている。
【0035】
HIV−1 Nefは、Gly−2のミリスチル化により宿主細胞細胞膜の内側表面に結合している216アミノ酸の細胞質ゾルタンパク質である(Franchiniら,1986,Virology 155:593−599)。考えられうるNef機能の全てが解明されているわけではないが、内側細胞膜へのNefの正しい輸送は、HIV−1の生活環の初期を促進するよう宿主細胞内環境を改変することにより、および後代ウイルス粒子の感染力を増強することにより、ウイルス複製を促進することが明らかになっている。本発明の1つの態様においては、本発明の方法、ベクターおよび組成物は、発現されるタンパク質のアミノ末端領域がリーダーペプチドを含有するよう異種リーダーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するよう修飾されたコドン最適化nef配列を含むアデノウイルスベクターを使用する。真核細胞を特徴づける機能の多様性は、それらの膜境界部の構造分化に基づく。これらの構造を生成し維持するためには、小胞体内のそれらの合成部位から細胞全体にわたる所定の目的地へタンパク質が輸送されなけらばならない。このためには、主要輸送経路へのアクセスポイントに位置する経路選択をもたらす分子装置により認識されるソーティングシグナルを輸送タンパク質が提示する必要がある。ほとんどのタンパク質のソーティング決定は、それらがそれらの生合成経路を通過する際に1回だけ行われる必要がある。なぜなら、それらがそれらの機能を遂行する細胞位置であるそれらの最終目的地がそれらの永久的な存在部位となるからである。細胞内完全性の維持は、部分的には、タンパク質の選択的ソーティングおよびその正しい目的地への適切な輸送に基づく。「アドレス・ラベル(宛先標識)」として作用しうるタンパク質においては、一定の配列モチーフが存在する。多数のソーティングシグナルは膜タンパク質の細胞質ドメインに会合していることが見出されている。CTL応答の有効な誘導は、しばしば、抗原の持続的高レベル内因性発現を要する。ミリスチル化による膜会合はほとんどのNef機能のための必須要件であるため、グリシンからアラニンへの変化、ジロイシンモチーフの変化および/またはリーダー配列での置換によりミリスチル化を欠く突然変異体は機能的に欠損しており、したがって、HIV−1ワクチン成分として使用する場合に、野生型Nefと比べて改良された安全性プロファイルを有するであろう。
【0036】
したがって、特定の実施形態においては、該ヌクレオチド配列は、関心のあるリーダーまたはシグナルペプチドを含むよう修飾されている。これは公知の組換えDNA法により達成されうる。代替法においては、前記のとおり、関心のあるNefタンパク質のオープンリーディングフレームを収容するDNAベクター内にヌクレオチド配列の挿入を行うことが可能である。
【0037】
該タンパク質のカルボキシ領域内のジロイシンモチーフと共にGly−2のミリスチル化が、エンドサイトーシスを介したCD4のNef誘導性ダウンレギュレーションに必須であることが示されている(Aikenら,1994,Cell 16:853−864)。また、Nef発現はエンドサイトーシスを介したMHCIのダウンレギュレーションを促進することも示されている(Schwartzら,1996,Nature Medicine 2(3):338−342)。本発明は、輸送および/または機能特性において改変された修飾Nefタンパク質をコードする配列を含むアデノウイルスベクター、ならびに本発明の方法および組成物におけるその使用を含む。本発明のアデノウイルスベクターHIV構築物内に導入される修飾には、アミノ末端リーダーペプチドを含む修飾Nefタンパク質の発現をもたらすnefオープンリーディングフレームに対する付加、欠失または置換、アミノ末端ミリスチル化部位の修飾または欠失、および感染宿主細胞内での機能を改変する、Nefタンパク質内のジロイシンモチーフの修飾または欠失が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書中に開示されている方法および組成物において使用する組換えアデノウイルス構築物は、アミノ末端ミリスチル化部位の修飾(Gly−2からAla−2へ)およびLeu174−Leu−175ジロイシンモチーフからAla−174−Ala−175への置換を有する最適化HIV−1 Nefをコードする配列を含みうる。このオープンリーディングフレームは本明細書中にopt nef(G2A,LLAA)として記載されており、配列番号13として開示されており、これはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基およびヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンを含む。前記修飾を有するHIV−1 jrfl nef遺伝子のこのコドン最適化形態のヌクレオチド配列は本明細書中に配列番号13;図15として開示されている。配列番号13のオープンリーディングフレームは、本明細書中に配列番号14;図16として開示されているNef(G2A,LLAA)をコードしている。
【0039】
本明細書中に開示されている方法および組成物において使用するもう1つの組換えアデノウイルス構築物は、アミノ末端ミリスチル化部位の修飾(Gly−2からAla−2へ)を有する最適化HIV−1 Nefをコードする配列を含みうる。このオープンリーディングフレームは本明細書中にopt nef(G2A)として記載されており、配列番号16として開示されており、これはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基およびヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンを含む。前記修飾を有するHIV−1 jrfl nef遺伝子のこのコドン最適化形態のヌクレオチド配列は本明細書中に配列番号15;図17として開示されている。配列番号15のオープンリーディングフレームは、本明細書中に配列番号16;図18として開示されているNef(G2A)をコードしている。
【0040】
図19はnefおよびnef誘導体の概要図を示す。Nef誘導体に含まれるアミノ酸残基が示されている。グリシン2ならびにロイシン174および175は、それぞれミリスチル化およびジロイシンモチーフに関与する部位である。
【0041】
本発明の方法および組成物において有用なアデノウイルスベクターは1以上のHIV遺伝子/コード核酸を含みうる。2以上のHIV遺伝子、それらの誘導体または修飾体を含む少なくとも1つの組換えアデノウイルスベクターの投与が予想され、本明細書中に例示されている。2以上のHIV遺伝子は少なくとも1つの組換えアデノウイルスベクター構築物上で発現されることが可能であり、および/または2以上のHIV遺伝子は2以上の構築物にわたって発現されることが可能である。したがって、本発明は、宿主免疫を回避/迂回し多価HIV遺伝子投与(その具体例には、(1)GagおよびNefポリペプチド、(2)GagおよびPolポリペプチド、(3)PolおよびNefポリペプチド、ならびに(4)Gag、PolおよびNefポリペプチドをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターの投与が含まれるが、これらに限定されるものではない)を達成するために本発明の方法および組成物を使用する可能性をもたらす。
【0042】
複数の遺伝子/コード核酸を、複数のオープンリーディングフレームを含むプレ・アデノウイルスプラスミドの作製のための適当なシャトルプラスミド内に連結することが可能である。複数の遺伝子/コード核酸のためのオープンリーディングフレームは、異なるプロモーターおよび転写終結配列に、機能しうる様態で連結されうる。他の実施形態においては、該オープンリーディングフレームは、単一のプロモーターに、機能しうる様態で連結されることが可能であり、該オープンリーディングフレームは、内部リボソーム進入配列(IRES;WO 95/24485に開示されているとおり)により、または複数のオープンリーディングフレームの転写が単一のプロモーターから切断されるの可能にする適当な代替物により、機能しうる様態で連結される。ある実施形態においては、該オープンリーディングフレームは、逐次的(stepwise)PCRまたは2つのオープンリーディングフレームを互いに融合するための適当な代替法により互いに融合されうる。本発明での使用に適した種々の組合せ投与計画が、2002年3月21日付け公開のPCT/US01/28861に開示されている。
【0043】
本明細書の多価ベクターは、それに含有されるHIV抗原に特異的な細胞性免疫応答の惹起におけるその使用方法と同様に、本発明の重要な態様を構成する。種々の融合/多価構築物に想到しそれらを有効に使用することは当業者の認識範囲に十分に含まれる。
【0044】
本発明は、本発明の組換えアデノウイルス血清型26ベクターを個体に投与することを含む、(1)個体において治療応答をもたらすための、および(2)免疫応答を誘導する(細胞性免疫応答を誘導する)ための方法を含む。本発明の1つの態様は、関心のある抗原を発現する組換えアデノウイルス血清型26ビヒクルを投与することを含む、1以上の抗原(細菌、ウイルス(例えば、HIV)またはその他(例えば、癌))に対する増強された免疫応答を生成させるための方法である。より頻繁に現れるアデノウイルス血清型(例えば、Ad2およびAd5)に対する既存免疫が、与えられた宿主において存在する場合に特に、この方法における組換えAd26ベクターの投与は細胞性免疫応答の改善をもたらす。この改善されたワクチン投与方法の効果は、これまでに未感染の個体に対する、より低い伝染率(または発生率)(すなわち、予防的用途)、および/または、感染個体内のウイルス/細菌/外来因子のレベルの減少(すなわち、治療的用途)であるはずである。HIV適応症に関しては、この改善されたワクチン投与方法の効果は、これまでに未感染の個体に対する、より低い伝染率(すなわち、予防的用途)、および/または、感染個体内のウイルス負荷のレベルの減少によるHIV−1感染の無症候期の延長(すなわち、治療的用途)にあるはずである。該組換えAd26ベクターの投与、細胞内運搬および発現は宿主CTLおよびTh応答を惹起する。
【0045】
したがって、本発明は、ウイルス(例えば、HIV)、細菌または他の因子に対する暴露後の感染の確立を妨げるための有効な免疫予防をもたらすための、あるいは有益な長期的結果を伴って、より低いウイルス/細菌/その他の負荷の確立をもたらすための感染軽減のための感染後治療用ワクチンとしての、組換えAd26ウイルスベクター(または、本明細書中でワクチンと称されるその免疫原性組成物)の投与に関する方法に関する。
【0046】
本発明の組換えアデノウイルス血清型26ベクターは、単独投与の対象を構成することが可能であり、あるいはより広い初回/追加型の投与計画の一部でありうる。初回−追加投与計画においては、異なるウイルス(異なるウイルス血清型および種々の起源のウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない)、ウイルスベクター/タンパク質の組合せ、ならびにウイルスおよびポリヌクレオチド投与の組合せを用いることが可能である。このような方法では、まず、あるビヒクル(例えば、ウイルスビヒクル、精製および/または組換えタンパク質、あるいはコード核酸)を使用してタンパク質/抗原/誘導体/修飾体の初回用量を個体に投与する。通常、複数回、典型的には1〜4回の初回抗原刺激を用いるが、より多数回を用いることも可能である。該初回用量は免疫応答を有効に初回刺激して、後に循環免疫系において該タンパク質/抗原が同一のものと確認されると、該免疫応答は該宿主内で該タンパク質/抗原を直ちに認識し応答しうる。ある程度の期間の後、既に投与されたタンパク質/抗原、その誘導体または修飾体の少なくとも1つの追加用量を該個体に投与する(ウイルスビヒクル/タンパク質/核酸により投与する)。初回抗原刺激と追加抗原刺激との間の期間の長さは典型的には約4ヶ月〜1年の様々な長さでありうるが、当業者に認識されるとおり他の時間枠を用いることも可能である。また、フォローアップまたは追加投与を、選択された時間間隔で反復することが可能である。混合様式の初回および追加接種法は、既存の抗ベクター免疫が存在する場合に特に、増強された免疫応答をもたらすであろう。
【0047】
初回−追加投与計画において本明細書中に開示されているベクターと共に使用する代替的投与ビヒクル(ウイルス/核酸/タンパク質の場合)の選択は、この場合の実施の成功に決定的に重要なものではない。細胞性および/または体液性応答が惹起されるのに十分なレベルまで抗原を運搬しうる(または該抗原の発現をもたらしうる)任意のビヒクルが、ここに開示されている初回または追加投与を行うのに十分なものであるはずである。適当なウイルスビヒクルには、限定的なものではないがアデノウイルス血清型5、6、24、34および35(例えば、2001年1月11日付け公開のPCT/US00/18332(Ad5);2002年3月21日付け公開のPCT/US01/28861(Ad5);2003年4月17日付け公開のPCT/US02/32512(Ad6);2004年3月4日付け公開のPCT/US2003/026145(Ad24、Ad34);2000年11月23日付け公開のPCT/NL00/00325(Ad35)を参照されたい)を含む種々の血清型のアデノウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、該アデノウイルス投与の後または前に、多様な起源のウイルスビヒクルの投与を行うことが可能である。種々のウイルスビヒクルの具体例には、アデノ随伴ウイルス(「AAV」;例えば、Samulskiら,1987 J.Virol.61:3096−3101;Samulskiら,1989 J.Virol.63:3822−3828を参照されたい);レトロウイルス(例えば、Miller,1990 Human Gene Ther.1:5−14;Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい);ポックスウイルス(複製欠損型NYVAC、ALVAC、TROVACおよびMVAベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない;例えば、Panicali & Paoletti,1982 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:4927−31;Nakanoら,1982 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1593−1596;Picciniら,In Methods in Enzymology 153:545−63(Wu & Grossman編,Academic Press,San Diego);Sutterら,1994 Vaccine 12:1032−40;Wyattら,1996 Vaccine 15:1451−8;ならびに米国特許第4,603,112号、第4,769,330号、第4,722,848号、第4,603,112号、第5,110,587号、第5,174,993号および第5,185,146号を参照されたい);ならびにアルファウイルス(例えば、WO 92/10578;WO 94/21792;WO 95/07994;ならびに米国特許第5,091,309号および第5,217,879号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。HIV抗原の運搬のためにアデノウイルスおよびポックスウイルスベクターを使用する初回−追加法は、2003年9月18日付け公開の国際出願番号PCT/US03/07511に記載されている。前記の免疫法の代替手段は、アデノウイルス初回および/または追加投与と共にポリヌクレオチド投与(「裸DNA」または促進ポリヌクレオチド運搬が含まれるが、これらに限定されるものではない)を用いることであろう。例えば、Wolffら,1990 Science 247:1465ならびに以下の特許公開:米国特許第5,580,859号、第5,589,466号、第5,739,118号、第5,736,524号、第5,679,647号、WO 90/11092およびWO 98/04720を参照されたい。もう1つの代替手段は、アデノウイルスと共に初回−追加法での精製/組換えタンパク質の投与を用いることであろう。
【0048】
本発明の組換えアデノウイルスベクターが投与されうる可能な宿主/被ワクチン接種者/個体には、霊長類ならびに特にヒトおよび非ヒト霊長類が含まれ、商業的または家畜獣医学的に重要な任意の非ヒト哺乳類が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の方法および組成物により投与されるワクチン組成物を包含する(これらに限定されるものではない)アデノウイルスベクターの組成物は、単独で、またはウイルスに基づく若しくはウイルスに基づかない他のDNA/タンパク質ワクチンと組合せて投与されうる。それらはまた、より広い治療計画の一部として投与されうる。したがって、本発明は、開示されているアデノウイルス構築物が他の療法[他の抗微生物(例えば、抗ウイルス、抗細菌)剤での治療が含まれるが、これらに限定されるものではない]と共に投与される場合を包含する。いずれの具体的な抗微生物剤も、本明細書に開示されている方法の実施の成功に決定的に重要なものではない。例えば、該抗微生物剤は、抗体、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチドまたは小分子に基づく/由来することが可能である。個体における微生物の複製/広がり/負荷を有効に軽減する任意の抗微生物剤が、本明細書に記載の用途には十分なものである。
【0050】
抗ウイルス剤はウイルスの機能/生活環に拮抗し、該ウイルスの適切な生活環に必須のタンパク質/機能を標的とし、その効果はインビボまたはインビトロアッセイにより容易に判定されうる。特定のウイルスタンパク質を標的とするいくつかの代表的な抗ウイルス剤としては、プロテアーゼインヒビター、逆転写酵素インヒビター(ヌクレオシド類似体、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオチド類似体が含まれる)およびインテグラーゼインヒビターが挙げられる。プロテアーゼインヒビターには、例えば、インディナビル(indinavir)/CRIXIVAN(登録商標)、リトナビル(ritonavir)/NORVIR(登録商標)、サキナビル(saquinavir)/FORTOVASE(登録商標)、ネルフィナビル(nelfinavir)/VIRACEPT(登録商標)、アンプレナビル(amprenavir)/AGENERASE(登録商標)、ロピナビル(lopinavir)およびリトナビル(ritonavir)/KALETRA(登録商標)が含まれる。逆転写酵素インヒビターには、例えば、(1)ヌクレオシド類似体、例えばジドブジン(zidovudine)/RETROVIR(登録商標)(AZT)、ジダノシン(didanosine)/VIDEX(登録商標)(ddI)、サルシタビン(zalcitabine)/HTVID(登録商標)(ddC)、スタブジン(stavudine)/ZERIT(登録商標)(d4T)、ラミブジン(lamivudine)/EPIVIR(登録商標)(3TC)、アバカビル(abacavir)/ZIAGEN(登録商標)(ABC)、(2)非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えばネビラピン(nevirapine)/VIRAMUNE(登録商標)(NVP)、デラビルジン(delavirdine)/RESCRIPTOR(登録商標)(DLV)、エファビレンズ(efavirenz)/SUSTIVA(登録商標)(EFV)、および(3)ヌクレオチド類似体、例えばテノフォビル(tenofovir)DF/VIREAD(登録商標)(TDF)が含まれる。インテグラーゼインヒビターには、例えば、2003年3月20日付け公開の米国特許出願公開番号US2003/0055071および国際出願WO 03/035077に開示されている分子が含まれる。示されている抗ウイルス剤はウイルス/ウイルスタンパク質の機能、例えば調節タンパク質tatまたはrevとそれぞれトランス活性化応答領域(「TAR」)またはrev応答要素(「RRE」)との相互作用をも標的としうる。抗ウイルス剤は、好ましくは、プロテアーゼインヒビター、逆転写酵素のインヒビターおよびインテグラーゼインヒビターよりなるクラスの化合物から選ばれる。好ましくは、個体に投与される抗ウイルス剤は、有効な抗ウイルス療法剤[例えば、高活性抗レトロウイルス療法(「HAART」)(ウイルスプロテアーゼおよび逆転写酵素のインヒビターのカクテルを意味するものとして当技術分野で一般に用いられる用語)において使用されるもの]の何らかの組合せである。
【0051】
本発明は、微生物感染の治療に有用な任意の医薬組成物と共に使用されうる、と当業者は理解することが可能である。抗微生物剤は、典型的には、当技術分野で報告されているそれらの通常の投与量範囲および投与計画(例えば、Physicians’Desk Reference,54th edition,Medical Economics Company,2000に記載されている投与量が含まれる)で投与される。
【0052】
該組換えウイルスベクターを含む組成物は、バッファー、正常食塩水またはリン酸緩衝食塩水、スクロース、他の塩およびポリソルベートを包含する(これらに限定されるものではない)生理的に許容される成分を含有しうる。特定の実施形態においては、該ウイルス粒子はA195製剤化バッファー中で製剤化される。ある実施形態においては、該製剤は、2.5〜10mM TRISバッファー、好ましくは約5mM TRISバッファー;25〜100mM NaCl、好ましくは約75mM NaCl;2.5〜10% スクロース、好ましくは約5% スクロース;0.01〜2mM MgCl;および0.001%〜0.01% ポリソルベート80(植物由来)を含有する。pHは、約7.0〜9.0の範囲、好ましくは約8.0であるべきである。当業者は、他の通常のワクチン賦形剤も該製剤中で使用されうると理解するであろう。特定の実施形態においては、該製剤は、5mM TRIS、75mM NaCl、5% スクロース、1mM MgCl、0.005% ポリソルベート80をpH8.0で含有する。これは、ガラス表面へのウイルスの吸着の可能性を最小限に抑えウイルス安定性にとって最適に近いpHおよび二価陽イオン組成を有する。それは筋肉注射の際に組織刺激を引き起こさない。それは、好ましくは、使用まで凍結される。
【0053】
ワクチン被接種者に導入されるワクチン組成物中のウイルス粒子の量は、使用する転写および翻訳プロモーターの強度ならびに発現遺伝子産物の免疫原性に左右されるであろう。一般には、アデノウイルスベクター当たり1×10〜1×1012粒子、好ましくは約1×1010〜1×1011粒子の免疫学的または予防的に有効な用量を筋肉組織内に直接投与する。皮下注射、皮内導入、皮膚を介した圧入(impression)および他の投与様式、例えば腹腔内、静脈内または吸入運搬も意図される。
【0054】
免疫応答を増強または拡張しうる追加的な物質(例えば、種々のサイトカイン、インターロイキン)を本発明のウイルスベクターの非経口導入と同時に又はその後で投与することも本発明において想定され、有利でありうる。
【0055】
本明細書に記載されている投与の利益は、(1)比較しうる又はより広い個体集団が組換えアデノウイルスベクターで成功裏に免疫化/治療されること、および(2)免疫化の場合に、これまでに未感染の個体に対する、より低い伝染率(または発生率)(すなわち、予防的用途)、および/または、感染個体内のウイルス/細菌/外来因子のレベルの抑制(すなわち、治療的用途)であるはずである。
【0056】
以下の非限定的な実施例は本発明の実施を更に詳しく例示するために記載されている。
【実施例1】
【0057】
pAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の構築
pAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6(既存のC群/Ad5 E1相補性細胞系における効率的な増殖を可能にするためにAd5 Orf6で置換されたE1欠失およびE4欠失を含有するAd26前(pre)Adプラスミド)を構築するために、細菌複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子を含有するプラスミド配列により分離されたAd26ゲノム(図1A−1〜1A−11を参照されたい)の右(bp31952−32338およびbp34687−35146)および左(bp4−462およびbp3369−3802)末端からの配列を含有するAd26 ITRカセットを構築した。該4セグメントをPCRにより作製し、pNEB193内に逐次的にクローニングしてpNEBAd26−4aを得た。次に、Ad5 Orf6オープンリーディングフレームをPCRにより作製し、Ad26 bp32338と34687との間にクローニングしてpNEBAd26−4aAd5Orf6(ITRカセット)を得た。PNEB193は、細菌複製起点、アンピシリン耐性遺伝子、および該PCR産物が導入されるマルチクローニング部位を含有する一般に使用される商業的に入手可能なクローニングプラスミド(New England Biolabs cat#N3051S)である。ITRカセットは、Ad26 bp463−3368のE1配列の欠失を含有し、該欠失内、およびAd5 Orf6がE4平行配向で導入されたAd26 bp32339−34686のE4欠失内に唯一のSwaI制限部位が位置する。この構築物においては、Ad5Orf6の発現はAd26 E4プロモーターにより駆動される。ITRカセット内のAd26配列(bp31952−32338およびbp3369−3802)は、BJ5183細菌内への共形質転換後に細菌組換えが生じうる、精製Ad26ウイルスDNAに対する相同性の領域を与えた(図2)。また、ITRカセットは、消化により該プラスミド配列から組換えAd26ゲノムが遊離される、ウイルスITRの末端に位置する唯一の制限酵素部位(PmeI)を含有するよう設計した。潜在的クローンを制限分析によりスクリーニングし、1つのクローンをpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6として選択した。前(pre)アデノウイルスプラスミドpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6は、bp32338とbp34686との間にクローニングされたAd5 Orf6と共にbp4−462、bp3369−bp32338およびbp34687−bp35146にAd26配列を含有する。このプラスミドを完全に配列決定した(図3A−1〜3A−9を参照されたい)。前記説明におけるbp番号は、Ad26およびAd5のどちらに関しても、wt配列に基づく。
【実施例2】
【0058】
pAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6内へのHIV−1 gagおよびSEAPトランスジーンの挿入
gagまたはSEAP発現カセット(それぞれ図8および20を参照されたい)をpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6のE1領域内に導入するために、再び細菌組換えを利用した。1)ヒトサイトメガロウイルスの最初期遺伝子プロモーター、2)ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)gag(株CAM−1;1526bp)遺伝子のコード配列、および3)ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列よりなるHIV gag発現カセットを、Ad26シャトルプラスミドpNEBAd26−2(前記Ad26 ITRカセットの前駆体)内のE1欠失内にクローニングして、pNEBAd26CMVgagBGHpAを得た。pNEBAd26−2は、E1欠失を定める、該ゲノムの左末端からのAd26配列(bp4−462およびbp3369−3802)を含有する。該gag発現カセットを、予め構築されたプラスミドから得、bp462−3369のE1欠失内にE1平行配向でクローニングした。該gagトランスジーンを含有するシャトルベクターを消化して、Ad26 bp4−462およびbp3369−3802に隣接するgag発現カセットよりなるDNA断片を得、該断片をアガロースゲル上の電気泳動後に精製した。該シャトルベクター断片とpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6(SwaIでの消化によりE1領域において線状化されている)とでのBJ5183細菌の共形質転換は、相同組換えにより、Ad26 gag含有前アデノウイルスプラスミドpAd26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6を与えた。潜在的クローンを制限分析によりスクリーニングした。
【0059】
同様の方法を用いて、SEAP発現カセットを含有するAd26前Adプラスミドを作製した。この場合、1)ヒトサイトメガロウイルスの最初期遺伝子プロモーター、2)ヒト胎盤SEAP遺伝子のコード配列、および3)ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列よりなるSEAP発現カセットを、Ad26シャトルプラスミドpNEBAd26−2内のE1欠失内にクローニングして、pNEBAd26CMVSEAPBGHpAを得た。ついで該トランスジーンを、gagトランスジーンに関して前記で説明されているとおりに、pAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6内への組換えに付した。
【実施例3】
【0060】
ウイルス内へのpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6、pAd26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6およびpAd26ΔE1SEAPΔE4Ad5Orf6のレスキュー
前アデノウイルスプラスミドpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6、pAd26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6およびpAd26ΔE1SEAPΔE4Ad5Orf6をウイルス内にレスキューするために、該プラスミドをそれぞれPmeIで消化し、リン酸カルシウム共沈技術(Cell Phect Transfection Kit,Amersham Pharmacia Biotech Inc.)を用いてT−25フラスコ内のPER.C6(登録商標)細胞内にトランスフェクトした。PmeI消化は該プラスミド配列から該ウイルスゲノムを遊離して、細胞進入後にウイルス複製を引き起こさせる。トランスフェクションの約7〜10日後、完全な細胞変性効果(CPE)が認められたら、感染細胞および培地を回収し、3回、凍結/解凍し、遠心分離により細胞残渣をペレット化した。ついで該細胞ライセートを使用して、T−225フラスコ内のPER.C6(登録商標)細胞に80〜90%のコンフルエンスで感染させた。CPEに達したら、感染細胞および培地を回収し、3回、凍結/解凍し、遠心分離により細胞残渣をペレット化した。ついで清澄化細胞ライセートを使用して、2層のNUNC細胞ファクトリー(factory)のPER.C6(登録商標)細胞に感染させた。完全なCPEの後、該ウイルスをCsCl密度勾配上の超遠心分離により精製した。レスキューされたウイルスの遺伝的構造を確認するために、プロナーゼ処理およびそれに続くフェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿により、ウイルスDNAを抽出した。ついでウイルスDNAをHindIIIで消化し、クレノウフラグメントで処理して、該制限断片をP33−dATPで末端標識した。ついで該末端標識制限断片をゲル電気泳動によりサイズ分画し、オートラジオグラフィーにより可視化した。該消化産物を、それが由来する(標識前にPme1/HindIIIで消化された)対応する前アデノウイルスプラスミドの消化産物と比較した。予想サイズが観察され、このことは、該ウイルスが成功裏にレスキューされたことを示している。
【実施例4】
【0061】
pMRKAd26ΔE1ΔE3ΔE4Ad5Orf6の構築
Ad26に基づく本発明者らのベクターのクローニング容量を増加させるために、初期領域3(「E3」)を欠失させて前AdプラスミドpAd26ΔElΔE3ΔE4Ad5Orf6を得た。pAd26ΔElΔE3ΔE4Ad5Orf6(E1欠失、E3欠失、およびAd5 Orf6で置換されたE4欠失を含有するAd26前Adプラスミド)を構築するために、所望のE3欠失(bp26116−26585およびbp30313−bp30744)を定める配列を含有するAd26 E3シャトルカセットを構築した。該2セグメントをPCRにより作製し、pNEB193内に逐次的にクローニングしてpNEBAd26E3−2を得た。該E3シャトルカセットは、Ad26 bp26586−bp30312のE3配列の欠失を含有し、該欠失内に唯一のPacI制限部位が位置する。該E3シャトルカセットを消化して、E3欠失を定めるAd26 DNAを遊離させ、該断片をアガロースゲル上の電気泳動後に精製した。該シャトルベクター断片とpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6(PsiIでの消化によりE3領域において線状化されている)とでのBJ5183細菌の共形質転換は、相同組換えにより、Ad26前アデノウイルスプラスミドpAd26ΔE1ΔE3ΔE4Ad5Orf6を与えた(図4)。潜在的クローンを制限分析によりスクリーニングし、1つのクローンをpAd26ΔE1ΔE3ΔE4Ad5Orf6として選択した。前アデノウイルスプラスミドpAd26ΔE1ΔE3ΔE4Ad5Orf6は、bp32338とbp34686との間にクローニングされたAd5 Orf6と共にbp4−462、bp3369−bp26585、bp30313−32338およびbp34687−bp35146にAd26配列を含有する。前記説明におけるbp番号は、Ad26およびAd5のどちらに関しても、wt配列に基づく。
【実施例5】
【0062】
インビボ研究
A.免疫化
3頭のアカゲザル(rhesus macaque)のコホートを108vpまたは1010vpのAd26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6のいずれかで免疫化した(第0、4週)。該動物に追加抗原刺激のための低用量のMRKAd5gag(107vp;2002年3月21日付け公開のPCT/US01/28861に開示されているpMRKAd5gag)を第27週に投与した。第3のコホートには108vp MRKAd5gagでの初回免疫化およびそれに続く1010vp Ad26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6での追加抗原刺激を行った。アカゲザルは体重3〜10kgであった。すべての場合において、各ワクチンの全用量を1mLのバッファーに懸濁させた。該サルを麻酔(ケタミン/キシラジン)し、ツベルクリンシリンジ(Becton−Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を使用して該ワクチンを0.5mLのアリコートで両方の三角筋に筋肉内(「i.m.」)投与した。標準的なプロトコールに従い血漿および末梢血単核細胞(PBMC)サンプルを集めた。
【0063】
B.ELISPOTおよびICSアッセイ
96ウェル平底プレート(Millipore,Immobilon−P membrane)を1μg/ウェルの抗ガンマインターフェロン(IFNγ)mAb MD−1(U−Cytech−BV)で4℃で一晩コートした。ついで該プレートをPBSで3回洗浄し、R10培地(RPMI,0.05mM 2−メルカプトエタノール、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタマート、10mM HEPES、10% ウシ胎児血清)で37℃で2時間ブロッキングした。該培地を該プレートから廃棄し、新鮮に単離されたPBMCを1〜4×10細胞/ウェルで加えた。該細胞をgagペプチドプール(ペプチド当たり4μg/mL)の非存在下(模擬)または存在下で刺激した。該プールは、4aaだけ変化した15−aaのペプチドよりなり(Synpep,CA)、全HIV−1 CAM1 gag配列から構築した。ついで該細胞を37℃、5% COで20〜24時間インキュベートした。プレートをPBST(PBS,0.05% Tween 20)で6回洗浄し、100μL/ウェルの1:400希釈度の抗IFNγポリクローナルビオチン化検出抗体溶液(U−Cytec−BV)を加え、該プレートを37℃で一晩インキュベートした。該プレートをPBSTで6回洗浄した。NBT/BCP(Pierce)中で10分間インキュベートすることにより発色させた。スポットを解剖用顕微鏡下で計数し、1×10 PBMCに対して正規化した。
【0064】
IFNγ産生の細胞内染色(ICS)を、既に確立されているプロトコール(Casimiroら,2003 J.Virol.77:6305−6313)に従い行った。
【0065】
図5は、IFNγ ELIspotアッセイにより測定したgag特異的T細胞の模擬補正レベルを表形式で列挙する。
【0066】
C.結果
Ad26に基づくワクチンベクターは1010vpの用量レベルでgag特異的T細胞を有効に感作することが可能であった。MRKAd5gagで感作された動物は、最初の投与の後で、400 SFC/106 PBMCより大きな応答を示した。これらの結果は、該Ad26が、HIV特異的免疫を誘導するための有効なベクターであることを示している。1つの場合には、該ベクターは、低い有効量のMRKAd5gagを使用して有意に追加抗原刺激される動物においてgag特異的T細胞を感作することが可能である。群1では、gag特異的T細胞のレベルは追加抗原刺激前の値から5〜20倍増加した。また、MRKAd5gagベクターで初回抗原刺激することにより惹起されるHIV特異的免疫を追加抗原刺激するために、該Ad6ベクター自体を使用することも可能である(図6、群3)。
【0067】
細胞内サイトカイン染色(ICS)によるgag特異的免疫のT細胞サブセットの分析は、該Ad26ベクターが細胞傷害性応答およびヘルパー応答の両方を惹起しうることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A−1】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−2】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−3】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−4】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−5】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−6】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−7】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−8】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−9】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−10】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図1A−11】図1A−1〜1A−11はアデノウイルス血清型26の核酸配列(配列番号1)を示す。Ad26の、入手可能なATCC産物番号は以下のとおりである:VR1104、VR−1104AS/RB、VR−1104PI/RBおよびVR−224。
【図2】図2は、pAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6を回収するために用いる相同組換え法を示す。
【図3A−1】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−2】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−3】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−4】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−5】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−6】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−7】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−8】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図3A−9】図3A−1〜3A−9はpAd26ΔE1ΔE4Ad5Orf6の核酸配列(配列番号2)を示す。
【図4】図4は、pAd26ΔE1ΔE3ΔE4Ad5Orf6を回収するために用いる相同組換え法を示す。
【図5】図5は、初回−追加ワクチン接種法においてpAd26ΔE1gagΔE4Ad5Orf6およびMRKAd5gagベクターを使用してマカクにおいて誘導されたGag特異的T細胞応答のレベルを、表形式で示す。値は、百万個のPBMC当たりのIFNγ分泌細胞の、模擬値を差し引いた数を表す。wk:週。
【図6】図6は、第8週における、Ad26で免疫化されたマカクにおける百万個のリンパ球当たりのCD4+およびCD8+Gag特異的T細胞の数を表形式で示す。
【図7】図7は最適化ヒトHIV−1 gagオープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号3)を示す。
【図8】図8は、gag発現カセットをコードする核酸配列(配列番号4)を示す。この図の種々の領域は以下のとおりである。(1)ヒトサイトメガロウイルスの最初期遺伝子プロモーター領域をコードする核酸配列の第1の下線付きセグメント。(2)下線無しの小文字の第1のセグメント。このDNAセグメントは簡便な制限酵素部位を含有する。(3)HIV−1 gagのコード配列を含有する大文字の領域。(4)下線無しの小文字の第2のセグメント。このDNAセグメントは簡便な制限酵素部位を含有する。(5)第2の下線付きセグメント。このセグメントは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列をコードする核酸配列を含有する。
【図9A−1】図9A−1〜9A−2はコドン最適化wt−pol配列を示す。ここで、プロテアーゼ(PR)活性をコードする配列は欠失しており、RT(逆転写酵素およびRNアーゼH活性)およびINインテグラーゼ活性をコードするコドン最適化「野生型」配列(配列番号6)が残されている。オープンリーディングフレームはヌクレオチド10−12の開始Met残基で始まり、ヌクレオチド2560−2562の終止コドンで終わる。
【図9A−2】図9A−1〜9A−2はコドン最適化wt−pol配列を示す。ここで、プロテアーゼ(PR)活性をコードする配列は欠失しており、RT(逆転写酵素およびRNアーゼH活性)およびINインテグラーゼ活性をコードするコドン最適化「野生型」配列(配列番号6)が残されている。オープンリーディングフレームはヌクレオチド10−12の開始Met残基で始まり、ヌクレオチド2560−2562の終止コドンで終わる。
【図10A−1】図10A−1〜10A−2は、配列番号6として開示されている野生型pol構築物のオープンリーディングフレーム(配列番号7)を示す。
【図10A−2】図10A−1〜10A−2は、配列番号6として開示されている野生型pol構築物のオープンリーディングフレーム(配列番号7)を示す。
【図11A−1】図11A−1〜11A−3はIA−Polのヌクレオチド(配列番号8)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示す。下線付きコドンおよびアミノ酸は、本明細書中の表1に列挙する突然変異を示す。
【図11A−2】図11A−1〜11A−3はIA−Polのヌクレオチド(配列番号8)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示す。下線付きコドンおよびアミノ酸は、本明細書中の表1に列挙する突然変異を示す。
【図11A−3】図11A−1〜11A−3はIA−Polのヌクレオチド(配列番号8)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示す。下線付きコドンおよびアミノ酸は、本明細書中の表1に列挙する突然変異を示す。
【図12】図12はHIV−1 jrfl nefのコドン最適化形態(配列番号10)を示す。オープンリーディングフレームはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基で始まり、ヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンで終わる。
【図13】図13はコドン最適化HIV jrfl Nefのオープンリーディングフレーム(配列番号11)を示す。
【図14A−1】図14A−1〜14A−2は野生型nef(jrfl)とコドン最適化nefとの間のヌクレオチド配列比較を示す。jrfl分離体からの野生型nef遺伝子は、216アミノ酸のポリペプチドをコードしうる648ヌクレオチドよりなる。WT,野生型配列(配列番号12);opt,コドン最適化配列(配列番号10内に含有される)。Nefアミノ酸配列は1文字の記号で示されている(配列番号11)。
【図14A−2】図14A−1〜14A−2は野生型nef(jrfl)とコドン最適化nefとの間のヌクレオチド配列比較を示す。jrfl分離体からの野生型nef遺伝子は、216アミノ酸のポリペプチドをコードしうる648ヌクレオチドよりなる。WT,野生型配列(配列番号12);opt,コドン最適化配列(配列番号10内に含有される)。Nefアミノ酸配列は1文字の記号で示されている(配列番号11)。
【図15】図15は、最適化HIV−1 Nefをコードする核酸(本明細書中では「opt nef(G2A,LLAA)」;配列番号13)を示し、ここで、オープンリーディングフレームは、アミノ末端ミリスチル化部位における修飾(Gly−2からAla−2へ)およびLeu−174−Leu−175ジロイシンモチーフからAla−174−Ala−175への置換をコードしている。オープンリーディングフレームはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基で始まり、ヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンで終わる。
【図16】図16はopt nef(G2A,LLAA)のオープンリーディングフレーム(配列番号14)を示す。
【図17】図17は、最適化HIV−1 Nefをコードする核酸(本明細書中では「opt nef(G2A)」;配列番号15)を示し、ここで、オープンリーディングフレームはヌクレオチド12−14の開始メチオニン残基で始まり、ヌクレオチド660−662の「TAA」終止コドンで終わる。
【図18】図18はopt nef(G2A)のオープンリーディングフレーム(配列番号16)を示す。
【図19】図19はnefおよびnef誘導体の概要図を示す。Nef誘導体に含まれるアミノ酸残基が示されている。グリシン2ならびにロイシン174および175は、それぞれミリスチル化およびジロイシンモチーフに関与する部位である。
【図20】図20は、SEAP発現カセットをコードする核酸配列(配列番号17)を示す。この図の種々の領域は以下のとおりである。(1)ヒトサイトメガロウイルスの最初期遺伝子プロモーター領域をコードする核酸配列の第1の下線付きセグメント。(2)下線無しの小文字の第1のセグメント。このDNAセグメントは簡便な制限酵素部位を含有する。(3)ヒト胎盤SEAP遺伝子のコード配列を含有する大文字の領域。(4)下線無しの小文字の第2のセグメント。このDNAセグメントは簡便な制限酵素部位を含有する。(5)第2の下線付きセグメント。このセグメントは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列をコードする核酸配列を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にE1において欠失しておりE1活性を欠く血清型26の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項2】
異種核酸を含む、請求項1記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項3】
E4遺伝子またはE4遺伝子のセグメント(代替的血清型のオープンリーディングフレーム6(「ORF6」)を含むもの)を含む、請求項1記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項4】
該代替的血清型がアデノウイルス血清型5である、請求項3記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項5】
a)関心のあるタンパク質または抗原をコードする核酸、
b)a)の核酸に機能しうる様態で連結された異種プロモーター、および
c)転写終結配列
を含む遺伝子発現カセットを含む、請求項2記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項6】
該異種核酸が、ヒト宿主における発現に関して最適化されたコドンを含む、請求項5記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項7】
該異種核酸がHIV−1抗原をコードしている、請求項2記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項8】
該異種核酸が、HIV−1 Gag、NefまたはPolよりなる群から選ばれる少なくとも1つの抗原をコードしている、請求項7記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項9】
請求項2記載の組換えアデノウイルスベクターを含んでなる細胞の集団。
【請求項10】
請求項3記載の組換えアデノウイルスベクターを含んでなる細胞の集団。
【請求項11】
(a)請求項2記載の組換えアデノウイルスベクターを細胞の集団内にトランスフェクトし、
(b)生じた組換え複製欠損型アデノウイルスを回収することを含んでなる、組換え複製欠損型アデノウイルス粒子の製造方法。
【請求項12】
(a)請求項3記載の組換えアデノウイルスベクターを細胞の集団内にトランスフェクトし、
(b)生じた組換え複製欠損型アデノウイルスを回収することを含んでなる、組換え複製欠損型アデノウイルス粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の製造方法により回収された、精製された組換え複製欠損型アデノウイルス粒子。
【請求項14】
請求項12記載の製造方法により回収された、精製された組換え複製欠損型アデノウイルス粒子。
【請求項15】
請求項13記載の精製された組換えアデノウイルス粒子を含んでなる組成物。
【請求項16】
請求項14記載の精製された組換えアデノウイルス粒子を含んでなる組成物。
【請求項17】
生理的に許容される担体を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
生理的に許容される担体を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
請求項15記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、関心のあるタンパク質または抗原をコードする異種核酸の運搬および発現のための方法。
【請求項20】
投与の前または後に、関心のあるタンパク質または抗原をコードする異種核酸の投与を異なるベクターで行う、請求項19記載の方法。
【請求項21】
異なるベクターが、異なる血清型のアデノウイルスである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項17記載の組成物を個体に投与することを含んでなり、該異種核酸が、抗原をコードする核酸を含む、該個体において該抗原に対する免疫応答を生成させるための方法。
【請求項23】
該異種核酸が、HIV−1 Gag、NefまたはPolよりなる群から選ばれる少なくとも1つの抗原をコードしている、請求項22記載の方法。

【図1A−1】
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【図1A−2】
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【図1A−3】
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【図1A−4】
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【図1A−5】
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【図1A−6】
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【図1A−7】
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【図1A−8】
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【図1A−9】
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【図1A−10】
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【図1A−11】
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【図2】
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【図3A−1】
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【図3A−2】
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【図3A−3】
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【図3A−4】
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【図3A−5】
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【図3A−6】
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【図3A−7】
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【図3A−8】
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【図3A−9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−1】
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【図9A−2】
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【図10A−1】
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【図10A−2】
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【図11A−1】
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【図11A−2】
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【図11A−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14A−1】
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【図14A−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−538894(P2008−538894A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555152(P2007−555152)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/004060
【国際公開番号】WO2006/086284
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】