アドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法
【課題】 低消費電力で、同一チャネルを用いたアドホック通信間での干渉を削減できるアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法を提供すること。
【解決手段】 各アドホック網に属する端末(102、103)が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定する。接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する。代表端末(103)が、接近した前記他のアドホック網の代表端末(104)との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるため調停処理を行う。
【解決手段】 各アドホック網に属する端末(102、103)が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定する。接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する。代表端末(103)が、接近した前記他のアドホック網の代表端末(104)との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるため調停処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のアドホック無線通信網が混在する場合において通信チャネルの共用が可能なアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアドホック無線通信網が混在する場合に、セルラー基地局が各端末に対して、送信停止命令を出し、端末において、送信停止期間中に電波の状態を測定して、その測定結果を基地局に送信し、基地局においてアドホック通信のチャネル割り当ての処理を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−158667公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来知られているアドホック通信システムのチャネルの調停処理(同じ周波数を用いるアドホック網グループの間でどちらのグループがどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理)、基地局を介して行うため、基地局に対して、電波状態の測定結果を送信したりすることにより、上り回線で必要な比較的大きな送信電力が必要になるという問題があった。
【0004】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、大きな送信電力が必要なく、かつ調停の結果、同一チャネルを用いたアドホック通信間での干渉を削減することができるアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法は、セルラー移動無線通信システムで使用される送受信スロットを利用することによって、端末間でアドホック無線通信網を構築して通信を行うアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法において、各アドホック網に属する端末が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定するアドホック網接近判定ステップと、前記同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する代表端末選出ステップと、選出された代表端末が、接近した前記他のアドホック網の代表端末との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理を行う調停ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通信帯域の共有の調停をアドホック端末同士で行うため、上り回線での送信に必要な消費電力を削減することができる。また、調停の結果、同一チャネルを用いたアドホック通信間での干渉を削減することで、システム全体のスループットの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の一実施例を示すシステム構成図である。本実施例では、セルラー基地局101とその通信エリア内にいる無線通信端末(以下、「端末」と称する)102、103、104、105は、双方向の公衆通信を行っているものとする。この公衆通信では、基地局から端末への無線リンク(下りリンク)にOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を利用し、端末から基地局への無線リンク(上りリンク)はFH(Frequency Hopping)を利用するものとする。さらに、TDD(Time Division Duplex)を用いて双方向の通信を行っているものとする。
【0009】
図2は、時分割したスロットを通信チャネルとして割り当てて双方向通信を行っている様子を示す。下りリンクのOFDM通信と上りリンクのFHによる通信が時分割になされている様子を示している。
【0010】
図1に戻り、端末102と端末103は、基地局を介さず、端末間のアドホック通信を行っているものとする。同様に、端末104と端末105も、端末間のアドホック通信を行っている。さらに、アドホック通信を行っている2つ以上の端末のグループを「アドホック網グループ」と呼ぶ。端末102と端末103はアドホック網グループ#1を構成しており、端末104と端末105はアドホック網グループ#2を構成している。
【0011】
本システムでは、図2のセルラー公衆通信で利用している時分割スロットの一部がアドホック通信用に割り当てられるものと仮定する。このとき、セルラー公衆通信と、アドホック通信は時間多重されて通信が行われるものとし、アドホック通信を行う端末は、アドホック用に割り当てられたアドホック通信用の時間スロットを基地局への報告なく自由に用いてアドホック通信を行うものとする。
【0012】
図3にセルラー公衆通信とアドホック通信が混在した形態のチャネル構成を示す。図3に示すように、基地局と端末間の公衆通信と、アドホック通信は時間多重されている。この公衆通信とアドホック通信の時間割り当てはシステム内で予め決められているものとする。図3の例では、時間nからn+6までは公衆通信が行われる。時間n+7からn+13までアドホック通信が行われるため、この間基地局からの信号送信は停止する。ここで、同一チャネルを用いてアドホック通信をしているアドホック網グループ#1、アドホック網グループ#2が存在しているものとする。アドホック網グループ#1では、アドホック送受信用の時間n+7からn+13までの時間のうち、n+7からn+8までの時間を他のアドホック網グループからの干渉量測定(図3では「チャネル利用密度測定」と表示)に充てている。n+7からn+8までの時間、アドホック網グループ#1に属する全ての端末ではデータの送信を行わず、受信のみを行い、受信した電力を他のアドホック網グループからの干渉量とみなしている。同様に、アドホック網グループ#2では、アドホック送受信用の時間n+7からn+13までの時間のうち、n+10からn+11までの時間を干渉量測定に充てている。このときアドホック網グループ#2では、データの送信を行わず、受信のみを行い、受信した電力を他のアドホック網グループからの干渉量とみなしている。
【0013】
本システムでは、他のアドホック網が接近したかどうかを干渉量で判断する。他のアドホック網がいつ接近するかは分からないため、干渉量の測定は定期的に行う必要がある。例えば、図3の各時間区間をスロットと呼ぶことにすると、干渉量を測定するために割り当てられたスロット毎で測定することが考えられる。また、各アドホック網では、アドホック通信が開始される際に干渉量を測定するスロット位置をあらかじめ決定しておく。このスロット位置の決定は、各アドホック通信網でランダムに行う。スロット位置の決定をランダムに行う理由は、干渉量測定スロットをアドホック通信用のある固定のスロット位置で利用すると、全てのアドホック網がそのスロットで干渉量測定(受信処理)を行ってしまうため、干渉量を推定できなくなるためである。
【0014】
なお、このとき、公衆通信、アドホック通信、干渉量推定は、時間多重されたチャネルが用いられているが、周波数多重や、コード多重を行ったチャネルでもかまわない。
【0015】
図4に公衆通信エリアとアドホック通信エリアの模式図を示す。ここでは簡単化のため、同じチャネルを選択した、アドホック網グループ#1とアドホック網グループ#2がエリアの中に2つのみ存在している。実際には、一つの公衆エリアの中に、多数の同一チャネルを持ったアドホック網グループが存在する。この例の場合、アドホック網グループ#1が送信する信号は、アドホック網グループ#2と同一のチャネルを用いて通信を行っているが、互いのアドホック網グループ間の距離が地理的に十分に離れている場合には、アドホック網グループ#2における通信の干渉にはならない。
【0016】
しかし、図5に示すように、アドホック網グループ#1が移動方向301の方向に移動するか、アドホック網グループ#2が移動方向302の方向に移動した場合、互いのアドホック通信の送信信号が互いの干渉電力になり、その干渉によって誤りが増加し、データ送信のスループットが低下する。この現象を防ぐために、各アドホック網グループでは、代表端末を決定し、代表端末同士によるアドホック通信チャネル共有化の調停を行う。
【0017】
なお、ここでいう干渉とは、たとえばアドホック網グループ#1がある時刻に利用しているチャネルをXとすると、空間的に接近している他のアドホック網グループ#2が同じチャネルXを利用することにより、アドホック網グループAの通信に影響を及ぼす干渉のことである。アドホック網グループ#1がアドホック網グループ#2から受ける干渉量を推定するために、アドホック網グループ#1に属する端末は、そのアドホック網グループ#1で送受信されていない時間区間において、アドホック網グループ#2が利用しているチャネルXをモニターすることで平均的な受信電力を測定し、その電力値を干渉量とみなすことにする。よって、この干渉量が時間的に大きくなって測定されることは、すなわち、同じチャネルを利用している他のアドホック網が接近していることになる。逆に、干渉量が時間的に少なくなって測定されることは、同じチャネルを利用している別のアドホック網が離れていくことになる。したがって、この干渉量を基にして同じチャネルを利用している他のアドホック網が接近しているか否かを判定する。
【0018】
次に、代表端末の選定の一般的手順について説明する。各アドホック網グループには代表端末権を設け、それをアドホック網グループに属する各端末のいずれかが保持するものとする。代表端末権は、測定する干渉量が最も大きい端末に与えられるものとする。ここで、アドホック網グループに属する各端末が、それぞれある一定の期間で測定した干渉量は、同じアドホック網グループに属する他の端末に報告され、その中で最も大きな干渉量を報告した端末に代表端末権が移されるものとする。さらに、代表端末権が移された端末での干渉量が、ある閾値Pthを超えたとき、その端末は、自分が属するアドホック網グループの各端末に対して代表端末宣言となる制御信号を送信する。この代表端末宣言となる制御信号が送信された場合には、代表端末以外の端末は、再び代表端末からのアドホック通信開始の宣言が出るまで送信を停止するものとする。また、代表端末は、接近した他のアドホック網グループ網の代表端末と調停(同じ周波数を用いるアドホック網グループの間でどちらのグループがどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理)を行うため、アドホック網グループ間調停要求のための制御信号を送信する。
【0019】
図6は、干渉量測定からアドホック網グループ間調停要求送信までの手順を示したものである。
【0020】
アドホック網グループ#1に属する端末102、103がアドホック通信を行っており、アドホック送受信(ステップ501)、干渉電力測定(ステップ502)、干渉電力の測定(ステップ503)、代表端末権の移動(ステップ504)までの処理を繰り返している。ステップ505では、代表端末権を持つ端末103の干渉量がある閾値Pthを越えたため、代表端末となる処理が入り、代表端末宣言(ステップ506)を送信する。その後、接近している他のアドホック網グループに向けてアドホック網グループ間調停要求を送信する。
【0021】
図7に、調停要求送信からチャネル分割処理までの手順を示す。
【0022】
図7では、アドホック網グループ#1および、アドホック網グループ#2は同じチャネルを用いて、アドホック通信を行っているものとする。ここでは、アドホック網グループの中で干渉電力が最も強い端末をアドホック網グループ内の代表端末として決定し、これをアドホック網グループ内に宣言する(ステップ601)。ここでは、アドホック網グループ#1では、端末103がアドホック網グループ#1の代表端末と決定されている。干渉電力の強弱により代表端末を決定するのは、干渉電力が高い端末ほど干渉源(他アドホック網グループ)の近くに位置するためであり、他アドホック網グループに近ければ、後にアドホック間グループ調停を行う段階において、通信品質が向上することができるためである。
【0023】
アドホック網グループ#1の代表となった端末103はアドホック網グループ間調停要求を繰り返し送信する(ステップ602)。このアドホック網グループ間調停要求信号は、代表端末103のアドホック通信での送信区間を利用して繰り返し送信されるものとする。
【0024】
次に、このアドホック網グループ間調停要求は、アドホック網グループ#2の端末104および端末105の両者が受け取る(ステップ603)ことになるが、ここでは、このうちの代表端末権を持つ端末104が代表端末となり(ステップ604)、グループ内に代表端末宣言を行う。ここで、アドホック網グループ間調停要求の受信は、干渉量測定の受信区間を用いて受信するものとする。すなわち、干渉量測定の受信区間では、干渉量の測定に加えて、アドホック網グループ間調停要求の受信も行うこととする。
【0025】
その後、アドホック網グループ間調停要求に対する応答を送信する(ステップ605)。次に、要求と応答が成立したアドホック網グループ#1の代表端末103と、アドホック網グループ#2の代表端末104の間で、現在使用しているアドホック通信チャネルの分割を行うため、調停のための通信を行う(ステップ606)。
【0026】
この調停のための通信では、例えば、アドホック通信で利用するスロット区間を分割することが考えられる。図7において、調停要求を出したアドホック網グループ側がこれまで利用してきたスロット区間を分割し、調停要求を受ける側のアドホック網に対して時間スロット分割要求を出す。具体的には、これまでにアドホック通信で利用できる全体のスロット数が16スロットで、スロット番号が0から15であると仮定すると、分割後に0から7を利用し、8から15を他のアドホック網が利用するように分割要求を出すものとする。このとき分割は2分割が理想であるが、スロット数の関係から不可能の場合もあるので2分割に近い形式とする。この分割要求を受信した、調停要求を受ける側のアドホック網では、その要求に対する許可応答を返信する。これらの情報が調停のための通信で行われるものとする。
【0027】
この調停結果の情報から、各アドホック網グループで使われていたチャネルの分割方法が決定される(ステップ607)。このとき、分割する方法としては、上記のスロット時間分割以外にも周波数チャネル分割、符号分割などが考えられる。各代表端末はアドホック網グループ内の各端末に対して、チャネル分割の情報を送信し(ステップ608)、その情報に基づいて再びアドホック通信が行われる(ステップ609)。
【0028】
図8にアドホック通信、干渉電力測定、グループ間調停、チャネル分割を行っているチャネル構成の例を示す。アドホック通信のために割り当てられている時間を用いて、それぞれのアドホック網グループでは、干渉電力の測定が行われる。測定された干渉電力が閾値を上回った場合、アドホック通信の時間を用いてアドホック網グループ内代表端末決定の処理を行う。アドホック網グループ内代表となった端末は、図8のn+12からn+13のように、他のアドホック網グループとチャネル分割のための調停を行う。調停の結果、この例では、割り当てられたアドホック用通信チャネルを時間分割して用いている。すなわち、時間n+21からn+24はアドホック網グループ#1が、時間n+24からn+27はアドホック網グループ#2がそれぞれ使用することにより、互いの干渉をなくしている。
【0029】
図9に本システムにおいて用いられる端末の構成例を示す。ここでは、公衆通信、アドホック通信、干渉電力測定、アドホック網グループ間調停は、時間多重されているものとする。同期処理部802は、受信信号S801から、公衆通信用の時間、アドホック通信用の時間、干渉電力測定用の時間、アドホック網グループ間調停の時間のタイミングを作成し、スイッチ806に対して制御信号S803を出力する。公衆通信用の時間の場合、スイッチ806は公衆網用データ処理部805と接続し、公衆通信用データについて、変調・復調処理801が行われる。また、アドホック通信用の時間の場合、スイッチ806はアドホック用データ処理部804と接続し、アドホック用データについて、変調・復調処理801が行われる。さらに、干渉電力測定用の時間では、スイッチ806は干渉電力測定処理部803と接続し、他アドホック通信グループからの干渉電力を測定する。測定された干渉電力S806が閾値を超えていた場合、アドホック網グループ内で干渉電力情報S806を共有するために、アドホック用データ処理部804から出力される。アドホック網グループ内の他の端末から送られてきた干渉電力情報S804は、自端末での干渉電力S806と共に、代表端末決定処理部807で代表端末決定処理が行われる。もし、自端末が代表端末になったら、代表端末宣言S807を、アドホック用データ処理部804を介して、アドホック網グループ内に宣言を行う。その後、グループ間調停の時間では、スイッチ806はアドホック網グループ間調停処理部807に接続され、他アドホック網グループの代表とチャネル共有化のための、要求、応答、調停処理を行い、その結果、チャネル分割情報S807、S808を用いて、その後のアドホック通信を行う。
【0030】
以上のように、アドホック網グループは、他のアドホック網グループが接近することでチャネルを分割するが、接近していた他のアドホック網グループが離れ、そのアドホック網グループから受ける干渉が少なくなった場合には、分割したチャネルを元に戻すことも可能である。
【0031】
図10に、この処理における手順を示す。図10で、ステップ901〜904までは、上記で示した処理であるが、ステップ905では、その時刻における代表端末のみが、その時刻で分割処理して利用しているチャネル以外のチャネルを受信し、干渉量を測定する。
【0032】
この具体例を示したものを図11に示す。図11では、分割処理して利用しているチャネル以外のチャネルとして、自分が通信で利用していない空きスロットをランダムに選択して干渉電力を測定するものとする。
【0033】
このとき、その干渉量が、たとえばPth2以下であったならば、代表端末が分割したチャネルを元に戻すチャネル結合処理を行い、その結果を結合チャネル情報の制御情報として、同じアドホック網グループに属する他の端末に送信する。これを受けた他の端末は、その結合チャネル情報に応じてアドホック通信を行うものとする。このような処理を行うことで、周囲からの干渉によって一度分割したチャネルでも、干渉が少なくなった場合には、元どおりに全てのチャネルを利用することが出来るようになる。
【0034】
以上、本実施例によって、チャネルの利用密度により同一チャネルを用いているアドホック網グループ間の調停が可能になるため、位置的に近いアドホック網グループ間での干渉を低減することが可能になり、チャネル資源の有効活用やシステムスループットの向上を図ることができる。また、干渉電力を測定することで、基地局を介することなく、チャネルの利用密度を推定することができるため、基地局の負荷を削減すると同時に、端末と基地局の通信におけるオーバヘッドを削減することができる。さらに、干渉電力の強弱により、アドホック網グループ代表端末を決定し、その端末が他のアドホック網グループの代表端末と調停を行う事で、位置的に近い端末同士のみが通信を行うため、通信品質の良い環境で、調停のための通信が行う事ができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限ったものではない。例えば、上述した実施例では、アドホック網グループの全ての端末が干渉量を測定し、その中で最も大きな干渉量を持つ端末に代表端末権を移しているが、この代表端末権を端末に割り当てる手順をあらかじめ決めておき、代表端末権を持つ端末のみが干渉量を測定するとすることも可能である。この場合には、上記の実施の形態に比べ、代表端末選定の処理がより簡単に行うことが可能となる。
【0036】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が用いられるシステム構成の一例を示す図。
【図2】セルラー公衆通信のみでのチャネル構成の例を示す図。
【図3】セルラー公衆通信とアドホック通信を時分割で行う場合のチャネル構成の例を示す図。
【図4】公衆通信エリアとアドホック通信エリアを模式的に示した図。
【図5】アドホック通信エリアが近づいたときの、公衆通信エリアとアドホック通信エリアを模式的に示した図。
【図6】アドホック通信の干渉量測定からアドホックグループ間調停要求を送信するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図7】アドホックグループ間調停要求を送信されてから分割処理されたチャネルで通信するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図8】アドホック通信、干渉電力測定、グループ間調停、チャネル分割を行っているチャネル構成の一例を示す図。
【図9】本発明のシステムで用いられる端末の概略構成図。
【図10】本発明において、アドホック網グループを形成している端末がチャネル分割して通信をしている状態から、チャネル結合するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図11】チャネル分割して通信を行っている時に、通信で利用していないチャネルの干渉を測定する具体例を示したチャネル構成図。
【符号の説明】
【0038】
101・・・セルラー基地局101
102、103、104、105・・・無線通信端末
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のアドホック無線通信網が混在する場合において通信チャネルの共用が可能なアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアドホック無線通信網が混在する場合に、セルラー基地局が各端末に対して、送信停止命令を出し、端末において、送信停止期間中に電波の状態を測定して、その測定結果を基地局に送信し、基地局においてアドホック通信のチャネル割り当ての処理を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−158667公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来知られているアドホック通信システムのチャネルの調停処理(同じ周波数を用いるアドホック網グループの間でどちらのグループがどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理)、基地局を介して行うため、基地局に対して、電波状態の測定結果を送信したりすることにより、上り回線で必要な比較的大きな送信電力が必要になるという問題があった。
【0004】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、大きな送信電力が必要なく、かつ調停の結果、同一チャネルを用いたアドホック通信間での干渉を削減することができるアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法は、セルラー移動無線通信システムで使用される送受信スロットを利用することによって、端末間でアドホック無線通信網を構築して通信を行うアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法において、各アドホック網に属する端末が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定するアドホック網接近判定ステップと、前記同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する代表端末選出ステップと、選出された代表端末が、接近した前記他のアドホック網の代表端末との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理を行う調停ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通信帯域の共有の調停をアドホック端末同士で行うため、上り回線での送信に必要な消費電力を削減することができる。また、調停の結果、同一チャネルを用いたアドホック通信間での干渉を削減することで、システム全体のスループットの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の一実施例を示すシステム構成図である。本実施例では、セルラー基地局101とその通信エリア内にいる無線通信端末(以下、「端末」と称する)102、103、104、105は、双方向の公衆通信を行っているものとする。この公衆通信では、基地局から端末への無線リンク(下りリンク)にOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を利用し、端末から基地局への無線リンク(上りリンク)はFH(Frequency Hopping)を利用するものとする。さらに、TDD(Time Division Duplex)を用いて双方向の通信を行っているものとする。
【0009】
図2は、時分割したスロットを通信チャネルとして割り当てて双方向通信を行っている様子を示す。下りリンクのOFDM通信と上りリンクのFHによる通信が時分割になされている様子を示している。
【0010】
図1に戻り、端末102と端末103は、基地局を介さず、端末間のアドホック通信を行っているものとする。同様に、端末104と端末105も、端末間のアドホック通信を行っている。さらに、アドホック通信を行っている2つ以上の端末のグループを「アドホック網グループ」と呼ぶ。端末102と端末103はアドホック網グループ#1を構成しており、端末104と端末105はアドホック網グループ#2を構成している。
【0011】
本システムでは、図2のセルラー公衆通信で利用している時分割スロットの一部がアドホック通信用に割り当てられるものと仮定する。このとき、セルラー公衆通信と、アドホック通信は時間多重されて通信が行われるものとし、アドホック通信を行う端末は、アドホック用に割り当てられたアドホック通信用の時間スロットを基地局への報告なく自由に用いてアドホック通信を行うものとする。
【0012】
図3にセルラー公衆通信とアドホック通信が混在した形態のチャネル構成を示す。図3に示すように、基地局と端末間の公衆通信と、アドホック通信は時間多重されている。この公衆通信とアドホック通信の時間割り当てはシステム内で予め決められているものとする。図3の例では、時間nからn+6までは公衆通信が行われる。時間n+7からn+13までアドホック通信が行われるため、この間基地局からの信号送信は停止する。ここで、同一チャネルを用いてアドホック通信をしているアドホック網グループ#1、アドホック網グループ#2が存在しているものとする。アドホック網グループ#1では、アドホック送受信用の時間n+7からn+13までの時間のうち、n+7からn+8までの時間を他のアドホック網グループからの干渉量測定(図3では「チャネル利用密度測定」と表示)に充てている。n+7からn+8までの時間、アドホック網グループ#1に属する全ての端末ではデータの送信を行わず、受信のみを行い、受信した電力を他のアドホック網グループからの干渉量とみなしている。同様に、アドホック網グループ#2では、アドホック送受信用の時間n+7からn+13までの時間のうち、n+10からn+11までの時間を干渉量測定に充てている。このときアドホック網グループ#2では、データの送信を行わず、受信のみを行い、受信した電力を他のアドホック網グループからの干渉量とみなしている。
【0013】
本システムでは、他のアドホック網が接近したかどうかを干渉量で判断する。他のアドホック網がいつ接近するかは分からないため、干渉量の測定は定期的に行う必要がある。例えば、図3の各時間区間をスロットと呼ぶことにすると、干渉量を測定するために割り当てられたスロット毎で測定することが考えられる。また、各アドホック網では、アドホック通信が開始される際に干渉量を測定するスロット位置をあらかじめ決定しておく。このスロット位置の決定は、各アドホック通信網でランダムに行う。スロット位置の決定をランダムに行う理由は、干渉量測定スロットをアドホック通信用のある固定のスロット位置で利用すると、全てのアドホック網がそのスロットで干渉量測定(受信処理)を行ってしまうため、干渉量を推定できなくなるためである。
【0014】
なお、このとき、公衆通信、アドホック通信、干渉量推定は、時間多重されたチャネルが用いられているが、周波数多重や、コード多重を行ったチャネルでもかまわない。
【0015】
図4に公衆通信エリアとアドホック通信エリアの模式図を示す。ここでは簡単化のため、同じチャネルを選択した、アドホック網グループ#1とアドホック網グループ#2がエリアの中に2つのみ存在している。実際には、一つの公衆エリアの中に、多数の同一チャネルを持ったアドホック網グループが存在する。この例の場合、アドホック網グループ#1が送信する信号は、アドホック網グループ#2と同一のチャネルを用いて通信を行っているが、互いのアドホック網グループ間の距離が地理的に十分に離れている場合には、アドホック網グループ#2における通信の干渉にはならない。
【0016】
しかし、図5に示すように、アドホック網グループ#1が移動方向301の方向に移動するか、アドホック網グループ#2が移動方向302の方向に移動した場合、互いのアドホック通信の送信信号が互いの干渉電力になり、その干渉によって誤りが増加し、データ送信のスループットが低下する。この現象を防ぐために、各アドホック網グループでは、代表端末を決定し、代表端末同士によるアドホック通信チャネル共有化の調停を行う。
【0017】
なお、ここでいう干渉とは、たとえばアドホック網グループ#1がある時刻に利用しているチャネルをXとすると、空間的に接近している他のアドホック網グループ#2が同じチャネルXを利用することにより、アドホック網グループAの通信に影響を及ぼす干渉のことである。アドホック網グループ#1がアドホック網グループ#2から受ける干渉量を推定するために、アドホック網グループ#1に属する端末は、そのアドホック網グループ#1で送受信されていない時間区間において、アドホック網グループ#2が利用しているチャネルXをモニターすることで平均的な受信電力を測定し、その電力値を干渉量とみなすことにする。よって、この干渉量が時間的に大きくなって測定されることは、すなわち、同じチャネルを利用している他のアドホック網が接近していることになる。逆に、干渉量が時間的に少なくなって測定されることは、同じチャネルを利用している別のアドホック網が離れていくことになる。したがって、この干渉量を基にして同じチャネルを利用している他のアドホック網が接近しているか否かを判定する。
【0018】
次に、代表端末の選定の一般的手順について説明する。各アドホック網グループには代表端末権を設け、それをアドホック網グループに属する各端末のいずれかが保持するものとする。代表端末権は、測定する干渉量が最も大きい端末に与えられるものとする。ここで、アドホック網グループに属する各端末が、それぞれある一定の期間で測定した干渉量は、同じアドホック網グループに属する他の端末に報告され、その中で最も大きな干渉量を報告した端末に代表端末権が移されるものとする。さらに、代表端末権が移された端末での干渉量が、ある閾値Pthを超えたとき、その端末は、自分が属するアドホック網グループの各端末に対して代表端末宣言となる制御信号を送信する。この代表端末宣言となる制御信号が送信された場合には、代表端末以外の端末は、再び代表端末からのアドホック通信開始の宣言が出るまで送信を停止するものとする。また、代表端末は、接近した他のアドホック網グループ網の代表端末と調停(同じ周波数を用いるアドホック網グループの間でどちらのグループがどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理)を行うため、アドホック網グループ間調停要求のための制御信号を送信する。
【0019】
図6は、干渉量測定からアドホック網グループ間調停要求送信までの手順を示したものである。
【0020】
アドホック網グループ#1に属する端末102、103がアドホック通信を行っており、アドホック送受信(ステップ501)、干渉電力測定(ステップ502)、干渉電力の測定(ステップ503)、代表端末権の移動(ステップ504)までの処理を繰り返している。ステップ505では、代表端末権を持つ端末103の干渉量がある閾値Pthを越えたため、代表端末となる処理が入り、代表端末宣言(ステップ506)を送信する。その後、接近している他のアドホック網グループに向けてアドホック網グループ間調停要求を送信する。
【0021】
図7に、調停要求送信からチャネル分割処理までの手順を示す。
【0022】
図7では、アドホック網グループ#1および、アドホック網グループ#2は同じチャネルを用いて、アドホック通信を行っているものとする。ここでは、アドホック網グループの中で干渉電力が最も強い端末をアドホック網グループ内の代表端末として決定し、これをアドホック網グループ内に宣言する(ステップ601)。ここでは、アドホック網グループ#1では、端末103がアドホック網グループ#1の代表端末と決定されている。干渉電力の強弱により代表端末を決定するのは、干渉電力が高い端末ほど干渉源(他アドホック網グループ)の近くに位置するためであり、他アドホック網グループに近ければ、後にアドホック間グループ調停を行う段階において、通信品質が向上することができるためである。
【0023】
アドホック網グループ#1の代表となった端末103はアドホック網グループ間調停要求を繰り返し送信する(ステップ602)。このアドホック網グループ間調停要求信号は、代表端末103のアドホック通信での送信区間を利用して繰り返し送信されるものとする。
【0024】
次に、このアドホック網グループ間調停要求は、アドホック網グループ#2の端末104および端末105の両者が受け取る(ステップ603)ことになるが、ここでは、このうちの代表端末権を持つ端末104が代表端末となり(ステップ604)、グループ内に代表端末宣言を行う。ここで、アドホック網グループ間調停要求の受信は、干渉量測定の受信区間を用いて受信するものとする。すなわち、干渉量測定の受信区間では、干渉量の測定に加えて、アドホック網グループ間調停要求の受信も行うこととする。
【0025】
その後、アドホック網グループ間調停要求に対する応答を送信する(ステップ605)。次に、要求と応答が成立したアドホック網グループ#1の代表端末103と、アドホック網グループ#2の代表端末104の間で、現在使用しているアドホック通信チャネルの分割を行うため、調停のための通信を行う(ステップ606)。
【0026】
この調停のための通信では、例えば、アドホック通信で利用するスロット区間を分割することが考えられる。図7において、調停要求を出したアドホック網グループ側がこれまで利用してきたスロット区間を分割し、調停要求を受ける側のアドホック網に対して時間スロット分割要求を出す。具体的には、これまでにアドホック通信で利用できる全体のスロット数が16スロットで、スロット番号が0から15であると仮定すると、分割後に0から7を利用し、8から15を他のアドホック網が利用するように分割要求を出すものとする。このとき分割は2分割が理想であるが、スロット数の関係から不可能の場合もあるので2分割に近い形式とする。この分割要求を受信した、調停要求を受ける側のアドホック網では、その要求に対する許可応答を返信する。これらの情報が調停のための通信で行われるものとする。
【0027】
この調停結果の情報から、各アドホック網グループで使われていたチャネルの分割方法が決定される(ステップ607)。このとき、分割する方法としては、上記のスロット時間分割以外にも周波数チャネル分割、符号分割などが考えられる。各代表端末はアドホック網グループ内の各端末に対して、チャネル分割の情報を送信し(ステップ608)、その情報に基づいて再びアドホック通信が行われる(ステップ609)。
【0028】
図8にアドホック通信、干渉電力測定、グループ間調停、チャネル分割を行っているチャネル構成の例を示す。アドホック通信のために割り当てられている時間を用いて、それぞれのアドホック網グループでは、干渉電力の測定が行われる。測定された干渉電力が閾値を上回った場合、アドホック通信の時間を用いてアドホック網グループ内代表端末決定の処理を行う。アドホック網グループ内代表となった端末は、図8のn+12からn+13のように、他のアドホック網グループとチャネル分割のための調停を行う。調停の結果、この例では、割り当てられたアドホック用通信チャネルを時間分割して用いている。すなわち、時間n+21からn+24はアドホック網グループ#1が、時間n+24からn+27はアドホック網グループ#2がそれぞれ使用することにより、互いの干渉をなくしている。
【0029】
図9に本システムにおいて用いられる端末の構成例を示す。ここでは、公衆通信、アドホック通信、干渉電力測定、アドホック網グループ間調停は、時間多重されているものとする。同期処理部802は、受信信号S801から、公衆通信用の時間、アドホック通信用の時間、干渉電力測定用の時間、アドホック網グループ間調停の時間のタイミングを作成し、スイッチ806に対して制御信号S803を出力する。公衆通信用の時間の場合、スイッチ806は公衆網用データ処理部805と接続し、公衆通信用データについて、変調・復調処理801が行われる。また、アドホック通信用の時間の場合、スイッチ806はアドホック用データ処理部804と接続し、アドホック用データについて、変調・復調処理801が行われる。さらに、干渉電力測定用の時間では、スイッチ806は干渉電力測定処理部803と接続し、他アドホック通信グループからの干渉電力を測定する。測定された干渉電力S806が閾値を超えていた場合、アドホック網グループ内で干渉電力情報S806を共有するために、アドホック用データ処理部804から出力される。アドホック網グループ内の他の端末から送られてきた干渉電力情報S804は、自端末での干渉電力S806と共に、代表端末決定処理部807で代表端末決定処理が行われる。もし、自端末が代表端末になったら、代表端末宣言S807を、アドホック用データ処理部804を介して、アドホック網グループ内に宣言を行う。その後、グループ間調停の時間では、スイッチ806はアドホック網グループ間調停処理部807に接続され、他アドホック網グループの代表とチャネル共有化のための、要求、応答、調停処理を行い、その結果、チャネル分割情報S807、S808を用いて、その後のアドホック通信を行う。
【0030】
以上のように、アドホック網グループは、他のアドホック網グループが接近することでチャネルを分割するが、接近していた他のアドホック網グループが離れ、そのアドホック網グループから受ける干渉が少なくなった場合には、分割したチャネルを元に戻すことも可能である。
【0031】
図10に、この処理における手順を示す。図10で、ステップ901〜904までは、上記で示した処理であるが、ステップ905では、その時刻における代表端末のみが、その時刻で分割処理して利用しているチャネル以外のチャネルを受信し、干渉量を測定する。
【0032】
この具体例を示したものを図11に示す。図11では、分割処理して利用しているチャネル以外のチャネルとして、自分が通信で利用していない空きスロットをランダムに選択して干渉電力を測定するものとする。
【0033】
このとき、その干渉量が、たとえばPth2以下であったならば、代表端末が分割したチャネルを元に戻すチャネル結合処理を行い、その結果を結合チャネル情報の制御情報として、同じアドホック網グループに属する他の端末に送信する。これを受けた他の端末は、その結合チャネル情報に応じてアドホック通信を行うものとする。このような処理を行うことで、周囲からの干渉によって一度分割したチャネルでも、干渉が少なくなった場合には、元どおりに全てのチャネルを利用することが出来るようになる。
【0034】
以上、本実施例によって、チャネルの利用密度により同一チャネルを用いているアドホック網グループ間の調停が可能になるため、位置的に近いアドホック網グループ間での干渉を低減することが可能になり、チャネル資源の有効活用やシステムスループットの向上を図ることができる。また、干渉電力を測定することで、基地局を介することなく、チャネルの利用密度を推定することができるため、基地局の負荷を削減すると同時に、端末と基地局の通信におけるオーバヘッドを削減することができる。さらに、干渉電力の強弱により、アドホック網グループ代表端末を決定し、その端末が他のアドホック網グループの代表端末と調停を行う事で、位置的に近い端末同士のみが通信を行うため、通信品質の良い環境で、調停のための通信が行う事ができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限ったものではない。例えば、上述した実施例では、アドホック網グループの全ての端末が干渉量を測定し、その中で最も大きな干渉量を持つ端末に代表端末権を移しているが、この代表端末権を端末に割り当てる手順をあらかじめ決めておき、代表端末権を持つ端末のみが干渉量を測定するとすることも可能である。この場合には、上記の実施の形態に比べ、代表端末選定の処理がより簡単に行うことが可能となる。
【0036】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が用いられるシステム構成の一例を示す図。
【図2】セルラー公衆通信のみでのチャネル構成の例を示す図。
【図3】セルラー公衆通信とアドホック通信を時分割で行う場合のチャネル構成の例を示す図。
【図4】公衆通信エリアとアドホック通信エリアを模式的に示した図。
【図5】アドホック通信エリアが近づいたときの、公衆通信エリアとアドホック通信エリアを模式的に示した図。
【図6】アドホック通信の干渉量測定からアドホックグループ間調停要求を送信するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図7】アドホックグループ間調停要求を送信されてから分割処理されたチャネルで通信するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図8】アドホック通信、干渉電力測定、グループ間調停、チャネル分割を行っているチャネル構成の一例を示す図。
【図9】本発明のシステムで用いられる端末の概略構成図。
【図10】本発明において、アドホック網グループを形成している端末がチャネル分割して通信をしている状態から、チャネル結合するまでの処理手順を示すフローチャート。
【図11】チャネル分割して通信を行っている時に、通信で利用していないチャネルの干渉を測定する具体例を示したチャネル構成図。
【符号の説明】
【0038】
101・・・セルラー基地局101
102、103、104、105・・・無線通信端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラー移動無線通信システムで使用される送受信スロットを利用することによって、端末間でアドホック無線通信網を構築して通信を行うアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法において、
各アドホック網に属する端末が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定するアドホック網接近判定ステップと、
前記同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する代表端末選出ステップと、
選出された代表端末が、接近した前記他のアドホック網の代表端末との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理を行う調停ステップと
を備えたことを特徴とするアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項2】
前記代表端末選出ステップは、前記アドホック網に属するすべての端末が干渉量を共有し、一定の周期ごとに最も干渉量が多い端末に代表端末が移され、代表端末を選出すると判断された時刻に代表権を持つ端末が代表端末となる処理を含むことを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項3】
前記アドホック網の代表端末となる権利を、一定の周期ごとに端末が順番に保持し、代表端末を選出すると判断された時刻に代表権を持つ端末が代表端末となることを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項4】
前記調停ステップを実行した端末が、前記調停ステップを実行後、周囲の他のアドホック網からの干渉量を測定し、前記周囲の他のアドホック網が十分遠くに離れたと判断した場合には、前記周囲の他のアドホック網が用いていたスロットを、自己が属するアドホック網用として利用するステップをさらに設けたことを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項1】
セルラー移動無線通信システムで使用される送受信スロットを利用することによって、端末間でアドホック無線通信網を構築して通信を行うアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法において、
各アドホック網に属する端末が、自端末が属する網以外のアドホック網からの干渉量を測定し、同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したか否かを判定するアドホック網接近判定ステップと、
前記同じ周波数を利用する他のアドホック網が接近したと判定した場合に、判定したアドホック網に属する端末の中から代表端末を選出する代表端末選出ステップと、
選出された代表端末が、接近した前記他のアドホック網の代表端末との間で通信を行い、どちらのアドホック網がどのスロット区間でアドホック通信を行うかを決めるための処理を行う調停ステップと
を備えたことを特徴とするアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項2】
前記代表端末選出ステップは、前記アドホック網に属するすべての端末が干渉量を共有し、一定の周期ごとに最も干渉量が多い端末に代表端末が移され、代表端末を選出すると判断された時刻に代表権を持つ端末が代表端末となる処理を含むことを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項3】
前記アドホック網の代表端末となる権利を、一定の周期ごとに端末が順番に保持し、代表端末を選出すると判断された時刻に代表権を持つ端末が代表端末となることを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【請求項4】
前記調停ステップを実行した端末が、前記調停ステップを実行後、周囲の他のアドホック網からの干渉量を測定し、前記周囲の他のアドホック網が十分遠くに離れたと判断した場合には、前記周囲の他のアドホック網が用いていたスロットを、自己が属するアドホック網用として利用するステップをさらに設けたことを特徴とする請求項1記載のアドホック無線通信システムにおけるチャネル設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−94229(P2006−94229A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278266(P2004−278266)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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