説明

アデノシンアナログの経口投与

【課題】アデノシンアナログを含む組成物のIV投与に伴う問題を解決する。
【解決手段】アデノシンアナログを含む組成物であって、経口(同時)投与に適した剤形を含む前記組成物が開示される。また、アデノシンアナログを含む組成物であって、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である前記組成物、及びアデノシンアナログを含む組成物であって、液体を含む剤形である前記組成物も開示される。更に、本発明の組成物を投与する方法、及び本発明の組成物を含むキットも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、アデノシンアナログを含む組成物に関する。更に詳細には、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、経口(同時)投与に適した剤形を含んでいる前記組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ある種のアデノシンアナログは、臨床薬理的に非常に有益であることが見出された。アデノシンアナログとしては、2'-デオキシコホルマイシン(dCF、ペントスタチン、又はNIPENT(登録商標)とも呼ばれる)、アデノシンデアミナーゼ阻害剤; フルダラビン一リン酸(FLU)、アデノシンデアミナーゼに比較的抵抗するアデニンのフッ化類縁体; 又は2-クロロ-2'-デオキシアデノシン(クラドリビン又は2CDAとも呼ばれる)、2位の炭素に塩素を導入することによりアデノシンデアミナーゼに抵抗する薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。有効な活性を有する他のアデノシンアナログとしては、2'-デオキシアデノシン、3'-デオキシアデノシン、又はジデオキシアデノシンのようなデオキシアデノシン類が含まれる。
ヒトにおいては、これらの化合物は、多くのアデノシン関連経路、特にアデノシンデアミナーゼ(ADA)経路を経て作用すると考えられている。ADAの遺伝的欠損は、重篤な複合免疫不全を引き起こすことがある。Dighiero, G., "Adverse and beneficial immunological effects of purine nucleoside analogues (プリンヌクレオシドアナログの免疫学的薬効と副作用)", Hematol Cell Ther, 38:575-581(1996)。この論文及び本明細書に引用されるすべての他の論文は、完全に転載されているかのように本明細書に含まれるものとする。
【0003】
ADA経路介入の正確な種類は明らかでないが、細胞の脱アミノに抵抗するアデノシンアナログは、ADA欠損状態をミミックすることができるものである。ADAの欠乏は、細胞内にデオキシアデノシンとアデノシン三リン酸の蓄積をまねき、これにより細胞内でのDNA鎖の切断が致命的に加速されると思われる。正常な状態のもとで、細胞はDNAを絶えず切断し再結合している。この生理的過程が過剰のアデノシン三リン酸の作用によって促進される場合、ポリADPリボース合成のNADの消費をまねく。このポリマーは、クロマチン関連ポリ(ADPリボース)シンテターゼによって触媒される反応においてニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド(NAD)から生産され、細胞のNAD含量の減少をまねく。この減少によって、ADPとATPが致死減少するために、細胞還元力の著しい変化が生じる。
【0004】
その結果は、Ca++、Mg++、依存性エンドヌクレアーゼの活性化によるプログラムされた細胞死である。従って、本発明のヌクレオシドアナログは、アポトーシス過程により、リンパ球活性を優先して細胞に作用し得ると思われる。ニコチンアミド又は3-アミノベンズアミドのNAD前駆体、ポリ(ADPリボース)シンセターゼ阻害剤で細胞培養液を補足すると、NADの消耗が妨げられるとともに2CDA毒性が低下するという事実は、この仮説を支持する傾向がある。
種々のアデノシンアナログは、異なる方法でADA経路に影響する。DCFは、例えば、ADAの準不可逆阻害剤であることがわかった。リンパ球において脱リン酸化酵素5-ヌクレオチダーゼよりデオキシシチジンキナーゼ(DCK)の優位性を容易にすることにより、デオキシアデノシン-5'-三リン酸(dATP)の好ましい蓄積が引き起こされる。比較すると、FLUと2CDAは、酵素にむしろ抵抗する。両薬剤は、まずDCKによってリン酸化され、細胞アデノシン三リン酸代理物の蓄積に寄与する。上記のように、推定DCFメカニズムか又はFLU又は2CDAメカニズムによるアデノシン三リン酸の蓄積は、細胞のアポトーシス死を促進する。
【0005】
種々のアデノシンアナログの起こり得るメカニズムの考察は、更に、C. Deardenら,『成熟T細胞白血病の治療におけるデオキシコホルマイシン』, Brit J. of Can., 64(5):903-906(Nov. 1991); J. Seymourら,『インターフェロン-α-耐性ヘアリー細胞白血病におけるデオキシコホルマイシン後のCD4+リンパ球の応答期間と回復: 7年間の経過観察』, Leukemia, 11, 42-47(1997); J. Johnstonら, 『デオキシアデノシンと2'-デオキシコホルマイシンによるCD4+前リンパ球白血病のアポトーシス誘導』, Leukemia Research, 16:8, 781-788(1992); I. Fabianら, 『アデノシンとデオキシアデノシンで治療した骨髄細胞及び造血増殖因子に対するデオキシコホルマイシンの影響』, Human Immunology, 21, 81-87(1988); E. Copelanら,『マウスT細胞白血病における薬理的骨髄パージング』, Blood, 71(6):1656-1661(Ju. 1988); W. Sheridanら,『薬理的T細胞パージングツールとしてのデオキシコホルマイシンとデオキシアデノシンに関する症状発現前の研究』, Bone Marrow Trans. 4:511-517(1989);
【0006】
S. Sandhuら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤は単離したモルモット心臓において虚血損傷を減弱させ、エネルギーバランスを保存する』, 265(4):1249-1256(Oct. 1993); D. Saitoら,『簡単な冠動脈閉塞後の心筋反応性充血に対するアデノシンデアミナーゼ阻害剤の効果』, Cardiovascular Reaearch, 19, 578-583(1985); G, Cristalliら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤: エリトロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニンのイミダゾール類縁体の合成と構造-活性の関係』, J. Med. Chem. 34:1187-1192(1991); G. Cristalliら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. エリトロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニンの脱アザ類縁体の合成と生物活性』, J. Med. Chem., 31:390-393(1988); R. Jacksonら,『新規なアデノシンデアミナーゼ阻害剤、(2'-R)-クロロペントスタチンの生化学的薬理学』, Advances in Enzyme Regulation, 25:125-139;
【0007】
C. Vargeeseら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. (+)-エリトロ-9-(2S-ヒドロキシ-3R-ノニル)アデニンの推定代謝物の合成と生物学的評価』, J. Med. Chem. 37:3844-3849(1994); G. Wolbergら,『リンパ球仲介細胞溶解に対するアデノシンデアミナーゼ阻害剤の影響』, Annals of the New York Academy of Sciences, 451:215-226(1985); G. Harrimanら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. 4-アミノ-1-(2(S)-ヒドロキシ-3(R)-ノニル)-1H-イミダゾ[4.5-c]ピリジン(3-脱アザ-(+)-EHNA)又はある種のC1'誘導体の合成と生物学的評価』, J. Med. Chem. 37:305-308(1994); I. Antoniniら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. エリトロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニンの脱アザ類縁体の合成』, J. Med. Chem. 27:274-278(1984); G. Cristalliら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. アゾールの2-ヒドロキシ-3-ノニル誘導体の合成と構造-活性の関係』, J. Med. Chem. 37:201-205(1994); 又はH. Showalterら,『アデノシンデアミナーゼ阻害剤. (±)-3,6.7.8-テトラヒドロ-3-[(2-ヒドロキシエトキシ)メチル]イミダゾール[4.5-d][1,3]ジアゼピン-8-オール又はペントスタチンの選択されたC-5同族体の合成と生物学的評価』, J. Med. Chem. 26:1478-1482(1983)で得ることができる。
【0008】
これらのアデノシンアナログを投与することによる問題は、その剤形である。
現在、これらのアナログは、静脈内(IV)剤形でだけ利用できる。この剤形は、特に腫瘍徴候に普通に用いられるものであるが、さまざまな意味で限界がある。例えば、IV投与は費用がかかる。IV投与量を投与するために高度に教育された医師が必要である。投与は、高価な装置と材料が必要である。更に、IV投与は、例えば、汚染した装置の使用又は偶然の汚染によって、感染の可能性が増大する。これは、抗生物質耐性菌の発生が指摘される医療環境において特別な問題である。
IV投薬問題に対する見掛け上当然の解決法は、経口剤形の開発である。そのような剤形は、IV又は他の非経口剤形に伴う上記問題の全部ではないにしてもほとんどを解決する。しかしながら、当該技術は、経口剤形の開発において重大な問題を認識していた。特に、アデノシンアナログが酸触媒グリコシド切断に感受性であることが随分前から知られていることは最も重要なことである。それ故、当業者は、経口投与したアデノシンアナログが胃で切断され、不活性になると予想する。
【0009】
例えば、2'-デオキシコホルマイシン、アデノシンアナログを研究する研究者は、既知の酸不安定性のために研究する価値のある薬剤の経口投与を考慮しなかった。Marvin M. Chassinら, 2'-デオキシコホルマイシンの酵素阻害力価測定分析及びイヌ又はラットにおける薬剤濃度と組織アデノシンデアミナーゼ間の関係の研究への応用, Biochemical Pharmacology 28:1849-1855(1979)。同様に、他の研究者らは、2'-デオキシコホルマイシンの酸不安定性について報告した。L.A. al-Razzakら, ペントスタチン(NSC-218321)、細胞毒性免疫抑制剤の化学安定性, Pharm. Res. 7:452-460(1990)。
他のアデノシンアナログも、酸不安定性の同様の特性をもつことを予想することができる。A. Tarasiukら, いろいろなpH及び温度における2-クロロ-2'-デオキシアデノシンの安定性, Arch. Immunol. Ther. Exp. (Warsz) 42:13-15(1994); T. Ono, 2'-フルオロ修飾核酸: ポリメラーゼ特定合成、特性及びマトリックス援助レーザ脱着/イオン化質量分析による分析に対する安定性, Nucleic Acids Res. 25:4581-4588(1997)。それ故、当該技術は、その有用性にもかかわらず、アデノシンアナログを経口投与することを避けて教示してきた。従って、アデノシンアナログの経口投与のための組成物、方法及びキットが依然として求められている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
一つの態様において、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、経口(同時)投与に適した剤形を含んでいる前記方法に関する。他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である前記組成物に関する。他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、液体を含む剤形である前記組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
一つの態様において、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、経口(同時)投与に適した剤形を含んでいる前記組成物に関する。他の態様においては、本発明は、放出制御組成物を含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログの酸不安定性を低下させる剤形を含み、よってアデノシンアナログのバイオアベイラビティを高める該組成物に関する。
他の態様においては、本発明は、放出制御組成物を含んでいる該組成物に関する。
他の態様においては、本発明は、物理システム又は化学システムを含む剤形である該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該物理システムが、速度制御膜を有する貯蔵庫(reservoir)システム; 速度制御膜を有さない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; ラミネート構造; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含む該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該化学システムが化学的に又は生物学的に浸食するポリマーマトリックスを含んでいる該組成物に関する。
【0012】
他の態様においては、本発明は、速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、SODAS、INDAS、IPDAS、MODAS、EFVAS、PRODAS、又はDUREDASを含む剤形である該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、経口的、経粘膜的、又は経鼻的に送達するのに適した剤形である該組成物に関する。
他の態様においては、本発明は、腸溶剤皮を含む該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該腸溶剤皮がフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、フタル酸ポリ酢酸ビニル又は酢酸フタル酸セルロースを含む該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、固体分散物を含む該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該固体分散物が水溶性担体又は水不溶性担体を含む該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該水溶性担体又は水不溶性担体がポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、又はステアリン酸を含む該組成物に関する。
【0013】
他の態様においては、本発明は、イオン交換樹脂とアデノシンアナログ間の複合体を含む剤形である該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、注射用マイクロスフェアを含む剤形である該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、丸剤、カプセル剤、液剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である該組成物に関する。
他の態様においては、本発明は、液体剤形、放出制御剤形、又はリポソーム剤形が除外されている該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、除外された該放出制御剤形が物理システム又は化学システムを含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該物理システムが、速度制御膜による貯蔵庫システム; 速度制御膜によらない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; ラミネート構造; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含んでいる、該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該化学システムが、化学的又は生物学的に浸食できるポリマーマトリックスを含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、除外された該放出制御剤形が速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、除外された該放出制御剤形が腸溶剤皮を含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、除外された該放出制御剤形が固体分散物を含んでいる該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、該固体分散物が水溶性担体又は水不溶性担体を含んでいる該組成物に関する。
【0014】
他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログが血液がん、アデノシンアナログ又はアデノシンデアミナーゼ阻害剤に感受性である固形腫瘍(solid tumor)、虚血、CD4+T細胞仲介疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼにより仲介される自己免疫疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼにより仲介される炎症疾患、卒中、心筋梗塞、又は心室性不整脈を治療するのに有効な量で存在する該組成物に関する。他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログが白血病を治療するのに有効な量で存在する該組成物に関する。他の態様においては、該白血病が、ヘアリー細胞白血病、又は慢性リンパ球性白血病、慢性T細胞リンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、又は慢性リンパ球性白血病を含んでいる該組成物に関する。
一つの態様においては、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物であって、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である前記組成物に関する。他の態様においては、本発明は、液体を含む剤形である該組成物に関する。
他の態様においては、本発明は、アデノシンアナログを含む組成物をそれを必要としているホストに投与する方法であって、上記組成物を供給する段階、及びその組成物を該ホストに投与する段階を含む、前記方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が放出制御組成物を含んでいる該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物がアデノシンアナログの酸安定性を低下させる剤形を含み、よってアデノシンアナログのバイオアベイラビリディを高める方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が放出制御組成物を含んでいる該方法に関する。
【0015】
他の態様においては、本発明は、該組成物が物理システム又は化学システムを含む剤形である該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該物理システムが速度制御膜による貯蔵庫システム; 速度制御膜によらない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; ラミネート構造; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含んでいる該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる該方法に関する。
他の態様においては、本発明は、該組成物がSODAS、INDAS、IPDAS、MODAS、EFVAS、PRODAS、又はDUREDASを含む剤形である該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が経口的、経粘膜的、又は経鼻的に送達するのに適した剤形である該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が腸溶剤皮を含む該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が固体分散物を含んでいる該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該固体分散物が水溶性担体又は水不溶性担体を含んでいる該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物がイオン交換樹脂とアデノシンアナログ間の複合体を含む剤形である該方法に関する。他の態様においては、本発明は、該組成物が注射用マイクロスフェアを含む剤形である該方法に関する。
【0016】
一つの態様においては、本発明は、上記組成物を含むキットに関する。
ここで、本発明を詳細に述べる。本発明者らは、予想外に、アデノシンアナログの実証された酸不安定性にもかかわらず、経口(同時)投与に適した剤形を用いて該アナログのバイオアベイラビリティを達成することが可能であることを発見した。実際に、驚くべきことに、IV剤形を用いて達成されたものにかなり近い効果を経口剤形を用いて達成することが可能である。これらの予想外の結果を下で詳述する。
本発明に包含されるアデノシンアナログとしては、生理的に活性であるアデノシン構造アナログが含まれる。2'-デオキシコホルマイシン(DCF、ペントスタチン、又はNIPENT(登録商標)とも呼ばれる)、アデノシンデアミナーゼ阻害剤; フルダラビン一リン酸(FLU)、アデノシンデアミナーゼに比較的抵抗するアデニンのフッ化類縁体; 又は2-クロロ-2'-デオキシアデノシン(クラドリビン又は2CDAとも呼ばれる)、2位の炭素に塩素を導入することによりアデノシンデアミナーゼに抵抗する薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。有効な活性を有する他のアデノシンアナログとしては、2'-デオキシアデノシン、3'-デオキシアデノシン、又はジデオキシアデノシンのようなデオキシアデノシンが含まれる。これらのアナログのプロドラッグもアデノシンアナログの種類に包含される。そのようなプロドラッグとしては、アデノシンアナログのリン酸塩、エステル、又はアミドが含まれる。
【0017】
いくつかの例においては、アデノシンアナログを治療上許容しうる塩の形で投与することが適切であってもよい。これらの塩は、従来の方法で調製することができる。
用いることができる塩形成剤は、例えば、慣用のアニオン又は塩の形で生理的に許容しうるその塩である。その例は、チロシン又はアスパラギンのようなアミノ酸、硫酸塩、リン酸塩、カルボン酸、トシラート、硝酸塩、酢酸塩、又はこれらの長鎖脂肪酸誘導体である。
アデノシンアナログをそれらの塩の形で用いなければならない場合、塩形成剤は、過剰量で、即ち、等モル量より多い量で使用することができる。
本発明の実施には、アデノシンアナログの種々の剤形を用いることができる。
例えば、アデノシンアナログを、薬理的に許容しうる液体と混合し、嚥下することができる。アデノシンアナログは、慣用の配合法を用いて錠剤、カプセル剤、丸剤、ロゼンジ剤等に配合することもできる。
実施態様においては、アデノシンアナログは、胃の中の酸濃度を下げるために種々の薬剤と投与することができる。これにより、酸安定性が低下し、胃及び/又は腸の吸収を高める高濃度のアデノシンアナログが可能である。例えば、アデノシンアナログは、シメチジンのようなH2阻害剤、炭酸カルシウムのような酸中和剤、又はプロトンポンプ阻害剤と同時投与することができる。
【0018】
更に、アデノシンアナログは、バイオアベイラビリティに対する酸安定性の作用を低下させる剤形を用いて(同時)投与することができる。本発明において(同時)投与は、投与、同時投与、又はその双方を意味するとすることができる。本発明において同時投与は、改善された臨床成果を得るために調整された治療の過程で1を超える治療剤の投与を意味すると定義することができる。そのような同時投与はまた、同時に存在しても良い。即ち、重複する時間内で行ってもよい。
例えば、好適実施態様においては、アデノシンアナログは、放出制御剤形を用いて投与することができる。本発明の範囲内の制御放出は、多くの長時間放出剤形のいずれかを意味することができる。
次の用語: 連続放出、制御放出(controlled release, 放出制御)、遅延放出、デポ、漸次放出、長時間放出、プログラム放出、持続放出、比例放出、長期放出、貯蔵、遅滞、徐放、間隔放出、徐放性放出、タイムコート、持効性放出、遅延作用、延長作用、多層時間作用、長時間作用、持効作用、反復作用、緩徐作用、持続作用、持続作用投薬、又は延長放出は、本発明の目的において、制御放出(controlled release, 放出制御)に実質的に同等であるとみなすことができる。これらの用語の考察は、更に、Lesczek Krowczynski, 放出延長剤形, 1987(CRC Press, Inc.)で得ることができる。
【0019】
種々の放出制御技術は、非常に広範囲の薬剤剤形にわたっている。放出制御技術は、物理システムや化学システムを包含するがこれらに限定されない。
物理システムとしては、マイクロカプセル化、マクロカプセル化、又はメンブランシステムのような速度制御膜による貯蔵庫システム; 中空繊維、超微多孔性三酢酸セルロース、又は多孔性ポリマー基質又は発泡体のような速度制御膜によらない貯蔵庫システム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックス(例えば、非浸食性、浸食性、環境因子移入性、又は分解性)に物理的に分散した物質; 外部の制御層と化学的に同じ又は異なる貯蔵庫層を含むラミネート構造; 又は浸透圧ポンプ、又はイオン交換樹脂への吸着のような他の物理的方法が挙げられるがこれらに限定されない。
化学システムとしては、ポリマーマトリックスの化学浸食(例えば、不均一浸食、又は均一浸食)、又はポリマーマトリックスの生物学的浸食(例えば、不均一浸食、又は均一浸食)が含まれるがこれらに限定されない。放出制御システムのカテゴリーの考察は、Agis F. Kydonieus, 放出制御技術: 方法と理論と応用, 1980(CRC Press, Inc.)で得ることができる。
【0020】
放出制御薬剤送達システムは、速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含むがこれらに限定されない基本的な技術領域によって分類される。
速度プレプログラム薬剤送達システムにおいては、送達システムから薬剤分子の放出が特定の速度プロファイルで『プレプログラム』される。これは、送達システム内又はその周囲のバリヤ媒体内に又はそれを横切って薬剤分子の分子の拡散を制御するシステム設計によって達成することができる。しばしばフィック拡散法則に従う。
活性化モジュレート薬剤送達システムにおいては、薬剤分子の送達システムからの放出は、物理的、化学的又は生化学的プロセスにより活性化され及び/又は外部から供給されたエネルギーにより促進される。次に、用いるプロセス、又はエネルギー導入を調節することにより、薬剤放出速度が制御される。
フィードバック調節薬剤送達システムにおいては、薬剤分子の送達システムからの放出は、体内の生化学物質のような引金となる因子によって活性化することができる。次に、フィードバック調節メカニズム内のセンサによって検出される引金剤の濃度によって、薬剤放出速度が制御される。
【0021】
部位標的指向放出制御薬剤送達システムにおいては、薬剤送達システムは、活性分子を特定部位又は標的組織又は細胞への標的にする。これは、例えば、標的組織(又は細胞)付近に薬剤送達システムを導く部位特異的標的指向部分、薬剤送達システムを標的組織に輸送され優先的に吸収されることを可能にする溶解剤、及びスペーサによってポリマー骨格に共有結合されるとともに標的組織で特定の酵素によってのみ切断され得る切断基を含む薬剤部分を含む結合体によって達成することができる。
放出制御薬剤送達の好ましい方法は経口であるが、本発明の放出制御組成物の他の送達方法も用いることができる。これらには、経粘膜送達、経鼻送達、経眼送達、経皮送達、非経口放出制御送達、経膣送達、経直腸送達又は子宮内送達が含まれる。これらの剤形はすべて、本明細書に述べられた技術と共に慣用的な手法を用いて製造することができる。
多くの放出制御薬剤処方が、好ましくは経口投与のために開発されている。これらには、浸透圧制御胃腸送達システム; 流体力学圧制御胃腸送達シシテム; 微多孔性膜浸透制御胃腸送達部材を含む膜浸透制御胃腸送達システム; 胃液耐性腸標的放出制御胃腸送達部材; ゲル拡散制御胃腸送達システム; 又はカチオン性又はアニオン性薬剤を含むイオン交換制御胃腸送達システムが含まれるがこれらに限定されない。放出制御薬剤送達システムに関する情報は、更に、Yie W. Chien, 新規な薬剤送達システム, 1992(Marcel Dekker, Inc.)で得ることができる。
ここで、これらの製剤の一部を詳述する。
【0022】
胃における薬剤の放出を妨げて不快な副作用の危険を減少させるか又は胃環境に曝されて分解を受ける薬剤の安定性を維持するために、腸溶剤皮を錠剤に施すことができる。このために用いられるたいていのポリマーは、水性媒体における溶解度がpH依存性であるという事実によって機能するポリ酸であり、pHが胃で通常出会うものより高い条件が必要である。
腸溶剤皮は、本発明のアデノシンアナログの固体又は液体剤形を被覆するために使用することができる。腸溶剤皮は、胃液に曝露したときに指定された時間剤形に物理的に組込まれたままであることを促進する。しかし、腸溶剤皮は、吸収できる腸液で崩壊するように設計されている。アデノシンアナログの吸収の遅延は、胃腸管を通る移動速度に依存するので、胃内容排出速度は、重要な要因である。顆粒剤のような多重ユニット型の剤形は、単一ニユット型より優れていることあることが研究者によって報告された。従って、好適実施態様においては、本発明のアデノシンアナログは、腸溶剤皮を施した多重ユニット剤形に含有することができる。更に好適な実施態様においては、本発明のアデノシンアナログの剤形は、不活性芯物質上にアデノシンアナログ-腸溶性コーティング剤固体分散物のスプレーコーティング顆粒剤によって調製される。これらの顆粒剤は、バイオアベイラビリティの良好な薬剤の吸収延長をもたらし得る。
【0023】
典型的な腸溶性コーティング剤としては、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、フタル酸ポリ酢酸ビニル又は酢酸フタル酸セルロースが含まれるがこれらに限定されない。Akihiko Hasegawa, 徐放性剤形を調製するニフェジピンと腸溶性コーティング剤との固体分散物の適用, Chem. Pharm. Bull. 33:1615-1619(1985)。種々の腸溶性コーティング材料は、溶解時間、剤皮の厚さ及び径の粉砕強度の好ましい組合わせをもつようにはじめから設計された腸溶剤皮の施された剤形を得る試験に基づいて選ぶことができる。S.C. Porterら, フタル酸ポリ酢酸ビニルと酢酸フタル酸セルロースから製造された腸溶錠剤皮の特性, J. Pharm. Pharmacol. 22:42p(1970)。
ときには、腸溶剤皮の性能は、その透過性で決めることができる。S.C. Porterら, 腸溶剤皮の透過性及び剤皮を施した錠剤の溶解速度, J. Pharm. Pharmacol. 34:5-8(1981)。そのような経口薬剤送達システムにおいては、薬剤放出プロセスは、腸溶剤皮を横切る水性流体の拡散により開始することができる。研究者らは、腸溶剤皮を施した剤形からの重要な放出メカニズムとして浸透圧駆動/崩壊作用を示した。Roland Bodmeierら, 固体剤形の剤皮に用いられる水性コロイドポリマー分散液から調製されたセルロースアクリル酸乾燥又は湿潤膜の機械的性質, Pharmaceutical Research, 11: 882-888(1994)。
【0024】
他のタイプの有効な経口放出制御構造は、固体分散物である。固体分散物は、溶融(融合)法、溶媒法、又は溶融溶媒法で調製した固体状態で不活性担体又はマトリックスに有効成分を分散したものとして定義することができる。Akihiko Hasegawa, 腸溶性コーティング剤との固体分散物からの薬剤の過飽和メカニズム, Chem. Pharm. Bull. 36:4941-4950(1998)。固体分散物は、固態分散物とも呼ぶことができる。『共沈』という用語は、溶媒法によって得られた製剤を言うために使用することができる。
固体分散物は、水溶性の不十分な本発明のアデノシンアナログの溶解度及び/又は溶解速度を改善するために使用することができる。一般的には、Hiroshi Yuasaら, 固体分散法の放出制御薬剤への応用III. 固体分散顆粒剤から難水溶性薬剤の放出速度の制御, Chem. Pharm. Bull. 41:397-399(1993)を参照されたい
固体分散法は、ポリエチレングリコール又はポリビニルピロリドンのような水溶性担体に薬剤を分散することにより難水溶性薬剤の溶解速度を高めるためにはじめに用いられた。Hiroshi Yuasaら, 固体分散法の放出制御薬剤への応用IV. ポリマーの分子量の差を利用した固体分散法を用いることによる水溶性薬剤の放出速度の正確な制御, Chem. Pharm. Bull. 41:933-936(1993)。
【0025】
担体の選択は、成分の表面からの溶解速度が多成分混合物中の他の成分によって影響されることがあることから、分散薬剤の溶解特性に影響することがある。
例えば、水溶性担体は、薬剤をマトリックスから速やかに放出させる結果となり、難溶性又は不溶性の担体は、薬剤をマトリックスから緩慢に放出させる結果となる。担体と相互作用することにより、本発明の難水溶性アデノシンアナログの溶解度を高めることができる。
本発明の固体分散物に用いられる担体の例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性ポリマーが含まれるがこれらに限定されない。Akihiko Hasegawa, 徐放性剤形を調製するニフェジピンと腸溶性コーティング剤との固体分散物の応用, Chem. Pharm. Bull. 33:1615-1619(1985)。
代替的担体としては、ホスファチジルコリンが含まれる。Makiko Fujiiら, ホスファチジルコリン中のインドメタシン、ケトプロフェン又はフルルビプロフェンの固体分散物の性質, Chem. Pharm. Bull. 36:2186-2192(1988)。ホスファチジルコリンは、両性脂質であるが水不溶性脂質であり、ホスファチジルコリン固体分散物中の不溶性アデノシンアナログの溶解度を改善することができる。Makiko Fujiiら, ホスファチジルコリンによる固体分散物中のフェニトインのバイオアベイラビリティの溶解, Chem. Pharm. Bull 36:4908-4913(1988)を参照されたい
【0026】
他の担体としては、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油が含まれる。Katsuhiko Yanoら, 固体分散システムから形成されたコロイド粒子の試験管内安定性と生体内吸収の研究, Chem. Pharm. Bull 44:2309-2313(1996)。本発明の難水溶性アデノシンアナログは、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースやカルボキシメチルエチルセルロースのような腸溶性ポリマー、又は非腸溶性ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの固体分散系に含むことができる。Toshiya Kaiら, 可溶性分散法を用いた難水溶性薬剤の経口吸収の改善, Chem. Pharm. Bull. 44:568-571(1996)を参照されたい。他の固体分散剤系としては、問題の薬剤と異なる比率のエチルセルロースとステアリン酸との取込みが含まれる。Kousuke Nakanoら, ラットやマウスについての徐放性シスプラチン経口製剤, J. Pharm. Pharmacol. 49:485-490(1997)。
固体分散物を調製するために一般に知られるいろいろな方法がある。これらは、溶融法、溶媒法又は溶融溶媒法が含まれるがこれらに限定されない。
溶融法においては、水溶性担体中の薬剤の物理的混合物を溶融するまで直接加熱する。次に、溶融した混合物を冷却し、厳密に撹拌しつつ急速に固化する。最終の固体塊を粉砕し、粉末にし、篩過する。この方法を用いて、溶融物を高温から速やかに急冷することにより系内の溶質又は薬剤の過飽和にしばしば達し得る。そのような条件下で、溶質分子が、瞬間的固化プロセスによって溶媒マトリックス内に捕捉されてもよい。欠点は、高温で溶融中に薬剤又は担体である多くの物質が分解又は蒸発してしまうかもしれないことである。しかしながら、この蒸発の問題は、物理的混合物が密閉した容器内で加熱される場合には回避することができる。窒素のような不活性ガスの真空又はブランケット下での溶融は、薬剤又は担体の酸化を防止するために用いることができる。
【0027】
溶媒法は、有機化合物又は無機化合物の固溶体又は混合結晶の調製において用いられてきた。溶媒法分散物は、2つの固体成分の物理的混合物を共通の溶媒に溶解し、続いて溶媒を蒸発させることにより調製することができる。溶媒法の主な利点は、有機溶媒の蒸発に必要とされる温度が低いために薬剤又は担体の熱分解を抑制できることである。しかしながら、この方法に伴う欠点は、調製コストが高いこと、液体溶媒を完全に除去することが難しいこと、推定上無視しうる量の溶媒による薬剤の化学安定性に対する有害な作用の可能性である。
固体分散物の他の製造方法は、溶融溶媒法である。まず薬剤を適切な液体溶媒に溶解し、次にその溶液を液体溶媒を除去せずに70度より低く得られるポリエチレングリコール溶融物に直接取込むことにより、固体分散液を調製することが可能である。選ばれた溶媒又は溶解したアデノシンアナログは、その溶液がポリエチレングリコール溶融物と混ざらないように選んでもよい。そのとき、多形のアデノシンアナログは溶融物に沈殿してもよい。そのようなユニークな方法は、溶融法及び溶媒法双方の利点を有する。Win Loung Chiouら, 固体分散系の医薬適用, J. Pharm. Sci. 60:1281-1301(1971)。
【0028】
他の放出制御剤形は、イオン交換樹脂と本発明のアデノシンアナログ間の複合体である。イオン交換樹脂-薬剤複合体は、酸性又は塩基性薬剤の徐放性製品を処方するために用いられる。好適実施態様においては、高分子膜コーティングがイオン交換樹脂-薬剤複合体粒子に施され、これらの粒子からの薬剤放出を拡散制御する。Y. Raghunathanら, 徐放性薬剤送達システムI: フェニルプロパノールアミン又は他の薬剤のイオン交換樹脂系コード, J. Pharm. Sciences 70:379-384(1981)。
注射用マイクロスフェアは、他の放出制御剤形である。注射用マイクロスフェアは、非水相分離法、又は噴霧乾燥法により調製することができる。マイクロスフェアは、ポリ乳酸又はコポリ(乳酸/グリコール酸)、Shigeyuki Takada, 生分解性マイクロスフェアから放出制御する水溶性GPIIb/IIIaアンタゴニストの無定形の利用, Pharm. Res. 14:1146-1150(1997)、又はエチルセルロース、Yoshiyuki Koida, エチルセルロースマイクロカプセルからの溶解メカニズムに関する研究, Chem. Pharm. Bull. 35:1538-1545(1987)を用いて調製することができる。
【0029】
本発明の実施に使用することができる他の放出制御技術は極めていろいろなものである。SODAS、INDAS、IPDAS、MODAS、EFVAS、PRODAS、又はDUREDASが含まれる。SODASは、放出制御ビーズを用いる多重粒状剤形である。INDASは、難溶性薬剤の溶解度を高めるように設計された薬剤送達技術の一群である。IPDASは、高密度放出制御ビーズと直接放出顆粒の組合わせを用いる多重粒状錠剤処方である。MODASは、放出制御単一ユニット剤形である。各錠剤は、薬剤放出速度を制御する複出半透性膜によって囲まれた内部芯からなる。EFVASは、発泡性薬剤吸収システムである。PRODASは、直接放出と放出制御微小錠剤の組合わせを用いる多重粒状製剤の一群である。DUREDASは、1つの剤形内に2つの薬剤放出速度を与える二重層錠剤処方である。これらの剤形は当業者に既知であるが、特定のこれらの剤形について以下に詳述する。
INDASは、難水溶性薬剤の溶解度と吸収特性を改善するために特に開発された。溶解度、特に胃腸管の液で溶解することは、難水溶性薬剤の全体の経口バイオアベイラビリティを求めるのに重要な要因である。溶解度を高めることにより、薬剤の全体のバイオアベイラビリティを高めることができ、投薬が減少する結果となる。INDASは、高エネルギーマトリックス錠剤の形をとる。本発明の好適実施態様においては、製造は、エネルギー、賦形剤、及びユニークな処理操作の組合わせと共に無定形(アモルファス形態)のアデノシンアナログを含むことを必要とする。
【0030】
望ましい物理的な形に含有されると、得られた高エネルギー複合体は、新規なポリマー架橋技術を用いる吸収プロセスによって安定化することができ再結晶を防止することができる。本発明のアデノシンアナログの物理的状態の変化の組合わせは使用賦形剤の可溶化特性と相まって、本発明のアデノシンアナログの溶解度を高める。得られた吸収無定形薬剤複合顆粒は、かなり滑らかで連続する吸収を促進するゲル形成浸食性錠剤系において処方することができる。
IPDASは、潜在的刺激性潰瘍誘発剤の胃腸管耐容性を高めることができる多重粒状錠剤技術である。胃腸管全体に本発明の刺激性アデノシンアナログの分散を促進するIPDAS製剤の多重粒状の性質によって腸が容易に保護される。個々のビーズの放出制御特性は、高濃度の薬剤を避けることができ、局所にも放出され、全身にも吸収される。両者の方法の組合わせは、本発明アデノシンアナログの潜在的危険性をできるだけ少なくする働きをし、その結果患者に有益である。
【0031】
IPDASは、多くの高密度放出制御ビーズから構成される。各ビーズは、本発明のアデノシンアナログが組込まれたマイクロマトリックスの最初の製造及び生体内速度制限半透性膜を形成するポリマー溶液によるこのマイクロマトリックスの続いてのコーティングを含む2工程プロセスにより製造することができる。IPDAS錠剤が摂取されると、胃の中でビーズを崩壊し遊離させることができる。これらのビーズは、続いて十二指腸へ胃腸管に沿って、好ましくは制御及び漸次方法で、供給状態に左右されずに移ることができる。アデノシンアナログの放出は、マイクロマトリックスを通り、次に速度制御半透膜内の芯を通る拡散プロセスによって起こる。IPDAS錠剤からの放出速度は、最適化した臨床上の恩恵に付随する薬剤特異的吸収プロファイルを送達するために特注することができる。すみやかな活性が必要であれば、直接放出顆粒が錠剤内に含まれてもよい。個々の適定のために少量が必要である場合には、薬剤放出をほとんど損なわずに、投与前に錠剤を割ることができる。
【0032】
MODASは、本発明の水溶性アデノシンアナログの吸収を制御するために使用することができる薬剤送達システムである。物理的なMODASは、生体内で形成される半透膜による速度制限拡散プロセスによって薬剤放出を操作する非崩壊錠剤処方である。拡散プロセスによって、体内への吸収が制御されるように胃腸液に対する薬剤の存在速度が実質的に決定される。賦形剤ができるだけ少なく用いられていることから、MODASは、小さなサイズ剤形を容易に適用し得る。各MODAS錠剤は、活性薬剤と賦形剤を含有する芯として始まる。この芯は、不溶性ポリマーと可溶性賦形剤の溶液で被覆される。錠剤が摂取されると、胃腸管液が外部剤皮内の可溶性賦形剤を溶解し、実質的に不溶性ポリマーが残る。結果として生じたのは、胃腸管から水溶性薬剤の内部薬剤芯へ液をつなぐ小さく狭いチャネルの網目構造である。この液は、芯へこれらのチャネルを通過し、得られた薬剤溶液は、制御方法で拡散することができる。これにより、制御された溶解と吸収双方を可能にすることができる。このシステムの利点は、錠剤の薬剤放出細孔が実質的に錠剤の全表面にわたって配分されることである。これにより、均一な薬剤吸収が容易になり、攻撃的な一方向性薬剤送達を減少する。MODASは、内部芯と外部半透膜双方が薬剤の個々の送達要求に適するように変化することができるという点で非常に可撓性な剤形である。特に、賦形剤を内部芯に添加すると、予想できる放出吸収速度を容易にする錠剤内にミクロ環境をつくるように援助することができる。直接放出外部コーティングを加えると、組合わせ製品の開発を可能にすることができる。
【0033】
更に、PRODASは、本発明のアデノシンアナログを送達するために使用することができる。PRODASは、直径が1.5〜4mmのサイズ範囲の放出制御微小錠剤の製造に基づく多重粒状薬剤送達技術である。PRODAS技術は、多重粒状法と親水性マトリックス錠剤法のハイブリッドであり、1つの剤形にこれらの薬剤送達システム双方の利点を組込むことができる。
その最も基本的な形では、PRODASは、本発明のアデノシンアナログを含有する個々の微小錠剤を製造するために直接放出顆粒の直接圧縮を必要とする。続いて、これらの微小錠剤は、最終剤形である硬ゲルやカプセルに組込まれる。この技術の有益な使用は、放出制御製剤の製造にある。この場合、種々のポリマー組合わせが顆粒に取込まれると、個々の微小錠剤のそれぞれからの薬剤の放出速度を遅らすことができる。続いて、これらの微小錠剤は、追加の放出遅延性を与えるために放出制御ポリマー溶液で被覆することができる。追加のコーティングは、高度に水溶性の薬剤又は製剤が胃腸管の末端領域に達するまで放出を遅延し得るおそらくは胃刺激剤である薬剤の場合に必要とすることができる。PRODAS技術の1つの価値は、製剤に対する固有の可撓性にあり、それぞれが放出速度の異なる微小錠剤の組合わせが1つの剤形に取込まれる。同様に、特定の時間にわたる吸収制御が潜在的に可能であるので、胃腸管全体に特定の吸収部位に標的にした薬剤の送達を可能にすることができる。組合わせ製品は、異なる有効成分で処方される微小錠剤を用いて可能にすることができる。
【0034】
DUREDASは、本発明の実施に使用することができる二重層打錠技術である。DUREDASは、2つの異なる放出速度、又は1つの剤形から2つの薬剤放出を与えるように開発された。二重層という用語は、打錠プロセス中に行われる2つの別個の直接圧縮段階を意味する。好適実施態様においては、直接放出顆粒をまず圧縮し、続いて放出制御要素が添加され、次にこの最初の錠剤の上に圧縮する。
放出制御特性は、親水性ポリマーの組合わせによって与えることができる。ある場合には、本発明のアデノシンアナログの急速な放出は、速やかな治療作用の発現を容易にするために望ましいものである。つまり、錠剤の1つの層は、直接放出顆粒として処方することができる。対照的に、錠剤の第2層は、制御された方法で、好ましくは親水性ポリマーの使用によって薬剤を放出することができる。この制御放出は、親水性ポリマーマトリックスによって拡散と浸食の組合わせから得ることができる。
【0035】
DUREDAS技術を更に拡張すると、放出制御配合剤形が製造される。この場合、本発明の2つの異なるアデノシンアナログを二重層錠剤に組込むことができ、各層からの薬剤の放出が配合の治療効果を最大にするように制御することができる。
同時投与の好ましい一例は、デオキシアデノシンとペントスタチンの組合わせである。この組合わせは、相乗的に作用して、別個に投与した治療剤のいずれよりも差別効果を得ることができる。ペントスタチンは、おそらくアデノシンアナログの分解がアデノシンデアミナーゼによって妨げられるために関連アデノシンアナログの抗HIV臨床活性を高めることが報告されている。G.S. Ahluwaliaら,『2',3'-ジデオキシアデノシン又は2'-β-フルオル-2',3'-ジデオキシアデノシンの5"-リン酸化と抗ヒト免疫不全ウイルス活性の2'-デオキシコホルマイシンによる増強』, Molec. Pharmacol. 46:1002-1008(1994)。
【0036】
更に、アデノシンアナログは、慣用の医薬賦形剤と添加剤と投与又は同時投与することができる。ゼラチン、原料糖又はラクトースのような天然糖、レシチン、ペクチン、スターチ(例えば、コーンスターチ又はアミロース)、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、アラビアゴム、アルギニン酸、チロース、タルク、リコポジウム、シリカゲル(例えば、コロイド)、セルロース、セルロース誘導体(例えば、セルロースヒドロキシ基が低級飽和脂肪族アルコール及び/又は低級飽和脂肪族オキシアルコールで部分的にエステル化されているセルロースエーテル、例えば、メチルオキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、炭素原子12〜22個を有し、特に飽和した脂肪酸又は脂肪酸(例えば、ステアリン酸)のマグネシウム、カルシウム又はアルミニウム塩、乳化剤、油脂、特に植物油(例えば、落花生油、ヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、コムギ胚芽油、ヒマワリ種子油、肝油(それぞれ水和されていてもよい); 飽和脂肪酸C12H24O2〜C18H36O2のグリセロールエステル又はポリグリセロールエステル又はそれらの混合物、グリセロールヒドロキシ基が全部又は部分的にエステル化されることは可能である(例えば、モノ-、ジ-又はトリグリセリド); ポリエチレングリコールのような薬学的に許容しうる一価又は多価アルコール又はポリグリコール又はその誘導体、脂肪族飽和又は不飽和脂肪酸(炭素原子2〜22個、特に炭素原子10〜18個)と一価脂肪族アルコール又はグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ペンタアクリトリトール、ソルビトール、マンニトール等のエーテル化されてもよい多価アルコールとのエステル、クエン酸と一級アルコールとのエステル、酢酸、尿素、安息香酸ベンジル、ジオキソラン、グリセロホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、C1-C12アルコールとのポリグリコールエーテル、ジメチルアセトアミド、ラクトアミド、乳酸塩、エチルカーボネート、シリコーン(特に中位粘性ポリジメチルシロキサン)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
使用することができる他の補助物質は、崩壊を引き起こすもの(いわゆる崩壊剤)、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はミクロクリスタリンセルロースである。経口剤形を製造するために慣用のコーティング物質を使用することもできる。考慮することができるものは、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマー又はコポリマー及び/又はそれらのエステル; アクリル酸エステルと少量のアンモニウム基を含むメタクリル酸エステル(例えば、EudragitR RS)とのコポリマー、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとトリメチルアンモニウムメタクリレート(例えば、EudragitR RL); ポリ酢酸ビニル; 脂肪、油、ワックス、脂肪アルコール; フタル酸ヒドロキシメチルセルロース又はコハク酸酢酸ヒドロキシメチルセルロース; フタル酸酢酸セルロース、フタル酸酢酸デンプン又はフタル酸ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース; フタル酸メチルセルロース、コハク酸メチルセルロース、コハク酸フタル酸メチルセルロース又はフタル酸メチルセルロース半エステル; ゼイン; エチルセルロース又はコハク酸エチルセルロース; シェラック、グルテン; エチルカルボキシエチルセルロース; エタクリレート-マレイン酸無水物コポリマー; マレイン酸無水物-ビニルメチルエーテルコポリマー; スチロール-マレイン酸コポリマー; 2-エチルヘキシルアクリレートマレイン酸無水物; クロトン酸-酢酸ビニルコポリマー; グルタミン酸/グルタミン酸エステルコポリマー; カルボキシメチルエチルセルロースグリセロールモノオクタノエート; コハク酸酢酸セルロース; ポリアルギニンである。
【0038】
コーティング物質として考慮することができる可塑剤は、クエン酸又は酒石酸エステル(アセチル-、トリエチルシトレート、アセチルトリブチル-、トリブチル-、トリエチルシトレート); グリセロール又はグリセロールエステル(グリセロールジアセテート、-トリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ヒマシ油); フタル酸エステル(ジブチル-、ジアミル-、ジエチル-、ジメチル-、ジプロピルフタレート)、ジ(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)フタレート、エチルフタリルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート又はブチルグリコレート; アルコール(プロピレングリコール、種々の鎖長のポリエチレングリコール)、アジペート(ジエチルアジペート、ジ(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)アジペート; ベンゾフェノン; ジエチル-又はジブチルセバケート、ジブチルスクシネート、ジブチルタートレート; ジエチレングリコールジプロピオネート; エチレングリコールジアセテート、-ジブチレート、-ジプロピオネート; トリブチルホスフェート、トリブチリン; ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(Polysorbar 50のようなポリソルベート); ソルビタンモノオレエートである。
【0039】
上記のように、アデノシンアナログは、液体剤形で経口投与又は同時投与することができる。液剤又は懸濁液剤については、例えば、水、特に滅菌水、又は生理的に許容しうる有機溶媒、例えば、アルコール(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2-プロピレングリコール、ポリグリコール又はそれらの誘導体、脂肪アルコール、グリセロールの部分エステル)、油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ダイズ油、ヒマシ油、ウシ蹄油)、パラフィン、ジメチルスルホキシド、トリグリセリド等を用いることが可能である。
飲用液剤の場合、安定剤又は可溶化剤として次の物質: 炭素原子2〜4個を有する低級脂肪族一価又は多価アルコール、例えば、エタノール、n-プロパノール、グリセロール、分子量200〜600を有するポリエチレングリコール(例えば、1〜40%水溶液)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-プロピレングリコール、有機アミド、例えば、脂肪族C1-C6カルボン酸とアンモニアとのアミド又は第一、第二又は第三C1-C4アミン又はC1-C4ヒドロキシアミン、例えば、尿素、ウレタン、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、炭素原子2〜6個を有する低級脂肪族アミン又はジアミン、例えば、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルテオフィリン、トロメタアミン(例えば、0.1〜20%水溶液)、脂肪族アミノ酸を使用することができる。
【0040】
本発明の組成物を調製する際に、既知の慣用的可溶化剤又は乳化剤を用いることは可能である。使用することができる可溶化剤又は乳化剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタントリオレエート、ホスファチド、例えば、レシチン、アラビアゴム、トラガントゴム、ポリオキシエチル化ソルビタンモノオレエート又はソルビタンの他のエトキシル化脂肪酸エステル、ポリオキシエチル化脂肪、ポリオキシエチル化オレオトリグリセリド、リノール化オレオトリグリセリド、脂肪アルコールのポリエチレンオキシド縮合生成物、アルキルフェノール又は脂肪酸又は1-メチル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリドン-(2)である。これに関して、ポリオキシエチル化は、問題の物質がポリオキシエチレン鎖を含み、その重合度が、一般的には2〜40、特に10〜20であることを意味する。
この種のポリオキシエチル化物質は、例えば、ヒドロキシル基含有化合物(例えば、モノ-又はジグリセリド又は不飽和化合物、例えば、オレイン酸基を含むもの)とエチレンオキシド(例えば、グリセリド1モル当たりエチレンオキシド40モル)とを反応させることにより得ることができる。
【0041】
オレオトリグリセリドの例は、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、ゴマ油、綿実油、コーン油である。Dr. H.P. Fiedler『Lexikon der Hillsstoffe fue Pharmazie, Kostnetik und angrenzende Gebiete』1971, p. 191-195を参照されたい。
防腐剤、安定剤、緩衝物質、矯味剤、甘味剤、着色剤、酸化防止剤又は複合体形成剤等を添加することが可能である。考慮することができる複合体形成剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレン三アミン五酢酸又はそれらの塩のようなキレート形成剤である。
アデノシンアナログを生理的に許容しうる塩基又は緩衝剤で約6〜9のpH範囲に安定化することが必要であってもよい。pH値はできるだけ中性又は弱塩基性を示すことが好ましい(pH8まで)。
一部の剤形においては、酸化防止剤又は防腐剤を含むことが有効であるものがある。使用することができる酸化防止剤は、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、-ミリステート、-ステアレート、没食子酸、没食子酸アルキルエステル、ブチルヒドロキシアミソール、ノルジヒドログアヤレト酸、トコフェロール又は共力剤(複合体形成によって重金属を結合する物質、例えば、レシチン、アスコルビン酸、リン酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸塩、酒石酸塩)である。共力剤を添加すると酸化防止剤の抗酸素作用が実質的に高められる。
【0042】
考慮することができる防腐剤は、例えば、ソルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸エステル(例えば、低級アルキルエステル)、安息香酸、安息香酸ナトリウム、トリクロロイソブチルアルコール、フェノール、クレゾール、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン又はホルマリン誘導体である。
種々の経口剤形は、慣用的な方法に従って調製することができる。例えば、錠剤は、一般打錠手順に従って調製することができる。カプセル剤は、慣用の封入手順に従って調製することができる。液体剤形は、構成バイアルとして供給することができ、投与直前に希釈する凍結乾燥状態で供給することもできる。放出制御剤形は、上で簡単に述べたように、用いられる特定の剤形に従って調製することができる。
投薬量及び回数は、個々のアデノシンアナログ、経口剤形、及び個々の患者の特徴に従って変動する。一般的に言えば、個々のアデノシンアナログ、経口剤形、及び個々の患者の特徴の投薬量及び回数の決定は、適切な診断と相まって慣用的な投与調査を用いて達成することができる。好適実施態様においては、投薬回数は、一日から一月ごとの投与の範囲、好ましくは二週ごとの投与である。他の好適実施態様においては、投与量は、約0.2mg/m2〜約20mg/m2、好ましくは約3mg/m2〜約10mg/m2の範囲である。
【0043】
本発明のアデノシンアナログは、さまざまな徴候を治療するために使用することができる。これらの徴候としては、血液がん、アデノシンアナログ又はアデノシンデアミナーゼ阻害剤に感受性の固形ガン、虚血、CD4+T細胞仲介疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼが仲介する自己免疫疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼが仲介する炎症疾患、卒中、心筋梗塞、又は心室性不整脈が含まれる。更に、本発明のアデノシンアナログは、ヘアリー細胞白血病、又は慢性リンパ球性白血病を含む白血病、慢性T細胞リンパ腫、又は急性骨髄性リンパ腫を治療するために使用することができる。
種々の修正又は変更が、本発明の真意又は範囲から逸脱することなく本発明の組成物、キット、及び方法で行われ得ることは当業者に明らかである。従って、前述の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれるならば、本発明は本発明の修正及び変更を包含するものである。更に、次の実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明を具体的に説明するために追加され、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:
5mgのペントスタチンを50mlの滅菌水と甘味剤として1mgのサッカリドナトリウムと混合する。この混合液を2分間撹拌してから、患者への経口投与用カップに入れる。
【0045】
実施例2
5mgのフルダラビン一リン酸を50gのポリビニルピロリドンと50gのタルクと配合する。次に、この混合物を慣用の打錠圧搾機を用いて打錠する。次に、得られた錠剤をメタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマーで2mm厚さの乾燥コーティングに被覆して腸溶剤皮を施した錠剤を形成する。
【0046】
実施例3
10mgのクラドリビンを100gのポリビニルピロリドン、100gのタルク、及び10gのカルボキシメチルセルロースナトリウムと配合する。次に、この混合物を慣用の打錠圧搾機を用いて打錠する。次に、得られたメタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマーで2mm厚さの乾燥コーティングに被覆して腸溶剤皮を施した錠剤を形成する。
【0047】
実施例4
5mgのペントスタチンを100mのシメチジン、50gのポリビニルピロリドン、50gのタルク、及び10gのカルボキシメチルセルロースナトリウムと配合する。次に、この混合物を慣用の打錠圧搾機を用いて打錠する。次に、得られたメタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマーで2mm厚さの乾燥コーティングに被覆して腸溶剤皮を施した錠剤を形成する。
【0048】
実施例5:
5mgのペントスタチンを25mgの天然ゼラチン、及び少量の赤色着色剤と混合する。次に、この混合物を標準水溶性医薬グレードカプセルに充填する。次に、カプセルを封じ、経口剤形としてすぐに用いられるようにする。
【0049】
実施例6
10mgのクラドリビンを0.1N NaCl溶液に撹拌によって溶解する。この溶液にカチオンイオン交換樹脂を加える。混合液を、慣用の複合体形成法を用いて室温で弱く撹拌することによって数時間かけて複合体にする。複合体形成が完了した後、薬剤-樹脂複合体を残存する液体から分離する。次に、薬剤-樹脂複合体を経口投与に適した慣用の緩衝液体医薬賦形剤に再懸濁する。
【0050】
実施例7
5mgのフルダラビン一リン酸を50mlの滅菌水、20mgのレシチン、及び甘味剤として1mgのサッカリドナトリウムを混合する。混合液を2分間撹拌してから、患者への経口投与用カップに入れる。
【0051】
実施例8
2'-デオキシコホルマイシン(dCF)のバイオアベイラビリティを、ビーグル犬に経口投与した後に調べた。更に、酸不安定性が報告されているdCFのバイオアベイラビリティを高めるために、5×用量と20×用量のグループのそれぞれのイヌをH2遮断剤、シメチジンで前処理した。四匹目のイヌに、対照としてシメチジンを含めずに20×経口用量を投与した。L.E. Rodmanら, アデノシンデアミナーゼ阻害剤2'-デオキシコホルマイシンと併用したコルディセピンのビーグル犬における毒性, Toxicol. Appl. Pharmacol. 147:39-45(1997)に一般的に示された方法に従って、血漿アデノシンデアミナーゼ(ADA)活性の変化を評価することによりバイオアベイラビリティを求めた。
それぞれに10mgの2'-デオキシコホルマイシン(Supergen社製、カリフォルニア州サンローマン)を含有するNIPENT(登録商標)の24個のバイアルを用いた。試験品を使用するまで冷蔵貯蔵した。NIPENT(登録商標)投与製剤に用いた対照品は、注射用滅菌水、USP(Phoenix Pharmaceutical, Inc.; ミズーリ州セントジョセフ)、及びリン酸ナトリウム一塩基性一水和物(EM Science; ニュージャージー州ギブスタウン)の混合物である100mMリン酸ナトリウム無菌緩衝液、pH7.4とした。
【0052】
NIPENT(登録商標)バイアルを5mlの注射用滅菌水、USPか又は100mMリン酸ナトリウム緩衝液中で再構成した。内容物を十分に混合して2mg/mlの2'-デオキシコホルマイシンを含有する溶液を得た。
四匹のビーグル犬をこの実験に割り当てた。ケージサイズとアニマルケアは、実験動物の世話と利用の指針(7th Edit.; Institute of Laboratory Animal Resources, Commission on Life Sciences, National Research Council; National Academy Press, Washington, D.C. 1996)、及び動物保護条例(7 USC 2131, 1985)と一般規則99-198による米国農務省のガイドラインに準じた。本実験の過程でいずれのイヌも死亡しなかった。
実験の0日目と1日目に、シメチジン、H2遮断剤で前処理した又はしていない試験品の1回の経口(PO)又は静脈内(IV)投与量をそれぞれのイヌに投与した。下記の用法の1つに従ってそれぞれのイヌに投与した。
【0053】

【0054】
投与量は、1日目に用いた体重に基づき、両日ともほぼ同じ時間に投与した。
グループ1、2、及び3のイヌにそれぞれ約100mgのシメチジン(Tagamet(登録商標)HB 200; Smith/Kline Beecham Consumer Healthcare, L.P., ペンシルベニア州ピッツパーグ)を-1、0、及び1日目に一日3回投与した。2回目と3回目の投与は、1回目の投与の約3時間と6時間後に投与した。
個々のイヌ血漿アデノシンデアミナーゼ活性レベルを下記の表2に示す。血漿ADA活性レベルは、20×レベル(5mg/kg)でdCFを投与したイヌの最後の経口投与後の48時間までの間、著しく抑制されたままであった(0〜3%の対照値)。投与前にシメチジンを含む又は含まないこのレベルでのADA活性の抑制には識別できる差はなかった。dCFを5×レベル(1.25mg/kg)で投与したイヌにおいて、ADA活性は最後のdCF投与後の48時間で14%の対照に達したが、1×レベル(0.25mg/kg)でdCFを投与したイヌの血漿ADA活性は最終投与後の約24時間で24%の対照に達した。
【0055】
表2
個々のイヌ血漿アデノシンデアミナーゼ活性

1分析対照値=3.2±0.5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシンアナログを含む組成物であって、経口(同時)投与に適した剤形を含んでいる、前記組成物。
【請求項2】
放出制御組成物を含んでいる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該アデノシンアナログの酸不安定性を低下させる剤形を含み、よって該アデノシンアナログのバイオアベイラビリティを高める、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
放出制御組成物を含んでいる、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
物理システム又は化学システムを含む剤形である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
該物理システムが、速度制御膜による貯蔵庫システム; 速度制御膜によらない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; ラミネート構造; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含んでいる、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該化学システムが、化学的又は生物学的に浸食するポリマーマトリックスを含んでいる、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
SODAS、INDAS、IPDAS、MODAS、EFVAS、PRODAS、又はDUREDASを含む剤形である、請求項4記載の組成物。
【請求項10】
経口送達、経粘膜送達、又は経鼻送達するのに適した剤形である、請求項4記載の組成物。
【請求項11】
腸溶剤皮を含んでいる、請求項4記載の組成物。
【請求項12】
該腸溶剤皮が、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、フタル酸ポリ酢酸ビニル又は酢酸フタル酸セルロースを含んでいる、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
固体分散物を含んでいる、請求項4記載の組成物。
【請求項14】
該固体分散物が、水溶性担体又は水不溶性担体を含んでいる、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
該水溶性担体又は水不溶性担体が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、又はステアリン酸を含んでいる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
イオン交換樹脂と該アデノシンアナログ間の複合体を含む剤形である、請求項4記載の組成物。
【請求項17】
注射用マイクロスフェアを含む剤形である、請求項4記載の組成物。
【請求項18】
丸剤、カプセル剤、液剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
液体剤形、放出制御剤形、又はリポソーム剤形が除外されている、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
除外された該放出制御剤形が物理システム又は化学システムを含んでいる、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
該物理システムが、速度制御膜による貯蔵庫システム; 速度制御膜によらない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含んでいる、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
該化学システムが、化学的に又は生物学的に浸食するポリマーマトリックスを含んでいる、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
除外された該放出制御剤形が、速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる、請求項19記載の組成物。
【請求項24】
除外された該放出制御剤形が腸溶剤皮を含んでいる、請求項19記載の組成物。
【請求項25】
除外された放出制御剤形が固体分散物を含んでいる、請求項19記載の組成物。
【請求項26】
該固体分散物が水溶性担体又は水不溶性担体を含んでいる、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
該アデノシンアナログが、血液がん、アデノシンアナログ又はアデノシンデアミナーゼ阻害剤に感受性のある固形腫瘍、虚血、CD4+T細胞仲介疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼ仲介自己免疫疾患、アデノシン又はアデノシンデアミナーゼ仲介炎症疾患、卒中、心筋梗塞、又は心室性不整脈を治療するのに有効な量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
該アデノシンアナログが、白血病を治療するのに有効な量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
該白血病が、ヘアリー細胞白血病、又は慢性リンパ性白血病、慢性T細胞リンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、又は慢性リンパ性白血病を含んでいる、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
アデノシンアナログを含む組成物であって、丸剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、又は錠剤を含む剤形である、前記組成物。
【請求項31】
アデノシンアナログを含む組成物であって、液剤を含む剤形である、前記組成物。
【請求項32】
アデノシンアナログを含む組成物をそれを必要としているホストに投与する方法であって、
請求項1記載の該組成物を供給する段階、及び
該組成物を該ホストに投与する段階
を含む、前記方法。
【請求項33】
該組成物が放出制御組成物を含んでいる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該組成物が、該アデノシンアナログの酸不安定性を低下させる剤形を含み、よって該アデノシンアナログのバイオアベイラビリティを高める、請求項32記載の方法。
【請求項35】
該組成物が放出制御組成物を含んでいる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
該組成物が、物理システム又は化学システムを含む剤形である、請求項32記載の方法。
【請求項37】
該物理システムが、速度制御膜による貯蔵庫システム; 速度制御膜によらない貯蔵庫システム; モノリシックシステム; 非多孔性マトリックス、ポリマーマトリックス、又はエラストマーマトリックスに物理的に分散した物質; 浸透圧ポンプ; 又はイオン交換樹脂への吸着を含んでいる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該組成物が、速度プレプログラム薬剤送達システム、活性化モジュレート薬剤送達システム、フィードバック調節薬剤送達システム、又は部位標的指向薬剤送達システムを含んでいる、請求項32記載の方法。
【請求項39】
SODAS、INDAS、IPDAS、MODAS、EFVAS、PRODAS、又はDUREDASを含む剤形である、請求項32記載の方法。
【請求項40】
経口送達、経粘膜送達、又は経鼻送達するのに適した剤形である、請求項32記載の組成物。
【請求項41】
該組成物が腸溶剤皮を含んでいる、請求項32記載の方法。
【請求項42】
該組成物が固体分散物を含んでいる、請求項32記載の方法。
【請求項43】
該固体分散物が水溶性担体又は水不溶性担体を含んでいる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
該組成物が、イオン交換樹脂と該アデノシンアナログ間の複合体を含む剤形である、請求項32記載の方法。
【請求項45】
該組成物が、注射用マイクロスフェアを含む剤形を含んでいる、請求項32記載の方法。
【請求項46】
請求項1記載の該組成物を含むキット。

【公開番号】特開2011−57712(P2011−57712A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287707(P2010−287707)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2000−579200(P2000−579200)の分割
【原出願日】平成11年11月1日(1999.11.1)
【出願人】(509044648)メイン ファーマ ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】